面積・体積に望む三つの性質を満たす関数は、本当に存在し、しかも一つだけだろうか。
このページでできるようになること
置換公式から行列式を構成し、多重線形・交代・正規化と一意性を証明できるようになる。
二次元で使った多重線形性・交代性・正規化を $n$ 次元へ移します。
Leibniz公式により、$A=(a_{ij})\in M_n(K)$ に対し
$$
\det A=
\sum_{\sigma\in S_n}
\operatorname{sgn}(\sigma)
\prod_{j=1}^n a_{\sigma(j),j}
$$
と定める。
存在は置換和を直接検証し、一意性は各列の標準基底展開で値が強制されることを示す。
行列式は列について多重線形、交代的で、$\det I_n=1$ を満たす。さらに、この三性質を満たす関数 $D\colon M_n(K)\to K$ は行列式だけである。
一つの列を $cu+dv$ に替えると、Leibniz公式の各項でその列から選ぶ成分だけが $c$ 倍と $d$ 倍に分かれるため、和全体も $cD(u)+dD(v)$ に分かれる。よって各列について線形。
二列が等しい行列を考える。その二列を交換する操作は行列を変えない。一方、Leibniz和の置換 $\sigma$ をその二列の交換と合成する対応で項が二つずつ組になり、係数の積は同じ、符号は反対になる。したがって全項が相殺して0。よって交代的。
$I_n$ では各列の非零成分は第 $j$ 列の第 $j$ 成分だけなので、恒等置換の項1だけが残る。したがって $\det I_n=1$。
$A$ の第 $j$ 列を標準基底で
$$
a_j=\sum_{i=1}^na_{ij}e_i
$$
と書く。多重線形性で全列を展開すると
$$
D(A)=\sum_{i_1,\ldots,i_n}
a_{i_1,1}\cdots a_{i_n,n}
D(e_{i_1},\ldots,e_{i_n}).
$$
添字に重複がある項は交代性で0。重複がない列 $(i_1,\ldots,i_n)$ は置換 $\sigma$ をなし、標準基底の列をその置換順に並べたもの。隣接交換一回で符号が反転し、正規化から
$$
D(e_{\sigma(1)},\ldots,e_{\sigma(n)})=\operatorname{sgn}(\sigma).
$$
したがって残る和はLeibniz公式そのもので、$D=\det$。
$$
\det A=
a_{11}a_{22}a_{33}+a_{21}a_{32}a_{13}+a_{31}a_{12}a_{23}
-a_{31}a_{22}a_{13}-a_{21}a_{12}a_{33}-a_{11}a_{32}a_{23}.
$$
公式は6項ですが、実際の計算は次ページの行操作と余因子展開を使う方が見通しがよくなります。
多重線形・交代的という二条件だけでは $c\det$ も条件を満たす。$D(I)=1$ が定数倍の曖昧さを除く。
上三角行列の行列式が対角成分の積であることをLeibniz公式から示せ。
非恒等置換 $\sigma$ には $\sigma(j)>j$ となる $j$ がある。そうでなければ全て $\sigma(j)\le j$ で、和が同じことからすべて等号となる。その $j$ では対角より下の成分 $a_{\sigma(j),j}=0$ なので項は零。恒等置換だけが残り $\prod_ja_{jj}$。
次は定義を実用的な計算法へ変換します。
幾何的な要求と代数的な公式が一致し、任意次元で使える量になった。
次へ持ち越す問い
この見方を、次のページではより広い対象またはより計算しやすい形へ移す。
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