位相空間論8:直積位相と直和位相

$$\newcommand{abs}[1]{\left|{#1}\right|} \newcommand{cardinal}[1]{\left|{#1}\right|} $$

位相空間論8:直積位相と直和位相

いくつかの位相空間が与えられたとき、その直積に位相を定める方法について述べよう。まず、扱いが易しい有限個の位相空間の直積について説明したのち、一般の直積について述べることにする。さらに、直積位相と双対的な概念である直和位相について述べる。
有限個の位相空間 $(X_1, \mathcal{O}_1),\ldots, (X_n, \mathcal{O}_n)\,(n\in\mathbb{N})$ が与えられたとする。このとき、直積集合
$$ X=X_1\times\cdots\times X_n=\{(x_1,\ldots, x_n)\,|\,x_1\in X_1,\ldots, x_n\in X_n\} $$
に位相を与える方法を考えよう。 各 $i=1,\ldots, n$ に対して、$X$ から $X_i$ への射影 $p_i\colon X\to X_i$$p_i(x_1,\ldots,x_n)=x_i$ により定まる。直積集合 $X$ の位相は、これらの射影 $p_i\,(i=1,\ldots,n)$ がすべて連続となるように入れるべきであろう。最も極端な場合として、$X$ に離散位相を入れればその要請は満たされるが、それでは $X_i$ の位相が反映されないから、$p_i$ がすべて連続であるという制約のもとで、$X$ の位相を可能な限り粗くすることを試みる。
射影 $p_i\,(i=1,\ldots,n)$ がすべて連続であるという条件は、集合族
$$ \mathcal{S}=\{p_i^{-1}(U)\,|\,i\in\{1,\ldots, n\},\,U\in\mathcal{O}_i\} $$
の要素が、すべて $X$ の開集合であるという条件と同値である。そこで、$X$ の開集合の全体を $\mathcal{S}$ として $X$ に位相を定めることができると都合が良いのであるが、相対位相や商位相の場合とは異なり、$\mathcal{S}$ はそれ自身では開集合系の公理 (O1)-(O3) を必ずしも満たさない。しかし、$\mathcal{S}$ 命題5 の性質(SB)を明らかに満たしているので、 命題6 により、$\mathcal{S}$ を準開基として生成される位相 $\mathcal{O}$ を考えることができる。この $\mathcal{O}$ が、$X$ 上の直積位相と呼ばれるものである。この位相 $\mathcal{O}$ は、$\mathcal{S}$ の有限個の要素の共通部分全体を $\mathcal{B}_\mathcal{S}$ とするとき、$\mathcal{B}_\mathcal{S}$ を開基として生成される位相のことであった( 注意 )。$\mathcal{O}_i$ が有限個の共通部分について閉じていることと、逆像 $p_i^{-1}$ をとる操作が共通部分と交換することから、$\mathcal{B}_\mathcal{S}$
$$ \begin{aligned} \mathcal{B}_\mathcal{S}&=\left\{\bigcap_{i=1}^n p_i^{-1}(U_i)\,\bigg|\,U_1\in\mathcal{O}_1,\ldots, U_n\in\mathcal{O}_n\right\}\\ &=\{U_1\times\cdots\times U_n\,|\,U_1\in\mathcal{O}_1,\ldots, U_n\in\mathcal{O}_n\} \end{aligned} $$
と表される(確かめよ)。以上を正式な定義の形にまとめよう。

有限個の空間の直積位相

$n\in\mathbb{N}$ とし、$(X_1 ,\mathcal{O}_1),\ldots, (X_n, \mathcal{O}_n)$ を位相空間とする。直積集合 $X=X_1\times\cdots\times X_n$ の部分集合族
$$ \mathcal{S}=\{p_i^{-1}(U)\,|\,i\in\{1,\ldots, n\},\,U\in\mathcal{O}_i\} $$
を準開基として生成される位相 $\mathcal{O}$$X$ 上の直積位相(product topology)といい、このときの位相空間 $(X, \mathcal{O})$$X_1,\ldots, X_n$直積空間(product space)という。この直積位相 $\mathcal{O}$ は、$p_i\colon X\to X_i$ を射影とするとき、$X$ の部分集合族
$$ \mathcal{B}_\mathcal{S}=\{U_1\times\cdots\times U_n\,|\,U_1\in\mathcal{O}_1,\ldots, U_n\in\mathcal{O}_n\} $$
を開基として生成される位相でもある。$\square$
以下では断りのない限り、有限個の位相空間 $(X_i, \mathcal{O}_i)\,(i=1,\ldots, n)$ に対して、直積集合 $X_1\times\cdots\times X_n$ にはこの直積位相を入れるものとする。

直積空間の開集合

上の定義から、直積空間 $X=X_1\times\cdots\times X_n$ において、$\mathcal{B}_\mathcal{S}$ の要素、つまり
$$ U_1\times\cdots\times U_n\text{(ただし } U_i\text{ は }X_i\text{ の開集合)} $$
という形の集合はすべて開集合である。このような集合の全体が直積空間 $X$ の開基をなすのだから、 命題1 から、$X$ の任意の開集合は上のような形の開集合の(一般には無限個の)和集合として表される。したがって、$X$ の開集合の一般的な形は
$$ \bigcup_{\lambda\in\Lambda} (U_{\lambda, 1}\times\cdots\times U_{\lambda, n})\text{(ただし } U_{\lambda, i}\text{ は }X_i\text{ の開集合)} $$
のようになる。

直積位相と射影

$(X_1, \mathcal{O}_1),\ldots, (X_n, \mathcal{O}_n)$ を位相空間とする。直積集合 $X=X_1\times\cdots\times X_n$ 上の直積位相 $\mathcal{O}$ は、すべての $i\in\{1,\ldots, n\}$ に対して射影 $p_i\colon X\to X_i$ を連続とする $X$ 上の位相の中で、最も粗い位相である。つまり、次の二つが成り立つ。

  • すべての $i\in\{1,\ldots, n\}$ に対して、$p_i$$(X, \mathcal{O})$ から $(X_i, \mathcal{O}_i)$ への連続写像となる。
  • すべての $i\in\{1,\ldots, n\}$ に対して $p_i$$(X, \mathcal{O}')$ から $(X_i, \mathcal{O}_i)$ への連続写像となるような $X$ 上の任意の位相 $\mathcal{O}'$ に対して、$\mathcal{O}\subset\mathcal{O}'$ である。

定義1 およびその前の議論で用いていた記号をそのまま用いる。$\mathcal{S}\subset\mathcal{O}$ であるから、 定義1 の前の議論により、各 $i$ に対して $p_i\colon X\to X_i$$(X, \mathcal{O})$ から $(X_i, \mathcal{O}_i)$ への連続写像となる。よって、第一の性質が成り立つ。第二の性質を示すため、$\mathcal{O}'$ を、すべての $i\in\{1,\ldots,n\}$ に対して $p_i$$(X, \mathcal{O}')$ から $(X_i, \mathcal{O}_i)$ への連続写像となるような $X$ 上の位相とする。すると、 定義1 の前の議論により、$\mathcal{S}\subset\mathcal{O}'$ であるが、 注意 でみたように、$\mathcal{O}$$\mathcal{S}$ を含む最小の位相であったので、$\mathcal{O}\subset\mathcal{O}'$ である。$\square$
直積空間 $X$ の部分集合が開集合であるかを判定するには、次の事実が良く用いられる。

直積空間での開集合の判定条件

$X_1,\ldots, X_n$ を位相空間とする。直積空間 $X=X_1\times\cdots\times X_n$ の部分集合 $U$ に対して、次は同値である。

    1. $U$ は開集合である。
    1. 任意の $(x_1,\ldots, x_n)\in U$ に対して、$x_i\in U_i$ となる $X_i$ の開集合 $U_i\,(i=1,\ldots,n)$ が存在して $U_1\times\cdots\times U_n\subset U$ となる。

定義1 およびその前の議論で用いていた記号をそのまま用いる。
(1) $\Rightarrow$ (2) を示す。$U$$X$ の開集合とし、$x=(x_1,\ldots, x_n)\in U$ とする。$\mathcal{B}_\mathcal{S}$$X$ の開基だから、ある $V\in\mathcal{B}_\mathcal{S}$ に対して $x\in V\subset U$ となるが、$\mathcal{B}_\mathcal{S}$ の定義により、$X_i$ の開集合 $U_i\,(i=1,\ldots,n)$ が存在して、$V=U_1\times\cdots\times U_n$ である。この $U_i\,(i=1,\ldots,n)$ が条件を満たす。
(2) $\Rightarrow$ (1) は、$U_1\times\cdots\times U_n$$U_i$$X_i$ の開集合)の形の集合が $X$ の開集合であることに注意すれば、 命題3 からすぐに分かる。$\square$
直積空間について、次の事実は基本的である。

直積空間の普遍性

$X=X_1\times\cdots\times X_n$ を直積空間とし、$Y$ を位相空間とする。$p_i\colon X\to X_i\,(i=1,\ldots, n)$ を射影とするとき、写像 $f\colon Y\to X$ に対して、次は同値である。

    1. $f$ は連続である。
    1. $i\in\{1,\ldots, n\}$ に対して、$p_i\circ f\colon Y\to X_i$ は連続である。
  1. $\Rightarrow$ (2) は、射影 $p_i$ の連続性( 命題1 )と、連続写像の合成が連続であることから分かる。
  2. $\Rightarrow$ (1) を示す。各 $i$ に対して $p_i\circ f\colon Y\to X_i$ が連続であるとする。
    命題9 によれば、$f\colon Y\to X$ が連続であることを示すには、 定義1 における $X$ の準開基 $\mathcal{S}$ に属する $V$ について、$f^{-1}(V)$$Y$ の開集合になることを示せば十分である。すなわち、ある $i\in\{1,\ldots,n\}$$X_i$ の開集合 $U$ に対して $V=p_i^{-1}(U)$ と表されるような $V$ に対して、$f^{-1}(V)$$Y$ の開集合となることを示せばよい。 いま、
    $$ f^{-1}(V)=f^{-1}(p_i^{-1}(U))=(p_i\circ f)^{-1}(U) $$
    であるが、$p_i\circ f$ は仮定から連続なので、$(p_i\circ f)^{-1}(U)$$Y$ の開集合となる。よって、$f^{-1}(V)$$Y$ の開集合である。$\square$
直積空間への連続写像のつくり方

命題3 は、実際には、次のような形で使われることが多い。$f_i\colon Y\to X_i\,(i=1,\ldots, n)$ を連続写像とする。このとき写像 $f\colon Y\to X$
$$ f(y)=(f_1(y),\ldots, f_n(y))\quad(y\in Y) $$
により定義されるが、このとき $f\colon Y\to X$ は連続となる。実際、定義により各 $i$ に対して $p_i\circ f=f_i$ であり、これは連続であるから、 命題3 の(2) $\Rightarrow$ (1)により $f$ は連続となる。$\square$
距離空間の有限個の直積空間は、次の命題で分かるように距離化可能な位相空間となる。

距離空間の有限個の直積

$(X_1, d_1),\ldots, (X_n, d_n)$ を距離空間とする。このとき、次で定義される $d^{(1)}, d^{(2)}, d^{(\infty)}$ はいずれも直積集合 $X=X_1\times\cdots\times X_n$ 上の距離となる。
$$ \begin{aligned} d^{(1)}(x, y)&=\sum_{i=1}^n d_i(x_i, y_i)\\ d^{(2)}(x, y)&=\sqrt{\sum_{i=1}^n d_i(x_i, y_i)^2}\\ d^{(\infty)}(x, y)&=\max\{d_i(x_i, y_i)\,|\,i=1,\ldots, n\}\\ \end{aligned} $$
ただし、$x=(x_1,\ldots, x_n)$, $y=(y_1,\ldots, y_n)$ とする。さらに、これらの距離が定める $X$ 上の位相は、いずれも直積位相に一致する。

まず、$d^{(1)}, d^{(2)}, d^{(\infty)}$ がそれぞれ $X$ 上の距離となることを示す。いずれも、距離の満たすべき性質のうち三角不等式以外は明らかに満たしているので、三角不等式のみを証明しよう。$d^{(1)}, d^{(\infty)}$ については三角不等式も簡単である。実際、$d^{(1)}$ に関しては、$x=(x_1,\ldots, x_n),\, y=(y_1,\ldots, y_n),\, z=(z_1,\ldots, z_n)\in X$ に対して、$d_i$ が三角不等式を満たすことより
$$ d^{(1)}(x,z)=\sum_{i=1}^n d_i(x_i, z_i)\leq \sum_{i=1}^n (d_i(x_i, y_i)+d_i(y_i, z_i))=\sum_{i=1}^n d_i(x_i, y_i)+\sum_{i=1}^n d_i(y_i, z_i)=d^{(1)}(x,y)+d^{(1)}(y, z) $$
となるから三角不等式は成り立つ。
次に $d^{(\infty)}$ については、各 $i$ に対して、$d_i(x_i, y_i)\leq d_i(x_i, y_i)+d_i(y_i, z_i)\leq d^{(\infty)}(x, y)+d^{(\infty)}(y, z)$ となることに注意すれば、
$$ d^{(\infty)}(x,y)=\max\{d(x_i, y_i)\,|\,i=1,\ldots, n\}\leq d^{(\infty)}(x, y)+d^{(\infty)}(y, z) $$
となり、やはり三角不等式は成り立つ。問題は $d^{(2)}$ についてである。まず、Cauchy-Schwarz の不等式( 命題1 )により、
$$ \sum_{i=1}^n d(x_i, y_i)d(y_i, z_i)\leq \sqrt{\left(\sum_{i=1}^n d(x_i, y_i)^2\right)\left(\sum_{i=1}^n d(y_i, z_i)^2\right)}=d^{(2)}(x,y)d^{(2)}(y,z) $$
であることに注意しよう。これを用いると、
$$ \begin{aligned} &\phantom{=}(d^{(2)}(x, y)+d^{(2)}(y, z))^2-(d^{(2)}(x, z))^2\\ &= \sum_{i=1}^n (d_i(x_i, y_i)^2+d_i(y_i, z_i)^2)+2d^{(2)}(x,y)d^{(2)}(y,z)-\sum_{i=1}^n d_i(x_i, z_i)^2\\ &= \sum_{i=1}^n (d_i(x_i, y_i)+d_i(y_i, z_i))^2-\sum_{i=1}^n d_i(x_i, z_i)^2+2\left(d^{(2)}(x,y)d^{(2)}(y,z)-\sum_{i=1}^n d_i(x_i, y_i)d_i(y_i, z_i)\right)\\ &\geq 0 \end{aligned} $$
となるから、$d^{(2)}(x, y)+d^{(2)}(y, z)\geq d^{(2)}(x, z)$ であり、$d^{(2)}$ についても三角不等式は成り立つ。
さらに、これらの距離が定める位相がすべて直積位相に一致することを示そう。まず、
$$ d^{(\infty)}(x, y)\leq d^{(1)}(x,y)\leq n d^{(\infty)}(x,y) $$
が成り立つことから、恒等写像 $\operatorname{id}\colon (X, d^{(1)})\to (X, d^{(\infty)})$ および $\operatorname{id}\colon (X, d^{(\infty)})\to (X, d^{(1)})$ が連続であることが分かる。これは、$\operatorname{id}\colon (X, d^{(1)})\to (X, d^{(\infty)})$ が同相写像であることを示しているから、$d^{(1)}$$d^{(\infty)}$ の定める $X$ 上の位相は等しい。また、
$$ d^{(\infty)}(x, y)\leq d^{(2)}(x,y)\leq \sqrt{n} d^{(\infty)}(x,y) $$
が成り立つことから、同様にして、$d^{(2)}$$d^{(\infty)}$ の定める $X$ 上の位相が等しいことも分かる。これで、$d^{(1)}, d^{(2)}, d^{(\infty)}$ の定める $X$ 上の位相がすべて一致することが分かった。あとは、この位相(たとえば、$d^{(\infty)}$ の定める位相)が、$X$ 上の直積位相 $\mathcal{O}$ に一致することを言えばよい。
$i$ に対して、
$$ d_i(p_i(x), p_i(y))=d_i(x_i, y_i)\leq d^{(\infty)}(x, y)\quad(x, y\in X) $$
という不等式が成り立つので、射影 $p_i\colon (X, d^{(\infty)})\to (X_i, d_i)$ は連続である。これは、$f$ を恒等写像 $\operatorname{id}\colon (X, d^{(\infty)})\to (X, \mathcal{O})$ とすれば、$p_i\circ f\colon (X, d^{(\infty)})\to (X_i, d_i)$ が各 $i$ について連続となることを意味している。よって、 命題3 により、$f$ は連続である。すなわち、$\operatorname{id}\colon (X, d^{(\infty)})\to (X, \mathcal{O})$ は連続である。
あとは、逆向きの恒等写像
$$ \operatorname{id}\colon (X, \mathcal{O})\to (X, d^{(\infty)})\quad(\star) $$
が連続であると言えればよい。この連続性を示すため、 命題9 を用いることにしよう。$(X, d^{(\infty)})$ の開基としては開球体の全体
$$ \{B_{d^{(\infty)}}(x,r)\,|\,x\in X, r>0\} $$
が取れるのであった( 例2 )。よって、$(\star)$ が連続であることを言うためには、任意の $x\in X$$r>0$ に対して $\operatorname{id}^{-1}(B_{d^{(\infty)}}(x,r))=B_{d^{(\infty)}}(x,r)$ が直積空間 $(X, \mathcal{O})$ の開集合であると言えればよい。そこで、$x=(x_1,\ldots, x_n)\in X$ および $r>0$ を任意に与える。このとき $y=(y_1,\ldots, y_n)\in X$ に対して
$$ \begin{aligned} d^{(\infty)}(x, y)< r &\Longleftrightarrow \max\{d_i(x_i, y_i)\,|\,i=1,\ldots,n\}< r \\ &\Longleftrightarrow \text{すべての }i\in\{1,\ldots,n\}\text{ に対して }d_i(x_i, y_i)< r \end{aligned} $$
となるから、
$$ \begin{aligned} B_{d^{(\infty)}}(x,r)&=\{y\in X\,|\,d^{(\infty)}(x, y)< r\}\\ &=\{y\in X\,|\, \text{すべての }i\in\{1,\ldots,n\}\text{ に対して }d_i(x_i, y_i)< r\}\\ &=B_{d_1}(x_1,r)\times\cdots\times B_{d_n}(x_n,r) \end{aligned} $$
である。この最右辺は、$(X_i, d_i)$ の開集合の直積の形だから、確かに直積空間 $(X, \mathcal{O})$ の開集合である( 注意 )。よって、$B_{d^{(\infty)}}(x,r)$$(X, \mathcal{O})$ の開集合である。これで、$(\star)$ が連続であることが示され、$\operatorname{id}\colon (X, d^{(\infty)})\to (X, \mathcal{O})$ が同相写像であることが分かった。したがって、$d^{(\infty)}$ が定める位相は直積位相 $\mathcal{O}$ と一致することが分かり、これですべての証明が終わった。$\square$

$\mathbb{R}^n$ のEuclid位相は直積位相と一致

$\mathbb{R}^n$ のEuclid距離から定まる位相は、$\mathbb{R}^n=\mathbb{R}\times\cdots\times\mathbb{R}$ と見たときの直積位相と一致する。

$\mathbb{R}$ の通常の距離を $d$ で表す。 命題4 において $(X_i, d_i)=(\mathbb{R}, d)\,(i=1,\ldots,n)$ としたときの $\mathbb{R}^n=\mathbb{R}\times\cdots\times\mathbb{R}$ 上の距離 $d^{(2)}$ は直ちに分かるようにEuclid距離と一致する。したがって、 命題4 により、$\mathbb{R}^n$ 上のEuclid距離が定める位相は、直積位相と一致する。$\square$

$\mathbb{R}^n$ のいくつかの距離

命題5 の証明では、実数直線の通常の距離 $d$ をもとに、 命題4 の距離 $d^{(2)}$ として $\mathbb{R}^n$ 上のEuclid距離が得られることを用いたが、その代わりに距離 $d^{(1)}$$d^{(\infty)}$ を考えると、それぞれ $\mathbb{R}^n$ 上の距離として
$$ d^{(1)}(x,y)=\sum_{i=1}^n |x_i-y_i|,\quad d^{(\infty)}(x,y)=\max \{|x_i-y_i|\,|\,i=1,\ldots,n\} $$
が得られる。ここで、$x=(x_1,\ldots, x_n),\,y=(y_1,\ldots, y_n)\in\mathbb{R}^n$ とする。これらの距離 $d^{(1)}$, $d^{(\infty)}$ の定める位相も、$\mathbb{R}^n$ の直積位相に等しい。$\square$

実数値連続関数から四則演算で得られる関数は連続

$X$ を位相空間とし、$f, g\colon X\to\mathbb{R}$ を連続関数とする。このとき $f$$g$ $f+g$ $f-g$ $f\cdot g$
$$ (f+g)(x)=f(x)+g(x),\quad (f-g)(x)=f(x)-g(x),\quad (f\cdot g)(x)=f(x)\cdot g(x) $$
により定義する。これらの関数は連続であることを示そう。そのため、$F\colon X\to\mathbb{R}^2$$F(x)=(f(x), g(x))$ で定義する。 命題5 により、$\mathbb{R}^2$ の(Euclid距離から定まる)位相は $\mathbb{R}^2=\mathbb{R}\times\mathbb{R}$ と見たときの直積位相と一致するのだから、$F$ 注意 により連続である。一方、 例2 で注意したように、実数の加法、減法、乗法が定める写像
$$ {+}\colon \mathbb{R}^2\to\mathbb{R},\quad (x, y)\mapsto x+y;\qquad-\colon \mathbb{R}^2\to\mathbb{R},\quad (x, y)\mapsto x-y;\qquad\cdot\colon \mathbb{R}^2\to\mathbb{R},\quad (x, y)\mapsto x\cdot y $$
はそれぞれ連続である。このとき $f+g$ は合成写像 $+\circ F$ に等しいから連続である。同様に、$f-g,$ $f\cdot g$ も連続と分かる。
さらに、$g(X)\subset\mathbb{R}\setminus\{0\}$ のときは、 $f/g$$(f/g)(x)=f(x)/g(x)$ により定義できる。このときは $g$$\mathbb{R}\setminus\{0\}$ への連続写像 $g\colon X\to\mathbb{R}\setminus\{0\}$ と見なすことができ、上の $F$$\mathbb{R}\times(\mathbb{R}\setminus\{0\})$ への連続写像 $F\colon X\to \mathbb{R}\times(\mathbb{R}\setminus\{0\})$ と見なせる。一方、 例2 で注意したように、実数の除法が定める写像
$$ {/}\colon \mathbb{R}\times(\mathbb{R}\setminus\{0\})\to\mathbb{R},\quad (x, y)\mapsto x/y $$
は連続である。このとき $f/g$ は合成写像 $/\circ F$ に等しいから連続である。$\square$
続いて、有限と限らない個数の位相空間の直積について述べよう。$(X_\lambda)_{\lambda\in\Lambda}$ を、位相空間の(添字付けられた)族とするとき、直積集合
$$ X=\prod_{\lambda\in\Lambda} X_\lambda=\{(x_\lambda)_{\lambda\in\Lambda}\,|\,\text{ すべての }\lambda\in\Lambda\text{ に対して }x_\lambda\in X_\lambda\} $$
に位相を入れることを考える(ただし、$\Lambda\neq\emptyset$ とする。このテキストでは直積を考える場合は常にこれを仮定する)。この場合も、各 $\lambda\in\Lambda$ に対して、射影 $p_\lambda\colon X\to X_\lambda$$p_\lambda((x_\lambda)_{\lambda\in\Lambda})=x_\lambda$ により定義される。つまり、$p_\lambda$ は直積集合 $X$ の要素にその第 $\lambda$ 成分を対応させる写像である。有限個の直積のときと同様、$X$ 上の直積位相は射影 $p_\lambda\,(\lambda\in\Lambda)$ をすべて連続するような最も粗い位相として定義される。具体的には、$X$ の部分集合族
$$ \mathcal{S}=\{p_\lambda^{-1}(U)\,|\,\lambda\in\Lambda,\,U\text{ は }X_\lambda\text{ の開集合}\} $$
を考えれば、$p_\lambda\,(\lambda\in\Lambda)$ がすべて連続であることと $\mathcal{S}$ の要素がすべて $X$ の開集合であることが同値となり、しかも $\mathcal{S}$ は条件(SB)を明らかに満たすので、$\mathcal{S}$ を準開基として生成される位相 $\mathcal{O}$ を考える。この $\mathcal{O}$ が直積位相である。改めて述べれば、

一般の直積位相

$(X_\lambda)_{\lambda\in\Lambda}$ を位相空間の族とし、$X=\prod_{\lambda\in\Lambda} X_\lambda$ をその直積集合として、各 $\lambda\in\Lambda$ に対して $p_\lambda\colon X\to X_\lambda$ を射影とする。このとき、$X$ の部分集合族
$$ \mathcal{S}=\{p_\lambda^{-1}(U)\,|\,\lambda\in\Lambda,\,U\text{ は }X_\lambda\text{ の開集合}\} $$
を準開基として生成される $X$ 上の位相を直積位相といい、この位相を入れて得られる位相空間 $X=\prod_{\lambda\in\Lambda} X_\lambda$直積空間という。
今後断りのない限り、位相空間の族 $(X_\lambda)_{\lambda\in\Lambda}$ に対して直積集合 $\prod_{\lambda\in\Lambda} X_\lambda$ には直積位相を導入する。$\Lambda=\{1, \ldots, n\}$ の場合は、上の直積位相の定義は、いままでの有限個の直積位相の定義と一致する。

一般の直積位相の開基

準開基の定義により、$\mathcal{S}$ の有限個の要素の共通部分の全体を $\mathcal{B}_\mathcal{S}$ とすると、$\mathcal{B}_\mathcal{S}$ は直積空間 $X=\prod_{\lambda\in\Lambda} X_\lambda$ の開基となる。
具体的には、$\mathcal{B}_\mathcal{S}$ は次のような集合となる(確かめよ)。
$$ \mathcal{B}_\mathcal{S}=\left\{\bigcap_{i=1}^n p_{\lambda_i}^{-1}(U_i)\,\bigg|\,n\in\mathbb{N},\,\lambda_i\in\Lambda,\,i\neq j{ のとき }\lambda_i\neq\lambda_j,\,U_i\text{ は }X_{\lambda_i}\text{ の開集合}\right\} $$
つまり、$\mathcal{B}_\mathcal{S}$ は、有限個の相異なる添字 $\lambda_1,\ldots,\lambda_n\in\Lambda\,(n\in\mathbb{N})$ を選び、各 $i\in\{1,\ldots, n\}$ に対して $X_{\lambda_i}$ の開集合 $U_i$ を選ぶと $\bigcap_{i=1}^n p_{\lambda_i}^{-1}(U_i)$ と書けるような集合の全体である。これは有限個の直積の場合よりも複雑となっているので注意が必要である。
特に注意したいのは、$U_\lambda$$X_\lambda$ の開集合とするときに $\prod_{\lambda\in\Lambda} U_\lambda$ という形の集合が必ずしも直積空間 $X$ の開集合ではないことである(ただし、有限個の $\lambda$ を除いて $U_\lambda=X_\lambda$ であるときは、この集合は上の $\mathcal{B}_\mathcal{S}$ に属するので開集合となる)。これは少々不自然に感じられるかもしれないが、この位相の定め方によって直積空間は非常に良い性質を満たすものになっている。
次の三つの命題(* 命題6 命題8 )の証明は、有限個の直積の場合( 命題1 命題3 *)と同様にして示されるので、証明を省略する。読者自身で確かめてほしい。

一般の直積位相と射影

$(X_\lambda)_{\lambda\in\Lambda}$ を位相空間の族とする。直積集合 $X=\prod_{\lambda\in\Lambda} X_\lambda$ 上の直積位相 $\mathcal{O}$ は、すべての $\lambda\in\Lambda$ に対して射影 $p_\lambda\colon X\to X_\lambda$ を連続とする $X$ 上の位相の中で、最も粗い位相である。つまり、次の二つが成り立つ。

  • すべての $\lambda\in\Lambda$ に対して、$p_\lambda$$(X, \mathcal{O})$ から $X_\lambda$ への連続写像となる。
  • すべての $\lambda\in\Lambda$ に対して $p_\lambda$$(X, \mathcal{O}')$ から $X_\lambda$ への連続写像となるような $X$ 上の任意の位相 $\mathcal{O}'$ に対して、$\mathcal{O}\subset\mathcal{O}'$ である。$\square$
一般の直積空間での開集合の判定条件

直積空間 $X=\prod_{\lambda\in\Lambda}$ の部分集合 $U$ に対して、次は同値である。

    1. $U$ は開集合である。
    1. 任意の $x=(x_\lambda)_{\lambda\in\Lambda}\in U$ に対して、有限個の相異なる $\lambda_1,\ldots,\lambda_n\in\Lambda$ および $x_{\lambda_i}\in U_i$ となる $X_{\lambda_i}$ の開集合 $U_i\,(i=1,\ldots,n)$ が存在して $\bigcap_{i=1}^n p_{\lambda_i}^{-1}(U_i)\subset U$ となる。$\square$
一般の直積空間の普遍性

$X=\prod_{\lambda\in\Lambda} X_\lambda$ を直積空間とし、$Y$ を位相空間とする。$p_\lambda\colon X\to X_\lambda\,(\lambda\in\Lambda)$ を射影とするとき、写像 $f\colon Y\to X$ に対して、次は同値である。

    1. $f$ は連続である。
    1. $\lambda\in\Lambda$ に対して、$p_\lambda\circ f\colon Y\to X_\lambda$ は連続である。$\square$
一般の直積空間への連続写像のつくり方

命題8 は実際には、次のような形で使われることが多い。各 $\lambda\in\Lambda$ に対して連続写像 $f_\lambda\colon Y\to X_\lambda$ が与えられているとする。このとき写像 $f\colon Y\to X$
$$ f(y)=(f_\lambda(y))_{\lambda\in\Lambda} \quad(y\in Y) $$
により定義されるが、このとき $f\colon Y\to X$ は連続となる。実際、定義により各 $\lambda$ に対して $p_\lambda\circ f=f_\lambda$ であり、これは連続であるから、 命題8 の(2) $\Rightarrow$ (1)により $f$ は連続となる。$\square$

直積からの射影は開写像

$X=\prod_{\lambda\in\Lambda} X_\lambda$ を直積空間とするとき、各 $\lambda\in\Lambda$ に対して、射影 $p_\lambda\colon X\to X_\lambda$ は開写像である。

$U$ を直積空間 $X$ の開集合とし、$V=p_\lambda(U)$ とする。$V$$X_\lambda$ の開集合であることを示すために、$u\in V$ を任意に与える。ある $x=(x_\mu)_{\mu\in\Lambda}\in U$ が存在して、$p_\lambda(x)=u$ となる。つまり、$x_\lambda=u$ となる。$U$ は直積空間 $X$ の開集合なので、 命題7 により、有限個の相異なる $\lambda_1,\ldots,\lambda_n\in\Lambda$$X_{\lambda_i}$ の開集合 $U_i\,(i=1,\ldots, n)$ が存在して、$W=\bigcap_{i=1}^n p_{\lambda_i}^{-1}(U_i)$ とおくとき $x\in W\subset U$ となる。すると
$$ u=p_{\lambda}(x)\in p_\lambda(W)\subset p_\lambda(U)\quad (\star) $$
である。ここから、(1) ある $i$ について $\lambda=\lambda_i$ である場合、(2) $\lambda\notin\{\lambda_1,\ldots,\lambda_n\}$ である場合の二通りに場合分けする。
(1) の場合、$p_\lambda(W)=p_{\lambda_i}(W)=U_i$ となるから、$(\star)$ により $u\in U_i\subset p_\lambda(U)$ である。
(2) の場合、$p_\lambda(W)=X_\lambda$ となるから、$(\star)$ により $u\in X_\lambda\subset p_\lambda(U)$ である。
結局、(1) の場合 $O=U_i$ とし、(2) の場合 $O=X_\lambda$ とすれば、$O$$u$$X_\lambda$ における開近傍であって、$O\subset p_\lambda(U)$ となる。よって、 命題3 により $p_\lambda(U)$$X_\lambda$ の開集合である。$\square$
$(X_\lambda)_{\lambda\in\Lambda}$ を位相空間の族とし、各 $\lambda\in\Lambda$ に対して $X_\lambda$ の部分集合 $A_\lambda$ が与えられているとする。このとき、直積集合 $\prod_{\lambda\in\Lambda} A_\lambda$ には二通りの位相の入れ方がある。一つは、直積空間 $\prod_{\lambda\in\Lambda} X_\lambda$ の部分空間として位相を入れる方法で、もう一つは、$A_\lambda$$X_\lambda$ の部分空間とみて、その直積空間として位相を入れる方法である。この二つの位相は、次の命題のとおり、実際には一致するので区別の必要がない。

直積位相と相対位相の交換可能性

$(X_\lambda)_{\lambda\in\Lambda}$ を位相空間の族とし、各 $\lambda\in\Lambda$ に対して $A_\lambda\subset X_\lambda$ が与えられているとする。このとき、直積集合 $A=\prod_{\lambda\in\Lambda} A_\lambda$ には、直積空間 $X=\prod_{\lambda\in\Lambda} X_\lambda$ からの相対位相 $\mathcal{O}_1$ と、$X_\lambda$ からの相対位相をもつ $A_\lambda$ の直積空間としての位相 $\mathcal{O}_2$ をもつが、このとき $\mathcal{O}_1=\mathcal{O}_2$ である。

恒等写像 $\operatorname{id}\colon (A, \mathcal{O}_1)\to (A, \mathcal{O}_2)$ および $\operatorname{id}\colon (A, \mathcal{O}_2)\to (A, \mathcal{O}_1)$ の連続性を示せばよい。
まず、$\operatorname{id}\colon (A, \mathcal{O}_1)\to (A, \mathcal{O}_2)$ の連続性を示す。$\mathcal{O}_1$ は直積空間 $X=\prod_{\lambda\in\Lambda} X_\lambda$ からの相対位相なので、包含写像 $i\colon (A, \mathcal{O}_1)\to X$ は連続である。また、射影 $p_{\lambda}\colon X\to X_\lambda$ も連続である。よって、合成 $p_{\lambda}\circ i\colon (A, \mathcal{O}_1)\to X_\lambda$ は連続である。ところが、定義からこの合成 $p_{\lambda}\circ i$ の像は $X_\lambda$ の部分空間 $A_\lambda$ に含まれているので、$p_{\lambda}\circ i$ の終域を $A_\lambda$ に制限したものを $f_\lambda\colon (A, \mathcal{O}_1)\to A_\lambda$ と書けば、 命題13 により $f_\lambda$ も連続となる。そこで、$f\colon (A, \mathcal{O}_1)\to (A, \mathcal{O}_2)$$f(a)=(f_\lambda(a))\,(a\in A)$ により定義すれば、$\mathcal{O}_2$$A=\prod_{\lambda\in\Lambda} A_\lambda$ 上の直積位相であったことから、 注意 によって $f\colon (A, \mathcal{O}_1)\to (A, \mathcal{O}_2)$ は連続である。しかし、定義をさかのぼると分かるように、この $f$ は恒等写像 $\operatorname{id}$ に他ならない。よって、$\operatorname{id}\colon (A, \mathcal{O}_1)\to (A, \mathcal{O}_2)$ は連続である。
次に、$\operatorname{id}\colon (A, \mathcal{O}_2)\to (A, \mathcal{O}_1)$ の連続性を示す。いま、$\mathcal{O}_2$$A=\prod_{\lambda\in\Lambda} A_\lambda$ 上の直積位相なので、射影 $p'_\lambda\colon (A, \mathcal{O}_2)\to A_\lambda$ は連続である。また、包含写像 $i_\lambda\colon A_\lambda\to X_\lambda$ も連続である。したがって、合成 $i_\lambda\circ p'_\lambda\colon (A, \mathcal{O}_2)\to X_\lambda$ は連続である。そこで、$g\colon (A, \mathcal{O}_2)\to X=\prod_{\lambda\in\Lambda} X_\lambda$$g(a)=(i_\lambda\circ p'_\lambda(a))$ で定義すれば、 注意 によって $g$ は連続となる。定義により、$g$ の像は $A$ に含まれているので、$g$ の終域を $A$ に制限した $g^A$ を考えることができるが、$A$ 上の位相 $\mathcal{O}_1$$X$ からの相対位相であったから、$g^A\colon (A, \mathcal{O}_2)\to (A, \mathcal{O}_1)$ は連続となる。ところが、定義をさかのぼると、$g^A$ は恒等写像 $\operatorname{id}$ に他ならない。 よって、$\operatorname{id}\colon (A, \mathcal{O}_2)\to (A, \mathcal{O}_1)$ は連続である。$\square$
上の 命題10 は、今後は特に断りなく、暗黙のうちに使われることがあるので注意しておく。
注意 で述べたように、無限個の位相空間の直積空間 $X=\prod_{\lambda\in\Lambda} X_\lambda$ においては、開集合 $U_\lambda\subset X_\lambda\,(\lambda\in\Lambda)$ の直積 $\prod_{\lambda\in\Lambda} U_\lambda$ は必ずしも開集合とはならない。しかし、閉集合の直積については、次の命題のとおり閉集合となる。

閉集合の直積は閉集合

$X=\prod_{\lambda\in\Lambda} X_\lambda$ を直積空間とし、各 $\lambda\in\Lambda$ に対して、$F_\lambda$$X_\lambda$ の閉集合であるとする。このとき、$\prod_{\lambda\in\Lambda} F_\lambda$$X$ の閉集合である。

射影 $p_\lambda\colon X\to X_\lambda$ は連続だから、$p_\lambda^{-1}(F_\lambda)$ は各 $\lambda\in\Lambda$ に対して $X$ の閉集合となる。$\prod_{\lambda\in\Lambda} F_\lambda=\bigcap_{\lambda\in\Lambda} p_\lambda^{-1}(F_\lambda)$ なので $\prod_{\lambda\in\Lambda} F_\lambda$$X$ の閉集合である。$\square$

直積と閉包との関係

$X=\prod_{\lambda\in\Lambda} X_\lambda$ を直積空間とし、各 $\lambda\in\Lambda$ に対して $X_\lambda$ の部分集合 $A_\lambda$ が与えられているとする。このとき、
$$ \operatorname{Cl}_X \prod_{\lambda\in\Lambda} A_\lambda=\prod_{\lambda\in\Lambda} \operatorname{Cl}_{X_\lambda} A_\lambda $$
である。

右辺 $\prod_{\lambda\in\Lambda} \operatorname{Cl}_{X_\lambda} A_\lambda$ 命題11 により $X$ の閉集合であって $\prod_{\lambda\in\Lambda} A_\lambda$ を含んでいるから、 命題1 により、$\operatorname{Cl}_X \prod_{\lambda\in\Lambda} A_\lambda\subset \prod_{\lambda\in\Lambda} \operatorname{Cl}_{X_\lambda} A_\lambda$ である。
逆の包含を示すため、$x=(x_\lambda)_{\lambda\in\Lambda}\in \prod_{\lambda\in\Lambda} \operatorname{Cl}_{X_\lambda} A_\lambda$ を任意に与える。$x\in \operatorname{Cl}_X \prod_{\lambda\in\Lambda} A_\lambda$ を示すため、 命題3 を用いよう。$x$$X$ における開近傍 $V$ を任意に与える。 注意 (における直積空間の開基の記述)により、有限個の相異なる $\lambda_1,\ldots,\lambda_n\in\Lambda$$X_{\lambda_i}$ の開集合 $U_i$ が存在して、$x\in\bigcap_{i=1}^n p_{\lambda_i}^{-1}(U_i)\subset V$ となる。各 $i=1,\ldots,n$ に対して、$U_i$$x_{\lambda_i}$ の開近傍であり、$x_{\lambda_i}\in \operatorname{Cl}_{X_{\lambda_i}} A_{\lambda_i}$ であるから、 命題3 により $U_i\cap A_{\lambda_i}\neq\emptyset$ である。よって、点 $a_{\lambda_i}\in U_i\cap A_{\lambda_i}$ を選ぶことができる。また、$\lambda\in\Lambda\setminus\{\lambda_1,\ldots,\lambda_n\}$ のとき、$x_\lambda\in \operatorname{Cl}_{X_\lambda} A_\lambda$ なので、とくに $\operatorname{Cl}_{X_\lambda} A_\lambda\neq\emptyset$ であり、よって $A_\lambda\neq\emptyset$ なので点 $a_\lambda\in A_\lambda$ を選ぶことができる。こうして、$a=(a_\lambda)_{\lambda\in\Lambda}$ が得られるが、つくり方から $a\in \bigcap_{i=1}^n p_{\lambda_i}^{-1}(U_i)\cap \prod_{\lambda\in\Lambda} A_\lambda$ である。よって、$a\in V\cap \prod_{\lambda\in\Lambda} A_\lambda$ なので $V\cap \prod_{\lambda\in\Lambda} A_\lambda\neq\emptyset$ である。よって、 命題3 により $x\in\operatorname{Cl}_X \prod_{\lambda\in\Lambda} A_\lambda$ である。$\square$
直積空間において点列が収束することは、その点列を各成分に射影したものが収束することと同値である。正確に述べると、次のようになる。

直積空間における点列の収束

$X=\prod_{\lambda\in\Lambda} X_\lambda$ を直積空間とし、$p_\lambda\colon X\to X_\lambda$ を射影とする。$X$ の点列 $(x_n)_{n=1}^\infty$$x\in X$ に対して、次は同値である。

    1. $(x_n)_{n=1}^\infty$$x$ に収束する。
    1. $\lambda\in\Lambda$ に対して、$(p_\lambda(x_n))_{n=1}^\infty$$p_\lambda(x)$ に収束する。

(1)$\Rightarrow$(2) は、射影 $p_\lambda\colon X\to X_\lambda$ の連続性と 命題11 により分かる。
(2)$\Rightarrow$(1) を示す。各 $\lambda\in\Lambda$ に対して $(p_\lambda(x_n))_{n=1}^\infty$$p_\lambda(x)$ に収束するとする。このとき、$(x_n)_{n=1}^\infty$$x$ に収束することを示すため、$x$$X$ における開近傍 $V$ を任意に与える。すると、有限個の $\lambda_1,\ldots,\lambda_k\in\Lambda$$p_{\lambda_i}(x)$$X_{\lambda_i}$ における開近傍 $V_i\,(i=1,\ldots, k)$ が存在して、$x\in\bigcap_{i=1}^k p_{\lambda_i}^{-1}(V_i)\subset V$ となる。いま、各 $i\in\{1,\ldots, k\}$ に対して、$(p_{\lambda_i}(x_n))_{n=1}^\infty$$p_{\lambda_i}(x)$ に収束するから、$N_i\in\mathbb{N}$ が存在して、$n\geq N_i$ のとき常に $p_{\lambda_i}(x_n)\in V_i$ つまり $x_n\in p_{\lambda_i}^{-1}(V_i)$ である。そこで、$N=\max\{N_1,\ldots, N_k\}\in\mathbb{N}$ とおく。すると、$n\geq N$ のとき常に $x_n\in\bigcap_{i=1}^k p_{\lambda_i}^{-1}(V_i)$ であり、したがって $x_n\in V$ である。これで、$(x_n)_{n=1}^\infty$$x$ に収束することが示された。$\square$
第一可算性( 定義3 )や第二可算性( 定義2 )は、可算個の位相空間の直積については保たれるが、非可算個の直積については一般には保たれない。

第一・第二可算な空間の可算個の直積は第一・第二可算

$(X_i)_{i=1}^\infty$ を第一可算(あるいは第二可算)な位相空間の族とする。このとき、直積空間 $\prod_{i=1}^\infty X_i$ も第一可算(または第二可算)となる。

$X=\prod_{i=1}^\infty X_i$ とおき、$p_i\colon X\to X_i\,(i\in\mathbb{N})$ を射影とする。
まず、第一可算の場合を示す。$x=(x_i)_{i\in\mathbb{N}}\in X$ とする。各 $i\in\mathbb{N}$ に対して、$X_i$ は第一可算であるから $x_i$$X_i$ における高々可算な基本近傍系 $\mathcal{U}_i$ を選ぶことができる。 定義1 の証明と同じように、$\mathcal{U}_i$$X_i$ の開集合からなるとしてよい。このとき $X$ の部分集合族 $\mathcal{U}$
$$ \mathcal{U}=\left\{\bigcap_{i=1}^n p_i^{-1}(U_i)\,\bigg|\,n\in\mathbb{N},\,U_i\in\mathcal{U}_i\,(i=1,\ldots,n)\right\} $$
で定めると、$\mathcal{U}$ は高々可算である。また、$\mathcal{U}$ の要素はすべて $x$$X$ における開近傍である。$\mathcal{U}$$x$$X$ における基本近傍系であることを示すため、$x$$X$ における開近傍 $V$ を任意に与える。すると、有限個の $i_1,\ldots, i_k\in\mathbb{N}$(ただし、$i_1<\cdots< i_k$)および $x_{i_j}$$X_{i_j}$ における開近傍 $V_{i_j}$ が存在して
$$ x\in\bigcap_{j=1}^\infty p_{i_j}^{-1}(V_{i_j})\subset V $$
が成り立つ。$n=i_k$ と定義し、各 $i\in\{1,\ldots, n\}\setminus\{i_1,\ldots,i_k\}$ に対して $V_i=X_i$ とする。すると、各 $i\in\{1,\ldots, n\}$ に対して $V_i$$x_i$$X_i$ における開近傍であるから、$U_i\in\mathcal{U}_i$$x_i\in U_i\subset V_i$ となるように取れる。このとき、$U=\bigcap_{i=1}^n p_i^{-1}(U_i)$ とおけば $U\in\mathcal{U}$ で、
$$ x\in U\subset \bigcap_{i=1}^n p_i^{-1}(V_i)=\bigcap_{j=1}^\infty p_{i_j}^{-1}(V_{i_j})\subset V $$
が成り立つ。これで、$\mathcal{U}$$x$$X$ における高々可算な基本近傍系であることが示され、$X=\prod_{i=1}^n X_i$ が第一可算であることが示された。
次に、第二可算の場合を示す。各 $i\in\mathbb{N}$ に対して、$X_i$ は第二可算であるから $X_i$ の高々可算な開基 $\mathcal{B}_i$ を選ぶことができる。このとき、 $X$ の部分集合族 $\mathcal{B}$
$$ \mathcal{B}=\left\{\bigcap_{i=1}^n p_i^{-1}(B_i)\,\bigg|\,n\in\mathbb{N},\,B_i\in\mathcal{B}_i\,(i=1,\ldots,n)\right\} $$
で定めると、$\mathcal{B}$$X$ の開集合からなる高々可算な族である。このとき $\mathcal{B}$$X$ の開基となることが、第一可算のときの証明と同様の議論によって示される。したがって、$X=\prod_{i=1}^n X_i$ は第二可算である。$\square$

第一・第二可算性は非可算個の直積では保たれない

$\Lambda$ を非可算集合とし、各 $\lambda\in\Lambda$ に対して $X_\lambda$ を二点集合 $\{0, 1\}$ に離散位相を入れたものとする。このとき $X_\lambda$ は明らかに第二可算(よって 命題2 により第一可算)であるが、直積空間 $X=\prod_{\lambda\in\Lambda} X_\lambda$ は第一可算とならない(よって 命題2 により第二可算にもならない)ことを示そう。
$p_\lambda\colon X\to X_\lambda$ を射影とし、$\mathbf{0}\in X$ をすべての $\lambda\in\Lambda$ に対して $p_\lambda(\mathbf{0})=0$ となるような点とする。$\mathbf{0}$$X$ において高々可算な基本近傍系をもたないことを示そう。そのため、$\mathcal{U}=\{U_n\,|\,n\in\mathbb{N}\}$$\mathbf{0}$$X$ における基本近傍系であるとして矛盾を導く。各 $n\in\mathbb{N}$ に対して、$U_n$ は直積空間 $X=\prod_{\lambda\in\Lambda} X_\lambda$ における $\mathbf{0}$ の近傍なので、有限集合 $F_n\subset\Lambda$$\bigcap_{\lambda\in F_n} p_\lambda^{-1}(\{0\})\subset U_n$ となるように選べる。すると、$\bigcup_{n=1}^\infty F_n$$\Lambda$ の高々可算な部分集合だが、$\Lambda$ は非可算であるから、$\lambda_0\in\Lambda\setminus\bigcup_{n=1}^\infty F_n$ が存在する。そこで $\mathbf{0}$$X$ における近傍 $V$ として $V=p_{\lambda_0}^{-1}(\{0\})$ を考える。すると、ある $n\in\mathbb{N}$ に対して $U_n\subset V$ となるはずである。いま $x_0\in X$
$$ p_\lambda(x_0)= \begin{cases} 1 \quad& \lambda=\lambda_0\text{ のとき}\\ 0 \quad& \lambda\in\Lambda\setminus\{\lambda_0\}\text{ のとき} \end{cases} $$
で定まる点とすると $\lambda_0\notin F_n$ であることから $x_0\in U_n$ であり、したがって $x_0\in V$ である。しかし、$p_{\lambda_0}(x)=1\neq 0$ であるから、これは $V$ の定義 $V=p_{\lambda_0}^{-1}(\{0\})$ に反する。これで、$\mathbf{0}$$X$ において高々可算な基本近傍系をもたないことが示され、よって $X$ は第一可算ではないことが示された。$\square$
最後に、直和位相について述べよう。まず、直和集合について復習する。集合の(添字づけられた)族 $(X_\lambda)_{\lambda\in\Lambda}$ に対して、直和集合 $\coprod_{\lambda\in\Lambda} X_\lambda$ とは、次で定義される集合である。
$$ \coprod_{\lambda\in\Lambda} X_\lambda=\bigcup_{\lambda\in\Lambda} (X_\lambda\times\{\lambda\}) $$
この定義は、「$X_\lambda$ たちが互いに交わっていたとしても、交わりがないと思って和集合をとる」ということを意図している。上の定義での $X_\lambda\times\{\lambda\}$$X_\lambda$ のいわばコピーである。$\lambda\neq\mu$ のとき $X_\lambda\times\{\lambda\}$$X_\mu\times\{\mu\}$ は交わらないことに注意すれば、$X_\lambda$ のコピーたちは互いに交わらないから、あとはその和集合をとれば直和集合の定義が完成する。いま $X_\lambda$$X_\lambda\times\{\lambda\}$ に置き換えたのは、交わりをなくすための一つの便利な方法であるに過ぎず、この方法を使う必然性は特にない。直和集合の定義で重要なのは、$X_\lambda$ のコピーと考えられる集合たちの、互いに交わりのない和集合になっていることである。
直和集合 $X=\coprod_{\lambda\in\Lambda} X_\lambda$ に対しては写像 $i_\lambda\colon X_\lambda\to X$
$$ i_\lambda (x)=(x,\lambda) $$
により定義される。この $i_\lambda$包含写像(inclusion)と呼ぶ。これは厳密にはいままでの意味での包含写像とは異なる概念だが、混乱のおそれはないであろう。
さて、この状況で、$X_\lambda$ が位相空間になっている場合を考える。このとき、直和集合 $X=\coprod_{\lambda\in\Lambda} X_\lambda$ に適切な方法で位相を定めたい。例によって、各 $\lambda\in\Lambda$ に対して包含写像 $i_\lambda\colon X_\lambda\to X$ が連続となるという条件を課すが、この条件は
$$ \mathcal{O}=\{U\subset X\,|\,\text{ すべての }\lambda\in\Lambda\text{ に対して }i_\lambda^{-1}(U)\text{ が }X_\lambda\text{ の開集合 }\} $$
という $X$ の部分集合族を考えたとき、$X$ の開集合がすべて $\mathcal{O}$ に属していることと同値である。そこで、$\mathcal{O}$$X$ の開集合の全体として $X$ に位相を定めることができれば、$X$$i_\lambda$ をすべて連続とするような最も細かい位相をもつことになる。次の命題で見るように、$\mathcal{O}$ は実際に開集合系の公理 (O1)-(O3) を満たし、これが直和位相と呼ばれるものである。

集合族 $\mathcal{O}$ は開集合系の公理を満たす

位相空間の族 $(X_\lambda)_{\lambda\in\Lambda}$ に対して直和集合 $X=\coprod_{\lambda\in\Lambda} X_\lambda$ を考えるとき、上で定めた $X$ の部分集合族 $\mathcal{O}$$X$ 上の位相を定める。すなわち、$\mathcal{O}$ は開集合系の公理 (O1)-(O3) を満たす。

(O1) を示す。各 $\lambda\in\Lambda$ に対して $i_\lambda^{-1}(\emptyset)=\emptyset$ および $i_\lambda^{-1}(X)=X_\lambda$$X_\lambda$ の開集合なので、$\emptyset, X\in\mathcal{O}$ である。
(O2) を示すため、$U_1, U_2\in\mathcal{O}$ とする。すると、各 $\lambda\in\Lambda$ に対して $i_\lambda^{-1}(U_1),$ $i_\lambda^{-1}(U_2)$$X_\lambda$ の開集合であるから、$i_\lambda^{-1}(U_1\cap U_2)=i_\lambda^{-1}(U_1)\cap i_\lambda^{-1}(U_2)$$X_\lambda$ の開集合である。よって、$U_1\cap U_2\in\mathcal{O}$ である。
(O3) を示すため、$\{U_j\,|\,j\in I\}\subset\mathcal{O}$ とする。すると、各 $\lambda\in\Lambda$ および $j\in I$ に対して $i_\lambda^{-1}(U_j)$$X_\lambda$ の開集合である。よって、各 $\lambda\in\Lambda$ に対して $i_\lambda^{-1}(\bigcup_{j\in I} U_j)=\bigcup_{j\in I}i_\lambda^{-1}(U_j)$$X_\lambda$ の開集合であるので、$\bigcup_{j\in I} U_j\in\mathcal{O}$ である。$\square$

直和位相

$(X_\lambda)_{\lambda\in\Lambda}$ を位相空間の族とし、$X=\coprod_{\lambda\in\Lambda} X_\lambda$ をその直和集合として、各 $\lambda\in\Lambda$ に対して $i_\lambda\colon X_\lambda\to X$ を包含写像とする。このとき、$X$ の部分集合族
$$ \mathcal{O}=\{U\subset X\,|\,\text{ すべての }\lambda\in\Lambda\text{ に対して }i_\lambda^{-1}(U)\text{ が }X_\lambda\text{ の開集合 }\} $$
命題15 により $X$ 上の位相を定める。この位相 $\mathcal{O}$$X$ 上の直和位相といい、位相空間 $(X, \mathcal{O})$直和空間(topological sum)という。$\square$
直観的には、位相空間 $X_\lambda$ たちを「互いに交わらないように並べた」ものが直和空間 $X=\coprod_{\lambda\in\Lambda} X_\lambda$ である。上の定義は、直和空間 $X$ の開集合とは、元々の各空間 $X_\lambda$ の開集合を並べたものであるということを述べている。いままでの議論から、次が成り立つ。

直和位相と包含写像

$(X_\lambda)_{\lambda\in\Lambda}$ を位相空間の族とする。直和集合 $X=\coprod_{\lambda\in\Lambda} X_\lambda$ 上の直和位相 $\mathcal{O}$ は、すべての $\lambda\in\Lambda$ に対して包含写像 $i_\lambda\colon X_\lambda\to X$ を連続とするような $X$ 上の位相の中で、最も細かい位相である。つまり、次の二つが成り立つ。

  • すべての $\lambda\in\Lambda$ に対して、$i_\lambda\colon X_\lambda\to X$$X_\lambda$ から $(X, \mathcal{O})$ への連続写像となる。
  • すべての $\lambda\in\Lambda$ に対して $i_\lambda$$X_\lambda$ から $(X, \mathcal{O}')$ への連続写像となるような $X$ 上の任意の位相 $\mathcal{O}'$ に対して、$\mathcal{O}'\subset\mathcal{O}$ である。$\square$
    次の命題で分かるように、開集合の時と同様に、直和空間の閉集合も各空間の閉集合を並べたものになる。
直和空間の閉集合

直和空間 $X=\coprod_{\lambda\in\Lambda} X_\lambda$ の部分集合 $F$ に対して、次は同値である。

    1. $F$$X$ の閉集合である。
    1. $\lambda\in\Lambda$ に対して、$i_\lambda^{-1}(F)$$X_\lambda$ の閉集合である。
  1. $\Rightarrow$ (2) を示す。$F$$X$ の閉集合とする。このとき $X\setminus F$$X$ の開集合なので、各 $\lambda\in\Lambda$ に対して $X_\lambda\setminus i_\lambda^{-1}(F)=i_\lambda^{-1}(X\setminus F)$$X_\lambda$ の開集合であり、よって $i_\lambda^{-1}(F)$$X_\lambda$ の閉集合である。
  2. $\Rightarrow$ (1) を示す。各 $\lambda\in\Lambda$ に対して $i_\lambda^{-1}(F)$$X_\lambda$ の閉集合であるとする。このとき、各 $\lambda\in\Lambda$ に対して $i_\lambda^{-1}(X\setminus F)=X_\lambda\setminus i_\lambda^{-1}(F)$$X_\lambda$ の開集合であるから、$X\setminus F$$X$ の開集合である。よって、$F$$X$ の閉集合である。$\square$
    直和空間についての次の性質は基本的である。
直和空間の普遍性

$X=\coprod_{\lambda\in\Lambda} X_\lambda$ を直和空間とし、$Y$ を位相空間とする。$i_\lambda\colon X_\lambda\to X\,(\lambda\in\Lambda)$ を包含写像とするとき、写像 $f\colon X\to Y$ に対して、次は同値である。

    1. $f$ は連続である。
    1. $\lambda\in\Lambda$ に対して、$f\circ i_\lambda \colon X_\lambda \to Y$ は連続である。
  1. $\Rightarrow$ (2) は、包含写像 $i_\lambda\colon X_\lambda\to X$ が連続であることと、連続写像の合成が連続であることから分かる。
  2. $\Rightarrow$ (1) を示す。$f\colon X\to Y$ に対して (2) を仮定し、$V$$Y$ の開集合とする。各 $\lambda\in\Lambda$ に対して、
    $$ i_\lambda^{-1}(f^{-1}(V))=(f\circ i_\lambda)^{-1}(V) $$
    であるが、いま仮定している (2) により $(f\circ i_\lambda)^{-1}(V)$$X_\lambda$ の開集合である。よって、各 $\lambda\in\Lambda$ に対して、$i_\lambda^{-1}(f^{-1}(V))$$X_\lambda$ の開集合である。したがって、$f^{-1}(V)$$X$ の開集合である。これで、$f$ の連続性が示された。$\square$
直和空間からの連続写像のつくり方

命題18 は実際には、次のような形で使われることが多い。各 $\lambda\in\Lambda$ に対して連続写像 $f_\lambda\colon X_\lambda\to Y$ が与えられているとする。このとき写像 $f\colon X\to Y$
$$ f(x, \lambda)=f_\lambda(x)\quad(\lambda\in\Lambda,\,x\in X_\lambda) $$
により定義されるが、このとき $f\colon X\to Y$ は連続となる。実際、定義により各 $\lambda$ に対して $f\circ i_\lambda=f_\lambda$ であり、これは連続であるから、 命題18 の(2) $\Rightarrow$ (1)により $f$ は連続となる。$\square$

参考文献

[1]
Ryszard Engelking, General Topology
[2]
松坂和夫, 集合・位相入門
[3]
彌永昌吉・彌永健一, 集合と位相
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