局所コンパクト群のユニタリ表現

提供: Mathpedia

本稿においては、局所コンパクト群のユニタリ表現論について初歩的なことを論じる。仮定する知識は、位相空間論(入門テキスト「位相空間論」ネットによる位相空間論)、測度論(入門テキスト「測度と積分」、特に測度と積分7:局所コンパクトHausdorff空間上のRadon測度測度と積分9:Bochner積分の内容)、位相線形空間論(入門テキスト「位相線形空間」)、Banach環と$C^*$ -環のスペクトル理論(Banach環とC*-環のスペクトル理論)、Hilbert空間上の作用素論(Hilbert空間上の作用素論)である。
本稿ではHilbert空間と言えば、特に断ることのない限り $\mathbb{C}$ 上のものとする。また、Hilbert空間の内積は第二変数に関して線形とし、$\mathbb{N}=\{1,2,3,\ldots\}$、$\mathbb{Z}_+=\{0,1,2,3,\ldots\}$ とする。


1. 局所コンパクト群のHaar測度、モジュラー関数、$L^1$ 群環、測度群環

定義1.1(局所コンパクト群)

群 $G$ が局所コンパクト群であるとは、$G$ が局所コンパクトHausdorff空間であり、群演算 $$ G\times G\ni (x,y)\mapsto xy\in G,\quad G\ni x\mapsto x^{-1}\in G $$ が(直積位相に関して)連続であることを言う。特に離散位相による局所コンパクト群を離散群と言い、コンパクトな局所コンパクト群をコンパクト群と言う。以後、局所コンパクト群と言えば、特に断らない限り、第二可算公理を満たすものとする。

定義1.2

$G$ を群とする。$A,B\subset G$, $y\in G$ に対し、 $$ A^{-1}\colon=\{x^{-1}:x\in A\},\quad AB\colon =\{xy:x\in A,y\in B\}, $$ $$ yA\colon =\{yx:x\in A\},\quad Ay\colon=\{xy:x\in A\} $$ とおく。$A=A^{-1}$ であるとき $A$ は対称であると言う。$G$ 上で定義された関数 $f$ に対し $G$ 上で定義された関数 $L_yf, R_yf$ を、 $$ L_yf(x)\colon =f(y^{-1}x),\quad R_yf(x)\colon =f(xy)\quad(\forall x\in G) $$ として定義する。 $$ L_{y_1}L_{y_2}f=L_{y_1y_2}f,\quad R_{y_1}R_{y_2}f=R_{y_1y_2}f\quad(\forall y_1,y_2\in G) $$ であることに注意する。

命題1.3($C_0(G)$ の元の一様連続性)

$G$ を局所コンパクト群とし、$f\in C_0(G)$(無限遠で消える連続関数)とする。このとき、

  • $(1)$ 任意の $\epsilon\in G$ に対し、単位元 $1\in G$ の対称な近傍 $V$ が存在し、

$$ yx^{-1}\in V\quad \text{or}\quad x^{-1}y\in V\quad\Rightarrow\quad \lvert f(y)-f(x)\rvert<\epsilon $$ が成り立つ。

  • $(2)$ $G\ni y\mapsto L_yf\in C_0(G)$ は($\sup$ ノルムに関して)連続である。
  • $(3)$ $G\ni y\mapsto R_yf\in C_0(G)$ は($\sup$ ノルムに関して)連続である。
Proof.

  • $(1)$ 任意の $\epsilon\in (0,\infty)$ を取り固定する。$f$ は無限遠で消える連続関数(測度と積分7:局所コンパクトHausdorff空間上のRadon測度定義28.2)であるから $K\colon =(\lvert f\rvert\geq \frac{\epsilon}{2})$ はコンパクトである。$f$ は連続であるから、各 $x\in K$ に対し $1\in G$ の開近傍 $U_x$ で、

$$ \lvert f(y)-f(x)\rvert<\frac{\epsilon}{2}\quad(\forall y\in (U_x)x\cup x(U_x)) $$ を満たすものが取れる。$1\in G$ の対称開近傍 $V_x$ で $V_xV_x\subset U_x$ なるものを取る。[1]$K$ はコンパクトであるから有限個の $x_1,\ldots,x_n\in K$ が取れて、 $$ K\subset \bigcup_{j=1}^{n}((V_{x_j})x_j\cap x_j(V_{x_j})) $$ となる。$1\in G$ の対称開近傍 $$ V\colon=\bigcap_{j=1}^{n}V_{x_j} $$ を考える。今、$x,y\in G$ が $x^{-1}y\in V$ か $yx^{-1}\in V$ のいずれかを満たすとする。もし $x,y\notin K$ ならば $K$ の定義より、 $$ \lvert f(x)-f(y)\rvert\leq \lvert f(x)\rvert+\lvert f(y)\rvert<\epsilon $$ である。またもし $x\in K$ ならば、$x\in (V_{x_j})x_j\cap x_j(V_{x_j})$ なる $j\in \{1,\ldots,n\}$ が取れて、 $$ y=(yx^{-1})x=x(x^{-1}y)\in (VV_{x_j})x_j\cup x_j(V_{x_j}V)\subset (U_{x_j})x_j\cup x_j(U_{x_j}) $$ となる。よって、 $$ x,y\in (U_{x_j})x_j\cup x_j(U_{x_j}) $$ であるから、 $$ \lvert f(y)-f(x)\rvert\leq \lvert f(y)-f(x_j)\rvert+\lvert f(x_j)-f(x)\rvert<\epsilon\quad\quad(*) $$ が成り立つ。$V$ の対称性より $y^{-1}x=(x^{-1}y)^{-1}\in V$ か $xy^{-1}=(yx^{-1})^{-1}\in V$ のいずれかが成り立つので、$y\in K$ の場合も同様にして $(*)$ が成り立つことがわかる。これより $x,y\in G$ が $x^{-1}y\in V$ か $yx^{-1}\in V$ のいずれかを満たすとき $\lvert f(y)-f(x)\rvert<\epsilon$ が成り立つ。

  • $(2)$ 任意の $\epsilon\in (0,\infty)$ を取る。$(1)$ より $1\in G$ の近傍 $V$ で、

$$ y_1y_2^{-1}\in V\quad\Rightarrow\quad \lvert f(y_1)-f(y_2)\rvert\leq\epsilon $$ を満たすものが取れる。よって任意の $y_0\in G$ に対し $y_0$ の近傍 $y_0V$ を考えれば、任意の $y\in y_0V$ に対し、 $$ (y_0^{-1}x)(y^{-1}x)^{-1}=y_0^{-1}y\in V\quad(\forall x\in G) $$ であるから、 $$ \sup_{x\in G}\lvert L_{y_0}f(x)-L_yf(x)\rvert=\sup_{x\in G}\lvert f(y_0^{-1}x)-f(y^{-1}x)\rvert\leq\epsilon $$ となる。よって $G\ni y\mapsto L_yf\in C_0(G)$ は連続である。

  • $(3)$ 任意の $\epsilon\in (0,\infty)$ を取る。$(1)$ より $1\in G$ の近傍 $V$ で、

$$ y_1^{-1}y_2\in V\quad\Rightarrow\quad \lvert f(y_1)-f(y_2)\rvert\leq\epsilon $$ を満たすものが取れる。よって任意の $y_0\in G$ に対し $y_0$ の近傍 $y_0 V$ を考えれば、 任意の $y\in y_0V$ に対し、 $$ (xy_0)^{-1}(xy)=y_0^{-1}y\in V\quad(\forall x\in G) $$ であるから、 $$ \sup_{x\in G}\lvert R_{y_0}f(x)-R_yf(x)\rvert=\sup_{x\in G}\lvert f(xy_0)-f(xy)\rvert\leq\epsilon $$ となる。よって $G\ni y\mapsto R_yf\in C_0(G)$ は連続である。

定義1.4(Haar測度)

$G$ を局所コンパクト群とする。$G$ 上のRadon測度(測度と積分7:局所コンパクトHausdorff空間上のRadon測度定義29.3)$\mu\colon \mathcal{B}_G\rightarrow [0,\infty]$ が、 $$ \mu(G)>0,\quad \mu(yB)=\mu(B)\quad(\forall y\in G,\forall B\in \mathcal{B}_G) $$ を満たすとき、$\mu$ を $G$ 上の左Haar測度と言う。また $G$ 上のRadon測度 $\mu\colon \mathcal{B}_G\rightarrow [0,\infty]$ が、 $$ \mu(G)>0,\quad \mu(B)=\mu(By)\quad(\forall y\in G,\forall B\in \mathcal{B}_G) $$ を満たすとき、$\mu$ を $G$ 上の右Haar測度と言う。以後、左Haar測度のことを単にHaar測度と言う。

注意1.5(局所コンパクトHausdorff空間の第二可算性とRadon測度)

本稿においては局所コンパクト群は特に断らない限り第二可算公理を満たすとしているが、第二可算公理を満たす局所コンパクトHausdorff空間においては、Borel測度がRadon測度であるための必要十分条件は、任意のコンパクト集合に対して有限測度を与えることである(測度と積分7:局所コンパクトHausdorff空間上のRadon測度定理31.5)。また第二可算公理を満たす局所コンパクトHausdorff空間は $\sigma$-コンパクトである(測度と積分7:局所コンパクトHausdorff空間上のRadon測度命題31.2)ので、Radon測度は $\sigma$-有限である。

例1.6(Lebesgue測度、離散群の数え上げ測度はHaar測度)

  •  $\mathbb{R}^N$ は加法群として局所コンパクト群であり、Lebesgue測度の平行移動不変性より、$\mathbb{R}^N$ 上のLebesgue測度は $\mathbb{R}^N$ 上のHaar測度である。
  •  離散群 $G$ の数え上げ測度(測度と積分6:数え上げ測度と $\ell^p$ 空間定義24.1)はHaar測度である。

命題1.7(Haar測度による積分の左不変性)

$G$ を局所コンパクト群、$\mu\colon \mathcal{B}_G\rightarrow [0,\infty]$ を $G$ 上のHaar測度とする。このとき任意の非負値Borel関数 $f\colon G\rightarrow [0,\infty]$ と $y\in G$ に対し、 $$ \int_{G}L_yf(x)d\mu(x)=\int_{G}f(x)d\mu(x) $$ が成り立つ。

Proof.

非負値Borel関数の非負値Borel単関数による各点単調増加列による近似(測度と積分1:測度論の基礎用語定理5.5)より、$f$ がある $B\in \mathcal{B}_G$ の指示関数である、すなわち $f=\chi_B$ である場合を示せば十分であるが、Haar測度の定義より、 $$ \int_{G}L_y\chi_B(x)d\mu(x)=\int_{G}\chi_B(y^{-1}x)d\mu(x)=\int_{G}\chi_{yB}(x)d\mu(x)=\mu(yB)=\mu(B)=\int_{G}\chi_B(x)d\mu(x) $$ である。

命題1.8(空でない開集合のHaar測度は正)

$G$ を局所コンパクト群、$\mu\colon\mathcal{B}_G\rightarrow [0,\infty]$ をHaar測度とする。このとき任意の空でない開集合 $U\subset G$ に対し $\mu(U)>0$ が成り立つ。

Proof.

空でない開集合 $U\subset G$ で $\mu(U)=0$ なるものが存在すると仮定して矛盾を導く。任意のコンパクト集合 $K\subset G$ に対し、 $$ K\subset \bigcup_{x\in G}xU $$ であるから、有限個の $x_1,\ldots,x_n\in G$ が取れて、 $$ K\subset \bigcup_{j=1}^{n}x_jU $$ となる。よって、 $$ \mu(K)\leq \sum_{j=1}^{n}\mu(x_jU)=\sum_{j=1}^{n}\mu(U)=0 $$ となるので、Radon測度の内部正則性(測度と積分7:局所コンパクトHausdorff空間上のRadon測度定義29.3)より、 $$ \mu(G)=\sup\{\mu(K):\text{$K\subset G$ はコンパクト}\}=0 $$ となる。これはHaar測度の定義と矛盾する。


任意の局所コンパクト群がHaar測度を持つことと、それは正数倍を除いて一意的であること(定理1.13定理1.14)を示すため、いくつか準備をする。

定義1.9

$G$ を局所コンパクト群とする。 $$ C_{c,+}(G)\colon =\{f\in C_c(G):\forall x\in G,f(x)\geq0\},\quad C_{c,++}(G)\colon=C_{c,+}(G)\backslash \{0\} $$ とおく。Urysohnの補題(測度と積分7:局所コンパクトHausdorff空間上のRadon測度定理27.6)より $C_{c,++}(G)\neq \emptyset$ である。今、任意の $f,g\in C_{c,++}(G)$ に対し、 $$ (f,g)\colon=\inf\left\{\sum_{j=1}^{n}c_j:\begin{array}{l}&n\in \mathbb{N}, c_1,\ldots,c_n\in [0,\infty):\\&\exists x_1,\ldots,x_n\in G\text{ s.t. }\forall x\in G, f(x)\leq \sum_{j=1}^{n}c_jL_{x_j}g(x)\end{array}\right\}\quad\quad(*) $$ と定義する。ここで $(*)$ の右辺の集合は空ではない。実際、$0<\lVert g\rVert=\sup_{x\in G}g(x)$ より $U\colon=\left(\frac{\lVert g\rVert}{2}<g\right)$ は空ではない開集合であり、${\rm supp}(f)$ はコンパクトであるから、有限個の $x_1,\ldots,x_n\in G$ が存在し、 $$ {\rm supp}(f)\subset \bigcup_{j=1}^{n}x_jU $$ となる。そこで、 $$ c_j\colon=\frac{2\lVert f\rVert}{\lVert g\rVert}\quad(j=1,\ldots,n) $$ とおく。任意の $x\in {\rm supp}(f)$ に対し $x\in x_iU$ なる $i\in\{1,\ldots,n\}$ が取れて、 $$ f(x)\leq \lVert f\rVert=c_i\frac{\lVert g\rVert}{2}<c_ig(x_i^{-1}x)=c_iL_{x_i}g(x)\leq \sum_{j=1}^{n}c_jL_{x_j}g(x) $$ となる。よって $\sum_{j=1}^{n}c_j$ は $(*)$ の右辺の集合に属する。

補題1.10

定義1.9における $(f,g)$ について次が成り立つ。

  • $(1)$ 任意の $f,g\in C_{c,++}(G)$ に対し、$0<\frac{\lVert f\rVert}{\lVert g\rVert}<(f,g)$.
  • $(2)$ 任意の $f_1,f_2,g\in C_{c,++}(G)$ に対し、$(f_1+f_2,g)\leq (f_1,g)+(f_2,g)$.
  • $(3)$ 任意の $f,g\in C_{c,++}(G)$ と任意の $\alpha\in (0,\infty)$ に対し、$(\alpha f,g)=\alpha(f,g)$.
  • $(4)$ 任意の $f,g\in C_{c,++}(G)$ と任意の $y\in G$ に対し $(L_yf,g)=(f,g)$.
  • $(5)$ 任意の $f,g,h\in C_{c,++}(G)$ に対し、$(f,h)\leq (f,g)(g,h)$.
Proof.

  • $(1)$ $f(x)\leq \sum_{j=1}^{n}c_jL_{x_j}g(x)$ $(\forall x\in G)$ を満たす任意の有限個の $c_1,\ldots,c_n\in [0,\infty)$, $x_1,\ldots,x_n\in G$ を取る。このとき、

$$ f(x)\leq \sum_{j=1}^{n}c_jL_{x_j}g(x)\leq \sum_{j=1}^{n}c_j\lVert g\rVert\quad(\forall x\in G) $$ であるから $\lVert f\rVert\leq \sum_{j=1}^{n}c_j\lVert g\rVert$ である。よって $\frac{\lVert f\rVert}{\lVert g\rVert}\leq \sum_{j=1}^{n}c_j$ であるから $\frac{\lVert g\rVert}{\lVert f\rVert}\leq (f,g)$ である。

  • $(2)$ 定義1.9より明らかである。
  • $(3)$ 定義1.9より明らかである。
  • $(4)$ 定義1.9より明らかである。
  • $(5)$ $f(x)\leq \sum_{j=1}^{n}c_jL_{x_j}g(x)$ $(\forall x\in G)$ を満たす任意の有限個の $c_1,\ldots,c_n\in [0,\infty)$, $x_1,\ldots,x_n\in G$ と $g(x)\leq \sum_{k=1}^{m}d_kL_{y_k}h(x)$ $(\forall x\in G)$ を満たす任意の有限個の $d_1,\ldots,d_m\in [0,\infty)$ と $y_1,\ldots,y_m\in G$ を取る。このとき任意の $x\in G$ に対し、

$$ f(x)\leq \sum_{j=1}^{n}c_jL_{x_j}g(x)=\sum_{j=1}^{n}c_jg(x_j^{-1}x) \leq \sum_{j=1}^{n}\sum_{k=1}^{m}c_jd_kL_{y_k}h(x_j^{-1}x)=\sum_{j=1}^{n}\sum_{k=1}^{m}c_jd_kL_{x_jy_k}h(x) $$ であるから、$(f,h)\leq \sum_{j=1}^{n}c_j\sum_{k=1}^{m}d_k$ である。よって $(f,h)\leq (f,g)(g,h)$ が成り立つ。

定義1.11

任意の $f_0\in C_{c,++}(G)$ を取り固定する。そして任意の $\varphi\in C_{c,++}(G)$ に対し $\Lambda_{\varphi}\colon C_{c,++}(G)\rightarrow (0,\infty)$ を、 $$ \Lambda_{\varphi}(f)\colon=\frac{(f,\varphi)}{(f_0,\varphi)}\quad(\forall f\in C_{c,++}(G)) $$ (補題1.10の $(1)$ より右辺の分母は正であることに注意)として定義する。補題1.10より $\Lambda_{\varphi}\colon C_{c,++}(G)\rightarrow(0,\infty)$ は次を満たすことが直ちに分かる。

  • $(1)$ 任意の $f_1,f_2\in C_{c,++}(G)$ に対し、$\Lambda_{\varphi}(f_1+f_2)\leq \Lambda_{\varphi}(f_1)+\Lambda_{\varphi}(f_2)$.
  • $(2)$ 任意の $f\in C_{c,++}(G)$ と任意の $\alpha\in (0,\infty)$ に対し、$\Lambda_{\varphi}(\alpha f)=\alpha\Lambda_{\varphi}(f)$.
  • $(3)$ 任意の $f\in C_{c,++}(G)$ と任意の $y\in G$ に対し、$\Lambda_{\varphi}(L_yf)=\Lambda_{\varphi}(f)$.
  • $(4)$ 任意の $f\in C_{c,++}(G)$ に対し、$\frac{1}{(f_0,f)}\leq \Lambda_{\varphi}(f)\leq (f,f_0)$.

補題1.12

定義1.11で定義したものについて考える。任意の $f_1,f_2\in C_{c,++}(G)$ と任意の $\epsilon\in (0,\infty)$ に対し、単位元 $1\in G$ の開近傍 $U$ が存在し、 $$ \Lambda_{\varphi}(f_1)+\Lambda_{\varphi}(f_2)\leq \Lambda_{\varphi}(f_1+f_2)+\epsilon\quad(\forall \varphi\in C_{c,++}(G):{\rm supp}(\varphi)\subset U) $$ が成り立つ。

Proof.

Urysohnの補題(測度と積分7:局所コンパクトHausdorff空間上のRadon測度定義27.6)により ${\rm supp}(f_1+f_2)\subset (g>0)$ なる $g\in C_{c,++}(G)$ を取る。そして任意の $\delta\in (0,\infty)$ を取り固定する。 $$ h\colon =f_1+f_2+\delta g\in C_{c,++}(G) $$ とおき、$h_1,h_2\colon G\rightarrow [0,\infty)$ を、 $$ h_k(x)\colon=\begin{cases}\frac{f_k(x)}{h(x)}\quad&(x\in (h>0))\\ 0&(x\notin (h>0))\end{cases}\quad(k=1,2) $$ と定義する。${\rm supp}(f_k)\subset {\rm supp}(f_1+f_2)\subset (g>0)\subset (h>0)$ より、 $$ G=(h>0)\cup (G\backslash {\rm supp}(f_k))\quad(k=1,2) $$ であり、 $$ h_k(x)=0\quad(\forall x\in G\backslash {\rm supp}(f_k))\quad(k=1,2) $$ であるから、$h_1,h_2\in C_{c,+}(G)$ である。また、 $$ 0\leq h_1(x)+h_2(x)\leq 1,\quad f_1(x)=h_1(x)h(x),\quad f_2(x)=h_2(x)h(x)\quad(\forall x\in G)\quad\quad(*) $$ である。命題1.3より $1\in G$ の開近傍 $U$ で、 $$ x^{-1}y\in U\quad\Rightarrow\quad \lvert h_k(x)-h_k(y)\rvert<\frac{\delta}{2}\quad(k=1,2)\quad\quad(**) $$ を満たすものが取れる。${\rm supp}(\varphi)\subset U$ を満たす任意の $\varphi\in C_{c,++}(G)$ を取る。 $$ h(x)\leq \sum_{j=1}^{n}c_jL_{x_j}\varphi(x)\quad(\forall x\in G) $$ を満たす任意の有限個の $c_1,\cdots,c_n\in [0,\infty)$ と $x_1,\ldots,x_n\in G$ に対し、${\rm supp}(\varphi)\subset U$ と $(**)$ より、 $$ f_k(x)=h_k(x)h(x)\leq \sum_{j=1}^{n}c_jh_k(x)\varphi(x_j^{-1}x)\leq \sum_{j=1}^{n}c_j\left(h_k(x_j)+\frac{\delta}{2}\right)L_{x_j}\varphi(x)\quad(\forall x\in G,k=1,2) $$ であるから、 $$ (f_k,\varphi)\leq \sum_{j=1}^{n}c_j\left(h_k(x_j)+\frac{\delta}{2}\right)\quad(l=1,2). $$ よって $(*)$ より、 $$ (f_1,\varphi)+(f_2,\varphi)\leq \sum_{j=1}^{n}c_j(h_1(x_j)+h_2(x_j)+\delta)\leq (1+\delta)\sum_{j=1}^{n}c_j. $$ ゆえに、 $$ (f_1,\varphi)+(f_2,\varphi)\leq (1+\delta)(h,\varphi). $$ したがって、 $$ \Lambda_{\varphi}(f_1)+\Lambda_{\varphi}(f_2)\leq (1+\delta)\Lambda_{\varphi}(h)\quad\quad(***) $$ が成り立つ。定義1.11における $(1)\sim(4)$ より、 $$ \begin{aligned} (1+\delta)\Lambda_{\varphi}(h)&=(1+\delta)\Lambda_{\varphi}(f_1+f_2+\delta g)\leq (1+\delta)\Lambda_{\varphi}(f_1+f_2)+(1+\delta)\delta\Lambda_{\varphi}(g)\\ &\leq \Lambda_{\varphi}(f_1+f_2)+\delta(f_1+f_2,f_0)+(1+\delta)\delta(g,f_0)\quad\quad(****) \end{aligned} $$ であるから、 $$ \delta(f_1+f_2,f_0)+(1+\delta)\delta(g,f_0)\leq \epsilon $$ となるように $\delta$ を取っておけば、$(***), (****)$ より、 $$ \Lambda_{\varphi}(f_1)+\Lambda_{\varphi}(f_2)\leq \Lambda_{\varphi}(f_1+f_2)+\epsilon $$ となる。

定理1.13(Haar測度の存在)

任意の局所コンパクト群はHaar測度を持つ。

Proof.

$G$ を任意の局所コンパクト群とする。定義1.9定義1.11における記号を用いる。各 $f\in C_{c,++}(G)$ に対し $\mathbb{R}$ の有界閉区間 $[(f_0,f)^{-1},(f,f_0)]$ はコンパクトであるから、Tychonoffの定理(ネットによる位相空間論定理7.5)より直積位相空間 $$ X\colon =\prod_{f\in C_{c,++}(G)}[(f_0,f)^{-1},(f,f_0)] $$ はコンパクトである。定義1.11の $(4)$ より、 $$ \Lambda_{\varphi}=(\Lambda_{\varphi}(f))_{f\in C_{c,++}(G)}\in X\quad(\forall\varphi\in C_{c,++}(G)) $$ である。単位元 $1\in G$ の任意の開近傍 $U$ に対し、 $$ K(U)\colon=\{\Lambda_{\varphi}:\varphi\in C_{c,++}(G),{\rm supp}(\varphi)\subset U\}\subset X $$ と定義すると、Urysohnの補題(測度と積分7:局所コンパクトHausdorff空間上のRadon測度定理27.6)より $K(U)\neq \emptyset$ である。$U_1\subset U_2$ ならば $K(U_1)\subset K(U_2)$ であるから、$X$ のコンパクト性より、 $$ \Lambda\in \bigcap_{\text{$U$ は $1\in G$ の開近傍}}\overline{K(U)} $$ が存在する。$1\in G$ の任意の開近傍 $U$ に対し $\Lambda\in \overline{K(U)}$ であるから、直積位相の定義(ネットによる位相空間論定義7.3)より、任意の $\epsilon\in (0,\infty)$ と任意の有限個の $f_1,\ldots,f_n\in C_{c,++}(G)$ に対し、${\rm supp}(\varphi)\subset U$ なる $\varphi\in C_{c,++}(G)$ が存在し、 $$ \lvert \Lambda(f_j)-\Lambda_{\varphi}(f_j)\rvert<\epsilon\quad(j=1,\ldots,n) $$ が成り立つ。このことと定義1.11における $(1)\sim (4)$ より、

  • $(1)$ 任意の $f_1,f_2\in C_{c,++}(G)$ に対し、$\Lambda(f_1+f_2)\leq \Lambda(f_1)+\Lambda(f_2)$.
  • $(2)$ 任意の $f\in C_{c,++}(G)$ と任意の $\alpha\in(0,\infty)$ に対し、$\Lambda(\alpha f)=\alpha\Lambda(f)$.
  • $(3)$ 任意の $f\in C_{c,++}(G)$ と任意の $y\in G$ に対し、$\Lambda(L_yf)=\Lambda(f)$.
  • $(4)$ 任意の $f\in C_{c,++}(G)$ に対し、$\Lambda(f)>0$.

が成り立つことが分かる。さらに補題1.12より、

  • $(5)$ 任意の $f_1,f_2\in C_{c,++}(G)$ に対し、$\Lambda(f_1)+\Lambda(f_2)\leq\Lambda(f_1+f_2)$.

も成り立つことが分かる。$\Lambda(0)\colon=0$ とおいて $\Lambda$ を $C_{c,+}(G)=C_{c,++}(G)\cup \{0\}$ まで拡張し、さらに任意の $f\in C_{c,\mathbb{R}}(G)$($G$ 上の台がコンパクトな実数値連続関数)に対し、 $$ \Lambda(f)\colon=\Lambda(f_+)-\Lambda(f_-)\quad(f_{\pm}={\rm max}(\pm f,0)\in C_{c,+}(G)) $$ として $\Lambda$ を $C_{c,\mathbb{R}}(G)$ まで拡張すると、$(1),(2),(5)$ より $\Lambda\colon C_{c,\mathbb{R}}(G)\rightarrow \mathbb{R}$ はRadon汎関数(測度と積分7:局所コンパクトHausdorff空間上のRadon測度定義30.2)となる。[2]よってRiesz-Markov-角谷の表現定理(測度と積分7:局所コンパクトHausdorff空間上のRadon測度定理30.4)よりRadon測度(測度と積分7:局所コンパクトHausdorff空間上のRadon測度定義29.3)$\mu\colon \mathcal{B}_G\rightarrow [0,\infty]$ で、 $$ \Lambda(f)=\int_{G}f(x)d\mu(x)\quad(\forall f\in C_{c,\mathbb{R}}(G)) $$ を満たすものが唯一つ存在する。$(3)$ と測度と積分7:局所コンパクトHausdorff空間上のRadon測度命題29.4より、任意の $y\in G$ と任意の開集合 $U\subset G$ に対し、 $$ \mu(yU)=\sup\{\Lambda(f):f\prec yU\}=\sup\{\Lambda(L_yf):f\prec U\} =\sup\{\Lambda(f):f\prec U\}=\mu(U) $$ が成り立つので、Radon測度 $\mu$ の外部正則性より、任意の $y\in G$ と任意の $B\in \mathcal{B}_G$ に対し、 $$ \mu(yB)=\inf\{\mu(yU):\text{$U\supset B$ は開集合}\}=\inf\{\mu(U):\text{$U\supset B$ は開集合}\}=\mu(B) $$ が成り立つ。また $(4)$ より $\mu(G)>0$ である。よって $\mu$ は $G$ のHaar測度である。

定理1.14(Haar測度の一意性)

局所コンパクト群のHaar測度は正数倍を除いて一意的である。すなわち $\mu_1,\mu_2\colon \mathcal{B}_G\rightarrow [0,\infty]$ がいずれも局所コンパクト群のHaar測度であるならば、ある正数 $c$ が存在し、$\mu_1(B)=c\mu_2(B)$ $(\forall B\in\mathcal{B}_G)$ が成り立つ。

Proof.

Radon測度の外部正則性(測度と積分7:局所コンパクトHausdorff空間上のRadon測度定義29.3)と測度と積分7:局所コンパクトHausdorff空間上のRadon測度命題29.4より、ある正数 $c$ に対し、 $$ \int_{G}f(x)d\mu_1(x)=c\int_{G}f(x)d\mu_2(x)\quad(\forall f\in C_{c,++}(G)) $$ が成り立つことを示せば十分である。そのためには任意の $f,g\in C_{c,++}(G)$ に対し、 $$ \frac{\int_{G}f(x)d\mu_1(x)}{\int_{G}f(y)d\mu_2(y)}=\frac{\int_{G}g(x)d\mu_1(x)}{\int_{G}g(y)d\mu_2(y)}\quad\quad(*) $$ が成り立つことを示せばよい。[3]そこで任意の $f,g\in C_{c,++}(G)$ を取り固定する。また単位元 $1\in G$ のコンパクトな対称近傍 $V$ を取り固定する。このとき、 $$ A\colon=V{\rm supp}(f)\cup {\rm supp}(f)V,\quad B\colon=V{\rm supp}(g)\cup {\rm supp}(g)V $$ はそれぞれコンパクトであり、 $$ {\rm supp}(R_yf-L_{y^{-1}}f)\subset A,\quad {\rm supp}(R_yg-L_{y^{-1}g})\subset B\quad(\forall y\in V)\quad\quad(**) $$ が成り立つ。命題1.3より任意の正数 $\epsilon$ に対し $1\in G$ の対称近傍 $V_0\subset V$ で、 $$ \lvert f(xy)-f(yx)\rvert<\epsilon,\quad \lvert g(xy)-g(yx)\rvert<\epsilon\quad(\forall y\in V_0,\forall x\in G)\quad\quad(***) $$ を満たすものが取れる。Urysohnの補題(測度と積分7:局所コンパクトHausdorff空間上のRadon測度定理27.6)により ${\rm supp}(h_0)\subset V_0$ なる $h_0\in C_{c,++}(G)$ を取り、 $$ h(x)\colon=\frac{1}{2}(h_0(x)+h_0(x^{-1}))\quad(\forall x\in G) $$ とおく。このとき $h(x^{-1})=h(x)$ $(\forall x\in G)$ であり、$V_0$ の対称性より ${\rm supp}(h)\subset {\rm supp}(h_0)\cup {\rm supp}(h_0)^{-1}\subset V_0$ である。Haar測度による積分の性質(命題1.7)より、 $$ \begin{aligned} \left(\int_{G}f(x)d\mu_1(x)\right)\left(\int_{G}h(y)d\mu_2(y)\right) &=\int_{G}\left(\int_{G}f(x)h(y)d\mu_1(x)\right)d\mu_2(y)\\ &=\int_{G}\left(\int_{G}f(yx)h(y)d\mu_1(x)\right)d\mu_2(y) \end{aligned} $$ であり、$h(y^{-1}x)=h((x^{-1}y)^{-1})=h(x^{-1}y)$ $(\forall x,y\in G)$ であることとFubiniの定理より、 $$ \begin{aligned} &\left(\int_{G}h(x)d\mu_1(x)\right)\left(\int_{G}f(y)d\mu_2(y)\right)=\int_{G}\left(\int_{G}h(x)f(y)d\mu_1(x)\right)d\mu_2(y)\\ &=\int_{G}\left(\int_{G}h(y^{-1}x)f(y)d\mu_1(x)\right)d\mu_2(y)=\int_{G}\left(\int_{G}h(x^{-1}y)f(y)d\mu_1(x)\right)d\mu_2(y)\\ &=\int_{G}\left(\int_{G}h(x^{-1}y)f(y)d\mu_2(y)\right)d\mu_1(x)=\int_{G}\left(\int_{G}h(y)f(xy)d\mu_2(y)\right)d\mu_1(x)\\ &=\int_{G}\left(\int_{G}h(y)f(xy)d\mu_1(x)\right)d\mu_2(y) \end{aligned} $$ であるから、 $$ \begin{aligned} &\left(\int_{G}f(x)d\mu_1(x)\right)\left(\int_{G}h(y)d\mu_2(y)\right)-\left(\int_{G}h(x)d\mu_1(x)\right)\left(\int_{G}f(y)d\mu_2(y)\right)\\ &=\int_{G}h(y)\left(\int_{G}(f(yx)-f(xy))d\mu_1(x)\right)d\mu_2(y) \end{aligned} $$ が成り立つ。よって ${\rm supp}(h)\subset V_0\subset V$ であることと $(**),(***)$ より、 $$ \begin{aligned} &\left\lvert \left(\int_{G}f(x)d\mu_1(x)\right)\left(\int_{G}h(y)d\mu_2(y)\right)-\left(\int_{G}h(x)d\mu_1(x)\right)\left(\int_{G}f(y)d\mu_2(y)\right)\right\rvert\\ &\leq \int_{G}h(y)\left(\int_{G}\lvert f(yx)-f(xy)\rvert d\mu_1(x)\right)d\mu_2(y)\\ &\leq \int_{G}h(y)\left(\int_{G}\epsilon\chi_A(x)d\mu_1(x)\right)d\mu_2(y) =\epsilon\mu_1(A)\int_{G}h(y)d\mu_2(y) \end{aligned} $$ であるから、両辺を $\left(\int_{G}f(y)d\mu_2(y)\right)\left(\int_{G}h(y)d\mu_2(y)\right)$ で割って、 $$ \left\lvert \frac{\int_{G}f(x)d\mu_1(x)}{\int_{G}f(y)d\mu_2(y)}-\frac{\int_{G}h(x)d\mu_1(x)}{\int_{G}h(y)d\mu_2(y)}\right\rvert\leq \left(\frac{\mu_1(A)}{\int_{G}f(y)d\mu_2(y)}\right)\epsilon $$ を得る。全く同様にして、 $$ \left\lvert \frac{\int_{G}g(x)d\mu_1(x)}{\int_{G}g(y)d\mu_2(y)}-\frac{\int_{G}h(x)d\mu_1(x)}{\int_{G}h(y)d\mu_2(y)}\right\rvert\leq \left(\frac{\mu_1(B)}{\int_{G}g(y)d\mu_2(y)}\right)\epsilon $$ が成り立つことも示せる。よって、 $$ \left\lvert \frac{\int_{G}f(x)d\mu_1(x)}{\int_{G}f(y)d\mu_2(y)}-\frac{\int_{G}g(x)d\mu_1(x)}{\int_{G}g(y)d\mu_2(y)}\right\rvert\leq\left(\frac{\mu_1(A)}{\int_{G}f(y)d\mu_2(y)}+\frac{\mu_1(B)}{\int_{G}g(y)d\mu_2(y)}\right) \epsilon $$ が成り立つ。ここで $\epsilon$ は $f,g,A,B$ によらない任意の正数であるから $(*)$ が成り立つ。

定義1.15(局所コンパクト群のモジュラー関数)

$G$ を局所コンパクト群、$\mu\colon \mathcal{B}_G\rightarrow [0,\infty]$ を $G$ のHaar測度とする。任意の $x\in G$ に対し、 $$ \mathcal{B}_G\ni B\mapsto \mu(Bx)\in [0,\infty] $$ も $G$ のHaar測度であるから、定理1.14より、$\Delta\colon G\rightarrow (0,\infty)$ で、 $$ \mu(Bx)=\Delta(x)\mu(B)\quad(\forall B\in \mathcal{B}_G,\forall x\in G) $$ を満たすものが定まる。$\Delta\colon G\rightarrow (0,\infty)$ を $G$ のモジュラー関数と言う。
定理1.14より、局所コンパクト群に対し、そのモジュラー関数は一意的に定まる。

命題1.16(モジュラー関数の基本性質)

$G$ を局所コンパクト群、$\mu\colon \mathcal{B}_G\rightarrow [0,\infty]$ を $G$ のHaar測度、$\Delta\colon G\rightarrow (0,\infty)$ を $G$ のモジュラー関数とする。このとき、

  • $(1)$ 任意の非負値Borel関数 $f\colon G\rightarrow [0,\infty]$ と任意の $y\in G$ に対し、

$$ \Delta(y)\int_{G}f(x)d\mu(x)=\int_{G}f(xy^{-1})d\mu(x) $$ が成り立つ。

  • $(2)$ $\Delta\colon G\rightarrow (0,\infty)$ は $G$ から乗法群 $(0,\infty)$ への連続な群準同型写像である。
  • $(3)$ 任意の非負値Borel関数 $f\colon G\rightarrow [0,\infty]$ に対し、

$$ \int_{G}f(x)\Delta(x^{-1})d\mu(x)=\int_{G}f(x^{-1})d\mu(x) $$ が成り立つ。

Proof.

  • $(1)$ 非負値Borel関数の非負値Borel単関数の各点単調増加列による近似(測度と積分1:測度論の基礎用語定理5.5)より、$f$ がある $B\in \mathcal{B}_G$ の指示関数である、すなわち $f=\chi_B$ である場合を示せば十分であるが、

$$ \int_{G}\chi_B(xy^{-1})d\mu(x)=\int_{G}\chi_{By}(x)d\mu(x)=\mu(By)=\Delta(y)\mu(B)=\Delta(y)\int_{G}\chi_B(x)d\mu(x) $$ であるから成り立つ。

  • $(2)$ 閉包がコンパクトな空でない開集合 $U$ を取る。命題1.8より、

$$ 0<\mu(U)\leq \mu(\overline{U})<\infty\quad\quad(*) $$ である。任意の $x,y\in G$ に対し、 $$ \Delta(xy)\mu(U)=\mu(Uxy)=\Delta(y)\mu(Ux)=\Delta(x)\Delta(y)\mu(U) $$ であるから $(*)$ より $\Delta(xy)=\Delta(x)\Delta(y)$ である。よって $\Delta\colon G\rightarrow (0,\infty)$ は $G$ から乗法群 $(0,\infty)$ への群準同型写像である。$\Delta\colon G\rightarrow(0,\infty)$ が連続であることを示す。群準同型性より単位元 $1\in G$ において連続であることを示せば十分である。任意の $f\in C_{c,+}(G)\backslash \{0\}$ と $1\in G$ の任意のコンパクト近傍 $V_0\subset G$ を取り固定する。命題1.3より、任意の正数 $\epsilon$ に対し、$1\in G$ の十分小さい近傍 $V\subset V_0$ を取れば、 $$ y\in V\quad\Rightarrow\quad\lvert f(xy^{-1})-f(x)\rvert\leq \epsilon\quad(\forall x\in G) $$ となる。 $$ {\rm supp}(R_{y^{-1}}f)\subset {\rm supp}(f)V\subset {\rm supp}(f)V_0\quad(\forall y\in V) $$ であるから、 $$ \lvert f(xy^{-1})-f(x)\rvert\leq\epsilon\chi_{{\rm supp}(f)V_0}(x)\quad(\forall x\in G,\forall y\in V) $$ なので、$(1)$ より任意の $y\in V$ に対し、 $$ \begin{aligned} &\lvert \Delta(y)-1\rvert\int_{G}f(x)d\mu(x)=\left\lvert\int_{G}f(xy^{-1})-f(x)d\mu(x)\right\rvert\\ &\leq \int_{G}\lvert f(xy^{-1})-f(x)\rvert d\mu(x)\leq\epsilon\mu({\rm supp}(f)V_0)\quad\quad(**) \end{aligned} $$ となる。$f\in C_{c,+}(G)\backslash \{0\}$ であるから命題1.8より $\int_{G}f(x)d\mu(x)\in (0,\infty)$ である。よって $(**)$ より、 $$ y\in V\quad\Rightarrow\quad \lvert \Delta(y)-1\rvert\leq \epsilon\mu({\rm supp}(f)V_0)\left(\int_{G}f(x)d\mu(x)\right)^{-1} $$ が成り立つ。${\rm supp}(f)V_0$ はコンパクトなので $\mu({\rm supp}(f)V_0)<\infty$ であり、$\epsilon$ は $f,V_0$ によらない任意の正数なので、$\Delta\colon G\rightarrow(0,\infty)$ は $1\in G$ において連続である。

  • $(3)$ 非負値Borel関数の非負値Borel単関数の各点単調増加列による近似(測度と積分1:測度論の基礎用語定理5.5)より、$f$ がある $B\in \mathcal{B}_G$ の指示関数である($f=\chi_B$)場合を示せば十分である。すなわち、

$$ \int_{G}\chi_B(x)\Delta(x^{-1})d\mu(x)=\mu(B^{-1})\quad(\forall B\in\mathcal{B}_G) $$ を示せばよい。Borel測度 $\nu\colon \mathcal{B}_G\rightarrow [0,\infty]$ を、 $$ \nu(B)\colon=\int_{G}\chi_{B^{-1}}(x)\Delta(x^{-1})d\mu(x)\quad(\forall B\in \mathcal{B}_G) $$ として定義し、$\nu(B)=\mu(B)$ $(\forall B\in\mathcal{B}_G)$ が成り立つことを示せばよい。$(2)$ より $G\ni x\mapsto \Delta(x)^{-1}\in (0,\infty)$ は連続であるから任意のコンパクト集合 $K\subset G$ に対し、 $$ \nu(K)=\int_{G}\chi_{K^{-1}}(x)\Delta(x^{-1})d\mu(x)<\infty $$ である。よって $G$ の第二可算性と測度と積分7:局所コンパクトHausdorff空間上のRadon測度定理35.1より $\nu\colon \mathcal{B}_G\rightarrow [0,\infty]$ はRadon測度である。$\Delta\colon G\rightarrow (0,\infty)$ の群準同型性と $(1)$ より、任意の $y\in G$, $B\in \mathcal{B}_G$ に対し、 $$ \begin{aligned} \nu(yB)&=\int_{G}\chi_{(yB)^{-1}}(x)\Delta(x^{-1})d\mu(x)=\int_{G}\chi_{B^{-1}}(xy)\Delta(x)^{-1}d\mu(x)\\ &=\Delta(y)\int_{G}\chi_{B^{-1}}(xy)\Delta(xy)^{-1}d\mu(x)=\int_{G}\chi_{B^{-1}}(x)\Delta(x)^{-1}d\mu(x)=\nu(B) \end{aligned} $$ であるから $\nu$ は $G$ のHaar測度である。よって定理1.14よりある正数 $c$ が存在し $\nu(B)=c\mu(B)$ $(\forall B\in \mathcal{B}_G)$ が成り立つ。$c=1$ であることを示せばよい。そこで $c\neq 1$ であると仮定して矛盾を導く。このとき $\Delta\colon G\rightarrow (0,\infty)$ の連続性より単位元 $1\in G$ のコンパクト対称近傍 $V$ で、 $$ \lvert \Delta(x^{-1})-1\rvert<\frac{1}{2}\lvert c-1\rvert\quad(\forall x\in G) $$ を満たすものが取れる。命題1.8と $V$ のコンパクト性より、 $$ 0<\mu(V)<\infty $$ であり、$V$ の対称性より、 $$ \lvert c-1\rvert \mu(V)=\lvert \nu(V)-\mu(V)\rvert=\left\lvert\int_{G}\chi_V(x)(\Delta(x^{-1})-1)d\mu(x)\right\rvert\leq \frac{1}{2}\lvert c-1\rvert\mu(V) $$ である。よって、 $$ \lvert c-1\rvert\leq \frac{1}{2}\lvert c-1\rvert $$ が結論され、$c\neq 1$ と言う仮定に矛盾する。ゆえに $c=1$ である。

定義1.17(ユニモジュラー)

局所コンパクト群がユニモジュラーであるとは、そのモジュラー関数が恒等的に $1$ であること、すなわち、Haar測度が右Haar測度(定義1.4)でもあることを言う。

命題1.18(局所コンパクト可換群、離散群、コンパクト群はユニモジュラー)

局所コンパクト可換群、離散群、コンパクト群はいずれもユニモジュラーである。

Proof.

局所コンパクト可換群のHaar測度は可換性より右Haar測度でもあり、離散群のHaar測度は数え上げ測度の正数倍であるから右Haar測度である。よって局所コンパクト可換群と離散群はユニモジュラーである。コンパクト群がユニモジュラーであることを示す。$G$ をコンパクト群、$\Delta\colon G\rightarrow(0,\infty)$ を $G$ のモジュラー関数とする。命題1.16の $(2)$ より $\Delta\colon G\rightarrow(0,\infty)$ は連続であるから、$G$ のコンパクト性よりある有界閉区間 $[a,b]\subset(0,\infty)$ が存在し、 $$ \Delta(x)\in [a,b]\quad(\forall x\in G)\quad\quad(*) $$ が成り立つ。任意の $x\in G$ を取る。命題1.16の $(2)$ より $\Delta\colon G\rightarrow(0,\infty)$ は群準同型写像であるから、$(*)$ より、 $$ \Delta(x)^n=\Delta(x^n)\in [a,b]\quad(\forall n\in \mathbb{N}) $$ が成り立つ。これは $\Delta(x)=1$ を意味する。よってコンパクト群はユニモジュラーである。

命題1.19(平行移動の $L^p$ ノルムに関する連続性)

$G$ を局所コンパクト群、$\mu\colon \mathcal{B}_G\rightarrow [0,\infty]$ をHaar測度、$p\in [1,\infty)$ とする。このとき任意の $[f]\in L^p(G,\mu)$ に対し、 $$ G\ni y\mapsto L_y[f]\colon=[L_yf]\in L^p(G,\mu) $$ は $L^p$ ノルムで連続である。

Proof.

Haar測度による積分の左不変性(命題1.7)より任意の $[f]\in L^p(G,\mu)$ に対し、 $$ \lVert L_y[f]\rVert_p=\lVert [f]\rVert_p\quad(\forall y\in G) $$ である。また $\mu$ はRadon測度なので測度と積分7:局所コンパクトHausdorff空間上のRadon測度命題32.1より $L^p(G,\mu)$ において $C_c(G)$ は稠密である。よって任意の $f\in C_c(G)$ に対し、 $$ G\ni y\mapsto L_yf\in L^p(G,\mu)\quad\quad(*) $$ が $L^p$ ノルムで連続であることを示せば十分である。$L_{y_1}L_{y_2}f=L_{y_1y_2}f$ $(\forall y_1,y_2\in G)$ であるから、単位元 $1\in G$ における連続性を示せば十分である。$1\in G$ のコンパクト近傍 $V_0$ を取り固定する。任意の正数 $\epsilon$ に対し、命題1.3より、$1\in G$ の近傍 $V\subset V_0$ で、 $$ y\in V\quad\Rightarrow\quad\lvert L_yf(x)-f(x)\rvert\leq \epsilon\quad(\forall x\in G) $$ なるものが取れる。 $$ {\rm supp}(L_yf-f)\subset V{\rm supp}(f)\subset V_0{\rm supp}(f)\quad(\forall y\in V) $$ であるから、 $$ \lvert L_yf(x)-f(x)\rvert \leq \epsilon\chi_{V_0{\rm supp}(f)}(x)\quad(\forall y\in V,\forall x\in G) $$ なので、任意の $y\in V$ に対し、 $$ \lVert L_yf-f\rVert_p=\left(\int_{G}\lvert L_yf(x)-f(x)\rvert^pd\mu(x)\right)^{\frac{1}{p}}\leq \epsilon\mu(V_0{\rm supp}(f))^{\frac{1}{p}} $$ が成り立つ。$V_0{\rm supp}(f)$ はコンパクトであるから $\mu(V_0{\rm supp}(f))^{\frac{1}{p}}<\infty$ であり、$\epsilon$ は $f,V_0$ によらない任意の正数なので $(*)$ は $1\in G$ において $L^p$ ノルムで連続である。

定義1.20(局所コンパクト群における $L^1$ と $L^p$ の合成積)

$G$ を局所コンパクト群、$\mu\colon\mathcal{B}_G\rightarrow [0,\infty]$ を $G$ のHaar測度、$p\in [1,\infty)$ とする。任意の $[g]\in L^p(G,\mu)$ に対し命題1.19より、 $$ G\ni y\mapsto L_y[g]\in L^p(G,\mu) $$ はBanach空間 $L^p(G,\mu)$ 値の有界連続関数である。また $G$ の第二可算性よりBanach空間 $L^p(G,\mu)$ は可分である(測度と積分7:局所コンパクトHausdorff空間上のRadon測度系35.7)から、任意の $[f]\in L^1(G,\mu)$ に対し $L^p(G,\mu)$ 値関数 $$ G\ni y\mapsto f(y)L_y[g]\in L^p(G,\mu) $$ は $\mu$ に関してBochner積分可能(測度と積分9:Bochner積分定義44.1)である。そこで任意の $[f]\in L^1(G,\mu)$ と $[g]\in L^p(G,\mu)$ に対しBochner積分により、 $$ [f]*[g]\colon=\int_{G}f(y)L_y[g]d\mu(y)\in L^p(G,\mu) $$ と定義する。これを $[f]\in L^1(G,\mu)$ と $[g]\in L^p(G,\mu)$ の合成積と言う。$\mu(B)<\infty$ となる任意の $B\in \mathcal{B}_G$ に対しHölderの不等式より、 $$ L^p(G,\mu)\ni [h]\mapsto \int_{B}h(x)d\mu(x)\in \mathbb{C} $$ はBanach空間 $L^p(G,\mu)$ 上の有界線形汎関数であるから、Bochner積分の性質(測度と積分9:Bochner積分命題44.2)とFubiniの定理より、 $$ \int_{B}([f]*[g])(x)d\mu(x)=\int_{G}\left(\int_{B}f(y)g(y^{-1}x)d\mu(x)\right)d\mu(y)=\int_{B}\left(\int_{G}f(y)g(y^{-1}x)d\mu(y)\right)d\mu(x) $$ となる。よって $\mu$ の $\sigma$-有限性より $[f]*[g]$は $\mu$ - a.e. $x\in G$ で、 $$ \int_{G}f(y)g(y^{-1}x)d\mu(y)\in \mathbb{C} $$ と一致する。

定義1.21(局所コンパクト群における $L^1$ と $C_0$ の合成積)

$G$ を局所コンパクト群、$\mu\colon\mathcal{B}_G\rightarrow [0,\infty]$ を $G$ のHaar測度とする。任意の $g\in C_0(G)$ に対し命題1.3より、 $$ G\ni y\mapsto L_yg\in C_0(G) $$ は $\sup$ ノルムによるBanach空間 $C_0(G)$ 値の有界連続関数である。また $G$ の第二可算性よりBanach空間 $C_0(G)$ は可分である(測度と積分7:局所コンパクトHausdorff空間上のRadon測度系35.6)から、任意の $[f]\in L^1(G,\mu)$ に対し $C_0(G)$ 値関数 $$ G\ni y\mapsto f(y)L_yg\in C_0(G) $$ は $\mu$ に関してBochner積分可能(測度と積分9:Bochner積分定義44.1)である。そこで任意の $[f]\in L^1(G,\mu)$ と $g\in C_0(G)$ に対しBochner積分により、 $$ [f]*g\colon=\int_{G}f(y)L_yg d\mu(y)\in C_0(G) $$ と定義する。これを $[f]\in L^1(G,\mu)$ と $g\in C_0(G)$ の合成積と言う。任意の $x\in G$ に対し、 $$ \delta_x\colon C_0(G)\ni h\mapsto h(x)\in \mathbb{C} $$ はBanach空間 $C_0(G)$ 上の有界線形汎関数であるから、Bochner積分の性質(測度と積分9:Bochner積分命題44.2)より、 $$ ([f]*g)(x)=\delta_x([f]*g)=\int_{G}f(y)\delta_x(L_yg)d\mu(y)=\int_{G}f(y)g(y^{-1}x)d\mu(y) $$ である。

命題1.22(Youngの不等式)

$G$ を局所コンパクト群、$\mu\colon\mathcal{B}_G\rightarrow [0,\infty]$ を $G$ のHaar測度、$p\in [1,\infty)$ とする。このとき、

  • $(1)$ 任意の $[f]\in L^1(G,\mu)$, $[g]\in L^p(G,\mu)$ に対し、

$$ \lVert [f]*[g]\rVert_p\leq \lVert [f]\rVert_1\lVert [g]\rVert_p $$ が成り立つ。

  • $(2)$ 任意の $[f]\in L^1(G,\mu)$, $g\in C_0(G)$ に対し、

$$ \lVert [f]*g\rVert \leq \lVert [f]\rVert_1\lVert g\rVert $$ が成り立つ。

Proof.

$$ \lVert [f]*[g]\rVert_p=\left\lVert \int_{G}f(y)L_y[g]d\mu(y)\right\rVert_p \leq \int_{G}\lVert f(y)L_y[g]\rVert_pd\mu(y)=\lVert [f]\rVert_1\lVert [g]\rVert_p. $$

  • $(2)$ 合成積の定義(定義1.21)とBochner積分の基本性質より、

$$ \lVert [f]*g\rVert=\left\lVert \int_{G}f(y)L_ygd\mu(y)\right\rVert\leq \int_{G}\lVert f(y)L_yg\rVert d\mu(y)=\lVert [f]\rVert_1\lVert g\rVert. $$

定義1.23($L^1$ 群環)

$G$ を局所コンパクト群、$\mu\colon \mathcal{B}_G\rightarrow [0,\infty]$ を $G$ のHaar測度、$\Delta\colon G\rightarrow (0,\infty)$ を $G$ のモジュラー関数とする。任意の $f\colon G\rightarrow \mathbb{C}$ に対し、$f^*\colon G\rightarrow \mathbb{C}$ を、 $$ f^*(x)\colon=\Delta(x^{-1})\overline{f(x^{-1})}\quad(\forall x\in G) $$ として定義する。$f\in \mathcal{L}^1(G,\mu)$ ならば、命題1.16の $(3)$ より、 $$ \int_{G}\lvert f^*(x)\rvert d\mu(x)=\int_{G}\lvert f(x^{-1})\rvert \Delta(x^{-1})d\mu(x)=\int_{G}\lvert f(x)\rvert d\mu(x)<\infty $$ であるので $f^*\in \mathcal{L}^1(G,\mu)$, $\lVert f^*\rVert_1=\lVert f\rVert_1$ である。そこで、 $$ L^1(G,\mu)\ni [f]\mapsto [f]^*\colon=[f^*]\in L^1(G,\mu)\quad\quad(*) $$ なる等長反線形写像を定義する。このときBanach空間 $L^1(G,\mu)$ は、合成積 $$ L^1(G,\mu)\times L^1(G,\mu)\ni ([f],[g])\mapsto [f]*[g]\in L^1(G,\mu)\quad\quad(**) $$ を乗法、$(*)$ を対合としてBanach $*$-環をなす(次の命題1.24)。このBanach $*$-環 $L^1(G,\mu)$ を $G$ の $L^1$ 群環と言う。

命題1.24($L^1$ 群環はBanach $*$-環)

Banach空間 $L^1(G,\mu)$ は定義1.23における $(**)$ を乗法、$(*)$ を対合としてBanach $*$-環をなす。

Proof.

任意の $x\in G$ と任意の $[f],[g]\in L^1(G,\mu)$ に対し、合成積の定義(定義1.20)とBochner積分の基本性質(測度と積分9:Bochner積分命題44.2[4] 、Haar測度による積分の左不変性より、 $$ \begin{aligned} L_x([f]*[g])&=L_x\left(\int_{G}f(y)L_y[g]d\mu(y)\right) =\int_{G}L_x(f(y)L_y[g])d\mu(y)=\int_{G}f(y)L_{xy}[g]d\mu(y)\\ &=\int_{G}f(x^{-1}y)L_y[g]d\mu(y)=(L_x[f])*[g]\quad\quad(*) \end{aligned} $$ である。$(**)$ は合成積の定義より明らかに双線形写像であり、Youngの不等式(命題1.22)より有界(ノルムは $1$ 以下)である。よって任意の $[f],[g],[h]\in L^1(G,\mu)$ に対し、Bochner積分の基本性質(測度と積分9:Bochner積分命題44.2[5]より、 $$ \begin{aligned} &([f]*[g])*[h]=\left(\int_{G}f(y)L_y[g]d\mu(y)\right)*[h] =\int_{G}(f(y)L_y[g]*[h])d\mu(y)\\ &=\int_{G}f(y)((L_y[g])*[h])d\mu(y)=\int_{G}f(y)L_y([g]*[h])d\mu(y)=[f]*([g]*[h]) \end{aligned} $$ となる。ただし $4$ 番目の等号で $(*)$ を用いた。これより $L^1(G,\mu)$ は定義1.23の $(**)$ を乗法としてBanach環である。任意の $[f]\in L^1(G,\mu)$ に対し、 $$ f^{**}(x)=\Delta(x^{-1})\overline{f^*(x^{-1})}=\Delta(x^{-1})\Delta(x)f(x)=f(x)\quad(\forall x\in G) $$ であるから、$[f]^{**}=[f]$ である。また任意の $[f],[g]\in L^1(G,\mu)$ に対し $[f]*[g]$ の代表元 $h$ は $\mu$ -a.e. $x\in G$ で、 $$ h(x)=\int_{G}f(y)g(y^{-1}x)d\mu(y) $$ (定義1.20を参照)であるので、$([f]*[g])^*$ の代表元 $h^*$ は $\mu$ -a.e. $x\in G$ で、 $$ \begin{aligned} h^*(x)&=\Delta(x^{-1})\overline{h(x^{-1})}=\Delta(x^{-1})\int_{G}\overline{f(y)g(y^{-1}x^{-1})}d\mu(y)\\ &=\Delta(x^{-1})\int_{G}(\Delta(y^{-1})f^*(y^{-1}))(\Delta(xy)g^*(xy))d\mu(y)\\ &=\int_{G}f^*(y^{-1})g^*(xy)d\mu(y)=\int_{G}g^*(y)f^*(y^{-1}x)d\mu(y) \end{aligned} $$ である。よって $([f]*[g])^*$ の代表元 $h^*$ は $[g]^**[f]^*$ の代表元と $\mu$ -a.e. $x\in G$ で一致するので、 $$ ([f]*[g])^*=[g]^**[f]^* $$ が成り立つ。ゆえに $L^1(G,\mu)$ は定義1.23の $(*)$ を対合としてBanach $*$-環である。

定理1.25($L^1(G,\mu)$ の近似単位元)

$G$ を局所コンパクト群、$\mu\colon \mathcal{B}_G\rightarrow [0,\infty]$ を $G$ のHaar測度とする。このとき $C_{c,+}(G)$ の列 $(\varphi_n)_{n\in \mathbb{N}}$ で次を満たすものが存在する。

  • $(1)$ $\int_{G}\varphi_n(x)d\mu(x)=1$ $(\forall n\in \mathbb{N})$.
  • $(2)$ 単位元 $1\in G$ の任意の近傍 $U$ に対し、${\rm supp}(\varphi_n)\subset U$ $(\forall n\geq n_0)$ を満たす $n_0\in \mathbb{N}$ が存在する。
  • $(3)$ $\varphi_n^*=\varphi_n$ $(\forall n\in \mathbb{N})$.

そしてこの $(\varphi_n)_{n\in \mathbb{N}}$ はBanach $*$-環 $L^1(G,\mu)$ の近似単位元(Banach環とC*-環のスペクトル理論定義9.1)である。

Proof.

  • $(1)$ $G$ は第二可算公理を満たすので第一可算公理を満たす。よって単位元 $1\in G$ の可算基本近傍系 $\{U_n\}_{n\in \mathbb{N}}$ で、

$$ U_n^{-1}=U_n,\quad U_{n+1}\subset U_n\quad(\forall n\in \mathbb{N}) $$ を満たすものが取れる。Urysohnの補題(測度と積分7:局所コンパクトHausdorff空間上のRadon測度定理27.6)より各 $n\in \mathbb{N}$ に対し $\psi_n\in C_{c,+}(G)$ で、 $$ {\rm supp}(\psi_n)\subset U_n,\quad \int_{G}\psi_n(x)d\mu(x)=1 $$ を満たすものが取れる。そして、 $$ \varphi_n\colon=\frac{1}{2}(\psi_n+\psi_n^*)\in C_{c,+}(G)\quad(\forall n\in \mathbb{N}) $$ とおくと、$\varphi_n^*=\varphi_n$ $(\forall n\in \mathbb{N})$ であり、 $$ {\rm supp}(\varphi_n)\subset {\rm supp}(\psi_n)\cup {\rm supp}(\psi_n)^{-1}\subset U_n\quad(\forall n\in \mathbb{N}). $$ $$ \int_{G}\varphi_n(x)d\mu(x)=\frac{1}{2}\left(\int_{G}\psi_n(x)d\mu(x)+\int_{G}\psi_n^*(x)d\mu(x)\right)=1\quad(\forall n\in \mathbb{N}) $$ となる。よって $(\varphi_n)_{n\in \mathbb{N}}$ は $(1),(2),(3)$ を満たす。$(1),(2),(3)$ を満たす $C_{c,+}(G)$ の列 $(\varphi_n)_{n\in \mathbb{N}}$ がBanach $*$-環 $L^1(G,\mu)$ の近似単位元であることを示す。任意の $[f]\in L^1(G,\mu)$ に対し、$(1)$ と合成積の定義(定義1.20)より、 $$ [\varphi_n]*[f]-[f]=\int_{G}\varphi_n(y)(L_y[f]-[f])d\mu(y)\quad(\forall n\in \mathbb{N}) $$ であるから、 $$ \lVert [\varphi_n]*[f]-[f]\rVert_1\leq \int_{G}\varphi_n(y)\lVert L_y[f]-[f]\rVert_1d\mu(y)\quad(\forall n\in \mathbb{N}) $$ であり、命題1.19より $G\ni y\mapsto L_y[f]\in L^1(G,\mu)$ は連続であるから、$(1),(2)$ より、 $$ \lVert [\varphi_n]*[f]-[f]\rVert_1\leq \int_{G}\varphi_n(y)\lVert L_y[f]-[f]\rVert_1d\mu(y)\rightarrow0\quad(n\rightarrow\infty) $$ となる。よって、 $$ \lim_{n\rightarrow \infty}[\varphi_n]*[f]=[f]\quad(\forall [f]\in L^1(G,\mu)) $$ が成り立つ。また $(3)$ より任意の $[f]\in L^1(G,\mu)$ に対し、 $$ [f]*[\varphi_n]=([\varphi_n]*[f]^*)^*\rightarrow [f]^{**}=[f]\quad(n\rightarrow\infty) $$ であるから、$(\varphi_n)_{n\in \mathbb{N}}$ は $L^1(G,\mu)$ の近似単位元である。

命題1.26($L^1$ 群環が単位元を持つことと群が離散であることは同値)

$G$ を局所コンパクト群、$\mu\colon \mathcal{B}_G\rightarrow [0,\infty]$ を $G$ のHaar測度とする。このとき次は互いに同値である。

  • $(1)$ $L^1$ 群環 $L^1(G,\mu)$ は単位元を持つ。
  • $(2)$ $G$ は離散群である。
Proof.

$(1)\Rightarrow(2)$ を示す。$L^1(G,\mu)$ が単位元を持つとし、それを $[f]\in L^1(G,\mu)$ とする。 定理1.25における $L^1(G,\mu)$ の近似単位元 $(\varphi_n)_{n\in \mathbb{N}}$ を取ると、 $$ [\varphi_n]=[\varphi_n]*[f]\rightarrow [f]\quad(n\rightarrow\infty)\quad\quad(*) $$ となる。定理1.25の条件 $(3)$ より $G$ の単位元 $1\in G$ の任意の近傍 $U$ に対し $[\chi_U\varphi_n]=[\varphi_n]$ $(\forall n\geq n_0)$ なる $n_0\in \mathbb{N}$ が存在するので、$(*)$ より、 $$ [\chi_Uf]=\lim_{n\rightarrow\infty}[\chi_U\varphi_n]=\lim_{n\rightarrow\infty}[\varphi_n]=[f]\quad\quad(**) $$ となる。そこで $G$ の単位元 $1\in G$ の可算基本近傍系 $\{U_n\}_{n\in \mathbb{N}}$ で、 $$ U_{n+1}\subset U_n\quad(\forall n\in \mathbb{N}) $$ を満たすものを取れば、$(**)$ とLebesgue優収束定理より、 $$ \lVert f\rVert_1=\int_{G}\lvert f(x)\rvert d\mu(x)=\int_{G}\lvert f(x)\rvert \chi_{U_n}(x)d\mu(x)\rightarrow \int_{G}\lvert f(x)\rvert \chi_{\{1\}}(x)d\mu(x)=\lvert f(1)\rvert \mu(\{1\})\quad(n\rightarrow\infty) $$ となる。ゆえに $\mu(\{1\})>0$ であり、 $$ \mu(\{x\})=\mu(x\{1\})=\mu(\{1\})>0\quad(\forall x\in G) $$ である。これより $\mu(B)<\infty$ を満たす任意の $B\in \mathcal{B}_G$ は有限集合である。任意の $x_0\in G$ に対し $x_0$ の開近傍 $U$ で $\overline{U}$ がコンパクトであるものを取れば、$\mu(U)\leq \mu(\overline{U})<\infty$ であるので、$U$ は有限集合である。そこで $U=\{x_0,x_1,\ldots,x_m\}$ とおけば、 $$ \{x_0\}=U\backslash \{x_1,\ldots,x_m\} $$ であるから、$\{x_0\}$ は開集合である。ゆえに任意の一点集合が開集合であるので $G$ は離散群である。
$(2)\Rightarrow(1)$ を示す。$G$ が離散群ならば $G$ のHaar測度 $\mu$ は数え上げ測度であり、$L^1(G,\mu)=\ell^1(G)$(測度と積分6:数え上げ測度と $\ell^p$ 空間定義24.3を参照)である。任意の $f\in \ell^1(G)$, 任意の $x\in G$ に対し、 $$ (\chi_{\{1\}}*f)(x)=\sum_{y\in G}\chi_{\{1\}}(y)f(y^{-1}x)=f(x), $$ $$ (f*\chi_{\{1\}})(x)=\sum_{y\in G}f(y)\chi_{\{1\}}(y^{-1}x)=f(x) $$ であるから、$\chi_{\{1\}}$ は $L^1$ 群環 $\ell^1(G)$ の単位元である。

定義1.27(Dirac測度)

$G$ を局所コンパクト群とする。任意の $x\in G$ に対しBorel測度 $$ \delta_x\colon \mathcal{B}_G\ni B\mapsto \chi_B(x)\in [0,1] $$ を $x$ におけるDirac測度と言う。

定義1.28(測度群環)

$G$ を局所コンパクト群、$M(G)$ を $G$ 上の複素数値Borel測度全体に全変動ノルムを入れたBanach空間とする(測度と積分7:局所コンパクトHausdorff空間上のRadon測度33を参照)。任意の $\nu_1,\nu_2\in M(G)$ に対し、 $$ (\nu_1*\nu_2)(B)\colon=\int_{G}\left(\int_{G}\chi_B(xy)d\nu_1(x)\right)d\nu_2(y)\quad(\forall B\in \mathcal{B}_G) $$ とおけばLebesgue優収束定理より $\nu_1*\nu_2\in M(G)$ である。これを $\nu_1,\nu_2\in M(G)$ の合成積と言う。また任意の $\nu\in M(G)$ に対し $\nu^*\in M(G)$ を、 $$ \nu^*(B)\colon=\overline{\nu(B^{-1})}\quad(\forall B\in \mathcal{B}_G) $$ と定義する。このとき次の命題1.29よりBanach空間 $M(G)$ は、 $$ M(G)\times M(G)\ni (\nu_1,\nu_2)\mapsto \nu_1*\nu_2\in M(G)\quad\quad(*) $$ を乗法、 $$ M(G)\ni \nu\mapsto \nu^*\in M(G)\quad\quad(**) $$ を対合、$G$ の単位元 $1\in G$ におけるDirac測度 $\delta_1\in M(G)$ を単位元として単位的Banach $*$-環をなす。この単位的Banach $*$-環 $M(G)$ を $G$ の測度群環と言う。

命題1.29(測度群環は単位的Banach $*$-環)

Banach空間 $M(G)$ は定義1.28における $(*)$ を乗法、$(**)$ を対合、$\delta_1$ を単位元として単位的Banach $*$-環をなす。

Proof.

定義1.28の $(*)$ がノルムが $1$ 以下の有界双線形写像であること、定義1.28の $(**)$ が全変動ノルムを保存する反線形写像であることは複素数値測度による積分の定義と全変動の定義より自明である(測度と積分4:測度論の基本定理(2)定義19.1定義19.5を参照)。また任意の $\nu\in M(G)$ に対し、 $$ \nu^{**}(B)=\overline{\nu^*(B^{-1})}=\nu(B)\quad(\forall B\in \mathcal{B}_G) $$ であるので $\nu^{**}=\nu$ である。任意の有界Borel関数はBorel単関数の列によって一様近似できる(測度と積分5:$L^p$ 空間の完備性と双対性命題22.2)ので、任意の有界Borel関数 $f\colon G\rightarrow \mathbb{C}$ と任意の $\nu_1,\nu_2,\nu\in M(G)$ に対し、 $$ \int_{G}f(x)d(\nu_1*\nu_2)(x)=\int_{G}\left(\int_{G}f(xy)d\nu_1(x)\right)d\nu_2(y), $$ $$ \int_{G}f(x)d\nu^*(x)=\overline{\int_{G}\overline{f(x^{-1})}d\nu(x)} $$ が成り立つ。このことに注意すると、Fubiniの定理より、任意の $\nu_1,\nu_2,\nu_3\in M(G)$ に対し、 $$ \begin{aligned} (\nu_1*(\nu_2*\nu_3))(B)&=\int_{G}\left(\int_{G}\chi_B(xy)d\nu_1(x)\right)d(\nu_2*\nu_3)(y)=\int_{G}\left(\int_{G}\left(\int_{G}\chi_B(xyz)d\nu_1(x)\right)d\nu_2(y)\right)d\nu_3(z)\\ &=\int_{G}\left(\int_{G}\chi_B(xz)d(\nu_1*\nu_2)(x)\right)d\nu_3(z)=((\nu_1*\nu_2)*\nu_3)(B)\quad(\forall B\in\mathcal{B}_G) \end{aligned} $$ $$ \begin{aligned} (\nu_1*\nu_2)^*(B)&=\overline{(\nu_1*\nu_2)(B^{-1})}=\overline{\int_{G}\left(\int_{G}\chi_{B^{-1}}(xy)d\nu_1(x)\right)d\nu_2(y)}=\overline{\int_{G}\left(\int_{G}\chi_B(y^{-1}x^{-1})d\nu_1(x)\right)d\nu_2(y)}\\ &=\overline{\int_{G}\left(\int_{G}\chi_B(y^{-1}x^{-1})d\nu_1^*(x)\right)d\nu_2(y)} =\int_{G}\left(\int_{G}\chi_B(yx)d\nu_1^*(x)\right)d\nu_2^*(y)\\ &=\int_{G}\left(\int_{G}\chi_B(yx)d\nu_2^*(y)\right)d\nu_1^*(x)=(\nu_2^**\nu_1^*)(B)\quad(\forall B\in\mathcal{B}_G) \end{aligned} $$ が成り立つことが分かる。よって $M(G)$ は定義1.28の $(*)$ を乗法、$(**)$ を対合としてBanach $*$-環をなす。任意の $\nu\in M(G)$ に対し、 $$ \begin{aligned} &(\delta_1*\nu)(B)=\int_{G}\left(\int_{G}\chi_B(xy)d\delta_1(x)\right)d\nu(y)=\int_{G}\chi_B(y)d\nu(y)=\nu(B)\quad(\forall B\in \mathcal{B}_G),\\ &(\nu*\delta_1)(B)=\int_{G}\left(\int_{G}\chi_B(xy)d\nu(x)\right)d\delta_1(y) =\int_{G}\chi_B(x)d\nu(x)=\nu(B)\quad(\forall B\in\mathcal{B}_G) \end{aligned} $$ であるから、$\delta_1$ はBanach $*$-環 $M(G)$ の単位元である。

命題1.30($L^1$ 群環の測度群環への埋め込み)

$G$ を局所コンパクト群、$\mu\colon \mathcal{B}_G\rightarrow [0,\infty]$ を $G$ のHaar測度とする。任意の $[f]\in L^1(G,\mu)$ に対し $\mu_{[f]}\in M(G)$ を、 $$ \mu_{[f]}\colon \mathcal{B}_G\ni B\mapsto \int_{B}f(x)d\mu(x)\in \mathbb{C} $$ とすると、 $$ L^1(G,\mu)\ni [f]\mapsto \mu_{[f]}\in M(G)\quad\quad(*) $$ は等長 $*$-環同型写像である。

Proof.

$(*)$ が線形写像であることは明らかであり、ノルムを保存することは測度と積分4:測度論の基本定理(2)命題19.3による。命題1.16の $(3)$ より任意の $[f]\in L^1(G,\mu)$ に対し、 $$ \begin{aligned} \mu_{[f]^*}(B)&=\int_{G}f^*(x)\chi_B(x)d\mu(x)=\int_{G}\overline{f(x^{-1})}\Delta(x^{-1})\chi_B(x)d\mu(x)\\ &=\int_{G}\overline{f(x)}\chi_{B^{-1}}(x)d\mu(x)=\overline{\mu_{[f]}(B^{-1})} =\mu_{[f]}^*(B)\quad(\forall B\in \mathcal{B}_G) \end{aligned} $$ であるから $(*)$ は対合を保存する。また任意の $[f],[g]\in L^1(G,\mu)$ に対しHaar測度による積分の左不変性とFubiniの定理より、 $$ \begin{aligned} \mu_{[f]*[g]}(B)&=\int_{G}\chi_B(x)([f]*[g])(x)d\mu(x)=\int_{G}\left(\int_{G}\chi_B(x)f(y)g(y^{-1}x)d\mu(x)\right)d\mu(y)\\ &=\int_{G}\left(\int_{G}\chi_B(yx)f(y)g(x)d\mu(x)\right)d\mu(y)=\int_{G}\left(\int_{G}\chi_B(yx)f(y)g(x)d\mu(y)\right)d\mu(x)\\ &=\int_{G}\left(\int_{G}\chi_B(yx)d\mu_{[f]}(y)\right)d\mu_{[g]}(x) =(\mu_{[f]}*\mu_{[g]})(B)\quad(\forall B\in\mathcal{B}_G) \end{aligned} $$ であるから $(*)$ は乗法を保存する。

命題1.31(群が可換であることと $L^1$ 群環(測度群環)が可換であることは同値)

$G$ を局所コンパクト群、$\mu\colon \mathcal{B}_G\rightarrow [0,\infty]$ を $G$ のHaar測度とする。このとき次は互いに同値である。

  • $(1)$ $G$ は可換群である。
  • $(2)$ 測度群環 $M(G)$ は可換である。
  • $(3)$ $L^1$ 群環 $L^1(G,\mu)$ は可換である。
Proof.

$(1)\Rightarrow(2)$ を示す。$G$ が可換ならば、任意の $\nu_1,\nu_2\in M(G)$ に対しFubiniの定理より、 $$ \begin{aligned} (\nu_1*\nu_2)(B)&=\int_{G}\left(\int_{G}\chi_B(xy)d\nu_1(x)\right)d\nu_2(y)=\int_{G}\left(\int_{G}\chi_B(yx)d\nu_1(x)\right)d\nu_2(y)\\ &=\int_{G}\left(\int_{G}\chi_B(yx)d\nu_2(y)\right)d\nu_1(x)=(\nu_2*\nu_1)(B)\quad(\forall B\in \mathcal{B}_G) \end{aligned} $$ であるから $\nu_1*\nu_2=\nu_2*\nu_1$ である。よって測度群環 $M(G)$ は可換である。
$(2)\Rightarrow(3)$ は命題1.30による。
$(3)\Rightarrow(1)$ を示す。$L^1(G,\mu)$ が可換であるとする。任意の $f,g\in C_c(G)$, 任意の $x\in G$ に対し命題1.16の $(3)$ より、 $$ \begin{aligned} \int_{G}f(y)g(y^{-1}x)d\mu(y)&=(f*g)(x)=(g*f)(x)=\int_{G}g(y)f(y^{-1}x)d\mu(y)\\ &=\int_{G}g(xy)f(y^{-1})d\mu(y)=\int_{G}f(y)g(xy^{-1})\Delta(y^{-1})d\mu(y) \end{aligned} $$ であるから、 $$ \int_{G}f(y)(g(y^{-1}x)-g(xy^{-1}))\Delta(y^{-1})d\mu(y)=0 $$ である。$C_c(G)$ は $L^1(G,\mu)$ で稠密であること(測度と積分7:局所コンパクトHausdorff空間上のRadon測度命題32.1)と、空でない開集合のHaar測度は正であること(命題1.8)から、任意の $g\in C_c(G)$, 任意の $x,y\in G$ に対し、 $$ g(y^{-1}x)=g(xy^{-1})=0\quad(\forall x,y\in G) $$ が成り立つ。Urysohnの補題(測度と積分7:局所コンパクトHausdorff空間上のRadon測度定理27.6)より、これは $xy^{-1}=y^{-1}x$ $(\forall x,y\in G)$ を意味する。よって$G$ は可換である。

2. 局所コンパクト群のユニタリ表現、正定値連続関数に対するGNS表現、Gelfand-Raikovの定理

定義2.1(局所コンパクト群のユニタリ表現)

$G$ を局所コンパクト群、$\mathcal{H}\neq \{0\}$ をHilbert空間、$\mathbb{U}(H)\subset \mathbb{B}(\mathcal{H})$ を $\mathcal{H}$ 上のユニタリ作用素全体のなす乗法群とする。群準同型写像 $\pi\colon G\rightarrow \mathbb{U}(\mathcal{H})$ で SOT(Hilbert空間上の作用素論定義2.1)に関して連続なものを、$G$ の $\mathcal{H}$ 上へのユニタリ表現と言う。このとき $\mathcal{H}$ を $G$ のユニタリ表現 $\pi$ の表現空間と言い、$\mathcal{H}_{\pi}$ と表す。また ${\rm dim}(\mathcal{H}_{\pi})$ を $\pi$ の次元と言い、${\rm dim}(\pi)$ とも表す。

例2.2(局所コンパクト群の正則表現)

$G$ を局所コンパクト群、$\mu\colon \mathcal{B}_G\rightarrow [0,\infty]$ を $G$ のHaar測度とする。Hilbert空間 $L^2(G,\mu)$ を考える。 $$ \pi(x)[f]\colon =[L_xf]\quad(\forall x\in G,\forall [f]\in L^2(G,\mu)) $$ とおくと、明らかに $\pi(x)\in \mathbb{U}(L^2(G,\mu))$ $(\forall x\in G)$ であり、$\pi\colon G\rightarrow \mathbb{U}(L^2(G,\mu))$ は群準同型写像である。そして命題1.19より $\pi$ はSOTに関して連続である。よって $\pi$ は $G$ のHilbert空間 $L^2(G,\mu)$ 上へのユニタリ表現である。これを $G$ の正則表現と言う。

定義2.3(ユニタリ表現の部分表現、既約性)

$G$ を局所コンパクト群、$\pi$ を $G$ のユニタリ表現とする。$\mathcal{K}\subset \mathcal{H}_{\pi}$ が $\pi(x)\mathcal{K}\subset \mathcal{K}$ $(\forall x\in G)$ を満たすとき $\mathcal{K}$ は $\pi$ 不変であると言う。$\pi$ 不変な $\{0\}$ ではない閉部分空間 $\mathcal{K}\subset \mathcal{H}_{\pi}$ に対し、 $$ \pi|_{\mathcal{K}}(x)v\colon =\pi(x)v\in \mathcal{K}\quad(\forall x\in G,\forall v\in \mathcal{K}) $$ とおくと、$\pi|_{\mathcal{K}}(x)\in \mathbb{U}(\mathcal{K})$ であり、 $$ \pi|_{\mathcal{K}}\colon G\ni x\mapsto \pi|_{\mathcal{K}}(x)\in \mathbb{U}(\mathcal{K}) $$ は $G$ の $\mathcal{K}$ 上へのユニタリ表現である。[6]$\pi|_{\mathcal{K}}$ を $\pi$ の $\mathcal{K}$ 上への制限と言い、このようなユニタリ表現を $\pi$ の部分表現と言う。$\pi$ 不変な閉部分空間が $\{0\}$ と $\mathcal{H}$ のみの場合、$\pi$ は既約であると言う。

定義2.4(ユニタリ表現の巡回ベクトル)

$G$ を局所コンパクト群、$\pi$ を $G$ のユニタリ表現とする。$v\in \mathcal{H}_{\pi}$ が $\pi$ の巡回ベクトルであるとは、 $$ {\rm span}(\pi(G)v)={\rm span}\{\pi(x)v:x\in G\} $$ が $\mathcal{H}_{\pi}$ で稠密であることを言う。

注意2.5(巡回ベクトルを持つ部分表現)

$G$ を局所コンパクト群、$\pi$ を $G$ のユニタリ表現とする。任意の $v\in \mathcal{H}_{\pi}\backslash \{0\}$ に対し、 $$ \mathcal{K}_v\colon =\overline{{\rm span}(\pi(G)v)}\subset \mathcal{H}_{\pi} $$ とおけば、$\mathcal{K}_v$ は $\pi$ 不変な $\{0\}$ ではない閉部分空間であり、$\pi$ の $\mathcal{K}_v$ 上への制限は $v$ を巡回ベクトルとして持つ。

注意2.6(既約なユニタリ表現と巡回ベクトル)

$G$ を局所コンパクト群、$\pi$ を $G$ の既約なユニタリ表現とする。このとき $\pi$ の既約性と注意2.5より、任意の $v\in \mathcal{H}_{\pi}\backslash \{0\}$ に対し $v$ は $\pi$ の巡回ベクトルである。

定義2.7(繋絡作用素)

$G$ を局所コンパクト群、$\pi_1,\pi_2$ を $G$ のユニタリ表現とする。$T\in \mathbb{B}(\mathcal{H}_{\pi_1},\mathcal{H}_{\pi_2})$ が、 $$ T\pi_1(x)=\pi_2(x)T\quad(\forall x\in G) $$ を満たすとき $T$ を $\pi_1,\pi_2$ の繋絡作用素と言う。$\pi_1,\pi_2$ の繋絡作用素全体を $\mathcal{C}(\pi_1,\pi_2)$ と表す。また $\mathcal{C}(\pi)\colon =\mathcal{C}(\pi,\pi)$ と表す。

命題2.8(繋絡作用素全体の基本性質)

$G$ を局所コンパクト群、$\pi_1,\pi_2,\pi_3$ を $G$ のユニタリ表現とする。このとき、

  • $(1)$ $\mathcal{C}(\pi_1,\pi_2)$ は $\mathbb{B}(\mathcal{H}_{\pi_1},\mathcal{H}_{\pi_2})$ の線形部分空間である。
  • $(2)$ 任意の $T\in \mathcal{C}(\pi_1,\pi_2)$, $S\in \mathcal{C}(\pi_2,\pi_3)$ に対し $ST\in \mathcal{C}(\pi_1,\pi_3)$ が成り立つ。
  • $(3)$ 任意の $T\in \mathcal{C}(\pi_1,\pi_2)$ に対し $T^*\in \mathcal{C}(\pi_2,\pi_1)$ が成り立つ。
Proof.

全て定義から直ちに示せる。

定義2.9(ユニタリ表現のユニタリ同値)

$G$ を局所コンパクト群、$\pi_1,\pi_2$ を $G$ のユニタリ表現とする。$\mathcal{C}(\pi_1,\pi_2)$ がユニタリ作用素を含むとき $\pi_1,\pi_2$ はユニタリ同値であると言い、$\pi_1\sim \pi_2$ と表す。命題2.8よりこの $\sim $ は $G$ のユニタリ表現全体における同値関係である。

定理2.10(Schurの補題)

$G$ を局所コンパクト群、$\pi$ を $G$ のユニタリ表現とする。このとき次は互いに同値である。

  • $(1)$ $\pi$ は既約。
  • $(2)$ $\mathcal{C}(\pi)=\mathbb{C}1$.
Proof.

$\mathcal{C}(\pi)\subset \mathbb{B}(\mathcal{H}_{\pi})$ は $\pi(G)\subset \mathbb{B}(\mathcal{H}_{\pi})$ の可換子環 $\pi(G)'$(Hilbert空間上の作用素論定義18.10)にほかならない。そして $\pi(G)'\subset \mathbb{B}(\mathcal{H}_{\pi})$ はvon Neumann環である(Hilbert空間上の作用素論注意18.15)から射影によって生成される(Hilbert空間上の作用素論定理19.7)、すなわち、 $$ \mathcal{C}(\pi)=\pi(G)'=\overline{\mathbb{P}(\pi(G)')}^{\lVert \cdot\rVert}\quad\quad(*) $$ である。ただし $\mathbb{P}(\pi(G)')$ はvon Neumann環 $\pi(G)'$ の射影全体である。$(1)\Rightarrow(2)$ を示す。$(1)$ が成り立つとする。任意の $P\in \mathbb{P}(\pi(G)')$ に対し ${\rm Ran}(P)\subset \mathcal{H}_{\pi}$ は $\pi$ 不変な閉部分空間であるから、${\rm Ran}(P)$ は $\mathcal{H}_{\pi}$ か $\{0\}$ である。よって $P$ は $1$ か $0$ なので、$(*)$ より $\mathcal{C}(\pi)=\mathbb{C}1$ である。
$(2)\Rightarrow(1)$ を示す。$(2)$ が成り立つとする。$\mathcal{K}\subset \mathcal{H}_{\pi}$ を $\pi$ 不変な閉部分空間とし、$\mathcal{K}$ の上への射影作用素(Hilbert空間上の作用素論定義1.6)を $P\in \mathbb{B}(\mathcal{H}_{\pi})$ とおくと、 $$ \pi(x)P=P\pi(x)P\quad(\forall x\in G) $$ であるから、 $$ P\pi(x)=(\pi(x^{-1})P)^*=(P\pi(x^{-1})P)^*=P\pi(x)P=\pi(x)P\quad(\forall x\in G) $$ である。よって $P\in \mathcal{C}(\pi)=\mathbb{C}1$ であるから $P=\alpha1$ なる $\alpha\in \mathbb{C}$ が存在し、$P^2=P$ であることから $\alpha$ は $1$ か $0$、したがって $P$ は $1$ か $0$ である。ゆえに $\mathcal{K}$ は $\mathcal{H}_{\pi}$ か $\{0\}$ であるので $\pi$ は既約である。

系2.11(Schurの補題の系)

$G$ を局所コンパクト群、$\pi_1,\pi_2$ を $G$ の既約なユニタリ表現とする。このとき次は互いに同値である。

  • $(1)$ $\pi_1,\pi_2$ はユニタリ同値。
  • $(2)$ $\mathcal{C}(\pi_1,\pi_2)\neq \{0\}$.
Proof.

$(1)\Rightarrow(2)$ はユニタリ同値の定義より自明である。$(2)\Rightarrow(1)$ を示す。$(2)$ が成り立つとし、ノルムが $1$ の任意の $T\in \mathcal{C}(\pi_1,\pi_2)$ を取る。このとき命題2.8より $T^*T\in \mathcal{C}(\pi_1)$, $TT^*\in \mathcal{C}(\pi_2)$ であり、$\pi_1,\pi_2$ は既約なのでSchurの補題(定理2.10)より $T^*T\in \mathbb{C}1$, $TT^*\in \mathbb{C}1$ である。ここで $\lVert T^*T\rVert=\lVert T\rVert^2=1$, $\lVert TT^*\rVert=\lVert T^*\rVert^2=\lVert T\rVert=1$ であり、$T^*T\in \mathbb{B}(\mathcal{H}_{\pi_1})$, $TT^*\in \mathbb{B}(\mathcal{H}_{\pi_2})$ は有界非負自己共役作用素であるので $T^*T=1$, $TT^*=1$ である。ゆえに $T\colon \mathcal{H}_{\pi_1}\rightarrow\mathcal{H}_{\pi_2}$ はユニタリ作用素であるから、$\pi_1,\pi_2$ はユニタリ同値である。

定義2.12(ユニタリ表現の直和とテンソル積)

$G$ を局所コンパクト群、$J$ を空でない集合とし、各 $j\in J$ に対し $G$ のユニタリ表現 $\pi_j\colon G\rightarrow\mathbb{U}(\mathcal{H}_{\pi_j})$ が与えられているとする。このとき、 $$ (\oplus_{j\in J}\pi_j)(x)(v_j)_{j\in J}\colon =(\pi_j(x)v_j)_{j\in J}\quad(\forall x\in G,\forall (v_j)_{j\in J}\in \bigoplus_{j\in J}\mathcal{H}_{\pi_j}) $$ として、$G$ の直和Hilbert空間 $\bigoplus_{j\in J}\mathcal{H}_{\pi_j}$(測度と積分6:数え上げ測度と $\ell^p$ 空間定義26.3)上へのユニタリ表現 $\oplus_{j\in J}\mathcal{H}_{\pi_j}$ が定義できる。これを $(\pi_j)_{j\in J}$ の直和と言う。
$\pi_j\colon G\rightarrow \mathbb{U}(\mathcal{H}_{\pi_j})$ $(j=1,\ldots,n)$ をそれぞれ $G$ のユニタリ表現とする。Hilbert空間上の作用素論定理12.12より任意の $x\in G$ に対し $\pi_1(x)\otimes \cdots\otimes \pi_n(x)$ はテンソル積Hilbert空間 $\mathcal{H}_{\pi_1}\otimes\cdots\otimes \mathcal{H}_{\pi_n}$ 上のユニタリ作用素であり、 $$ \pi_1\otimes\cdots\otimes \pi_n\colon G\ni x\mapsto \pi_1(x)\otimes\cdots\otimes \pi_n(x)\in \mathbb{U}(\mathcal{H}_{\pi_1}\otimes\cdots\otimes \mathcal{H}_{\pi_n}) $$ は $G$ の $\mathcal{H}_{\pi_1}\otimes\cdots\otimes\mathcal{H}_{\pi_n}$ 上へのユニタリ表現である。$\pi_1\otimes\cdots\otimes\pi_n$ を $\pi_1,\ldots,\pi_n$ のテンソル積と言う。

命題2.13(巡回ベクトルを持つユニタリ表現の巡回ベクトル込みのユニタリ同値条件)

$G$ を局所コンパクト群、$(\pi_1,v_1)$, $(\pi_2,v_2)$ をそれぞれ $G$ のユニタリ表現とその巡回ベクトル(定義2.4)の組とする。このとき次は互いに同値である。

  • $(1)$ 任意の $x\in G$ に対し $(v_1\mid \pi_1(x)v_1)=(v_2\mid \pi_2(x)v_2)$.
  • $(2)$ ユニタリ作用素 $U\in \mathcal{C}(\pi_1,\pi_2)$ で、$Uv_1=v_2$ なるものが存在する(特に $\pi_1,\pi_2$ はユニタリ同値)。

また $(1),(2)$ が成り立つとき、$(2)$ におけるユニタリ作用素 $U\in \mathcal{C}(\pi_1,\pi_2)$ は、 $$ U\pi_1(x)v_1=\pi_2(x)v_2\quad(\forall x\in G)\quad\quad(*) $$ を満たすものとして特徴付けられる。

Proof.

$(2)$ が成り立つとすると、 $$ (v_2\mid \pi_2(x)v_2)=(Uv_1\mid \pi_2(x)Uv_1)=(v_1\mid U^*\pi_2(x)Uv_1)=(v_1\mid \pi_1(x)v_1)\quad(\forall x\in G) $$ であるから $(1)$ が成り立つ。
$(1)\Rightarrow(2)$ を示す。$(1)$ が成り立つとすると、 $$ (\pi_1(x)v_1\mid \pi_1(y)v_1)=(v_1\mid \pi_1(x^{-1}y)v_1)=(v_2\mid \pi_2(x^{-1}y)v_2)=(\pi_2(x)v_2\mid \pi_2(y)v_2)\quad(\forall x,y\in G) $$ であるから、${\rm span}(\pi_1(G)v_1)$ から ${\rm span}(\pi_2(G)v_2)$ への等長線形同型写像 $U_0$ で、 $$ U_0\pi_1(x)v_1=\pi_2(x)v_2\quad(\forall x\in G) $$ を満たすものが定義できる。$v_j$ は $\pi_j$ の巡回ベクトルなので、$\mathcal{H}_{\pi_j}=\overline{{\rm span}(\pi_j(G)v_j)}$ $(j=1,2)$ であるから、$U_0\colon {\rm span}(\pi_1(G)v_1)\rightarrow\mathcal{H}_{\pi_2}$ を $\mathcal{H}_{\pi_1}$ 上へ一意拡張したもの(位相線形空間1:ノルムと内積命題3.6) $U\colon \mathcal{H}_{\pi_1}\rightarrow\mathcal{H}_{\pi_2}$ はユニタリ作用素である。$U$ は $(*)$ を満たすので、特に $Uv_1=v_2$ である。そして、 $$ (U\pi_1(x))\pi_1(y)v_1=U\pi_1(xy)v_1=\pi_2(xy)v_2=\pi_2(x)\pi_2(y)v_2=(\pi_2(x)U)\pi_1(y)v_1\quad(\forall x,y\in G) $$ であるから、$\mathcal{H}_{\pi_1}=\overline{{\rm span}(\pi_1(G)v_1)}$ より、 $$ U\pi_1(x)=\pi_2(x)U\quad(\forall x\in G) $$ が成り立つ。よって $U\in \mathcal{C}(\pi_1,\pi_2)$ であるので $(2)$ が成り立つ。

定義2.14($L^1$ 群環の表現)

$G$ を局所コンパクト群、$\mu\colon \mathcal{B}_G\rightarrow [0,\infty]$ を $G$ のHaar測度、$\mathcal{H}$ をHilbert空間とする。Banach $*$-環 $L^1(G,\mu)$ から $C^*$-環 $\mathbb{B}(\mathcal{H})$ への $*$-環準同型写像 $\pi\colon L^1(G,\mu)\rightarrow\mathbb{B}(\mathcal{H})$ (Banach環とC*-環のスペクトル理論定理10.1より自動的にノルム減少であることに注意)で、 $$ \pi(L^1(G,\mu))\mathcal{H}={\rm span}\{\pi([f])v:[f]\in L^1(G,\mu),v\in \mathcal{H}\} $$ が $\mathcal{H}$ で稠密であるものを $L^1(G,\mu)$ の $\mathcal{H}$ 上への表現と言う。

注意2.15($L^1$ 群環の表現と $L^1$ 群環の近似単位元)

$\pi\colon L^1(G,\mu)\rightarrow \mathbb{B}(\mathcal{H})$ を $L^1(G,\mu)$ の表現(定義2.14)とし、$([h_{\lambda}])_{\lambda\in \Lambda}$ をBanach $*$-環 $L^1(G,\mu)$ の任意の近似単位元(定理1.25における $(\varphi_n)_{n\in \mathbb{N}}$ を考えればよい)とする。このとき、 $$ \pi([h_{\lambda}])\pi([f])v=\pi([h_{\lambda}]*[f])v\rightarrow \pi([f])v\quad(\forall [f]\in L^1(G,\mu),\forall v\in \mathcal{H}), $$ $$ \lVert \pi([h_{\lambda}])\rVert\leq \lVert [h_{\lambda}]\rVert_1\leq 1\quad(\forall \lambda\in \Lambda) $$ であり、$\pi(L^1(G,\mu))\mathcal{H}={\rm span}\{\pi([f])v:[f]\in L^1(G,\mu),v\in \mathcal{H}\}$ は $\mathcal{H}$ において稠密であるから、 $$ \pi([h_{\lambda}])v\rightarrow v\quad(\forall v\in \mathcal{H}) $$ が成り立つ。すなわち $(\pi([h_{\lambda}]))_{\lambda\in\Lambda}$ は恒等作用素 $1\in \mathbb{B}(\mathcal{H})$ にSOTで収束する。

命題2.16(局所コンパクト群のユニタリ表現の $L^1$ 群環の表現への拡張)

$G$ を局所コンパクト群、$\mu\colon \mathcal{B}_G\rightarrow [0,\infty]$ を $G$ のHaar測度とし、$\pi$ を $G$ のユニタリ表現とする。任意の $[f]\in L^1(G,\mu)$, 任意の $v\in \mathcal{H}_{\pi}$ に対し、 $$ \widetilde{\pi}([f])v\colon=\int_{G}f(x)\pi(x)vd\mu(x)\in \mathcal{H}_{\pi} $$ と定義する。ただし右辺はHilbert空間 $\mathcal{H}_{\pi}$ 値関数 $G\ni x\mapsto f(x)\pi(x)v\in \mathcal{H}_{\pi}$ のBochner積分(測度と積分9:Bochner積分定義44.1)である。[7]このとき任意の $[f]\in L^1(G,\mu)$ に対し、 $$ \widetilde{\pi}([f])\colon \mathcal{H}_{\pi}\ni v\mapsto \widetilde{\pi}([f])v\in \mathcal{H}_{\pi} $$ は有界線形作用素であり、 $$ \widetilde{\pi}\colon L^1(G,\mu)\ni [f]\mapsto \widetilde{\pi}([f])\in \mathbb{B}(\mathcal{H}_{\pi}) $$ は $L^1(G,\mu)$ の $\mathcal{H}_{\pi}$ 上への表現(定義2.14)である。また、 $$ \pi(x)\widetilde{\pi}([f])=\widetilde{\pi}(L_x[f])\quad(\forall x\in G,\forall [f]\in L^1(G,\mu)) $$ が成り立つ。

Proof.

任意の $[f]\in L^1(G,\mu)$ に対しBochner積分の基本性質(測度と積分9:Bochner積分命題44.2)より、 $$ \lVert \widetilde{\pi}([f])v\rVert=\left\lVert\int_{G}f(x)\pi(x)vd\mu(x)\right\rVert\leq \int_{G}\lVert f(x)\pi(x)v\rVert d\mu(x)=\lVert [f]\rVert_1\lVert v\rVert\quad(\forall v\in \mathcal{H}_{\pi}) $$ であるから、$\widetilde{\pi}([f])$ は $\mathcal{H}_{\pi}$ 上のノルムが $\lVert [f]\rVert_1$ 以下の有界線形作用素である。よって $\widetilde{\pi}\colon L^1(G,\mu)\rightarrow \mathbb{B}(\mathcal{H}_{\pi})$ はノルム減少な線形写像である。任意の $x\in G$, $[f]\in L^1(G,\mu)$ に対し、Bocbner積分の基本性質(測度と積分9:Bochner積分命題44.2)とHaar測度による積分の左不変性より、 $$ \begin{aligned} (u\mid \pi(x)\widetilde{\pi}([f])v)&=\left(u\mid \pi(x)\left(\int_{G}f(y)\pi(y)vd\mu(y)\right)\right) =\int_{G}f(y)(u\mid \pi(xy)v)d\mu(y)\\ &=\int_{G}f(x^{-1}y)(u\mid \pi(y)v)d\mu(y)=\left(u\mid \int_{G}f(x^{-1}y)\pi(y)vd\mu(y)\right)\\ &=(u\mid \widetilde{\pi}(L_x[f])v)\quad(\forall u,v\in \mathcal{H}_{\pi}) \end{aligned} $$ であるから、 $$ \pi(x)\widetilde{\pi}([f])=\widetilde{\pi}(L_x[f])\quad(\forall x\in G,\forall [f]\in L^1(G,\mu)) $$ が成り立つ。よって任意の $[f],[g]\in L^1(G,\mu)$ に対し、合成積の定義(定義1.20)とBocbner積分の基本性質(測度と積分9:Bochner積分命題44.2)より、 $$ \begin{aligned} \widetilde{\pi}([f]*[g])v&=\widetilde{\pi}\left(\int_{G}f(y)L_y[g]d\mu(y)\right)v =\int_{G}f(y)\widetilde{\pi}(L_y[g])vd\mu(y)\\ &=\int_{G}f(y)\pi(y)\widetilde{\pi}([g])vd\mu(y)=\widetilde{\pi}([f])\widetilde{\pi}([g])v\quad(\forall v\in \mathcal{H}_{\pi}) \end{aligned} $$ が成り立つので、$\widetilde{\pi}\colon L^1(G,\mu)\rightarrow \mathbb{B}(\mathcal{H}_{\pi})$ は乗法を保存する。さらに任意の $[f]\in L^1(G,\mu)$ に対し、命題1.16の $(3)$ より、 $$ \begin{aligned} (u\mid \widetilde{\pi}([f]^*)v)&=\int_{G}f^*(x)(u\mid \pi(x)v)d\mu(x) =\int_{G}\overline{f(x^{-1})}\Delta(x^{-1})(u\mid \pi(x)v)d\mu(x)\\ &=\int_{G}\overline{f(x)}(u\mid \pi(x^{-1})v)=\int_{G}(f(x)\pi(x)u\mid v)d\mu(x)\\ &=(\widetilde{\pi}([f])u\mid v)=(u\mid \widetilde{\pi}([f])^*v)\quad(\forall u,v\in \mathcal{H}_{\pi}) \end{aligned} $$ であるから、$\widetilde{\pi}\colon L^1(G,\mu)\rightarrow \mathbb{B}(\mathcal{H}_{\pi})$ は対合を保存する。よって $\widetilde{\pi}\colon L^1(G,\mu)\rightarrow \mathbb{B}(\mathcal{H}_{\pi})$ は $*$-環準同型写像である。定理1.25における $L^1(G,\mu)$ の近似単位元 $(\varphi_n)_{n\in \mathbb{N}}$ を取ると、任意の $v\in \mathcal{H}_{\pi}$ に対し、 $$ \begin{aligned} &\lVert \widetilde{\pi}(\varphi_n)v-v\rVert=\left\lVert \int_{G}\varphi_n(x)\pi(x)vd\mu(x)-\int_{G}\varphi_n(x)vd\mu(x)\right\rVert\\ &=\left\lVert \int_{G}\varphi_n(x)(\pi(x)v-v)d\mu(x)\right\rVert\leq \int_{G}\varphi_n(x)\lVert \pi(x)v-v\rVert d\mu(x)\rightarrow0\quad(n\rightarrow\infty) \end{aligned} $$ [8]であるから、 $$ v=\lim_{n\rightarrow\infty}\widetilde{\pi}(\varphi_n)v\in \overline{\widetilde{\pi}(L^1(G,\mu))\mathcal{H}_{\pi}} $$ である。よって、 $$ \widetilde{\pi}(L^1(G,\mu))\mathcal{H}_{\pi}={\rm span}\{\widetilde{\pi}([f])v:[f]\in L^1(G,\mu),v\in \mathcal{H}_{\pi}\} $$ は $\mathcal{H}_{\pi}$ で稠密であるので、$\widetilde{\pi}\colon L^1(G,\mu)\rightarrow \mathbb{B}(\mathcal{H}_{\pi})$ は $L^1(G,\mu)$ の $\mathcal{H}_{\pi}$ 上への表現である。

定理2.17(局所コンパクト群のユニタリ表現と $L^1$ 群環の表現の一対一対応)

$G$ を局所コンパクト群、$\mu\colon \mathcal{B}_G\rightarrow [0,\infty]$ を $G$ のHaar測度とし、$\rho$ を $L^1$ 群環 $L^1(G,\mu)$ のHilbert空間 $\mathcal{H}$ 上への表現(定義2.14)とする。このとき $G$ の $\mathcal{H}$ 上へのユニタリ表現 $\pi$ で、 $$ \rho([f])=\widetilde{\pi}([f])\quad(\forall [f]\in L^1(G,\mu)) $$ (ただし $\widetilde{\pi}$ は命題2.16におけるもの)を満たすものが唯一つ存在する。

Proof.

定理1.25における $L^1(G,\mu)$ の近似単位元 $(\varphi_n)_{n\in \mathbb{N}}$ を取る。まず一意性を示す。$\pi_1,\pi_2$ が $G$ の $\mathcal{H}$ 上へのユニタリ表現であり、 $$ \rho([f])=\widetilde{\pi_j}([f])\quad(\forall [f]\in L^1(G,\mu),j=1,2) $$ を満たすとする。このとき注意2.15より、 $$ \begin{aligned} \pi_1(x)v&=\lim_{n\rightarrow\infty}\pi_1(x)\widetilde{\pi_1}(\varphi_n)v= \lim_{n\rightarrow\infty}\widetilde{\pi_1}(L_x\varphi_n)v=\lim_{n\rightarrow\infty}\widetilde{\pi_2}(L_x\varphi_n)v\\ &=\lim_{n\rightarrow\infty}\pi_2(x)\widetilde{\pi_2}(\varphi_n)v=\pi_2(x)v\quad(\forall x\in G,\forall v\in \mathcal{H}) \end{aligned} $$ である。よって $\pi_1=\pi_2$ である。
存在を示す。 $$ \mathcal{H}_0\colon=\rho(L^1(G,\mu))\mathcal{H}={\rm span}\{\rho([f])v:[f]\in L^1(G,\mu),v\in \mathcal{H}\} $$ とおく。$L^1$ 群環の表現の定義(定義2.14)より $\mathcal{H}_0$ は $\mathcal{H}$ の稠密部分空間である。$\rho$ はノルム減少であるから任意の $x\in G$, $[f]\in L^1(G,\mu)$ に対し、 $$ \rho(L_x\varphi_n)\rho([f])=\rho(L_x\varphi_n*[f])=\rho(L_x(\varphi_n*[f]))\rightarrow \rho(L_x[f])\quad(n\rightarrow\infty)\quad\quad(*) $$ である。よって任意の $x\in G$ に対し、線形作用素 $$ \pi_0(x)\colon \mathcal{H}_0\rightarrow\mathcal{H}_0,\quad \pi_0(x)v\colon=\lim_{n\rightarrow\infty}\rho(L_x\varphi_n)v\quad(\forall v\in \mathcal{H}_0)\quad\quad(**) $$ が定義できる。$\rho$ がノルム減少であることと $\lVert L_x\varphi_n\rVert_1=\lVert \varphi_n\rVert_1=1$ $(\forall x\in G,\forall n\in \mathbb{N})$ であることから、 $$ \lVert \pi_0(x)v\rVert=\lim_{n\rightarrow\infty}\lVert \rho(L_x\varphi_n)v\rVert\leq \lVert v\rVert\quad(\forall x\in G,\forall v\in \mathcal{H}_0) $$ である。よって任意の $x\in G$ に対し $\pi_0(x)\colon \mathcal{H}_0\rightarrow\mathcal{H}$ はノルムが $1$ 以下の有界線形作用素であり、その $\mathcal{H}=\overline{\mathcal{H}_0}$ 上への一意拡張を $\pi(x)\in \mathbb{B}(\mathcal{H})$ とおけば、$\lVert \pi(x)\rVert=\lVert \pi_0(x)\rVert\leq1$ である。$(*),(**)$ より、 $$ \begin{aligned} &\pi(x)\pi(y)\rho([f])v=\pi(x)\rho(L_y[f])v=\rho(L_xL_y[f])v=\rho(L_{xy}[f])v\\ &=\pi(xy)\rho([f])v\quad(\forall x,y\in G,\forall [f]\in L^1(G,\mu),\forall v\in \mathcal{H}), \end{aligned} $$ $$ \pi(1)\rho([f])v=\rho(L_1[f]v)=\rho([f])v\quad(\forall [f]\in L^1(G,\mu),\forall v\in \mathcal{H}) $$ であるから、$\mathcal{H}_0$ の稠密性より、 $$ \pi(x)\pi(y)=\pi(xy)\quad(\forall x,y\in G),\quad \pi(1)=1 $$ が成り立つ。よって任意の $x\in G$ に対し $\pi(x)\in \mathbb{B}(\mathcal{H})$ は可逆で、$\pi(x)^{-1}=\pi(x^{-1})$ であり、 $$ \lVert v\rVert=\lVert \pi(x^{-1})\pi(x)v\rVert\leq \lVert \pi(x)v\rVert\leq \lVert v\rVert\quad(\forall x\in G,\forall v\in \mathcal{H}) $$ より、 $$ \lVert \pi(x)v\rVert=\lVert v\rVert\quad(\forall x\in G,\forall v\in \mathcal{H}) $$ であるから、$\pi(x)\in \mathbb{U}(\mathcal{H})$ $(\forall x\in G)$ である。任意の $[f]\in L^1(G,\mu)$ に対し、命題1.19より $G\ni x\mapsto L_x[f]\in L^1(G,\mu)$ は連続であるから、任意の $[f]\in L^1(G,\mu)$ と任意の $v\in \mathcal{H}$ に対し、 $$ G\ni x\mapsto \pi(x)\rho([f])v=\rho(L_x[f])v\in \mathcal{H} $$ は連続である。よって、$\lVert \pi(x)\rVert=1$ $(\forall x\in G)$ と $\mathcal{H}_0$ の稠密性より、任意の $v\in \mathcal{H}$ に対し、 $$ G\ni x\mapsto \pi(x)v\in \mathcal{H} $$ は連続である。ゆえに $\pi\colon G\ni x\mapsto \pi(x)\in \mathbb{U}(\mathcal{H})$ はSOT連続な群準同型写像であるので、$\pi$ は $G$ の $\mathcal{H}$ 上へのユニタリ表現である。合成積の定義(定義1.20)とBochner積分の基本性質(測度と積分9:Bochner積分命題44.2)より、 $$ \begin{aligned} \widetilde{\pi}([f])\rho([g])v&=\int_{G}f(x)\pi(x)\rho([g])vd\mu(x)=\int_{G}f(x)\rho(L_x[g])vd\mu(x)\\ &=\rho\left(\int_{G}f(x)L_x[g]d\mu(x)\right)v=\rho([f]*[g])v\\ &=\rho([f])\rho([g])v\quad(\forall [f],[g]\in L^1(G,\mu),\forall v\in \mathcal{H}) \end{aligned} $$ であるから、$\mathcal{H}_0$ の稠密性より、 $$ \widetilde{\pi}([f])v=\rho([f])v\quad(\forall [f]\in L^1(G,\mu),\forall v\in \mathcal{H}) $$ である。よって存在が示せた。

定義2.18(局所コンパクト群のユニタリ表現とそれに対応する $L^1$ 群環の表現の同一視)

$G$ を局所コンパクト群、$\mu\colon \mathcal{B}_G\rightarrow [0,\infty]$ を $G$ のHaar測度とする。$G$ のユニタリ表現と、$L^1$ 群環 $L^1(G,\mu)$ の表現は、命題2.16定理2.17により一対一に対応する。そこで以後、$G$ のユニタリ表現 $\pi\colon G\rightarrow\mathbb{U}(\mathcal{H}_{\pi})$ と、それに対応する $L^1(G,\mu)$ の表現 $\widetilde{\pi}\colon L^1(G,\mu)\rightarrow \mathbb{B}(\mathcal{H}_{\pi})$ は同じ記号で表す。すなわち、$G$ のユニタリ表現 $\pi\colon G\rightarrow \mathbb{U}(\mathcal{H})$ に対し、 $$ \pi([f])v=\int_{G}f(x)\pi(x)vd\mu(x)\quad(\forall [f]\in L^1(G,\mu),\forall v\in \mathcal{H}_{\pi}) $$ と表す。

命題2.19(局所コンパクト群の正則表現に対応する $L^1$ 群環の表現)

$G$ を局所コンパクト群、$\mu\colon \mathcal{B}_G\rightarrow [0,\infty]$ を $G$ のHaar測度、$\pi\colon G\rightarrow\mathbb{U}(L^2(G,\mu))$ を $G$ の正則表現(例2.2)とする。このとき、 $$ \pi([f])[g]=[f]*[g]\quad(\forall [f]\in L^1(G,\mu), \forall [g]\in L^2(G,\mu)) $$ (右辺は $L^1(G,\mu)$ と $L^2(G,\mu)$ の合成積(定義1,20))が成り立つ。また、 $$ \pi\colon L^1(G,\mu)\ni [f]\mapsto \pi([f])\in \mathbb{B}(L^2(G,\mu))\quad\quad(*) $$ は単射である。

Proof.

正則表現の定義(例2.2)と合成積の定義(定義1,20)より任意の $[f]\in L^1(G,\mu)$, $[g]\in L^2(G,\mu)$ に対し、 $$ \pi([f])[g]=\int_{G}f(x)\pi(x)[g]d\mu(x)=\int_{G}f(x)L_x[g]d\mu(x)=[f]*[g] $$ である。$(*)$ が単射であることを示す。$\pi([f])=0$ なる任意の $[f]\in L^1(G,\mu)$ を取る。定理1.25における $L^1(G,\mu)$ の近似単位元 $(\varphi_n)_{n\in \mathbb{N}}$ を取ると、$\varphi_n\in C_c(G)\subset L^2(G,\mu)$ $(\forall n\in \mathbb{N})$ より、 $$ 0=\pi([f])[\varphi_n]=[f]*[\varphi_n]\rightarrow [f]\quad(n\rightarrow\infty) $$ である。よって $[f]=0$ であるので $(*)$ は単射である。

定義2.20(群 $C^*$-環)

$G$ を局所コンパクト群、$\mu\colon \mathcal{B}_G\rightarrow [0,\infty]$ を $G$ のHaar測度とする。 $$ \lVert [f]\rVert_*\colon=\sup\{\lVert \pi([f])\rVert:\text{$\pi$ は $G$ のユニタリ表現}\}\leq \lVert [f]\rVert_1\quad(\forall [f]\in L^1(G,\mu)) $$ とおく。このとき命題2.19における単射性より $\lVert \cdot\rVert_*\colon L^1(G,\mu)\ni [f]\mapsto \lVert [f]\rVert_*\in [0,\infty)$ は $L^1(G,\mu)$ のノルムであり、また明らかに、 $$ \lVert [f]*[g]\rVert_*\leq\lVert [f]\rVert_*\lVert [g]\rVert_*,\quad \lVert [f]^**[f]\rVert_*=\lVert [f]\rVert_*^2\quad(\forall [f],[g]\in L^1(G,\mu)) $$ である。よって $L^1(G,\mu)$ の $\lVert \cdot\rVert_*$ に関する完備化は $C^*$-環である(次の命題2.21を参照)。この $C^*$-環 $$ C^*(G,\mu)\colon=\overline{L^1(G,\mu)}^{\lVert \cdot\rVert_*} $$ を $G$ の群 $C^*$-環と言う。

命題2.21

$X$ をノルム $*$-環で、 $$ \lVert x^*x\rVert=\lVert x\rVert^2\quad(\forall x\in X) $$ を満たすものとする。このとき $C^*$-環 $\widetilde{X}$ と、等長 $*$-環準同型写像 $\iota\colon X\rightarrow \widetilde{X}$ で、$\iota(X)$ が $\widetilde{X}$ において稠密であるようなものが存在する。

Proof.

直積 $*$-環 $\prod_{n\in \mathbb{N}}X$ の部分 $*$-環 $$ \mathcal{C}\colon=\left\{(x_n)_{n\in \mathbb{N}}\in \prod_{n\in \mathbb{N}}X:\text{$(x_n)_{n\in\mathbb{N}}$ はCauchy列}\right\} $$ と、$\mathcal{C}$ 上のセミノルム $$ p\colon \mathcal{C}\ni (x_n)_{n\in \mathbb{N}}\mapsto \lim_{n\rightarrow\infty}\lVert x_n\rVert\in[0,\infty) $$ を考える。このとき明らかに、 $$ p(zw)\leq p(z)p(w),\quad p(z^*z)=p(z)^*\quad(\forall z,w\in \mathcal{C}) $$ が成り立つ。$\mathcal{C}$ の $*$-イデアル(位相線形空間1:ノルムと内積定義2.4) $$ \mathcal{N}\colon =\{z\in \mathcal{C}:p(z)=0\} $$ に対し、商 $*$-環(位相線形空間1:ノルムと内積命題2.5を参照)$\mathcal{C}/\mathcal{N}$ を考え、商写像を、 $$ \mathcal{C}\ni z\mapsto [z]\in \mathcal{C}/\mathcal{N} $$ とおく。このとき、 $$ \lVert \cdot\rVert\colon \mathcal{C}/\mathcal{N}\ni [z]\mapsto\lVert [z]\rVert :=p(z)\in [0,\infty) $$ は $\mathcal{C}/\mathcal{N}$ 上のノルムであり、 $$ \lVert [z][w]\rVert\leq \lVert [z][w]\rVert,\quad \lVert [z]^*[z]\rVert=\lVert [z]\rVert^2\quad(\forall [z],[w]\in \mathcal{C}/\mathcal{N}) $$ が成り立つ。このノルムによるノルム $*$-環を $\widetilde{X}$ とおく。 $$ \iota\colon X\ni x\mapsto [(x)_{n\in \mathbb{N}}]\in \widetilde{X} $$ として等長線形写像を定義する。任意の $z=[(x_n)_{n\in \mathbb{N}}]\in \widetilde{X}$ と任意の $\epsilon\in (0,\infty)$ に対し、 $$ \lVert x_n-x_m\rVert\leq\epsilon\quad(\forall n,m\geq n_0) $$ を満たす $n_0\in \mathbb{N}$ を取ると、 $$ \lVert z-\iota(x_{n_0})\rVert=\lim_{n\rightarrow\infty}\lVert x_n-x_{n_0}\rVert\leq\epsilon $$ であるから、$\iota(X)$ は $\widetilde{X}$ において稠密である。後は $\widetilde{X}$ の完備性を示せばよい。そこで $\widetilde{X}$ の任意のCauchy列 $(z_n)_{n\in \mathbb{N}}$ を取る。$\iota(X)\subset \widetilde{X}$ の稠密性より、 $$ \lVert z_n-\iota(x_n)\rVert<\frac{1}{n}\quad(\forall n\in \mathbb{N}) $$ を満たす $(x_n)_{n\in\mathbb{N}}\in \prod_{n\in \mathbb{N}}X$ が取れて、任意の $n,m\in\mathbb{N}$ に対し、 $$ \lVert x_n-x_m\rVert\leq \lVert \iota(x_n)-z_n\rVert+\lVert z_n-z_m\rVert+\lVert z_m-\iota(x_m)\rVert <\frac{1}{n}+\lVert z_n-z_m\rVert+\frac{1}{m} $$ であるから、$(x_n)_{n\in \mathbb{N}}\in \mathcal{C}$ である。そこで $z\colon=[(x_n)_{n\in\mathbb{N}}]\in \widetilde{X}$ とおけば、任意の $n\in \mathbb{N}$ に対し、 $$ \lVert z-z_n\rVert\leq \lVert z-\iota(x_n)\rVert+\lVert \iota(x_n)-z_n\rVert=\lim_{m\rightarrow\infty}\lVert x_m-x_n\rVert+\frac{1}{n} $$ であるから、$\lim_{n\rightarrow\infty}z_n=z$ である。よって $\widetilde{X}$ は完備なので $C^*$-環である。

定義2.22(群 $C^*$-環の表現)

$G$ を局所コンパクト群、$\mu\colon \mathcal{B}_G\rightarrow [0,\infty]$ を $G$ のHaar測度、$(C^*(G,\mu),\lVert \cdot\rVert_*)$ を $G$ の群 $C^*$-環、$\mathcal{H}$ をHilbert空間とする。$C^*$-環 $C^*(G,\mu)$ から $C^*$-環 $\mathbb{B}(\mathcal{H})$ への $*$-環準同型写像 $\pi\colon C^*(G,\mu)\rightarrow \mathbb{B}(\mathcal{H})$(Banach環とC*-環のスペクトル理論定理10.1より自動的にノルム減少であることに注意)で、 $$ \pi(C^*(G,\mu))\mathcal{H}={\rm span}\{\pi(a)v:a\in C^*(G,\mu),v\in \mathcal{H}\} $$ が $\mathcal{H}$ で稠密であるものを $C^*(G,\mu)$ の $\mathcal{H}$ 上への表現と言う。

命題2.23(局所コンパクト群の $L^1$ 群環の表現と群 $C^*$-環の表現の一対一対応)

$G$ を局所コンパクト群、$\mu\colon \mathcal{B}_G\rightarrow[0,\infty]$ を $G$ のHaar測度とする。このとき $L^1(G,\mu)$ の任意の表現 $\pi\colon L^1(G,\mu)\rightarrow \mathbb{B}(\mathcal{H}_{\pi})$ は群 $C^*$-環 $(C^*(G,\mu),\lVert \cdot\rVert_1)$ の $\mathcal{H}_{\pi}$ 上への表現に一意拡張できる。また群 $C^*$-環 $C^*(G,\mu)$ の表現の $L^1(G,\mu)$ 上への制限は $L^1(G,\mu)$ の表現である。

Proof.

$L^1(G,\mu)$ の任意の表現 $\pi\colon L^1(G,\mu)\rightarrow \mathbb{B}(\mathcal{H}_{\pi})$ に対し、群 $C^*$-環のノルムの定義(定義2.20)より、 $$ \lVert \pi([f])\rVert\leq \lVert [f]\rVert_*\quad(\forall [f]\in L^1(G,\mu)) $$ であるから、$\pi$ は $C^*(G,\mu)=\overline{L^1(G,\mu)}^{\lVert\cdot\rVert_*}$ 上の $*$-環準同型写像 $\widetilde{\pi}\colon C^*(G,\mu)\rightarrow \mathbb{B}(\mathcal{H}_{\pi})$ に一意拡張できる(位相線形空間1:ノルムと内積命題3.6)。そして、 $$ \widetilde{\pi}(C^*(G,\mu))\mathcal{H}_{\pi}\supset \pi(L^1(G,\mu))\mathcal{H}_{\pi} $$ より $\widetilde{\pi}(C^*(G,\mu))\mathcal{H}_{\pi}$ も $\mathcal{H}_{\pi}$ で稠密であるから、 $\widetilde{\pi}\colon C^*(G,\mu)\rightarrow \mathbb{B}(\mathcal{H}_{\pi})$ は $C^*(G,\mu)$ の $\mathcal{H}_{\pi}$ 上への表現である。$\rho \colon C^*(G,\mu)\rightarrow \mathbb{B}(\mathcal{H}_{\rho})$ を $C^*(G,\mu)$ の任意の表現とする。$\rho$ の $L^1(G,\mu)$ 上への制限は $L^1(G,\mu)$ から $\mathbb{B}(\mathcal{H}_{\rho})$ への $*$-環準同型写像であり、$\rho$ のノルム減少性より、 $$ \rho(C^*(G,\mu)\mathcal{H}_{\rho})\subset \overline{\rho(L^1(G,\mu))\mathcal{H}_{\rho}} $$ であるから、$\rho(L^1(G,\mu))\mathcal{H}_{\rho}$ は $\mathcal{H}_{\rho}$ で稠密である。よって $\rho$ の $L^1(G,\mu)$ 上への制限は $L^1(G,\mu)$ の $\mathcal{H}_{\rho}$ 上への表現である。

定義2.24(局所コンパクト群のユニタリ表現とそれに対応する群 $C^*$-環の表現の同一視)

$G$ を局所コンパクト群、$\mu\colon \mathcal{B}_G\rightarrow [0,\infty]$ を $G$ のHaar測度とする。$G$ のユニタリ表現は定義2.18において $L^1$ 群環 $L^1(G,\mu)$ の表現と同一視した。命題2.23より、さらに $L^1(G,\mu)$ の表現と群 $C^*$-環 $C^*(G,\mu)$ の表現は、拡張と制限により一対一に対応するので、これらも同一視する。

定義2.25($L^1$ 群環上の有界非負線形汎関数全体 $(L^1(G,\mu))^*_+$)

$G$ を局所コンパクト群、$\mu\colon \mathcal{B}_G\rightarrow [0,\infty]$ を $G$ のHaar測度とする。有界線形汎関数 $\Phi\colon L^1(G,\mu)\rightarrow \mathbb{C}$ で、 $$ \Phi([f]^**[f])\geq0\quad(\forall [f]\in L^1(G,\mu)) $$ を満たすものを $L^1(G,\mu)$ 上の有界非負線形汎関数と言う。$L^1(G,\mu)$ 上の有界非負線形汎関数全体を $(L^1(G,\mu))^*_+\subset (L^1(G,\mu))^*$ と表す。

定義2.26(局所コンパクト群上の正定値連続関数全体 $\mathcal{P}(G)$)

$G$ を局所コンパクト群、$\mu\colon \mathcal{B}_G\rightarrow [0,\infty]$ を $G$ のHaar測度とする。有界連続関数 $p\colon G\rightarrow \mathbb{C}$ に対し、$\Phi_p\in (L^1(G,\mu))^*$ を、 $$ \Phi_p\colon L^1(G,\mu)\ni [f]\mapsto \int_{G}f(x)p(x)d\mu(x)\in \mathbb{C} $$ として定義する。$\Phi_p\in (L^1(G,\mu))^*_+$ であるとき $p$ を $G$ 上の正定値連続関数と言う。$G$ 上の正定値連続関数全体を $\mathcal{P}(G)$ と表す。

注意2.27(局所コンパクト群のユニタリ表現とベクトルから定まる正定値連続関数)

$G$ を局所コンパクト群、$\mu\colon \mathcal{B}_G\rightarrow [0,\infty]$ を $G$ のHaar測度とする。$G$ の任意のユニタリ表現 $\pi$ と $v\in \mathcal{H}_{\pi}$ に対し、 $$ p(x)\colon=(v\mid \pi(x)v)\quad(\forall x\in G) $$ として有界連続関数 $p\colon G\rightarrow \mathbb{C}$ を定義すれば、任意の $[f]\in L^1(G,\mu)$ に対し、 $$ \Phi_p([f])=\int_{G}f(x)(v\mid \pi(x)v)d\mu(x)=\int_{G}(v\mid f(x)\pi(x)v)d\mu(x) =(v\mid \pi([f])v) $$ であるから、 $$ \Phi_p([f]^**[f])=(v\mid \pi([f]^**[f])v)=(v\mid \pi([f])^*\pi([f])v)=\lVert \pi([f])v\rVert^2\geq0 $$ である。よって $\Phi_p$ は正定値連続関数である。

命題2.28

$G$ を局所コンパクト群、$\mu\colon \mathcal{B}_G\rightarrow [0,\infty]$ を $G$ のHaar測度、$p\colon G\rightarrow \mathbb{C}$ を有界連続関数とする。このとき任意の $[f],[g]\in L^1(G,\mu)$ に対し、 $$ \Phi_p([g]^**[f])=\int_{G}\left(\int_{G}\overline{g(y)}f(x)p(y^{-1}x)d\mu(x)\right)d\mu(y) $$ が成り立つ。そして $p\colon G\rightarrow \mathbb{C}$ が正定値連続関数であるならば、$\overline{p}\colon G\ni x\mapsto \overline{p(x)}\in \mathbb{C}$ も正定値連続関数である。

Proof.

任意の $[f],[g]\in L^1(G,\mu)$ に対し、合成積の定義(定義1.20)とFubiniの定理、モジュラー関数の基本性質(命題1.16)、Haar測度による積分の左不変性より、 $$ \begin{aligned} &\Phi_p([g]^**[f])=\int_{G}([g]^**[f])(x)p(x)d\mu(x)=\int_{G}\left(\int_{G}g^*(y)f(y^{-1}x)p(x)d\mu(x)\right)d\mu(y)\\ &=\int_{G}\left(\int_{G}\overline{g(y^{-1})}\Delta(y^{-1})f(y^{-1}x)d\mu(y)\right)d\mu(x) =\int_{G}\left(\int_{G}\overline{g(y)}f(yx)p(x)d\mu(y)\right)d\mu(x)\\ &=\int_{G}\left(\int_{G}\overline{g(y)}f(x)p(y^{-1}x)d\mu(x)\right)d\mu(y) \end{aligned} $$ である。よって任意の $[f]\in L^1(G,\mu)$ に対し、 $$ \begin{aligned} &\overline{\Phi_p([f]^**[f])}= \overline{\int_{G}\int_{G}\overline{f(y)}f(x)p(y^{-1}x)d\mu(x)d\mu(y)}\\ &=\int_{G}\int_{G}f(y)\overline{f(x)}\overline{p(y^{-1}x)}d\mu(x)d\mu(y) =\Phi_{\overline{p}}([\overline{f}]^**[\overline{f}]) \end{aligned} $$ であるから、$p$ が正定値連続関数であるならば、$\overline{p}$ も正定値連続関数である。

補題2.29($C_c(G)*C_c(G)\subset C_c(G)$)

$G$ を局所コンパクト群とする。任意の $f,g\in C_c(G)$ に対し $f*g\in C_c(G)$ が成り立つ。

Proof.

任意の $f,g\in C_c(G)$ に対し合成積の定義(定義1.21)より $f*g\in C_0(G)$ であり、 $$ (f*g)(x)=\int_{G}f(y)g(y^{-1}x)d\mu(y)\quad(\forall x\in G) $$ である。$(f*g)(x)\neq 0$ なる任意の $x\in G$ に対し、上式より、$G\ni y\mapsto g(y^{-1}x)\in \mathbb{C}$ の台 $x{\rm supp}(g)^{-1}$ と $f$ の台 ${\rm supp}(f)$ は交わる。よって $x\in {\rm supp}(f){\rm supp}(g)$ であり、$G$ の乗法の連続性より ${\rm supp}(f){\rm supp}(g)$ はコンパクトであるから、 $$ {\rm supp}(f*g)\subset {\rm supp}(f){\rm supp}(g) $$ である。よって $f*g\in C_c(G)$ である。

定理2.30(${\rm span}(\mathcal{P}(G)\cap C_c(G))$ は、$C_0(G)$, $L^p(G,\mu)$ $(p\in [1,\infty))$ において稠密)

$G$ を局所コンパクト群、$\mu\colon \mathcal{B}_G\rightarrow [0,\infty]$ を $G$ のHaar測度とする。このとき、 $$ {\rm span}(\mathcal{P}(G)\cap C_c(G)) $$ はBanach空間 $C_0(G)$, $L^p(G,\mu)$ $(p\in [1,\infty))$ それぞれにおいて稠密である。

Proof.

任意の $f\colon G\rightarrow\mathbb{C}$ に対し、$\widetilde{f}(x)\colon=\overline{f(x^{-1})}$ $(\forall x\in G)$ と定義する。また $\pi\colon G\rightarrow \mathbb{U}(L^2(G,\mu))$ を $G$ の正則表現(例2.2)とする。任意の $f\in C_c(G)$ に対し $\widetilde{f}\in C_c(G)$ であるので、補題2.29より $f*\widetilde{f}\in C_c(G)$ であり、 $$ \begin{aligned} (f*\widetilde{f})(x)&=\int_{G}f(y)\widetilde{f}(y^{-1}x)d\mu(y)=\int_{G}f(y)\overline{f(x^{-1}y)}d\mu(y)\\ &=(\pi(x)f\mid f)_2=\overline{(f\mid \pi(x)f)_2}\quad(\forall x\in G) \end{aligned} $$ であるから、注意2.27より 、 $$ f*\widetilde{f}\in \mathcal{P}(G)\cap C_c(G)\quad(\forall f\in C_c(G)) $$ が成り立つ。よって、 任意の $f,g\in C_c(G)$ に対し、 $$ f*\widetilde{g}=\frac{1}{4}\sum_{k=0}^{3}i^k(f+i^kg)*(\widetilde{f+i^kg})\in {\rm span}(\mathcal{P}(G)\cap C_c(G)) $$ であり、$g=\widetilde{\widetilde{g}}$ であるから、 $$ f*g\in {\rm span}(\mathcal{P}(G)\cap C_c(G))\quad(\forall f,g\in C_c(G)) $$ が成り立つ。今、定理1.25における $L^1(G,\mu)$ の近似単位元 $(\varphi_n)_{n\in \mathbb{N}}$ を取る。$\varphi_n\in C_c(G)$ $(\forall n\in \mathbb{N})$ であるから、任意の $f\in C_c(G)$ に対し、 $$ \varphi_n*f\in {\rm span}(\mathcal{P}(G)\cap C_c(G))\quad(\forall n\in \mathbb{N}) $$ であり、命題1.3と合成積の定義(定義1.21)より、$\sup$ ノルムに関して、 $$ \begin{aligned} &\lVert \varphi_n*f-f\rVert=\left\lVert \int_{G}\varphi_n(y)L_yfd\mu(y)-\int_{G}\varphi_n(y)fd\mu(y)\right\rVert\\ &=\left\lVert \int_{G}\varphi_n(y)(L_yf-f)d\mu(y)\right\rVert\leq \int_{G}\varphi_n(y)\lVert L_yf-f\rVert d\mu(y)\\ &\rightarrow0\quad(n\rightarrow\infty). \end{aligned} $$ よって、 $$ C_c(G)\subset \overline{{\rm span}(C_c(G)\cap \mathcal{P}(G))}\subset C_0(G) $$ が成り立つ。ここで測度と積分7:局所コンパクトHausdorff空間上のRadon測度命題28.3より $C_c(G)$ は $C_0(G)$ において稠密であるので、 $$ C_0(G)=\overline{{\rm span}(C_c(G)\cap \mathcal{P}(G))} $$ が成り立つ。また任意の $p\in [1,\infty)$, 任意の $f\in C_c(G)$ に対し命題1.19と合成積の定義(定義1.21)より、 $$ \begin{aligned} &\lVert \varphi_n*[f]-[f]\rVert_p=\left\lVert \int_{G}\varphi_n(y)L_y[f]d\mu(y)-\int_{G}\varphi_n(y)[f]d\mu(y)\right\rVert_p\\ &=\left\lVert \int_{G}\varphi_n(y)(L_y[f]-[f])d\mu(y)\right\rVert_p\leq \int_{G}\varphi_n(y)\lVert L_y[f]-[f]\rVert_pd\mu(y)\\ &\rightarrow0\quad(n\rightarrow\infty) \end{aligned} $$ であるから、 $$ C_c(G)\subset \overline{{\rm span}(C_c(G)\cap \mathcal{P}(G))}^{\lVert \cdot\rVert_p}\subset L^p(G,\mu) $$ が成り立つ。測度と積分7:局所コンパクトHausdorff空間上のRadon測度命題32.1より $C_c(G)$ は $L^p(G,\mu)$ において稠密であるので、 $$ L^p(G,\mu)=\overline{{\rm span}(C_c(G)\cap \mathcal{P}(G))}^{\lVert \cdot\rVert_p} $$ が成り立つ。

補題2.31(忠実性抜きの内積に関するSchwarzの不等式)

$X$ を $\mathbb{C}$ 上の線形空間とし、 $$ [\cdot,\cdot]\colon X\times X\ni (x,y)\mapsto [x,y]\in \mathbb{C} $$ が内積の忠実性以外の条件を満たすとする。すなわち、

  • $(1)$ 任意の $x,y\in X$ に対し、$\overline{[x,y]}=[y,x]$.
  • $(2)$ 任意の $x\in X$ に対し、$X\ni y\mapsto [x,y]\in \mathbb{C}$ は線形汎関数。
  • $(3)$ 任意の $x,\in X$ に対し、$[x,x]\geq0$.

このとき、 $$ \lvert [x,y]\rvert^2\leq [x,x][y,y]\quad(\forall x,y\in X) $$ が成り立つ。

Proof.

任意の $x,y\in X$ を取る。任意の $\alpha\in \mathbb{C}$ に対し、 $$ 0\leq [x-\alpha y, x-\alpha y]=[x,x]-\alpha [x,y]-\overline{\alpha}[y,x]+\lvert\alpha\rvert^2[y,y]\quad\quad(*) $$ である。もし $[y,y]>0$ ならば、$\alpha=\frac{[y,x]}{[y,y]}\in \mathbb{C}$ を $(*)$ に代入すれば、 $$ 0\leq [x,x]-\frac{\lvert [x,y]\rvert^2}{[y,y]} $$ となるので $\lvert [x,y]\rvert^2\leq [x,x][y,y]$ が成り立つ。またもし $[y,y]=0$ ならば、任意の $\epsilon\in (0,\infty)$ を取り、$\alpha\colon=\frac{1}{2\epsilon}[y,x]\in \mathbb{C}$ を $(*)$ に代入すれば、 $$ 0\leq [x,x]-\frac{1}{\epsilon}\lvert [x,y]\rvert^2 $$ となる。よって $\lvert [x,y]\rvert^2\leq \epsilon[x,x]$ が任意の $\epsilon\in (0,\infty)$ に対して成り立つので、$\lvert [x,y]\rvert^2=0=[x,x][y,y]$ である。

命題2.32($L^1$ 群環上の有界非負線形汎関数に関するSchwarzの不等式)

$G$ を局所コンパクト群、$\mu\colon \mathcal{B}_G\rightarrow [0,\infty]$ を $G$ のHaar測度、$\Phi\in (L^1(G,\mu))^*_+$ とする。このとき次が成り立つ。

  • $(1)$ 任意の $[f],[g]\in L^1(G,\mu)$ に対し、$\overline{\Phi([f]^**[g])}=\Phi([g]^**[f])$.
  • $(2)$ 任意の $[f],[g]\in L^1(G,\mu)$ に対し、$\lvert \Phi([f]^**[g])\rvert^2\leq \Phi([f]^**[f])\Phi([g]^**[g])$.
  • $(3)$ 任意の $[f]\in L^1(G,\mu)$ に対し、$\lvert \Phi([f])\rvert^2\leq \lVert \Phi\rVert\Phi([f]^**[f])\rvert$.
  • $(4)$ 任意の $[f],[g]\in L^1(G,\mu)$ に対し、$\lvert \Phi([g]^**[f]*[g])\rvert\leq \Phi([g]^**[g])\lVert [f]\rVert_1$.
Proof.

  • $(1)$

$$ L^1(G,\mu)\times L^1(G,\mu)\ni ([f],[g])\mapsto \Phi\left([f]^**[g]\right)\in \mathbb{C}\quad\quad(*) $$ は準双線形汎関数であるから、 $$ \Phi([f]^**[g])=\frac{1}{4}\sum_{k=0}^{3}i^k\Phi\left([i^k[f]+[g]]^**(i^k[f]+[g])\right)\quad\quad(**) $$ が成り立ち、各 $k\in \{0,1,2,3\}$ に対し、 $$ \Phi\left((i^k[f]+[g])^**(i^k[f]+[g])\right)=\Phi\left(([f]+\overline{i}^k[g])^**([f]+\overline{i}^k[g])\right) $$ は実数であるから、$(**)$ より、 $$ \begin{aligned} &\overline{\Phi\left([f]^**[g]\right)}=\frac{1}{4}\sum_{k=0}^{3}\overline{i}^k\Phi\left(([f]+\overline{i}^k[g])^**([f]+\overline{i}^k[g])\right)\\ &=\frac{1}{4}\sum_{k=0}^{3}i^k\Phi\left((i^k[g]+[f])^**(i^k[g]+[f])\right)=\Phi\left([g]^**[f]\right) \end{aligned} $$ が成り立つ。

  • $(2)$ $(*)$ は内積の忠実性以外の条件を満たすので、補題2.31より成り立つ。
  • $(3)$ $(\varphi_n)_{n\in \mathbb{N}}$ を定理1.25における $L^1(G,\mu)$ の近似単位元とする。$(2)$ より任意の $[f]\in L^1(G,\mu)$ に対し、

$$ \lvert \Phi(\varphi_n*[f])\rvert^2\leq \Phi(\varphi_n*\varphi_n)\Phi([f]^**[f])\leq \lVert \Phi\rVert\Phi([f]^**[f])\quad(\forall n\in \mathbb{N}) $$ であるから、 $$ \lvert \Phi([f])\rvert^2=\lim_{n\rightarrow\infty}\lvert \Phi(\varphi_n*[f])\rvert\leq \lVert \Phi\rVert\Phi([f]^**[f]) $$ が成り立つ。

  • $(4)$ 任意の $[g]\in L^1(G,\mu)$ を取り固定する。

$$ \Psi\colon L^1(G,\mu)\ni [f]\mapsto \Phi([g]^**[f]*[g])\in \mathbb{C} $$ とおくと、$\Psi\in (L^1(G,\mu))^*_+$ である。$(\varphi_n)_{n\in \mathbb{N}}$ を定理1.25における $L^1(G,\mu)$ の近似単位元とすると、任意の $[f]\in L^1(G,\mu)$ に対し $(2)$ より、 $$ \lvert \Psi(\varphi_n*[f])\rvert^2\leq \Psi(\varphi_n*\varphi_n)\Psi([f]^**[f])\quad(\forall n\in \mathbb{N}) $$ であり、 $$ \lim_{n\rightarrow\infty}\Psi(\varphi_n*\varphi_n)=\lim_{n\rightarrow\infty}\Phi([g]^**\varphi_n*\varphi_n*[g])=\Phi([g]^**[g]) $$ であるから、 $$ \lvert \Psi([f])\rvert^2=\lim_{n\rightarrow\infty}\lvert \Psi(\varphi_n*[f])\rvert^2\leq \Phi([g]^**[g])\Psi([f]^**[f]) $$ となる。よって、 $$ \lvert \Psi([f])\rvert^2\leq \Phi([g]^**[g])\lVert \Psi\rVert \lVert [f]\rVert_1^2\quad(\forall [f]\in L^1(G,\mu)) $$ であるから、 $$ \lVert \Psi\rVert\leq \Phi([g]^**[g]) $$ が成り立つ。ゆえに任意の $[f]\in L^1(G,\mu)$ に対し、 $$ \lvert \Phi([g]^**[f]*[g])\rvert=\lvert \Psi([f])\rvert\leq \Phi([g]^**[g])\lVert [f]\rVert_1 $$ が成り立つ。

定理2.33(局所コンパクト群上の正定値連続関数と $L^1$ 群環上の有界非負線形汎関数の一対一対応)

$G$ を局所コンパクト群、$\mu \colon \mathcal{B}_G\rightarrow [0,\infty]$ を $G$ のHaar測度とする。このとき、 $$ \mathcal{P}(G)\ni p\mapsto \Phi_p\in (L^1(G,\mu))^*_+\quad\quad(*) $$ は全単射である。そして任意の $p\in \mathcal{P}(G)\backslash \{0\}$ に対し、巡回ベクトル $v$ を持つ $G$ のユニタリ表現 $\pi$ で、 $$ p(x)=(v\mid \pi(x)v)\quad(\forall x\in G) $$ を満たすものが存在する。

Proof.

$(*)$ が単射であることは $L^\infty(G,\mu)=(L^1(G,\mu))^*$ であること(測度と積分5:$L^p$ 空間の完備性と双対性定理23.4)、および、空でない開集合のHaar測度が $0$ ではないこと(命題1.8)から $\mu$ -a.e. で $0$ である連続関数は恒等的に $0$ であることによる。任意の $\Phi\in (L^1(G,\mu))^*_+\backslash \{0\}$ を取り固定する。 $$ \mathcal{N}_{\Phi}\colon=\{[f]\in L^1(G,\mu):\Phi([f]^**[f])=0\} $$ とおくと、命題2.32の $(2)$ より $\mathcal{N}_{\Phi}$ は $L^1(G,\mu)$ の線形部分空間であり、命題2.32の $(3)$ と $\Phi\neq 0$ より $\mathcal{N}_{\Phi}\neq L^1(G,\mu)$ である。そこで商線形空間 $L^1(G,\mu)/\mathcal{N}_{\Phi}\neq \{0\}$ を考え、商写像を、 $$ q\colon L^1(G,\mu)\ni [f]\mapsto q([f])\in L^1(G,\mu)/\mathcal{N}_{\Phi} $$ とおく。命題2.32の $(1),(2)$ より、 $$ (q([f]),q([g]))_{\Phi}\colon =\Phi([f]^**[g])\quad(\forall [f],[g]\in L^1(G,\mu))\quad\quad(**) $$ として $L^1(G,\mu)/\mathcal{N}_{\Phi}$ の内積 $(\cdot \mid\cdot)_{\Phi}$ が定義できる。この内積空間 $(L^1(G,\mu)/\mathcal{N}_{\Phi},(\cdot\mid\cdot)_{\Phi})$ のHilbert空間への完備化(Hilbert空間上の作用素論定義12.3)を $(\mathcal{H}_{\Phi},(\cdot\mid \cdot)_{\Phi})$ とおく。任意の $[f]\in L^1(G,\mu)$ に対し命題2.32の $(4)$ より、 $$ \pi_0([f])\colon L^1(G,\mu)/\mathcal{N}_{\Phi}\ni q([g])\mapsto q([f]*[g])\in \mathcal{H}_{\Phi}\quad\quad(***) $$ はwell-definedな線形作用素である。そして命題2.32の $(4)$ より、 $$ \begin{aligned} &\lVert \pi_0([f])q([g])\rVert_{\Phi}^2=(q([f]*[g])\mid q([f]*[g]))_{\Phi}=\Phi(([f]*[g])^**([f]*[g]))\\ &\leq \Phi([g]^**[g])\lVert [f]\rVert_1^2=\lVert q([g])\rVert_{\Phi}^2\lVert [f]\rVert_1^2\quad(\forall q([g])\in L^1(G,\mu)/\mathcal{N}_{\Phi}) \end{aligned} $$ であるから、$(***)$ は有界線形作用素である。そこで $(***)$ を $\mathcal{H}_{\Phi}=\overline{L^1(G,\mu)/\mathcal{N}_{\Phi}}$ 上に一意拡張(位相線形空間1:ノルムと内積命題3.6)したものを $\pi_{\Phi}([f])\in \mathbb{B}(\mathcal{H}_{\Phi})$ と表す。このとき $(**)$, $(***)$ と、$q(L^1(G,\mu))=L^1(G,\mu)/\mathcal{N}_{\Phi}$ の $\mathcal{H}_{\Phi}$ における稠密性より、 $$ \pi_{\Phi}\colon L^1(G,\mu)\ni [f]\mapsto \pi_{\Phi}([f])\in \mathbb{B}(\mathcal{H}_{\Phi}) $$ は $*$-環準同型写像であることが分かる。今、命題2.32の $(3)$ と $(**)$ より、 $$ L^1(G,\mu)/\mathcal{N}_{\Phi}\ni q([f])\mapsto \Phi([f])\in \mathbb{C} $$ はwell-definedな有界線形汎関数である。これを $\mathcal{H}_{\Phi}=\overline{L^1(G,\mu)/\mathcal{N}_{\Phi}}$ 上の有界線形汎関数に一意拡張したものを考え、Rieszの定理(位相線形空間1:ノルムと内積定理6.13)によりそれに対応するベクトルを $v_{\Phi}\in \mathcal{H}_{\Phi}$ とおくと、 $$ \Phi([f])=(v_{\Phi}\mid q([f]))_{\Phi}\quad(\forall [f]\in L^1(G,\mu))\quad\quad(****) $$ となる。 $$ \begin{aligned} (q([f])\mid q([g]))_{\Phi}&=\Phi([f]^**[g])=(v_{\Phi}\mid q([f]^**[g]))_{\Phi}=(v_{\Phi}\mid \pi_{\Phi}([f]^*)q([g]))_{\Phi}\\ &=(\pi_{\Phi}([f])v_{\Phi}\mid q([g]))_{\Phi}\quad(\forall [f],[g]\in L^1(G,\mu)) \end{aligned} $$ であるから、$q(L^1(G,\mu))=L^1(G,\mu)/\mathcal{N}_{\Phi}$ の $\mathcal{H}_{\Phi}$ における稠密性より、 $$ q([f])=\pi_{\Phi}([f])v_{\Phi}\quad(\forall [f]\in L^1(G,\mu))\quad\quad(*****) $$ が成り立つ。これより、 $$ \overline{\pi_{\Phi}(L^1(G,\mu))v_{\Phi}}=\overline{L^1(G,\mu)/\mathcal{N}_{\Phi}}=\mathcal{H}_{\Phi} $$ であるから、$\pi_{\Phi}\colon L^1(G,\mu)\rightarrow \mathbb{B}(\mathcal{H}_{\Phi})$ は $L^1(G,\mu)$ の $\mathcal{H}_{\Phi}$ 上への表現、したがって $G$ の $\mathcal{H}_{\Phi}$ 上へのユニタリ表現(定義2.18を参照)であり、 $$ \mathcal{H}_{\Phi}=\overline{\pi_{\Phi}(L^1(G,\mu))v_{\Phi}}=\overline{{\rm span}(\pi(G)v_{\Phi})} $$ より、$G$ のユニタリ表現 $\pi_{\Phi}\colon G\rightarrow \mathbb{U}(\mathcal{H}_{\Phi})$ は巡回ベクトル $v_{\Phi}$ を持つ。そして $(****),(*****)$ より、 $$ \Phi([f])=(v_{\Phi}\mid \pi_{\Phi}([f])v_{\Phi})_{\Phi}=\int_{G}f(x)(v_{\Phi}\mid \pi_{\Phi}(x)v_{\Phi})d\mu(x)\quad(\forall [f]\in L^1(G,\mu)) $$ である。そこで $p_{\Phi}\colon G\rightarrow\mathbb{C}$ を、 $$ p_{\Phi}(x)\colon=(v_{\Phi}\mid \pi_{\Phi}(x)v_{\Phi})_{\Phi}\quad(\forall x\in G) $$ とおけば、 $$ \Phi([f])=\int_{G}f(x)p_{\Phi}(x)d\mu(x)=\Phi_{p_{\Phi}}([f])\quad(\forall [f]\in L^1(G,\mu)) $$ であるから、$p_{\Phi}$ が求める正定値連続関数である。以上で証明が終わる。

定義2.34(局所コンパクト群上の正定値連続関数に対するGNS表現)

$G$ を局所コンパクト群とする。任意の正定値連続関数 $p\in \mathcal{P}(G)\backslash \{0\}$ に対し、定理2.33より、巡回ベクトル $v$ を持つ $G$ のユニタリ表現 $\pi \colon G\rightarrow\mathbb{U}(\mathcal{H}_{\pi})$ で、 $$ p(x)=(v\mid \pi(x)v)\quad(\forall x\in G) $$ を満たすものが存在する。このユニタリ表現とその巡回ベクトルの組 $(\pi,v)$ を $p$ に対するGNS表現と言う。命題2.13より、$(\pi_1,v_1), (\pi_2,v_2)$ が共に $p$ に対するGNS表現であるならば、$\pi_1,\pi_2$ はユニタリ同値であり、ユニタリ作用素 $U\colon \mathcal{H}_{\pi_1}\rightarrow \mathcal{H}_{\pi_2}$ で、 $$ U\pi_1(x)=\pi_2(x)U\quad(\forall x\in G),\quad Uv_1=v_2 $$ を満たすものが定まる。

系2.35(正定値連続関数 $p\colon G\rightarrow\mathbb{C}$ の $\sup$ ノルムは $p(1)$)

$G$ を局所コンパクト群、$\mu\colon \mathcal{B}_G\rightarrow [0,\infty]$ を $G$ のHaar測度、$([h_{\lambda}])_{\lambda\in \Lambda}$ を $L^1(G,\mu)$ の近似単位元とする(定理1.25における $(\varphi_n)_{n\in \mathbb{N}}$ を考えればよい)。このとき任意の $p\in \mathcal{P}(G)\backslash \{0\}$ と $p$ のGNS表現 $(\pi,v)$ に対し、 $$ \lVert p\rVert=p(1)=\lVert v\rVert^2=\lim_{n\rightarrow\infty}\Phi_p(\varphi_n)=\lVert \Phi_p\rVert\quad\quad(*) $$ が成り立つ。

Proof.

$$ \lvert p(x)\rvert=\lvert (v\mid \pi(x)v)\rvert\leq \lVert v\rVert^2=p(1)\quad\forall x\in G) $$ であるから、 $$ \lVert p\rVert=\lVert v\rVert^2=p(1) $$ である。また、 $$ \Phi_p([f])=\int_{G}f(x)p(x)d\mu(x)=\int_{G}f(x)(v\mid \pi(x)v)d\mu(x) =(v\mid \pi([f])v)\quad(\forall [f]\in L^1(G,\mu)) $$ より、 $$ \lvert \Phi_p([f])\rvert\leq \lVert v\rVert\lVert \pi([f])v\rVert\leq \lVert [f]\rVert_1\lVert v\rVert^2\quad(\forall [f]\in L^1(G,\mu)) $$ であるから $\lVert \Phi_p\rVert\leq \lVert v\rVert^2$ であり、注意2.15より、 $$ \lVert v\rVert^2=\lim_{\lambda\in\Lambda}(v\mid \pi([h_{\lambda}])v)=\lim_{\lambda\in\Lambda}\Phi_p([h_{\lambda}])\leq \lVert \Phi_p\rVert\leq v\rVert^2 $$ であるから、 $$ \lVert v\rVert^2=\lim_{\lambda\in\Lambda}\Phi_p([h_{\lambda}])=\lVert \Phi_p\rVert $$ である。よって $(*)$ が成り立つ。

定義2.36(局所コンパクト群上のノルムが $1$ の正定値連続関数全体のなす凸集合 $\mathcal{P}_1(G)$)

$G$ を局所コンパクト群とする。$G$ 上の $\sup$ ノルムが $1$ の正定値連続関数全体を $\mathcal{P}_1(G)$ とすると、’’’系2.35より、 $$ \mathcal{P}_1(G)=\{p\in \mathcal{P}(G):\lVert p\rVert=1\}=\{p\in \mathcal{P}(G):p(1)=1\} $$ である。よって $\mathcal{P}_1(G)$ は各点ごとの演算で凸集合をなす。そこで $\mathcal{P}_1(G)$ の端点(定義14.1)全体を、 $$ {\rm ext}(\mathcal{P}_1(G))=\{p\in \mathcal{P}_1(G):\text{$p$ は凸集合 $\mathcal{P}_1(G)$ の端点}\} $$ とおく。

定理2.37($\mathcal{P}_1(G)$ の端点とそれに対応するGNS表現の既約性)

$G$ を局所コンパクト群、$p\in \mathcal{P}_1(G)$ とし、$p$ に対するGNS表現(定義2.34)を $(\pi,v)$ とする。このとき次は互いに同値である。

  • $(1)$ $p$ は $\mathcal{P}_1(G)$ の端点である、すなわち、$p\in {\rm ext}(\mathcal{P}_1(G))$.
  • $(2)$ $\pi$ は既約である。
Proof.

$(1)\Rightarrow(2)$ を示す。$(1)$ が成り立つとする。$\pi$ が既約であることを示すには、Schurの補題(定理2.10)より、$\mathcal{C}(\pi)=\mathbb{C}1$ が成り立つことを示せばよい。$\mathcal{C}(\pi)=\pi(G)'$ はvon Neumann環であるから射影によって生成される(Hilbert空間上の作用素論定理19.7)。よって $\pi(G)'$ に属する任意の射影作用素 $P$ を取り、$P$ が $1$ か $0$ であることを示せば十分である。 $$ p_1(x)=(v\mid P\pi(x)v),\quad p_2(x)=(v\mid (1-P)\pi(x)v)\quad(\forall x\in G) $$ とおく。$P,1-P$ は $\pi(G)'$ に属する非負有界自己共役作用素であることと定義2.18より、 $$ \begin{aligned} &\int_{G}([f]^**[f])(x)p_1(x)d\mu(x)=\int_{G}([f]^**[f])(v\mid P\pi(x)v)d\mu(x)\\ &=(v\mid P\pi([f]^**[f])v)=(v\mid P\pi([f])^*\pi([f])v)\\ &=(\pi([f])v\mid P\pi([f])v)\geq0\quad(\forall [f]\in L^1(G,\mu)) \end{aligned} $$ であり、全く同様に、 $$ \int_{G}([f]^**[f])(x)p_2(x)d\mu(x)=(\pi([f])v\mid (1-P)\pi([f])v)\geq0\quad(\forall [f]\in L^1(G,\mu)) $$ である。よって $p_1,p_2\in \mathcal{P}(G)$ である。また $p_1,p_2$ の定義より、 $$ p_1+p_2=p $$ であり、系2.35より、 $$ \lVert p_1\rVert+\lVert p_2\rVert=p_1(1)+p_2(1)=p(1)=\lVert p\rVert=1 $$ であるから、$p\in {\rm ext}(\mathcal{P}_1(G))$ より、ある $\alpha\in [0,1]$ が存在して、$p_1=\alpha p$ が成り立つ。よって、 $$ \alpha(\pi(y)v\mid \pi(x)v)=\alpha p(y^{-1}x)=p_1(y^{-1}x)=(v\mid P\pi(y^{-1}x)v) =(\pi(y)v\mid P\pi(x)v)\quad(\forall x,y\in G) $$ であるから、${\rm span}(\pi(G)v)$ の $\mathcal{H}_{\pi}$ における稠密性より、$P=\alpha 1$ を得る。ゆえに $\pi$ は既約である。
$(2)\Rightarrow(1)$ を示す。$\pi$ が既約であるとする。$p\in {\rm ext}(\mathcal{P}_1(G))$ であることを示すには、$p_1\in \mathcal{P}(G)$ で、$p-p_1\in \mathcal{P}(G)$ なるものを取り、$p_1=\alpha p$ なる $\alpha\in [0,1]$ が存在することを示せば十分である。$p-p_1\in \mathcal{P}(G)$ より、 $$ \Phi_p([f]^**[f])-\Phi_{p_1}([f]^**[f])=\Phi_{p-p_1}([f]^**[f])\geq0\quad(\forall [f]\in L^1(G,\mu)) $$ であるから、 $$ 0\leq \Phi_{p_1}([f]^**[f])\leq \Phi_p([f]^**[f])=\lVert \pi([f])v\rVert^2\quad(\forall [f]\in L^1(G,\mu)) $$ である。よって命題2.32より、 $$ \pi(L^1(G,\mu))v\times \pi(L^1(G,\mu))v\ni (\pi([f])v,\pi([g])v)\mapsto \Phi_{p_1}([f]^**[g])\in \mathbb{C}\quad\quad(*) $$ はwell-definedな有界準双線形汎関数である。注意2.15命題2.16より $\pi(L^1(G,\mu))v$ は $\mathcal{H}_{\pi}$ の稠密部分空間であるので、$(*)$ は $\mathcal{H}_{\pi}$ 上の有界準双線形汎関数に一意拡張できることが分かる。よって定理7.1より $T\in \mathbb{B}(\mathcal{H}_{\pi})$ で、 $$ (\pi([f])v\mid T\pi([g])v)=\Phi_{p_1}([f]^**[g])\quad(\forall [f],[g]\in L^1(G,\mu)) $$ を満たすものが存在する。$(\varphi_n)_{n\in \mathbb{N}}$ を定理1.25における $L^1(G,\mu)$ の近似単位元とすれば、任意の $x,y\in G$ に対し、注意2.15命題2.16より、 $$ (\pi(y)v\mid T\pi(x)v)=\lim_{n\rightarrow\infty}(\pi(L_y\varphi_n)v\mid T\pi(L_x\varphi_n)v)=\lim_{n\rightarrow\infty}\Phi_{p_1}((L_y\varphi_n)^**(L_x\varphi_n)) $$ となり、$p_1\in \mathcal{P}(G)$ に対するGNS表現を $(\pi_1,v_1)$ とすれば、 $$ \lim_{n\rightarrow\infty}\Phi_{p_1}((L_y\varphi_n)^**(L_x\varphi_n)) =\lim_{n\rightarrow\infty}(\pi_1(L_y\varphi_n)v\mid \pi_1(L_x\varphi_n)v)=(\pi_1(y)v\mid \pi_1(x)v)=p_1(y^{-1}x) $$ となるから、 $$ (\pi(y)v\mid T\pi(x)v)=p_1(y^{-1}x)\quad(\forall x,y\in G)\quad\quad(**) $$ が成り立つ。よって任意の $x,y,z\in G$ に対し、 $$ (\pi(z)v\mid T\pi(x)\pi(y)v)=p_1(z^{-1}xy)=p_1((x^{-1}z)^{-1}y)=(\pi(x^{-1})\pi(z)v\mid T\pi(y)v)=(\pi(z)v\mid \pi(x)T\pi(y)v) $$ であるから、${\rm span}(\pi(G)v)$ の $\mathcal{H}_{\pi}$ における稠密性より、 $$ T\pi(x)=\pi(x)T\quad(\forall x\in G) $$ が成り立つ。ゆえに $T\in \mathcal{C}(\pi)$ であるから、Schurの補題(定理2.10)より、$T=\alpha1$ なる $\alpha\in \mathbb{C}$ が存在する。$(**)$ より、 $$ p_1(x)=(v\mid T\pi(x)v)=\alpha(v\mid \pi(x)v)=\alpha p(x)\quad(\forall x\in G) $$ であるから、$p_1=\alpha p$ である。よって $p\in {\rm ext}(\mathcal{P}_1(G))$ が成り立つ。

定義2.38(コンパクト一様収束位相)

$X$ を位相空間、$C(X)$ を $X$ 上の複素数値連続関数全体に各点ごとの演算を入れた $\mathbb{C}$ 上の線形空間とする。任意の空でないコンパクト集合 $K\subset X$ に対し、 $$ p_K\colon C(X)\ni f\mapsto \underset{x\in K}{\rm max}\lvert f(x)\rvert \in [0,\infty) $$ とおくと、$p_K$ は線形空間 $C(X)$ 上のセミノルムである。そして一点集合がコンパクトであることから、セミノルムの集合 $$ \mathcal{P}\colon=\{p_K:\text{$K\subset X$ は空でないコンパクト集合}\} $$ は $C(X)$ 上のセミノルムの分離族(位相線形空間2:セミノルム位相と汎弱位相定義8.3)である。 そこで $\mathcal{P}$ から誘導される $C(X)$ 上のセミノルム位相(位相線形空間2:セミノルム位相と汎弱位相定義8.4)を $C(X)$ 上のコンパクト一様収束位相と言う。位相線形空間2:セミノルム位相と汎弱位相命題8.6の $(1)$ より、$C(X)$ のネット $(f_{\lambda})_{\lambda\in \Lambda}$ が $f\in C(X)$ にコンパクト一様収束位相で収束することは、任意の空でないコンパクト集合 $K\subset X$ に対し、 $$ \underset{x\in K}{\rm max}\lvert f_{\lambda}(x)-f(x)\rvert=p_K(f_{\lambda}-f)\rightarrow0 $$ が成り立つことと同値である。すなわち $(f_{\lambda})_{\lambda\in \Lambda}$ が $f$ にコンパクト一様収束することと同値である。

定理2.39($\mathcal{P}_1(G)$ と $(L^1(G,\mu))^*_{+,1}$ はコンパクト一様収束位相と弱 $*$-位相に関して同相)

$G$ を局所コンパクト群、$\mu\colon \mathcal{B}_G\rightarrow [0,\infty]$ を $G$ のHaar測度とし、 $$ (L^1(G,\mu))^*_{+,1}\colon=\{\Phi\in (L^1(G,\mu))^*_+:\lVert \Phi\rVert=1\} $$ とおく。このとき、 $$ (\mathcal{P}_1(G), \text{コンパクト一様収束位相})\ni p\mapsto \Phi_p\in (L^1(G,\mu))^*_{+,1}, \text{弱 $*$-位相})\quad\quad(*) $$ は同相写像である。

Proof.

$(*)$ が全単射であることは定理2.33系2.35による。$\mathcal{P}_1(G)$ のネット $(p_{\lambda})_{\lambda\in \Lambda}$ が $p\in \mathcal{P}_1(G)$ にコンパクト一様収束位相で収束するならば、任意の $f\in C_c(G)$ に対し、 $$ \lvert \Phi_{p_{\lambda}}(f)-\Phi_p(f)\rvert =\left\lvert \int_{G}f(x)(p_{\lambda}(x)-p(x))d\mu(x)\right\rvert\leq \lVert f\rVert \underset{x\in {\rm supp}(f)}{\rm max}\lvert p_{\lambda}(x)-p(x)\rvert\rightarrow0 $$ である。そして $C_c(G)$ は $L^1(G,\mu)$ において稠密(測度と積分7:局所コンパクトHausdorff空間上のRadon測度命題32.1)であり、$\lVert \Phi_{p_{\lambda}}\rVert=1$ $(\forall \lambda\in \Lambda)$, $\lVert \Phi_p\rVert=1$ であるから、 $$ \lvert \Phi_{p_{\lambda}}([f])-\Phi_p([f])\rvert\rightarrow0\quad(\forall [f]\in L^1(G,\mu)) $$ が成り立つ。よって $L^1(G,\mu)^*$ の弱 $*$-位相で $\lim_{\lambda\in \Lambda}\Phi_{p_{\lambda}}=\Phi_p$ が成り立つから、ネットによる位相空間論定理3より、$(*)$ は連続である。
$(*)$ の逆写像が連続であることを示す。$\mathcal{P}_1(G)$ のネット $(p_{\lambda})_{\lambda\in\Lambda}$ と $p\in \mathcal{P}_1(G)$ に対し、弱 $*$-位相で $\lim_{\lambda\in\Lambda}\Phi_{p_{\lambda}}=\Phi_p$ が成り立つと仮定し、コンパクト一様収束位相で $\lim_{\lambda\in\Lambda}p_{\lambda}=p$ が成り立つことを示せばよい。任意のコンパクト集合 $K\subset G$ と任意の $\epsilon\in (0,\infty)$ を取り固定する。$p$ のGNS表現(定義2.34)を $(\pi,v)$ とする。$(\varphi_n)_{n\in \mathbb{N}}$ を定理1.25における $L^1(G,\mu)$ の近似単位元とすると、注意2.15より、 $$ \lim_{n\rightarrow\infty}\Phi_p(\varphi_n)=\lim_{n\rightarrow\infty}(v\mid \pi(\varphi_n)v)=\lVert v\rVert^2=p(1)=1, $$ $$ \lim_{n\rightarrow\infty}\Phi_p(\varphi_n*\varphi_n)=\lim_{n\rightarrow\infty}(\pi(\varphi_n)v\mid \pi(\varphi_n)v)=\lVert v\rVert^2=p(1)=1 $$ であるから、$\varphi\in C_c(G)$ で、 $$ \lVert \varphi\rVert_1=1,\quad \varphi^*=\varphi,\quad 1-\Phi_p(\varphi)-\Phi_p(\varphi)+\Phi_p(\varphi*\varphi)<\epsilon^2\quad\quad(**) $$ を満たすものが取れる。弱 $*$-位相で $\lim_{\lambda\in\Lambda}\Phi_{p_{\lambda}}=\Phi_p$ が成り立つので、$\lambda_0\in \Lambda$ が存在し、 $$ 1-\Phi_{p_{\lambda}}(\varphi)-\Phi_{p_{\lambda}}(\varphi)+\Phi_{p_{\lambda}}(\varphi*\varphi)<\epsilon\quad(\forall \lambda\geq\lambda_0)\quad\quad(***) $$ が成り立つ。$(**)$ より任意の $x\in G$ に対し、 $$ \begin{aligned} \lvert p(x)-\Phi_p(L_x\varphi)\rvert^2&=\lvert (v\mid \pi(x)v)-(v\mid \pi(x)\pi(\varphi)v)\rvert^2=\lvert (v\mid \pi(x)(1-\pi(\varphi))v)\rvert^2\\ &\leq \lVert \pi(x)(1-\pi(\varphi))v\rVert^2\lVert v\rVert^2=\lVert (1-\pi(\varphi))v\rVert^2\\ &=1-(v\mid \pi(\varphi)v)-(\pi(\varphi)v\mid v)+(\pi(\varphi)v\mid \pi(\varphi)v)\\ &=1-\Phi_p(\varphi)-\Phi_p(\varphi)+\Phi_p(\varphi*\varphi)<\epsilon^2 \end{aligned} $$ であるから、 $$ \lvert p(x)-\Phi_p(L_x\varphi)\rvert<\epsilon\quad(\forall x\in G)\quad\quad(****) $$ が成り立つ。同様にして、各 $p_{\lambda}$ のGNS表現と $(***)$ より、 $$ \lvert p_{\lambda}(x)-\Phi_{p_{\lambda}}(L_x\varphi)\rvert<\epsilon\quad(\forall \lambda\geq\lambda_0,\forall x\in G)\quad\quad(*****) $$ が成り立つことが分かる。命題1.19より $G\ni x\mapsto L_x\varphi\in L^1(G,\mu)$ は連続であり、$K$ はコンパクトであるから、有限個の $x_1,\ldots,x_n\in K$ と $x_1,\ldots,x_n$ の近傍 $U_1,\ldots,U_n$ で、 $$ K\subset \bigcup_{j=1}^{n}U_j,\quad \lVert L_x\varphi-L_{x_j}\varphi\rVert_1<\epsilon\quad(\forall j\in \{1,\ldots,n\},\forall x\in U_j)\quad\quad(******) $$ なるものが取れる。そして弱 $*$-位相で $\lim_{\lambda\in\Lambda}\Phi_{p_{\lambda}}=\Phi_p$ であるので、$\lambda_1\geq \lambda_0$ なる $\lambda_1\in \Lambda$ で、 $$ \lvert \Phi_{p_{\lambda}}(L_{x_j}\varphi)-\Phi_p(L_{x_j}\varphi)\rvert<\epsilon\quad(\forall j\in \{1,\ldots,n\},\forall \lambda\geq\lambda_1)\quad\quad(*******) $$ なるものが取れる。よって任意の $x\in K$ と任意の $\lambda\geq \lambda_1$ に対し、$x\in U_j$ なる $j\in\{1,\ldots,n\}$ を取れば、$(****)$, $(*****)$, $(******)$, $(*******)$ より、 $$ \begin{aligned} \lvert p(x)-p_{\lambda}(x)\rvert&\leq \lvert p(x)-\Phi_p(L_x\varphi)\rvert+\lvert \Phi_p(L_x\varphi)-\Phi_p(L_{x_j}\varphi)\rvert+\lvert \Phi_p(L_{x_j}\varphi)-\Phi_{p_{\lambda}}(L_{x_j}\varphi)\rvert\\ &+\lvert \Phi_{p_{\lambda}}(L_{x_j}\varphi)-\Phi_{p_{\lambda}}(L_x\varphi)\rvert+\lvert \Phi_{p_{\lambda}}(L_x\varphi)-p_{\lambda}(x)\rvert<5\epsilon \end{aligned} $$ となるので、 $$ \lvert p(x)-p_{\lambda}(x)\rvert<5\epsilon\quad(\forall x\in K,\forall \lambda\geq\lambda_1) $$ が成り立つ。コンパクト集合 $K\subset G$ と $\epsilon\in (0,\infty)$ は任意なので、コンパクト一様収束位相で $\lim_{\lambda\in\Lambda}p_{\lambda}=p$ が成り立つ。

定理2.40($\mathcal{P}_1(G)$ の端点全体の凸包は $\mathcal{P}_1(G)$ においてコンパクト一様収束位相で稠密)

$G$ を局所コンパクト群とする。凸集合 $\mathcal{P}_1(G)$ において $\mathcal{P}_1(G)$ の端点全体 ${\rm ext}(\mathcal{P}_1(G))$ の凸包 ${\rm conv}({\rm ext}(\mathcal{P}_1(G)))$ はコンパクト一様収束位相で稠密である。

Proof.

$\mu\colon \mathcal{B}_G\rightarrow [0,\infty]$ をHaar測度とする。定理2.39より凸集合 $$ S\colon=\{\Phi\in (L^1(G,\mu))^*_+:\lVert \Phi\rVert=1\}=\{\Phi_p:p\in \mathcal{P}_1(G)\} $$ の端点全体 $$ {\rm ext}(S)=\{\Phi_p:\in {\rm ext}(\mathcal{P}_1(G))\} $$ の凸包 $$ {\rm conv}({\rm ext}(S))=\{\Phi_p:p\in {\rm conv}({\rm ext}(\mathcal{P}_1(G)))\} $$ が $S$ において弱 $*$-位相で稠密であることを示せばよい。 $$ B\colon=\{\Phi\in (L^1(G,\mu))^*_+:\lVert \Phi\rVert\leq1\} $$ とおく。Alaogluの定理(位相線形空間2:セミノルム位相と汎弱位相定理10.3)より $B$ は弱 $*$-位相でコンパクトな凸集合であるから、Krein-Milmanの端点定理(位相線形空間3:Hahn-Banachの定理とKrein-Milmanの端点定理定理14.3)より、 $$ B=\overline{{\rm conv}({\rm ext}(B))}^{w^*\text{-topology}} $$ が成り立つ。よってネットによる位相空間論命題2.4より任意の $\Phi\in S\subset B$ に対し、${\rm conv}({\rm ext}(B))$ のネット $(\Phi_{\lambda})_{\lambda\in\Lambda}$ で、弱 $*$-位相で $\Phi_{\lambda}\rightarrow\Phi$ なるものが取れる。ここで任意の $\epsilon\in (0,1)$ に対し、$(1-\epsilon) B$ も弱 $*$-位相でコンパクトであるから、$(1-\epsilon)B\subset B$ は弱 $*$-位相で閉集合である。そして $\Phi\notin (1-\epsilon)B$ であるので、ある $\lambda_0\in \Lambda$ に対し、 $$ \Phi_{\lambda}\notin (1-\epsilon)B\quad(\forall \lambda\geq\lambda_0) $$ となる。よって、 $$ 0\leq 1-\lVert \Phi_{\lambda}\rVert<\epsilon\quad(\forall \lambda\geq\lambda_0) $$ であるから、$\lVert \Phi_{\lambda}\rVert\rightarrow 1$ が成り立つ。ゆえに、 $$ \Phi=\lim_{\lambda\in\Lambda}\frac{1}{\lVert \Phi_{\lambda}\rVert}\Phi_{\lambda}\in \overline{{\rm conv}({\rm ext}(S))}^{w^*\text{-topology}} $$ が成り立つ。これより ${\rm conv}({\rm ext}(S))$ は $S$ において弱 $*$-位相で稠密である。

定理2.41(Gelfand-Raikovの定理)

$G$ を局所コンパクト群とする。$x,y\in G$ が $x\neq y$ ならば、$G$ の既約なユニタリ表現 $\pi$ で、$\pi(x)\neq \pi(y)$ なるものが存在する。

Proof.

Urysohnの補題(測度と積分7:局所コンパクトHausdorff空間上のRadon測度定理27.6)より $\varphi\in C_c(G)$ で $\varphi(x)\neq \varphi(y)$ なるものが存在する。よって定理2.30より $p\in \mathcal{P}_1(G)$ で $p(x)\neq p(y)$ なるものが存在する。よって定理2.40より $p\in {\rm ext}(\mathcal{P}_1(G))$ で $p(x)\neq p(y)$ なるものが存在する。この $p\in {\rm ext}(\mathcal{P}_1(G))$ に対するGNS表現 $(\pi,v)$ を取ると、定理2.37より $\pi$ は既約であり、 $$ (v\mid \pi(x))=p(x)\neq p(y)=(v\mid \pi(y)v) $$ より、$\pi(x)\neq \pi(y)$ である。

3. 局所コンパクト群の等質空間上の不変測度

定義3.1(左剰余類、左剰余類空間)

$G$ を群、$H$ を $G$ の部分群とする。$x,y\in G$ が $y^{-1}x\in H$ を満たすことを $x\sim y$ と表すと、$\sim$ は $G$ における同値関係であり、この同値関係に関する $x\in G$ の同値類は $xH\subset G$ である。$xH$ を $H$ に関する $x$ の左剰余類と言う。そして $H$ に関する左剰余類全体からなる集合(同値関係 $\sim$ に関する商集合)を、 $$ G/H\colon=G/\sim =\{xH:x\in G\} $$ と表し、$H$ に関する左剰余類空間と言う。商写像は今後、大抵、 $$ q\colon G\ni x\mapsto q(x)\colon=xH\in G/H $$ と表す。

定義3.2(正規部分群、剰余類群)

$G$ を群、$H$ を $G$ の部分群とする。任意の $x\in G$ に対し $xH=Hx$ が成り立つとき、$H$ を $G$ の正規部分群と言う。$H$ が $G$ の正規部分群であるとき、左剰余類空間 $G/H$ に対し、 $$ G/H\times G/H\ni (q(x),q(y))\mapsto q(xy)\in G/H $$ はwell-definedであり、この二項演算により左剰余類空間 $G/H$ は群をなす。この群 $G/H$ を $H$ に関する剰余類群と言う。このとき商写像 $$ q\colon G\ni x\mapsto q(x)\in G/H $$ は全射群準同型写像である。

定義3.3(局所コンパクト群の左剰余類空間の商位相)

$G$ を局所コンパクト群、$H$ を $G$ の閉部分群、$G/H$ を左剰余類空間、$q\colon G\rightarrow G/H$ を商写像とする。 $$ \{V\subset G/H:\text{$q^{-1}(V)$ は $G$ の開集合}\} $$ は $G/H$ の位相をなす。これを左剰余類空間 $G/H$ の商位相と言う。局所コンパクト群 $G$ とその閉部分群 $H$ に対し、左剰余類空間 $G/H$ には、特に断らない限り、この商位相が入っているものとする。

命題3.4(左剰余類空間の商位相の基本性質)

$G$ を局所コンパクト群、$H$ を $G$ の閉部分群、$G/H$ を左剰余類空間、$q\colon G\rightarrow G/H$ を商写像とする。

  • $(1)$ $q\colon G\rightarrow G/H$ は連続かつ開写像(開集合を開集合に写す写像)である。また $G/H$ の任意の開集合 $V$ は $G$ のある開集合 $U$ に対し $V=q(U)$ と表せる。
  • $(2)$ $G/H$ は局所コンパクトHausdorff空間である。また $G$ の第二可算性により $G/H$ は第二可算である。
  • $(3)$ $G/H$ の任意のコンパクト集合 $C$ は $G$ のあるコンパクト集合 $K$ に対し $C=q(K)$ と表せる。
  • $(4)$ $H$ が正規部分群であるとき $G/H$ は局所コンパクト群である。
Proof.

  • $(1)$ $q\colon G\rightarrow G/H$ が連続であることは $G/H$ の商位相の定義より自明である。$G$ の任意の開集合 $U$ に対し、

$$ q^{-1}(q(U))=UH=\bigcup_{x\in H}Ux $$ は $G$ の開集合であるから $q(U)$ は $G/H$ の開集合である。よって $q$ は開写像である。今、$G/H$ の任意の開集合 $V$ を取る。商位相の定義より $U=q^{-1}(V)$ は $G$ の開集合であり、$q\colon G\rightarrow G/H$ は全射であるから、$V=q(q^{-1}(V))=q(U)$ である。

  • $(2)$ $q(x)\neq q(y)$ とすると、$y^{-1}x\notin H$ であり、$H$ は $G$ の閉集合であるから、$G$ の群演算の連続性より単位元 $1\in G$ の開近傍 $U$ で、

$$ (yU)^{-1}(xU)\cap H=\emptyset\quad\quad(*) $$ なるものが取れる。$(1)$ より $q(xU)$, $q(yU)$ はそれぞれ $q(x),q(y)\in G/H$ の開近傍であり、$(*)$ より $q(xU)\cap q(yU)=\emptyset$ であるから、$G/H$ はHausdorff空間である。$G$ の局所コンパクト性より任意の $x\in G$ に対し $x\in U\subset K$ なる $G$ の開集合 $U$ とコンパクト集合 $K$ が取れる。$(1)$ より $q(U)$ は $G/H$ の開集合、$q(K)$ は $G/H$ のコンパクト集合であり、$q(x)\in q(U)\subset q(K)$ である。よって $G/H$ の任意の元はコンパクトな近傍を持つので、$G/H$ は局所コンパクトHausdorff空間である。$(1)$ より $G$ の開集合の可算基 $\{U_n\}_{n\in \mathbb{N}}$ に対し、$\{q(U_n)\}_{n\in \mathbb{N}}$ は $G/H$ の開集合の可算基である。よって $G$ の第二可算性により $G/H$ は第二可算である。

  • $(3)$ 任意のコンパクト集合 $C\subset G/H$ を取る。$(1)$ と $G$ の局所コンパクト性より閉包がコンパクトな有限個の開集合 $U_1,\ldots,U_n\subset G$ で、

$$ C\subset \bigcup_{j=1}^{n}q(U_j)\quad\quad(**) $$ なるものが取れる。$(2)$ より $G/H$ はHausdorff空間であるから、コンパクト集合 $C$ は $G/H$ の閉集合であり、$\bigcup_{j=1}^{n}\overline{U_j}$ は $G$ のコンパクト集合であるから、 $$ K\colon =q^{-1}(C)\cap \bigcup_{j=1}^{n}\overline{U_j} $$ は $G$ のコンパクト集合である。そして $(**)$ より $q(K)=C$ である。

定義3.5(局所コンパクト群の局所コンパクトHausdorff空間への作用)

$G$ を局所コンパクト群、$S$ を局所コンパクトHausdorff空間とする。 $$ G\times S\ni (x,s)\mapsto xs\in S\quad\quad(*) $$ が $G$ の $S$ への作用であるとは次が成り立つことを言う。

  • $(1)$ $(*)$ は連続である。
  • $(2)$ 任意の $s\in S$ に対し $1s=s$.
  • $(3)$ 任意の $x,y\in G$ と任意の $s\in S$ に対し $(xy)s=x(ys)$.

$(*)$ が $G$ の $S$ への作用であるとき、任意の $s\in S$ に対し、$G$ の閉部分群 $$ H_s\colon=\{x\in G:xs=s\} $$ を $s$ における固定部分群と言う。

定義3.6(局所コンパクト群の推移的作用と等質空間)

$G$ を局所コンパクト群、$S$ を局所コンパクトHausdorff空間とする。$G$ の $S$ への作用 $$ G\times S\ni (x,s)\mapsto xs\in S $$ が推移的であるとは、任意の $s,t\in S$ に対し、$t=xs$ なる $x\in G$ が存在することを言う。またこのとき $S$ を $G$ の等質空間と言う。

定義3.7(群準同型写像の核)

$G,H$ を群とし、$\varphi\colon G\rightarrow H$ を群準同型写像とする。 $$ {\rm Ker}(\varphi)=\{x\in G:\varphi(x)=1\} $$ を $\varphi$ の核と言う。

命題3.8(群準同型写像の核の基本性質)

$G,H$ を群とし、$\varphi\colon G\rightarrow H$ を群準同型写像とする。このとき、

  • $(1)$ $\varphi\colon G\rightarrow H$ が単射であることと ${\rm Ker}(\varphi)=\{1\}$ であることは同値である。
  • $(2)$ ${\rm Ker}(\varphi)$ は $G$ の正規部分群である。そして剰余類群 $G/{\rm Ker}(\varphi)$ を考えると、

$$ \widehat{\varphi}\colon G/{\rm Ker}(\varphi)\ni q(x)\mapsto\varphi(x)\in H $$ はwell-definedな単射群準同型写像である。

Proof.

  • $(1)$ $\varphi(x_1)=\varphi(x_2)$ $\Leftrightarrow$ ${x_1}^{-1}x_2\in {\rm Ker}(\varphi)$ であることに注意すればよい。
  • $(2)$ 任意の $x\in G$ に対し $x^{-1}{\rm Ker}(\varphi)x\subset {\rm Ker}(\varphi)$ であること、$q(x_1)=q(x_2)$ ならば $x_1^{-1}x_2\in {\rm Ker}(\varphi)$ より $\varphi(x_1)=\varphi(x_2)$ であることに注意すればよい。

例3.9(連続群準同型写像による作用)

$G,H$ を局所コンパクト群、$\varphi\colon G\rightarrow H$ を連続群準同型写像とする。このとき、 $$ G\times H\ni (x,y)\mapsto \varphi(x)y\in H $$ は $G$ の $H$ への作用である。この作用について $H$ の任意の点に関する固定部分群は ${\rm Ker}(\varphi)$ である。またこの作用が推移的であるための必要十分条件は $\varphi$ が全射であることである。

例3.10(左剰余類空間への推移的作用)

$G$ を局所コンパクト群、$H$ を $G$ の閉部分群とする。このとき命題3.4より、 $$ G\times G/H\ni (x,q(y))\mapsto q(xy)\in G/H $$ は局所コンパクト群 $G$ の局所コンパクトHausdorff空間 $G/H$ への推移的作用である。

定理3.11(Baireのカテゴリ定理(局所コンパクトHausdorff空間版))

$X$ を局所コンパクトHausdorff空間、$(V_n)_{n\in \mathbb{N}}$ を $X$ の稠密な開集合の列とする。このとき $\bigcap_{n\in \mathbb{N}}V_n$ は $X$ で稠密である。

Proof.

$A\colon=\bigcap_{n\in \mathbb{N}}V_n$ とおく。$\overline{A}=X$ を示すには、$X$ の任意の空でない開集合 $U_0$ を取り、 $$ U_0\cap A\neq\emptyset\quad\quad(*) $$ が成り立つことを示せばよい。$\overline{V_1}=X$ であるから、$U_0\cap V_1\neq \emptyset$ であるので、測度と積分7:局所コンパクトHausdorff空間上のRadon測度命題27.4より閉包がコンパクトな空でない開集合 $U_1$ で、 $$ \overline{U_1}\subset U_0\cap V_1 $$ を満たすものが取れる。$\overline{V_2}=X$ であるから、同様に測度と積分7:局所コンパクトHausdorff空間上のRadon測度命題27.4より閉包がコンパクトな空でない開集合 $U_2$ で、 $$ \overline{U_2}\subset U_1\cap V_2 $$ を満たすものが取れる。同様の操作を続けていけば、閉包がコンパクトな空でない開集合の列 $(U_n)_{n\in \mathbb{N}}$ で、 $$ \overline{U_n}\subset U_{n-1}\cap V_n\quad(\forall n\in \mathbb{N})\quad\quad(**) $$ を満たすものが構成できる。$(\overline{U_n})_{n\in \mathbb{N}}$ は空でないコンパクト集合の単調減少列であるから、 $$ \bigcap_{n\in \mathbb{N}}\overline{U_n}\neq\emptyset $$ であり、$(**)$ より、 $$ \bigcap_{n\in \mathbb{N}}\overline{U_n}\subset U_0\cap \bigcap_{n\in \mathbb{N}}V_n=U_0\cap A $$ であるから、$(*)$ が成り立つ。

系3.12

$X$ を(空ではない)局所コンパクトHausdorff空間、$(F_n)_{n\in \mathbb{N}}$ を $X$ の閉集合の列とし、$X=\bigcup_{n\in \mathbb{N}}F_n$ であるとする。このときある $n\in \mathbb{N}$ に対し $F_n^{\circ}\neq\emptyset$ が成り立つ。

Proof.

もし任意の $n\in \mathbb{N}$ に対し $F_n^{\circ}=\emptyset$ であるならば、 $$ \overline{X\backslash F_n}=X\backslash F_n^{\circ}=X\quad(\forall n\in \mathbb{N}) $$ であるから、定理3.11より $\bigcap_{n\in\mathbb{N}}(X\backslash F_n)$ は $X$ で稠密である。しかし仮定より、 $$ \bigcap_{n\in \mathbb{N}}(X\backslash F_n)=X\backslash \bigcup_{n\in \mathbb{N}}F_n=\emptyset $$ であるので、$X$ が空ではないことに矛盾する。

定理3.13(等質空間は固定部分群に関する左剰余類空間)

$G$ を局所コンパクト群、$S$ を局所コンパクトHausdorff空間とし、 $$ G\times S\ni (x,s)\mapsto xs\in S\quad\quad(*) $$ を $G$ の $S$ への推移的作用とする。このとき任意の $s_0\in S$ に対し、 $$ G\ni x\mapsto xs_0\in S\quad\quad(**) $$ は全射な開写像(開集合を開集合に写す写像)である。そして $s_0$ における固定部分群 $H_{s_0}=\{x\in G:xs_0=s_0\}$ に対し、左剰余類空間 $G/H_{s_0}$ と商写像 $q\colon G\rightarrow G/H_{s_0}$ を考えると、 $$ G/H_{s_0}\ni q(x)\mapsto xs_0\in S\quad\quad(***) $$ は同相写像である。

Proof.

$(**)$ が全射であることは $(*)$ が推移的作用であることによる。$(**)$ が開写像であることを示す。$G$ の任意の空でない開集合 $U$ を取り、$Us_0$ が $S$ の開集合であることを示せばよい。任意の $x_0\in U$ を取り、$1\in G$ のコンパクト対称近傍 $V$ で、$x_0VV\subset U$ なるものを取る。 $$ G\subset \bigcup_{y\in G}yV^{\circ} $$ であり、$G$ は第二可算なのでLindelöfであるから、$G$ の列 $(y_n)_{n\in \mathbb{N}}$ で、 $$ G=\bigcup_{n\in \mathbb{N}}y_nV^{\circ} $$ なるものが取れる。$(**)$ が全射であることから、 $$ S=\bigcup_{n\in \mathbb{N}}y_n(V^{\circ}s_0)=\bigcup_{n\in \mathbb{N}}y_n(Vs_0) $$ であり、$V$ のコンパクト性より $Vs_0$ は $S$ のコンパクト集合、したがって閉集合であるから、系3.12より、 $$ (Vs_0)^{\circ}\neq\emptyset $$ である。そこで $x_1\in V$ で、$x_1s_0\in (Vs_0)^{\circ}$ なるものを取れば、 $$ x_0s_0=x_0x_1^{-1}x_1s_0\in x_0x_1^{-1}(Vs_0)^{\circ}\subset x_0VVs_0\subset Us_0 $$ であり、$x_0x_1^{-1}(Vs_0)^{\circ}$ は $S$ の開集合であるので、$x_0s_0\in Us_0$ は $Us_0$ の内点である。よって $x_0\in U$ の任意性より $Us_0$ は $S$ の開集合である。ゆえに $(**)$ は開写像である。
$q(x_1)=q(x_2)$ ならば、$x_1^{-1}x_2\in H_{s_0}$ であるから、 $$ x_1s_0=x_1(x_1^{-1}x_2)s_0=x_2s_0 $$ である。よって $(***)$ はwell-definedである。$(**)$ が全射であることから $(***)$ も全射である。そしてて $x_1s_0=x_2s_0$ ならば、$x_2^{-1}x_1s_0=s_0$ であるから、$x_2^{-1}x_1\in H_{s_0}$ であるので $q(x_1)=q(x_2)$ である。よって $(***)$ は全単射である。$(**)$ は連続な開写像であるから、命題3.4より $(***)$ は同相写像である。

注意3.14(第二可算局所コンパクト群の等質空間は第二可算)

局所コンパクト群 $G$ の等質空間 $S$ は $G$ の第二可算性より第二可算である。実際、定理3.13より $S$ はある固定部分群による左剰余類空間と同相であり、命題3.4より左剰余類空間は、$G$ の第二可算性により第二可算である。

系3.15

$G,H$ を局所コンパクト群、$\varphi\colon G\rightarrow H$ を全射連続群準同型写像とする。このとき、 $$ G/{\rm Ker}(\varphi)\ni q(x)\mapsto \varphi(x)\in H $$ は同型同相写像である。

Proof.

群同型写像であることは $\varphi$ が全射であることと命題3.8の $(2)$ による。$G$ の $H$ への作用 $$ G\times H\ni (x,y)\mapsto \varphi(x)y\in H $$ について $H$ の任意の点における固定部分群は ${\rm Ker}(\varphi)$ であるから、定理3.13より同相写像である。

定義3.16(等質空間上の関数の平行移動)

$G$ を局所コンパクト群、$S$ を $G$ の等質空間とし、$f$ を $S$ 上の関数とする。このとき任意の $x\in G$ に対し、$S$ 上の関数 $L_xf$ を、 $$ L_xf(s)\colon= f(x^{-1}s)\quad(\forall s\in S) $$ として定義する。

命題3.17(等質空間における平行移動の一様連続性)

$G$ を局所コンパクト群、$S$ を $G$ の等質空間とし、$f\in C_0(S)$ とする。このとき、任意の $\epsilon\in (0,\infty)$ に対し、単位元 $1\in G$ の対称開近傍 $V$ で、 $$ y^{-1}x\in V\quad\Rightarrow \quad \lvert L_yf(s)-L_xf(s)\rvert<\epsilon\quad(\forall s\in S) $$ なるものが存在する。特に、 $$ G\ni x\mapsto L_xf\in C_0(S) $$ は $\sup$ ノルムに関して連続である。

Proof.

任意の $\epsilon\in (0,\infty)$ を取り固定する。$f\in C_0(S)$ は無限遠で消える連続関数であるから、$K\colon=(\lvert f\rvert\geq \frac{\epsilon}{2})$ はコンパクト集合である。$f$ は連続であるから、各 $s\in K$ に対し $1\in G$ の開近傍 $U_s$ で、 $$ \lvert f(t)-f(s)\rvert<\frac{\epsilon}{2}\quad(\forall t\in (U_s)s) $$ なるものが取れる。各 $s\in K$ に対し $1\in G$ の対称開近傍 $V_s$ で、$V_sV_s\subset U_s$ なるものを取る。 $$ K\subset \bigcup_{s\in K}(V_s)s $$ であり、定理3.13より各 $(V_s)s$ は $S$ の開集合であるから、$K$ のコンパクト性より有限個の $s_1,\ldots,s_n\in K$ が取れて、 $$ K\subset \bigcup_{j=1}^{n}(V_{s_j})s_j $$ が成り立つ。$1\in G$ の対称開近傍 $$ V\colon=\bigcap_{j=1}^{n}V_{s_j} $$ を考える。$y^{-1}x\in V$ を満たす任意の $x,y\in G$ と任意の $s\in S$ を取り、 $$ \lvert f(y^{-1}s)-f(x^{-1}s)\rvert<\epsilon $$ が成り立つことを示せばよい。もし $x^{-1}s,y^{-1}s\notin K$ ならば、$K$ の定義より、 $$ \lvert f(y^{-1}s)-f(x^{-1}s)\rvert\leq \lvert f(y^{-1}s)\rvert+\lvert f(x^{-1}s)\rvert<\epsilon $$ である。またもし $x^{-1}s\in K$ ならば、$x^{-1}s\in (V_{s_j})s_j$ なる $j\in \{1,\ldots,n\}$ が取れて、 $$ y^{-1}s=y^{-1}x(x^{-1}s)\in V(V_{s_j})s_j\subset (V_{s_j}V_{s_j})s_j\subset U_{s_j}s_j $$ となる。よって $x^{-1}s,y^{-1}s\in (U_{s_j})s_j$ であるから、 $$ \lvert f(y^{-1}s)-f(x^{-1}s)\rvert\leq \lvert f(y^{-1}s)-f(s_j)\rvert+\lvert f(s_j)-f(x^{-1}s_j)\rvert<\epsilon $$ である。$V$ の対称性より $y^{-1}x\in V$ は $x^{-1}y\in V$ を意味するので、$y^{-1}s\in K$ であるとしても同様にして上式が成り立つことが分かる。よって $x,y\in G$ が $y^{-1}x\in V$ を満たす限り、 $$ \lvert f(y^{-1}s)-f(x^{-1}s)\rvert<\epsilon\quad(\forall s\in S) $$ が成り立つ。

定義3.18(等質空間上の不変測度)

$G$ を局所コンパクト群、$S$ を $G$ の等質空間とする。$S$ 上のRadon測度 $\nu\colon \mathcal{B}_S\rightarrow [0,\infty]$ が、 $$ \nu(S)>0,\quad \nu(xB)=\nu(B)\quad(\forall x\in G,\forall B\in \mathcal{B}_S) $$ を満たすとき、$\nu$ を $S$ 上の $G$-不変測度と言う。
注意3.14より、$S$ は第二可算局所コンパクトHausdorff空間である。よって注意1.5で述べたように、$S$ 上のBorel測度がRadon測度であるための必要十分条件は、任意のコンパクト集合に対して有限測度を与えることである。



関連記事

参考文献

脚注

  1. $G\times G\ni (x,y)\mapsto xy\in G$ の連続性に注意。
  2. 任意の $f,g\in C_{c,\mathbb{R}}(G)$ に対し $(f+g)_+-(f+g)_-=f+g=(f_+-f_-)+(g_+-g_-)$ より $(f+g)_++f_-+g_-=(f+g)_-+f_++g_+$ であること、任意の $f\in C_{c,\mathbb{R}}(G)$ と任意の $\alpha\in \mathbb{R}$ に対し、$\alpha\geq0$ ならば $(\alpha f)_{\pm}=\alpha{\rm max}(\pm f,0)=\alpha f_{\pm}$ であり、$\alpha<0$ ならば $(\alpha f)_{\pm}=(-\alpha){\rm max}(\mp f,0)=-\alpha f_{\mp}$ であることに注意すればよい。
  3. 任意の $f\in C_{c,++}(G)$ に対し $\int_{G}f(x)d\mu_i(x)>0$ $(i=1,2)$ であることに注意。
  4. $L^1(G,\mu)\ni [h]\mapsto L_x[h]\in L^1(G,\mu)$ は等長線形作用素であることに注意。
  5. $L^1(G,\mu)\ni [w]\mapsto [w]*[h]\in L^1(G,\mu)$ が有界線形作用素であることに注意。
  6. $\mathcal{K}$ は $\mathcal{H}$ の閉部分空間なので $\mathcal{H}$ の内積によりHilbert空間である。
  7. ユニタリ表現の定義(定義2.1)より $\pi\colon G\rightarrow\mathbb{U}(\mathcal{H}_{\pi})$ はSOTに関して連続であるから、$G\ni x\mapsto\pi(x)v\in \mathcal{H}_{\pi}$ は連続である。$G$ は第二可算公理を満たすとしているので $\sigma$-コンパクトであるから、連続関数 $G\ni x\mapsto \pi(x)v\in \mathcal{H}_{\pi}$ の像は $\sigma$-コンパクト、したがって可分である(距離空間のコンパクト集合は可分であること(距離空間の位相の基本的性質命題4.2)に注意)。よって関数 $G\ni x\mapsto f(x)\pi(x)v\in \mathcal{H}_{\pi}$ の像は可分であるからBochner可測(測度と積分9:Bochner積分定義41.1)であり、$\int_{G}\lVert f(x)\pi(x)v\rVert d\mu(x)=\int_{G}\lvert f(x)\rvert d\mu(x)\lVert v\rVert<\infty$ であるから、$G\ni x\mapsto f(x)\pi(x)v\in \mathcal{H}_{\pi}$ はBochner可積分である。
  8. $G\ni x\mapsto \pi(x)v\in \mathcal{H}_{\pi}$ の $1\in G$ における連続性による。