無限量子系のための作用素環論

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本稿においては、無限量子系の数学的構造と関わりの深い、作用素環(主にvon Neumann環)の基本的事項と、Fock空間上の作用素論の初歩的なことについて論じる。予備知識として入門テキスト「位相線形空間」Banach環とC*-環のスペクトル理論Hilbert空間上の作用素論にある程度の内容を仮定する。
本稿ではHilbert空間と言えば、特に断ることのない限り $\mathbb{C}$ 上のものとする。また、Hilbert空間の内積は第二変数に関して線形とし、$\mathbb{N}=\{1,2,3,\ldots\}$、$\mathbb{Z}_+=\{0,1,2,3,\ldots\}$ とする。

1. $C^*$-環の表現、非負線形汎関数、状態、GNS表現

定義1.1($C^*$-環の表現)

$\mathcal{A}$ を $C^*$-環、$\mathcal{H}$ をHilbert空間とする。$*$-環準同型写像 $\pi\colon \mathcal{A}\rightarrow \mathbb{B}(\mathcal{H})$ を $\mathcal{A}$ の $\mathcal{H}$ 上への表現と言う。 Banach環とC*-環のスペクトル理論定理10.1より $\pi$ は自動的にノルム減少、すなわち、 $$ \lVert \pi(A)\rVert\leq \lVert A\rVert\quad(\forall A\in \mathcal{A}) $$ である。またBanach環とC*-環のスペクトル理論系10.3より $\pi(\mathcal{A})$ は $\mathbb{B}(\mathcal{H})$ の部分 $C^*$-環である。$\mathcal{H}$ を $\pi$ の表現空間と言う。$\pi$ が $C^*$-環 $\mathcal{A}$ の表現であるとき、その表現空間を $\mathcal{H}_{\pi}$ と表すこともある。
$C^*$-環 $\mathcal{A}$ の表現 $\pi$ で、 $$ \pi(\mathcal{A})\mathcal{H}_{\pi}\colon={\rm span}\{\pi(A)v:A\in \mathcal{A}, v\in \mathcal{H}_{\pi}\} $$ が $\mathcal{H}_{\pi}$ において稠密であるものを、$\mathcal{A}$ の非退化表現と言う。以後、$C^*$ 環の表現と言えば非退化表現を指すこととする。

定義1.2($C^*$-環の表現の忠実性)

$\mathcal{A}$ を $C^*$-環、$\pi$ を $\mathcal{A}$ の表現とする。$\pi\colon \mathcal{A}\rightarrow\mathbb{B}(\mathcal{H}_{\pi})$ が単射であるとき $\pi$ は忠実であると言う。$\pi$ が忠実であるとき、Banach環とC*-環のスペクトル理論定理10.2より、$\pi$ はノルムを保存する。すなわち、 $$ \lVert \pi(A)\rVert=\lVert A\rVert\quad(\forall A\in \mathcal{A}) $$ が成り立つ。

命題1.3($C^*$-環の近似単位元の表現)

$\mathcal{A}$ を $C^*$-環、$(U_{\lambda})_{\lambda\in \Lambda}$ を $\mathcal{A}$ の近似単位元(Banach環とC*-環のスペクトル理論定義9.1)とし、$\pi$ を $\mathcal{A}$ の表現とする。このとき、 $$ \pi(U_{\lambda})\rightarrow 1\quad(\text{w.r.t. SOT}) $$ が成り立つ。(SOTについてはHilbert空間上の作用素論定義2.1を参照。)

Proof.

任意の $A\in \mathcal{A}$ と $v\in \mathcal{H}_{\pi}$ に対し、 $$ \pi(U_{\lambda})\pi(A)v=\pi(U_{\lambda}A)v\rightarrow \pi(A)v $$ であるから、 $$ \pi(U_{\lambda})v\rightarrow v\quad(\forall v\in \pi(\mathcal{A})\mathcal{H}_{\pi}) $$ が成り立つ。よって $\pi(\mathcal{A})\mathcal{H}_{\pi}\subset \mathcal{H}_{\pi}$ の稠密性(定義1.1)と $\lVert \pi(U_{\lambda})\rVert\leq\lVert U_{\lambda}\rVert\leq 1$ $(\forall \lambda\in \Lambda)$ より、 $$ \pi(U_{\lambda})v\rightarrow v\quad(\forall v\in \mathcal{H}_{\pi}) $$ が成り立つので、SOTで $\pi(U_{\lambda})\rightarrow 1$ が成り立つ。

定義1.4(部分表現、既約表現)

$\mathcal{A}$ を $C^*$-環、$\pi$ を $\mathcal{A}$ の表現とする。$\mathcal{K}\subset \mathcal{H}_{\pi}$ が、 $$ \pi(\mathcal{A})\mathcal{K}\subset \mathcal{K}\quad(\forall A\in \mathcal{A}) $$ を満たすとき $\mathcal{K}$ は $\pi$ 不変であると言う。$\pi$ 不変な閉部分空間 $\mathcal{K}\subset \mathcal{H}_{\pi}$ に対し、 $$ \pi|_{\mathcal{K}}(A)v=\pi(A)v\in \mathcal{K}\quad(\forall A\in \mathcal{A},\forall v\in \mathcal{K}) $$ とおくと、$\pi|_{\mathcal{K}}(A)\in \mathbb{B}(\mathcal{K})$ であり、 $$ \pi|_{\mathcal{K}}\colon \mathcal{A}\ni A\mapsto \pi|_{\mathcal{K}}(A)\in \mathbb{B}(\mathcal{K}) $$ は $\mathcal{A}$ の $\mathcal{K}$ 上への表現である。$\pi|_{\mathcal{K}}$ を $\pi$ の $\mathcal{K}$ 上への制限と言い、このような表現を $\pi$ の部分表現と言う。$\pi$ 不変な閉部分空間が $\{0\}$ と $\mathcal{H}_{\pi}$ のみである場合、$\pi$ は既約であると言う。

定義1.5(巡回ベクトル)

$\mathcal{A}$ を $C^*$-環、$\pi$ を $\mathcal{A}$ の表現とする。$v\in \mathcal{H}_{\pi}$ に対し、 $$ \pi(\mathcal{A})v=\{\pi(A)v:A\in \mathcal{A}\} $$ が $\mathcal{H}_{\pi}$ で稠密であるとき、$v$ を $\pi$ の巡回ベクトルと言う。

注意1.6(巡回ベクトルを持つ部分表現)

$\mathcal{A}$ を $C^*$-環、$\pi$ を $\mathcal{A}$ の表現とする。任意の $v\in \mathcal{H}_{\pi}\backslash \{0\}$ に対し、 $$ \mathcal{K}_v\colon=\overline{\pi(\mathcal{A})v}\subset \mathcal{H}_{\pi} $$ とおけば、$\mathcal{K}_v$ は $\pi$ 不変な $\{0\}$ ではない閉部分空間であり、$\pi$ の $\mathcal{K}_v$ 上への制限 $\pi|_{\mathcal{K}_v}$ は $v\in \mathcal{K}_v$ を巡回ベクトルとして持つ。

注意1.7(既約な表現と巡回ベクトル)

$\mathcal{A}$ を $C^*$-環、$\pi$ を $\mathcal{A}$ の既約表現とする。このとき注意1.6より任意の $v\in \mathcal{H}_{\pi}\backslash \{0\}$ に対し $v$ は $\pi$ の巡回ベクトルである。

定義1.8(繋絡作用素)

$\mathcal{A}$ を $C^*$-環、$\pi_1,\pi_2$ を $\mathcal{A}$ の表現とする。$T\in \mathbb{B}(\mathcal{H}_{\pi_1},\mathcal{H}_{\pi_2})$ が、 $$ T\pi_1(A)=\pi_2(A)T\quad(\forall A\in \mathcal{A}) $$ を満たすとき $T$ を $\pi_1,\pi_2$ の繋絡作用素であると言う。$\pi_1,\pi_2$ の繋絡作用素全体を $\mathcal{C}(\pi_1,\pi_2)$ と表す。また $\mathcal{C}(\pi)\colon=\mathcal{C}(\pi_1,\pi_2)$ と表す。

命題1.9(繋絡作用素の基本性質)

$\mathcal{A}$ を $C^*$-環、$\pi_1,\pi_2,\pi_3$ を $\mathcal{A}$ の表現とする。このとき、

  • $(1)$ $\mathcal{C}(\pi_1,\pi_2)$ は $\mathbb{B}(\mathcal{H}_{\pi_1},\mathcal{H}_{\pi_2})$ の線形部分空間である。
  • $(2)$ 任意の $T\in \mathcal{C}(\pi_1,\pi_2)$, $S\in \mathcal{C}(\pi_2,\pi_3)$ に対し $ST\in \mathcal{C}(\pi_1,\pi_3)$ が成り立つ。
  • $(3)$ 任意の $T\in \mathcal{C}(\pi_1,\pi_2)$ に対し $T^*\in \mathcal{C}(\pi_2,\pi_1)$ が成り立つ。
Proof.

全て容易に示せる。

定義1.10($C^*$-環の表現のユニタリ同値)

$\mathcal{A}$ を $C^*$-環、$\pi_1,\pi_2$ を $\mathcal{A}$ の表現とする。$\mathcal{C}(\pi_1,\pi_2)$ がユニタリ作用素を含むとき、$\pi_1,\pi_2$ はユニタリ同値であると言い、$\pi_1\sim \pi_2$ と表す。命題1.9より $\sim$ は $\mathcal{A}$ の表現全体における同値関係である。

定理1.11(Schurの補題)

$\mathcal{A}$ を $C^*$-環、$\pi$ を $\mathcal{A}$ の表現とする。このとき次は互いに同値である。

  • $(1)$ $\pi$ は既約である。
  • $(2)$ $\mathcal{C}(\pi)=\mathbb{C}1$.
Proof.

$\mathcal{C}(\pi)\subset \mathbb{B}(\mathcal{H}_{\pi})$ は $\pi(\mathcal{A})\subset \mathbb{B}(\mathcal{H}_{\pi})$ の可換子環 $\pi(\mathcal{A})'$(Hilbert空間上の作用素論定義18.10)に他ならない。そして $\pi(\mathcal{A})'\subset \mathbb{B}(\mathcal{H}_{\pi})$ はvon Neumann環(Hilbert空間上の作用素論定義18.14)であるから、Hilbert空間上の作用素論定理19.7の $(1)$ より、 $$ \mathcal{C}(\pi)=\pi(\mathcal{A})'=\overline{{\rm span}(\mathbb{P}(\pi(\mathcal{A})')}^{\lVert \cdot\rVert}\quad\quad(*) $$ である。ただし $\mathbb{P}(\pi(\mathcal{A})')$ は von Neumann環 $\pi(\mathcal{A})'$ の射影全体である。$(1)\Rightarrow(2)$ を示す。$(1)$ が成り立つとする。任意の $P\in \mathbb{P}(\pi(\mathcal{A})')$ に対し ${\rm Ran}(P)\subset \mathcal{H}_{\pi}$ は $\pi$ 不変な閉部分空間であるから、$\pi$ の既約性より ${\rm Ran}(P)$ は $\mathcal{H}_{\pi}$ か $\{0\}$ である。よって $P$ は $1$ か $0$ であるので $(*)$ より $\mathcal{C}(\pi)=\mathbb{C}1$ である。
$(2)\Rightarrow(1)$ を示す。$(2)$ が成り立つとする。$\mathcal{K}\subset \mathcal{H}_{\pi}$ を $\pi$ 不変な閉部分空間とし、$\mathcal{K}$ の上への射影作用素を $P\in \mathbb{B}(\mathcal{H}_{\pi})$ とおくと、 $$ \pi(A)P=P\pi(A)P\quad(\forall A\in \mathcal{A}) $$ であるから、 $$ P\pi(A)=(\pi(A^*)P)^*=(P\pi(A^*)P)^*=P\pi(A)P=\pi(A)P\quad(\forall A\in \mathcal{A}) $$ である。よって $P\in \mathcal{C}(\pi)=\mathbb{C}1$ であるから $P=\alpha1$ なる $\alpha\in \mathbb{C}$ が存在し、$P^2=P$ であることから $\alpha$ は $1$ か $0$、したがって $P$ は $1$ か $0$ である。ゆえに $\mathcal{K}$ は $\mathcal{H}_{\pi}$ か $\{0\}$ であるので $\pi$ は既約である。

系1.12(Schurの補題の系)

$\mathcal{A}$ を $C^*$-環、$\pi_1,\pi_2$ を $\mathcal{A}$ の既約な表現とする。このとき次は互いに同値である。

  • $(1)$ $\pi_1,\pi_2$ はユニタリ同値。
  • $(2)$ $\mathcal{C}(\pi_1,\pi_2)\neq \{0\}$.
Proof.

$(1)\Rightarrow(2)$ はユニタリ同値の定義より自明である。$(2)\Rightarrow(1)$ を示す。$(2)$ が成り立つとし、ノルムが $1$ の任意の $T\in \mathcal{C}(\pi_1,\pi_2)$ を取る。このとき命題1.9より $T^*T\in \mathcal{C}(\pi_1)$, $TT^*\in \mathcal{C}(\pi_2)$ であり、$\pi_1,\pi_2$ は既約なのでSchurの補題(定理1.11)より $T^*T\in \mathbb{C}1$, $TT^*\in \mathbb{C}1$ である。ここで $\lVert T^*T\rVert=\lVert T\rVert^2=1$, $\lVert TT^*\rVert=\lVert T^*\rVert^2=\lVert T\rVert^2=1$ であり、$T^*T\in \mathbb{B}(\mathcal{H}_{\pi_1})$, $TT^*\in \mathbb{B}(\mathcal{H}_{\pi_2})$ は有界非負自己共役作用素なので $T^*T=1$, $TT^*=1$ である。ゆえに $T\colon \mathcal{H}_{\pi_1}\rightarrow\mathcal{H}_{\pi_2}$ はユニタリ作用素であるから $\pi_1,\pi_2$ はユニタリ同値である。

定義1.13($C^*$-環の表現の直和)

$\mathcal{A}$ を $C^*$-環、$J$ を空でない集合とし、各 $j\in J$ に対し $\mathcal{A}$ の表現 $\pi_j\colon \mathcal{A}\rightarrow \mathbb{B}(\mathcal{H}_{\pi})$ が与えられているとする。このとき、 $$ \lVert \pi_j(A)\rVert\leq \lVert A\rVert\quad(\forall j\in J,\forall A\in \mathcal{A}) $$ であるから、 $$ (\oplus_{j\in J}\pi_j)(A)(v_j)_{j\in J}\colon=(\pi_j(A)v_j)_{j\in J}\quad\left(\forall A\in \mathcal{A},\forall (v_j)_{j\in J}\in \bigoplus_{j\in J}\mathcal{H}_{\pi_j}\right) $$ として $\mathcal{A}$ の直和Hilbert空間 $\bigoplus_{j\in J}\mathcal{H}_{\pi_j}$ 上への表現 $\oplus_{j\in J}\pi_j$ が定義できる。これを $(\pi_j)_{j\in J}$ の直和と言う。

命題1.14($C^*$-環の巡回ベクトルを持つ表現の巡回ベクトル込みのユニタリ同値条件)

$\mathcal{A}$ を $C^*$-環、$(\pi_1,v_1)$, $(\pi_2,v_2)$ をそれぞれ $\mathcal{A}$ の表現とその巡回ベクトルの組とする。このとき次は互いに同値である。

  • $(1)$ 任意の $A\in \mathcal{A}$ に対し $(v_1\mid \pi_1(A)v_1)=(v_2\mid \pi_2(A)v_2)$ が成り立つ。
  • $(2)$ ユニタリ作用素 $U\in \mathcal{C}(\pi_1,\pi_2)$ で $Uv_1=v_2$ なるものが存在する。(特に $\pi_1,\pi_2$ はユニタリ同値である。)

また $(1),(2)$ が成り立つとき $(2)$ におけるユニタリ作用素 $U\in \mathcal{C}(\pi_1,\pi_2)$ は、 $$ U\pi_1(A)v_1=\pi_2(A)v_2\quad(\forall A\in \mathcal{A})\quad\quad(*) $$ によって特徴付けられる。

Proof.

$(2)$ が成り立つとすると、任意の $A\in \mathcal{A}$ に対し、 $$ (v_2\mid \pi_2(A)v_2)=(Uv_1\mid \pi_2(A)Uv_1)=(Uv_1\mid U\pi_1(A)v_1)=(v_1\mid \pi_1(A)v_1) $$ であるから $(1)$ が成り立つ。
$(1)\Rightarrow(2)$ を示す。$(1)$ が成り立つとすると、任意の $A,B\in \mathcal{A}$ に対し、 $$ (\pi_1(A)v_1\mid \pi_1(B)v_1)=(v_1\mid \pi_1(A^*B)v_1)=(v_2\mid\pi_2(A^*B)v_2)=(\pi_2(B)v_2\mid \pi_2(A)v_2) $$ であるから、等長線形同型写像 $U_0\colon \pi_1(\mathcal{A})v_1\rightarrow \pi_2(\mathcal{A})v_2$ で、 $$ U_0\pi_1(A)v_1=\pi_2(A)v_2\quad(\forall A\in \mathcal{A}) $$ なるものが定義できる。$v_j$ は $\pi_j$ の巡回ベクトルなので、$\mathcal{H}_{\pi_j}=\overline{\pi_j(\mathcal{A})}$ $(j=1,2)$ であるから、$U_0\colon \pi_1(\mathcal{A})v_1\rightarrow \mathcal{H}_{\pi_2}$ は $\mathcal{H}_{\pi_1}=\ovelrine{\pi_1(\mathcal{A})v_2}$ 上に一意拡張でき、それを $U\colon \mathcal{H}_{\pi_1}\rightarrow \mathcal{H}_{\pi_2}$ とおくと、$U$ はユニタリ作用素である。$U$ は $(*)$ を満たすので命題1.3より $Uv_1=v_2$ である。そして、 $$ U\pi_1(A)\pi_1(B)v_1=U\pi_1(AB)v_1=\pi_2(AB)v_2=\pi_2(A)\pi_2(B)v_2=\pi_2(A)U\pi_1(B)v_1\quad(\forall A,B\in \mathcal{A}) $$ であるから、$\mathcal{H}_{\pi_1}=\overline{\pi_1(\mathcal{A})v_1}$ より、 $$ U\pi_1(A)=\pi_2(A)U\quad(\forall A\in \mathcal{A}) $$ が成り立つ。よって $U\in \mathcal{C}(\pi_1,\pi_2)$ であるので $(2)$ が成り立つ。

補題1.15($C^*$-環の非負部分はノルム閉)

$C^*$-環 $\mathcal{A}$ の非負部分 $\mathcal{A}_+\subset \mathcal{A}$(Banach環とC*-環のスペクトル理論) はノルムで閉である。

Proof.

$\mathcal{A}_+$ の列 $(A_n)_{n\in \mathbb{N}}$ がノルムで $A\in \mathcal{A}$ に収束するとして $A\in \mathcal{A}_+$ が成り立つことを示せばよい。$(A_n)_{n\in \mathbb{N}}$ はノルムで収束する列なので、ある正数 $\alpha$ に対し、 $$ \lVert A_n\rVert\leq \alpha\quad(\forall n\in \mathbb{N}) $$ が成り立つ。よってBanach環とC*-環のスペクトル理論補題7.6より、 $$ \lVert \alpha-A_n\rVert\leq \alpha\quad(\forall n\in \mathbb{N}) $$ であるから、 $$ \lVert \alpha-A\rVert=\lim_{n\rightarrow\infty}\lVert \alpha-A_n\rVert\leq \alpha $$ であるので、再びBanach環とC*-環のスペクトル理論補題7.6より $A\in \mathcal{A}_+$ である。

定義1.16($C^*$-環上の非負線形汎関数)

$\mathcal{A}$ を $C^*$-環とする。線形汎関数 $\varphi\colon \mathcal{A}\rightarrow\mathbb{C}$ で、 $$ \varphi(A)\geq0\quad(\forall A\in \mathcal{A}_+) $$ を満たすものを $\mathcal{A}$ 上の非負線形汎関数と言う。次の定理1.17より $C^*$-環上の非負線形汎関数は自動的に有界線形汎関数である。$C^*$-環 $\mathcal{A}$ の非負線形汎関数全体を $\mathcal{A}^*_+\subset \mathcal{A}^*$ と表す。

定理1.17($C^*$-環上の非負線形汎関数の自動的有界性)

$\mathcal{A}$ を $C^*$-環、$\varphi\colon \mathcal{A}\rightarrow \mathbb{C}$ を非負線形汎関数とする。このとき $\varphi$ は有界線形汎関数である。

Proof.

$\mathcal{A}_1$ を $\mathcal{A}$ のノルムが $1$ 以下の元全体とする。$\varphi$ が有界線形汎関数であることを示すには $\varphi(\mathcal{A}_1)$ が有界であることを示せばよい。$\mathcal{A}_{+,1}=\mathcal{A}_+\cap \mathcal{A}_1$ とおくと、Banach環とC*-環のスペクトル理論注意7.4より、 $$ \mathcal{A}_1=\{(A_{1,+}-A_{1,-})+i(A_{2,+}-A_{2,-}):A_{j,\pm}\in \mathcal{A}_{+,1}\text{ } (j=1,2)\} $$ であるから $\varphi(\mathcal{A}_1)$ が有界であることを示すには $\varphi(\mathcal{A}_{+,1})$ が有界であることを示せば十分である。そこで $\varphi(\mathcal{A}_{+,1})$ が有界ではないと仮定する。このとき、 $$ A_n\in \mathcal{A}_{+,1},\quad\varphi(A_n)\geq 2^n\quad(\forall n\in \mathbb{N})\quad\quad(*) $$ を満たす $\mathcal{A}$ の列 $(A_n)_{n\in\mathbb{N}}$ が取れる。$\lVert A_n\rVert\leq 1$ $(\forall n\in \mathbb{N})$ より、 $$ \sum_{n\in \mathbb{N}}\frac{\lVert A_n\rVert}{2^n}\leq \sum_{n\in \mathbb{N}}\frac{1}{2^n}=1<\infty $$ であるから $\sum_{n\in \mathbb{N}}\frac{A_n}{2^n}$ は絶対収束する。そこで、 $$ A\colon=\sum_{n\in \mathbb{N}}\frac{A_n}{2^n}\in \mathcal{A} $$ とおくと、補題1.15より、 $$ A-\sum_{n=1}^{N}\frac{A^n}{2^n}=\sum_{n\geq N+1}\frac{A_n}{2^n}\in \mathcal{A}_+ $$ であるから、 $$ \varphi\left(A-\sum_{n=1}^{N}\frac{A^n}{2^n}\right)\geq0\quad(\forall N\in \mathbb{N}) $$ である。よって、 $$ \varphi(A)\geq \sum_{n=1}^{N}\frac{\varphi(A_n)}{2^n}\quad(\forall N\in \mathbb{N}) $$ であるが、$(*)$ より、 $$ \varphi(A)\geq \sum_{n=1}^{N}\frac{\varphi(A_n)}{2^n}\geq\sum_{n=1}^{N}\frac{2^n}{2^n}=N\quad(\forall N\in \mathbb{N}) $$ となり矛盾する。よって $\varphi(A_{+,1})$ は有界なので $\varphi$ は有界線形汎関数である。

命題1.18($C^*$-環の非負線形汎関数に関するSchwarzの不等式)

$\mathcal{A}$ を $C^*$-環、$\varphi\in \mathcal{A}^*_+$ とする。このとき、

  • $(1)$ 任意の $A,B\in \mathcal{A}$ に対し $\overline{\varphi(A^*B)}=\varphi(B^*A)$ が成り立つ。
  • $(2)$ 任意の $A,B\in \mathcal{A}$ に対し $\lvert \phi(A^*B)\rvert \leq \varphi(A^*A)\varphi(B^*B)$ が成り立つ。
  • $(3)$ 任意の $A\in \mathcal{A}$ に対し $\lvert \varphi(A)\rvert^2\leq \lVert \varphi\rVert\varphi(A^*A)$ が成り立つ。
  • $(4)$ 任意の $A,B\in \mathcal{A}$ に対し $\lvert \varphi(B^*AB)\rvert\leq \varphi(B^*B)\lVert A\rVert$ が成り立つ。
Proof.

  • $(1)$

$$ \mathcal{A}\times \mathcal{A}\ni (A,B)\mapsto \varphi(A^*B)\in \mathbb{C}\quad\quad(*) $$ は準双線形汎関数であるから、 $$ \varphi(A^*B)=\frac{1}{4}\sum_{k=0}^{3}i^k\varphi\left((i^kA+B)^*(i^kA+B)\right) $$ が成り立ち、各 $k\in \{0,1,2,3\}$ に対し、 $$ \varphi\left((i^kA+B)^*(i^kA+B)\right) =\varphi\left((\overline{i}^kB+A)^*(\overline{i}^kB+A)\right) $$ は実数であるから、 $$ \begin{aligned} &\overline{\varphi(A^*B)}=\frac{1}{4}\sum_{k=0}^{3}\overline{i}^k\varphi\left((\overline{i}^kB+A)^*(\overline{i}^kB+A)\right)\\ &=\frac{1}{4}\sum_{k=0}^{3}i^k\varphi\left((i^kB+A)^*(i^kB+A)\right)=\varphi(B^*A) \end{aligned} $$ である。

  • $(2)$ $(*)$ は内積の忠実性以外の条件を満たしているので、局所コンパクト群のユニタリ表現補題2.31より成り立つ。
  • $(3)$ $(U_{\lambda})_{\lambda\in \Lambda}$ を $\mathcal{A}$ の近似単位元とすると[1]$(2)$ より任意の $A\in \mathcal{A}$ に対し、

$$ \lvert \varphi(U_{\lambda}A)\rvert^2\leq \varphi(U_{\lambda}^*U_{\lambda})\varphi(A^*A) \leq \lVert \varphi\rVert \varphi(A^*A)\quad(\forall \lambda\in \Lambda) $$ であるから、 $$ \lvert \varphi(A)\rvert^2=\lim_{\lambda\in \Lambda}\lvert\varphi(U_{\lambda}A)\rvert^2\leq \lVert \varphi\rVert\varphi(A^*A) $$ となる。

  • $(4)$ 任意の $B\in \mathcal{A}$ を取り固定する。

$$ \psi\colon \mathcal{A}\ni A\mapsto \varphi(B^*AB)\in \mathbb{C} $$ とおくと、$\psi\in \mathcal{A}^*_+$ である。$(U_{\lambda})_{\lambda\in \Lambda}$ を $\mathcal{A}$ の近似単位元とすると、任意の $A\in \mathcal{A}$ に対し $(2)$ より、 $$ \lvert \psi(U_{\lambda}A)\rvert^2\leq \psi(U_{\lambda}^*U_{\lambda})\psi(A^*A)\quad(\forall \lambda\in \Lambda) $$ であり、 $$ \lim_{\lambda\in \Lambda}\psi(U_{\lambda}^*U_{\lambda})=\lim_{\lambda\in \Lambda}\varphi(B^*U_{\lambda}U_{\lambda}B)=\varphi(B^*B) $$ であるから、 $$ \lvert \psi(A)\rvert^2=\lim_{\lambda\in\Lambda}\lvert \psi(U_{\lambda}A)\rvert^2\leq \varphi(B^*B)\psi(A^*A) $$ となる。よって、 $$ \lvert \psi(A)\rvert^2\leq \varphi(B^*B)\lVert \psi\rVert \lVert A\rVert^2\quad(\forall A\in \mathcal{A}) $$ であるから、 $$ \lVert \psi\rVert \leq \phi(B^*B) $$ が成り立つ。ゆえに任意の $A\in \mathcal{A}$ に対し、 $$ \varphi(B^*AB)=\psi(A)\leq \varphi(B^*B)\lVert A\rVert $$ が成り立つ。

定理1.19($C^*$-環上の非負線形汎関数に対するGNS表現)

$\mathcal{A}$ を $C^*$-環とする。任意の $\varphi\in \mathcal{A}^*_+\backslash\{0\}$ に対し、$\mathcal{A}$ の表現 $\pi$ とその巡回ベクトル $v\in \mathcal{H}_{\pi}$ で、 $$ \varphi(A)=(v\mid \pi(A)v)\quad(\forall A\in \mathcal{A}) $$ を満たすものが存在する。

Proof.

$$ \mathcal{N}_{\varphi}\colon=\{A\in \mathcal{A}: \varphi(A^*A)=0\} $$ とおくと、命題1.18の $(2)$ より $\mathcal{N}_{\varphi}$ は $\mathcal{A}$ の線形部分空間であり、命題1.18の $(3)$ と $\varphi\neq0$ より $\mathcal{N}_{\varphi}\neq \mathcal{A}$ である。そこで商線型空間 $\mathcal{A}/ \mathcal{N}_{\varphi}\neq\{0\}$ を考え、商写像を、 $$ \mathcal{A}/\mathcal{N}_{\varphi}\ni A\mapsto [A]\in \mathcal{A}/\mathcal{N}_{\varphi} $$ とおく。命題1.18の $(1),(2)$ より、 $$ ([A]\mid [B])_{\varphi}\colon=\varphi(A^*B)\quad(\forall A,B\in \mathcal{A})\quad\quad(*) $$ として $\mathcal{A}/\mathcal{N}_{\varphi}$ の内積 $(\cdot\mid \cdot)_{\varphi}$ が定義できる。この内積空間 $(\mathcal{A}/\mathcal{N}_{\varphi},(\cdot \mid\cdot)_{\varphi})$ の完備化Hilbert空間(Hilbert空間上の作用素論定義12.3)を $(\mathcal{H}_{\varphi},(\cdot\mid\cdot)_{\varphi})$ とおく。任意の $A\in \mathcal{A}$ に対し命題1.18の $(4)$ より、 $$ \pi_0(A)\colon \mathcal{A}/\mathcal{N}_{\varphi}\ni [B]\mapsto [AB]\in \mathcal{H}_{\varphi}\quad\quad(**) $$ はwell-definedな線形作用素である。そして命題1.18の $(4)$ より、 $$ \begin{aligned} &\lVert \pi_0(A)[B]\rVert_{\varphi}^2=([AB]\mid [AB])_{\varphi}=\varphi((AB)^*(AB))\\ &\leq\varphi(B^*B)\lVert A^*A\rVert=\lVert [B]\rVert_{\varphi}^2\lVert A\rVert^2\quad(\forall [B]\in \mathcal{A}/\mathcal{N}_{\varphi}) \end{aligned} $$ であるから $(**)$ は有界線形作用素である。そこで $(**)$ を $\mathcal{H}_{\varphi}=\overline{\mathcal{A}/\mathcal{N}_{\varphi}}$ 上に一意拡張したものを $\pi_{\varphi}(A)\in \mathbb{B}(\mathcal{H}_{\varphi})$ と表す。このとき $\mathcal{A}/\mathcal{N}_{\varphi}$ の $\mathcal{H}_{\varphi}$ における稠密性より、 $$ \pi_{\varphi}\colon \mathcal{A}\ni A\mapsto \pi_{\varphi}(A)\in \mathbb{B}(\mathcal{H}_{\varphi}) $$ が $*$-環準同型写像であることが分かる。今、命題1.18の $(3)$ より、 $$ \mathcal{A}/\mathcal{N}_{\varphi}\ni [A]\mapsto \varphi(A)\in \mathbb{C} $$ はwell-definedな有界線形汎関数である。これを $\mathcal{H}_{\varphi}=\overline{\mathcal{A}/\mathcal{N}_{\varphi}}$ 上の有界線形汎関数に拡張したものを考え、Rieszの表現定理(位相線形空間1:ノルムと内積定理6.13)によりそれに対応するベクトルを $v_{\varphi}\in \mathcal{H}_{\varphi}$ とおくと、 $$ \varphi(A)=(v_{\varphi}\mid [A])_{\varphi}\quad(\forall A\in \mathcal{A})\quad\quad(***) $$ となる。$(*),(***)$ より、 $$ \begin{aligned} ([A]\mid [B])_{\varphi}&=\varphi(A^*B)=(v_{\varphi}\mid [A^*B])_{\varphi} =(v_{\varphi}\mid \pi_{\varphi}(A^*)B)_{\varphi}\\ &=(\pi_{\varphi}(A)v_{\varphi}\mid [B])_{\varphi}\quad(\forall A,B\in \mathcal{A}) \end{aligned} $$ であるから、$\mathcal{A}/\mathcal{N}_{\varphi}$ の $\mathcal{H}_{\varphi}$ における稠密性より、 $$ [A]=\pi_{\varphi}(A)v_{\varphi}\quad(\forall A\in \mathcal{A})\quad\quad(****) $$ が成り立つ。これより、 $$ \overline{\pi_{\varphi}(\mathcal{A})v_{\varphi}}=\overline{\mathcal{A}/\mathcal{N}_{\varphi}}=\mathcal{H}_{\varphi} $$ であるから、$\pi_{\varphi}$ は $\mathcal{A}$ の $\mathcal{H}_{\varphi}$ 上への巡回ベクトルを持つ表現であり、$v_{\varphi}\in \mathcal{H}_{\varphi}$ が $\pi_{\varphi}$ の巡回ベクトルである。そして $(***),(****)$ より、 $$ \varphi(A)=(v_{\varphi}\mid \pi_{\varphi}(A)v_{\varphi})_{\varphi}\quad(\forall A\in \mathcal{A}) $$ が成り立つ。

定義1.20($C^*$-環上の非負線形汎関数に対するGNS表現)

$\mathcal{A}$ を $C^*$-環とする。任意の $\varphi\in \mathcal{A}^*_+\backslash\{0\}$ に対し、定理1.19により巡回ベクトル $v$ を持つ $\mathcal{A}$ の表現 $\pi$ で、 $$ \varphi(A)=(v\mid \pi(A)v)\quad(\forall A\in \mathcal{A}) $$ を満たすものが存在する。このとき表現 $\pi$ とその巡回ベクトル $v$ の組 $(\pi,v)$ を $\varphi$ に対するGNS表現と言う。命題1.14より $(\pi_1,v_1)$, $(\pi_2,v_2)$ が共に $\varphi$ に対するGNS表現であるならば、$\pi_1,\pi_2$ はユニタリ同値であり、ユニタリ作用素 $U\colon \mathcal{H}_{\pi_1}\rightarrow \mathcal{H}_{\pi_2}$ で、 $$ U\pi_1(A)=\pi_2(A)U\quad(\forall A\in \mathcal{A}),\quad Uv_1=v_2 $$ を満たすものが定まる。

系1.21($C^*$-環上の非負線形汎関数のノルムと(近似)単位元)

$\mathcal{A}$ を $C^*$-環とする。このとき任意の $\varphi\in \mathcal{A}^*_+$ と $\mathcal{A}$ の任意の近似単位元 $(U_{\lambda})_{\lambda\in \Lambda}$ に対し、 $$ \lVert \varphi\rVert=\lim_{\lambda\in\Lambda}\varphi(U_{\lambda}) $$ が成り立つ。

Proof.

$\varphi\in \mathcal{A}^*_+\backslash\{0\}$ に対するGNS表現 $(\pi,v)$ を取る。 $$ \lVert \varphi\rVert=\sup_{\lVert A\rVert\leq 1}\lvert \varphi(A)\rvert =\sup_{\lVert A\rVert\leq 1}\lvert(v\mid \pi(A)v)\rvert\leq \lVert v\rVert^2 $$ であり、命題1.3より、 $$ \lVert v\rVert^2=\lim_{\lambda\in\Lambda}(v\mid \pi(U_{\lambda})v)=\lim_{\lambda\in\Lambda}\varphi(U_{\lambda})\leq \lVert \varphi\rVert $$ である。よって、 $$ \lVert \varphi\rVert=\lVert v\rVert^2=\lim_{\lamnbda\in\Lambda}\varphi(U_{\lambda}) $$ である。

定理1.22($C^*$-環上の有界線形汎関数の非負性の(近似)単位元による特徴付け)

$\mathcal{A}$ を $C^*$-環、$(U_{\lambda})_{\lambda\in\Lambda}$ を $\mathcal{A}$ のノルム $1$ 以下の非負元からなる近似単位元とする。(Banach環とC*-環のスペクトル理論定理9.4よりその様な近似単位元は必ず存在する。)もし $\mathcal{A}$ の有界線形汎関数 $\varphi$ が、 $$ \lim_{\lambda\in \Lambda}\varphi(U_{\lambda})=\lVert \varphi\rVert $$ を満たすならば $\varphi$ は $\mathcal{A}$ 上の非負線形汎関数である。

Proof.

必要ならば $\varphi$ を正数倍をして $\lVert \varphi\rVert=1$ であるとして示せば十分である。まず $\varphi(\mathcal{A}_{\rm sa})\subset \mathbb{R}$ を示す。 [2]そのためにはノルムが $1$ 以下の $A\in \mathcal{A}_{\rm sa}$ を取り $\varphi(A)\in \mathbb{R}$ を示せば十分である。そこで、 $$ \varphi(A)=\alpha+i\beta\quad(\forall \alpha,\beta\in \mathbb{R}) $$ とおく。 $$ \begin{aligned} \lvert\varphi(A)\pm in\varphi(U_{\lambda})\rvert^2&=\lvert \varphi(A\pm inU_{\lambda})\rvert^2\leq \lVert A\pm inU_{\lambda}\rVert^2=\lVert A^2\pm in(AU_{\lambda}-U_{\lambda}A)+n^2U_{\lambda}^2\rVert\\ &\leq \lVert A\rVert^2+n\lVert AU_{\lambda}-U_{\lambda}A\rVert+n^2\quad(\forall \lambda\in \Lambda,\forall n\in \mathbb{N}) \end{aligned} $$ であり、 $$ \varphi(U_{\lambda})\rightarrow \lVert \varphi\rVert=1,\quad \lVert AU_{\lambda}-U_{\lambda}A\rVert\rightarrow0 $$ であるから、 $$ \lvert \varphi(A)\pm in\rvert^2\leq 1+n^2\quad(\forall n\in \mathbb{N}) $$ が成り立つ。よって、 $$ \lvert \alpha+i(\beta\pm n)\rvert^2\leq 1+n^2\quad(\forall n\in \mathbb{N}). $$ したがって、 $$ \alpha^2+\beta^2-1\leq \mp 2n\beta\quad(\forall n\in \mathbb{N}) $$ である。これより $0\leq \mp \beta$ であるから $\beta=0$ を得る。ゆえに $\varphi(A)=\alpha\in \mathbb{R}$ が成り立つ。
$\varphi$ が非負線形汎関数であることを示す。任意のノルムが $1$ 以下の $A\in \mathcal{A}_+$ を取り $\varphi(A)\geq0$ であることを示せばよい。 各 $U_{\lambda}$ と $A$ はノルムが $1$ 以下の非負元であるから、 $$ -1\leq -U_{\lambda}\leq A-U_{\lambda}\leq A\leq 1\quad(\forall \lambda\in \Lambda). $$ [3] したがって、 $$ \lVert A-U_{\lambda}\rVert\leq 1\quad(\forall \lambda\in \Lambda) $$ が成り立つ。これより、 $$ \lvert \varphi(A)-\varphi(U_{\lambda})\rvert=\lvert \varphi(A-U_{\lambda})\rvert\leq 1\quad(\forall \lambda\in \Lambda) $$ となるから、$\lim_{\lambda\in \Lambda}\varphi(U_{\lambda})=\lVert \varphi\rVert=1$ より、 $$ \lvert \varphi(A)-1\rvert\leq 1 $$ を得る。よって $\varphi(A)\geq0$ が成り立つ。

補題1.23

$C^*$-環 $\mathcal{A}$ の $0$ ではない正規元 $A$ に対し、ノルムが $1$ の $\varphi\in \mathcal{A}^*_+$ で $\lvert \varphi(A)\rvert=\lVert A\rVert$ を満たすものが存在する。

Proof.

$$ \Gamma\colon C^*(\{1,A\})\rightarrow C(\widehat{C^*(\{1,A\})}) $$ を考えると、$\widehat{C^*(\{1,A\})}$ がコンパクトであることから、 $$ \lVert A\rVert=\lVert \Gamma(A)\rVert=\sup_{\gamma\in \widehat{C^*(\{1,A\})}}\lvert \Gamma(A)(\gamma)\rvert=\lvert \Gamma(A)(\gamma_0)\rvert=\lvert \gamma_0(A)\rvert $$ を満たす $\gamma_0\in \widehat{C^*(\{1,A\})}$ が取れる。そして有界線形汎関数 $\gamma_0\colon C^*(\{1,A\})\rightarrow \mathbb{C}$ に対し、Hahn-Banachの拡張定理(位相線形空間3:Hahn-Banachの定理とKrein-Milmanの端点定理定理11.4)より $\gamma_0$ の拡張 $\varphi\in \mathcal{A}^*$ で $\lVert \varphi\rVert=\lVert \gamma_0\rVert$ を満たすものが取れる。 $$ \lVert \varphi\rVert=\lVert \gamma_0\rVert=1=\gamma(1)=\varphi(1) $$ であるから定理1.22より $\varphi\in \mathcal{A}^*_+$ であり、$\lvert \varphi(A)\rvert=\lvert \gamma_0(A)\rvert=\lVert A\rVert$ である。

  • $(2)$ $\mathcal{A}$ が単位的でない場合。$\widetilde{\mathcal{A}}\supset \mathcal{A}$ を単位化 $C^*$-環(Banach環とC*-環のスペクトル理論4を参照)とすると、$(1)$ よりノルムが $1$ の $\psi\in \widetilde{\mathcal{A}}^*_+$ で $\psi(A)=\lVert A\rVert$ なるものが取れる。$\psi$ を $\mathcal{A}$ 上に制限したものを $\varphi$ とおくと、$\varphi$ はノルムが $1$ 以下の $\mathcal{A}$ 上の非負線形汎関数であり、

$$ 0<\lVert A\rVert=\lvert\varphi(A)\rvert\leq \lVert \varphi\rVert\lVert A\rVert $$ より $1\leq \lVert \varphi\rVert$ である。よって $\lVert \varphi\rVert=1$ である。

定義1.24($C^*$-環の状態、純粋状態)

$\mathcal{A}$ を $C^*$-環とする。$\varphi\in \mathcal{A}^*_+$ で $\lVert \varphi\rVert=1$ を満たすものを $\mathcal{A}$ の状態と言う。$\mathcal{A}$ の状態全体 $$ \mathcal{S}(\mathcal{A})=\{\varphi\in \mathcal{A}^*_+:\lVert \varphi\rVert=1\} $$ は補題1.23より空ではなく、系1.21より凸集合である。そこで $\mathcal{S}(\mathcal{A})$ の端点(位相線形空間3:Hahn-Banachの定理とKrein-Milmanの端点定理定義14.1)を $\mathcal{A}$ の純粋状態と言う。$\mathcal{A}$ の純粋状態全体を、 $$ \mathcal{PS}(\mathcal{A})\colon={\rm ext}(\mathcal{S}(\mathcal{A})) $$ とおく。

定理1.25($C^*$-環の正規元 $A$ に対し $\lvert \varphi(A)\rvert=\lVert A\rVert$ を満たす純粋状態 $\varphi$ が存在する)

$C^*$-環 $\mathcal{A}$ の $0$ ではない正規元 $A$ に対し、純粋状態 $\varphi\in \mathcal{PS}(\mathcal{A})$ で $\lvert \varphi(A)\rvert=\lVert A\rVert$ を満たすものが存在する。

Proof.

補題1.23より $\psi\in \mathcal{S}(\mathcal{A})$ で $\lvert \psi(A)\rvert=\lVert A\rVert$ を満たすものが取れる。これを固定する。 $$ \mathcal{F}\colon=\{\varphi\in \mathcal{S}(\mathcal{A}):\varphi(A)=\psi(A)\} $$ とおくと、$\mathcal{F}$ は凸集合であり弱$*$-閉であることが容易に分かる。よってAlaogluの定理(位相線形空間2:セミノルム位相と汎弱位相定理10.3)より $\mathcal{F}$ は弱 $*$-コンパクトな凸集合であるから、Krein-Milmanの端点定理(位相線形空間3:Hahn-Banachの定理とKrein-Milmanの端点定理定理14.3)より $\mathcal{F}$ は端点を持つ。今、$\mathcal{F}$ が $\mathcal{S}(\mathcal{A})$ のフェイス(位相線形空間3:Hahn-Banachの定理とKrein-Milmanの端点定理定義14.1)であることを示す。$\varphi_1,\varphi_2\in \mathcal{S}(\mathcal{A})$ がある $t\in (0,\infty)$ に対し、 $$ \varphi\colon=(1-t)\varphi_1+t\varphi_2\in \mathcal{F} $$ を満たすとする。このとき、 $$ \lVert A\rVert=\lvert \psi(A)\rvert=\lvert \varphi(A)\rvert\leq (1-t)\lvert\varphi_1(A)\rvert+t\lvert\varphi_2(A)\rvert\leq \lVert A\rVert $$ であるから、$\lvert \varphi(A)\rvert=\lvert \varphi_1(A)\rvert=\lvert \varphi_2(A)\rvert=\lVert A\rVert$ なので、$\varphi(A)$, $\varphi_1(A)$, $\varphi_2(A)$ は $\mathbb{C}$ の中心 $0$, 半径 $\lVert A\rVert$ の円周上にある。そして、 $$ \varphi(A)=(1-t)\varphi_1(A)+t\varphi_2(A) $$ であるから、$\psi(A)=\varphi(A)=\varphi_1(A)=\varphi_2(A)$ である。よって $\varphi_1,\varphi_2\in \mathcal{F}$ であるので $\mathcal{F}$ は $\mathcal{S}(\mathcal{A})$ のフェイスである。ゆえに $\mathcal{F}$ の端点 $\varphi$ は $\mathcal{S}(\mathcal{A})$ の端点でもあるので $\varphi\in \mathcal{PS}(\mathcal{A})$ であり、$\varphi\in \mathcal{F}$ であるから $\lvert \varphi(A)\rvert=\lvert \psi(A)\rvert=\lVert A\rVert$ である。

定理1.26($C^*$-環の純粋状態と既約表現)

$\mathcal{A}$ を $C^*$-環、$\varphi$ を $\mathcal{A}$ の状態とし、$\varphi$ のGNS表現(定義1.20)を $(\pi,v)$ とおく。このとき次は互いに同値である。

  • $(1)$ $\varphi$ は純粋状態である。
  • $(2)$ $\pi$ は既約(定義1.4)である。
Proof.

$(1)\Rightarrow(2)$ を示す。$\varphi$ が純粋状態であるとする。$\pi$ が既約であることを示すには、Schurの補題(定理1.11)より $\pi(\mathcal{A})'=\mathcal{C}(\pi)=\mathbb{C}1$ であることを示せばよい。そしてそのためにはHilbert空間上の作用素論定理19.7の $(1)$ より $\pi(\mathcal{A})'$ に属する射影作用素 $P$ を取り $P$ が $1$ か $0$ であることを示せばよい。 $$ \varphi_1(A)\colon=(v\mid P\pi(A)v),\quad \varphi_2(A)\colon=(v\mid (1-P)\pi(A)v)\quad(\forall A\in \mathcal{A}) $$ とおくと、$P,1-P\in \pi(\mathcal{A})'_+$ であるから $\varphi_1,\varphi_2\in \mathcal{A}^*_+$ であり、$\varphi=\varphi_1+\varphi_2$ である。よって系1.21より、 $$ \lVert \varphi_1\rVert+\lVert \varphi_2\rVert=\lVert \varphi\rVert=1 $$ であるから、$\varphi\in \mathcal{PS}(\mathcal{A}))$ より $\alpha\in [0,1]$ が存在して $\varphi_1=\alpha\varphi$ が成り立つ。よって、 $$ \alpha(\pi(A)v\mid \pi(B)v)=\alpha\varphi(A^*B)=\varphi_1(A^*B)=(\pi(A)v\mid P\pi(B)v)\quad(\forall A,B\in \mathcal{A}) $$ であり、$v$ が巡回ベクトルであることから、$P=\alpha1$ である。$P$ は射影作用素なので $\alpha^2=\alpha$ であるから $P$ は $0$ か $1$ である。ゆえに $\pi$ は既約である。
$(2)\Rightarrow(1)$ を示す。$\pi$ が既約であるとする。$\varphi$ が純粋状態であることを示すには $\varphi_1\in \mathcal{A}^*_+$ で $\varphi-\varphi_1\in \mathcal{A}^*_+$ を満たすものを取り、$\varphi_1=\lVert \varphi_1\rVert\varphi$ が成り立つことを示せばよい。$\varphi-\varphi_1\in \mathcal{A}^*_+$ より、 $$ \varphi_1(A^*A)\leq \varphi(A^*A)=\lVert \pi(A)v\rVert^2\quad(\forall A\in \mathcal{A}) $$ である。よって命題1.18の $(2)$ より、 $$ \pi(\mathcal{A})v\times \pi(\mathcal{A})v\ni (\pi(A)v,\pi(B)v)\mapsto \varphi_1(A^*B)\in \mathbb{C} $$ なる有界準双線形汎関数が定義できる。$v$ は巡回ベクトルなので上の準双線形汎関数は $\mathcal{H}_{\pi}\times \mathcal{H}_{\pi}$ 上の有界準双線形汎関数に一意拡張できる。 よって位相線形空間1:ノルムと内積定理7.1より $T\in \mathbb{B}(\mathcal{H}_{\pi})$ で、 $$ (\pi(A)v\mid T\pi(B)v)=\varphi_1(A^*B)\quad(\forall A,B\in \mathcal{A})\quad\quad(*) $$ なるものが取れる。 $$ \begin{aligned} (\pi(A)v\mid T\pi(B)\pi(C)v)&=\varphi_1(A^*BC)=\varphi_1((B^*A)^*C)=(\pi(B^*A)v\mid T\pi(C)v)\\ &=(\pi(A)v\mid \pi(B)T\pi(C)v)\quad(\forall A,B,C\in \mathcal{A}) \end{aligned} $$ であり、$v$ は $\pi$ の巡回ベクトルなので $T\in \mathcal{C}(\pi)$ が成り立つ。よって $\pi$ が既約であることとSchurの補題(定理1.11)より $T=\alpha 1$ なる $\alpha\in \mathbb{C}$ が取れて $(*)$ より、 $$ \varphi_1(A^*B)=\alpha(\pi(A)v\mid \pi(B)v)\quad(\forall A,B\in \mathcal{A}) $$ となる。$(U_{\lambda})_{\lambda\in\Lambda}$ を $\mathcal{A}$ の近似単位元とすると、命題1.3より、 $$ \varphi_1(A)=\lim_{\lambda\in\Lambda}\varphi_1(U_{\lambda}A)=\lim_{\lambda\in\Lambda}\alpha(\pi(U_{\lambda})v\mid \pi(A)v)=\alpha(v\mid \pi(A)v)=\alpha \varphi(A) $$ となるから $\varphi_1=\alpha\varphi=\lVert \varphi_1\rVert\varphi$ が成り立つ。よって $\varphi$ は純粋状態である。

定理1.27($C^*$-環の忠実表現の存在)

$\mathcal{A}$ を $C^*$-環とし、任意の $\varphi\in \mathcal{PS}(\mathcal{A})$ に対し $(\pi_{\varphi},v_{\varphi})$ を $\varphi$ に対するGNS表現とする。このとき直和表現(定義1.13) $$ \pi\colon=\bigoplus_{\varphi\in \mathcal{PS}(\mathcal{A})}\pi_{\varphi}\colon\mathcal{A}\ni A\mapsto (\pi_{\varphi}(A))_{\varphi\in \mathcal{PS}(\mathcal{A})}\in \mathbb{B}\left(\bigoplus_{\varphi\in \mathcal{PS}(\mathcal{A})}\mathcal{H}_{\pi_{\varphi}}\right) $$ は $\mathcal{A}$ の忠実表現(定義1.2)である。

Proof.

$\pi(A)=0$ とすると、任意の $\varphi\in \mathcal{PS}(\mathcal{A})$ に対し $\pi_{\varphi}(A)=0$ であるから、 $$ \varphi(A^*A)=\lVert \pi_{\varphi}(A)v_{\varphi}\rVert^2=0\quad(\forall \varphi\in \mathcal{PS}(\mathcal{A})) $$ である。よって定理1.25より $A^*A=0$ であるから、$\lVert A\rVert^2=\lVert A^*A\rVert=0$ である。ゆえに $\pi$ は忠実である。

定義1.28($C^*$-環の単純性)

$C^*$-環 $\mathcal{A}$ が単純であるとは、$\mathcal{A}$ の任意の閉イデアル(Banach環とC*-環のスペクトル理論系9.5より $C^*$-環の閉イデアルは自動的に $*$-イデアル)が $\mathcal{A}$ と $\{0\}$ のみであることを言う。

定理1.29($C^*$-環 $\mathcal{A}$ が単純であることは $\mathcal{A}$ の任意の表現が忠実であることと同値)

$C^*$-環 $\mathcal{A}$ に対し次は互いに同値である。

  • $(1)$ $\mathcal{A}$ は単純である。
  • $(2)$ $\mathcal{A}$ の任意の表現は忠実である。
Proof.

$(1)\Rightarrow(2)$ を示す。$\mathcal{A}$ が単純であるとし、$\mathcal{A}$ の任意の表現 $\pi$ を取る。${\rm Ker}(\pi)$ は $\mathcal{A}$ の閉イデアルであるから ${\rm Ker}(\pi)=\mathcal{A}$ か ${\rm Ker}(\pi)=\{0\}$ であり、$C^*$-環の表現の非退化性(定義1.1を参照)より ${\rm Ker}(\pi)\neq \mathcal{A}$ なので、${\rm Ker}(\pi)=\{0\}$ である。よって $\pi$ は忠実である。
$(2)\Rightarrow(1)$ を示す。$(2)$ が成り立つと仮定し、$\mathcal{A}$ の閉イデアル $\mathcal{I}$ で $\mathcal{I}\neq \mathcal{A}$ なるものを取る。このときBanach環とC*-環のスペクトル理論定理9.6より $\mathcal{A}/\mathcal{I}$ は $C^*$-環であるから、$\mathcal{A}/\mathcal{I}$ は表現 $\pi\colon \mathcal{A}/\mathcal{I}\rightarrow \mathbb{B}(\mathcal{H}_{\pi})$ を持つ(定理1.27など)。商写像 $$ \mathcal{A}\ni A\mapsto [A]\in \mathcal{A}/\mathcal{I} $$ は全射 $*$-環準同型写像であるから、 $$ \widehat{\pi}\colon \mathcal{A}\ni A\mapsto \pi([A])\in \mathbb{B}(\mathcal{H}_{\pi}) $$ は $\mathcal{A}$ の表現である。$(2)$ が成り立つので $\widehat{\pi}$ は忠実であるから $[A]=0$ ならば $\widehat{\pi}(A)=\pi([A])=0$ より $A=0$ である。よって $\mathcal{I}=\{0\}$ であるから $\mathcal{A}$ は単純である。

命題1.30(コンパクト作用素環の単純性)

$\mathcal{H}$ をHilbert空間とする。コンパクト作用素環 $\mathbb{B}_0(\mathcal{H})$(Hilbert空間上の作用素論定義13.3)は単純 $C^*$-環である。

Proof.

$\mathcal{I}$ を $\mathbb{B}_0(\mathcal{H})$ の $\{0\}$ ではない任意の閉イデアルとする。任意の $T\in\mathcal{I}\backslash \{0\}$ を取り、$\lVert Tu\rVert=1$ なる $u\in \mathcal{H}$ を取る。このときSchatten形式(Hilbert空間上の作用素論定義13.5)$\mathcal{H}\times \mathcal{H}\ni (v,w)\mapsto v\odot w\in \mathbb{B}(\mathcal{H})$ に対し、 $$ v\odot w=(v\odot Tu)(Tu\odot w)=(v\odot u)T^*T(u\odot w)\in \mathcal{I}\quad(\forall v,w\in \mathcal{H}) $$ であるから、任意の有限階作用素は $\mathcal{I}$ に属する[5]。$\mathcal{I}$ は閉であり、$\mathbb{B}_0(\mathcal{H})$ は有限階作用素全体の閉包であるので $\mathbb{B}_0(\mathcal{H})=\mathcal{I}$ である。

2. von Neumann環の前双対、正規状態、正規準同型写像

関連項目

脚注

  1. Banach環とC*-環のスペクトル理論定理9.4より $C^*$-環は必ず近似単位元を持つことに注意。
  2. ただし $\mathcal{A}_{\rm sa}$ は $\mathcal{A}$ の自己共役元全体である。
  3. 単位的ではない場合は単位化 $C^*$-環に埋め込んで考える。単位化 $C^*$-環についてはBanach環とC*-環のスペクトル理論4を参照。
  4. $\mathcal{A}$ の正規元 $A$ に対し $C^*(\{1,A\})$ が単位的可換 $C^*$-環であることについてはBanach環とC*-環のスペクトル理論補題6.3を参照。
  5. 任意の有限階作用素 $T\in \mathbb{B}(\mathcal{H})$ に対し ${\rm Ran}(T)$ のCONSを $e_1,\ldots,e_n$ とおき、$P=\sum_{j=1}^{n}e_j\odot e_j$ とおくと、$P$ は ${\rm Ran}(T)$ の上への射影作用素であり、$T=PT=\sum_{j=1}^{n}(e_j\odot e_j)T=\sum_{j=1}^{n}e_j\odot T^*e_j$ であるから、任意の有限階作用素はSchatten形式の線形結合で表される。