Brunの篩(応用)

$$\newcommand{AA}[0]{\mathscr{A}} \newcommand{abs}[1]{\left\lvert#1\right\rvert} \newcommand{Arg}[0]{\operatorname{Arg}} \newcommand{BB}[0]{\mathscr{B}} \newcommand{C}[0]{\mathbb{C}} \newcommand{CC}[0]{\mathscr{C}} \newcommand{floor}[1]{\left\lfloor#1\right\rfloor} \newcommand{ind}[0]{\operatorname{ind}} \newcommand{Ker}[0]{\operatorname{Ker}} \newcommand{mmod}[1]{\ \left(\mathrm{mod}\ #1\right)} \newcommand{Mod}[1]{\ \left(\mathrm{mod}\ #1\right)} \newcommand{N}[0]{\mathbb{N}} \newcommand{ord}[0]{\operatorname{ord}} \newcommand{Q}[0]{\mathbb{Q}} \newcommand{R}[0]{\mathbb{R}} \newcommand{rank}[0]{\mathrm{rank}} \newcommand{SS}[0]{\mathscr{S}} \newcommand{TT}[0]{\mathscr{T}} \newcommand{UU}[0]{\mathscr{U}} \newcommand{wenvert}[1]{\left\lvert\left\lvert#1\right\rvert\right\rvert} \newcommand{Z}[0]{\mathbb{Z}} $$

前ページの定理4 を再掲する。

$z\geq C_0$ のとき
$$\label{eqa}\sum_{w\leq p< z}\frac{\rho(p)}{p}<\kappa(\log\log z-\log\log w)+\frac{A}{\log w}\tag{*}$$
が成り立つとし、$d$ が平方因数をもたない自然数のとき
$$\label{eqb}\abs{R_d}\leq \rho(d)\tag{\dagger}$$
が成り立つとする。
このとき、さらに $z\geq C$ ならば、整数 $b\geq 0$ に対して
$$S(A, z)\geq XW(z)\left(1-e^{(b+2)\kappa A_1/\lambda\log z}\frac{2\lambda^{2b+2}e^{2\lambda}}{1-\lambda^2 e^{2(1+\lambda)}}\right)-z^{2b+1+2.01/(e^{2\lambda/\kappa}-1)}$$
および
$$S(A, z)\leq XW(z)\left(1-e^{(b+5/2)\kappa A_1/\lambda\log z}\frac{2\lambda^{2b+3}e^{2\lambda}}{1-\lambda^2 e^{2(1+\lambda)}}\right)+z^{2b+2+2.01/(e^{2\lambda/\kappa}-1)}$$
が成り立つ。ここで $C$$C_0, \kappa, A$ にのみ依存する定数である。

この定理は素数に関する多くの未解決の問題について、部分的な解決を与える。たとえば、双子素数の予想に対する部分的解決が得られる。

そこで、$n$$an+b$ がともに $z$ より小さい素因数をもたない場合を考える。ただし $a, b$ は互いに素な整数で、$a>0$ かつ $ab$ は偶数とする。

$A$$X$ 以下の正の整数全体の集合、$A_p$$A$ の要素 $n$ のうち、$n$ あるいは $an+b$ の少なくとも一方が $p$ で割り切れるもの全体の集合とし、$p\mid a$ のとき $\rho(p)=0$$p\mid b$ のとき $\rho(p)=1$、それ以外のとき $\rho(p)=2$ とする。

$p\mid a$ のとき $a, b$ は互いに素だから
$$an+b\equiv b\not\equiv 0\Mod{p}$$
となるから、$\# A_p=0$ となる。$p\mid b$ のとき $a, b$ は互いに素なので
$$p\mid (an+b)\Longleftrightarrow p\mid (an)\Longleftrightarrow p\mid n$$
であるから
$$A_p=\{n\leq X, p\mid n\}$$
となる。それ以外のとき、
$$an+b\equiv 0\Mod{p}\Longleftrightarrow n\equiv k\Mod{p}$$
となる、$0$ でない剰余類 $k\Mod{p}$ が一意的に定まるから、
$$A_p=\{n\leq X, n\equiv 0, k\Mod{p}\}$$
となる。
これらのことから、$d$ が平方因数をもたない自然数のとき
$$A_d=\{n\leq X, n\equiv r_1, r_2, \ldots, r_{\rho(d)}\Mod{d}\}$$
となる、相異なる $\rho(d)$ 個の剰余類 $r_1, r_2, \ldots, r_{\rho(d)}\Mod{d}$ がとれる。よって
$$\abs{\#A_d-\frac{\rho(d)X}{d}}\leq \rho(d)$$
であることがわかるので、\eqref{eqb}が成立する。
また、 Mertensの第1定理 より
$$\sum_{w\leq p< z} \frac{\rho(p)}{p}\leq \sum_{w\leq p< z} \frac{2\rho(p)}{p}<2(\log\log z-\log\log w)+\frac{A}{\log w}$$
となる定数 $A$ が存在するから、\eqref{eqa}が成立する。
さらに、$z$$ab$ の最大の素因数より大きいとき、 Mertensの第3定理 より
$$\label{eq1}\begin{split} W(z)= & \prod_{p< z, p\mid b}\left(1-\frac{1}{p}\right)\prod_{p< z, p\not\mid ab}\left(1-\frac{2}{p}\right) \\ = & \prod_{p\mid b}\left(1-\frac{1}{p}\right)\prod_{p< z, p\not\mid ab} \left[\left(1-\frac{1}{p}\right)^2\left(1-\frac{1}{(p-1)^2}\right)\right] \\ = & c \prod_{p< z}\left(1-\frac{1}{p}\right)^2 \prod_{p\geq z}\left(1-\frac{1}{(p-1)^2}\right) \\ = & \frac{c}{e^{2\gamma} \log^2 z}\left(1+O\left(\frac{1}{\log z}\right)\right), \end{split}\tag{1}$$
ここで
$$c=\prod_{p\mid b}\left(1-\frac{1}{p}\right)^{-1} \prod_{p\mid a}\left(1-\frac{1}{p}\right)^{-2} \prod_{p\not\mid ab} \left(1-\frac{1}{(p-1)^2}\right) $$
となる。$ab$ は偶数なので $c>0$ となる。

これらのことから、\eqref{eqa}および\eqref{eqb}が成立するので、Brunの篩において $b=0$ とおくと、$z$ が大きいとき
$$S(A, z)\geq XW(z)\left(1-e^{2/\lambda\log z}\frac{2\lambda^2 e^{2\lambda}}{1-\lambda^2 e^{2(1+\lambda)}}\right)-z^{1+2.01/(e^\lambda -1)}$$
および
$$S(A, z)\leq XW(z)\left(1-e^{5/2\lambda\log z}\frac{2\lambda^3 e^{2\lambda}}{1-\lambda^2 e^{2(1+\lambda)}}\right)+z^{2+2.01/(e^\lambda -1)}$$
が成り立つ。
ここで、$\lambda=0.253$ とおくと
$$\frac{2\lambda^2 e^{2\lambda}}{1-\lambda^2 e^{2(1+\lambda)}}=0.98523\cdots<1$$
および
$$1+2.01/(e^\lambda -1)=7.98199\cdots$$
より、$z$ が大きいとき
$$S(A, z)\geq 0.01476XW(z)-z^{7.982}$$
が成り立つ。$z=\max\{X+1, (aX+b+1)\}^{1/8}$ とおくと、 $(3.9)$ より
$$S(A, \max\{X+1, (aX+b+1)\}^{1/8})\geq \frac{c_3 X}{\log^2 X}-\frac{c_4 X}{\log^3 X}-\max\{X+1, (aX+b+1)\}^{0.99775}$$
となる定数 $c_3>0, c_4$ がとれる。
ここで、$n$$S(A, \max\{X+1, (aX+b+1)\}^{1/8})$ によって数え上げられるとき $n, an+b$ ともに $\max\{X+1, (aX+b+1)\}^{1/8}$ より小さい素因数をもたないが、$n$$X$ 以下の整数だから、$S(A, \max\{X+1, (aX+b+1)\}^{1/8})$ によって数え上げられる整数 $n$ については $n, an+b$ ともに重複度を含めても、多くても $7$ 個の素因数しかもたない。

ところで
$$\frac{2\lambda^2 e^{2\lambda}}{1-\lambda^2 e^{2(1+\lambda)}}=0.24926\cdots$$
および
$$2+2.01/(e^\lambda -1)=8.98199\cdots$$
が成り立つから
$z=X^{1/9}$ とおくと
$$S(A, X^{1/9})\leq 1.24927XW(z)+z^{8.982}<\frac{c_5 X}{\log^2 X}+\frac{c_6 X}{\log^3 X}+X^{0.998}$$
となる $c_5, c_6$ が存在する。
一方、$p, ap+b$ がともに素数で $p\geq X^{1/9}$ ならば $p, ap+b$$X^{1/9}$ より小さい素因数をもたない。よって
$$\pi_2(a, b; X)-\pi_2(a, b; X^{1/9})< S(A, X^{1/9})<\frac{c_5 X}{\log^2 X}+\frac{c_6 X}{\log^3 X}+X^{0.998}$$
となるから、
$$\pi_2(a, b; X)<\frac{c_5 X}{\log^2 X}+\frac{c_6 X}{\log^3 X}+X^{0.998}+X^{1/9}<\frac{c_7 X}{\log^2 X}$$
となる定数 $c_7$ が存在する。

つまり、次の定理が成り立つ。

$a$$b$ が互いに素な整数で $a>0$ であるとき、$n, an+b$ がいずれも重複度を含めて多くても $7$ 個の素因数しかもたない整数 $n$ が無限に多く存在する。一方、ある定数 $c_7$ について、$X$ 以下の素数 $p$ で、$ap+b$ も素数であるものの個数は必ず $c_7 X/\log^2 X$ より小さくなる。

これは、双子素数に関してBrunの最初の篩の応用よりも強い評価を与え、さらに、素数の代わりに重複度を含めて多くても $7$ 個の素因数しかもたない整数を考えると、そのような整数の組 $(n, n+2)$ は無限に多く存在することを示している。

Brunの篩はまた、Goldbach予想の部分的解決をも導く。$n$ を偶数とする。
$$A_p=\{x: 1\leq x\leq n-1, p\mid x(n-x)\}$$
とおくと、
$S(A, z)$$m, n-m$ がともに $z$ より小さな素因数をもたない正の整数 $m\leq x$ の個数となる。

$p\mid n$ のとき $\rho(p)=1$、それ以外のとき $\rho(p)=2$ とすると、先程と同様に\eqref{eqa}が成り立ち、また
$$\abs{\#A_d-\frac{\rho(d)n}{d}}\leq \rho(d)$$
となるので、\eqref{eqb}が成り立つ。また、
$$W(z)=\frac{c}{e^{2\gamma} \log^2 z}\left(1+O\left(\frac{1}{\log z}\right)\right),$$
ここで
$$c=\prod_{p\mid n}\left(1-\frac{1}{p}\right)^{-1} \prod_{p\not\mid n} \left(1-\frac{1}{(p-1)^2}\right)$$
となるから、
$$\frac{C_1}{\log^2 z}\prod_{p\mid n}\left(1+\frac{1}{p}\right)< W(z)<\frac{C_2}{\log^2 z}\prod_{p\mid n}\left(1+\frac{1}{p}\right)$$
となる正の絶対定数 $C_1, C_2$ がとれる。実際、$n$ は偶数なので、$c>0$ かつ $C_1>0$ であることがわかる。
$$f(n)=\prod_{p\mid n}\left(1+\frac{1}{p}\right)$$
とおくと、
$$\frac{C_1 f(n)}{\log^2 z}< W(z)<\frac{C_2 f(n)}{\log^2 z}$$
となる。

このことから、つぎの事実がわかる。前段はGoldbach予想の部分的解決となっており、後段はSchnirelmannによる、別の形でのGoldbach予想の部分的解決に用いられる。

十分大きな偶数は、重複度を含めても、多くても $7$ 個の素因数しかもたない数 $2$ つの和としてあらわされる。
また、$R(n)$ を、整数 $n$$2$つの素数の和 $p+q$ の形にあらわす方法の個数とする。ただし $p=q$ でもよく、また $p, q$ を入れ替えたものは別の表現として数える。このとき、$n$ が偶数のとき
$$R(n)<\frac{C_0 f(n)n}{\log^2 n}$$
となる絶対定数 $C_0$ が存在する。ただし、
$$f(n)=\prod_{p\mid n}\left(1+\frac{1}{p}\right)$$
とする。

Brunの篩から、$n$ が大きいとき先程と同様に
$$S(A, z)\geq 0.01476nW(z)-z^{7.982}$$
となるので、
$$S(A, n^{1/8})\geq \frac{C_3 f(n)n}{\log^2 n}$$
となる絶対定数 $C_3>0$ が存在する。整数 $m$$S(A, n^{1/8})$ によって数え上げられるとき $m, n-m$ はともに$n^{1/8}$ より小さい素因数をもたない $n-1$ 以下の正の整数だから、$m, n-m$ は重複度を含めても、多くても $7$ 個の素因数しかもたない。

一方、 $z=n^{1/9}$ とおくと、$z$ が大きいとき
$$S(A, n^{1/9})\leq 1.24927nW(z)+z^{8.982}<\frac{C_3 f(n)n}{\log^2 n}$$
となる絶対定数 $C_3$ がとれる。一方、$p, n-p$ がともに素数で、$n^{1/9}\leq p\leq n-n^{1/9}$ ならば $p, n-p$$n^{1/9}$ より小さい素因数をもたないから $p$$S(A, n^{1/9})$ によって数え上げられる。よって
$$R(n)\leq S(A, n^{1/9})+2n^{1/9}<\frac{C_0 f(n)n}{\log^2 n}$$
が成り立つ。

参考文献

[1]
George Greaves, Sieves in Number Theory, Spriner-Verlag, 2001
[2]
Heini Halberstam and Hans Egon-Richert, Sieve Methods, 2nd Edition, Dover publications, 2011
[3]
Melvyn B. Nathanson, Additive Number Theory: The Classical Bases, Graduate Texts in Mathematics, 164, Springer-Verlag, 1996
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