$V$ を、エルミート積をもつ有限次元の複素ベクトル空間とする。
$V$ 上の線形変換 $f\colon V\to V$ が全単射で、$V$ の部分空間 $W$ が $f$ で安定ならば、$f(W)=W$ となる。さらに $W$ は $f^{-1}$ で安定。
$f$ を $W$ から $f(W)$ への写像とみても、$f$ は全単射線形写像だから、
次元定理
より、
$$\dim W=\dim \Ker f+\dim f(W)=\dim f(W)$$
となる。$W$ は $f$ で不変だから、$f(W)$ は $W$ の部分空間であるから、
線形独立性とベクトル空間の基底:定理8
より $f(W)$ の基底は $W$ の基底ともなる。
よって、$f(W)=W$ であるから、$f^{-1}(W)=W$ となるので、$W$ は $f^{-1}$ でも不変。
$f\colon V\to V$ がユニタリー変換で、$W$ が $f$ で安定ならば、$W^\perp$ も $f$ で安定。
$\Bv\in W^\perp$ ならば、任意の $\Bw\in W$ について $\angleb{\Bv, \Bw}=0$ となる。$f^*=f^{-1}$ となるが、
補題1
より、$W$ は $f^{-1}$ で不変。よって、任意の $\Bv\in W^\perp$, $\Bw\in W$ について $f^{-1}(\Bw)\in W$ より
$$\angleb{\Bw, f(\Bv)}=\angleb{f^*(\Bw), \Bv}=\angleb{f^{-1}(\Bw), \Bv}=0$$
となるから $f(\Bv)\in W^\perp$ となる。
$f\colon V\to V$ がユニタリー変換ならば、$V$ は $f$ の固有ベクトルを含む直交基底をもつ。
次元に関する帰納法で示す。$\dim V=1$ のときは明らか。$\dim V\leq m-1$ のときに定理が成り立つと仮定し、$\dim V=m$ とする。
$V$ は複素ベクトル空間だから、$V$ は少なくともひとつの $f$ の固有ベクトルを含む。そこで $f$ の固有ベクトルをひとつとり、$\Bv_1$ とおいて、$V_1=\angleb{\Bv_1}$ とおく。$f(\Bv_1)\in V_1$ より、$V_1$ は $f$ で安定。よって先の補題から、$W=V_1^\perp$ も $f$ で安定であるから、
$f$ は $W$ 上のユニタリー変換を与える。帰納法の過程から、$W$ は $f$ の固有ベクトルを含む直交基底 $\Bv_2, \ldots, \Bv_m$ をもつ。
よって、$V$ は $f$ の固有ベクトルを含む直交基底 $\Bv_1, \Bv_2, \ldots, \Bv_m$ をもつ。