Hermite変換は正規直交基底により対角化可能である。$f$ が実対称変換ならば 随伴変換と随伴行列:定理3 より$f^*=f$ となるから、$f$ はHermite変換であるので、実対称変換も正規直交基底により対角化可能であることが分かる。
Hermite変換の固有値は実数である。
$f$ をHermite変換とし、その固有値をひとつとって $k$ とし、この固有値に属する固有ベクトルをひとつとって $\Bv$ とする。
Hermite変換:定理1
より $\angleb{f(\Bv), \Bv}$ は実数であるから
$$k\wenvert{\Bv}^2=k\angleb{\Bv, \Bv}=\angleb{f(\Bv), \Bv}$$
が実数。$\Bv\neq\Bzr$ より $\wenvert{\Bv}>0$ だから、$k$ も実数。
$V$ 上のHermite変換 $f$ の固有ベクトル $\Bv$ をひとつとる。$\Bw\in V$ が $\Bv$ に直交しているとき、$f(\Bw)$ も $\Bv$ に直交する。
$k$ を $\Bv$ に関する $f$ の固有値とすると、
$$\angleb{\Bv, f(\Bw)}=\angleb{\Bv, f^*(\Bw)}=\angleb{f(\Bv), \Bw}=k\angleb{\Bv, \Bw}=0$$
となる。
$V$ の部分空間 $W$ が線形変換 $f\colon V\to V$ について安定であるとは、$\Bw\in W$ について、つねに $f(\Bw)$ が再び $W$ に属する、つまり $f(W)\subset W$ となることをいう。
$W$ が $f$ により安定な $V$ の部分空間ならば、 $W^\perp$ も $f$ により安定。
$W$ が $f$ について安定とする。$\Bu\in W^\perp$ かつ $\Bw\in W$ ならば、$f(\Bw)\in W$ より
$$\angleb{f(\Bu), \Bw}=\angleb{\Bu, f(\Bw)}=0$$
となるから、$f(\Bu)\in W^\perp$ となる。
$\K$ 上の有限次元ベクトル空間 $V$ 上の線形変換 $f\colon V\to V$ がHermite変換ならば、$f$ は正規直交基底により対角化可能。
$V$ の次元に関する帰納法で証明する。$\dim V=1$ のときは、$f$ はスカラー写像しかないため、自明である。
正の整数 $n\geq 2$ について、$V$ の次元が $n-1$ 以下のときに定理が正しいと仮定し、$n=\dim V$ とする。 定理1 より、$f$ は実固有値 $k$ をもち、$k$ に関する固有ベクトル(とくに、$f$ が実対象変換ならば実固有ベクトル) $\Bv\neq \Bzr$ がとれる。
$W=\angleb{\Bv}$ とおくと、$f(\Bv)=k\Bv\in W$ より、$W$ は $f$ に関して安定となるから、補題より$W^\perp$ も $f$ に関して安定となる。$\dim W^\perp=\dim V-\dim W=n-1$ なので、帰納法の仮定より、$f$ は $W^\perp$ において正規直交基底により対角化可能である。つまり $W^\perp$ の正規直交基底 $\Bv_1, \ldots, \Bv_{n-1}$ をうまくとれば、$f(\Bv_i)=k_i\Bv_i$ となる $k_1, \ldots, k_{n-1}$ がとれる。
$\Bv_n=\Bv/\wenvert{\Bv}$, $k_n=\lambda$ とおくと $\Bv_1, \ldots, \Bv_n$ は $V$ の正規直交基底となり、$i=1, \ldots, n$ について $f(\Bv_i)=k_i\Bv_i$ が成り立つ。
よって、$f$ は $\Bv_1, \ldots, \Bv_n$ により対角化可能である。
このことから $A$ がHermite行列ならば、$A$ はあるHermite行列 $U$ により対角化可能、つまり
$$^t UAU=U^{-1}AU$$
は対角行列となることがわかる。とくに $A$ が実対称行列ならば、$A$ はある直交行列 $U$ により対角化可能であることがわかる。