Hilbertの零点定理

$$\newcommand{A}[0]{\mathbb{A}} \newcommand{AA}[0]{\mathscr{A}} \newcommand{abs}[1]{\left\lvert#1\right\rvert} \newcommand{Arg}[0]{\operatorname{Arg}} \newcommand{BB}[0]{\mathscr{B}} \newcommand{C}[0]{\mathbb{C}} \newcommand{CC}[0]{\mathscr{C}} \newcommand{F}[0]{\mathbb{F}} \newcommand{floor}[1]{\left\lfloor#1\right\rfloor} \newcommand{ind}[0]{\operatorname{ind}} \newcommand{K}[0]{\mathbb{K}} \newcommand{Ker}[0]{\operatorname{Ker}} \newcommand{L}[0]{\mathbb{L}} \newcommand{mmod}[1]{\ \left(\mathrm{mod}\ #1\right)} \newcommand{Mod}[1]{\ \left(\mathrm{mod}\ #1\right)} \newcommand{N}[0]{\mathbb{N}} \newcommand{ord}[0]{\operatorname{ord}} \newcommand{Q}[0]{\mathbb{Q}} \newcommand{R}[0]{\mathbb{R}} \newcommand{rank}[0]{\mathrm{rank}} \newcommand{SS}[0]{\mathscr{S}} \newcommand{TT}[0]{\mathscr{T}} \newcommand{UU}[0]{\mathscr{U}} \newcommand{wenvert}[1]{\left\lvert\left\lvert#1\right\rvert\right\rvert} \newcommand{Z}[0]{\mathbb{Z}} $$

代数的集合とイデアルの根基 の節で述べたように、$\K$ が代数閉体のときには 同節の定理2 の逆の包含関係が成り立ち、$I(V(I))=\sqrt{I}$ となるというのが、Hilbertの零点定理 (Hilbert's Nullstellensatz) である。
この節では、Hilbertの零点定理を証明する。この節での証明はFulton, 1.7節から1.10節を参考としている。証明の本質的部分は 体上有限生成環 の理論によるので、詳しくは可換環の理論の章を参照されたい。

まず、特殊な場合に相当する、次の定理を示す。

弱い零点定理

$\K$ が代数閉体とする。このとき $\K[X_1, \ldots, X_n]$ 上のイデアル $I$ について
$$V(I)=\emptyset \Longleftrightarrow I=\K[X_1, \ldots, X_n].$$

$I(V(I))=\K[X_1, \ldots, X_n]$ ならば、$1\in I(V(I))$ より、$V(I)=\emptyset$ となるので、
$I=\K[X_1, \ldots, X_n]$ となる。つまり、この定理はHilbertの零点定理の特殊な場合を与える。

$I=\K[X_1, \ldots, X_n]$ のとき、$1\in I$ より、$V(I)=\emptyset$ となる。

そこで、$I\neq \K[X_1, \ldots, X_n]$ と仮定する。
Hilbertの基底定理 より $\K[X_1, \ldots, X_n]$ はNoether環だから、Noether環の性質より $I$ を含む $\K[X_1, \ldots, X_n]$ の極大イデアル $J$ が存在する。
$\L=\K[X_1, \ldots, X_n]/J$$\K$ の拡大体に同型であるが、$\K$ 上環として有限生成で、一方 $\K$ は代数閉体だから 環として有限生成な体の拡大は代数拡大 であることから $\L=\K$ となる。よって、各 $i=1, \ldots, n$ について
$$X_i\equiv a_i\Mod J$$
となる $a_i\in\K$ が存在する。このとき $X_i-a_i\in J$ となるから、
$$(X_1-a_1, \ldots, X_n-a_n)\subset J$$
となる。しかし、 代数的集合とイデアル:定理4 より $(X_1-a_1, \ldots, X_n-a_n)$ は極大イデアルであるから、
$J=(X_1-a_1, \ldots, X_n-a_n)$ でなければならない。
よって、$(a_1, \ldots, a_n)\in V(J)\subset V(I)$ となって、
$V(I)\neq\emptyset$ となることがわかる。

これを利用して、一般的な零点定理を示す。

Hilbertの零点定理 (Hilbert's Nullstellensatz)

$\K$ が代数閉体ならば、$\K[X_1, \ldots, X_n]$ 上のイデアル $I$ について、$I(V(I))=\sqrt{I}.$

$\sqrt{I}\subset I(V(I))$ 代数的集合とイデアルの根基 で既に示しているので、$I(V(I))\subset\sqrt{I}$ を示す。

$I=(F_1, \ldots, F_r), F_i\in\K[X_1, \ldots, X_n]$ とおき、多項式 $G\in \K[X_1, \ldots, X_n]$$I(V(F_1, \ldots, F_r))$ に属するとする。
$$J=(F_1, \ldots, F_r, X_{n+1}G-1)$$
とおくと、これは $\K[X_1, \ldots, X_{n+1}]$ のイデアルである。
どの $i$ についても $F_i(a_1, \ldots, a_n)=0$ となるとき、$X_{n+1}G-1=-1\neq 0$ となる。よって、$V(J)=\emptyset$ となるから、 定理1 より $1\in J$ となる。
$$1=\sum_{i=1}^r A_i(X_1, \ldots, X_{n+1}) F_i+B(X_1, \ldots, X_{n+1})(X_{n+1}G-1)$$
となる $A_1, \ldots, A_r, B\in\K[X_1, \ldots, X_{n+1}]$ がとれる。
$Y=1/X_{n+1}$ とおくと、
$$1=Y^{-N}\sum_{i=1}^r C_i(X_1, \ldots, Y) F_i+D(X_1, \ldots, Y)(G-Y)$$
つまり
$$Y^N=\sum_{i=1}^r C_i(X_1, \ldots, Y) F_i+D(X_1, \ldots, Y)(G-Y)$$
となる整数 $N\geq 0$ と、$C_1, \ldots, C_r, D\in\K[X_1, \ldots, X_n, Y]$ がとれる。たとえば
$$B(X_1, \ldots, X_{n+1})=\sum_{i=0}^d H_i(X_1, \ldots, X_n)X_{n+1}^i$$
に対して、
$$D(X_1, \ldots, X_n, Y)=\sum_{i=0}^d H_i(X_1, \ldots, X_n)Y_{n+1}^{d-i}$$
とおくとよい。とくに$Y=G(X_1, \ldots, X_n)$ とおくと
$$G^N=\sum_{i=1}^r C_i(X_1, \ldots, X_n, G(X_1, \ldots, X_n)) F_i$$
となるので、$G^N\in (F_1, \ldots, F_r)=I$ となる。これは $G$$\sqrt{I}$ に属することを示している。

参考文献

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