6-3 平面グラフの五色定理

$$\newcommand{abs}[1]{\left\lvert #1 \right\rvert} \newcommand{cG}[0]{\mathcal{G}} \newcommand{diam}[0]{\operatorname{Diam}} \newcommand{la}[0]{\leftarrow} \newcommand{lt}[0]{\left} \newcommand{Mod}[1]{\ \left(\mathrm{mod}\ #1\right)} \newcommand{mR}[0]{\mathbb{R}} \newcommand{p}[0]{\prime} \newcommand{ra}[0]{\rightarrow} \newcommand{rad}[0]{\operatorname{rad}} \newcommand{rt}[0]{\right} $$

前提知識:グラフ彩色、平面双対

六色から五色へ減らす壁

simple planar graphには次数5以下の頂点があるので、低次数頂点を一つ削って帰納的に彩色すれば六色で塗れます。しかし五色で同じことをすると、削除した頂点 $v$ の次数が5で、その五近傍が五色を全て使っている場合に止まります。
五色定理の工夫は、既存の彩色を固定しないことです。二色だけを使う連結成分では、その二色を丸ごと交換してもproper coloringは壊れません。ある交換ができなければ、その二色pathが平面を分離し、別の交換が必ずできることを証明します。

二色部分graphとKempe chain

bichromatic subgraph and Kempe chain

proper coloring
$$ \varphi:V(G)\longrightarrow\{1,\ldots,q\} $$
と相異なる二色 $a,b$ に対して、色が $a$ または $b$ の頂点が誘導する部分graphを
$$ G[a,b] $$
と書き、二色誘導部分グラフという。
$G[a,b]$ の一つの連結成分を $a$--$b$ Kempe componentといい、その中のpathをKempe鎖|Kempe chainという。

proper coloringなので、$G[a,b]$ の各辺は色 $a$ と色 $b$ の頂点を結びます。従ってKempe chain上では二色が交互に現れます。

Kempe swap lemma

proper coloring $\varphi$ の一つの $a$--$b$ Kempe component $K$ 上で、色 $a$ と $b$ を交換し、他の頂点の色を変えない。この操作後もproper coloringである。

辺 $xy$ を任意に取ります。
両端が $K$ の外なら色は変わりません。両端が $K$ 内なら、元の色は $a,b$ の異なる二色であり、両方を交換しても異なるままです。
ちょうど一端 $x$ が $K$ 内だとします。交換後の $x$ の色は $a$ または $b$ です。もし外側の端 $y$ が同じ色なら、$y$ も色 $a$ または $b$ であり、辺 $xy$ によって $x$ と同じ $G[a,b]$ の連結成分へ入ります。これは $y\notin K$ に反します。
従ってどの辺の両端も同色にならず、交換後もproperです。□

path成分の色を反転する

色1と色3の誘導部分graphにpath
$$ x_0-x_1-x_2-x_3 $$
があり、色が順に $1,3,1,3$ だとします。この成分全体で交換すると $3,1,3,1$ になります。
重要なのはpathの一部だけでなく連結成分全体を交換することです。一部だけを変えると、切れ目の辺で同色が隣り合う可能性があります。

次数5以下の頂点

planar low-degree lemma

頂点数3以上のsimple planar graphには次数5以下の頂点が存在する。

本巻第5章のEuler公式から
$$ |E|\le3|V|-6. $$
従って平均次数は
$$ \frac{1}{|V|}\sum_{v\in V}\deg(v) =\frac{2|E|}{|V|} \le6-\frac{12}{|V|} <6. $$
全頂点次数が6以上なら平均も6以上となるので矛盾します。従って次数5以下の頂点があります。□

この補題は六色定理と五色定理の共通の入口です。違いは、次数がちょうど5で五色全てが近傍に現れたときの処理にあります。

近傍の巡回順と分離

plane embeddingで頂点 $v$ の十分小さい円周を考えると、$v$ に接続する辺が円周を横切る順序が定まります。次数5なら隣接頂点を
$$ v_1,v_2,v_3,v_4,v_5 $$
と巡回順に名付けられます。

alternating neighbours separation

simple plane graphで、頂点 $v$ の相異なる四近傍
$$ v_1,v_2,v_3,v_4 $$
がこの巡回順に現れるとする。$G-v$ に、内部で $v_2,v_4$ を通らない $v_1$--$v_3$ path $P$ があるとき、
$$ P\cup vv_1\cup vv_3 $$
は単純閉曲線を含み、その曲線の局所的に反対側へ $v_2,v_4$ が位置する。
特に、$G-v$ にある $v_2$--$v_4$ pathが $P$ と頂点を共有しないことは不可能である。

$P$ をsimple pathとして取ります。$P$ は $v$ を含まず、辺 $vv_1,vv_3$ は $v$ 以外で互いにも $P$ にも交わりません。従って
$$ C=vv_1\cup P\cup v_3v $$
は単純cycleで、plane embedding上の単純閉曲線です。
$v$ の十分小さい円周上で、$vv_1,vv_2,vv_3,vv_4$ はこの順に横切ります。閉曲線 $C$ は円周を $vv_1$ と $vv_3$ の位置で横切るため、$vv_2$ の短い始部分と $vv_4$ の短い始部分は $C$ の異なる側にあります。辺は $C$ を横切れないので、頂点 $v_2,v_4$ も $C$ の異なる側にあります。
$G-v$ の $v_2$--$v_4$ pathは、一方の側から他方へ移るため、本巻第5章の交互端点定理により $C$ と交わらなければなりません。$v$ はpathに含まれず、plane graphの辺同士は内部で交差しないので、交点は $P$ 上の頂点です。従って $P$ と頂点非共有な $v_2$--$v_4$ pathは存在しません。□

この補題が「一方のKempe chainが存在すれば、交互位置のもう一方は存在できない」という排他性を与えます。

平面五色定理

five-color theorem

全てのloopless planar graphは5-colorableである。すなわち
$$ \chi(G)\le5. $$

平行辺は頂点彩色条件を変えないので一本にまとめ、simple graphとしてよいです。頂点数 $n=|V(G)|$ について帰納します。
$n\le5$ なら、各頂点へ異なる色を与えて高々5色で塗れます。
$n\ge6$ とし、plane embeddingを一つ固定します。low-degree lemmaにより次数5以下の頂点 $v$ を取れます。帰納法から $G-v$ は色集合 $\{1,2,3,4,5\}$ でproperに塗れます。
$\deg(v)\le4$ なら、近傍が使う色は高々4色なので、使われていない色を $v$ へ与えられます。$\deg(v)=5$ でも、五近傍が使う色が4色以下なら同じです。
残る場合、$v$ は相異なる五近傍をもち、それらが五色を一度ずつ使っています。plane embeddingにおける巡回順に
$$ v_1,v_2,v_3,v_4,v_5 $$
と名付け、色名を付け替えて
$$ \varphi(v_i)=i \qquad(1\le i\le5) $$
としてよいです。
$G-v$ の二色部分graph $G[1,3]$ を考えます。$v_1$ と $v_3$ が異なるKempe componentに属するなら、$v_1$ を含む成分だけで色1と3を交換します。Kempe swap lemmaによりproper coloringは保たれ、$v$ の近傍から色1が消えます。そこで $v$ を色1にすれば彩色を拡張できます。
従って、残るのは $v_1,v_3$ が同じ1--3 Kempe componentに属する場合です。この成分内にsimple $v_1$--$v_3$ path $P_{13}$ があります。
次に $G[2,4]$ を考えます。もし $v_2,v_4$ が同じ2--4 Kempe componentに属するなら、内部が色2または4だけからなるsimple path $P_{24}$ があります。色集合が互いに素なので $P_{13}$ と $P_{24}$ は頂点を共有しません。しかし近傍は
$$ v_1,v_2,v_3,v_4 $$
の巡回順にあり、alternating neighbours separation lemmaはそのような二pathの共存を禁止します。矛盾です。
従って $v_2,v_4$ は異なる2--4 Kempe componentに属します。$v_2$ を含む成分だけで色2と4を交換すると、proper coloringを保ったまま $v$ の近傍から色2が消えます。$v$ を色2にして彩色を拡張できます。
全ての場合に $G-v$ の5-coloringを $G$ へ拡張できました。帰納法により全planar graphは5-colorableです。□

証明は「1--3交換ができる」か、「できないため1--3 pathがあり、その分離によって2--4交換ができる」かの完全な二分法です。

手でKempe交換を実行する

五近傍が五色を使う局面

頂点 $v$ の近傍が巡回順に $v_1,\ldots,v_5$ で、それぞれ色1から5を使うとします。

  • $v_1,v_3$ が1--3成分でつながらなければ、$v_1$ 側の成分をswapし、$v$ を色1にする。
  • つながるなら1--3 pathが平面を分離するので、$v_2,v_4$ は2--4成分でつながらない。$v_2$ 側をswapし、$v$ を色2にする。
    どちらの場合も、既彩色頂点の色数を増やさず、局所的な連結成分探索だけで一色を空けます。

構成算法として読む

証明は彩色を実際に作ります。

  1. 現在のplanar graphから次数5以下の頂点を削除し、stackへ積む。
  2. graphが空になったら、stackを逆順に戻す。
  3. 戻す頂点の近傍色が4色以下なら空いた色を使う。
  4. 五色全てが現れたら、二色誘導部分graphを探索してKempe componentを交換する。
    各Kempe componentはBFSまたはDFSで見つかります。単純に毎回graph全体を探索しても多項式時間で5-coloringを構成できます。高速な実装ではplane embeddingのrotationと動的な色成分管理を用いますが、本章の証明にそのデータ構造は必要ありません。

なぜ同じ議論で四色定理にならないか

四色を使う帰納法では、次数5の頂点の五近傍が四色を使う局面が生じます。一色が二回現れるため、一見すると交換しやすそうです。しかし複数のKempe chainが同時に存在し、ある交換で一色を空けようとすると別の隣接頂点へ同じ色が移る場合があります。
五色証明では、五近傍が全て異色なので
$$ \{1,3\}\cap\{2,4\}=\varnothing $$
となり、二本の候補pathが頂点を共有できません。この明確な分離が四色の場合にはそのまま残りません。
歴史的にもKempeは四色定理を同様の交換で証明したと考えましたが、複数chainの相互作用に穴がありました。五色定理では上の二chainだけで完全な排他性が成立するため、議論は正しいです。四色定理にはさらに強い構造解析とreducible configurationが必要です。

face coloringとdual

連結plane graph $H$ のface coloringは、dual graph $H^*$ のvertex coloringです。従って $H^*$ がloopをもたない、すなわち $H$ がbridgeをもたない場合、五色定理から $H$ の面を高々五色で塗れます。
bridgeがあるとdualにloopができ、通常のproper vertex coloringは不可能です。しかしbridgeは同じ面を両側にもつため、地図彩色ではその辺を国境として異色を要求しません。bridgeを無視したdualのsimple化を塗れば、やはり五色の面彩色を得られます。

演習

Kempe swapを辺ごとに確認する

色redとblueの一つのKempe componentだけで二色を交換する。component外との境界辺で同色衝突が起こらない理由を説明せよ。

解答

境界辺 $xy$ で $x$ がcomponent内、$y$ が外だとします。交換後の $x$ と $y$ が同色になるなら、$y$ の色もredまたはblueです。すると $xy$ はred--blue誘導部分graphの辺であり、$y$ は $x$ と同じ連結成分へ入るはずです。これは $y$ がcomponent外という仮定に反します。従って境界で衝突しません。□

近傍色が重複する場合

次数5の頂点 $v$ を削除して5-coloringしたところ、その近傍色が
$$ 1,2,3,4,4 $$
だった。Kempe交換を使わずに彩色を拡張せよ。

解答

近傍では色5が使われていません。従って $v$ を色5にすれば、全ての隣接頂点と異なる色になりproper coloringが得られます。Kempe交換が必要なのは五近傍が五色を一度ずつ使う場合だけです。□

二本のKempe pathの排他性

$v$ の近傍 $v_1,v_2,v_3,v_4$ が巡回順にあり、色がそれぞれ1,2,3,4である。$G-v$ に1--3 pathがあるなら、2--4 pathが存在しないことを示せ。

解答

1--3 path $P_{13}$ と二辺 $vv_1,vv_3$ は単純閉曲線を作り、巡回順から $v_2,v_4$ はその反対側にあります。2--4 pathがあればこの曲線を横切る必要があります。
pathは $v$ を使わず、plane embeddingの辺は内部で交差しないので、交点は $P_{13}$ の頂点でなければなりません。しかし1--3 pathの頂点色は1または3、2--4 pathでは2または4なので頂点共有は不可能です。従って2--4 pathは存在しません。□

五色証明の帰納法

五色定理の証明で、削除頂点 $v$ の次数が0から4の場合と、次数5だが近傍色が重複する場合を一つの条件でまとめよ。

解答

共通条件は「$v$ の近傍で使われている色が高々4色」であることです。次数4以下なら近傍頂点数自体が4以下なのでこの条件を満たします。次数5でも色が重複すれば異なる近傍色数は4以下です。
いずれも五色のうち少なくとも一色が近傍で未使用なので、その色を $v$ へ与えれば帰納的彩色を拡張できます。□

wheelを五色以下で塗る

奇cycle $C_{2m+1}$ に中心頂点を加えたwheelをproperに彩色し、その彩色数を求めよ。

解答

奇cycleは3色必要で、3色で塗れます。中心はrimの全頂点と隣接するため、その3色のどれも使えず第四色が必要です。従ってwheelは4-colorableであり、
$$ \chi(W_{2m+2})=4. $$
これは平面graphで五色上界が常に鋭いわけではないことを示します。□

dualによる面彩色

bridgeをもたない連結plane graphの面が高々五色でproperに塗れることを、dualと五色定理から証明せよ。

解答

「平面双対」から、bridgeに対応するdual edgeだけがloopです。元graphにbridgeがないのでdual $G^*$ はloopless planar graphです。五色定理により $G^*$ の頂点を高々五色でproperに塗れます。
$G^*$ の頂点は元graphの面で、dualで隣接する二頂点は元graphで辺を共有する二面です。従ってdual頂点の色を対応する面へ移せば、辺を共有する面が異色となる五色面彩色を得ます。□

本章で得たもの

五色定理は、低次数頂点を削る退化度の方法に、彩色を動かすKempe swapを加えたものです。次数5の頂点で五色が全て塞がれても、

  • 1--3 chainがなければ1と3を交換する。
  • 1--3 chainがあれば平面分離により2--4 chainはなく、2と4を交換する。
    という二分法で必ず一色を空けられます。抽象的な「連結成分で二色を交換する」操作と、平面上の「交互端点を結ぶpathは同時に存在できない」という幾何が組み合わさった証明です。

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