前提知識:二部グラフ、平面グラフ
複数の試験を時間帯へ割り当てます。同じ学生が受ける二試験は同時に実施できません。試験を頂点、同じ学生を共有する二試験を辺で結ぶと、一つの時間帯を一つの色として、隣接頂点へ異なる色を割り当てる問題になります。
必要な最少時間帯はグラフの彩色数です。彩色は地図だけの問題ではなく、時間割、周波数割当、register allocation、互いに両立しない仕事の分類を同じ形へ翻訳します。
グラフ $G$ の $k$-頂点彩色|coloringとは、写像
$$
c:V(G)\longrightarrow\{1,2,\ldots,k\}
$$
で、すべての辺 $uv\in E(G)$ に対して
$$
c(u)\ne c(v)
$$
を満たすものをいう。この条件を満たす彩色を正則彩色|proper coloringという。
$G$ をproperに彩色するために必要な最少色数を彩色数といい、$\chi(G)$ と書く。頂点をもたないグラフでは $\chi(G)=0$ と約束する。
色の名前には意味がありません。色1と色2を全体で交換しても同じ制約を満たします。本質は頂点集合を、各内部に辺をもたない独立集合へ何個に分割できるかです。
$G$ が $k$-colorableであるための必要十分条件は、$V(G)$ を高々 $k$ 個の独立集合へ分割できることである。
proper coloring $c$ があれば、各色 $i$ の色類
$$
V_i=\{v\in V(G)\mid c(v)=i\}
$$
を取ります。同じ色の二頂点が隣接するとproperでないため、各 $V_i$ は独立集合です。色類は互いに交わらず全頂点を尽くします。
逆に独立集合への分割 $V(G)=V_1\sqcup\cdots\sqcup V_k$ があれば、$V_i$ の頂点へ色 $i$ を割り当てます。同じ色の頂点間には辺がないのでproper coloringです。□
頂点部分集合 $S\subseteq V(G)$ で、$S$ の任意の相異なる二頂点が隣接するとき、$S$ をクリーク (グラフ理論)|cliqueという。最大cliqueの頂点数をクリーク数|clique数といい、$\omega(G)$ と書く。
$$ \chi(G)\ge\omega(G). $$
clique内の任意の二頂点は隣接するので、proper coloringでは全頂点が相異なる色をもたなければなりません。最大cliqueに $\omega(G)$ 頂点あるため、少なくともその数の色が必要です。□
逆向きの等号は一般には成り立ちません。長さ5のcycle $C_5$ は三頂点cliqueを含まないので $\omega(C_5)=2$ ですが、2色では塗れず $\chi(C_5)=3$ です。
頂点を一つずつ処理し、既に彩色された隣接頂点が使っていない最小番号の色を割り当てます。
頂点順序
$$
v_1,v_2,\ldots,v_n
$$
を固定する。$v_i$ より前に現れる隣接頂点の個数が常に高々 $d$ なら、greedy coloringは高々 $d+1$ 色で $G$ をproperに彩色する。
$v_i$ を彩色する時点で色が決まっているのは前に現れた頂点だけです。そのうち $v_i$ と隣接するものは高々 $d$ 個なので、禁止される色も高々 $d$ 色です。
$1,2,\ldots,d+1$ の $d+1$ 色のうち少なくとも一色は使われていません。その色を $v_i$ へ割り当てられます。こうして全頂点を処理できます。
各辺 $v_iv_j$ で $i< j$ とすると、$v_j$ を塗る際に $v_i$ の色を避けるため、最終的に両端の色は異なります。従ってproper coloringです。□
最大次数を $\Delta(G)$ とすると
$$
\chi(G)\le\Delta(G)+1.
$$
任意の頂点順序で、各頂点より前に現れる隣接頂点数はその次数以下、従って $\Delta(G)$ 以下です。greedy定理で $\Delta(G)+1$ 色あれば足ります。□
この上界は $K_n$ で等号です。しかし多くのグラフでは頂点順序を工夫すると大幅に少ない色で塗れます。「貪欲彩色と退化度」では、各部分グラフに低次数頂点があるという退化度を使い、良い順序を後ろから作ります。
辺をもつグラフ $G$ について、次は同値である。
$(1)\Rightarrow(2)$。二部表示 $(X,Y)$ に対し、$X$ を色1、$Y$ を色2で塗ります。すべての辺は二部の間を結ぶのでproperです。
$(2)\Rightarrow(1)$。色1の頂点集合を $X$、色2を $Y$ とすれば、proper性により同色頂点間に辺はなく、すべての辺が二部の間を結びます。
$(1)\Leftrightarrow(3)$ は「二部グラフとマッチング」のodd cycle判定で完全に証明しました。
辺が一つ以上あれば隣接二頂点は異なる色を必要とするため $\chi(G)\ge2$。二部性から $\chi(G)\le2$ なので等号です。□
次が成り立つ。
$K_n$ は全頂点がcliqueなので少なくとも $n$ 色必要で、各頂点へ別の色を与えれば $n$ 色で足ります。
$P_n$ は辺をもち、木なので二部グラフです。従って彩色数は2です。
$C_n$ は $n$ が偶数なら二部グラフなので2色です。$n$ が奇数ならodd cycleそのものなので2-colorableでなく、少なくとも3色必要です。一方、path $v_1,\ldots,v_{n-1}$ を色1,2で交互に塗り、最後の頂点 $v_n$ だけ色3にすればproperなので3色で足ります。□
彩色数を決める標準手順は、同じ整数へ達する下界と上界を作ることです。
「平面グラフ」で、頂点数3以上のsimple planar graphには次数5以下の頂点が存在することを証明しました。この局所情報だけで帰納法が動きます。
すべての有限simple planar graph $G$ は6-colorableである。
頂点数 $n=|V(G)|$ に関する帰納法で示します。$n\le6$ なら各頂点へ異なる色を与えればよいです。
$n\ge7$ とし、より少ない頂点をもつすべてのsimple planar graphが6-colorableだと仮定します。「平面グラフ」の低次数頂点の定理から、$G$ には次数5以下の頂点 $v$ があります。
$G-v$ は頂点を一つ削ったplanar graphなので、帰納法の仮定により6色でproperに塗れます。$v$ の隣接頂点は高々5個であり、それらが使う色は高々5色です。六色のうち少なくとも一色は隣接頂点に使われていません。その色を $v$ へ割り当てれば、$G$ 全体のproper 6-coloringになります。□
実際には平面グラフは4色で塗れますが、四色定理の既知の証明は大規模な場合分けと計算機検証を含み、本テキストの手計算中心のCoreには置きません。一方、Kempe chainを用いると5色までは比較的短い完全証明で到達できます。
すべての有限simple planar graphは5-colorableである。
この定理は「平面グラフの五色定理」の中心定理です。そこで、次数5の頂点の五つの隣接頂点がすべて異なる色を使う唯一の難しい場合に、二色で塗られた連結成分を入れ替えるKempe chainを導入し、完全に証明します。本章では六色定理までを証明済み範囲とし、五色定理を未証明の推論には使いません。
path $P_4$ の頂点を辺 $x_1x_2,x_2x_3,x_3x_4$ とします。順序
$$
x_1,x_2,x_3,x_4
$$
ならgreedyは色1,2,1,2の二色です。
しかし順序
$$
x_1,x_4,x_2,x_3
$$
では、$x_1,x_4$ が色1、$x_2$ が色2となり、最後の $x_3$ は隣接頂点 $x_4$ の色1と $x_2$ の色2をともに避けて色3を使います。同じgraphでも順序だけで使用色数が変わりました。greedy算法が返す色数は上界であり、常に彩色数そのものとは限りません。
試験A,B,C,D,Eについて、同じ学生を共有する組が
$$
AB,AC,BC,CD,DE
$$
だとします。A,B,Cは三角形を作るので少なくとも3時間帯必要です。
具体的に
$$
c(A)=1,\quad c(B)=2,\quad c(C)=3,\quad
c(D)=1,\quad c(E)=2
$$
とすれば、すべての衝突辺の両端が異なる色です。従って必要最少時間帯は3です。下界を三角形、上界を具体的彩色が与えました。
$G$ のproper $k$-coloringが、補グラフ $\overline G$ の頂点集合を $k$ 個のcliqueへ分割することと同値であることを示せ。
$G$ の各色類は独立集合です。同じ色類の相異なる二頂点は $G$ で隣接しないため、$\overline G$ では隣接します。従って各色類は $\overline G$ のcliqueです。
逆に $V(G)$ が $\overline G$ の $k$ 個のcliqueへ分割されていれば、各clique内の二頂点は $G$ では隣接しません。各部分へ一色を割り当てると $G$ のproper coloringになります。□
$n\ge4$ とし、cycle $C_{n-1}$ の全頂点へ一つの中心頂点を接続したwheel graph $W_n$ の彩色数を求めよ。
外周長 $n-1$ が偶数、すなわち $n$ が奇数なら、外周は2色で塗れます。中心は外周の両色を避ける第四色ではなく第三色を使えばよいので $\chi(W_n)\le3$。中心と外周の隣接二頂点は三角形を作るため $\chi(W_n)\ge3$。従って3です。
外周長 $n-1$ が奇数、すなわち $n$ が偶数なら、外周には3色必要です。中心は外周の全頂点に隣接し、properなodd cycle彩色では三色すべてが外周に現れるため第四色が必要です。第四色を中心へ使えば足りるので $\chi(W_n)=4$。従って
$$
\chi(W_n)=
\begin{cases}
3&n\text{ が奇数},\\
4&n\text{ が偶数}.
\end{cases}
$$
□
path $P_4=x_1x_2x_3x_4$ にgreedy coloringを適用する。順序
$$
x_1,x_2,x_3,x_4
$$
と順序
$$
x_1,x_4,x_2,x_3
$$
で使用色数を比較し、真の彩色数を求めよ。
最初の順序では
$$
c(x_1),c(x_2),c(x_3),c(x_4)=1,2,1,2
$$
となり二色です。
第二の順序では $x_1,x_4$ は色1、$x_2$ は $x_1$ を避け色2です。最後の $x_3$ は $x_4$ の色1と $x_2$ の色2を避け、色3になります。
$P_4$ は辺をもつ木、従って二部グラフなので真の彩色数は2です。第二のgreedy結果3は最適ではありません。□
最大独立集合の大きさを $\alpha(G)$ とする。$n$ 頂点グラフについて
$$
\chi(G)\ge\left\lceil\frac{n}{\alpha(G)}\right\rceil
$$
を示せ。
proper coloringの各色類は独立集合なので、一色類に含まれる頂点は高々 $\alpha(G)$ 個です。$k$ 色で全 $n$ 頂点を塗れたなら
$$
n\le k\alpha(G).
$$
従って
$$
k\ge\frac{n}{\alpha(G)}.
$$
$k$ は整数なので $k\ge\lceil n/\alpha(G)\rceil$。最小の $k=\chi(G)$ にも同じ下界が成り立ちます。□
$v\ge3$ のsimple planar graphの平均次数が6未満であることを示し、次数5以下の頂点の存在をもう一度導け。
planar辺数上界 $e\le3v-6$ と握手補題から
$$
\frac1v\sum_{x\in V}\deg(x)
=\frac{2e}{v}
\le\frac{2(3v-6)}v
=6-\frac{12}{v}<6.
$$
すべての頂点の次数が6以上なら平均も6以上になるため矛盾です。従って次数5以下の頂点があります。□
科目 $A,B,C,D,E,F$ の衝突辺が
$$
AB,AC,BC,CD,DE,EF,FD
$$
である。彩色数を求め、最少時間帯の割当を一つ与えよ。
$A,B,C$ が三角形を作るので少なくとも3色必要です。また $D,E,F$ も三角形です。
次の3-coloringを取れます。
$$
c(A)=1,\quad c(B)=2,\quad c(C)=3,
$$
辺 $CD$ があるので $D$ を1とし、
$$
c(D)=1,\quad c(E)=2,\quad c(F)=3
$$
とします。列挙された各辺の両端は異なる色です。従って $\chi=3$ で、色1,2,3を三つの時間帯とすればよいです。□
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