被覆空間 (covering space) とは、ある位相空間(底空間)に対して、その局所的な位相構造を保ったまま、大域的に「巻き付く」あるいは「積み重なる」ような構造を持つ空間のことである。直感的には、円周の真上に無限に伸びる螺旋階段のような関係を指す。被覆空間の理論は、基本群の計算や分類において不可欠な道具であり、代数方程式論におけるガロア理論と驚くほど類似した美しい対応関係(被覆空間と基本群の部分群の対応)を持つことで知られる。
15日前
単連結空間 (simply connected space) とは、位相幾何学において「穴が開いていない」ことを厳密に定義した空間である。正確には、空間が弧状連結であり、かつ空間内の任意の閉曲線(ループ)を連続的に変形して一点に縮めることができる性質を持つ。これは基本群が自明であることと同値であり、ポアンカレ予想の主題となるなど、空間の大域的な構造を決定づける基本的な概念である。また、複素解析においては、コーシーの積分定理が成立するための領域の条件としても重要である。
16日前
位相幾何学者の正弦曲線 (Topologist's sine curve) とは、位相幾何学において「連結性と弧状連結性の不一致」や「局所連結性の欠如」を示すために頻繁に用いられる代表的な反例である。ユークリッド平面上の部分集合として定義され、原点に向かって無限に振動する正弦関数のグラフと、その集積集合である線分を合わせた形状をしている。この空間は「つながっている(連結)」にもかかわらず、その上を連続的に移動する「道」を作ることができない(非弧状連結)という直感に反する性質を持つ。
16日前
局所連結空間 (locally connected space) とは、空間の局所的な(微視的な)形状が連結であることを保証する位相空間のクラスである。具体的には、任意の点の任意の近傍の中に、より小さな連結な近傍が含まれる空間を指す。この性質は、空間全体が大域的に連結であるか否かとは独立しており、例えば「連結だが局所連結ではない」病的な空間や、「非連結だが局所連結である」空間が存在する。多様体やCW複体など、幾何学で扱われる主要な空間は局所連結性を満たす。
16日前
連結空間 (connected space) とは、位相空間論において「空間が二つの交わらない空でない開集合に分割できない」という性質を持つ空間を指す。これは直感的には空間が「ひと塊」であることを定式化したものであるが、道で結べることを意味する「弧状連結性」とは異なる概念であり、より弱い条件である。解析学における中間値の定理の一般化や、空間の大域的な構造を理解する上で基礎となる重要な概念である。
16日前
可縮空間(Contractible space)とは、位相幾何学(トポロジー)において、空間全体を連続的に「一点」に縮めることができる空間のことを指す。より厳密には、一点からなる空間とホモトピー同値な空間のことである。可縮な空間には「穴」や「空洞」が存在せず、ホモトピー群やホモロジー群などの不変量がすべて自明(0または点と同じ)になるという非常に単純な構造を持つが、局所的な形状(局所可縮性)に関しては複雑な振る舞いをすることもある。
16日前
整列順序(Well-order)とは、全順序集合の中でも特に構造が強く、「空でない任意の部分集合が必ず最小元を持つ」という性質を満たす順序のことである。これは自然数 $\mathbb{N}$ が持つ性質を一般化したものであり、数学的帰納法を無限の彼方まで拡張した「超限帰納法」を適用するための基礎となる。すべての順序数(Ordinal number)は整列順序集合であり、また選択公理を仮定すれば、どのような集合にも整列順序を入れることが可能である(整列可能定理)。
16日前
全順序(Total Order)とは、順序集合論において、集合内の任意の2つの要素が常に比較可能である(大小関係を一意に決定できる)ような順序構造のことであり、線型順序(Linear Order)とも呼ばれる。半順序集合が分岐や並列を許容する「ネットワーク状」の構造を持つのに対し、全順序集合は要素が一直線に並ぶ「列状」の構造を持つため、実数直線や辞書式順序など、直感的な順序付けのモデルとして最も基本的な概念である。
16日前
順序数(Ordinal number)とは、集合論において要素の「並び順」や「階層」を一般化した概念であり、自然数を無限の彼方まで拡張したものである。要素の「個数」を表す基数(Cardinal number)とは異なり、順序数は順序構造を区別するため、同じ無限個の要素を持つ集合であっても、並べ方が異なれば異なる順序数が対応する。現代数学ではJohn von Neumannによる構成法(ある順序数はそれより小さいすべての順序数の集合である)が標準的な定義として採用されており、超限帰納法の基盤として不可欠な役割を果たしている。
16日前
基数(Cardinal number / Cardinality)とは、集合論において、集合の「要素の個数」あるいは「大きさ」を一般化した概念であり、濃度(Power)とも呼ばれる。有限集合においては通常の自然数と一致するが、無限集合に対しては「全単射が存在するか否か」を基準に大小を比較することで、可算無限(自然数の濃度)や非可算無限(実数の濃度)など、無限の中にも厳然たる階層構造が存在することを明らかにするものである。Georg Cantorによって創始され、現代数学全体の基礎言語となっている。
16日前