ネットとフィルターは、位相空間における収束を記述する二つの等価な道具である。ただし、両者を機械的に同一視するのではなく、「ネットの尾部が生成するフィルター」と「フィルターから作る標準的なネット」を介して対応を理解すると見通しがよい。基本概念は ネットによる位相空間論1:ネットの定義 と フィルターによる位相空間論1:フィルターの定義 を参照。
有向集合 $D$ 上のネット $(x_d)_{d\in D}$ に対し、
$$
T_{d_0}:=\{x_d\mid d\ge d_0\}
$$
を $d_0$ 以後の尾部とする。すべての尾部 $T_{d_0}$ を含む集合全体
$$
\mathcal F_x:=\{A\subseteq X\mid \text{ある }d_0\in D\text{ が存在して }T_{d_0}\subseteq A\}
$$
は $X$ 上のフィルターであり、ネットの尾部フィルターと呼ばれる。
ネット $(x_d)$ が点 $p$ に収束することと、その尾部フィルター $\mathcal F_x$ が $p$ に収束することは同値である。
$p$ の任意の近傍 $U$ について、ネットが最終的に $U$ に入ることは、ある尾部 $T_{d_0}$ が $U$ に含まれることと同値である。これはちょうど $U\in\mathcal F_x$、すなわち近傍フィルター $\mathcal N_p$ が $\mathcal F_x$ に含まれることを意味する。
フィルター $\mathcal F$ に対し
$$
D_{\mathcal F}:=\{(A,a)\mid A\in\mathcal F,\ a\in A\}
$$
とおき、
$$
(A,a)\le (B,b)\quad\Longleftrightarrow\quad B\subseteq A
$$
で順序を入れる。$A\cap B\in\mathcal F$ かつ空でないので、これは有向集合になる。$x_{(A,a)}:=a$ とおけば、$D_{\mathcal F}$ 上のネットが得られる。このネットは任意の $F\in\mathcal F$ に最終的に入る。特に、$\mathcal F$ が点 $p$ に収束すれば、このネットも $p$ に収束する。
$F\in\mathcal F$ を固定し、$(F,a_0)\in D_{\mathcal F}$ を一つ取る。$(F,a_0)\le(B,b)$ ならば $B\subseteq F$ なので、$x_{(B,b)}=b\in F$ である。したがってネットは最終的に $F$ に入る。$\mathcal F$ が $p$ に収束するときは、$p$ のすべての近傍が $\mathcal F$ に属するため、結論を得る。
ネット $(x_d)$ が普遍ネットであるとは、任意の部分集合 $A\subseteq X$ に対して、ネットが最終的に $A$ に入るか、最終的に $X\setminus A$ に入るかのいずれかが成り立つことをいう。
ネットの尾部フィルターが超フィルターであることと、そのネットが普遍ネットであることは同値である。また、超フィルターから 定理2 の方法で作ったネットは普遍ネットになる。
尾部フィルターが超フィルターなら、任意の $A\subseteq X$ について $A$ または $X\setminus A$ のいずれかを含むため、ネットはその集合に最終的に入る。逆にネットが普遍的なら、任意の $A$ について $A$ またはその補集合が尾部フィルターに属するので、尾部フィルターは超フィルターである。超フィルター $\mathcal U$ から作ったネットについても、任意の $A$ に対し $A\in\mathcal U$ または $X\setminus A\in\mathcal U$ であり、 定理2 から普遍性が従う。
| ネットの言葉 | フィルターの言葉 |
|---|---|
| 最終的に集合 $A$ に入る | 尾部フィルターが $A$ を含む |
| 点 $p$ に収束する | 近傍フィルター $\mathcal N_p$ を含む |
| 普遍ネット | 超フィルター |
| 部分ネットを取る | より細かい収束情報へ移る |
| 収束部分ネットをもつ | 適切な細分フィルターが収束する |
最後の二行は、採用する部分ネットの定義によって細部に注意が必要である。個々の値を追う議論や関数解析ではネットが自然であり、集合族の極大性や選択原理を使う議論ではフィルターが簡潔になりやすい。本書では両方の証明を残し、同じ位相的事実がどのように別の言語で現れるかを比較できるようにした。