完全性とホモトピーの公理から、アフィン空間の開集合との積で環が底の環の像で覆われること、閉部分の列に沿って生成系が組み上がることを示し、射影空間との積の環が線形部分空間の類で生成されることを導く。原論文は開部分への制限の全射性を完全性の公理から直接とするが、補集合の閉集合が圏に属するとは限らないので、特異点集合を剥がす段を補う。
前提知識: アフィン空間, 射影空間, 局所化完全列, 特異点
$\mathcal V$ は代数的空間の圏で条件 (V.3) を満たし、$X\mapsto A(X)$ は §4 の弱い公理系(開部分への同型に沿う引き戻し、閉部分への同型に沿う直像、公理 (I.1)〜(I.7) と式 (2))と、完全性の公理 (E)、ホモトピーの公理 (H) を満たすとする(本書『3-1 完全性とホモトピーの公理』と下の定義)。原論文 §5 の仮定はこれで全部で、本書が第 3 章で足した仮定 (BC) はこの頁では使わない。
本頁の主結果は次の四つである。
原論文 Gro58b の §5(印字 4-31〜4-32)は「ある種の積空間への応用」と題され、§4 の完全性とホモトピーの公理から、積空間 $X\times P$ の環を底 $X$ の環で表す手がかりを引き出す。二つの道具がある。一つは Proposition 6 で、アフィン空間やその開集合との積では、環の元はすべて底の元の外積で書ける。もう一つは Proposition 7 で、空間を閉部分の列で層に分けたとき、各層の環の生成系を直像で集めれば全体の生成系になる。
この二つを合わせると、射影空間のように、アフィン空間と同型な層に分かれる空間との積の環の生成系が得られる。原論文は Proposition 7 の後で、各層がアフィン空間の開集合の非交和であるような列をもつ空間に同じ議論が当てはまると述べ、そのうち最も簡単で最も重要な場合として射影空間を系に立てる(印字 4-32)。
これが §6 の射影束公式の証明の準備である。射影束 $P(E)\to X$ は、$E$ を自明にする開集合 $U$ の上で $U\times P(V)$ と同型になる。系によりその環は線形部分空間の類、すなわち基本類の冪で生成され、§6 の Théorème 3 がこの局所的な生成を大域的な生成に組み上げる(本書『4-2 局所から大域へと射影束公式』)。射影束公式は、冪の一次独立(本書『2-1 直線束の類と射影束の一次独立』の主結果「基本類の冪の一次独立」)とこの生成を別々に示して合わせる形で得られる。一次独立は次数と直像から、生成は層への分割から出るので、二つの証明は互いに独立である。
§5 の議論は、開部分への制限と閉部分からの直像しか使わない。そのため原論文の §4 冒頭の言明どおり、結果は特異な空間を含む圏でも成り立つ。ただし (E) は閉部分が圏に属するときにしか使えないので、閉部分として何をとれるかに注意が要る。原論文はこの点を Proposition 6 の証明の一文で見落としており、本頁の主結果 1 はそれを補うために立てた。
この頁の仮定を、前頁までの定義を引いて一つにまとめる。
$\mathcal V$ は代数的空間の圏で、条件 (V.3) を満たす:$X\in\mathcal V$ の開部分、または非特異な閉部分空間に同型な代数的空間は $\mathcal V$ に属し、$X,Y\in\mathcal V$ なら $X\times Y\in\mathcal V$ で、アフィン直線 $\mathbf A^1$ は $\mathcal V$ に属する。係数環 $\Lambda$ と $X\mapsto A(X)$ は §4 の弱い公理系(本書『3-1 完全性とホモトピーの公理』)を満たす。すなわち引き戻し $f^*$ は開部分への同型 $f$ に、直像 $f_*$ は閉部分への同型 $f$ にだけ与えられ、関手則、公理 (I.1)〜(I.7)、式 (2):$1_X\times1_Y=1_{X\times Y}$、$f^*(1_Y)=1_X$($X$ 既約なら $\varepsilon(1_X)=1$)が成り立つ。さらに次の二つを仮定する。
(V.3) により、一点 $\mathrm{pt}$($\mathbf A^1$ の非特異な閉部分)、アフィン空間 $\mathbf A^n=\mathbf A^1\times\dots\times\mathbf A^1$ とその開部分は $\mathcal V$ に属する。一方、射影空間が $\mathcal V$ に属することは (V.3) からは出ないので、主結果 4 では仮定に置く。閉部分は非特異なときにしか $\mathcal V$ に属することが保証されない。この非対称が主結果 1 の理由である。
次に層別の記号を置く。原論文 Proposition 7 の記号をそのまま使う。
$X\in\mathcal V$ について、閉部分の狭義の増大列 $X_0\subsetneq X_1\subsetneq\dots\subsetneq X_n=X$ で、各 $X_i$ が $\mathcal V$ に属するものを $X$ の層別といい、$X_i-X_{i-1}$($1\le i\le n$)と $X_0$ をその層という。便宜上 $X_{-1}$ は空として $X_0-X_{-1}=X_0$ と書く(空集合を圏の対象として使うのではない)。包含を
$$u_i\colon X_i\to X,\qquad v_i\colon X_i-X_{i-1}\to X_i$$
と書く。$u_i$ は閉部分への同型、$v_i$ は開部分への同型で、各層は $X_i$ の開部分なので (V.3) により $\mathcal V$ に属する。
層そのものは $\mathcal V$ に属するが、層の閉包 $X_i$ が $\mathcal V$ に属することは仮定である。(E) を $X_{i-1}\subset X_i$ に当てるにはこれが要る。
次の事実は証明せずに引用する。出典は主に Wei46、Ser55、Ful98 で、該当箇所の番号は本頁では確認していない。要点は第 0 章の頁『0-2 代数多様体・横断性・射影束と旗多様体』『0-3 サイクル・Chow 環・K 群と対称式』にある。
(E) は、閉部分 $Y$ が $\mathcal V$ に属するとき、補集合 $U$ への制限が全射であることを含む。任意の開部分 $U$ について同じことを言うには、補集合を非特異な層に分けて (E) を一段ずつ当てればよい。
$X\in\mathcal V$、$U$ を $X$ の空でない開部分、$j\colon U\to X$ を包含とすると、$j^*\colon A(X)\to A(U)$ は全射である。
段 1(開部分の列).$W_0:=U$ とし、$W_m$ が定まったとき、$X-W_m$ が空でなければ
$$W_{m+1}:=X-\operatorname{Sing}(X-W_m)$$
とおく。ここで $X-W_m$ には被約な閉部分空間の構造を入れる。$\operatorname{Sing}(X-W_m)\subset X-W_m$ なので $W_m\subset W_{m+1}$ で、$W_{m+1}$ は $X$ の開部分である。
段 2(各段の層).$D_m:=W_{m+1}-W_m=(X-W_m)-\operatorname{Sing}(X-W_m)$ は $X-W_m$ の非特異点の全体で、引用する事実 1 により空でない。$D_m=(X-W_m)\cap W_{m+1}$ なので $D_m$ は $W_{m+1}$ の閉部分で、非特異である。$W_{m+1}$ は $X$ の開部分なので (V.3) により $\mathcal V$ に属し、$D_m$ はその非特異な閉部分空間なので再び (V.3) により $\mathcal V$ に属する。$W_{m+1}-D_m=W_m$ なので、(E) を $D_m\subset W_{m+1}$ に当てると、制限 $A(W_{m+1})\to A(W_m)$ は全射である。
段 3(有限回で止まる).$X-W_{m+1}=\operatorname{Sing}(X-W_m)$ なので、引用する事実 1 により $\dim(X-W_{m+1})<\dim(X-W_m)$ である。よってある $N\le\dim X+1$ で $X-W_N$ が空、すなわち $W_N=X$ となる。
段 4(合成).引き戻しの関手則により、$j^*$ は制限 $A(W_N)\to A(W_{N-1})\to\dots\to A(W_0)$ の合成で、段 2 により各段は全射である。よって $j^*$ は全射である。
段 2 で (E) を当てる閉部分 $D_m$ は、いつも非特異で空でない。この証明は、本書『3-1 完全性とホモトピーの公理』の次元の帰納法の補題と同じく、特異点集合を剥がして次元を下げる骨組みでできている。
原論文は Proposition 6 の証明で、$U\subset\mathbf A^n$ を開として、制限 $A(X\times\mathbf A^n)\to A(X\times U)$ は (E) により全射であるとする(印字 4-31)。しかし (E) を当てるには、補集合 $X\times(\mathbf A^n-U)$ が $\mathcal V$ に属することが要る。(V.3) が保証するのは開部分と非特異な閉部分空間だけなので、$\mathbf A^n-U$ が特異点をもてばこれは保証されない。たとえば非特異な代数的空間の全体の圏(本書『3-2 線形同値の理論』)では、特異な閉部分は圏に属さない(下の例(補集合が特異な開集合))。
原論文の主張は正しく、足りないのは段だけである。本書は上の定理(開部分への制限の全射性)を補って、Proposition 6 の証明をそこに帰着させた。$X$ が非特異で $X\times(\mathbf A^n-U)$ も非特異なら、原論文の道はそのまま通る。
開部分への制限が全射になったので、アフィン空間の開集合との積は、アフィン空間そのものとの積に帰着する。そこでは (H) を座標の数だけ繰り返せばよい。
$X\in\mathcal V$ とし、代数的空間 $U$ がアフィン空間 $\mathbf A^n$($n\ge0$)の空でない開部分に同型であるとする。このとき $U\in\mathcal V$、$X\times U\in\mathcal V$ で、
$$A(X)\to A(X\times U),\qquad x\mapsto x\times1_U$$
は全射である。
段 1(開部分への帰着).$\psi\colon U\to U_0$ を $\mathbf A^n$ の開部分 $U_0$ への同型とする。$\mathbf A^n$ は $\mathcal V$ に属する($n=0$ では一点)ので、(V.3) により $U_0$、$U$、$X\times\mathbf A^n$、$X\times U_0$、$X\times U$ は $\mathcal V$ に属する。$\varphi=\mathrm{id}_X\times\psi$ は同型なので、公理 (I.7) により $\varphi^*\colon A(X\times U_0)\to A(X\times U)$ は同型で、(I.1) と式 (2) により $\varphi^*(x\times1_{U_0})=x\times\psi^*(1_{U_0})=x\times1_U$ である。よって $U=U_0\subset\mathbf A^n$ としてよい。
段 2(アフィン空間への帰着).$j\colon X\times U\to X\times\mathbf A^n$ を包含($\mathrm{id}_X$ と開部分の包含の積)とすると、(I.1) と (2) により $j^*(x\times1_{\mathbf A^n})=x\times1_U$ である。すなわち $x\mapsto x\times1_U$ は、$x\mapsto x\times1_{\mathbf A^n}$ と $j^*$ の合成である。上の定理(開部分への制限の全射性)により $j^*$ は全射なので、$U=\mathbf A^n$ の場合に示せばよい。
段 3($n=0$ と $n=1$).$n=0$ では $\mathbf A^0=\mathrm{pt}$ で、$X\times\mathrm{pt}=X$ と同一視すれば公理 (I.6) により $x\times1_{\mathrm{pt}}=x$ なので、写像は恒等写像である。$n=1$ はホモトピーの公理 (H) そのものである。
段 4($n\ge2$ の帰納法).$\mathbf A^n=\mathbf A^{n-1}\times\mathbf A^1$ と同一視すると、(2) により $1_{\mathbf A^n}=1_{\mathbf A^{n-1}}\times1_{\mathbf A^1}$ で、公理 (I.4) の結合性により
$$x\times1_{\mathbf A^n}=(x\times1_{\mathbf A^{n-1}})\times1_{\mathbf A^1}$$
である(同一視の同型に沿う移し替えは (I.7) により同型である)。よって写像は、$A(X)\to A(X\times\mathbf A^{n-1})$、$x\mapsto x\times1_{\mathbf A^{n-1}}$ と、$A(X\times\mathbf A^{n-1})\to A(X\times\mathbf A^{n-1}\times\mathbf A^1)$、$y\mapsto y\times1_{\mathbf A^1}$ の合成である。前者は帰納法の仮定により、後者は $X\times\mathbf A^{n-1}\in\mathcal V$ に (H) を当てて、どちらも全射である。
$U$ がアフィン空間そのものなら段 2 は要らず、証明は (H)(I.4)(I.6)(I.7) と (2) だけで閉じる。主結果 4 で使うのはこの場合だけなので、主結果 4 は開部分への制限の全射性に依らない。
次の命題は (E) だけから出る。層ごとの生成系を持ち上げ、(E) の完全性で層を一つずつ足していく。
$X\in\mathcal V$ の層別 $X_0\subsetneq X_1\subsetneq\dots\subsetneq X_n=X$ と、部分集合 $S_i\subset A(X_i)$($0\le i\le n$)が与えられ、各 $i$ について $v_i^*(S_i)$ が $A(X_i-X_{i-1})$ を $\Lambda$ 加群として生成するとする。このとき
$$S:=\bigcup_{i=0}^nu_{i*}(S_i)\subset A(X)$$
は $A(X)$ を $\Lambda$ 加群として生成する。
段 1(帰納法の設定).$n$ についての帰納法で示す。$n=0$ では $X_0=X$、$u_0=v_0=\mathrm{id}$ で、主張は仮定そのものである。$n\ge1$ とし、長さ $n-1$ の層別について主張が正しいとする。$0\le i\le n-1$ について $u'_i\colon X_i\to X_{n-1}$ を包含とすると、$X_0\subsetneq\dots\subsetneq X_{n-1}$ は $X_{n-1}\in\mathcal V$ の層別で、帰納法の仮定により $S':=\bigcup_{i< n}u'_{i*}(S_i)$ は $A(X_{n-1})$ を生成する。
段 2(完全列).$X_{n-1}$ は $X=X_n$ の閉部分で $\mathcal V$ に属し、補集合は $X_n-X_{n-1}$ なので、(E) により
$$A(X_{n-1})\xrightarrow{(u_{n-1})_*}A(X_n)\xrightarrow{v_n^*}A(X_n-X_{n-1})\to0$$
は完全である。
段 3(元の分解).$x\in A(X)$ をとる。仮定により $v_n^*(x)=\sum_s\lambda_s\,v_n^*(s)$($s\in S_n$、$\lambda_s\in\Lambda$、有限和)と書ける。$y:=x-\sum_s\lambda_s s$ とおくと $v_n^*(y)=0$ なので、段 2 の完全性により $y=(u_{n-1})_*(y')$、$y'\in A(X_{n-1})$ となる。段 1 により $y'$ は $S'$ の元の $\Lambda$ 係数の一次結合である。
段 4(生成系の一致).直像の関手則により $(u_{n-1})_*u'_{i*}=u_{i*}$($i< n$)なので、$(u_{n-1})_*(S')=\bigcup_{i< n}u_{i*}(S_i)$ である。$u_n=\mathrm{id}$ なので $u_{n*}(S_n)=S_n$ である。段 3 により $x=\sum_s\lambda_ss+(u_{n-1})_*(y')$ は $S$ の元の一次結合である。
証明は原論文のもの(印字 4-31〜4-32)と同じである。使ったのは (E) と直像の関手則だけで、公理を仮定として完全に閉じる。
原論文の Proposition 7 の仮定は「$v_i(S_i)$ が $A(X_i-X_{i-1})$ を生成する」と印字されているが、$v_i$ は開部分の包含で、$S_i\subset A(X_i)$ を $A(X_i-X_{i-1})$ に送るのは引き戻し $v_i^*$ である。証明(印字 4-32)と系の証明は $v_n^*(S_n)$、$v_i^*(S_i)$ と書くので、仮定も $v_i^*(S_i)$ と読む。
原論文は列を「増大列」とだけ書く。$X_i=X_{i-1}$ となる $i$ があると層 $X_i-X_{i-1}$ は空で、その環は本書の約束では考えない。その場合は $X_i$ を列から除けばよい。残った列について上の定理を当てれば、生成系を大きくしても生成することは変わらないので、除いた $S_i$ を $S$ に戻しても結論は同じである。
射影空間は、線形部分空間の列で、各層がアフィン空間になるように分けられる。主結果 2 と 3 をこの列に当てる。記号は原論文に合わせ、$w_i\colon P_i\to P$ を包含として $[P_i]=w_{i*}(1_{P_i})$ と書く。
$P$ を $n$ 次元の射影空間、$P_0\subsetneq P_1\subsetneq\dots\subsetneq P_n=P$ を $\dim P_i=i$ の線形部分空間の列とし、各 $P_i$ が $\mathcal V$ に属するとする。$X\in\mathcal V$ なら、$A(X\times P)$ の元はすべて
$$\sum_{i=0}^nx_i\times[P_i]\qquad(x_i\in A(X))$$
の形に書ける。
段 1(層別).$X_i:=X\times P_i$ とおくと、(V.3) により $X_i\in\mathcal V$ で、$X_0\subsetneq\dots\subsetneq X_n=X\times P$ は $X\times P$ の層別である。包含は $u_i=\mathrm{id}_X\times w_i$ で、層は $X_i-X_{i-1}=X\times(P_i-P_{i-1})$、$v_i$ は $\mathrm{id}_X$ と開部分の包含 $P_i-P_{i-1}\to P_i$ の積である。
段 2(生成系の候補).$S_i:=\{x\times1_{P_i}:x\in A(X)\}\subset A(X_i)$ とおく。公理 (I.1)(直像の式)により $u_{i*}(x\times1_{P_i})=\mathrm{id}_{X*}(x)\times w_{i*}(1_{P_i})=x\times[P_i]$ である。
段 3(層の上の生成).(I.1)(引き戻しの式)と (2) により $v_i^*(x\times1_{P_i})=x\times1_{P_i-P_{i-1}}$ である。引用する事実 2 により $P_i-P_{i-1}$ はアフィン空間 $\mathbf A^i$ と同型なので、上の定理(アフィン空間の開集合との積)のアフィン空間そのものの場合により、$x\mapsto x\times1_{P_i-P_{i-1}}$ は全射である。よって $v_i^*(S_i)=A(X\times(P_i-P_{i-1}))$ で、とくにこれを生成する。
段 4(結論).上の定理(層別による生成)により、$S=\bigcup_iu_{i*}(S_i)=\{x\times[P_i]\}$ は $A(X\times P)$ を $\Lambda$ 加群として生成する。外積は双線形なので、$x\times[P_i]$ の形の元の $\Lambda$ 係数の一次結合は、$i$ ごとにまとめて $\sum_ix_i\times[P_i]$ と書ける。
原論文の証明(印字 4-32)も同じ四段で、段 3 を「$P_i-P_{i-1}$ はアフィン空間なので Proposition 6 により」とする。次数付きの理論では $[P_i]$ は基本類の冪 $\xi^{\,n-i}$ に等しい(本書『2-1 直線束の類と射影束の一次独立』の主結果「射影空間の線形部分空間の類」)ので、この定理は射影空間との積の環が $1,\xi,\dots,\xi^{\,n}$ の底の環の上の一次結合で尽きることを言う。
原論文は系の前で、閉部分の増大列 $P_0\subset\dots\subset P_n=P$ で各層 $P_i-P_{i-1}$ がアフィン空間の開集合の非交和に同型なものがあれば、Proposition 6 と 7 を合わせて $A(X\times P)$ の生成について情報が得られると述べる(印字 4-32)。その筋は次のとおりである。各 $P_i$ が $\mathcal V$ に属するとし、層 $P_i-P_{i-1}$ を互いに交わらない開部分 $C_{i,1},\dots,C_{i,r_i}$ の和で、各 $C_{i,a}$ がアフィン空間の開部分に同型なものとする。公理 (I.7) により $A(X\times(P_i-P_{i-1}))=\bigoplus_aA(X\times C_{i,a})$ で、各因子は上の定理(アフィン空間の開集合との積)により $x\times1_{C_{i,a}}$ の形の元からなる。上の定理(開部分への制限の全射性)により、それらの元を $A(X\times P_i)$ の元に持ち上げて $S_i$ とすれば、上の定理(層別による生成)が当てはまる。ただし持ち上げは一般には明示的でなく、原論文もこれ以上を述べない。本書は主結果として立てない。
これで §5 の結果が出そろった。射影空間との積の環の生成は、§6 で射影束を局所的に積に分けるときに使う(本書『4-2 局所から大域へと射影束公式』)。そこでの Théorème 3 は、上の定理(層別による生成)と同じく閉部分の層に沿う次元の帰納法で局所から大域へ組み上げるもので、同じ骨組みが本書『3-1 完全性とホモトピーの公理』の Proposition 5、この頁の Proposition 7、§6 の Théorème 3 と三度現れる。
最初の例は、射影空間との積の定理を二度使って、二つの射影空間の積の環の生成系を得る。
$P=\mathbf P^m$、$Q=\mathbf P^n$ とし、線形部分空間の列 $P_0\subsetneq\dots\subsetneq P_m=P$、$Q_0\subsetneq\dots\subsetneq Q_n=Q$ のすべての項が $\mathcal V$ に属するとする。上の定理(射影空間との積)を $X=\mathrm{pt}$ に当てると、$A(\mathrm{pt}\times P)=A(P)$ の元は $\sum_i\lambda_i[P_i]$($\lambda_i\in A(\mathrm{pt})$)の形である。$A(\mathrm{pt})$ は公理 (I.5) により $\varepsilon$ で $\Lambda$ と同一視され、$\lambda\times y=\lambda y$((I.6))なので、$A(P)$ は $[P_0],\dots,[P_m]$ で $\Lambda$ 加群として生成される。次に同じ定理を $X=P$ と $Q$ に当てると、$A(P\times Q)$ の元は $\sum_jx_j\times[Q_j]$($x_j\in A(P)$)の形で、$x_j$ を $[P_i]$ で展開すれば
$$A(P\times Q)=\sum_{i,j}\Lambda\,[P_i]\times[Q_j]$$
である。(I.1) と (2) により $[P_i]\times[Q_j]=[P_i\times Q_j]$ で、これは線形部分空間の積の類である。ここでは生成だけを示し、一次独立は示さない。本書は一次独立を、次数と直像を使って別に示す(本書『2-1 直線束の類と射影束の一次独立』)。
次の例は、上の注意(原論文の Proposition 6 の証明の一文)の状況を具体的に見る。
理論として、非特異な代数的空間の全体の圏 $\mathcal V$ の上の線形同値の理論(本書『3-2 線形同値の理論』)をとる。$C=\{y^2=x^3\}\subset\mathbf A^2$ を尖点をもつ三次曲線、$U=\mathbf A^2-C$ とする。$C$ は原点で特異なので $\mathcal V$ に属さず、(E) を $C\subset\mathbf A^2$ に当てることはできない。
上の定理(開部分への制限の全射性)の証明の列は次のとおりである。$W_0=U$、$X-W_0=C$、$\operatorname{Sing}C=\{0\}$ なので $W_1=\mathbf A^2-\{0\}$、$D_0=C-\{0\}$ で、$D_0$ は $W_1$ の閉な非特異曲線である。次に $X-W_1=\{0\}$ は非特異なので $W_2=\mathbf A^2$、$D_1=\{0\}$ である。(E) を $D_0\subset W_1$ と $D_1\subset\mathbf A^2$ に当てて、$A(\mathbf A^2)\to A(\mathbf A^2-\{0\})\to A(U)$ はどちらも全射である。この理論では $A(\mathbf A^2)$ は $\{[\mathbf A^2]\}$ で生成される(上の定理(アフィン空間の開集合との積)を $X=\mathrm{pt}$、$n=2$ に当てる)ので、$A(U)$ も $\{[U]\}$ で生成される。
最後の反例は、主結果 2 の「アフィン空間の開部分に同型」という仮定が外せないことを示す。
外す条件は、上の定理(アフィン空間の開集合との積)の、$U$ がアフィン空間の開部分に同型であるという仮定である。理論として、非特異な代数的空間の全体の圏の上の線形同値の理論をとる。本書『3-2 線形同値の理論』の主結果 1 と 4 により、これはこの頁の仮定((V.3)、弱い公理系、(E)(H))を満たす(その主結果の条件付きの範囲で)。$X=\mathrm{pt}$、$U=\mathbf P^1$ とする。$\mathbf P^1$ はアフィン空間の開部分に同型でない。実際、アフィン空間の開部分の上には定数でない正則関数(座標関数のどれか)があるが、$\mathbf P^1$ の上の正則関数は定数だけである。
$A(\mathrm{pt})\cong\mathbf Z$ なので、$x\mapsto x\times1_{\mathbf P^1}$ の像は $\mathbf Z\{[\mathbf P^1]\}$ である。点 $a\in\mathbf P^1$ の類 $\{[a]\}$ がこの像に入らないことを示す。$[a]-m[\mathbf P^1]$ が $0$ に線形同値だとする。族の成分 $W$ のファイバー $W(t)$ の成分の次元は $\dim W-1$ なので、族を成分の次元で分ければ、線形同値の関係は次元ごとに分かれる。よって $m[\mathbf P^1]$ と $[a]$ はそれぞれ $0$ に線形同値である。前者から、増大($[\mathbf P^1]$ の係数)が類の上で定まること(本書『3-2 線形同値の理論』の補題(線形同値と基本操作の両立)の 4)により $m=0$ である。後者は、$[a]=Z(0)-Z(1)$ となる族 $Z$ が $\mathbf P^1\times\mathbf A^1$ の曲線の和であることを意味するが、引用する事実 3 により $\deg Z(0)=\deg Z(1)$ なので左辺の次数 $1$ と右辺の次数 $0$ が合わない。よって $\{[a]\}$ は像に入らず、写像は全射でない。
この反例が示すのは、完備な空間との積では (H) のような全射性は期待できず、環に新しい元(点の類)が加わることである。射影空間の場合、それを捉えるのが主結果 4 の $[P_i]$ で、点の類は $[P_0]$ である。
アフィン空間の開集合との積では環は増えず、射影空間との積では層の数だけ生成元が増える。この差が、§6 で射影束の環が底の環の上で $p$ 個の元で生成されるという形になって現れる。
以下は原論文の主張ではなく、後代の結果の紹介である(時点を明記する。本書が文献を開いて確かめていないものはそう書く)。
本頁が対応する原論文は Sur quelques propriétés fondamentales en théorie des intersections Gro58b の §5(印字 4-31〜4-32)である。
| 本頁 | 原論文 | 印字頁 |
|---|---|---|
| 定義(積空間の節の仮定) | §5 冒頭の仮定(§4 の条件と (E)(H)) | 4-31 |
| 定義(閉部分の列による層別) | Proposition 7 の $X_i$、$u_i$、$v_i$ と N.B.($X_{-1}=\emptyset$) | 4-31 |
| 定理(開部分への制限の全射性)、注意(原論文の Proposition 6 の証明の一文) | Proposition 6 の証明の「(E) により全射」 | 4-31 |
| 定理(アフィン空間の開集合との積) | Proposition 6 とその証明 | 4-31 |
| 定理(層別による生成)、注意(原論文の仮定の印字と列の条件) | Proposition 7 とその証明 | 4-31〜4-32 |
| 注意(原論文の胞体的な層別の注意) | Proposition 7 と系の間の段落 | 4-32 |
| 定理(射影空間との積) | Proposition 7 の系とその証明 | 4-32 |
| 例(二つの射影空間の積)、例(補集合が特異な開集合)、反例(アフィン空間の開集合でない因子との積では全射性が破れる) | 原論文に無い | — |
原論文は Proposition 7 の仮定を「$v_i(S_i)$」と印字するが、証明と系の証明の書き方から $v_i^*(S_i)$ と読む(上の注意)。系の証明の第 1 式は $x\times p_P(P_i)=(\mathrm{id}_X)_*(x)\times w_{i*}(1_{P_i})=u_{i*}(x\times1_{P_i})$ で、本頁は $p_P(P_i)$ を $[P_i]$ と書く(本書『0-4 記号と約束』)。
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