3で割った余りと5で割った余りを別々に指定すると、15で割った余りがただ一つ決まります。この整数の中国剰余定理は、comaximalなイデアルによる商環の直積分解として一般化できます。
イデアル $I,J\triangleleft R$ に対し
$$
\Phi:R\to R/I\times R/J,
\qquad
r\mapsto(r+I,r+J)
$$
を考えます。これは環準同型で、核は
$$
\ker\Phi=I\cap J.
$$
$I+J=R$ なら $\Phi$ は全射で、
$$
R/(I\cap J)\cong R/I\times R/J.
$$
さらに $I\cap J=IJ$ なので
$$
R/IJ\cong R/I\times R/J.
$$
$I+J=R$ なので、$u\in I,v\in J$ で
$$
u+v=1
$$
となるものを取ります。任意の $(a+I,b+J)$ に対し
$$
x=av+bu
$$
と置きます。$v=1-u$ で $u\in I$ だから
$$
x-a=a(v-1)+bu=-au+bu\in I,
$$
従って $x+I=a+I$。同様に $u=1-v$ と $v\in J$ から
$$
x-b=av+b(u-1)=av-bv\in J,
$$
従って $x+J=b+J$。よって $\Phi(x)=(a+I,b+J)$ で全射です。
核は $I\cap J$ なので第一同型定理から
$$
R/(I\cap J)\cong R/I\times R/J.
$$
comaximalなイデアルでは $I\cap J=IJ$ と前章で証明したため、第二式も従います。□
証明中の $v,u$ は、それぞれ
$$
v\equiv1\pmod I,quad v\equiv0\pmod J,
$$
$$
u\equiv0\pmod I,quad u\equiv1\pmod J
$$
を満たす「成分選択子」です。
$I_1,\ldots,I_n$ が二つずつcomaximal、すなわち $i\ne j$ なら
$$
I_i+I_j=R
$$
を満たすとする。このとき自然な写像
$$
R\to\prod_{i=1}^nR/I_i
$$
は全射で、
$$
R/(I_1\cdots I_n)
\cong\prod_{i=1}^nR/I_i.
$$
まず
$$
I_1\cdots I_{n-1}+I_n=R
$$
を示します。各 $k< n$ について $a_k\in I_k,b_k\in I_n$ で $a_k+b_k=1$ を取ります。積
$$
a=a_1a_2\cdots a_{n-1}
$$
は $I_1\cdots I_{n-1}$ に属します。また各 $a_k\equiv1\pmod{I_n}$ なので
$$
a\equiv1\pmod{I_n},
$$
従って $1-a\in I_n$。よって二イデアルはcomaximalです。
$n=2$ は直前の定理。$n-1$ 個まで成立すると仮定すると
$$
R/(I_1\cdots I_{n-1})
\cong\prod_{i=1}^{n-1}R/I_i.
$$
今示したcomaximal性と二イデアル版を $I_1\cdots I_{n-1},I_n$ に適用すれば
$$
R/(I_1\cdots I_n)
\cong R/(I_1\cdots I_{n-1})\times R/I_n
\cong\prod_{i=1}^nR/I_i.
$$
帰納法で結論を得ます。写像は各段階で自然な剰余写像なので、表示された自然写像が全射です。□
$m,n$ が互いに素なら $(m)+(n)=\mathbb Z$ なので
$$
\mathbb Z/mn\mathbb Z
\cong\mathbb Z/m\mathbb Z\times\mathbb Z/n\mathbb Z.
$$
例として
$$
x\equiv2\pmod3,
\qquad x\equiv3\pmod5
$$
を解きます。Bézout表示
$$
2\cdot3+(-1)\cdot5=1
$$
から
$$
u=6\equiv0\pmod3,quad u\equiv1\pmod5,
$$
$$
v=-5\equiv1\pmod3,quad v\equiv0\pmod5.
$$
従って
$$
x=2v+3u=2(-5)+3\cdot6=8.
$$
すべての解は
$$
x\equiv8\pmod{15}
$$
です。
中国剰余同型で $(1,0)$ に対応する元 $e\in R/IJ$ は
$$
e^2=e
$$
を満たします。同様に $1-e$ は $(0,1)$ に対応し、
$$
e(1-e)=0,
\qquad e+(1-e)=1.
$$
逆に可換環 $R$ に非自明な冪等元 $e$ があれば
$$
R\cong eR\times(1-e)R,
\qquad
r\mapsto(er,(1-e)r).
$$
$e^2=e$ なら上の写像は環同型である。ただし $eR,(1-e)R$ の単位元はそれぞれ $e,1-e$ とする。
成分ごとの和・積を保ちます。積について
$$
(er)(es)=e^2rs=ers
$$
で、第二成分も同様です。単位元1は $(e,1-e)$ へ移ります。
核に $r$ が入るなら $er=0$ かつ $(1-e)r=0$。従って
$$
r=(e+(1-e))r=0
$$
なので単射。
任意の $(ea,(1-e)b)$ に対し $r=ea+(1-e)b$ と置けば
$$
er=e^2a+e(1-e)b=ea,
$$
$$
(1-e)r=(1-e)ea+(1-e)^2b=(1-e)b.
$$
ここで $e(1-e)=e-e^2=0$ を使いました。従って全射です。□
体 $K$ の相異なる元 $a_1,\ldots,a_n$ に対し、イデアル $(x-a_i)$ は二つずつcomaximalです。実際 $i\ne j$ なら
$$
(x-a_i)-(x-a_j)=a_j-a_i
$$
は非零定数、従って単元です。中国剰余定理から
$$
K[x]/\left(\prod_{i=1}^n(x-a_i)\right)
\cong K^n,
$$
同型は
$$
f(x)\longmapsto(f(a_1),\ldots,f(a_n))
$$
です。
全射性は、任意の値 $c_1,\ldots,c_n$ を各点で取る多項式が存在することを意味します。具体的な逆像はLagrange補間多項式
$$
f(x)=\sum_{i=1}^n c_i
\prod_{j\ne i}\frac{x-a_j}{a_i-a_j}.
$$
各基底多項式は $a_i$ で1、他の $a_j$ で0となります。
$$
x\equiv1\pmod3,
\qquad x\equiv2\pmod4,
\qquad x\equiv3\pmod5
$$
を解け。
法 $3,4,5$ は二つずつ互いに素なので法60で一意な解があります。$x\equiv2\pmod4$ かつ $x\equiv3\pmod5$ を満たす数を20の範囲で探すと $x\equiv18\pmod{20}$。従って $x=18+20k$。
mod 3で
$$
18+20k\equiv0+2k\equiv1\pmod3
$$
なので $k\equiv2\pmod3$。$k=2$ を取ると $x=58$。従って
$$
x\equiv58\pmod{60}.
$$
□
$\mathbb Z/15\mathbb Z$ の冪等元をすべて求めよ。
中国剰余定理から
$$
\mathbb Z/15\mathbb Z
\cong\mathbb Z/3\mathbb Z\times\mathbb Z/5\mathbb Z.
$$
体の冪等元は0,1だけなので、直積の冪等元は
$$
(0,0),(1,0),(0,1),(1,1)
$$
の四つ。これらに対応するmod 15の元は順に
$$
[0],[10],[6],[1].
$$
実際 $10^2\equiv10$、$6^2\equiv6\pmod{15}$ です。□
$K$ を体とし、$a\ne b$ とする。任意の $u,v\in K$ に対し、一次以下の多項式 $f$ で
$$
f(a)=u,qquad f(b)=v
$$
を満たすものを求めよ。
Lagrange補間により
$$
f(x)=u\frac{x-b}{a-b}
+v\frac{x-a}{b-a}.
$$
$x=a$ では第一項が $u$、第二項が0、$x=b$ では逆になります。分母 $a-b,b-a$ は非零なので体 $K$ で逆元をもちます。一次以下の二多項式が同じ二点値をもてば差は二つの根をもつ一次以下の多項式なので零、従って一意です。□
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