アフィン埋入 $j:\mathbf A_k^n\to\mathbf P_k^n$ を $a\mapsto[1:a_1:\cdots:a_n]$ とする。射影座標を $[Z:X_1:\cdots:X_n]$ と書く。$f\in k[x_1,\ldots,x_n]$ の全次数が $d$ のとき
$$f^h(Z,X)=Z^df(X_1/Z,\ldots,X_n/Z)\tag{1}$$
を斉次化と呼ぶ。展開後は次数 $d$ の斉次多項式で、$f^h(1,x)=f(x)$。例えば $x^2+y+1$ は $X^2+YZ+Z^2$ となる。非零 $f,g$ では次数の加法性から $(fg)^h=f^hg^h$。$e\ge\deg f$ なら $Z^ef(X/Z)=Z^{e-\deg f}f^h$ である。一方、和は次数を $Z$ の冪で揃えてから取らなければならない。
アフィンイデアル $I$ の斉次化は
$$I^h=(f^h:f\in I)\subseteq k[Z,X_1,\ldots,X_n]$$
と定める。選んだ生成元だけではなく全ての $f\in I$ を使う。$I^h$ は斉次イデアルであり、$Z=1$ としたイデアルは元の $I$ に戻る。実際、各 $f^h$ は $f$ に戻り、$I^h$ の有限和 $\sum A_jf_j^h$ を $Z=1$ にすれば $\sum A_j(1,x)f_j\in I$ となる。
$X\subseteq\mathbf A_k^n$ の射影閉包 $\overline X^{\mathrm{proj}}$ は、$j(X)$ の射影Zariski位相での閉包と定義する。$I(X)$ を $X$ 上で消える全アフィン多項式のイデアルとすると
$$\overline X^{\mathrm{proj}}=V_+(I(X)^h),\qquad V_+(I(X)^h)\cap U_Z=j(X).\tag{2}$$
ここでは $X$ がアフィン代数的集合であるとする。証明する。$f\in I(X)$ なら $f^h(1,a)=0$ が $a\in X$ で成り立つので、$j(X)\subseteq V_+(I(X)^h)$。逆に、$j(X)$ 上で消える次数 $d$ の斉次式 $F$ を $f(x)=F(1,x)$ と非斉次化すると $f\in I(X)$。$e=\deg f\le d$ なら $F=Z^{d-e}f^h\in I(X)^h$。したがって $j(X)$ の斉次消滅イデアルが正確に $I(X)^h$ である。斉次式で定義される最小の閉集合はその零点集合だから式 (2) の第一式を得る。第二式は $Z=1$ でイデアルが $I(X)$ に戻ることから従う。$X=\varnothing$ の場合も $I(X)=(1)$ とすれば両式が成り立つ。
無限遠部分は $X_\infty=\overline X^{\mathrm{proj}}\cap V_+(Z)$ である。集合としては式 (2) に $Z=0$ を加えて求める。閉包のスキーム的な無限遠部分を記録する斉次イデアルは $(I(X)^h+(Z))/(Z)$ となる。
$f=f_0+\cdots+f_d$ を次数別に分け、$f_d\ne0$ とする。$f$ が平方因子を持たず、$k$ が代数閉体なら $I(V(f))=(f)$。積の斉次化公式から $(f)^h=(f^h)$ なので
$$\overline{V(f)}^{\mathrm{proj}}=V_+(f^h),\qquad V(f)_\infty=V_+(Z,f_d)\cong V_+(f_d)\subseteq\mathbf P^{n-1}.\tag{3}$$
ここで $f^h=Z^df_0+Z^{d-1}f_1+\cdots+f_d$ だから、$Z=0$ では最高次項だけが残る。放物線 $y=x^2$ は $YZ=X^2$ となり $[0:0:1]$ の一点、双曲線 $xy=1$ は $XY=Z^2$ となり $[0:1:0]$ と $[0:0:1]$ の二点を加える。尖点曲線 $y^2=x^3$ は $Y^2Z=X^3$ で、無限遠点 $[0:0:1]$ は $\partial(Y^2Z-X^3)/\partial Z=Y^2=1$ により任意の標数で滑らかである。アフィン原点の特異性とは別である。
$I=(x,xy-1)=k[x,y]$ では $1=yx-(xy-1)\in I$ だから $V(I)=\varnothing$。しかし二つの生成元だけを斉次化すると
$$J=(X,XY-Z^2)=(X,Z^2)$$
となり、$[0:0:1]$ が余分な無限遠点として残る。$I$ 全体を斉次化すると $1^h=1$ が入るため $I^h=(1)$ である。この例は、生成元の斉次化とイデアルの斉次化を区別する理由を示す。
斉次イデアル $J$ に対し $J:Z^\infty=\{F:Z^mF\in J\text{ for some }m\ge0\}$ と置く。$Z^aF,Z^bG\in J$ なら $Z^{\max(a,b)}(F+G)\in J$ であり、任意の多項式を掛けても条件が保たれるのでイデアルである。$J$ が斉次なら $Z^mF\in J$ の次数成分を取ることで $J:Z^\infty$ も斉次である。
$I=(f_1,\ldots,f_r)$、$J=(f_1^h,\ldots,f_r^h)$ とすると
$$I^h=J:Z^\infty.\tag{4}$$
証明する。$f=\sum_i a_if_i\in I$ に対し、$D\ge\deg f$ かつ $D\ge\deg a_i+\deg f_i$ を選ぶ。次数 $D$ に揃えれば
$$Z^{D-\deg f}f^h=\sum_i Z^{D-\deg a_i-\deg f_i}a_i^hf_i^h\in J,$$
よって $I^h\subseteq J:Z^\infty$。逆に $F$ が斉次で $Z^mF\in J$ なら $F(1,x)\in I$。$d=\deg F$、$e=\deg F(1,x)\le d$ とすれば $F=Z^{d-e}(F(1,x))^h\in I^h$。$F(1,x)=0$ の場合は斉次性から $F=0$ で、同じ結論である。飽和イデアルは斉次だから一般の元も次数成分ごとに扱える。
注意として、$V_+(J)$ と $V_+(J:Z^\infty)$ は全体では一致しない。$J=(Z)$ なら前者は無限遠超平面、後者は空集合である。一方 $U_Z$ では $Z$ が可逆なので、両者の零点集合は一致する。式 (4) はアフィン図上の情報を保ち、そこから独立した無限遠成分を取り除く。
閉包の既約性も確認する。既約部分集合 $Y$ の閉包を閉集合 $A\cup B$ と書くと $Y=(Y\cap A)\cup(Y\cap B)$。既約性から $Y\subseteq A$ または $Y\subseteq B$、従って閉包全体がその一方に含まれる。よって既約アフィン代数的集合の射影閉包も既約である。
演習1。 $f=x^3+x^2y+y+2$ を斉次化せよ。
解答。 $f^h=X^3+X^2Y+YZ^2+2Z^3$。$Z=1$ で元へ戻る。
演習2。 $x^2+y^2=1$ の無限遠部分を求めよ。ただし $\operatorname{char}k\ne2$ とする。
解答。 方程式は $X^2+Y^2=Z^2$。$Z=0$ では $X^2+Y^2=0$。代数閉体上で $i^2=-1$ を選ぶと $[0:1:i]$、$[0:1:-i]$ の二点であり、実数体上では実点を持たない。
演習3。 $I=(x,y^2-1)$ の閉包と無限遠部分を求めよ。
解答。 $J=(X,Y^2-Z^2)$ である。$k[Y,Z]/(Y^2-Z^2)$ は $k[Z]$ 加群として基底 $1,Y$ を持つので、$Z$ 倍は単射で $J$ は既に飽和している。閉包は $[1:0:1]$ と $[1:0:-1]$ からなる。ただし標数2では両表示は同じ一点である。$Z=0$ では $X=Y=0$ となるため無限遠点はない。
演習4。 アフィン曲線 $(t,t^2,t^3)$ を定める $I=(y-x^2,z-x^3)$ で、二生成元だけの斉次化が無限遠に余分な直線を作ることを示せ。
解答。 射影座標 $[Z:X:Y:W]$ では $J=(YZ-X^2,WZ^2-X^3)$。$Z=0$ で $X=0$ となるだけなので $[0:0:Y:W]$ の直線全体が残る。しかし $y^2-xz\in I$ を斉次化した $Y^2-XW$ を加えると $Y=0$ となり、真の無限遠部分は $[0:0:0:1]$ だけである。パラメータ $[s:t]\mapsto[s^3:s^2t:st^2:t^3]$ もこの一点を与える。
演習5。 $V_+(J)=V_+(J:Z^\infty)$ が一般に誤りである例と、一致する範囲を述べよ。
解答。 $J=(Z)\subseteq k[Z,X]$ なら $V_+(J)=\{[0:1]\}$ だが $J:Z^\infty=S$ で零点は空。$U_Z$ 内では $Z$ が可逆だから両零点集合は一致する。
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