3-1 Chern 類の定義と一意性

$$\newcommand{C}[0]{\mathbb{C}} \newcommand{N}[0]{\mathbb{N}} \newcommand{Q}[0]{\mathbb{Q}} \newcommand{R}[0]{\mathbb{R}} \newcommand{Z}[0]{\mathbb{Z}} $$

射影束公式は、$P(E)$ 上の標準線束の第1類が満たす最小多項式の係数として、一般のベクトル束のChern類を定める。本頁ではこの定義を精密に述べ、関手性・線束での正規化・短完全列に対する乗法性を満たすChern類の規則は、旗の束への引き戻しと単射性によって一意に決まることを証明する。

この頁で示すこと

$\mathbf V$$A$ は本書『2-1 公理 A 1〜A 4 と補題 2』の設定を満たすとする。特に $A$ は反変可換次数付き環関手であり、線束の第1類 $c_1(L)=p_X([L])$ と射影束公式 A 1を備える。射影束は直線の空間とし、$L_E=\mathcal O_{P(E)}(1)$ は標準部分線束の双対である。
本頁の主結果は次の3つである。

  1. 射影束関係式によるChern類(原論文 §3 式 (1)、印字 p.144):$\xi_E=c_1(L_E)$$r$ 乗を A 1の基底で一意に表示する係数として、$c_i(E)$ が一意に定まる。[完結]
  2. 完全分裂した束の候補Chern類(原論文 §3 式 (6)、印字 p.145):三つの基本性質を満たす任意の規則は、線束を逐次商にもつ束について商線束の全第1類の積に等しい。[完結]
  3. Chern類の一意性(原論文 §3 定理 1 の一意性、印字 p.145):与えられた器 $A$ と線束の第1類を固定すると、関手性・正規化・短完全列に対する乗法性を満たすChern類の規則は高々一つである。[完結]
    第1の主結果は A 1の係数表示だけから従う。第2と第3では本書『1-2 旗多様体と完全分裂』の完全旗と引き戻しの単射性を使う。本頁が証明するのは一意性であり、射影束関係式から定めた類が実際に三性質を満たすことは本書『3-2 存在の証明』で示す。

背景と動機

線束 $L$ には、器の与件として第1類 $c_1(L)$ がすでにある。問題は、高階数の束 $E$ に対して $c_1(E),\ldots,c_r(E)$ を自然に定め、短完全列と両立させることである。直和分解を仮定してChern根を置く方法は任意の束には直接使えないため、Grothendieckは射影束 $P(E)$ へ移り、標準線束から高階の類を読み取る。
A 1によれば、$A(P(E))$$A(X)$ 上で $1,\xi_E,\ldots,\xi_E^{r-1}$ を基底にもつ。従って、その次の冪 $\xi_E^r$ はこの基底でただ一通りに表される。この座標がChern類である。定義は束の局所的な遷移関数や接続を選ばず、射影束と標準線束だけを使う。
一方、一意性の証明は定義式を直接比較しない。任意の候補規則を旗の束へ引き戻し、引き戻した束にある線束の逐次商へ短完全列の乗法性を繰り返し適用する。旗の上で候補の値が同じ積に固定され、A 1から得た引き戻しの単射性がその等式を底へ戻す。
ここで一意なのは、器 $A$、引き戻し、線束の第1類をすべて固定した後のChern類である。Chow環と整係数コホモロジーのように異なる器を同一視したり、器 $A$ そのものを特徴づけたりする定理ではない。

定義と準備

射影束関係式

射影束の規約は符号を左右する。本書では $P(E)$$E$ の直線の空間とし、標準部分線束を $L_E^\vee\subset f^*E$、その双対を $L_E=\mathcal O(1)$ とする。

射影束の基本類

$X\in\mathbf V$ 上の階数 $r\geq1$ のベクトル束 $E$ に対し、
$$ f_E\colon P(E)\longrightarrow X, \qquad \xi_E:=c_1(L_E)\in A^1(P(E)) $$
と置く。射影束公式 A 1により、任意の $u\in A(P(E))$
$$ u=\sum_{j=0}^{r-1}f_E^*(a_j)\xi_E^j, \qquad a_j\in A(X), $$
と一意に書ける。

原論文では線束の類を送る写像の添字が一部で $X$ のまま印刷されるが、$L_E$$P(E)$ 上の線束なので正しい添字は $P(E)$ である。本書は $c_1(L_E)$ と書いて住む空間を明瞭にする。

Chern類

$E$$X$ 上の階数 $r\geq1$ のベクトル束とする。A 1による $\xi_E^r$ の一意な基底表示を
$$ \xi_E^r=-\sum_{i=1}^{r}f_E^*(c_i(E))\xi_E^{r-i} $$
と書く。すなわち
$$ \sum_{i=0}^{r}f_E^*(c_i(E))\xi_E^{r-i}=0, \qquad c_0(E):=1 $$
を満たす係数 $c_i(E)\in A^i(X)$$E$ の第 $i$ Chern類と呼ぶ。$i>r$ では $c_i(E):=0$ とし、
$$ c(E):=1+c_1(E)+\cdots+c_r(E) $$
を全Chern類と呼ぶ。階数0の束には $c(0):=1$ と定める。

係数の次数は、関係式の各項が次数 $r$ に入ることから決まる。この定義は $P(E)$ 上の等式を使うが、係数自体は底の環 $A(X)$ の元である。

三つの基本性質

原論文の定理1は、上の定義から作るChern類が三性質を満たし、その三性質が逆にChern類を特徴づけると述べる。一意性を論じるため、まず候補規則を抽象的に置く。

Chern類の候補規則

Chern類の候補規則 $c'$ とは、各 $X\in\mathbf V$ 上の各ベクトル束 $E$
$$ c'(E)=1+c'_1(E)+c'_2(E)+\cdots\in A(X) $$
を対応させ、$c'_i(E)\in A^i(X)$ とし、次を満たすものをいう。

  1. 関手性:$g\colon X\to Y$$Y$ 上の束 $E$ に対し
    $$ c'(g^*E)=g^*c'(E). $$
  2. 線束での正規化:線束 $L$ に対し
    $$ c'(L)=1+c_1(L). $$
  3. 短完全列に対する乗法性:
    $$ 0\to E'\to E\to E''\to0 $$
    に対し
    $$ c'(E)=c'(E')c'(E''). $$

三つ目はWhitney積公式とも呼ばれるが、この名称は後代の整理である。本頁では三性質を満たす候補の一意性だけを証明し、定義した $c$ が候補になることは次頁へ送る。

完全分裂と旗の束

本書『1-2 旗多様体と完全分裂』で、階数 $r$$E$ に旗の束
$$ q\colon D(E)\longrightarrow X $$
を構成した。$q^*E$ は線束を逐次商にもつ完全な旗を備え、A 1により
$$ q^*\colon A(X)\longrightarrow A(D(E)) $$
は単射である。完全な旗は直和分解を意味しないが、短完全列に対する乗法性を反復するには十分である。

引用する事実

本頁の一意性証明で外部文献から新たに引用する数学的入力はない。次の二つは前頁までに証明済みである。

  1. 本書『1-2 旗多様体と完全分裂』の旗の束上での完全分裂。
  2. 同頁の、A 1から従う $q^*\colon A(X)\to A(D(E))$ の単射性。
    原論文との照合には Gro58 を用いる。後代の分裂原理による記述の参考として Ful98BT82 を挙げるが、本頁の証明はそれらを入力にしない。

主結果と証明

定義の一意性と同型不変性

まず、射影束関係式が係数を本当に一意に定めることと、束の表示に依存しないことを確認する。

射影束関係式によるChern類

各階数 $r$ のベクトル束 $E$ に対し、Chern類の定義の関係式を満たす $c_i(E)\in A^i(X)$ は一意に存在する。また $E\cong F$ なら
$$ c_i(E)=c_i(F) $$
がすべての $i$ について成り立つ。

段 1(存在).A 1により $\xi_E^r$ は基底 $1,\xi_E,\ldots,\xi_E^{r-1}$ で表示できる。係数を $-c_r(E),\ldots,-c_1(E)$ と読み替えれば、定義の関係式を得る。次数 $r$ の元を斉次基底で表示しているので、$c_i(E)$ は次数 $i$ に入る。
段 2(一意性).二組の係数 $c_i$$d_i$ が同じ関係式を満たすなら、差を取って
$$ \sum_{i=1}^rf_E^*(c_i-d_i)\xi_E^{r-i}=0 $$
を得る。これは A 1の基底による零元の表示だから、すべての係数が0、すなわち $c_i=d_i$ である。
段 3(同型不変性).束の同型 $E\cong F$$X$ 上の同型 $P(E)\cong P(F)$ を誘導し、標準部分線束とその双対を対応させる。従って $\xi_E$$\xi_F$ が対応し、二つの射影束関係式も対応する。係数表示の一意性により $c_i(E)=c_i(F)$ である。

この命題は定義のwell-defined性を閉じるが、関手性や短完全列への乗法性をまだ証明していない。定義の存在と、三性質を満たす規則としての存在は別の問題である。

完全分裂した束での値

候補規則が完全な旗をもつ束にどう作用するかは、短完全列への乗法性と線束での正規化だけで決まる。直和分解は不要である。

完全分裂した束の候補Chern類

$F$$T\in\mathbf V$ 上の階数 $r$ のベクトル束とし、
$$ F=F_0\supset F_1\supset\cdots\supset F_r=0 $$
を部分束の減少列、$M_i:=F_{i-1}/F_i$ を商線束とする。三つの基本性質を満たす任意の候補規則 $c'$ について
$$ c'(F)=\prod_{i=1}^r\bigl(1+c_1(M_i)\bigr) $$
が成り立つ。$r=0$ では右辺を空積 $1$ と読む。

段 1(階数0).候補規則の定義で次数0成分は1としているので $c'(0)=1$ である。別にこれを仮定しない定式化でも、完全列
$$ 0\to0\to\mathcal O_T\xrightarrow{\operatorname{id}}\mathcal O_T\to0 $$
へ乗法性を適用し、正規化 $c'(\mathcal O_T)=1$ を使えば $1=c'(0)\cdot1$ から $c'(0)=1$ が従う。
段 2(階数1).$r=1$ なら $F=M_1$ であり、線束での正規化から
$$ c'(F)=1+c_1(M_1) $$
を得る。
段 3(階数についての帰納).$r\geq2$ とし、完全列
$$ 0\to F_1\to F\to M_1\to0 $$
に乗法性を適用する。$F_1$$F_1\supset\cdots\supset F_r=0$ という階数 $r-1$ の完全旗をもつので、帰納法の仮定と正規化から
$$ c'(F)=c'(F_1)c'(M_1) =\prod_{i=2}^r(1+c_1(M_i))\,(1+c_1(M_1)). $$
$c_1(M_i)$ は本書の次数1、原論文の偶数次数に属し、互いに可換だから順序を入れ替えて主張の積を得る。

この積は、候補規則の作り方に依存せず、完全旗の商線束だけで決まる。旗の順序を変えれば因子の並びは変わりうるが、積は対称である。

旗の束から底へ戻る

一般の束は底上で完全分裂するとは限らない。旗の束上で完全分裂させた後、候補規則の関手性と引き戻しの単射性を組み合わせる。

Chern類の一意性

与えられた器 $A$ と線束の第1類 $c_1$ を固定する。関手性、線束での正規化、短完全列に対する乗法性を満たすChern類の候補規則は高々一つである。
より具体的に、$c'$$c''$ が三性質を満たすなら、任意の $X\in\mathbf V$ 上の任意のベクトル束 $E$ について
$$ c'(E)=c''(E) $$
である。

段 1(階数0).$E=0$ なら、完全分裂した束の候補Chern類の補題から $c'(0)=c''(0)=1$ である。
段 2(旗の束へ移る).$E$ の階数を $r\geq1$ とし、
$$ q\colon D(E)\longrightarrow X $$
を完全旗の束とする。本書『1-2 旗多様体と完全分裂』により $q^*E$ は完全な旗
$$ q^*E=F_0\supset F_1\supset\cdots\supset F_r=0 $$
をもち、商 $M_i=F_{i-1}/F_i$ は線束である。
段 3(旗の上で候補を固定する).関手性と完全分裂した束の補題により
$$ q^*c'(E)=c'(q^*E) =\prod_{i=1}^r(1+c_1(M_i)), $$
$$ q^*c''(E)=c''(q^*E) =\prod_{i=1}^r(1+c_1(M_i)). $$
右辺は旗の商線束と、あらかじめ固定した第1類だけから作られ、候補規則に依存しない。従って
$$ q^*c'(E)=q^*c''(E). $$
段 4(単射性で戻る).A 1から従う旗の束での引き戻しの単射性により
$$ q^*\colon A(X)\longrightarrow A(D(E)) $$
は単射である。よって $c'(E)-c''(E)$ の引き戻しが0であることから
$$ c'(E)=c''(E) $$
を得る。

この証明が底へ戻すのは $A(X)$ 内の等式だけである。旗の上で得た完全旗から、元の束 $E$ が線束の直和へ分解すると結論するものではない。

一意性の範囲

Chern類の一意性は、圏 $\mathbf V$、関手 $A$、引き戻し、線束の第1類を固定したうえでの一意性である。器 $A$ 自身の一意性、異なるモデルの間の比較、ベクトル束がChern類から復元できることは主張しない。

本書『2-2 三つのモデル』の各モデルは異なる器を与える。同じ特徴づけを満たしても値が別々の環に属するため、比較にはサイクル類写像やde Rham比較など追加の定理が要る。

定理1の論理構造

原論文の定理1は、一意性だけでなく、射影束関係式から定めた $c$ が三性質を満たすことも含む。一意性の証明と存在の証明を混ぜないため、ここで依存関係を整理する。

Chern類の特徴づけ

本書の公理系のもとで、射影束関係式から定めたChern類 $c$ は、次の三性質を満たす唯一の規則である。

  1. $c(g^*E)=g^*c(E)$
  2. 線束 $L$ について $c(L)=1+c_1(L)$
  3. $0\to E'\to E\to E''\to0$ について $c(E)=c(E')c(E'')$
    一意性は本頁で完結している。三性質の成立は本書『3-2 存在の証明』で完結する。

一意性はChern類の一意性の定理で示した。射影束関係式から定めた $c$ が関手性、正規化、乗法性を満たすことは、本書『3-2 存在の証明』の三つの証明を入力とする。それらが成立すれば $c$ は候補規則の一つであり、一意性の定理により唯一である。

特徴づけの証明をこのように二頁へ分けることで、「三性質を満たすものは高々一つ」と「定義したものが実際に三性質を満たす」を別々に検査できる。

例と反例

階数1と階数2

低階数では、射影束関係式から係数を読む過程を直接見ることができる。

線束のChern類

$E=L$ を線束とする。$P(L)\cong X$ で、標準部分線束は $L$ 自身、$L_E=L^\vee$ である。従って
$$ \xi_L=c_1(L^\vee)=-c_1(L). $$
射影束関係式は
$$ \xi_L+c_1(E)=0 $$
だから、定義された第1 Chern類は与件としての $c_1(L)$ と一致する。また高次Chern類は0で、
$$ c(L)=1+c_1(L) $$
となる。

この計算が三性質の正規化を支える。ただし、定義した $c$ の正規化の一般的な証明は次頁で独立に記す。

階数2の射影束関係式

$E$ を階数2とすると、A 1により $A(P(E))$$A(X)$$1,\xi_E$ を基底にもつ。$\xi_E^2$ の一意な表示を
$$ \xi_E^2=-f_E^*c_1(E)\xi_E-f_E^*c_2(E) $$
と書く。従って関係式は
$$ \xi_E^2+f_E^*c_1(E)\xi_E+f_E^*c_2(E)=0 $$
である。
旗の束上で商線束の第1類を $x_1,x_2$ と書き、候補規則が三性質を満たすなら
$$ c'(q^*E)=(1+x_1)(1+x_2) =1+(x_1+x_2)+x_1x_2. $$
従って候補の第1類と第2類は、旗の上ではそれぞれ $x_1+x_2$$x_1x_2$ に固定される。

この対称式だけが単射性で底へ戻る。個々の $x_i$ は旗の選択と順序に依存し、一般には底 $X$ 上の類として定まらない。

単射性が必要な理由

任意の底変換で等式を確かめても、底上の等式が従うとは限らない。旗の束を使う理由は、完全分裂だけでなく単射性にもある。

反例:任意の引き戻しでは一意性を戻せない

開埋め込み
$$ j\colon\mathbb A^1\hookrightarrow\mathbb P^1 $$
を考える。Picard群では $\mathcal O_{\mathbb P^1}(1)$ は非自明だが、$\mathbb A^1$ への制限は自明である。従って
$$ j^*\colon\operatorname{Pic}(\mathbb P^1)\longrightarrow\operatorname{Pic}(\mathbb A^1) $$
は単射でない。
このため、二つの類が $\mathbb A^1$ 上で一致しても、$\mathbb P^1$ 上で一致するとは限らない。破れている条件は引き戻しの単射性であり、旗の束の射では A 1がこの条件を保証する。

完全分裂させる射なら何でもよいのではなく、等式を底へ戻せる射を選ばなければならない。これが分裂原理における「分裂」と「帰還」の二つの役割である。

Chern類は束を分類しない

Chern類の一意性は、束から類への対応を決める。逆に、類から束が一意に戻るとは限らない。

反例:同じChern類から束は復元できない

$X=\mathbb P_k^1$ 上の完全列
$$ 0\longrightarrow\mathcal O(-1) \longrightarrow\mathcal O^{\oplus2} \longrightarrow\mathcal O(1) \longrightarrow0 $$
は分裂しない。実際、分裂には $\mathcal O(1)\to\mathcal O^{\oplus2}$ が必要だが、
$$ \operatorname{Hom}(\mathcal O(1),\mathcal O^{\oplus2}) \cong H^0(\mathbb P^1,\mathcal O(-1))^{\oplus2}=0 $$
である。
三つの基本性質を満たす候補規則 $c$ を考える。線束での正規化から $c(\mathcal O)=1$ であり、分裂完全列
$$ 0\longrightarrow\mathcal O\longrightarrow\mathcal O^{\oplus2} \longrightarrow\mathcal O\longrightarrow0 $$
への乗法性から $c(\mathcal O^{\oplus2})=1$ である。一方、上の非分裂完全列へ乗法性を適用すると
$$ c(\mathcal O^{\oplus2}) =c(\mathcal O(-1))c(\mathcal O(1)) =(1-h)(1+h)=1-h^2=1 $$
となる。ここで $h=c_1(\mathcal O(1))$ であり、$c_1(\mathcal O(-1))=-h$ を使った。したがって $h^2=0$ は一般の器に次元消滅を仮定した結果ではなく、候補規則の正規化と乗法性からこの完全列について導かれる。Chern類はこの非分裂な拡大を区別しない。

破れている含意は「全Chern類が分かれば束や拡大類が復元できる」である。本頁の一意性定理はその逆向きを一度も主張していない。

その後の発展

ここからは1958年の原論文自身の証明ではなく、後代の用語による位置づけである。
旗の束へ引き戻し、線束の第1類を形式的な根として計算し、対称式だけを底へ戻す方法は、後代には分裂原理と呼ばれる Ful98BT82。本頁の一意性証明はこの方法の最も基本的な使用例である。完全旗の逐次商の第1類 $x_1,\ldots,x_r$ をChern根と呼ぶと、候補の全Chern類は $\prod_i(1+x_i)$ で固定される。
現代の文献には、商線束を分類する規約の射影束 $\mathbb P(E)=\operatorname{Proj}\operatorname{Sym}E$ を使い、関係式へ交代符号を入れる書き方もある。本書は直線の空間 $P(E)=\operatorname{Proj}\operatorname{Sym}E^\vee$$L_E=\mathcal O(1)$ を採るため、原論文の
$$ \sum_{i=0}^rc_i(E)\xi_E^{r-i}=0 $$
という形になる。規約を変えた式を符号確認なしに混ぜてはならない。
三性質による特徴づけは、Chow環、Hodgeコホモロジー、整係数コホモロジーのそれぞれで同じ証明をもつ。しかし、比較写像がChern類を保つことは別に確かめる必要がある。特徴づけを使うなら、比較写像が引き戻し、線束の第1類、積を保つことを示した後、両側のChern類が同じ三性質を満たすとして一意性を適用する。
K理論とλ環では、全Chern類に階数を加えた完備Chern類が、直和、テンソル積、外冪を普遍多項式でまとめる。本書『4-1 λ 環と完備 Chern 類』は、本頁の一意性と次頁の存在を入力に、その構造を扱う。

原論文との対応表

本頁が対応する原論文は Gro58 である。

本頁原論文印字頁
射影束の基本類とChern類§3 式 (1)、式 (2)p.144
Chern類の候補規則§3 定理 1 の (i)、(ii)、(iii)pp.144–145
完全分裂した束の候補Chern類§3 式 (6)p.145
Chern類の一意性§3 定理 1 の証明前半p.145
Chern類の特徴づけ§3 定理 1pp.144–147

原論文は旗の束へ移って式 (6) を得た後、補題1の単射性で一意性を結論する。本頁では階数0の場合、完全旗に沿う帰納、候補に依存しない積、単射性で底へ戻す段を分けて補った。射影束関係式から定めた類が三性質を満たす存在証明は次頁へ分離し、一意性の証明と循環させていない。

参考文献

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Séminaire C. Chevalley(Claude Chevalley 他), Classification des groupes de Lie algébriques, tome 1(années 1956–1958), Secrétariat mathématique, Paris, 1958
[9]
Alexander Grothendieck, Théorèmes de dualité pour les faisceaux algébriques cohérents, Séminaire Bourbaki 1956/57–1957/58, exposé 149(Numdam: SB_1956-1958\_\_4\_), 1957, 169–193
[12]
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[27]
Alexander Grothendieck, Jean Dieudonné, Éléments de géométrie algébrique II : Étude globale élémentaire de quelques classes de morphismes, Publications Mathématiques de l'IHÉS, 1961, 5–222
[32]
Alexander Grothendieck, Jean Dieudonné, Éléments de géométrie algébrique IV(4部構成:Première–Quatrième partie), Publications Mathématiques de l'IHÉS 20, 24, 28, 32, 1964

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