射影束関係式から定めたChern類が、関手性、線束での正規化、短完全列に対する乗法性を実際に満たすことを証明する。核心は、完全旗をもつ束について射影束上の標準切断へ補題2の系を適用し、Chern多項式を商線束の第1類の積として回収する段である。
$\mathbf V$、$A$、公理 A 1〜A 4、(V 0)、(A 0) は本書『2-1 公理 A 1〜A 4 と補題 2』の設定を満たすとする。$E$ のChern類は、本書『3-1 Chern 類の定義と一意性』の射影束関係式
$$
\sum_{i=0}^{r}f_E^*c_i(E)\,\xi_E^{r-i}=0
$$
で定める。
本頁の主結果は次の4つである。
本書『3-1 Chern 類の定義と一意性』では、三つの基本性質を満たす規則が高々一つであることを示した。しかし、射影束関係式で係数を定めただけでは、その係数が底変換や短完全列と両立することはまだ分からない。一意性定理を存在定理の代わりに使うことはできない。
関手性は、射影束と標準線束が底変換と可換することから従う。線束での正規化は階数1の射影束を直接計算すればよい。難しいのは乗法性であり、その前に完全分裂した束の積公式を確立する必要がある。
完全分裂した束 $E$ の商線束の第1類を $x_i$ とすると、望む式は $c(E)=\prod_i(1+x_i)$ である。これを候補規則の性質から導くことは前頁でできたが、今は射影束関係式で定めた $c$ 自身について証明しなければならない。原論文は $P(E)$ 上の標準切断を使い、補題2の系から
$$
\prod_i(\xi_E+f^*x_i)=0
$$
を得て、A 1の係数の一意性で結論する。
この段では、標準切断がどこでも零にならないことだけでは足りない。部分束列に沿う各誘導切断が横断的で、最終段が空スキームになり、(V 0) と (A 0) が使えることまで確認して初めて、補題2の系を適用できる。
関手性の証明では、$E$ とその引き戻しの射影束を比較する。
$g\colon X\to Y$、$E$ を $Y$ 上の階数 $r$ の束、$F:=g^*E$ とする。射影束の自然なCartesian図式を
$$
\begin{array}{ccc}
P(F)&\xrightarrow{\bar g}&P(E)\\
\downarrow f_F&&\downarrow f_E\\
X&\xrightarrow{g}&Y
\end{array}
$$
と書く。標準部分線束とその双対は底変換と可換し、
$$
\bar g^*L_E\cong L_F,
\qquad \bar g^*\xi_E=\xi_F
$$
である。
この図式は本書『1-1 射影束と標準線束』で証明した。関係式を $\bar g^*$ で引き戻せば、$F$ の関係式と同じ形になる。
積公式では、底 $X$ 上で既に完全旗をもつ束を考える。旗の束へ移る操作は、後の乗法性の証明で使う。
$E$ を $X$ 上の階数 $r$ の束とし、
$$
E=E_0\supset E_1\supset\cdots\supset E_r=0,
\qquad \operatorname{rank}E_i=r-i
$$
を部分束の完全な減少列とする。商線束
$$
M_i:=E_{i-1}/E_i
$$
の第1類を
$$
x_i:=c_1(M_i)\in A^1(X)
$$
と書く。本頁では $x_1,\ldots,x_r$ を、この完全旗に付随するChern根と呼ぶ。
Chern根は旗を選んだ空間上で定まる計算用の類であり、個々の $x_i$ が底上で標準的に定まるとは限らない。積公式の係数となる基本対称式だけがChern類として旗の選択から独立する。
$P(E)$ 上では、点が表す直線の包含そのものが一つの切断を作る。線束を双対にする向きが重要である。
$f\colon P(E)\to X$、$L:=L_E=\mathcal O_{P(E)}(1)$ とする。標準部分線束の包含
$$
L^\vee\hookrightarrow f^*E
$$
は
$$
\mathcal Hom(L^\vee,f^*E)
\cong L\otimes f^*E
$$
の大域切断 $\sigma$ を定める。各点 $d\in P(E)$ で $\sigma(d)$ は直線 $d\hookrightarrow E_{f(d)}$ の包含だから零ではない。
完全旗 $(E_i)$ に対して
$$
G:=L\otimes f^*E,
\qquad G_i:=L\otimes f^*E_i
$$
と置くと、$G=G_0\supset\cdots\supset G_r=0$ は完全旗であり、
$$
c_1(G_{i-1}/G_i)=\xi_E+f^*x_i.
$$
原論文の印刷には標準部分線束とその双対の向きが揺れる箇所がある。超平面を零点にもつ切断は $\mathcal O(1)=L$ 側にあり、本書は上の向きで統一する。
新しい外部定理は引用しない。次の既証事項を使う。
定義式を底変換し、A 1の基底による係数の一意性をもう一度使う。
$g\colon X\to Y$ を $\mathbf V$ の射、$E$ を $Y$ 上のベクトル束とする。このとき
$$
c_i(g^*E)=g^*c_i(E)
$$
がすべての $i$ について成り立ち、従って
$$
c(g^*E)=g^*c(E)
$$
である。
$E$ の階数を $r$、$F=g^*E$ とする。$r=0$ では両辺は1である。$r\geq1$ とし、$E$ の射影束関係式
$$
\sum_{i=0}^{r}f_E^*c_i(E)\,\xi_E^{r-i}=0
$$
へ $\bar g^*$ を施す。底変換図式から
$$
\bar g^*f_E^*=f_F^*g^*,
\qquad \bar g^*\xi_E=\xi_F
$$
なので、
$$
\sum_{i=0}^{r}f_F^*g^*c_i(E)\,\xi_F^{r-i}=0
$$
を得る。これは $F$ の射影束関係式と同じ形である。A 1による $\xi_F^r$ の基底表示は一意だから、各係数を比較して
$$
c_i(F)=g^*c_i(E)
$$
となる。$i>r$ は両辺とも0である。
この証明では旗の束も押し出しも使わない。射影束、標準線束、A 1が底変換と両立することだけで関手性が決まる。
階数1では射影束が底そのものになる。ただし標準線束は元の線束の双対なので、符号を一度確認する必要がある。
$L$ を $X\in\mathbf V$ 上の線束とする。このとき
$$
c(L)=1+c_1(L).
$$
$P(L)\cong X$ で $f_L=\operatorname{id}_X$ である。標準部分線束は $L$ 自身だから、標準線束はその双対 $L_L=L^\vee$ である。従って
$$
\xi_L=c_1(L^\vee)=-c_1(L).
$$
階数1の射影束関係式は
$$
\xi_L+c_1^{\mathrm{def}}(L)=0
$$
である。ここで $c_1^{\mathrm{def}}(L)$ は関係式から定義した係数を表す。上の $\xi_L$ を代入して
$$
c_1^{\mathrm{def}}(L)=c_1(L)
$$
を得る。階数1より高次のChern類は定義により0だから、全Chern類は $1+c_1(L)$ である。
これで射影束関係式から定義した第1類が、器の与件として最初からあった線束の第1類と一致する。以後は両者を同じ記号で書く。
存在証明の核心へ進む。標準切断を補題2の系へ入れるには、その零点列と横断性を全段で確認しなければならない。
$E$ を $X\in\mathbf V$ 上の階数 $r\geq1$ の束とし、完全旗
$$
E=E_0\supset E_1\supset\cdots\supset E_r=0
$$
をもつとする。$x_i=c_1(E_{i-1}/E_i)$ と置けば、射影束関係式から定めたChern類について
$$
c_j(E)=e_j(x_1,\ldots,x_r)
\qquad(0\leq j\leq r),
$$
従って
$$
c(E)=\prod_{i=1}^r(1+x_i)
$$
が成り立つ。
段 1(標準切断と部分束列).$f\colon P(E)\to X$、$L=L_E$、$\xi=\xi_E$ とし、
$$
G=L\otimes f^*E,
\qquad G_i=L\otimes f^*E_i
$$
と置く。標準部分線束の包含 $L^\vee\hookrightarrow f^*E$ が定める切断 $\sigma\in\Gamma(P(E),G)$ は、各点で直線の包含を表すのでどこでも零にならない。商線束の第1類は
$$
c_1(G_{i-1}/G_i)
=c_1(L)+c_1(f^*(E_{i-1}/E_i))
=\xi+f^*x_i.
$$
段 2(零点列の同定).補題2の記号で、$Y_i$ を $\sigma\bmod G_i$ の零点スキームとする。点 $d\subset E_x$ で $\sigma(d)$ が $G_{i,d}=L_d\otimes(E_i)_x$ に入ることは、直線 $d$ が $(E_i)_x$ に含まれることと同値である。従って
$$
Y_i=P(E_i)\subset P(E)
$$
である。スキームとしての一致も局所座標で確かめられる。$E|_U\cong\mathcal O_U^{\oplus r}$ とし、$E_i$ を最後の $r-i$ 座標が張る部分束に取る。斉次座標を $[T_1:\cdots:T_r]$ とすると、$\sigma\bmod G_i$ は
$$
(T_1,\ldots,T_i)
$$
で表され、その零点スキームは $T_1=\cdots=T_i=0$、すなわち $P(E_i)|_U$ である。
段 3(対象条件).$0\leq i\leq r-1$ では $E_i$ の階数は正なので、(V 1) により $Y_i=P(E_i)\in\mathbf V$ である。最終段は
$$
Y_r=P(E_r)=P(0)=\emptyset
$$
であり、(V 0) により $Y_r\in\mathbf V$ である。
段 4(各誘導切断の横断性).$Y_i=P(E_i)$ 上の商 $G_i/G_{i+1}$ に誘導される切断は、局所座標では $\mathcal O(1)$ の切断 $T_{i+1}$ である。その零点は線形超平面
$$
Y_{i+1}=\{T_{i+1}=0\}\subset Y_i.
$$
零点の任意の点で $T_m\ne0$ となる $m\geq i+2$ を選べば、アフィン座標ではこの切断は座標関数 $T_{i+1}/T_m$ になる。従って本書『1-3 正則切断・零点サイクル・横断性』の局所判定により横断的である。$i=r-1$ では $Y_{r-1}=P(E_{r-1})\cong X$ 上の最後の切断はどこでも零にならず、零点 $Y_r=\emptyset$ での横断性は空虚に成り立つ。
段 5(補題2の系).$P(E)\in\mathbf V$、$G$ は階数 $r$、部分束列 $(G_i)$ と切断 $\sigma$ は補題2の系の全仮定を満たす。$\sigma$ はどこでも零にならないので、
$$
\prod_{i=1}^r(\xi+f^*x_i)=0
$$
を $A(P(E))$ で得る。最終段を0とする際には、(V 0) と (A 0) の双方を使っている。
段 6(係数比較).基本対称式の恒等式により
$$
\prod_{i=1}^r(\xi+f^*x_i)
=\sum_{j=0}^rf^*e_j(x_1,\ldots,x_r)\,\xi^{r-j}.
$$
これは $E$ の射影束関係式と同じ形である。A 1による $\xi^r$ の基底表示の一意性から
$$
c_j(E)=e_j(x_1,\ldots,x_r)
$$
を得る。全成分をまとめれば $c(E)=\prod_i(1+x_i)$ である。
この証明では、旗の束への引き戻しの単射性を使っていない。$E$ が既に完全旗をもつとき、A 1の係数の一意性が底 $X$ 上で直接Chern類を決める。
最終段 $Y_r=P(0)=\emptyset$ を零点列の対象とするために (V 0) を使い、その基本類を0とするために (A 0) を使う。どちらか一方を省くと、補題2の積の消滅を標準切断へ適用する論理が閉じない。
空対象の二条件は形式的な飾りではなく、完全分裂時の積公式を通じてChern類の存在証明全体へ入る。
一般の短完全列では、三つの束が底上で完全分裂しているとは限らない。まず $E'$ を旗の束で分裂させ、その上で $E''$ の旗の束を取り、二つを同時に分裂させる。
$X\in\mathbf V$ 上のベクトル束の短完全列
$$
0\longrightarrow E'\longrightarrow E\longrightarrow E''\longrightarrow0
$$
に対して
$$
c(E)=c(E')c(E'')
$$
が成り立つ。
段 1(二段の旗の束).$r'=\operatorname{rank}E'$、$r''=\operatorname{rank}E''$ とする。まず
$$
q_1\colon D(E')\longrightarrow X
$$
を取り、その上の $q_1^*E''$ に対して
$$
q_2\colon T:=D(q_1^*E'')\longrightarrow D(E')
$$
を取る。合成を $q=q_1q_2\colon T\to X$ とする。本書『1-2 旗多様体と完全分裂』により $T\in\mathbf V$ で、$q_1^*$ と $q_2^*$ は単射だから $q^*$ も単射である。また $q^*E'$ と $q^*E''$ はともに完全旗をもつ。
段 2(中央の束へ旗を継ぎ足す).$T$ 上で記号を簡略化して、引き戻した束を再び $E',E,E''$ と書く。$E'$ の完全旗を
$$
E'=E'_0\supset\cdots\supset E'_{r'}=0,
$$
$E''$ の完全旗を
$$
E''=E''_0\supset\cdots\supset E''_{r''}=0
$$
とし、$\pi\colon E\twoheadrightarrow E''$ を全射とする。$E$ の部分束列を
$$
F_j:=\pi^{-1}(E''_j)\quad(0\leq j\leq r''),
$$
$$
F_{r''+i}:=E'_i\quad(0\leq i\leq r')
$$
で定める。$F_{r''}=\pi^{-1}(0)=E'=E'_0$ なので二つの列はつながる。局所自由層の全射の核は部分束だから各 $F_j$ は部分束である。
段 3(商線束).継ぎ足した旗の逐次商は
$$
F_{j-1}/F_j\cong E''_{j-1}/E''_j
\quad(1\leq j\leq r''),
$$
$$
F_{r''+i-1}/F_{r''+i}
\cong E'_{i-1}/E'_i
\quad(1\leq i\leq r').
$$
従って $E$ も完全旗をもち、その商線束の集合は $E''$ と $E'$ の商線束を合わせたものである。
段 4(積公式).$E'$ の商線束の第1類を $x'_i$、$E''$ のものを $x''_j$ とする。完全分裂した束の積公式を三つの束へ適用すると
$$
c(q^*E)
=\prod_{j=1}^{r''}(1+x''_j)
\prod_{i=1}^{r'}(1+x'_i)
=c(q^*E'')c(q^*E').
$$
関手性により
$$
q^*c(E)=q^*c(E'')\,q^*c(E')
=q^*\bigl(c(E')c(E'')\bigr).
$$
段 5(単射性で底へ戻る).$q^*$ は単射だから
$$
c(E)=c(E')c(E'')
$$
を得る。$r'=0$ または $r''=0$ の場合は、対応する旗の束を恒等射、空積を1と読めば同じ証明になる。
この証明では、短完全列が分裂するとは仮定していない。旗を継ぎ足して逐次商だけを並べ、Chern類の等式を単射性で戻すため、拡大類は計算から消える。
射影束関係式から定めたChern類は、関手性、線束での正規化、短完全列に対する乗法性を満たす。従って本書『3-1 Chern 類の定義と一意性』の一意性定理により、この三性質を満たす唯一の規則である。
関手性はChern類の関手性、正規化は線束での正規化、乗法性は短完全列に対する乗法性で証明した。これに前頁の一意性定理を適用すればよい。
これで原論文の定理1の存在部分と一意性部分が合流した。以後は三性質を使ってChern類を計算できる。
乗法性を直和の標準的な短完全列へ適用すると、基本的な計算が直ちに得られる。
線束 $L_1,\ldots,L_r$ に対し
$$
E=L_1\oplus\cdots\oplus L_r
$$
と置く。直和の部分和が完全旗を与えるから、$x_i=c_1(L_i)$ として
$$
c(E)=\prod_{i=1}^r(1+x_i).
$$
従って
$$
c_j(E)=\sum_{1\leq i_1<\cdots< i_j\leq r}
x_{i_1}\cdots x_{i_j}.
$$
特に $c_1(E)=\sum_i c_1(L_i)$、$c_r(E)=\prod_i c_1(L_i)$ である。
直和の例では完全旗が底上で見えているため、旗の束へ移る必要はない。積公式は通常の基本対称式の展開になる。
自明線束 $\mathcal O_X$ では $c_1(\mathcal O_X)=0$ だから
$$
c(\mathcal O_X)=1.
$$
乗法性を繰り返すと
$$
c(\mathcal O_X^{\oplus r})=1,
$$
従って $i>0$ について $c_i(\mathcal O_X^{\oplus r})=0$ である。
より一般に、束 $E$ が自明な直和因子をもっても、その因子は全Chern類へ1を掛けるだけなのでChern類を変えない。
これは安定化 $E\mapsto E\oplus\mathcal O$ がChern類を保つことを示し、第4章でGrothendieck群へ移る準備になる。
積公式は逐次商だけを使うため、旗の短完全列が分裂しなくても成り立つ。
$\mathbb P^1$ 上のEuler完全列
$$
0\longrightarrow\mathcal O(-1)
\longrightarrow\mathcal O^{\oplus2}
\longrightarrow\mathcal O(1)
\longrightarrow0
$$
は分裂しない。一方、線束での正規化と分裂完全列
$$
0\longrightarrow\mathcal O\longrightarrow\mathcal O^{\oplus2}
\longrightarrow\mathcal O\longrightarrow0
$$
への乗法性から $c(\mathcal O^{\oplus2})=1$ である。Euler完全列への乗法性は
$$
c(\mathcal O^{\oplus2})
=c(\mathcal O(-1))c(\mathcal O(1))
=(1-h)(1+h)=1-h^2=1
$$
を与える。ここで $h=c_1(\mathcal O(1))$ である。従って $h^2=0$ は一般の器に次元消滅を仮定した結果ではなく、正規化と二つの完全列への乗法性から導かれる。
従って積公式が必要とするのは線束の逐次商であり、短完全列の分裂ではない。
この例は、存在証明が拡大類を捨てることを示す。捨てた情報を復元する定理はなく、Chern類は束を分類しない。
標準切断はどこでも零にならないが、それだけでは補題2の系を適用できない。誘導切断の横断性が必要である。
一般の階数 $r$ の束 $G$ がどこでも零にならない切断をもっていても、任意に選んだ部分束列に対して誘導切断が横断的とは限らない。例えば $X=\mathbb A^1$、$G=\mathcal O_X^{\oplus2}$、切断 $s=(1,t^2)$、部分束 $G_1=\mathcal O_X\cdot(1,0)$ を取る。$s$ 自身はどこでも零にならないが、商 $G/G_1\cong\mathcal O_X$ への像は $t^2$ で、零点 $t=0$ で横断的でない。
従って、「切断が零にならない」だけから補題2の積の消滅を導くことはできない。標準切断の証明で追加確認した線形座標 $T_{i+1}$ による横断性が必要である。
破れている条件は各誘導切断の横断性であり、標準切断の場合には射影空間の線形超平面という特別な局所形がこの条件を保証する。
ここからは1958年の原論文自身の証明ではなく、後代の言葉による位置づけである。
完全旗へ移してChern根で計算し、対称式を底へ戻す方法は分裂原理と呼ばれる。代数的交叉理論での標準的な記述は Ful98、位相的ベクトル束での類似の議論は BT82 にあるが、本頁の証明は既に本書内で閉じている。
乗法性は、ベクトル束の短完全列を関係式として作るGrothendieck群 $K_0^{\mathrm{vb}}(X)$ へ全Chern類を延長する基礎になる。ただし全Chern類は直和を積へ送るため、そのまま通常の加法群への準同型ではない。第4章では階数と全Chern類を組にした完備Chern類と、普遍多項式で定める環構造を使う。
標準切断と補題2による証明は、Chern類の存在を射影束公式と零点の幾何へ還元する。後代の理論では普遍束や分類空間からChern類を構成する方法もあるが、原論文の特徴は複数の器に共通する少数の公理だけで同じ存在証明を与える点にある。
空対象の二条件、標準線束の双対の向き、横断性の添字は、最終式だけを見ると隠れやすい。しかし、これらのいずれかを省くと完全分裂時の積公式の証明が閉じない。本頁では後代の簡潔な「分裂原理により明らか」という言い換えに置き換えず、原論文の証明を支える幾何を残した。
本頁が対応する原論文は Gro58 である。
| 本頁 | 原論文 | 印字頁 |
|---|---|---|
| Chern類の関手性 | §3 定理 1 (i)、式 (3) | pp.144–146 |
| 線束での正規化 | §3 定理 1 (ii)、式 (4) | pp.144、146 |
| 完全分裂した束の積公式 | §3 式 (6) の存在側 | pp.146–147 |
| 標準切断と零点列 | §3 式 (6) の証明 | pp.146–147 |
| 短完全列に対する乗法性 | §3 定理 1 (iii)、式 (5) | pp.144、146 |
| Chern類の存在と特徴づけ | §3 定理 1 | pp.144–147 |
原論文は関手性と正規化を短く確認し、乗法性を旗の束上の完全分裂へ帰着する。完全分裂時の式 (6) では、射影束上の標準切断と補題2の系を使う。本頁は、零点列 $Y_i=P(E_i)$ のスキームとしての同定、各線形切断の横断性、最終段 $Y_r=\emptyset$、(V 0) と (A 0)、A 1の係数比較を明示し、存在証明を完結させた。
Mathpediaは寄付と、参考文献の書籍リンク(Amazonアソシエイト)の紹介料で運営されています。 支援について / 寄付する