ベクトル束が底の取り替えと両立すること、点の上のファイバーが既約ファイバーの双対空間に当たる数空間であること、局所自由な加群への射のなす関手もベクトル束で表されることを示す。底変換はファイバー積の存在ごと表現可能性の判定から得られ、ファイバーはそれを一点の底に当てて読む。ファイバーの次元が点ごとに変わる例と、目標の局所自由性を外した反例を置く。
前提知識: ベクトル束, 底変換, ファイバー積, 双対ベクトル空間, 局所自由層, 表現可能関手
$S$ を解析空間、$\mathcal E$ を有限表示の $\mathcal O_S$ 加群とし、$V(\mathcal E)$ をそのベクトル束(本書『1-1 双対規約のベクトル束とその存在』の定義「ベクトル束」)、$\xi_{\mathcal E}$ を普遍元、$p\colon V(\mathcal E)\to S$ を構造射とする。点 $s\in S$ について、$e_s$ は $s$ だけからなる被約な閉部分空間、$i_s\colon e_s\to S$ はその包含である(本書『0-3 解析空間と数空間』の補題「点の部分空間の存在」)。記号は本書『0-6 記号と約束』のとおりである。
本頁の主結果は次の三つである。
原論文の命題 1.7 は、底変換との両立を第 IV 回 Gro61iv の系 3.2 の特別な場合として一文で済ませる。その系(本書『0-4 表現可能性の判定法』の定理「スライス圏の間の底変換」)は、「制限した関手が表現可能であることは、ファイバー積が存在することと同値」と言う。ベクトル束の関手を $S'$ の上に制限すると $\mathcal E'$ のベクトル束の関手になり、それは命題 1.1 で表現可能なので、この同値を逆向きに使えば、ファイバー積 $V(\mathcal E)\times_SS'$ の存在まで一度に出る。解析空間のファイバー積の一般の存在(連作第 III 回の定理 2.1)を使わずに済むのは、この向きのおかげである。
原論文の系 1.8 は、これを一点の底に当てて、ファイバーを読む。原論文の証明は、$S'$ を $s$ の定める被約な部分空間にとって「$S$ が一点で局所環が $k$ の場合に帰着」し、ファイバーの台の集合を底の上の切断の集合として読む。双対規約のベクトル束では、ファイバーは既約ファイバーそのものでなく、その双対空間になる。$\mathcal E$ が局所自由でなければ、その次元は点ごとに変わる。
原論文の命題 1.9 は、目標が局所自由なら、射の集合を一次形式の集合に書き直せることを使う。これは注意 1.3(本書『1-2 切断の関手と二つの規約』)と §3 の旗束の構成が参照先として引く命題である。
ファイバーと、加群の射の関手に名前を付ける。
次の事実を本書の他の頁から使う。1 と 4 は連作第 III 回の定理 1.1・系 1.2 Gro61iii に依る条件付きの主結果(4 は 1 を通して)、2・3 は完結の入力、5 は引用に依る補題(点の部分空間の存在)と、引用に依らずに証明した定理・補題(完結の入力)、6 は連作第 III 回の定理に依る第 0 章の補題である。
$\mathcal E$ が有限型なら、生成する切断の像が $\mathcal E(s)$ を生成するので(本書『0-2 環付き空間の上の加群』の定理「逆像と加群の演算」の (6))、$\mathcal E(s)$ は有限次元である。原論文の記号 $V(\mathcal E)_s$ は (1) の意味で、存在は下の主結果「ベクトル束の底変換」が与える。
$\mathcal E$、$\mathcal F$ を $\mathcal O_S$ 加群とする。$S$ 上の空間 $T$ に $F_{\mathcal E,\mathcal F}(T)=\mathrm{Hom}_{\mathcal O_T}(\mathcal E_{(T)},\mathcal F_{(T)})$ を、$S$ 射 $f\colon T'\to T$ に、$\varphi$ を合成
$$\mathcal E_{(T')}\cong f^*\mathcal E_{(T)}\xrightarrow{f^*\varphi}f^*\mathcal F_{(T)}\cong\mathcal F_{(T')}$$
に送る写像を対応させる(二つの同型は逆像の標準同型)。$F_{\mathcal E,\mathcal O_S}$ はベクトル束の関手 $F_{\mathcal E}$ である。
$F_{\mathcal E,\mathcal F}$ が前層であることは、本書『1-1 双対規約のベクトル束とその存在』の主結果「ベクトル束の関手の二重関手性」の (1) の証明の $\mathcal O_T$ を $\mathcal F_{(T)}$ に替えればそのまま通る(標準同型の両立は本書『0-2 環付き空間の上の加群』の定理「逆像と加群の演算」の (1)(2))。値は $\Gamma(T,\mathcal O_T)$ 加群で、写像は $k$ 線形である。
$\mathcal E$ を有限表示の $\mathcal O_S$ 加群、$q\colon S'\to S$ を $S$ 上の解析空間の構造射、$\mathcal E'=\mathcal E_{(S')}=q^*\mathcal E$ とする。
(1) $p$ と $q$ のファイバー積 $V(\mathcal E)\times_SS'$ が存在する。$S'$ 上の空間 $(V(\mathcal E)\times_SS',\mathrm{pr}_2)$ は、元 $\mathrm{pr}_1^*\xi_{\mathcal E}$ を下の段 1 の同型で $F_{\mathcal E'}$ の元とみたものとともに、$F_{\mathcal E'}$ を表す。
(2) したがって、普遍元を保つ $S'$ 上の同型 $\varphi\colon V(\mathcal E')\to V(\mathcal E)\times_SS'$ がただ一つある。
(3) $S'$ 上の空間 $T$ について、$\mathrm{pr}_1\circ\varphi\colon V(\mathcal E')\to V(\mathcal E)$ は、$T$ 点の上で、$\mathcal E'_{(T)}$ の一次形式を標準同型 $\mathcal E'_{(T)}\cong\mathcal E_{(T)}$ で $\mathcal E_{(T)}$ の一次形式とみる写像である。この写像は $k$ 線形で、$\mathrm{pr}_1\circ\varphi$ は加法・零切断・スカラー倍と両立する。
段 1(制限した関手).$S'$ 上の空間 $(T,r)$ は、$q\circ r$ で $S$ 上の空間である。本書『0-2 環付き空間の上の加群』の定理「逆像と加群の演算」の (1) の標準同型 $\mathcal E'_{(T)}=r^*q^*\mathcal E\cong(qr)^*\mathcal E=\mathcal E_{(T)}$ により、全単射
$$F_{\mathcal E}(T,q\circ r)=\mathrm{Hom}(\mathcal E_{(T)},\mathcal O_T)\cong\mathrm{Hom}(\mathcal E'_{(T)},\mathcal O_T)=F_{\mathcal E'}(T,r)$$
を得る。同じ定理の (2) により標準同型は底の取り替えと両立するので、これは $T$ について自然で、前層の同型 $(F_{\mathcal E})_{/S'}\cong F_{\mathcal E'}$ を与える(左辺は本書『0-4 表現可能性の判定法』の定義「スライス圏への制限」の意味の制限)。各成分は $\Gamma(T,\mathcal O_T)$ 線形である。
段 2(ファイバー積の存在).$\mathcal E'$ は有限表示なので(同じ定理の (4))、引用する事実の 1 により $F_{\mathcal E'}$ は表現可能で、段 1 により $(F_{\mathcal E})_{/S'}$ も表現可能である。$F_{\mathcal E}$ は $(V(\mathcal E),\xi_{\mathcal E})$ で表されるので、引用する事実の 2 の同値の、制限が表現可能ならファイバー積が存在する向きにより、$V(\mathcal E)\times_SS'$ が存在し、$(V(\mathcal E)\times_SS',\mathrm{pr}_2)$ と $F_{\mathcal E}(\mathrm{pr}_1)(\xi_{\mathcal E})=\mathrm{pr}_1^*\xi_{\mathcal E}$ の組が $(F_{\mathcal E})_{/S'}$ を表す。段 1 の同型で移せば (1) を得る。
段 3((2)).$V(\mathcal E')$ と $V(\mathcal E)\times_SS'$ はともに $F_{\mathcal E'}$ を表すので、引用する事実の 3 による。
段 4((3)).$S'$ 射 $g\colon T\to V(\mathcal E')$ の一次形式を $y'=g^*\xi_{\mathcal E'}$ とする。$\varphi$ は普遍元を保つので、$(\varphi\circ g)^*$ で (1) の元を引き戻したものは $y'$ で、これを段 1 の同型で $F_{\mathcal E}(T)$ の元とみたものが $(\mathrm{pr}_1\circ\varphi\circ g)^*\xi_{\mathcal E}$ である。段 1 の同型は線形なので、写像は $k$ 線形である。構造との両立は、本書『1-3 ベクトル束の群構造と閉はめ込み』の主結果「ベクトル束の関手性」の (2) の証明と同じく、$T$ 点の上の線形性から出る。
この定理の要は、ファイバー積を先に作らず、制限した関手が別の構成で表現可能だと知ってから、判定法の同値を逆に使ってファイバー積を得たことである。$S'$ が $S$ の開部分空間 $U$ なら、ファイバー積は $p^{-1}(U)$ の開部分空間で(本書『0-3 解析空間と数空間』の命題「開はめ込みの底変換と非交和」)、定理はそれが $V(\mathcal E|_U)$ であることを言う。本書『1-1 双対規約のベクトル束とその存在』の注意「足した仮定の効き方と分離的な読み」と本書『1-3 ベクトル束の群構造と閉はめ込み』の注意「原論文の段と閉はめ込みの消去」は、この場合を使った。次に、$S'$ を一点にとる。
$\mathcal E$ を有限表示の $\mathcal O_S$ 加群、$s\in S$、$n=\dim_k\mathcal E(s)$ とする。
(1) ファイバー $V(\mathcal E)_s=V(\mathcal E)\times_Se_s$ が存在し、$e_s$ 上の空間として $V(\mathcal E(s))$ と標準的に同型である。
(2) $V(\mathcal E)_s$ は解析空間として $E^n$ に同型である。
(3) 射影 $\mathrm{pr}_1\colon V(\mathcal E)_s\to V(\mathcal E)$ は、$V(\mathcal E)_s$ の点の集合を $p^{-1}(s)$ の上へ一対一に写す。
(4) $e_s$ 上の空間 $X$ の点は $e_s$ 射 $e_s\to X$ と一対一である。これにより、$V(\mathcal E(s))$ の点の集合は双対空間 $\mathcal E(s)^*=\mathrm{Hom}_k(\mathcal E(s),k)$ と一対一で、この一対一は、$V(\mathcal E(s))$ のベクトル空間対象の構造が $\mathrm{Hom}_{e_s}(e_s,V(\mathcal E(s)))$ に与える $k$ ベクトル空間の構造について $k$ 線形である。(1)(3) と合わせて、$p^{-1}(s)$ は $\mathcal E(s)^*$ と一対一である。
段 1((1)).上の定理(ベクトル束の底変換)を $S'=e_s$、$q=i_s$ に当てる。定義「点の上のファイバー」の (2) により $\mathcal E_{(e_s)}=\mathcal E(s)$ である。
段 2((2)).$e_s$ の環は $k$ なので、$e_s$ の上の加群 $\mathcal E(s)$ は $n$ 次元の $k$ ベクトル空間で、基底を選べば同型 $\mathcal O_{e_s}^n\cong\mathcal E(s)$ を得る。本書『1-3 ベクトル束の群構造と閉はめ込み』の主結果「ベクトル束の関手性」により、これは同型 $V(\mathcal E(s))\cong V(\mathcal O_{e_s}^n)$ を与える。引用する事実の 6 により $V(\mathcal O_{e_s}^n)=e_s\times E^n$ は $(\mathrm{An})$ での $e_s$ と $E^n$ の積で、$e_s$ は終対象 $e$ と同型なので(引用する事実の 5)、第 2 射影 $e_s\times E^n\to E^n$ は同型である(終対象との積)。
段 3(点の読み方).引用する事実の 5 により、解析空間 $X$ の点 $x$ は射 $\bar x\colon e\to X$ とただ一通りに対応し、射 $h\colon X\to X'$ との合成 $h\circ\bar x$ は点 $h(x)$ に当たる。$e_s\cong e$ なので $e_s$ からの射も同じである。$X$ が $e_s$ 上の空間なら、$\mathrm{Hom}(e_s,e_s)$ は一点なので($e_s$ は終対象と同型)、射 $e_s\to X$ はすべて $e_s$ 射である。これが (4) の最初の主張である。
段 4((3)).$V(\mathcal E)_s$ の点は、ファイバー積の普遍性により、射の組 $a\colon e\to V(\mathcal E)$、$b\colon e\to e_s$ で $p\circ a=i_s\circ b$ となるものと一対一である。$b$ はただ一つで、$i_s\circ b$ は点 $s$ に当たる。$a$ を点 $x$ に当てると $p\circ a$ は点 $p(x)$ に当たるので、段 3 により条件は $p(x)=s$ と同値である。ゆえに $\mathrm{pr}_1$ との合成は、点の集合から $p^{-1}(s)$ への全単射である。
段 5((4) の残り).段 3 により、$V(\mathcal E(s))$ の点は $e_s$ 射 $e_s\to V(\mathcal E(s))$、すなわち
$$F_{\mathcal E(s)}(e_s)=\mathrm{Hom}_{\mathcal O_{e_s}}(\mathcal E(s),\mathcal O_{e_s})=\mathrm{Hom}_k(\mathcal E(s),k)=\mathcal E(s)^*$$
の元と一対一である。本書『1-3 ベクトル束の群構造と閉はめ込み』の主結果「ベクトル束のベクトル空間対象の構造」の (2) を $e_s$ の上で $T=e_s$ に当てれば、この一対一は線形である。(1) の同型で $V(\mathcal E)_s$ の点に移し、(3) で $p^{-1}(s)$ に移す。
この定理で、原論文の 1.4 の「とくに各ファイバーの台の集合は $k$ ベクトル空間」が、$\mathcal E(s)^*$ の構造として確かめられた(本書『1-3 ベクトル束の群構造と閉はめ込み』の注意「図式で書く公理と三重の積」)。ファイバーの次元 $n=\dim\mathcal E(s)$ は $\mathcal E$ が局所自由なら局所的に一定だが、一般には点ごとに変わる(下の例「原点で潰れた直線のファイバー」)。札に書いた足した仮定と、原論文の証明の段を注意する。
目標 $\mathcal F$ が局所自由なら、射 $\mathcal E_{(T)}\to\mathcal F_{(T)}$ は $\check{\mathcal F}$ との組で一次形式に書き直せる。これは逆像と両立するので、関手の同型になる。
$\mathcal E$、$\mathcal F$ を $\mathcal O_S$ 加群とする。
(1) $F_{\mathcal E,\mathcal F}$ は $(\mathrm{An})_{/S}$ 上の前層で、$\mathcal E$ と $\mathcal F$ の射について関手的であり、値は $\Gamma(T,\mathcal O_T)$ 加群、底の取り替えの写像は $k$ 線形である。
(2) $\mathcal F$ が有限階数の局所自由なら、$\varphi\mapsto(\lambda\otimes x\mapsto\lambda(\varphi(x)))$ から標準同型で得る写像は、$T$ について自然な $\Gamma(T,\mathcal O_T)$ 線形な全単射 $F_{\mathcal E,\mathcal F}(T)\cong F_{\check{\mathcal F}\otimes\mathcal E}(T)$ である。
(3) さらに $\mathcal E$ が有限表示なら、$F_{\mathcal E,\mathcal F}$ は $V(\check{\mathcal F}\otimes\mathcal E)$ で表され、$V(\check{\mathcal F}\otimes\mathcal E)$ の加法とスカラー倍は、射の和と $k$ 倍に当たる。
段 1((1)).上の定義(加群の射の関手)の後の段で述べたとおりである。$\mathcal E$、$\mathcal F$ の射についての関手性は、本書『1-1 双対規約のベクトル束とその存在』の主結果「ベクトル束の関手の二重関手性」の (2)(3) と同じく、合成の標準同型の自然性から出る。
段 2((2) の全単射).$\mathcal F_{(T)}$ は有限階数の局所自由である(本書『0-2 環付き空間の上の加群』の定理「逆像と加群の演算」の (4))。同じ頁の定理「外積と双対の標準同型」の (1) により、$\varphi\mapsto(\lambda\otimes x\mapsto\lambda(\varphi(x)))$ は全単射 $\mathrm{Hom}(\mathcal E_{(T)},\mathcal F_{(T)})\to\mathrm{Hom}((\mathcal F_{(T)})^\vee\otimes\mathcal E_{(T)},\mathcal O_T)$ である。定理「逆像と加群の演算」の (5) の同型 $(\check{\mathcal F})_{(T)}\cong(\mathcal F_{(T)})^\vee$ と (1) の同型 $(\check{\mathcal F}\otimes\mathcal E)_{(T)}\cong(\check{\mathcal F})_{(T)}\otimes\mathcal E_{(T)}$ を合成すれば、全単射 $F_{\mathcal E,\mathcal F}(T)\cong F_{\check{\mathcal F}\otimes\mathcal E}(T)$ を得る。どの写像も $\Gamma(T,\mathcal O_T)$ 線形である。
段 3(自然性).$S$ 射 $f\colon T'\to T$ について、両辺の底の取り替えはどちらも逆像の標準同型で挟んだ $f^*$ である。定理「逆像と加群の演算」の (2) により、茎の生成元 $1\otimes\lambda$、$1\otimes x$ の上で比べればよく、そこでは $f^*$ は $\lambda(\varphi(x))$ を $f^\sharp$ で引き戻した値に送る。評価の式は引き戻しと可換なので、二つの合成は一致する。
段 4((3)).$\check{\mathcal F}$ は有限階数の局所自由(定理「外積と双対の標準同型」の (1))で、とくに有限表示なので、$\check{\mathcal F}\otimes\mathcal E$ は有限表示である(定理「逆像と加群の演算」の (4))。本書『1-1 双対規約のベクトル束とその存在』の主結果「ベクトル束の存在」により $F_{\check{\mathcal F}\otimes\mathcal E}$ は $V(\check{\mathcal F}\otimes\mathcal E)$ で表され、段 2・段 3 の前層の同型で $F_{\mathcal E,\mathcal F}$ も表される。全単射は線形なので、本書『1-3 ベクトル束の群構造と閉はめ込み』の主結果「ベクトル束のベクトル空間対象の構造」の (2) の構造は射の和と $k$ 倍に当たる。
二つの特別な場合がある。$\mathcal F=\mathcal O_S$ なら $\check{\mathcal O}_S\otimes\mathcal E\cong\mathcal E$ で、定理は $F_{\mathcal E}$ が $V(\mathcal E)$ で表されることに戻る。$\mathcal E=\mathcal O_S$ なら $F_{\mathcal O_S,\mathcal F}(T)=\Gamma(T,\mathcal F_{(T)})$ は切断の関手 $G_{\mathcal F}$ で、定理は $G_{\mathcal F}$ が $V(\check{\mathcal F})$ で表されることを言う。これは本書『1-2 切断の関手と二つの規約』の主結果「局所自由な加群の切断の関手」で、原論文の注意 1.3 がそこに「Cf. 1.9」を添えるのはこの意味である。
局所自由でない最も簡単な加群で、ファイバーの次元が点ごとに変わることを確かめる。次に、主結果「加群の射の関手の表現」の目標の局所自由性が外せないことを見る。
$S=E^1$(座標 $z$)、$\mathcal E=\mathcal O_S/z\mathcal O_S$ とする。本書『1-1 双対規約のベクトル束とその存在』の例「原点で潰れた直線のベクトル束」により、$V(\mathcal E)$ は座標 $(z,y)$ の $E^2$ の閉部分空間 $Z(zy\,\mathcal O_{E^2})$ で、構造射は $z$ 座標である。
(a) 本書『0-2 環付き空間の上の加群』の例「直線の原点の剰余加群」の (b) により、$\mathcal E(t)=0$($t\ne0$)、$\mathcal E(0)=k$ である。上の定理(ベクトル束のファイバー)により、$t\ne0$ の上のファイバーは $E^0$、すなわち一点で、原点の上のファイバーは $E^1$ である。$p^{-1}(t)=\{(t,0)\}$、$p^{-1}(0)=\{0\}\times k$ で、$\mathcal E(0)^*=k$ の元 $\lambda$ に点 $(0,\lambda(1))$ が当たる。
(b) ファイバーを閉部分空間として直接計算しても同じになる。$e_t=Z((z-t)\mathcal O_S)$ である(本書『0-3 解析空間と数空間』の補題「点の部分空間の存在」の (2)(3))。本書『0-5 閉部分空間と零点と積』の補題「閉部分空間の普遍性と閉はめ込みの計算」の (b)(c) により、$V(\mathcal E)\times_Se_t$ は $E^2$ の閉部分空間 $Z(zy,z-t)$ である。$t=0$ ならイデアルは $(z)$ で、ファイバーは直線 $\{0\}\times E^1$ である。$t\ne0$ なら $zy=(z-t)y+ty$ で $t$ は可逆なので、イデアルは $(z-t,y)$ で、ファイバーは点 $(t,0)$ に $k$ を与えた一点である。
(c) ファイバーの次元が $0$ から $1$ に跳ぶので、$V(\mathcal E)$ は原点のどの近傍でも自明な束 $U\times E^p$ に同型でない。局所自由な $\mathcal E$ なら、$\mathcal E(s)$ の次元は局所的に一定で(本書『0-2 環付き空間の上の加群』の定理「逆像と加群の演算」の (6))、ファイバーの次元も局所的に一定である。
上の定理(加群の射の関手の表現)から $\mathcal F$ の局所自由性を外す。$S=E^1$(座標 $z$)、$\mathcal E=\mathcal O_S$、$\mathcal F=\mathcal O_S/z\mathcal O_S$ とする。
(a) $F_{\mathcal O_S,\mathcal F}$ は切断の関手 $G_{\mathcal F}$ で、本書『1-2 切断の関手と二つの規約』の反例「反例:局所自由でない加群の切断の関手は表現可能でない」により表現可能でない。この反例は二重点の上の値を直接計算して示すもので、同じ頁の主結果「切断の関手の表現可能性と局所自由性」(連作第 II 回 Gro61ii の命題 2.3 に依る)を経由しない。
(b) 公式 $V(\check{\mathcal F}\otimes\mathcal E)$ も意味を失う。$\check{\mathcal F}=0$(本書『0-2 環付き空間の上の加群』の例「直線の原点の剰余加群」の (c))なので $V(\check{\mathcal F}\otimes\mathcal E)=V(0)=S$ で、その $e_0$ 点は一点だけである。一方 $F_{\mathcal O_S,\mathcal F}(e_0)=\Gamma(e_0,\mathcal F_{(e_0)})=\mathcal F(0)=k$ は一点でない。ゆえに (2) の写像は $T=e_0$ で全単射でない。
以下は後代の文献の紹介である(本書は文献を開いて該当箇所を確かめていない)。
本頁が対応する原論文は Gro61v である。印字頁は PDF の頁番号から 1 を引いたもの(PDF $n$ が印字 12-$(n-1)$)である。
| 本頁 | 原論文 | 印字頁 |
|---|---|---|
| 主結果「ベクトル束の底変換」 | 命題 1.7 | 12-05 |
| 定義「点の上のファイバー」、主結果「ベクトル束のファイバー」 | 系 1.8 | 12-05 |
| 注意「原論文の段と足した仮定の効き方」 | 系 1.8 の証明 | 12-05 |
| 定義「加群の射の関手」、主結果「加群の射の関手の表現」 | 命題 1.9 とその証明 | 12-06 |
| 注意「印字の読みと原論文の参照」 | 命題 1.7、系 1.8、命題 1.9、注意 1.3、§3 の一般の旗の段 | 12-03〜12-06、12-12 |
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