添字集合に順序がない族を足すとき、特定の並べ方に依存してはならない。そこで有限部分集合 $F\subset J$ 上の部分和を、包含関係に沿って大きくするネットとして考える。この定義は「どの有限個を先に足しても同じ極限へ近づく」という無条件な総和を表し、通常の順序付き級数より強い。
$X$ をノルム空間、$J$ を集合とし、各 $j\in J$ に対し $x_j\in X$ が与えられているとする。そして $\mathcal{F}_J$ を $J$ の有限部分集合全体に集合の包含関係による順序を入れた有向集合とする。$\mathcal{F}_J$ によって添字付けられた $X$ のネット $(\sum_{j\in F}x_j)_{F\in \mathcal{F}_J}$ が収束するとき、$\sum_{j\in J}x_j$ は収束すると言い、その収束点を、
$$
\sum_{j\in J}x_j=\lim_{F\rightarrow J}\sum_{j\in F}x_j
$$
と表す。
ネットについては
ネットによる位相空間論
を参照されたい。
$X=\mathbb R$、$x_n=(-1)^{n+1}/n$ とする。通常の順序では交代調和級数 $\sum_{n=1}^{\infty}x_n$ は収束する。しかし正の項だけの部分和は上へ発散し、負の項だけの絶対値の和も発散するため、有限部分集合全体で添字付けた部分和ネットは一つの極限へ収束しない。この反例は、順序付き級数の条件収束から、順序に依らない総和の収束を結論できないことを示す。
$\sum_{n\in\mathbb{N}}x_n$ が収束するならば $\sum_{n=1}^{\infty}x_n$ は $\sum_{n\in\mathbb{N}}x_n$ に収束する。しかし逆は一般に成り立たない。
$\sum_{j\in J}x_j$ が収束するならば、$\{j\in J:x_j\neq 0\}$ は可算集合である。
任意の $\epsilon\in(0,\infty)$ に対し $J_{\epsilon}=\{j\in J:\| x_j\|\geq\epsilon\}$ とおくと、
$$
\{j\in J:x_j\neq0\}=\bigcup_{n\in\mathbb{N}}J_{\frac{1}{n}}
$$
である。これより任意の $\epsilon\in(0,\infty)$ に対し $J_{\epsilon}$ が有限集合であることを示せばよい。$\sum_{j\in J}x_j$ は収束するので、$F_{\epsilon}\in \mathcal{F}_J$ が存在し $F\supset F_{\epsilon}$ なる任意の $F\in \mathcal{F}_J$ に対し、
$$
\left\| \sum_{j\in F}x_j-\sum_{j\in F_{\epsilon}}x_j\right\|<\epsilon
$$
となる。よって任意の $j\in J\backslash F_{\epsilon}$ に対し $\| x_j\|<\epsilon$ であるから、$J_{\epsilon}\subset F_{\epsilon}$ である。ゆえに $J_{\epsilon}$ は有限集合である。
$J$ を空でない集合とし、各 $j\in J$ に対し $x_j\in [0,\infty]$ が与えられているとする。$J$ の有限部分集合全体 $\mathcal{F}_J$ に対し、
$$
\sum_{j\in J}x_j=\sup_{F\in \mathcal{F_J}}\sum_{j\in F}x_j\in [0,\infty]
$$
と定義する。$\mathbb{R}$ の上に有界な単調増加ネットは上限に収束するから、この定義は $x_j\in [0,\infty)$ $(\forall j\in J)$ で $\sum_{j\in J}x_j$ が収束する場合と矛盾しない。
$X$ をノルム空間、$J$ を集合とし、各 $j\in J$ に対し $x_j\in X$ が与えられているとする。$\sum_{j\in J}\| x_j\|<\infty$ が成り立つとき $\sum_{j\in J}x_j$ は絶対収束すると言う。
$X$をBanach空間、$J$を集合とし、各 $j\in J$ に対し $x_j\in X$ が与えられているとする。そして $\sum_{j\in J}x_j$ が絶対収束するとする。このとき $\sum_{j\in J}x_j$ は収束する。
$J_0=\{j\in J:x_j\neq0\}$ とおく。各 $m\in\mathbb N$ に対して
$$
J_m=\{j\in J:\|x_j\|\geq 1/m\}
$$
と置く。$J_m$ が無限なら、任意の $N$ に対して $J_m$ から相異なる $N$ 個を選ぶことで、非負数族の有限部分和が $N/m$ 以上になり、$\sum_{j\in J}\|x_j\|<\infty$ に反する。従って各 $J_m$ は有限であり、
$$
J_0=\bigcup_{m\in\mathbb N}J_m
$$
は可算集合である。もし $J_0$ が有限集合ならば明らかに $\sum_{j\in J}x_j$ は $\sum_{j\in J_0}x_j$ に収束する。そこで $J_0$ は可算無限集合であるとし $\mathbb{N}\ni n\mapsto j_n\in J_0$ を全単射とする。
$$
\sum_{n=1}^{\infty}\| x_{j_n}\|=\sum_{n\in \mathbb{N}}\| x_{j_n}\|=\sum_{j\in J_0}\| x_j\|=\sum_{j\in J}\| x_j\|<\infty
$$
であり、$N>M$ なる任意の $N,M\in \mathbb{N}$ に対し、
$$
\left\|\sum_{n=1}^{N}x_{j_n}-\sum_{n=1}^{M}x_{j_n}\right\|
\leq \sum_{n=M+1}^{N}\| x_{j_n}\|
=\sum_{n=1}^{N}\| x_{j_n}\|-\sum_{n=1}^{M}\| x_{j_n}\|
$$
であるから $X$ の完備性より$\sum_{n=1}^{\infty}x_{j_n}$ は収束する。任意の $\epsilon\in(0,\infty)$ に対し $N\in \mathbb{N}$ で、
$$
\left\| \sum_{n=1}^{\infty}x_{j_n}-\sum_{n=1}^{N}x_{j_n}\right\|<\frac{\epsilon}{2},\quad \sum_{n\geq N+1}\| x_{j_n}\|<\frac{\epsilon}{2}
$$
なるものを取ると、$F\supset \{j_1,\ldots,j_N\}$ なる任意の $F\in \mathcal{F}_J$に対し,
$$
\left\| \sum_{n=1}^{\infty}x_{j_n}-\sum_{j\in F}x_j\right\|
\leq \| \sum_{n=1}^{\infty}x_{j_n}-\sum_{n=1}^{N}x_{j_n}\|+\sum_{n\geq N+1}\| x_{j_n}\|<\epsilon
$$
となるので $\sum_{j\in J}x_j$ は $\sum_{n=1}^{\infty}x_{j_n}$ に収束する。
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