この章では、ノルムと内積について基本的な事柄を述べる。 $\mathbb{F}$ により $\mathbb{R}$ か $\mathbb{C}$ を表すこととする。また $\mathbb{N}=\{1,2,3,\ldots\}$ とする。
$X$ を $\mathbb{F}$ 上の線形空間とする。
$$X\ni x\mapsto \| x\| \in [0,\infty)$$
が $X$ 上のノルムであるとは次が成り立つことを言う。
ノルム空間の線形部分空間はのノルムをそのまま受け継いだノルム空間とみなす。
Banach空間の閉部分空間はBanach空間である。
$\mathbb{F}$ 上の線形空間 $X$ に 乗法 $X\times X\ni (x,y)\mapsto xy\in X$ が定義されており、加法と乗法に関して環をなし、スカラー倍と乗法に関して、
$$
\alpha(xy)=(\alpha x)y=x(\alpha y)\quad(\forall \alpha\in \mathbb{F},\forall x,y\in X)
$$
が成り立つとき、$X$ を $\mathbb{F}$ 上の多元環と言う。
$\mathbb{F}$ 上の多元環 $X$ がノルム空間( resp. Banach 空間)であり、
$$
\| xy\|\leq \| x\|\| y\|\quad(\forall x,y\in X)
$$
が成り立つとき、$X$ を $\mathbb{F}$ 上のノルム環( resp. Banach 環)と言う。
$\mathbb{F}$ 上の多元環 $X$ にさらに対合と呼ばれる演算 $X\ni x\mapsto x^*\in X$ が定義されており、次が成り立つとき $X$ を$*$-環と言う。
$\mathbb{F}$ 上の$*$-環 $X$ がノルム環(resp. Banach環)でもあるとする。
$$
\| x^*\|=\| x\|\quad(\forall x\in X)
$$
が成り立つとき $X$ を $\mathbb{F}$ 上のノルム$*$-環(resp. Banach $*$-環)と言う。
$\mathbb{F}$ 上の$*$-環 $X$ がBanach環でもあり、
$$
\| x^*x\|=\| x\|^2\quad(\forall x\in X)\quad\quad(*)
$$
が成り立つとき $X$ を $\mathbb{F}$ 上の $C^*$-環と言う。また $(*)$ を $C^*$-ノルム条件と言う。任意の $x\in X$ に対し $C^*$-ノルム条件より、
$$
\| x\|^2=\| x^*x\|\leq \| x^*\|\| x\|
$$
であるから $\| x\|\leq\| x^*\|$ 、したがって $\| x\|=\| x^*\|$ である。よって $C^*$-環は特にBanach $*$-環である。