この章では、Fréchet空間における一様有界性定理、開写像定理、閉グラフ定理について述べる。これらの定理は多くのテキストではBanach空間において述べられるが、
超関数とFourier変換、Sobolev空間
における応用のため、より一般的なFréchet空間において述べている。
本稿においては、$\mathbb{F}$ により $\mathbb{R}$ か $\mathbb{C}$ を表すこととする。また $\mathbb{N}=\{1,2,3,\ldots\}$ とする。
$X$ を $\mathbb{F}$ 上の位相線形空間とする。$X$ の点列 $(x_n)_{n\in \mathbb{N}}$ が $X$ のCauchy列であるとは、$0\in X$ の任意の近傍 $V$ に対し $n_0\in\mathbb{N}$ が存在し、
$$
x_n-x_m\in V\quad(\forall n,m\geq n_0)
$$
が成り立つことを言う。
$\mathbb{F}$ 上のセミノルム空間 $X$ が $\mathbb{F}$ 上のFréchet空間であるとは、$X$ のセミノルム位相を誘導するセミノルムの分離族として可算なものが取れ、$X$ の任意のCauchy列が収束することを言う。
Banach空間はFréchet空間である。
$X$ を $\mathbb{F}$ 上のFréchet空間とし、$\{p_n\}_{n\in\mathbb{N}}$ を $X$ のセミノルム位相を誘導する可算分離族とする。$d\colon X\times X\rightarrow[0,\infty)$ を、
$$
d(x,y)\colon=\underset{n\in\mathbb{N}}{\text{max}}\frac{1}{n}\frac{p_n(x-y)}{1+p_n(x-y)}\quad(\forall x,y\in X)\quad\quad(*)
$$
とおくと、次の
命題1
で見るように、$d$ は次を満たす。
定義3 の $(*)$ によって定義される $d\colon X\times X\rightarrow[0,\infty)$ は $(1),(2),(3),(4)$ を満たす。
$(1)$ は自明である。
$$
[0,\infty)\ni t\mapsto \frac{t}{1+t}=1-\frac{1}{1+t}\in [0,1)\quad\quad(*)
$$
は狭義単調増加であるから、任意の $n\in \mathbb{N}$ と任意の $x,y,z\in X$ に対し、
$$
\frac{p_n(x-y)}{1+p_n(x-y)}\leq \frac{p_n(x-y)+p_n(y-z)}{1+p_n(x-y)+p_n(y-z)}
\leq \frac{p_n(x-y)}{1+p_n(x-y)}+\frac{p_n(y-z)}{1+p_n(y-z)}
$$
である。これより $(2)$ が成り立つことが分かる。
$$
B(0,r)=\bigcap_{n\in\mathbb{N}}\left\{x\in X:\frac{1}{n}\frac{p_n(x)}{1+p_n(x)}< r\right\}=\bigcap_{n\in\mathbb{N},nr<1}\left\{x\in X:p_n(x)<\frac{nr}{1-nr}\right\}
$$
であり、$nr<1$ を満たす $n\in\mathbb{N}$ は有限個で、各$\{x\in X:p_n(x)<\frac{nr}{1-nr}\}$ はFréchet空間 $X$の絶対凸な開集合であるから $(3)$ が成り立つ。
任意の $N\in \mathbb{N}$ と $\epsilon\in(0,\infty)$ に対し、
$$
r\colon=\frac{1}{N}\frac{\epsilon}{1+\epsilon}
$$
とおくと、$(*)$ が狭義単調増加であることから、
$$
B(0,r)\subset \bigcap_{n=1}^{N}\{x\in X:p_n(x)<\epsilon\}
$$
が成り立つ。よって
命題1
の $(3)$ より $\{B(0,r)\}_{r\in (0,\infty)}$ はFréchet空間 $X$ における $0\in X$ の基本近傍系である。$d$ は平行移動不変であるから $d$ が誘導する距離位相とFréchet空間 $X$ の位相は一致する。