原論文の原注 (6) は、比較定理の証明の核である消滅条件 (8) を「$X$ がコンパクトな代数多様体で $X-Y$ が affine」という仮定のもとで任意の連接層について示し(式 (8′))、あわせて $Y$ にだけ極をもつ有理型切断が代数的な切断にほかならないこと(式 (8″))を示す。本頁はこの二つを GAGA と affine 射の議論で証明し、それを使って Theorem 1 が Corollary の場合 a) に含まれること、および特異点解消の大域版と正規交叉での明示計算だけで Theorem 1 が Theorem 2 にも Grauert–Remmert の定理にも依らずに証明できることを示す。最後に、原注 (6) が残した「$X$ がコンパクトで $U$ が Stein なら (8′) は成り立つか」という問題を記録する。
前提知識: Serre の GAGA, アフィン射, 特異点解消, 帰納極限, スペクトル系列
本頁では原注 (6) にならい、添字 $0$ を代数側に付ける。$X_0$ を $\mathbb C$ 上固有(完備)な被約スキーム、$Y_0\subset X_0$ を局所的に 1 個の方程式で定義される閉部分集合、$U_0=X_0-Y_0$ を $X_0$ で稠密な開部分スキーム、$f_0\colon U_0\to X_0$ を包含とし、解析化を $X=X_0^h$、$Y=Y_0^h$、$U=U_0^h$、$f\colon U\to X$ と書く。$X$ 上の連接層 $\mathcal E$ に対し、$Y$ に極をもつ有理型切断の層 $\mathcal E(*Y)=\varinjlim_n\mathcal{H}om_{\mathcal O_X}(\mathcal J^n,\mathcal E)$($\mathcal J$ は零点集合が $Y$ の連接イデアル層。本書『2-2 極をもつ微分形式と局所比較定理』)と複体 $\Omega^\bullet_X(*Y)$ を使う。Theorem 1 を述べるときは、そこでの affine スキーム $X$ を $U_0$ と書く。
本頁の主結果は次の五つである。
原論文の本文は Theorem 1 を、affine 多様体 $U_0$ の射影閉包 $\bar X_0$ の上で、局所比較定理 Theorem 2 と消滅条件 (8) から大域比較 (9) を出す道(Corollary の場合 a))で証明する。この道では $\bar X_0$ が $Y_0$ に沿って特異でありうるため、Theorem 2 の証明に解析空間の局所的な特異点解消と Grauert–Remmert の比較定理が要る(本書『2-3 特異点解消と Grauert–Remmert による証明』)。原論文はその使い方を「a little bit subtle」と評している(原注 (6)、印字 p. 98)。
1963 年 11 月に付けられた原注 (6) は、この道に二つのことを加える。第一に、消滅 (8) は射影性と豊富性から Serre の消滅定理で出す(場合 a))代わりに、「$X$ がコンパクトな代数多様体で $U=X-Y$ が affine」という仮定 a′) から任意の連接層について出せる(式 (8′))。証明は、コンパクト性でコホモロジーを帰納極限と入れ替え、GAGA で各項を代数側に移し、代数側の極限 $f_{0*}(\mathcal E_0|_{U_0})$ を affine 射と affine スキーム上の消滅で処理する六段である。第二に、同じ計算の $p=0$ の場合が式 (8″)、すなわち「$Y$ に極をもつ有理型切断は代数的な有理切断にほかならない」を与える。これは一見付随的な主張だが、本文の「Theorem 1 is contained in part a)」の一文が暗に必要とする戻り道である。(9) は射影閉包の上の有理型形式の大域切断のコホモロジーを $H^n(U,\mathbb C)$ に写すので、Theorem 1 を得るには、その大域切断の複体が $U_0$ 上の代数的な微分形式の複体と一致していなければならない。本文はそれを書いておらず、(8″) がそれを供給する。
原注 (6) はさらに、この二つを使えば Theorem 1 が Theorem 2 を経ずに証明できることを指摘する。Hironaka の解消 Hir64 を代数的スキームに大域的に当てて $U_0\cong X_0-Y_0'$($X_0$ は射影的で滑らか、$Y_0'$ は正規交叉因子)と書けば、正規交叉に沿う極の局所計算(Atiyah–Hodge AH55 の補題の型。本書『2-3 特異点解消と Grauert–Remmert による証明』で証明する)で (7) が同型になり、(8′) と (8″) で大域化できる。この経路は解析空間の局所解消も Grauert–Remmert の定理も使わない。本書の基準では、Theorem 1 の証明のうち外部から引く定理が最も少ない経路である。
原注 (6) の末尾には問題が残されている。(8′) の証明はコンパクト性と代数性を GAGA で使うが、結論の形は「$U$ が Stein なら」という解析的な仮定でも意味をもつ。$X$ がコンパクトで $U$ が Stein なら (8′) は成り立つか。$X$ 自身が Stein の場合(Corollary の場合 b))は、本書『2-2 極をもつ微分形式と局所比較定理』が示すとおり消滅 (8) は偽である。コンパクトな $X$ でどうなるかは原論文の問いのままで、本頁もそれを判定しない。
本頁で使う層と写像を、本書『2-2 極をもつ微分形式と局所比較定理』から短く繰り返す。$\mathcal J$ の字体は、原論文が原注 (5)(6) で $\mathfrak J$、本文で $\mathcal J$ と印字するもので、本書は $\mathcal J$ に統一する(記号表)。
$X$ を被約複素解析空間、$Y\subset X$ を局所的に 1 個の正則関数 $\varphi$ の零点集合として書ける閉解析的部分集合、$U=X-Y$ を稠密な開集合、$f\colon U\to X$ を包含とする。$X$ 上の連接層 $\mathcal E$ に対し、零点集合が $Y$ の連接イデアル層 $\mathcal J$ をとり
$$\mathcal E(*Y)=\varinjlim_n\mathcal{H}om_{\mathcal O_X}(\mathcal J^n,\mathcal E)$$
とおく(推移写像は $\mathcal J^{n+1}\subset\mathcal J^n$ による制限)。これは $f_*(\mathcal E|_U)$ の部分層で、局所的には $\omega'/\varphi^n$($\omega'$ は $\mathcal E$ の切断、$n\ge0$)と書ける $U$ 上の切断からなり、$\mathcal J$ の選び方に依らない。$\Omega^p_X$ を $X$ の Kähler 微分の層の $p$ 次外冪(連接層。$X$ の非特異な点では正則 $p$ 形式の層)とし、$\Omega^p_X(*Y)$ を $\mathcal E=\Omega^p_X$ の場合とする。$U$ 上同型な連接層の射 $\mathcal E\to\Omega^p_X$ があれば $\mathcal E(*Y)=\Omega^p_X(*Y)$ である(本書『2-2 極をもつ微分形式と局所比較定理』の命題(有理型切断の層の帰納極限表示))。外微分は $\Omega^\bullet_X(*Y)\subset f_*\Omega^\bullet_U$ を保つ。$U$ を非特異とし、$L^\bullet$ を $\Omega^\bullet_U$ の Godement 分解の総複体とすると、正則 Poincaré の補題により $\mathbb C_U\to\Omega^\bullet_U\to L^\bullet$ は $\mathbb C_U$ の flasque 分解で、複体の射
$$(10)\qquad\Omega^\bullet_X(*Y)\hookrightarrow f_*\Omega^\bullet_U\longrightarrow f_*L^\bullet$$
がコホモロジー層に誘導する $\mathcal H^q(\Omega^\bullet_X(*Y))\to\mathcal H^q(f_*L^\bullet)=R^qf_*\mathbb C_U$ が原論文の写像 (7)、大域切断のコホモロジーに誘導する
$$(9)\qquad H^q\Gamma(X,\Omega^\bullet_X(*Y))\longrightarrow H^q\Gamma(U,L^\bullet)=H^q(U,\mathbb C)$$
が写像 (9) である。本書『2-2 極をもつ微分形式と局所比較定理』は $\mathbb C_U$ の入射分解で (7)・(9) を定めるが、flasque 分解 $L^\bullet$ から入射分解への分解の射(鎖ホモトピーを除いて一意)を合成すれば同じ写像を得るので、本頁は Godement 分解で述べる。消滅条件 (8) とは $H^p(X,\Omega^q_X(*Y))=0$($p>0$、すべての $q$)をいう。
$\mathcal E(*Y)$ は連接でないが、連接層 $\mathcal{H}om(\mathcal J^n,\mathcal E)$ の帰納極限である。本頁の議論はすべて、この極限をコホモロジーの外に出し、各項に GAGA を当てる、という形をとる。そのために引く事実を並べる。
次の事実は証明せずに引用する。出典は主に本書第 0 章・第 2 章と Ser56、Car57、God58、Har77、Stacks で、該当箇所の番号は本頁では確認していない。
原注 (6) の順序どおり、消滅 (8′) から始める。証明は六段で、原論文が一行ずつ書いている段に、極限の同定と affine 射であることの根拠を足す。
$X_0$ を $\mathbb C$ 上固有な被約スキーム、$Y_0\subset X_0$ を局所的に 1 個の方程式で定義される閉部分集合で、$U_0=X_0-Y_0$ が affine なものとし、$X=X_0^h$、$Y=Y_0^h$ とする($U_0$ の稠密性は要らない)。$X$ 上の任意の連接層 $\mathcal E$ について
$$(8')\qquad H^p(X,\mathcal E(*Y))=0\qquad(p>0)$$
が成り立つ。とくに $U=U_0^h$ が非特異なら、消滅条件 (8) が成り立つ。
段 1(代数化).引用する事実 1 により、$\mathcal E\cong\mathcal E_0^h$ となる $X_0$ 上の連接層 $\mathcal E_0$ がある。$\mathcal J_0$ を $Y_0$(被約構造)のイデアル層とすると、$\mathcal J=\mathcal J_0^h$ は零点集合が $Y$ の連接イデアル層で、$\mathcal{H}om_{\mathcal O_X}(\mathcal J^n,\mathcal E)=\mathcal{H}om_{\mathcal O_{X_0}}(\mathcal J_0^n,\mathcal E_0)^h$ である。$\mathcal E(*Y)$ は $\mathcal J$ の選び方に依らないので、この $\mathcal J$ で計算してよい。
段 2(コンパクト性による極限の交換).$X$ はコンパクト Hausdorff なので、引用する事実 2 により
$$H^p(X,\mathcal E(*Y))=\varinjlim_nH^p\bigl(X,\mathcal{H}om(\mathcal J^n,\mathcal E)\bigr).$$
段 3(GAGA).各項に引用する事実 1 を当てて $H^p(X,\mathcal{H}om(\mathcal J_0^n,\mathcal E_0)^h)=H^p(X_0,\mathcal{H}om(\mathcal J_0^n,\mathcal E_0))$。
段 4(代数側の極限).$X_0$ はネーター的なので、引用する事実 2 により $\varinjlim_nH^p(X_0,\mathcal{H}om(\mathcal J_0^n,\mathcal E_0))=H^p(X_0,\varinjlim_n\mathcal{H}om(\mathcal J_0^n,\mathcal E_0))$。この極限を同定する。$U_0$ 上 $\mathcal J_0^n=\mathcal O_{U_0}$ なので、$u\mapsto u(1)|_{U_0}$ は層の射 $\varinjlim_n\mathcal{H}om(\mathcal J_0^n,\mathcal E_0)\to f_{0*}(\mathcal E_0|_{U_0})$ を定める。これが同型であることを局所的に示す。$X_0$ の affine 開集合 $V=\operatorname{Spec}A$ で $Y_0\cap V=V(t)$($t\in A$)となるものをとり、$\mathcal E_0|_V=\tilde M$、$\mathcal J_0|_V=\tilde I$ とする。$\sqrt I=\sqrt{(t)}$ なので、引用する事実 4 により $t^a\in I$、$I^b\subset(t)$ となる $a,b$ があり、帰納系 $\{\operatorname{Hom}_A(I^n,M)\}_n$ と $\{\operatorname{Hom}_A((t^n),M)\}_n$ は互いに共終で、極限は等しく、$M_t$ への写像 $u\mapsto u(1)|_{D(t)}$ とも両立する。よって $I=(t)$ としてよい。$t^nA\cong A/\operatorname{Ann}(t^n)$ なので、$u\mapsto u(t^n)$ により $\operatorname{Hom}_A((t^n),M)=\{m\in M:\operatorname{Ann}(t^n)m=0\}$ である。$A$ はネーター的なので増大列 $\operatorname{Ann}(t)\subset\operatorname{Ann}(t^2)\subset\cdots$ は $n\ge n_0$ で $I'=\operatorname{Ann}(t^{n_0})$ に停まり、$M'=\{m\in M:I'm=0\}$ とおくと $n\ge n_0$ で $\operatorname{Hom}_A((t^n),M)=M'$ である。制限写像 $\operatorname{Hom}((t^n),M)\to\operatorname{Hom}((t^{n+1}),M)$ は $u(t^{n+1})=t\,u(t^n)$ により、この同一視のもとで $M'\xrightarrow{\ t\ }M'$ になる。ゆえに極限は $\varinjlim(M'\xrightarrow{t}M'\xrightarrow{t}\cdots)=M'_t$ である。$I't^{n_0}=0$ から $t^{n_0}M\subset M'$ なので、包含 $M'\subset M$ が誘導する $M'_t\to M_t$ は単射(局所化は完全)かつ全射($m/t^k=t^{n_0}m/t^{k+n_0}$)で、合成は $u\mapsto u(t^n)/t^n=u(1)|_{D(t)}$ である。引用する事実 4 により $M_t=\Gamma(D(t),\tilde M)=\Gamma(V\cap U_0,\mathcal E_0)$ だから、上の射は $V$ 上同型であり、層として
$$\varinjlim_n\mathcal{H}om_{\mathcal O_{X_0}}(\mathcal J_0^n,\mathcal E_0)=f_{0*}(\mathcal E_0|_{U_0})$$
を得る。$t$ が零因子かどうか、$U_0$ が稠密かどうかは使わない。
段 5(affine 射).$Y_0$ は局所 1 方程式なので $f_0$ は affine 射である(引用する事実 3。原論文は「$U_0$ が affine で $X_0$ が完備ゆえ分離的」を理由に挙げ、それでも同じ結論が出る)。$\mathcal E_0|_{U_0}$ は準連接なので $R^qf_{0*}(\mathcal E_0|_{U_0})=0$($q>0$)、したがって $H^p(X_0,f_{0*}(\mathcal E_0|_{U_0}))=H^p(U_0,\mathcal E_0|_{U_0})$。
段 6(affine 上の消滅).$U_0$ は affine なので $p>0$ で $H^p(U_0,\mathcal E_0|_{U_0})=0$。段 2〜6 をつなげて (8′) を得る。
最後の主張.$U$ が非特異のとき $\mathcal E_0=\Omega^q_{X_0/\mathbb C}$ とおくと、引用する事実 6 の射 $\mathcal E_0^h\to\Omega^q_X$ は $U$ 上同型なので、$\Omega^q_X(*Y)=\mathcal E_0^h(*Y)$(定義の延長の取り替え)であり、上により $H^p(X,\Omega^q_X(*Y))=0$($p>0$)。
六段のうち、解析側に留まるのは段 2 だけで、段 3 で代数側に移ってからは連接層コホモロジーの標準的な事実しか使わない。仮定のどこがどの段で要るかを注意しておく。
コンパクト性は段 2(極限との交換)で、代数性は段 1・3(GAGA)で、$Y_0$ の局所 1 方程式性は段 4(極限の同定)と段 5(affine 射)で、$U_0$ の affine 性は段 5・6 で使う(段 5 は原論文の理由づけでは affine 性に、本書の理由づけでは局所 1 方程式性による)。Corollary の場合 a)($\bar X_0$ 射影的、$Y_0$ 豊富因子の台)は、豊富因子の補集合が affine なので(引用する事実 3)a′) の特別な場合である。場合 a) の証明(本書『2-2 極をもつ微分形式と局所比較定理』)は段 4 以降を Serre の消滅定理で置き換えたもので、$\varinjlim\mathcal E(nY)$ の各項が $n$ の大きいところで消えることを使う。上の証明では各項は消えず、極限をとって初めて一つの層 $f_{0*}(\mathcal E_0|_{U_0})$ になり、そのコホモロジーが affine 性で消える。原論文が印字する段 5 の式は $H^p(X_0\,(f_0)_*(\mathcal E_0|U_0))$ とカンマが脱落しているが、内容は上のとおりである。$U_0$ の稠密性は原論文の a′) には書かれておらず、本頁の設定(Corollary を引き継ぎ $U$ は稠密)にはあるが、上の証明のどの段でも使わない。段 4 の同定は $t$ が零因子であっても成り立つ。
段 2〜5 を $p=0$ で読み直すと、大域切断についての等式が得られる。それが (8″) である。
上の定理(affine 補集合上の消滅)の設定で $\mathcal E=\mathcal E_0^h$ とする。$U_0$ 上の切断 $s\in\Gamma(U_0,\mathcal E_0)$ にその解析化 $s^h\in\Gamma(U,\mathcal E|_U)$ を対応させる写像は単射で、その像は $\Gamma(U,\mathcal E|_U)$ の部分空間 $\Gamma(X,\mathcal E(*Y))$ に一致する:
$$(8'')\qquad H^0(X,\mathcal E(*Y))\cong H^0(U_0,\mathcal E_0|_{U_0}).$$
すなわち、$X$ 上の $\mathcal E$ の有理型切断で $Y$ にだけ極をもち $U$ 上正則なものは、$U_0$ 上正則な $\mathcal E_0$ の有理切断にほかならない。
上の定理の段 2〜5 を $p=0$ で読む(段 2 は引用する事実 2 の $q=0$ の場合、段 5 は $f_{0*}$ の定義そのもの):
$$\Gamma(X,\mathcal E(*Y))=\varinjlim_n\Gamma\bigl(X,\mathcal{H}om(\mathcal J^n,\mathcal E)\bigr)=\varinjlim_n\Gamma\bigl(X_0,\mathcal{H}om(\mathcal J_0^n,\mathcal E_0)\bigr)=\Gamma\bigl(X_0,f_{0*}(\mathcal E_0|_{U_0})\bigr)=\Gamma(U_0,\mathcal E_0|_{U_0}).$$
合成が解析化であることを確かめる。左端の等号は本書『2-2 極をもつ微分形式と局所比較定理』の帰納極限表示で、$\mathcal J^n$ 上の準同型 $u$ に $U$ 上の切断 $u(1)|_U$ を対応させる写像である。二番目の等号は GAGA の同型 $\Gamma(X_0,\mathcal F_0)\to\Gamma(X,\mathcal F_0^h)$、すなわち切断の解析化 $u_0\mapsto u_0^h$ であり、三番目と四番目の等号は段 4 の射 $u_0\mapsto u_0(1)|_{U_0}$ と $f_{0*}$ の定義である。切断の解析化は制限および $1$ での評価と両立するので $(u_0(1)|_{U_0})^h=u_0^h(1)|_U$ であり、したがって右端から左端への写像 $\Gamma(U_0,\mathcal E_0)\to\Gamma(X,\mathcal E(*Y))\subset\Gamma(U,\mathcal E|_U)$ は $s\mapsto s^h$ である。これが全単射なので、とくに単射である。
(8″) の右辺について、原論文は直後の言い換えで「the sections of $\mathcal E|U_0$ on $U_0$」と印字するが、$\mathcal E$ は解析層なので $\mathcal E_0|_{U_0}$ の誤植と読む。この系の内容を、解析側の言葉で言い直しておく。
解析側では $\mathcal E(*Y)$ は $f_*(\mathcal E|_U)$ より真に小さい。たとえば $X=\mathbb P^1(\mathbb C)$、$Y=\{\infty\}$ では $\Gamma(X,f_*\mathcal O_U)$ は整関数全体、$\Gamma(X,\mathcal O_X(*Y))$ は $\infty$ に高々極をもつ整関数、すなわち多項式全体である。代数側では段 4 により $\mathcal O_{X_0}(*Y_0)=f_{0*}\mathcal O_{U_0}$ で、両者に差はない。(8″) が言うのは、有理型という条件が真性特異点を排し、残った切断はすべて代数的であるということで、これは GAGA の $H^0$ の場合($\Gamma(X_0,\mathcal F_0)=\Gamma(X,\mathcal F_0^h)$)を極限に沿って言い直したものである。$X$ のコンパクト性を外すとこの主張は成り立たない($X=\mathbb C$、$Y=\{0\}$ では $\Gamma(X,\mathcal O_X(*Y))$ は $0$ にだけ極をもつ有理型関数全体 $\mathcal O(\mathbb C)[z^{-1}]$ で、$\mathbb C[z,z^{-1}]$ より真に大きい)。
(8′) と (8″) は、Theorem 1 の証明のどちらの経路でも最後の段を担う。その前に、局所比較 (7) と消滅 (8) から大域比較 (9) を出す段(原論文が「is standard」と書く段、印字 p. 98)を補題として閉じておく。Corollary の証明と同じ議論だが、Theorem 2 を仮定に含めない形で述べる。
$X$、$Y$、$U$ を定義(有理型切断の層と写像 (9))のとおりとし、$U$ は非特異とする。すべての $q$ で写像 (7) が同型であり、かつ消滅条件 (8) が成り立つなら、すべての $q$ で写像 (9) は同型である。
段 1(右辺).$f_*L^\bullet$ は flasque な項からなる複体なので、引用する事実 10 により $\mathbf H^n(X,f_*L^\bullet)=H^n\Gamma(X,f_*L^\bullet)=H^n\Gamma(U,L^\bullet)=H^n(U,\mathbb C)$。
段 2(擬同型).(7) がすべての $q$ で同型なので、(10) は擬同型であり、超コホモロジーの同型 $\mathbf H^n(X,\Omega^\bullet_X(*Y))\to\mathbf H^n(X,f_*L^\bullet)$ を誘導する。
段 3(左辺).$K^\bullet=\Omega^\bullet_X(*Y)$ のスペクトル系列 $E_1^{p,q}=H^q(X,\Omega^p_X(*Y))$ は (8) により $q=0$ の行だけになるので、辺写像 $H^n\Gamma(X,\Omega^\bullet_X(*Y))\to\mathbf H^n(X,\Omega^\bullet_X(*Y))$ は同型である。
段 4(合成).辺写像は複体の射について自然なので、段 3 の辺写像、段 2 の同型、段 1 の同型の合成は、(10) が大域切断のコホモロジーに誘導する写像、すなわち (9) に等しい。
補題の二つの仮定のうち、(8) は上の定理(affine 補集合上の消滅)が与える。(7) の同型を Theorem 2 から取れば本文の経路、正規交叉の明示計算から取れば原注 (6) の経路になる。まず本文の経路を閉じる。
$U_0$ を $\mathbb C$ 上有限型で滑らかな affine スキーム、$\bar X_0$ を $\mathbb A^N_{\mathbb C}\subset\mathbb P^N_{\mathbb C}$ での射影閉包、$Y_0=\bar X_0-U_0$、$X=\bar X_0^h$、$Y=Y_0^h$、$U=U_0^h$ とする。
段 1(射影閉包).引用する事実 5 により $\bar X_0$ は射影的で、$U_0=\bar X_0\cap\mathbb A^N$ は稠密開、$Y_0=\bar X_0\cap H_\infty$ は $\mathcal O(1)|_{\bar X_0}$ の切断 $x_0$ の零点集合で、$\mathcal O(1)|_{\bar X_0}$ は豊富である。$U_0$ は滑らかなので被約で、被約構造を入れた $\bar X_0$ の既約成分は $U_0$ の既約成分の閉包だから、どれも $H_\infty$ に含まれない。ゆえに $x_0$ はどの成分の上でも恒等的に $0$ でなく、局所的に非零因子である。したがって $D_0$ は有効 Cartier 因子で $\mathcal O(D_0)=\mathcal O(1)|_{\bar X_0}$ は豊富、$Y_0=\operatorname{Supp}D_0$ は局所 1 方程式である。解析化:引用する事実 1 により $X$ は被約でコンパクト、$x_0$ の局所方程式の解析化は非零因子で $Y$ を定め、被約な $X$ の上で非零因子の零点集合は内点をもたないので $U$ は稠密、引用する事実 6 により $U$ は複素多様体である。
段 2((8″) の適用).$\bar X_0$ は固有、$U_0$ は affine で稠密、$Y_0$ は局所 1 方程式なので、上の系(有理型切断の代数性)を $\mathcal E_0=\Omega^p_{\bar X_0/\mathbb C}$、$\mathcal E=\mathcal E_0^h$ に当てて $\Gamma(X,\mathcal E(*Y))=\Gamma(U_0,\Omega^p_{U_0/\mathbb C})$($\Omega^p_{\bar X_0}|_{U_0}=\Omega^p_{U_0}$)。引用する事実 6 の射 $\mathcal E\to\Omega^p_X$ は $U$ 上同型なので $\mathcal E(*Y)=\Omega^p_X(*Y)$ である。同定は切断の解析化なので $d$ と両立し、複体の同型 $\Gamma(X,\Omega^\bullet_X(*Y))\cong\Gamma(U_0,\Omega^\bullet_{U_0/\mathbb C})$ を得る。
段 3(標準写像との一致).段 2 の同定は、代数的な閉形式 $\omega$ を正則閉形式 $\omega^h\in\Gamma(U,\Omega^\bullet_U)$ とみなす写像であり、(9) はそれを $\Gamma(U,\Omega^\bullet_U)\to\Gamma(U,L^\bullet)$ で $H^n(U,\mathbb C)$ に送る写像である。$\bar\rho_{U_0}$ は、引用する事実 11 により、$\omega$ を $\Omega^\bullet_{U_0}$ の Godement 分解の大域切断に送り($\varepsilon$)、解析化が誘導する分解の射 $\psi$ で $\Omega^\bullet_U$ の Godement 分解 $L^\bullet$ の大域切断に移し、$\mathbb C_U\to\Omega^\bullet_U\to L^\bullet$ が flasque 分解であることで $H^n(U,\mathbb C)$ に落とす写像である。$\psi\circ\varepsilon(\omega)=\varepsilon(\omega^h)$ であり、$\varepsilon(\omega^h)$ は増大射 $\Gamma(U,\Omega^\bullet_U)\to\Gamma(U,L^\bullet)$ による $\omega^h$ の像そのものなので、どちらも $\omega^h$ の類を同じ同一視 $H^n\Gamma(U,L^\bullet)=H^n(U,\mathbb C)$ で送る写像であり一致する。定義(有理型切断の層と写像 (9))の $L^\bullet$ と引用する事実 11 の $L^\bullet$ は同じ Godement 分解である。
段 4(Theorem 1).段 1 と引用する事実 7 により (7) は同型で (8) が成り立ち、上の補題(局所比較と消滅から大域比較へ)により (9) は同型である。段 2・3 により $\bar\rho_{U_0}$ は同型である。
これで、本文の一文「Theorem 1 is contained in part a)」が、(8″) を補えば閉じることが分かった。ただし $\bar X_0$ は一般に $Y_0$ に沿って特異であり、(7) の同型はそこで Theorem 2 の全力を要する。原注 (6) の経路は、特異な $\bar X_0$ を最初から避ける。
$U_0$ を $\mathbb C$ 上有限型で滑らかな affine スキームとする。Hironaka の解消(引用する事実 9)により、射影的で滑らかな $X_0$ と強正規交叉因子 $Y_0'\subset X_0$ で $U_0\cong X_0-Y_0'$ となるものをとる。$X=X_0^h$、$Y'=Y_0'^h$、$U=U_0^h$ とすると、
段 1(解消).引用する事実 5 の射影閉包 $\bar X_0$ と $Y_0=\bar X_0-U_0$ に引用する事実 9 を当てる。$U_0$ は滑らかなので、射影的双有理射 $g\colon X_0\to\bar X_0$ で、$X_0$ が滑らかで射影的、$g$ が $U_0$ 上同型、$Y_0'=g^{-1}(Y_0)$ が強正規交叉因子となるものがある。$U_0\cong X_0-Y_0'$ は $X_0$ で稠密であり、$Y_0'$ は因子なので局所的に 1 個の非零因子で定義される。
段 2(局所比較).引用する事実 6 により $X$ は複素多様体で、$Y'$ は各点の局所座標で $z_1\cdots z_r=0$ と書ける正規交叉因子である。引用する事実 8 により (7) は同型である。ここでは Theorem 2 を使わない。
段 3(消滅).$X_0$ は固有で被約、$Y_0'$ は局所 1 方程式、$U_0$ は affine で稠密なので、上の定理(affine 補集合上の消滅)の最後の主張により (8) が成り立つ。$X$ は非特異なので $\Omega^q_X(*Y')$ は $\mathcal E=\Omega^q_X=(\Omega^q_{X_0})^h$ について直接定義される。
段 4(大域比較と同定).段 2・3 と上の補題により (9) は同型である。上の系を $\mathcal E_0=\Omega^p_{X_0/\mathbb C}$ に当てて $\Gamma(X,\Omega^p_X(*Y'))=\Gamma(U_0,\Omega^p_{U_0/\mathbb C})$、$d$ と両立する。合成が $\bar\rho_{U_0}$ であることは、上の定理(Theorem 1 の Corollary a) への帰着)の段 3 と同じ議論である(そこでは射影閉包の特異性を使っていない)。
二つの経路を比べておく。原注 (7) が述べる関係も、ここに記録する。
経路 I(本文)は、特異でありうる $\bar X_0$ の上で Theorem 2 を使う。Theorem 2 の証明は、解析空間の局所解消で正規交叉に直し、明示計算で (7) を示したうえで解消 $g$ に沿って戻り、戻りの段 $g_*\Omega^\bullet_{X'}(*Y')\cong\Omega^\bullet_X(*Y)$ と $R^qg_*$ の消滅に Grauert–Remmert の比較定理が要る(本書『2-3 特異点解消と Grauert–Remmert による証明』)。経路 II(原注 (6))は、代数的スキームの大域解消で $U_0$ の滑らかな完備化 $X_0$ を最初にとり、特異な $\bar X_0$ を経由しない。外部から引くのは Hironaka の解消(代数的・大域版)だけである。原注 (7) は、Theorem 2 の証明が原注 (6) の証明で GAGA を Grauert–Remmert に置き換えたものであること、Grauert–Remmert の定理は底が 1 点の GAGA を任意の底に相対化したものと見るべきこと、それが $g_*\Omega^\bullet_{X'}(*Y')\cong\Omega^\bullet_X(*Y)$ の証明に暗に含まれ、(8″) に対応することを述べる(印字 p. 99)。実際、上の定理(affine 補集合上の消滅)の六段は、本書『2-3 特異点解消と Grauert–Remmert による証明』の $R^qg_*$ の消滅の証明と、底を $\operatorname{Spec}\mathbb C$ から局所環のスペクトルに替えただけで同じ形をしている。
原注 (6) の末尾は、(8′) の仮定から代数性を外した問いで終わる。原論文の状態は問題で、本書も判定しない。
$X$ をコンパクトな被約複素解析空間、$Y$ を局所 1 方程式の閉解析的部分集合、$U=X-Y$ を Stein 空間とする。$X$ 上の任意の連接層 $\mathcal E$ について (8′) $H^p(X,\mathcal E(*Y))=0$($p>0$)は成り立つか。成り立てば、(7) が同型な $(X,Y)$ について上の補題により (9) が同型になる。原論文はこれを問題として残し(印字 p. 98)、本書も判定しない。上の定理の証明では、コンパクト性は段 2 で、代数性は段 1・3 で、affine 性は段 5・6 で使うので、代数性を外すとどの段も残らない。Corollary の場合 b)($X$ 自身が Stein)では消滅 (8) は偽であり($X=\mathbb C^2$、$Y=\{z_1=0\}$ で $H^1(X,\mathcal O_X(*Y))\ne0$。本書『2-2 極をもつ微分形式と局所比較定理』)、障害は極の位数が有界でない切断の列にある。その反例は $X$ がコンパクトでないので、この問題には触れない。コンパクトな $X$ では大域切断の極の位数は有界で、場合 b) の障害はそのままでは現れないが、それで消滅が出るかどうかは本書の知るところではない。
以下では (8′)・(8″) を最も簡単な場合に直接確かめ、Theorem 1 の別証明で解消が実際に要る場合を見たうえで、$U$ が affine でないと何が破れるかを示す。
$X_0=\mathbb P^1_{\mathbb C}$、$Y_0=\{\infty\}$、$U_0=\mathbb A^1=\operatorname{Spec}\mathbb C[t]$ とする。$\mathcal J_0=\mathcal O(-1)$ なので $\mathcal O(*Y_0)=\varinjlim_n\mathcal O(n)$、$\Omega^1(*Y_0)=\varinjlim_n\mathcal O(n-2)$ である。$H^1(\mathbb P^1,\mathcal O(m))=0$($m\ge-1$)なので、極限は $H^1$ で $0$ になり、(8′) は GAGA を通さずに直接確かめられる。(8″):$\Gamma(\mathbb P^1,\mathcal O(*Y_0))=\varinjlim_n\Gamma(\mathcal O(n))=\mathbb C[t]$、$\Gamma(\Omega^1(*Y_0))=\mathbb C[t]\,dt$ で、これは $U_0$ 上の代数的な関数と 1 形式である。解析側では、$\mathbb P^1(\mathbb C)$ 上の有理型関数で $\infty$ にだけ極をもつものは多項式である(Liouville の定理の型)。(9):複体 $\mathbb C[t]\to\mathbb C[t]\,dt$ のコホモロジーは $\mathbb C$、$0$ で、$H^\bullet(\mathbb C,\mathbb C)$ と一致する。$Y_0$ は正規交叉因子なので、これは上の定理(大域解消による Theorem 1 の別証明)の解消が恒等写像で済む場合でもある。
$X_0=\mathbb P^n_{\mathbb C}$、$Y_0=H$ を超平面、$U_0=\mathbb A^n$ とする。$\mathcal O(*H)=\varinjlim_m\mathcal O(m)$ で、$H^p(\mathbb P^n,\mathcal O(m))$ は $0< p< n$ ですべての $m$ について $0$、$p=n$ では $m\ge-n$ で $0$ なので、$H^p(\mathbb P^n,\mathcal O(*H))=\varinjlim_mH^p(\mathcal O(m))=0$($p>0$)である。一般の連接層では $\mathcal E(*H)=\varinjlim\mathcal E(m)$ の各項が Serre の消滅定理で消える。これは場合 a) の道であり、上の定理(affine 補集合上の消滅)の道は代わりに $U_0=\mathbb A^n$ の affine 性を使う。(8″) により $\Gamma(\mathbb P^n,\Omega^p(*H))$ は多項式係数の $p$ 形式であり、(9) は多項式 de Rham 複体のコホモロジーが $H^\bullet(\mathbb C^n,\mathbb C)=\mathbb C$(次数 $0$ のみ)であること、すなわち代数的 Poincaré の補題(本書『1-1 de Rham 複体と超コホモロジー』)に帰着する。
次は $U_0$ が affine 直線でない最も簡単な場合で、(9) が非自明なコホモロジーを与える。
$E\subset\mathbb P^2_{\mathbb C}$ を $y^2=p(x)=4x^3-g_2x-g_3$(判別式 $\ne0$)で定まる楕円曲線、$O$ を無限遠点、$U_0=E-\{O\}=\operatorname{Spec}A$、$A=\mathbb C[x,y]/(y^2-p(x))$ とする。$U_0$ は affine で、$Y_0=\{O\}$ は滑らかな曲線上の点だから局所 1 方程式である。(8′) を $\mathcal O_E$ について直接確かめる:$\mathcal O_E(*O)=\varinjlim_n\mathcal O_E(nO)$ で、Serre 双対性と $\Omega^1_E\cong\mathcal O_E$ により $H^1(E,\mathcal O_E(nO))\cong H^0(E,\mathcal O_E(-nO))^\vee=0$($n\ge1$)である。$\Omega^1_E(*O)\cong\mathcal O_E(*O)$ も同じ。(8″):$\Gamma(E,\mathcal O_E(*O))=A$、$\Gamma(E,\Omega^1_E(*O))=A\,\omega$($\omega=dx/y$。$2y\,dy=p'(x)\,dx$ と $(p,p')=1$ により $\Omega^1_A$ は $\omega$ で生成される自由加群)。(9):$E^h-\{O\}$ は 1 点を除いた複素トーラスで、二つの円周の一点和にホモトピー同値だから $H^0=\mathbb C$、$H^1=\mathbb C^2$、$H^2=0$ である。代数側を直接計算する。$A=\mathbb C[x]\oplus\mathbb C[x]y$、$dx=y\omega$、$dy=\tfrac12p'(x)\omega$ なので $d(\mathbb C[x])=\mathbb C[x]y\omega$、$d(x^my)=\bigl(mx^{m-1}p(x)+\tfrac12x^mp'(x)\bigr)\omega$ で、右辺の $x$ についての最高次の項は $(4m+6)x^{m+2}\omega$ である。$4m+6\ne0$ なので、$\mathbb C[x]\omega$ の中で $d(\mathbb C[x]y)$ は次数 $2$ 以上の単項式を(低次の項を除いて)すべて含み、次数 $1$ 以下の元を含まない。ゆえに
$$H^1\bigl(\Gamma(U_0,\Omega^\bullet_{U_0})\bigr)=\mathbb C\,\omega\oplus\mathbb C\,\eta,\qquad\eta=x\,dx/y$$
で次元 $2$、$H^0=\mathbb C$($d(a(x)+b(x)y)=0$ なら最高次の比較で $b=0$、$a$ は定数)、$H^2=0$ であり、(9) の両辺の次元が一致する。$\omega$ と $\eta$ は原注 (10) の第一種・第二種の微分で、その周期は本書『3-3 $k$ 構造と周期』で扱う。
Theorem 1 の別証明で解消が恒等写像で済まない最小の例を挙げる。射影閉包が無限遠で特異になる affine 曲線である。
$U_0=\operatorname{Spec}A$、$A=\mathbb C[x,y]/(y^2-x^5-1)$ とする。$\mathbb P^2$ での射影閉包 $\bar X_0$ は $y^2z^3=x^5+z^5$ で、無限遠点 $[0:1:0]$ での局所方程式 $z^3=x^5+z^5$ は重複度 $3$ の特異点をもつ。経路 I はこの特異な $\bar X_0$ の上で Theorem 2 を使う。経路 II では正規化 $g\colon X_0\to\bar X_0$(有限射なので射影的、$U_0$ 上同型)が解消で、$X_0$ は種数 $2$ の滑らかな射影曲線、$Y_0'=g^{-1}(\infty)$ は 1 点($\deg(x^5+1)$ が奇数なので無限遠の場所は一つ)、したがって正規交叉因子である。(9) と (8″) により $H^1(\Gamma(U_0,\Omega^\bullet_{U_0}))\cong H^1(X_0^h-\{\text{pt}\},\mathbb C)=\mathbb C^4$ で、代数側でも上の例と同じ計算($d(x^my)=((m+\tfrac52)x^{m+4}+mx^{m-1})\,dx/y$ の最高次の係数が $0$ でない)で基底 $x^k\,dx/y$($k=0,1,2,3$)が得られる。
最後は反例である。$U_0$ の affine 性を外すと、極限の層は $U_0$ 上のコホモロジーを捉えなくなり、(8) も (9) も破れる。
外す条件は「$Y_0$ が局所 1 方程式で $U_0$ が affine」である。$X_0=\mathbb P^2_{\mathbb C}$、$Y_0=\{P\}$ を 1 点、$U_0=\mathbb P^2-\{P\}$ とする。
以下は原論文の主張ではなく、後代の結果の紹介である(執筆時点 2026 年の知識による。文献の該当箇所は本書では確かめていない)。
本頁が対応する原論文は Gro66 である。
| 本頁 | 原論文 | 印字頁 |
|---|---|---|
| 定義(有理型切断の層と写像 (9)) | N.B.、式 (7)(8)(9)、原注 (5) | 97 |
| 定理(affine 補集合上の消滅)、注意(仮定の使いどころと場合 a) との関係) | 原注 (6) 前半、仮定 a′)、式 (8′) | 97–98 |
| 系(有理型切断の代数性)、注意(真性特異点の排除) | 原注 (6)、式 (8″) とその言い換え | 98 |
| 補題(局所比較と消滅から大域比較へ) | 「is standard」の一文 | 98 |
| 定理(Theorem 1 の Corollary a) への帰着) | 「Theorem 1 is contained in part a)」の一文 | 98 |
| 定理(大域解消による Theorem 1 の別証明) | 原注 (6) 後半 | 98 |
| 注意(二つの経路と原注 (7)) | 原注 (6) 末尾の付言、原注 (7) | 98–99 |
| 注意(compact な $X$ と Stein な補集合についての問題) | 原注 (6) 末尾 | 98 |
| 例と反例 | 原論文にない(本書が補った) | — |
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