本書を読むのに要る分野(Kähler 微分と超コホモロジー、スキームと連接層コホモロジー、複素解析空間と GAGA、特異点解消、Hodge 理論、楕円曲線と周期、アーベル多様体、エタールコホモロジーと $\ell$ 進 Betti 数、局所コホモロジーと Cousin 分解、接続と微分方程式)を一覧にし、頁ごとに要る前提の対応表と、読む順序の案をまとめる。各概念の要点と教科書の案内は本書『0-2 Kähler 微分と超コホモロジー』から『0-5 Hodge 理論・アーベル多様体・エタールコホモロジーの初歩』までの四頁に、全頁に共通する記号と約束は本書『0-6 記号と約束』に分けて置く。
本書は、Grothendieck の論文「On the de Rham cohomology of algebraic varieties」(Publications Mathématiques de l'IHÉS 第 29 巻、1966 年、95–103 頁。本書では Gro66 と引く)を道案内にして、代数的 de Rham コホモロジーの理論を主題ごとに解説する。原論文は、複素数体上の非特異な代数多様体の複素係数コホモロジーが代数的な微分形式の複体だけで計算できるという比較定理(Theorem 1 と Theorem 1′)を示し、そこから第二種積分、周期、Hodge–de Rham スペクトル系列、相対 de Rham コホモロジーへ話を広げる。本書は書簡の順序ではなく、定義(第 1 章)、比較定理とその証明(第 2 章)、第二種積分と周期(第 3 章)、Hodge–de Rham スペクトル系列(第 4 章)、相対理論と標数 $p$(第 5 章)の五つの主題に組み直した。本頁は全体の地図と読む順序を、本書『0-2 Kähler 微分と超コホモロジー』『0-3 スキームと連接層コホモロジー』『0-4 複素解析空間と GAGA』『0-5 Hodge 理論・アーベル多様体・エタールコホモロジーの初歩』は分野ごとの各概念の要点を、本書『0-6 記号と約束』は全頁に共通する記号と約束をまとめる。
原論文は、1963 年 10 月 14 日付で M. F. Atiyah に宛てて書かれた書簡の抜粋に、同年 11 月と 1965 年 7 月の注(原注 (1)〜(13))を付けたものである。したがって節番号も定理番号も体系的には振られておらず、本書が原論文を引くときは「Theorem 1」「Theorem 2」「Corollary」「式 (n)」「原注 (n)」と、印字頁(95–103)で指す。書簡であるがゆえに、多くの段は「標準的な議論で」「容易な明示計算で」「同様の議論が通る」の一言で済まされ、定理の仮定(分離性や準コンパクト性、$Y$ が局所的に 1 個の方程式で定まること)も文脈から読み取る必要がある。本書の各頁は、その一言ずつを開いて証明を書き、仮定を明示し、各主張が本書の中で証明し切れたもの(完結)、引用した定理に依るもの(条件付き)、証明を閉じられなかったもの(未完結)、そのままでは成り立たないもの(偽)のどれに当たるかを区別する。判定の基準は本書『0-6 記号と約束』にある。
本書を作る過程で見つかったことの一つは、原論文の Corollary の場合 b)、すなわち「$X$ が Stein なら消滅条件 (8) が成り立つ」という主張が、そのままでは偽であることである。原論文は正則凸コンパクト集合の上での消滅から「したがって $X$ 全体でも」と一行で移るが、この移行は極の位数が有界でない帰納極限の層に対しては通らず、$X=\mathbb C^2$、$Y=\{z_1=0\}$ で実際に $H^1(X,\mathcal O_X(*Y))\ne0$ になる(本書『2-2 極をもつ微分形式と局所比較定理』の反例「Stein 空間で消滅条件が破れる例」)。一方で、この破れは Theorem 1 の証明には及ばない。Theorem 1 は場合 a)(射影的な $X$ と豊富因子の台 $Y$)だけを使って証明されており、本書『2-4 代数的な別証明と affine 補集合の消滅』では、Theorem 1 が Corollary の a) に含まれること、さらに原注 (6) の道をたどれば特異点解消の大域版と正規交叉での明示計算だけで Theorem 1 が Theorem 2 にも Grauert–Remmert の定理にも依らずに証明できることを示す。誤りの所在と、それが何に影響し何に影響しないかを分けて書くのが本書の方針である。
もう一つ、原論文の後半(印字 p. 103)には、滑らかで固有な射の相対 de Rham 層が局所自由で底変換と可換だろう、体上なら次元が $\ell$ 進 Betti 数に一致するだろう、という期待が標数を問わない形で書かれている。この期待は、原論文自身が原注 (12) で撤回した。Serre が指摘した標数 $p$ の曲面($\mathbb Z/p$ が自由に作用する $\mathbb P^3$ の非特異曲面の商)は $\dim H^1_{dR}=1$ かつ $b_1=0$ で、固有であっても de Rham コホモロジーの次元が Betti 数を超える。本書『5-1 相対 de Rham 層と Serre の反例』はこの計算を閉じ、標数 $0$ では期待が定理になること(Theorem 1′ と Artin の比較定理による)と、標数 $p$ では固有性を外すと連接性さえ破れること(affine 直線)をあわせて示す。原論文の期待や推測のうち、後に定理になったもの(Katz–Oda による Gauss–Manin 接続の代数的構成、Deligne–Illusie による標数 $p$ での退化の定理)は各頁の「その後の発展」で後代の結果として引き、原論文の主張として帰属しない。
使い方は三通りを想定している。
[[ラベル]] の形で引き、書誌は本書の参考文献一覧にまとめてある。用語解説記事へのリンク(de Rham コホモロジー、スペクトル系列、局所コホモロジー、エタールコホモロジー など)は、記事が未作成のものもリンクの形で示してある。第 1 章以後の各頁は、その頁で示すこと、背景と動機、定義と準備、主結果と証明、例と反例、その後の発展、原論文との対応表、という同じ形で書いてあり、「定義と準備」の中の「引用する事実」に、その頁が証明せずに使う事実を第 0 章の頁名とともに列挙してある。ある頁の前提を確かめたいときは、まずそこを見ればよい。分野ごとに、本書で要る水準の目安を示す。「◎」は本書の多くの頁で証明の中で使うもの、「○」は一部の頁で使うもの、「△」は背景や言明の理解のために触れるだけのものである。
| 分野 | 主な内容 | 水準の目安 | 主に使う章 |
|---|---|---|---|
| Kähler 微分・超コホモロジー・スペクトル系列 | Kähler 微分と de Rham 複体、複体の超コホモロジーと二つのスペクトル系列、退化と拡大類、Čech 型と Leray 型のスペクトル系列、帰納極限とコホモロジー、flasque 層、$\varprojlim^1$ と Mittag-Leffler 条件 | ◎ 二重複体のスペクトル系列を自分で書き、擬同型が超コホモロジーの同型を誘導することを使えること | 全章 |
| スキームと連接層コホモロジー | 局所有限型・分離・固有・滑らかな射、局所 1 方程式の閉集合と Cartier 因子、射影閉包、正規交叉因子、affine 上の消滅、affine 射の高次順像の消滅、固有射の連接性、Serre の消滅定理、体の拡大による底変換 | ◎ Har77 の第 II・III 章程度。主張の形を知っていれば証明は引用でよい | 全章 |
| 複素解析空間と GAGA・Stein | 解析化 $X^h$、連接解析層、正則 Poincaré の補題と de Rham の定理、Stein 空間と Cartan の定理 B、尽くし列と $\varprojlim^1$、Serre の GAGA、Grauert–Remmert の比較定理、極をもつ有理型微分形式 | ◎ 第 1・2 章で必須。Stein 空間と Cartan の定理 B は主張だけでよいが、正則 Poincaré の補題は証明の形も見ておくとよい | 1・2 章(3〜5 章でも引用) |
| 特異点解消 | Hironaka の定理の言明(代数的な埋め込み解消、解析空間での局所的な解消)、正規交叉因子 | ○ 言明だけを引用する。証明は使わない | 2 章 |
| Hodge 理論 | Hodge 分解、Hodge フィルトレーション、Hodge–de Rham スペクトル系列の退化、Hodge 対称性、Lefschetz の原理、Hodge 予想の言明 | ○ コンパクト Kähler 多様体の Hodge 分解の主張を知っていること | 3・4 章(5 章で予想の言明) |
| 楕円曲線と周期 | Weierstrass 表示と $\wp$ 関数、第一種・第二種の微分、周期格子と Legendre の関係、Schneider の定理 | ○ Sil09 第 III・VI 章程度。計算は本書の中で確かめる | 3・4 章 |
| アーベル多様体 | 双対アーベル多様体、接空間と $H^0(\Omega^1)$・$H^1(\mathcal O)$、$p$ 捩れと Frobenius、Cartier 双対、アーベルスキーム | ○ Mum70 の該当節の主張を知っていること | 4 章(3 章の予想の言及) |
| エタールコホモロジーと $\ell$ 進 Betti 数 | $\ell$ 進コホモロジーと Betti 数、$\mathbb C$ 上の比較定理(Artin)、基本群と第 1 Betti 数、Hochschild–Serre スペクトル系列、Artin–Schreier 列、Tate 予想の言明 | ○ 第 5 章だけ。定義と基本定理の主張を知っていること | 5 章 |
| 局所コホモロジーと Cousin 分解 | 点に台をもつ局所コホモロジー、余次元による Cousin 複体、留数、Har66 の Cousin 分解の言明 | △〜○ 『3-2 Cousin 分解と余次元スペクトル系列』だけで使い、定義は頁の中に置く | 3 章 |
| 接続と微分方程式 | 接続・曲率・可積分性、水平切断と局所系、正則 Frobenius の定理、Ehresmann の定理、正則特異点 | △〜○ 『5-2 Gauss–Manin 接続と係数付き理論』だけで使い、定義は頁の中に置く | 5 章 |
分野ごとの各概念の要点は、Kähler 微分と超コホモロジーとスペクトル系列を本書『0-2 Kähler 微分と超コホモロジー』、スキームと連接層コホモロジーと特異点解消の言明を本書『0-3 スキームと連接層コホモロジー』、複素解析空間と GAGA と Stein 空間を本書『0-4 複素解析空間と GAGA』、Hodge 理論と楕円曲線の周期とアーベル多様体とエタールコホモロジーを本書『0-5 Hodge 理論・アーベル多様体・エタールコホモロジーの初歩』に置く。局所コホモロジーと Cousin 分解、接続と微分方程式は第 0 章に頁を設けず、使う頁の「定義と準備」で定義する。
行は本書の頁、列は前提の分野である。「◎」はその頁の証明の中心で使うもの、「○」は一部の段や引用で使うもの、空欄はほとんど使わないものを表す。印は各頁の「この頁で示すこと」と「引用する事実」に列挙された事実から付けた。「頁の前提」の列には、その頁の前に読んでおくとよい本書の頁を挙げた(第 0 章の頁は省く)。
| 頁 | Kähler 微分・超コホモロジー | スキーム・連接層 | 解析空間・GAGA・Stein | 特異点解消 | Hodge 理論 | 楕円曲線・周期 | アーベル多様体 | エタール・$\ell$ 進 | 局所コホモロジー・Cousin | 接続 | 頁の前提 |
|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|
| 1-1 de Rham 複体と超コホモロジー | ◎ | ◎ | なし | ||||||||
| 1-2 解析化と比較写像 | ◎ | ○ | ◎ | ○ | ○ | 『1-1 de Rham 複体と超コホモロジー』 | |||||
| 2-1 affine 被覆による帰着 | ◎ | ◎ | ○ | 『1-1 de Rham 複体と超コホモロジー』、『1-2 解析化と比較写像』 | |||||||
| 2-2 極をもつ微分形式と局所比較定理 | ◎ | ○ | ◎ | ○ | 『1-2 解析化と比較写像』、『2-1 affine 被覆による帰着』 | ||||||
| 2-3 特異点解消と Grauert–Remmert による証明 | ◎ | ○ | ◎ | ◎ | 『2-2 極をもつ微分形式と局所比較定理』 | ||||||
| 2-4 代数的な別証明と affine 補集合の消滅 | ○ | ◎ | ◎ | ◎ | 『2-2 極をもつ微分形式と局所比較定理』、『2-3 特異点解消と Grauert–Remmert による証明』 | ||||||
| 3-1 第二種の微分形式と Leray スペクトル系列 | ◎ | ◎ | ○ | ○ | 『1-1 de Rham 複体と超コホモロジー』、『2-1 affine 被覆による帰着』、『2-2 極をもつ微分形式と局所比較定理』 | ||||||
| 3-2 Cousin 分解と余次元スペクトル系列 | ◎ | ○ | ◎ | 『1-1 de Rham 複体と超コホモロジー』、『3-1 第二種の微分形式と Leray スペクトル系列』 | |||||||
| 3-3 $k$ 構造と周期 | ○ | ◎ | ◎ | ◎ | ◎ | ○ | 『1-2 解析化と比較写像』、『2-1 affine 被覆による帰着』、『3-1 第二種の微分形式と Leray スペクトル系列』 | ||||
| 4-1 退化と自然な分裂の不在 | ◎ | ◎ | ○ | ◎ | ◎ | ○ | 『1-2 解析化と比較写像』、『3-1 第二種の微分形式と Leray スペクトル系列』 | ||||
| 4-2 アーベル多様体の $H^1$ と拡大類 | ◎ | ○ | ○ | ○ | ◎ | 『1-1 de Rham 複体と超コホモロジー』、『4-1 退化と自然な分裂の不在』 | |||||
| 5-1 相対 de Rham 層と Serre の反例 | ◎ | ◎ | ○ | ◎ | 『1-1 de Rham 複体と超コホモロジー』、『2-1 affine 被覆による帰着』 | ||||||
| 5-2 Gauss–Manin 接続と係数付き理論 | ◎ | ○ | ◎ | ○ | ○ | ◎ | 『1-2 解析化と比較写像』、『2-1 affine 被覆による帰着』、『5-1 相対 de Rham 層と Serre の反例』 |
印の根拠を分野ごとに補っておく。Kähler 微分・超コホモロジーの列は、『2-4 代数的な別証明と affine 補集合の消滅』と『3-3 $k$ 構造と周期』を除く全頁で、超コホモロジーのスペクトル系列、擬同型の不変性、flasque 層、Čech 型または Leray 型のスペクトル系列のどれかが証明の中心にある。スキーム・連接層の列で◎を付けたのは、affine 上の消滅と分離的スキームの affine 開集合の交わり(『1-1 de Rham 複体と超コホモロジー』『2-1 affine 被覆による帰着』)、affine 射と射影閉包と固有な場合の GAGA(『2-4 代数的な別証明と affine 補集合の消滅』)、滑らかな曲線の局所環(『3-1 第二種の微分形式と Leray スペクトル系列』)、体の拡大による底変換と Lefschetz の原理(『3-3 $k$ 構造と周期』『4-1 退化と自然な分裂の不在』)、固有射の連接性と $\mathbb P^3$ のコホモロジー(『5-1 相対 de Rham 層と Serre の反例』)を使う頁である。解析空間・GAGA・Stein の列で◎を付けたのは、解析化と正則 Poincaré の補題(『1-2 解析化と比較写像』)、Cartan の定理 B と Oka の連接定理(『2-2 極をもつ微分形式と局所比較定理』)、Grauert–Remmert の比較定理と多変数 Laurent 展開(『2-3 特異点解消と Grauert–Remmert による証明』)、固有な場合の GAGA(『2-4 代数的な別証明と affine 補集合の消滅』)、de Rham の定理と GAGA(『3-3 $k$ 構造と周期』)、固有底変換と Ehresmann の定理と正則 Frobenius の定理(『5-2 Gauss–Manin 接続と係数付き理論』)を使う頁である。特異点解消は『2-3 特異点解消と Grauert–Remmert による証明』で解析空間の局所解消を、『2-4 代数的な別証明と affine 補集合の消滅』で代数的な大域解消を引用し、『2-2 極をもつ微分形式と局所比較定理』では Theorem 2 の言明の条件として触れるだけである。
Hodge 理論の列は、『3-3 $k$ 構造と周期』が Hodge 分解と $H^{n,0}$ の位置を、『4-1 退化と自然な分裂の不在』が Hodge 分解と解析的な退化を証明の中心で使い、『1-2 解析化と比較写像』『4-2 アーベル多様体の $H^1$ と拡大類』『5-2 Gauss–Manin 接続と係数付き理論』は例と定義と予想の言明で触れる。楕円曲線・周期の列は、『3-3 $k$ 構造と周期』が Weierstrass 関数と Legendre の関係を、『4-1 退化と自然な分裂の不在』が短 Weierstrass 型の同型と虚数乗法を使い、『3-1 第二種の微分形式と Leray スペクトル系列』の留数判定と『4-2 アーベル多様体の $H^1$ と拡大類』の相対 Weierstrass 型は一部の段で使う。アーベル多様体の列は『4-2 アーベル多様体の $H^1$ と拡大類』だけが中心で、『3-3 $k$ 構造と周期』は周期の予想の拡張で、『4-1 退化と自然な分裂の不在』はアーベル多様体での退化の言明で触れる。エタール・$\ell$ 進の列は『5-1 相対 de Rham 層と Serre の反例』が Artin の比較定理、Hochschild–Serre スペクトル系列、Artin–Schreier 列を使い、『5-2 Gauss–Manin 接続と係数付き理論』は Tate 予想の変種の言明で触れる。局所コホモロジー・Cousin と接続の列は、それぞれ『3-2 Cousin 分解と余次元スペクトル系列』と『5-2 Gauss–Manin 接続と係数付き理論』だけで使う。
表から読み取れることを三つ挙げておく。
本書の中心の流れは次の五頁である。
『1-1 de Rham 複体と超コホモロジー』→『1-2 解析化と比較写像』→『2-1 affine 被覆による帰着』→『2-2 極をもつ微分形式と局所比較定理』→『2-3 特異点解消と Grauert–Remmert による証明』
『1-1 de Rham 複体と超コホモロジー』で代数的 de Rham コホモロジーを超コホモロジーとして定義して Hodge–de Rham スペクトル系列と affine の場合の計算を得、『1-2 解析化と比較写像』で比較写像 $\rho$ を構成して完備な場合を GAGA で閉じ、『2-1 affine 被覆による帰着』で一般の Theorem 1′ を affine の場合の Theorem 1 に帰着し、『2-2 極をもつ微分形式と局所比較定理』で極をもつ微分形式の複体と局所比較定理 Theorem 2 を導入して Theorem 1 をその系に帰着し、『2-3 特異点解消と Grauert–Remmert による証明』で Theorem 2 を証明する。ここまでで比較定理の証明が閉じる。『2-4 代数的な別証明と affine 補集合の消滅』は、原注 (6) に従って Theorem 2 を経ない別証明を与える頁で、解析空間の議論を避けたい読者は『2-2 極をもつ微分形式と局所比較定理』の局所比較定理の言明だけを読んでから『2-4 代数的な別証明と affine 補集合の消滅』へ進んでもよい。その場合、正規交叉因子に沿う極をもつ形式の局所計算だけを『2-3 特異点解消と Grauert–Remmert による証明』から引く。
この五頁の後は、関心に応じて次の道のどれかへ進む。
| 道 | 頁の順 | 内容 |
|---|---|---|
| 第二種積分の道 | 『3-1 第二種の微分形式と Leray スペクトル系列』→『3-2 Cousin 分解と余次元スペクトル系列』 | Atiyah–Hodge の第二種の微分形式を純代数的に定義し、Leray スペクトル系列の代数的な対応物を問う。次いで Cousin 分解が与える余次元のスペクトル系列を、次元 1 で閉じ、一般次元で何が未完結かを見る。『3-2 Cousin 分解と余次元スペクトル系列』は局所コホモロジーを頁の中で定義する |
| 周期の道 | 『3-1 第二種の微分形式と Leray スペクトル系列』→『3-3 $k$ 構造と周期』 | 曲線の留数完全列を経て、部分体 $k$ 上の de Rham コホモロジーが複素コホモロジーの $k$ 構造を与えることと周期行列の不変量を示し、楕円曲線で $\omega,\eta$ と Legendre の関係を確かめる。『3-3 $k$ 構造と周期』の前に本書『0-5 Hodge 理論・アーベル多様体・エタールコホモロジーの初歩』の Hodge 理論と楕円曲線の項を見ておく |
| Hodge の道 | 『4-1 退化と自然な分裂の不在』→『4-2 アーベル多様体の $H^1$ と拡大類』 | 標数 $0$ の射影的な場合の Hodge–de Rham スペクトル系列の退化を Lefschetz の原理で示し、代数的には Hodge 分解に当たる自然な分裂がないことを楕円曲線で確かめる。次いでアーベル多様体の $H^1_{dR}$ を余接空間と双対の接空間の拡大として見る。『4-1 退化と自然な分裂の不在』は『3-1 第二種の微分形式と Leray スペクトル系列』の留数完全列を引くので、『3-1 第二種の微分形式と Leray スペクトル系列』を先に読む |
| 相対理論の道 | 『5-1 相対 de Rham 層と Serre の反例』→『5-2 Gauss–Manin 接続と係数付き理論』 | 滑らかな射の相対 de Rham 層と固有な場合の連接性、標数 $0$ での Betti 数との一致、標数 $p$ での Serre の反例を扱い、次いで原注 (13) の標準的可積分接続と係数付き理論を、解析的定義を証明し予想を予想として記録する形で扱う。『5-1 相対 de Rham 層と Serre の反例』の前に本書『0-5 Hodge 理論・アーベル多様体・エタールコホモロジーの初歩』のエタールコホモロジーの項を見ておく |
各頁の冒頭の「この頁で示すこと」に主結果と原論文の番号・印字頁の対応、および完結/条件付き/未完結/偽の判定がまとめてあるので、まずそこだけを全頁通して読み、原論文のどの主張がどこまで閉じているかの全体像を先につかむのも一つの方法である。原論文の順に読みたい読者のためには、各頁末尾の「原論文との対応表」が、本書のボックスと原論文の定理・式・原注・印字頁を結んでいる。
本書の前提を一から身につけるときは、次の順を勧める。括弧内は主な参照先で、該当する第 0 章の頁を添える。
Mathpediaは寄付と、参考文献の書籍リンク(Amazonアソシエイト)の紹介料で運営されています。 支援について / 寄付する