本書で引用として使う Hodge 理論(Hodge 分解、Hodge フィルトレーション、Hodge–de Rham スペクトル系列の退化、Hodge 対称性、Lefschetz の原理)、楕円曲線の周期(Weierstrass 表示、第二種微分、Legendre の関係、Schneider の定理)、アーベル多様体(双対、接空間、$p$ 捩れ、Cartier 双対、アーベルスキーム)、エタールコホモロジー($\ell$ 進 Betti 数、$\mathbb C$ 上の比較定理、基本群)、Hodge 予想と Tate 予想の言明の要点を集めた頁である。各項目は定義の要点をボックスに書き、続けて本書での使いどころと案内を書く。複素解析空間と GAGA の前提は本書『0-4 複素解析空間と GAGA』に、スキームと連接層コホモロジーの前提は本書『0-3 スキームと連接層コホモロジー』にある。
$M$ をコンパクト Kähler 多様体(例えば $\mathbb C$ 上射影的で滑らかなスキーム $X$ の解析化 $M=X^h$)とする。複素係数コホモロジーは
$$H^n(M,\mathbb C)=\bigoplus_{p+q=n}H^{p,q}(M)$$
と直和に分かれる。ここで $H^{p,q}(M)$ は型 $(p,q)$ の閉微分形式で代表される類の全体であり、Kähler 計量を選べば型 $(p,q)$ の調和形式の空間と同一視される。分解は計量によらない。複素共役は $\overline{H^{p,q}(M)}=H^{q,p}(M)$ をみたす。$h^{p,q}=\dim_{\mathbb C}H^{p,q}(M)$ を Hodge 数といい、$b_n=\sum_{p+q=n}h^{p,q}$ が Betti 数である。任意の複素多様体で、$\bar\partial$ に関する Poincaré の補題と $C^\infty$ 形式の層が細層であることから、$H^q(M,\Omega^p_M)$ は Dolbeault コホモロジー $H^{p,q}_{\bar\partial}(M)$($\bar\partial$ 閉な $(p,q)$ 形式を $\bar\partial$ 完全なもので割った空間)に同型であり、コンパクト Kähler ならそれは Hodge 分解の成分と同型である:$H^{p,q}(M)\cong H^q(M,\Omega^p_M)$(Dolbeault の同型)。
$F^pH^n(M,\mathbb C)=\bigoplus_{p'\ge p}H^{p',n-p'}(M)$ と置く。これは減少フィルトレーションで、$\operatorname{gr}^p_FH^n(M,\mathbb C)=H^{p,n-p}(M)$ であり、$H^n(M,\mathbb C)=F^p\oplus\overline{F^{\,n-p+1}}$ をみたす。格子 $H^n(M,\mathbb Z)/\text{torsion}$ とこの条件をみたす $F^\bullet$ の組を重さ $n$ の Hodge 構造といい、分解は $H^{p,q}=F^p\cap\overline{F^{q}}$ として復元される。$F^\bullet$ は次の Hodge–de Rham スペクトル系列が収束先に誘導するフィルトレーションと一致する。
複素多様体 $M$ 上、正則 Poincaré の補題により $\mathbb C_M\to\Omega^\bullet_M$ は分解であり、愚かなフィルトレーション $\sigma_{\ge p}\Omega^\bullet_M$(次数 $p$ 未満の項を $0$ にした部分複体)から
$$E_1^{p,q}=H^q(M,\Omega^p_M)\Longrightarrow H^{p+q}(M,\mathbb C)$$
という Hodge–de Rham(Frölicher)スペクトル系列が得られる。$E_\infty^{p,q}$ は $E_1^{p,q}$ の部分商なので、各 $n$ について
$$b_n(M)\le\sum_{p+q=n}\dim H^q(M,\Omega^p_M)$$
が常に成り立ち、すべての $n$ で等号が成り立つことと、スペクトル系列が $E_1$ で退化することとは同値である。$M$ がコンパクト Kähler なら Hodge 分解と Dolbeault の同型が等号を与えるので $E_1$ 退化し、収束先のフィルトレーションは Hodge フィルトレーションに一致する。
$d$ 次元のコンパクト Kähler 多様体 $M$ では、複素共役により $h^{p,q}=h^{q,p}$ である(Hodge 対称性)。したがって奇数次の Betti 数は偶数である。さらに Serre 双対から $h^{p,q}=h^{d-p,d-q}$ も成り立つ。Kähler の条件を外すと対称性は破れうる(Hopf 曲面は $b_1=1$、$h^{1,0}=0$、$h^{0,1}=1$ で、スペクトル系列は $E_1$ 退化するが Hodge 分解はもたない)。退化と分解は別の主張である。
$k$ を標数 $0$ の体、$X$ を $k$ 上分離的で有限型なスキーム、$\mathcal F_1,\dots,\mathcal F_r$ を $X$ 上の有限個の連接層とする。これらは有限個の多項式の係数で定義されるので、$\mathbb Q$ 上有限生成な部分体 $k_0\subset k$ 上のモデル $X_0$、$\mathcal F_{i,0}$ がある。$\mathbb C$ は代数閉で $\mathbb Q$ 上の超越次数が非可算なので、埋め込み $k_0\hookrightarrow\mathbb C$ が存在する。連接層コホモロジーは体の拡大(平坦な底変換)と可換なので、$\dim_kH^q(X,\mathcal F_i)$ は $\mathbb C$ 上のモデル $X_0\otimes_{k_0}\mathbb C$ でも同じ値である。したがって「連接層コホモロジーの次元の間の等式」という形の言明は $\mathbb C$ 上で超越的な方法(Hodge 理論)で確かめてよい。
標数が $2$ でも $3$ でもない体 $k$ 上の楕円曲線 $E$ は、$\Delta=g_2^3-27g_3^2\ne0$ をみたす $g_2,g_3\in k$ により、射影平面の 3 次曲線
$$y^2=4x^3-g_2x-g_3$$
と無限遠点 $O=(0:1:0)$ の組として表せる。$E$ は種数 $1$ の完備で滑らかな曲線で、$O$ を原点とする群である。$k=\mathbb C$ のとき、格子 $\Lambda=\mathbb Z\omega_1+\mathbb Z\omega_2\subset\mathbb C$ に対する Weierstrass の $\wp$ 関数
$$\wp(z)=\frac1{z^2}+\sum_{\lambda\in\Lambda\smallsetminus\{0\}}\Bigl(\frac1{(z-\lambda)^2}-\frac1{\lambda^2}\Bigr)$$
は $\Lambda$ を周期にもつ有理型関数で、$\Lambda$ の点だけを $2$ 位の極にもち、$\wp'^2=4\wp^3-g_2\wp-g_3$($g_2=60\sum\lambda^{-4}$、$g_3=140\sum\lambda^{-6}$)をみたす。$z\mapsto(\wp(z),\wp'(z))$ は複素トーラス $\mathbb C/\Lambda$ から $E^h$ への群の同型を与え、逆に $\Delta\ne0$ の任意の $g_2,g_3\in\mathbb C$ はある格子から得られる(一意化定理)。
$E\colon y^2=4x^3-g_2x-g_3$ 上で、$\omega=dx/y$ は $E$ 全体で正則で零点をもたない(第一種微分、不変微分)。$\eta=x\,dx/y$ は $O$ だけに $2$ 位の極をもち、そこでの留数は $0$ である(第二種微分:すべての極で留数が $0$ の有理型微分)。$k=\mathbb C$ で $x=\wp(z)$、$y=\wp'(z)$ とすると $\omega=dz$、$\eta=\wp(z)\,dz$ である。完備で滑らかな曲線では代数的 de Rham コホモロジー $H^1_{dR}(E)$ は、第二種微分の空間を完全微分 $df$($f$ は有理関数)の空間で割ったものと同一視でき、$\omega$ と $\eta$ はその基底をなす。$\omega$ は $F^1H^1_{dR}(E)=H^0(E,\Omega^1_E)$ を張り、$\eta$ の像が $H^1(E,\mathcal O_E)$ を張る。
$E^h=\mathbb C/\Lambda$、$\Lambda=\mathbb Z\omega_1+\mathbb Z\omega_2$、$\operatorname{Im}(\omega_2/\omega_1)>0$ とし、$z_0\notin\Lambda$ から $z_0+\omega_i$ へ $\Lambda$ を避けて進む道の $E^h$ での像を $\gamma_i\in H_1(E^h,\mathbb Z)$ とする。$\gamma\mapsto\int_\gamma\omega$ は同型 $H_1(E^h,\mathbb Z)\cong\Lambda$ を与え、$\int_{\gamma_i}\omega=\omega_i$ である(第一種の周期)。第二種の周期を $\eta_i=\int_{\gamma_i}\eta=\int_{z_0}^{z_0+\omega_i}\wp(z)\,dz$ と定めると($\eta$ の留数は $0$ なので値は $z_0$ と道によらない)、
$$\omega_1\eta_2-\omega_2\eta_1=2\pi i$$
が成り立つ(Legendre の関係)。証明は、Weierstrass の $\zeta$ 関数($\zeta'=-\wp$、擬周期 $\zeta(z+\omega_i)-\zeta(z)=-\eta_i$)を基本平行四辺形の境界に沿って積分し、留数定理を使うものである。関係式の符号は周期の向きと $\eta_i$ の規約(積分か擬周期か)に依るので、文献ごとに確かめる必要がある。周期行列 $(\omega_i;\eta_i)$ は比較同型 $H^1_{dR}(E)\cong H^1(E^h,\mathbb Z)\otimes\mathbb C$ の行列であり、Legendre の関係はその行列式が $2\pi i$ であることを言う。
$E\colon y^2=4x^3-g_2x-g_3$ で $g_2,g_3$ が代数的数なら、$E$ の $0$ でない周期 $\omega\in\Lambda\smallsetminus\{0\}$ はすべて超越数である(Schneider、1937 年 Sch37)。同じ論文は第二種の周期の超越性も扱う(本書は主張の範囲を確かめていない)。$E$ が虚数乗法をもたないとき $\omega_1,\omega_2$ が代数的独立であることは、原論文(原注 (10))の時点で「信じられている」と述べられる予想であり、本書の知る範囲では 2026 年現在も未解決である。
体 $k$ 上のアーベル多様体 $A$ とは、$k$ 上完備で滑らかな、幾何的に連結な群スキームをいう。自動的に可換で射影的である。次元を $g$ と書く。Picard 関手は $k$ 上局所有限型の群スキーム $\operatorname{Pic}_{A/k}$ で表現され、その単位成分 $A^\vee=\operatorname{Pic}^0_{A/k}$ は再び $g$ 次元のアーベル多様体である(双対アーベル多様体)。$A^\vee$ は $A$ 上の代数的に $0$ に同値な直線束を分類し、$(A^\vee)^\vee\cong A$ である。豊富な直線束 $L$ は同種写像 $\varphi_L\colon A\to A^\vee$、$a\mapsto t_a^*L\otimes L^{-1}$ を定める。$k=\mathbb C$ では $A^h=t_A/\Lambda$($\Lambda$ は階数 $2g$ の格子)と書ける。
$A$ を $g$ 次元アーベル多様体とする。原点での接空間 $t_A=\operatorname{Lie}A$ は $g$ 次元、その双対 $\check t_A$ は不変微分の空間であり、平行移動により $\Omega^1_A\cong\mathcal O_A\otimes_k\check t_A$、したがって $\check t_A\cong H^0(A,\Omega^1_A)$ である。双対アーベル多様体の接空間は $t_{A^\vee}=\operatorname{Lie}\operatorname{Pic}^0_{A/k}\cong H^1(A,\mathcal O_A)$ である(直線束の一次の変形の分類)。一般に $H^q(A,\Omega^p_A)\cong\bigwedge^p\check t_A\otimes\bigwedge^qt_{A^\vee}$ で、$\sum_{p+q=n}h^{p,q}=\binom{2g}n=b_n(A)$ である。Hodge–de Rham スペクトル系列はアーベル多様体では任意の標数で退化し(本書『4-1 退化と自然な分裂の不在』。原論文は証明を書かない)、$\dim H^1_{dR}(A)=2g$ と完全列
$$0\to\check t_A\to H^1_{dR}(A)\to t_{A^\vee}\to0$$
が得られる。
標数 $p>0$ の体上の $g$ 次元アーベル多様体 $A$ で、$A[p]=\ker(p\cdot\mathrm{id}_A)$ は位数 $p^{2g}$ の有限平坦可換群スキームで、被約でない。相対 Frobenius $F\colon A\to A^{(p)}$ と Verschiebung $V\colon A^{(p)}\to A$ は $V\circ F=p\cdot\mathrm{id}_A$ をみたす。有限群スキーム $G$ が高さ $1$ であるとは、相対 Frobenius $F_G\colon G\to G^{(p)}$ が零射であることをいう。高さ $1$ の有限群スキームは、その Lie 代数を制限 $p$-Lie 代数($p$ 乗写像 $\xi\mapsto\xi^{[p]}$ を備えた Lie 代数)と見たもので完全に決まる。$\mathfrak g$ に対応する高さ $1$ の群を $G(\mathfrak g)$ と書く。アーベル多様体では $\ker F_A=G(t_A)$ である($t_A$ の $p$ 乗写像は不変ベクトル場の $p$ 回の合成)。
$S$ 上の有限局所自由な可換群スキーム $G$ に対し、$G^D=\underline{\operatorname{Hom}}_{S\text{-gr}}(G,\mathbb G_m)$ は再び有限局所自由な可換群スキームで、$(G^D)^D\cong G$、位数は保たれる(例:$(\mathbb Z/n)^D=\mu_n$)。アーベル多様体では同種写像 $\varphi$ の核の Cartier 双対は $\varphi^\vee$ の核であり、特に $A[n]^D\cong A^\vee[n]$。Frobenius と Verschiebung は双対で入れ替わるので $(\ker V_A)^D\cong\ker F_{A^\vee}=G(t_{A^\vee})$ であり、$F$ が誘導する完全列 $0\to\ker F_A\to A[p]\to\ker V_A\to0$ は
$$0\to G(t_A)\to A[p]\to G(t_{A^\vee})^D\to0$$
と書ける。これが原論文(AB2)の完全列である。
底スキーム $S$ 上のアーベルスキーム $f\colon A\to S$ とは、滑らかで固有な群スキームで幾何的ファイバーが連結なものをいう(各ファイバーはアーベル多様体)。単位切断 $e$ により $\check t_{A/S}=e^*\Omega^1_{A/S}\cong f_*\Omega^1_{A/S}$、$t_{A^\vee/S}\cong R^1f_*\mathcal O_A$ は階数 $g$ の局所自由層で、ファイバーごとの退化と底変換との両立から局所自由層の完全列
$$0\to\check t_{A/S}\to H^1_{dR}(A/S)\to t_{A^\vee/S}\to0$$
が得られる($H^1_{dR}(A/S)=\mathbf R^1f_*\Omega^\bullet_{A/S}$ は階数 $2g$)。その拡大類
$$\xi_{A/S}\in\operatorname{Ext}^1_{\mathcal O_S}(t_{A^\vee/S},\check t_{A/S})=H^1(S,\check t_{A^\vee/S}\otimes\check t_{A/S})$$
を本書では Hodge 拡大の類と呼ぶ(Kodaira–Spencer 写像とは別の対象)。
$X$ を体 $k$ 上分離的で有限型なスキーム、$\bar k$ を代数閉包、$\ell$ を $\operatorname{char}k$ と異なる素数とし、$H^n_{\text{ét}}(X_{\bar k},\mathbb Z_\ell)=\varprojlim_mH^n(X_{\bar k,\text{ét}},\mathbb Z/\ell^m)$、$H^n_{\text{ét}}(X_{\bar k},\mathbb Q_\ell)=H^n_{\text{ét}}(X_{\bar k},\mathbb Z_\ell)\otimes\mathbb Q_\ell$ と置く。これらは有限生成 $\mathbb Z_\ell$ 加群・有限次元 $\mathbb Q_\ell$ ベクトル空間で、$\operatorname{Gal}(\bar k/k)$ が連続に作用する。$b_n(X)=\dim_{\mathbb Q_\ell}H^n_{\text{ét}}(X_{\bar k},\mathbb Q_\ell)$ を $\ell$ 進 Betti 数という。$X$ が固有かつ滑らかなら $b_n(X)$ は $\ell$ によらない(Deligne の Weil 予想の証明、1974 年の帰結。原論文の時点では知られていなかった)。
$X$ を $\mathbb C$ 上分離的で有限型なスキームとする。任意の有限アーベル群 $\Lambda$ について自然な同型 $H^n_{\text{ét}}(X,\Lambda)\cong H^n(X^h,\Lambda)$ がある(Artin の比較定理)。$H^n(X^h,\mathbb Z)$ は有限生成なので、極限をとって
$$H^n_{\text{ét}}(X,\mathbb Q_\ell)\cong H^n(X^h,\mathbb Q)\otimes_{\mathbb Q}\mathbb Q_\ell$$
を得る。特に $\ell$ 進 Betti 数は位相的な Betti 数に一致する。同様に、$X$ が連結なら代数的基本群 $\pi_1^{\text{ét}}(X,\bar x)$ は位相的基本群 $\pi_1(X^h,x)$ の副有限完備化である(Riemann の存在定理)。
$X$ を代数閉体 $\bar k$ 上連結で有限型なスキーム、$\ell\ne\operatorname{char}\bar k$ とする。$\mathbb Z/\ell^m$ トーサーは $\pi_1^{\text{ét}}(X,\bar x)\to\mathbb Z/\ell^m$ と対応するので $H^1_{\text{ét}}(X,\mathbb Z_\ell)\cong\operatorname{Hom}_{\text{cont}}(\pi_1^{\text{ét}}(X,\bar x),\mathbb Z_\ell)$ であり、$b_1(X)$ はその階数である。特に $\pi_1^{\text{ét}}(X,\bar x)$ が有限群なら $b_1(X)=0$ である。逆は成り立たない(偽射影平面は $\pi_1$ が無限で $b_1=0$)。アーベル多様体では $H^1_{\text{ét}}(A,\mathbb Z_\ell)\cong\operatorname{Hom}(T_\ell A,\mathbb Z_\ell)$($T_\ell A\cong\mathbb Z_\ell^{2g}$ は Tate 加群)で $b_1(A)=2g$ である。
$X$ を $\mathbb C$ 上射影的で滑らかな多様体とする。余次元 $q$ の代数的サイクル $Z$ にはコホモロジー類 $\mathrm{cl}(Z)\in H^{2q}(X^h,\mathbb Q)$ が対応し、それは Hodge 分解の $(q,q)$ 成分に入る。Hodge 類の空間を $\operatorname{Hdg}^{2q}(X)=H^{2q}(X^h,\mathbb Q)\cap H^{q,q}(X^h)$ と置く。Hodge 予想は、サイクル類写像 $\mathrm{cl}\colon CH^q(X)\otimes\mathbb Q\to\operatorname{Hdg}^{2q}(X)$ が全射である、という主張である。$q=1$ では正しく(Lefschetz の $(1,1)$ 定理)、強 Lefschetz 定理により $q=\dim X-1$ でも正しい。整係数の形は偽である(Atiyah–Hirzebruch、1962 年)。
$k$ を素体上有限生成な体(有限体や数体など)、$X$ を $k$ 上射影的で滑らかな多様体、$\ell\ne\operatorname{char}k$、$G=\operatorname{Gal}(\bar k/k)$ とする。$\ell$ 進サイクル類写像 $\mathrm{cl}_\ell\colon CH^q(X)\otimes\mathbb Q_\ell\to H^{2q}_{\text{ét}}(X_{\bar k},\mathbb Q_\ell(q))$ の像は $G$ 不変な部分に入る($(q)$ は Tate 捻り)。Tate 予想は
$$CH^q(X)\otimes\mathbb Q_\ell\to H^{2q}_{\text{ét}}(X_{\bar k},\mathbb Q_\ell(q))^{G}$$
が全射である、という主張である(Tate。原注 (13) は Woods Hole 会議での報告として引く。公刊形は Tat65)。$q=1$ でアーベル多様体が有限体上(Tate、1966 年)と数体上(Faltings、1983 年)の場合などが知られている(本書は文献を確かめていない)。
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