1-3 群準同型と第一同型定理

$$$$

群の元の名前や表し方が違っても、積の構造が同じなら同じ群として扱いたい。その比較を担うのが準同型です。準同型が区別できなくする元は核に集まり、第一同型定理は「像は、核を一つに潰した商群そのもの」と述べます。

準同型・核・像

群準同型

群 $G,H$ の間の写像 $\varphi:G\to H$ が
$$ \varphi(xy)=\varphi(x)\varphi(y) $$
を全 $x,y\in G$ で満たすとき群準同型という。全単射な準同型を群同型|同型写像といい、同型が存在するとき $G\cong H$ と書く。

準同型が保つもの

準同型 $\varphi:G\to H$ に対し
$$ \varphi(e_G)=e_H,\qquad \varphi(x^{-1})=\varphi(x)^{-1},\qquad \varphi(x^n)=\varphi(x)^n $$
が成り立つ。

$$ \varphi(e_G)=\varphi(e_Ge_G)=\varphi(e_G)^2. $$
両辺の左から $\varphi(e_G)^{-1}$ を掛けて $\varphi(e_G)=e_H$。
$$ e_H=\varphi(e_G)=\varphi(xx^{-1}) =\varphi(x)\varphi(x^{-1}) $$
であり、逆向きの積も同様なので $\varphi(x^{-1})=\varphi(x)^{-1}$。冪は正整数について帰納法、0と負整数について今示した二式から従う。□

核と像

準同型 $\varphi:G\to H$ に対し
$$ \ker\varphi=\{g\in G\mid\varphi(g)=e_H\}, $$
$$ \operatorname{im}\varphi=\{\varphi(g)\mid g\in G\} $$
をそれぞれ群準同型の核|核と群準同型の像|像という。

核と像の構造

$$ \ker\varphi\trianglelefteq G,\qquad \operatorname{im}\varphi\le H. $$
また $\varphi$ が単射であることと $\ker\varphi=\{e_G\}$ は同値。

$x,y\in\ker\varphi$ なら
$$ \varphi(xy^{-1}) =\varphi(x)\varphi(y)^{-1}=e_H, $$
従って核は部分群。$g\in G,n\in\ker\varphi$ に対し
$$ \varphi(gng^{-1}) =\varphi(g)e_H\varphi(g)^{-1}=e_H, $$
なので核は正規。
$a=\varphi(x),b=\varphi(y)$ が像に入れば
$$ab^{-1}=\varphi(xy^{-1})$$
も像に入るため、像は部分群。
$\varphi$ が単射なら $\varphi(g)=e_H=\varphi(e_G)$ から $g=e_G$。逆に核が自明で $\varphi(x)=\varphi(y)$ なら
$$ \varphi(y^{-1}x)=\varphi(y)^{-1}\varphi(x)=e_H, $$
従って $y^{-1}x=e_G$、すなわち $x=y$。□

第一同型定理

群の第一同型定理

準同型 $\varphi:G\to H$ に対し
$$ G/\ker\varphi\cong\operatorname{im}\varphi. $$
具体的には
$$ \overline\varphi:G/\ker\varphi\to\operatorname{im}\varphi, \qquad g\ker\varphi\longmapsto\varphi(g) $$
が同型写像である。

$K=\ker\varphi$ と置く。まず写像が代表元によらないことを示す。$gK=g'K$ なら $g^{-1}g'\in K$ なので
$$ \varphi(g)^{-1}\varphi(g') =\varphi(g^{-1}g')=e_H. $$
従って $\varphi(g)=\varphi(g')$。
積について
$$ \overline\varphi((gK)(hK)) =\overline\varphi(ghK) =\varphi(gh) =\varphi(g)\varphi(h), $$
なので準同型。像を値域としているため全射。さらに
$$ \overline\varphi(gK)=e_H \Longleftrightarrow\varphi(g)=e_H \Longleftrightarrow g\in K \Longleftrightarrow gK=K. $$
核が自明なので単射判定により単射。従って同型。□

抽象的には「$\varphi$ が失う情報は核だけ」という定理です。

具体例

準同型
$$ \varphi:\mathbb Z\to\mathbb Z/n\mathbb Z,\qquad k\mapsto\bar k $$
は全射で、核は $n\mathbb Z$。従って
$$ \mathbb Z/n\mathbb Z\cong\mathbb Z/(n\mathbb Z). $$
行列式
$$ \det:GL_n(\mathbb R)\to\mathbb R^\times $$
は $\det(AB)=\det A\det B$ により準同型で、核は
$$SL_n(\mathbb R)=\{A\mid\det A=1\}.$$
像は $\mathbb R^\times$ 全体なので
$$ GL_n(\mathbb R)/SL_n(\mathbb R)\cong\mathbb R^\times. $$

符号準同型の商

置換の符号 $\operatorname{sgn}:S_n\to\{1,-1\}$ が全射準同型で、核が $A_n$ であると仮定する。第一同型定理から得られる同型を書け。

解答

第一同型定理をそのまま適用して
$$ S_n/A_n\cong\{1,-1\} \cong\mathbb Z/2\mathbb Z. $$
特に $A_n$ は核なので正規部分群で、$n\ge2$ では指数2。符号準同型自体は第3章の置換群で構成する。□

複素指数関数

加法群から乗法群への準同型
$$ \varphi:\mathbb R\to S^1,\qquad t\mapsto e^{2\pi it} $$
の核と像を求め、第一同型定理を適用せよ。

解答

$e^{2\pi i(s+t)}=e^{2\pi is}e^{2\pi it}$ なので準同型。すべての単位複素数は $e^{2\pi it}$ と書けるので像は $S^1$。値が1となるのは $t\in\mathbb Z$ のときだから核は $\mathbb Z$。従って
$$ \mathbb R/\mathbb Z\cong S^1. $$
円周を、実数直線で整数だけ離れた点を同一視した商として捉えられる。□

参考文献

[1]
David S. Dummit and Richard M. Foote, Abstract Algebra, 3rd ed., Wiley, 2004

Mathpediaは寄付と、参考文献の書籍リンク(Amazonアソシエイト)の紹介料で運営されています。 支援について / 寄付する

前ページへ
群論 ― 準同型・群作用・Sylow の定理と有限群の分類の表紙
次ページへ