6-2 可解群の判定例

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可解群という定義は導来列だけを見ると形式的ですが、置換群に適用すると「四次までは可解、五次からは一般には可解でない」という境界が見えます。このページでは、前のページまでの結果だけを使って
$$ S_n\text{ が可解}\quad\Longleftrightarrow\quad n\le 4 $$
を証明します。

部分群へ可解性を降ろす

可解群の部分群

$G$ が可解で $H\le G$ なら、$H$ も可解である。

交換子部分群の定義から
$$ [H,H]\le [G,G] $$
です。導来列について帰納的に
$$ H^{(r)}\le G^{(r)} $$
が従います。ある $m$ で $G^{(m)}=\{e\}$ なら
$$ H^{(m)}\le\{e\}, $$
従って $H^{(m)}=\{e\}$。よって $H$ も可解です。□

この命題の対偶は便利です。非可解群を一つでも部分群にもつ群は非可解です。

$S_4$ までの導来列

まず $S_2$ は可換です。$S_3$ では符号写像により
$$ S_3/[S_3,S_3] $$
は可換で、したがって $[S_3,S_3]\le A_3$。一方、二つの互換の交換子は非自明な3-cycleになるので
$$ [S_3,S_3]=A_3\cong C_3, $$
その次の導来群は自明です。
$S_4$ ではKleinの四元群
$$ V=\{e,(12)(34),(13)(24),(14)(23)\} $$
が重要です。

$S_4$ と $A_4$ の導来群

$$ [S_4,S_4]=A_4, \qquad [A_4,A_4]=V, \qquad [V,V]=\{e\}. $$

符号写像の像は可換なので $[S_4,S_4]\le A_4$。一方、交換子
$$ [(12),(23)] $$
は3-cycleです。交換子部分群は正規であり、3-cycleは共役によりすべて得られ、3-cycleたちは $A_4$ を生成します。従って $A_4\le[S_4,S_4]$ で、等号です。
$V$ は $A_4$ の正規部分群であり、$A_4/V$ は位数3、従って可換です。よって
$$ [A_4,A_4]\le V. $$
しかし直接計算すると
$$ [(123),(124)]=(12)(34)\ne e. $$
$[A_4,A_4]$ は $A_4$ で正規で、三つの非自明な二重互換は互いに共役なので、三つとも含みます。従って $[A_4,A_4]=V$。最後に $V$ は可換なので $[V,V]=\{e\}$。□

したがって
$$ S_4\trianglerighteq A_4\trianglerighteq V \trianglerighteq\{e\} $$
が導来列です。$S_1,S_2,S_3,S_4$ はすべて可解です。

五文字から現れる障害

対称群の可解性

$S_n$ が可解であるための必要十分条件は $n\le4$ である。また $n\ge5$ なら $A_n$ も可解でない。

$n\le4$ の場合は直前の計算で示しました。
$n\ge5$ とします。最初の五文字だけを動かし、残りを固定する偶置換全体は $A_n$ の部分群であり、$A_5$ と同型です。第5章で $A_5$ は非可換単純群、従って非可解であると証明しました。もし $A_n$ が可解なら、その部分群 $A_5$ も可解となり矛盾。よって $A_n$ は非可解です。
さらに $A_n\le S_n$ なので、$S_n$ が可解なら部分群 $A_n$ も可解になるはずです。従って $S_n$ も非可解です。□

拡大から可解性を組み立てる

可解群の拡大閉性を使うと、導来列を直接計算しなくても判定できます。短完全列
$$ 1\longrightarrow N\longrightarrow G \longrightarrow Q\longrightarrow1 $$
で $N,Q$ が可解なら $G$ も可解でした。
たとえば任意の $n$ で
$$ 1\to C_n\to D_n\to C_2\to1 $$
が完全です。核と商が可換なので $D_n$ は可解です。同様に、上三角可逆行列の群では「対角成分」と「対角成分が1の部分」を分離することで可解性が見えます。後者は次のページの冪零群の典型例です。

方程式論への橋

多項式の根の入れ替えが作るGalois群が可解であることと、その方程式が根号で解けることの同値は、体とGalois理論で証明します。ここで得た結果は、その群論側の入力です。一般五次方程式ではGalois群が $S_5$ となる例があり、$S_5$ が非可解であることが根号による万能公式を妨げます。

$A_4$ の組成因子

$A_4\trianglerighteq V\trianglerighteq\langle(12)(34)\rangle\trianglerighteq\{e\}$ が組成列であることを確かめ、組成因子を求めよ。

解答

$V$ は $A_4$ で正規です。$V$ は可換なので、その位数2の部分群は $V$ で正規です。各商の位数は順に
$$ |A_4/V|=3, \quad |V/\langle(12)(34)\rangle|=2, \quad |\langle(12)(34)\rangle|=2. $$
素数位数群は単純なので組成列であり、組成因子は $C_3,C_2,C_2$ です。□

$S_5$ の導来列

$[S_5,S_5]=A_5$ と $[A_5,A_5]=A_5$ を示し、$S_5$ の導来列が自明群へ到達しないことを確かめよ。

解答

符号写像から $[S_5,S_5]\le A_5$。一方、互換の交換子として3-cycleが得られ、3-cycleは $A_5$ を生成するので逆包含も成り立ちます。$A_5$ は非可換単純群なので、その非自明な正規部分群 $[A_5,A_5]$ は $A_5$ 全体です。従って
$$ S_5^{(1)}=A_5, \qquad S_5^{(r)}=A_5\quad(r\ge1), $$
となり、自明群へ到達しません。□

参考文献

[1]
David S. Dummit and Richard M. Foote, Abstract Algebra, 3rd ed., Wiley, 2004

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