商写像 $\pi:G\to G/N$ の下で、$G/N$ の部分群は $G$ のどの部分群に対応するのでしょうか。答えは「$N$ を含む部分群すべて」です。包含、正規性、指数まで保存されるため、商群の部分群格子を元の群の一部分として完全に読めます。
準同型 $\varphi:G\to H$ と部分群 $L\le H$ に対し
$$
\varphi^{-1}(L)=\{g\in G\mid\varphi(g)\in L\}
$$
は $G$ の部分群です。$x,y$ が逆像に入れば
$$
\varphi(xy^{-1})
=\varphi(x)\varphi(y)^{-1}\in L
$$
だからです。さらに $L\trianglelefteq H$ なら逆像も正規です。
一方、部分群 $K\le G$ の像 $\varphi(K)$ も部分群です。ただし $K$ が正規でも像が $H$ 全体で正規とは限らず、$\varphi$ が全射なら正規になります。
$N\trianglelefteq G$ とし、$\pi:G\to G/N$ を商写像とする。対応
$$
K\longmapsto K/N,\qquad
L\longmapsto\pi^{-1}(L)
$$
は
$$
\{K\le G\mid N\subset K\}
$$
と $G/N$ の全部分群との間の包含を保つ全単射である。さらに
$$
K\trianglelefteq G
\Longleftrightarrow
K/N\trianglelefteq G/N,
$$
かつ有限指数の場合
$$
[G:K]=[G/N:K/N].
$$
$N\subset K$ なら
$$
\pi(K)=\{kN\mid k\in K\}=K/N.
$$
これは準同型による部分群の像なので部分群。逆に $L\le G/N$ なら $\pi^{-1}(L)$ は部分群で、$N=\ker\pi$ を含む。
二対応が互いに逆であることを示す。$N\subset K$ なら
$$
\pi^{-1}(\pi(K))=K.
$$
実際、左辺の $g$ は $gN=kN$ となる $k\in K$ をもち、$k^{-1}g\in N\subset K$ だから $g\in K$。逆包含は明らか。$\pi$ は全射なので $L\le G/N$ に対し
$$\pi(\pi^{-1}(L))=L.$$
包含を保つことも定義から直ちに従う。
$K\trianglelefteq G$ なら $gkg^{-1}\in K$ なので
$$
(gN)(kN)(gN)^{-1}=gkg^{-1}N\in K/N,
$$
従って $K/N$ は正規。逆に $K/N$ が正規なら上式が $K/N$ に入るため $gkg^{-1}\in\pi^{-1}(K/N)=K$、よって $K$ は正規。
最後に写像
$$
G/K\to(G/N)/(K/N),\qquad
gK\mapsto(gN)(K/N)
$$
は第三同型定理の同型である。従って剰余類集合の大きさ、すなわち指数が等しい。□
$G=\mathbb Z$、$N=12\mathbb Z$ とします。$N$ を含む $\mathbb Z$ の部分群は
$$
12\mathbb Z,\quad6\mathbb Z,\quad4\mathbb Z,\quad
3\mathbb Z,\quad2\mathbb Z,\quad\mathbb Z.
$$
これらはそれぞれ $\mathbb Z/12\mathbb Z$ の位数
$$
1,2,3,4,6,12
$$
の部分群に対応します。巡回群の部分群が位数の約数ごとに一つであることが、$\mathbb Z$ の部分群分類から再び得られます。
対応定理は正規部分群も保存します。たとえば $G/N$ が単純群なら、$N$ と $G$ の間にある正規部分群は $N,G$ だけです。逆に中間正規部分群を見つければ、商群が単純でないことが分かります。
$$
D_4=\langle r,s\mid r^4=s^2=e,\ srs=r^{-1}\rangle
$$
で $N=\langle r^2\rangle$ とする。$N\trianglelefteq D_4$ を示し、$D_4/N$ を同定せよ。さらに商の位数2の部分群に対応する $D_4$ の部分群を列挙せよ。
$r^2$ は $r$ と可換し、
$$sr^2s=(srs)^2=r^{-2}=r^2,$$
なので中心に入り $N$ は正規。商では $rN,sN$ はともに位数2で可換し、相異なるので
$$D_4/N\cong C_2\times C_2.$$
この群の位数2の部分群は
$$
\langle rN\rangle,\quad
\langle sN\rangle,\quad
\langle rsN\rangle.
$$
逆像はそれぞれ
$$
\langle r\rangle,\quad
\langle r^2,s\rangle,\quad
\langle r^2,rs\rangle.
$$
□
$N\subset M\subset G$、$N\trianglelefteq G$ とする。$M$ が $N$ を含む極大部分群であることと、$M/N$ が $G/N$ の極大部分群であることが同値だと示せ。
対応定理は $N$ を含む部分群と商群の部分群の間で包含を保つ全単射。従って
$$
M< K< G
$$
となる中間部分群 $K$ の存在と
$$
M/N< K/N< G/N
$$
となる中間部分群の存在は同値。どちらにも中間がないという極大性も同値。□
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