正規部分群 $N$ と商群 $Q=G/N$ が分かっても、$G$ は一意には決まりません。直積、半直積、四元数群は同じ材料を異なる方法で組み合わせます。完全列は「部分群として入る」「商として出る」を一つの図式へまとめます。
群準同型の列
$$
\cdots\longrightarrow G_{i-1}
\xrightarrow{f_{i-1}}G_i
\xrightarrow{f_i}G_{i+1}
\longrightarrow\cdots
$$
が $G_i$ で完全列|完全であるとは
$$
\operatorname{im}f_{i-1}=\ker f_i
$$
となることをいう。すべての項で完全な列を完全列という。
左端での完全性は $\iota$ が単射、右端では $\pi$ が全射を意味します。中央では
$$
\iota(N)=\ker\pi.
$$
$N$ を像と同一視すれば $N\trianglelefteq G$ で、第一同型定理から
$$G/N\cong Q.$$
逆に任意の正規部分群 $N\trianglelefteq G$ は
$$
1\to N\to G\to G/N\to1
$$
を与えます。
有限群の短完全列
$$
1\to N\to G\to Q\to1
$$
に対し
$$|G|=|N||Q|.$$
$N$ を $\ker\pi$ と同一視する。第一同型定理から $G/N\cong Q$ なので
$$
[G:N]=|Q|.
$$
Lagrangeの定理より
$$|G|=|N|[G:N]=|N||Q|.$$
□
$$
1\to C_2\to C_4\to C_2\to1
$$
と
$$
1\to C_2\to C_2\times C_2\to C_2\to1
$$
は核と商がともに $C_2$ ですが、中央の群は非同型です。前者には位数4の元があり、後者にはありません。
同様に
$$
1\to C_4\to D_4\to C_2\to1
$$
と
$$
1\to C_4\to Q_8\to C_2\to1
$$
は、商の非自明元が核へ同じ反転作用を誘導します。それでも $D_4$ では商の元を位数2の元へ持ち上げられ、$Q_8$ では外側の元が位数4になります。この差を測るのが「分裂するか」です。
$N\trianglelefteq G$ なら、$g\in G$ の共役は $N$ の自己同型を与えます。ただし同じ剰余類 $gN$ の代表元を変えると、$N$ の内部自己同型だけ変わります。従って自然に定まるのは
$$
G/N\longrightarrow\operatorname{Out}(N)
$$
という外部作用です。代表元を一貫して選べる場合には、これを
$$
Q\to\operatorname{Aut}(N)
$$
へ持ち上げ、半直積を作れます。
符号写像から得られる短完全列を書き、核と商を同定せよ。
符号写像は全射
$$
\operatorname{sgn}:S_3\to\{\pm1\}\cong C_2
$$
で、核は $A_3\cong C_3$。従って
$$
1\longrightarrow C_3
\longrightarrow S_3
\xrightarrow{\operatorname{sgn}}C_2
\longrightarrow1.
$$
位数も $6=3\cdot2$ と一致する。□
短完全列
$$1\to N\to G\to Q\to1$$
で $N,Q$ が可解なら $G$ が可解であることを、第6章の可解群の拡大閉性と照合せよ。
完全性から $N$ は $G$ の正規部分群と同一視でき、第一同型定理から $G/N\cong Q$。$N$ と商 $G/N$ が可解なので、可解群の拡大閉性により $G$ も可解。これは「可解群の拡大は可解」という命題を完全列で書き直したもの。□
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