3-1 置換群

$$$$

有限集合の対称性は、その要素の並べ替えとして記録できます。置換は具体的に計算できるだけでなく、Cayleyの定理により、あらゆる群を置換群の部分群として実現します。

置換と巡回置換

対称群

集合 $\{1,\ldots,n\}$ から自身への全単射全体を、写像の合成について群としたものを $S_n$ と書き、$n$ 次対称群という。その元を置換という。

置換
$$ \sigma= \begin{pmatrix} 1&2&3&4&5\\ 3&5&1&4&2 \end{pmatrix} $$
は $1\mapsto3\mapsto1$、$2\mapsto5\mapsto2$、4を固定するので
$$\sigma=(13)(25)$$
と書けます。

巡回置換

相異なる文字 $a_1,\ldots,a_k$ に対し
$$ (a_1a_2\cdots a_k) $$
は $a_1\mapsto a_2,\ldots,a_{k-1}\mapsto a_k,a_k\mapsto a_1$ と動かし、それ以外を固定する置換を表す。これを巡回置換、または $k$-cycleという。

互いに動かす文字が重ならない巡回置換を互いに素といいます。互いに素な巡回置換は可換です。各文字への作用を場合分けすれば、どちらを先に作用させても同じだと分かります。

巡回置換分解

任意の置換は互いに素な巡回置換の積として書ける。この分解は、巡回置換の順序と各巡回内の循環的な書き始めを除いて一意である。

文字 $a$ から
$$ a,\sigma(a),\sigma^2(a),\ldots $$
をたどる。文字は有限個なのでいつか重複する。$\sigma^i(a)=\sigma^j(a)$($i< j$)なら全単射性から $a=\sigma^{j-i}(a)$。最初に戻るまでの列が一つの巡回置換を作る。
まだ現れていない文字を選び同じ操作を繰り返す。異なる軌道が交われば全単射性により過去へたどって同じ軌道となるので、得られる巡回置換は互いに素。全文字を尽くせば積は $\sigma$。各文字の軌道は $\sigma$ だけから決まるため一意性も従う。□

互換と符号

2-cycleを互換といいます。$k$-cycleは
$$ (a_1a_2\cdots a_k) =(a_1a_k)(a_1a_{k-1})\cdots(a_1a_2) $$
と $k-1$ 個の互換の積に分解できます。従って任意の置換は互換の積です。
分解は一意ではありませんが、互換の個数の偶奇は変わりません。これを証明するため
$$ \Delta(x_1,\ldots,x_n) =\prod_{1\le i< j\le n}(x_j-x_i) $$
を使います。

置換の符号

各 $\sigma\in S_n$ に対し
$$ \Delta(x_{\sigma(1)},\ldots,x_{\sigma(n)}) =\operatorname{sgn}(\sigma)\Delta(x_1,\ldots,x_n) $$
となる $\operatorname{sgn}(\sigma)\in\{1,-1\}$ が定まり、
$$ \operatorname{sgn}(\sigma\tau) =\operatorname{sgn}(\sigma)\operatorname{sgn}(\tau). $$
互換の符号は $-1$ である。従って互換分解の個数の偶奇は分解によらない。

変数を置換すると、$\Delta$ の各因子はある $x_q-x_p$ またはその負へ移るため、積全体は $\pm\Delta$。この符号を $\operatorname{sgn}(\sigma)$ とする。
合成について変数置換を二回行えば
$$ (\sigma\tau)\Delta =\sigma(\tau\Delta) =\operatorname{sgn}(\tau)\sigma\Delta =\operatorname{sgn}(\tau)\operatorname{sgn}(\sigma)\Delta. $$
多項式 $\Delta$ は0でないので係数を比較して積公式を得る。互換は二変数を交換し、対応する一因子の符号を反転する一方、他の因子は対になって入れ替わるため全体を $-\Delta$ へ送る。
$\sigma$ が $r$ 個の互換の積なら積公式から $\operatorname{sgn}(\sigma)=(-1)^r$。左辺は $\sigma$ だけで定まるので $r$ の偶奇も分解によらない。□

交代群

$$ A_n=\ker(\operatorname{sgn}:S_n\to\{1,-1\}) $$
を交代群という。符号が1の置換を偶置換、$-1$ の置換を奇置換という。

$A_n$ は準同型の核なので正規部分群です。$n\ge2$ では符号写像は全射だから第一同型定理より
$$S_n/A_n\cong\mathbb Z/2\mathbb Z,$$
従って $|A_n|=n!/2$。

Cayleyの定理

Cayleyの定理

任意の群 $G$ は、集合 $G$ 上の置換全体の群の部分群と同型である。特に有限群 $|G|=n$ は $S_n$ の部分群と同型である。

$g\in G$ に対し左移動
$$ L_g:G\to G,\qquad x\mapsto gx $$
を考える。逆写像は $L_{g^{-1}}$ なので $L_g$ は全単射。さらに
$$ L_g\circ L_h(x)=g(hx)=(gh)x=L_{gh}(x), $$
よって
$$ \Phi:G\to\operatorname{Sym}(G),\qquad g\mapsto L_g $$
は準同型。$\Phi(g)$ が恒等置換なら、特に $\Phi(g)(e)=ge=g=e$ なので核は自明。従って $\Phi$ は単射で、$G\cong\operatorname{im}\Phi$。有限で $|G|=n$ なら $\operatorname{Sym}(G)$ は文字に番号を付けて $S_n$ と同一視できる。□

置換の計算

$$\sigma=(1234)(25)$$
を互いに素な巡回置換の積へ直し、位数と符号を求めよ。右側から作用させる。

解答

各文字を追うと
$$ 1\mapsto2\mapsto5\mapsto3\mapsto4\mapsto1, $$
従って $\sigma=(12534)$。5-cycleの位数は5。互換4個の積へ分解できるので符号は $(-1)^4=1$。□

巡回分解と位数

互いに素な巡回置換の長さが $m_1,\ldots,m_r$ なら、その積の位数は $\operatorname{lcm}(m_1,\ldots,m_r)$ であることを示せ。

解答

互いに素な巡回置換は可換で、長さ $m_i$ の巡回置換 $c_i$ は $c_i^k=e$ と $m_i\mid k$ が同値。積 $\sigma=c_1\cdots c_r$ では各軌道が独立なので
$$ \sigma^k=e \Longleftrightarrow c_i^k=e\text{ for all }i \Longleftrightarrow m_i\mid k\text{ for all }i. $$
これを満たす最小正整数は最小公倍数。□

参考文献

[1]
David S. Dummit and Richard M. Foote, Abstract Algebra, 3rd ed., Wiley, 2004

Mathpediaは寄付と、参考文献の書籍リンク(Amazonアソシエイト)の紹介料で運営されています。 支援について / 寄付する

前ページへ
群論 ― 準同型・群作用・Sylow の定理と有限群の分類の表紙
次ページへ