7-4 群表示の変形

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群表示は群そのものではなく、生成元と関係式による「記述」です。同じ群がまったく違う表示をもつことがあります。Tietze変形は、群を変えずに表示だけを変える基本操作を尽くします。

表示が定める群

集合 $X$ 上の自由群を $F(X)$、関係語の集合を $R\subset F(X)$ とします。

群表示

$$ \langle X\mid R\rangle $$
という群表示とは、$R$ の正規閉包 $\langle\!\langle R\rangle\!\rangle$ で割った群
$$ F(X)/\langle\!\langle R\rangle\!\rangle $$
を表す。

関係語 $r=e$ を課すとは、$r$ だけでなく、その共役と積から必然的に得られる全関係を課すことです。そのため普通の部分群でなく正規閉包が現れます。

四つのTietze変形

Tietze変形

群表示に対する次の操作と、その逆操作をTietze変形という。

  1. 新しい生成元 $y$ と関係 $y=w(X)$ を同時に加える。
  2. 関係 $y=w(X)$ があるとき、他の関係中の $y$ を $w(X)$ で置き換え、$y$ とその定義関係を除く。
  3. 既存関係の正規閉包に属する関係語を追加する。
  4. 他の関係から従う関係語を除く。
Tietze変形は群を変えない

各Tietze変形の前後で、表示される群は自然に同型である。

生成元 $y$ と関係 $y=w(X)$ を加えた場合を考えます。新しい表示から元の群へ、$x\in X$ は同名の元へ、$y$ は $w(X)$ の表す元へ送る準同型があります。逆に元の表示から新しい表示へ、各 $x$ を同名の生成元へ送れます。新しい群では $y=w(X)$ なので二つの合成は全生成元を固定し、互いに逆です。操作2はこの逆です。
操作3で加える語 $r$ が既存関係 $R$ の正規閉包に属するなら、$F(X)/\langle\!\langle R\rangle\!\rangle$ ですでに $r=e$ です。従って
$$ \langle\!\langle R\cup\{r\}\rangle\!\rangle =\langle\!\langle R\rangle\!\rangle $$
で、商群は文字どおり同じです。操作4はその逆です。□

Tietzeの定理

Tietzeの定理

二つの有限表示が同型な群を表すなら、一方から他方へ有限回のTietze変形で移れる。

二表示を
$$ G=\langle X\mid R\rangle =\langle Y\mid S\rangle $$
とします。各 $y\in Y$ が $G$ で表す元を、$X$ の語 $w_y(X)$ で表します。生成元 $y$ と関係 $y=w_y(X)$ を順に加えます。次に各 $x\in X$ も $Y$ の語 $v_x(Y)$ で表します。
拡大した表示では、$S$ の各関係は $G$ ですでに成り立つため、$R$ と定義関係の正規閉包に入ります。操作3で $S$ を追加できます。同様に関係 $x=v_x(Y)$ も追加できます。
これで各古い生成元 $x$ は $Y$ の語として定義されたので、操作2で $X$ とその定義関係を除けます。残った $R$ と、$y=w_y(v_X(Y))$ 型の関係は $S$ から従うため操作4で除けます。最後に $\langle Y\mid S\rangle$ が残ります。
有限表示では生成元・関係式が有限個なので、以上の追加と除去は有限回です。□

この定理は「同型なら変形列が存在する」と保証しますが、短い変形列を自動的に見つけるとは言っていません。表示から群の構造を読む難しさは残ります。

二面体群を自由積から書き直す

$$ C_2*C_2=\langle s,t\mid s^2=e,t^2=e\rangle $$
に新しい生成元 $r$ と関係 $r=st$ を加えます。$t=sr$ なので $t$ を消去すると、関係 $t^2=e$ は
$$ (sr)^2=e $$
になります。これは
$$ srs=r^{-1} $$
と同値です。従って
$$ C_2*C_2 \cong\langle r,s\mid s^2=e,\ srs=r^{-1}\rangle. $$
右辺は無限二面体群の標準表示です。新しい生成元 $r=st$ を導入したことで、二つの反射の積が平行移動に相当する構造が見えるようになりました。

冗長な関係を見抜く

表示
$$ \langle a,b\mid a^2=e,\ b^3=e,\ ab=ba,\ (ab)^6=e\rangle $$
では最後の関係は冗長です。実際、可換性から
$$ (ab)^6=a^6b^6=(a^2)^3(b^3)^2=e. $$
従って操作4で除けます。一方、$(ab)^3=e$ を除くことはできません。前の三関係だけなら $ab$ の位数は6であり、$(ab)^3=a\ne e$ だからです。

一生成元へ簡約する

Tietze変形を用いて
$$ \langle x,y\mid y=x^2,\ y^3=e\rangle $$
を一生成元の表示に直し、表す群を求めよ。

解答

関係 $y=x^2$ を使って $y$ を消去します。残る関係は
$$ (x^2)^3=x^6=e. $$
従って表示は
$$ \langle x\mid x^6=e\rangle $$
となり、群は $C_6$ です。ここで表示は $x$ の位数が6を割ることを課しますが、自由群 $F(x)\cong\mathbb Z$ を $6\mathbb Z$ で割るので位数は正確に6です。□

$C_2\times C_3$ と $C_6$

$$ G=\langle a,b\mid a^2=e,\ b^3=e,\ ab=ba\rangle $$
で $c=ab$ と置く。$a=c^3,b=c^4$ を示し、$G\cong C_6$ を表示から導け。

解答

可換性から
$$ c^3=a^3b^3=a, \qquad c^4=a^4b^4=b. $$
また $c^6=a^6b^6=e$。生成元 $c$ と関係 $c=ab$ を加えると、$a,b$ はそれぞれ $c^3,c^4$ で置き換えられるため消去できます。残る表示は
$$ \langle c\mid c^6=e\rangle. $$
従って $G\cong C_6$ です。□

表示に関係を加える意味

自由群 $F(a,b)=\langle a,b\mid\varnothing\rangle$ に関係 $[a,b]=e$ を加えた商が $\mathbb Z^2$ になることを、普遍性を用いて示せ。

解答

関係 $[a,b]=e$ を加えると $a,b$ は可換するので、任意の語は $a^mb^n$ の形に直せます。写像
$$ a\mapsto(1,0),\qquad b\mapsto(0,1) $$
は $\mathbb Z^2$ への全射を定めます。逆に $(m,n)\mapsto a^mb^n$ は可換性により $\mathbb Z^2$ から商群への準同型です。二写像は生成元上で互いに逆なので、商は $\mathbb Z^2$ と同型です。□

参考文献

[1]
David S. Dummit and Richard M. Foote, Abstract Algebra, 3rd ed., Wiley, 2004

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