結晶景の定義に divided power を入れた理由を、原論文 7.4 の説明に沿って、可逆層の第一 Chern 類の構成として示す。結晶景から Zariski 景への忘却射 $u$ が定める二つの完全列と、divided power イデアル上の指数・対数が与える同型 $(1+\mathcal J)\cong\mathcal J$ を組み合わせると、任意標数で $c(L)\in H^2_{\mathrm{cris}}(X/S)$ が定まる。後半では、原論文 7.5 が指摘する非固有の場合の困難(結晶コホモロジーが $W$ 上無限階数になること)と、それを避けるために原論文が構想した Monsky–Washnitzer の景を、原論文の状態のまま記録する。
前提知識: divided power, Grothendieck位相, トポス, 完全列, 導来関手, Picard群, 第1Chern類, Wittベクトル
$S$ を底スキーム、$X$ を $S$ 上のスキームとし、結晶景 $\operatorname{Cris}(X/S)$、そのトポス $(X/S)_{\mathrm{cris}}$、構造層 $\mathcal O_{X/S}$、はめ込みのイデアル層 $\mathcal J$ は本書『6-1 結晶景と接続景』のとおりとする。対象は冪零な $S$-はめ込み $U\hookrightarrow T$($U\subset X$ は開)に、イデアル層 $\mathcal I_T$ 上の PD 冪零な divided power 構造 $\Theta$ を添えた三つ組 $(U\hookrightarrow T,\Theta)$ である。$X_{\mathrm{zar}}$ は $X$ の Zariski トポス、$H^n_{\mathrm{cris}}(X/S)=H^n((X/S)_{\mathrm{cris}},\mathcal O_{X/S})$ と書く。divided power 構造 $\gamma_n$ の公理と PD 冪零性(ある $N$ で $J^{[N]}=0$)は本書『0-4 形式スキーム・持上げ・divided power』のとおりで、原論文の $x^{(n)}$ を本書は $\gamma_n(x)$ と書く。
本頁の主結果は次の五つである。
複素多様体 $X$ 上の可逆層 $L$ の第一 Chern 類は、指数完全列 $0\to\mathbb Z\to\mathcal O_X\xrightarrow{\exp(2\pi i\,\cdot)}\mathcal O_X^*\to0$ の連結準同型 $H^1(X,\mathcal O_X^*)\to H^2(X,\mathbb Z)$ で定める(第1Chern類)。代数的には $d\log\colon\mathcal O_X^*\to\Omega^1_X$ が $H^1(X,\mathcal O_X^*)\to H^1(X,\Omega^1_X)\to H^2_{dR}(X)$ を与え、エタールコホモロジーでは Kummer完全列 $0\to\mu_n\to\mathbb G_m\xrightarrow{n}\mathbb G_m\to0$ が $\ell$ 進の $c_1$ を与える。どの構成も、乗法群 $\mathcal O_X^*$ を加法的な係数へ移す段をもつ。
原論文 7.4(印字 p. 354)は、結晶景の定義に divided power を入れたのは、任意標数で可逆層の第一 Chern 類 $c(L)\in H^2_{\mathrm{cris}}(X/S)$ を標数 $0$ の古典的な定義と類比して定めるために「事実上強いられた」ものだと説明する(原論文は、指数完全列と $d\log$ のどちらを古典的な定義と呼ぶかを書かない)。結晶景では、対象 $(U\hookrightarrow T,\Theta)$ の上で $\mathcal O_T^*$ から $\mathcal O_U^*$ への還元の核が $1+\mathcal I_T$ であり、この乗法群を加法群 $\mathcal I_T$ へ移すのが指数と対数である。$\exp(x)=\sum x^n/n!$ には $n!$ で割る操作が要り、標数 $p$ ではそれができない。イデアル層に divided power 構造 $\gamma_n$(「$x^n/n!$」の役をする写像)を最初から添えておけば、$\exp(x)=\sum\gamma_n(x)$ が任意標数で意味をもつ。これが divided power の動機である。
原論文 7.5(印字 p. 355)は、結晶コホモロジーの限界も同時に指摘する。$X_0$ が標数 $p$ の完全体 $k$ 上の固有でないスキーム、たとえば affine なら、$W=W(k)$ 上の結晶コホモロジーは $W$ 上無限階数の加群になり、$p$ 進コホモロジーとして妥当でない。根拠は本書『2-1 持上げの de Rham コホモロジーの不変性』で閉じた、形式的アフィン直線 $\operatorname{Spf}W\{t\}$ の $H^1_{dR}$ が $K=W[1/p]$ をテンソルしても無限次元になる計算である。この困難を避けるには、Monsky–Washnitzer の弱完備な持上げ(本書『2-2 弱完備代数と Monsky–Washnitzer コホモロジー』)と結晶トポスの考えを組み合わせねばならない、と原論文は述べ、その景の定義を試みる。本頁の後半はこの構想を記録する。
第一 Chern 類の構成に要るのは、結晶景の構造層とイデアル層、Zariski 景への忘却射、そして divided power イデアル上の指数と対数の三つである。まず結晶景の記号を短く繰り返す。
$\operatorname{Cris}(X/S)$ の対象 $(U\hookrightarrow T,\Theta)$ に $\Gamma(T,\mathcal O_T)$ を対応させる層を $\mathcal O_{X/S}$、$\Gamma(T,\mathcal I_T)$($\mathcal I_T$ ははめ込みのイデアル層)を対応させる層を $\mathcal J$ と書く。$\mathcal J$ は $\mathcal O_{X/S}$ のイデアル層であり、各対象の上で $\Theta$ が与える $\gamma_n\colon\mathcal I_T\to\mathcal I_T$ は射(divided power と両立する射)と可換なので、$\gamma_n\colon\mathcal J\to\mathcal J$ が層の写像として定まる。$\mathcal O_{X/S}^*$ を単元の層、$1+\mathcal J$ を $\{1+x\mid x\in\mathcal J\}$ が定める $\mathcal O_{X/S}^*$ の部分層とする。$\mathcal I_T$ は冪零なので $1+x$($x\in\mathcal I_T$)は単元で、逆元 $1-x+x^2-\cdots$ も $1+\mathcal I_T$ に入るから、$1+\mathcal J$ はアーベル群の層である。
次に、結晶景の対象からはめ込みの厚み $T$ を忘れる関手を置く。原論文の記号は揺れるので、本書の約束をここで決める。
$\varphi\colon\operatorname{Cris}(X/S)\to\operatorname{Zar}(X)$ を $(U\hookrightarrow T,\Theta)\mapsto U$、射 $(U,T,\Theta)\to(U',T',\Theta')$ には包含 $U\subset U'$ を対応させる関手とする。$X_{\mathrm{zar}}$ 上の層 $G$ に対し、$u^{-1}G:=G\circ\varphi$、すなわち $(u^{-1}G)(U,T,\Theta)=G(U)$ とおく。とくに $u^{-1}\mathcal O_X$ は $(U,T,\Theta)\mapsto\Gamma(U,\mathcal O_U)$、$u^{-1}\mathcal O_X^*$ は $(U,T,\Theta)\mapsto\Gamma(U,\mathcal O_U^*)$ である。
結晶景の被覆は $T$ の Zariski 開被覆であり、$U\hookrightarrow T$ は底空間の同相なので、$T$ の開被覆と $U$ の開被覆は一対一に対応する。したがって $u^{-1}G$ は前層としてだけでなく層の条件を満たす。これが下の命題で $u$ をトポスの射に仕立てる根拠である。
指数と対数の証明で普遍的な場合に帰着するため、divided power 多項式環を使う。
$\Gamma:=\mathbb Z\langle X\rangle$ を一変数の divided power 多項式環とする。$\mathbb Z$ 加群として $X^{[a]}$($a\ge0$)を基底とする自由加群で、積は $X^{[a]}X^{[b]}=\binom{a+b}{a}X^{[a+b]}$、$\Gamma^+:=\bigoplus_{a\ge1}\mathbb ZX^{[a]}$ は $\gamma_n(X^{[a]})=\frac{(na)!}{n!\,(a!)^n}X^{[na]}$ で PD イデアルである(本書『0-4 形式スキーム・持上げ・divided power』の divided power 包絡の言明の例)。$X^{[a]}$ の重みを $a$ とし、$\Gamma_w$ を重み $w$ の斉次部分、$\hat\Gamma:=\prod_{w\ge0}\Gamma_w$ を重みによる完備化とする。$X^{[a]}\mapsto X^a/a!$ は単射な環準同型 $\Gamma\to\mathbb Q[X]$ を与え、重みを次数に移すので、$\hat\Gamma\to\mathbb Q[\![X]\!]$ も単射である。$\mathbb Q[X]$ のイデアル $(X)$ 上のただ一つの divided power 構造 $f\mapsto f^n/n!$ は $\Gamma^+$ 上の構造を延長し、$\gamma_n$ は重み $w$ の斉次元を重み $nw$ の斉次元へ送る。よって $\hat\Gamma^+:=\prod_{w\ge1}\Gamma_w$ の上でも $\gamma_n(\sum_wf_w)=\sum_{\sum_wn_w=n}\prod_w\gamma_{n_w}(f_w)$(各重みには有限個の項しか寄与しない)で divided power 構造が定まり、$\mathbb Q[\![X]\!]$ の中では $\gamma_n(f)=f^n/n!$ である。
次の事実は証明せずに引用する。出典は本書の第 0 章の頁と『6-1 結晶景と接続景』、および SGA4・Stacks で、後の二つの該当箇所は本頁では確認していない。
忘却関手 $\varphi$ はトポスの射 $u\colon(X/S)_{\mathrm{cris}}\to X_{\mathrm{zar}}$ を定め、その逆像は $u^{-1}G=G\circ\varphi$ である。$(X/S)_{\mathrm{cris}}$ 上のアーベル層の列
$$0\to\mathcal J\to\mathcal O_{X/S}\to u^{-1}\mathcal O_X\to0,\qquad0\to1+\mathcal J\to\mathcal O_{X/S}^*\to u^{-1}\mathcal O_X^*\to0$$
はどちらも完全である。ここで第三項への写像は、対象 $(U\hookrightarrow T,\Theta)$ の上で $\mathcal O_T\to\mathcal O_U$(および $\mathcal O_T^*\to\mathcal O_U^*$)への還元である。
段 1(トポスの射).$\operatorname{Cris}(X/S)$ の対象 $(U\hookrightarrow T,\Theta)$ の被覆族は $T$ の Zariski 開被覆 $(T_i)$ から来る族 $((U\cap T_i\hookrightarrow T_i,\Theta|_{T_i}))_i$ で、$U\hookrightarrow T$ は冪零はめ込みだから底空間の同相であり、$U$ の開被覆と $T$ の開被覆は一対一に対応する。よって $\varphi$ は被覆を $U$ の Zariski 被覆へ送り(被覆の射の fiber 積 $(U\cap T_i\cap T_j\hookrightarrow T_i\cap T_j)$ は $U_i\cap U_j$ へ移るので fiber 積も保つ)、逆に $\varphi(U,T,\Theta)=U$ の任意の Zariski 被覆は $(U,T,\Theta)$ の被覆の像である。引用する事実 2 により $G\mapsto G\circ\varphi$ は層を層へ送る完全関手で右随伴をもち、トポスの射 $u$ の逆像である。
段 2(第一の列).引用する事実 1 により、完全性は各対象 $(U\hookrightarrow T,\Theta)$ の上で、$T$ 上の Zariski 層の列 $0\to\mathcal I_T\to\mathcal O_T\to\mathcal O_U\to0$ の完全性に帰着する($u^{-1}\mathcal O_X$ の $(U,T,\Theta)$ 上の値 $\mathcal O_U$ は、底空間が同じなので $T$ 上の層と見てよい)。$U\hookrightarrow T$ は閉はめ込みで $\mathcal O_U=\mathcal O_T/\mathcal I_T$ だから完全である。
段 3(第二の列).同じく各対象の上で $0\to1+\mathcal I_T\to\mathcal O_T^*\to\mathcal O_U^*\to0$ の完全性を示す。核が $1+\mathcal I_T$ であることは、$a\in\mathcal O_T^*$ の像が $1$ であることが $a-1\in\mathcal I_T$ と同値だからである。全射性は層としての全射性、すなわち局所的な持上げの存在でよい。$\bar a\in\mathcal O_U^*$ の局所的な持上げ $a\in\mathcal O_T$ を取り、$\bar a$ の逆元の持上げ $b$ を取ると $ab=1+x$($x\in\mathcal I_T$)であり、$\mathcal I_T$ は冪零だから $1+x$ は単元、よって $a$ は単元である。
命題の証明では、原論文の記号のうち $u^*$・$u_*$ の揺れを $u^{-1}$ に統一した。原論文の印字が誤植かどうかは、逆向きの射を考えると決着する。
原論文は関手を $u^*$、完全列の第三項を $u_*\mathcal O_X$・$u_*\mathcal O_X^*$ と印字する(読解ノート B の T-19 は表記の揺れとして記録する)。本書は上の命題のとおり $u^{-1}$ と書く。ただし印字 $u_*$ は次の意味に読めば誤植ではない。$i\colon\operatorname{Zar}(X)\to\operatorname{Cris}(X/S)$、$U\mapsto(U\hookrightarrow U,0)$(自明な厚み。イデアル $0$ 上の divided power 構造は $\gamma_n(0)=0$ のただ一つ)は $\varphi\circ i=\mathrm{id}$ を満たし、被覆を保ち被覆を持ち上げるので、引用する事実 2 によりトポスの射 $\bar u\colon X_{\mathrm{zar}}\to(X/S)_{\mathrm{cris}}$、$\bar u^{-1}F=F\circ i$ を定める。$\bar u_*G$ の対象 $(U\hookrightarrow T,\Theta)$ 上の値は $\operatorname{Hom}(\bar u^{-1}h_{(U,T,\Theta)},G)$ であり、$(V\hookrightarrow V,0)$ から $(U\hookrightarrow T,\Theta)$ への射は $V\subset U$ と、$V\hookrightarrow V\to T$ が $V\subset U\hookrightarrow T$ に等しいという条件で一意に定まる射 $V\to T$ の組だから、$\bar u^{-1}h_{(U,T,\Theta)}=h_U$ で $\bar u_*G(U,T,\Theta)=G(U)$。すなわち $\bar u_*=u^{-1}$、また $\bar u^{-1}u^{-1}G=G\circ\varphi\circ i=G$ で $u\circ\bar u=\mathrm{id}$ である。原論文の $u_*$ はこの $\bar u_*$ と読める。本書『5-2 冪零はめ込みでの不変性と微分作用素』の $u_*$ についても同じ読みが成り立つ。
二つの完全列で、単元の層の還元の核は $1+\mathcal J$、構造層の還元の核は $\mathcal J$ である。両者を結ぶのが指数と対数であり、ここで初めて divided power が使われる。
$(J,\gamma)$ を環 $A$ の PD 冪零な PD イデアルとする。$x\in J$ について
$$\exp(x):=\sum_{n\ge0}\gamma_n(x),\qquad\log(1+x):=\sum_{n\ge1}(-1)^{n-1}(n-1)!\,\gamma_n(x)$$
とおく。どちらも有限和で、$\exp\colon(J,+)\to(1+J,\times)$ と $\log\colon(1+J,\times)\to(J,+)$ は互いに逆な群同型である。$(X/S)_{\mathrm{cris}}$ 上のイデアル層 $\mathcal J$ についても、対象ごとに同じ式で定めた $\exp$ と $\log$ は互いに逆なアーベル層の同型 $\mathcal J\cong1+\mathcal J$ を与える。
段 1(有限和と行き先).PD 冪零性により $J^{[N]}=0$ なる $N$ があり、$n\ge N$ なら $\gamma_n(x)\in J^{[n]}\subset J^{[N]}=0$ である。よって両方の和は $n< N$ の項だけで、$n\ge1$ で $\gamma_n(x)\in J$ だから $\exp(x)\in1+J$、$\log(1+x)\in J$ である。
段 2($\exp$ の加法性).公理 (2) $\gamma_n(x+y)=\sum_{i+j=n}\gamma_i(x)\gamma_j(y)$ を $n$ について足すと、有限和なので順序を変えてよく、$\exp(x+y)=\sum_{i,j}\gamma_i(x)\gamma_j(y)=\exp(x)\exp(y)$ となる。
段 3(普遍的な場合の恒等式).$\Gamma=\mathbb Z\langle X\rangle$ とその完備化 $\hat\Gamma\subset\mathbb Q[\![X]\!]$ を上の定義のとおりとする。$\hat\Gamma$ の中で $E:=\sum_{n\ge0}\gamma_n(X)=\sum X^{[n]}$、$\Lambda:=\sum_{n\ge1}(-1)^{n-1}(n-1)!\,\gamma_n(X)$ とおくと、$\mathbb Q[\![X]\!]$ の中では $E=\sum X^n/n!=e^X$、$\Lambda=\sum(-1)^{n-1}X^n/n=\log(1+X)$ である。$z:=E-1\in\hat\Gamma^+$ について $\hat\Gamma$ の divided power で $\sum_{m\ge1}(-1)^{m-1}(m-1)!\,\gamma_m(z)$ を作ると($\gamma_m(z)$ は重み $\ge m$ の成分しかもたないので、この和は $\hat\Gamma$ の中で各重みごとに有限和である)、$\mathbb Q[\![X]\!]$ の中では $\sum(-1)^{m-1}z^m/m=\log(1+z)=\log(e^X)=X$ であり、$\hat\Gamma\to\mathbb Q[\![X]\!]$ は単射だから、$\hat\Gamma$ の中で
$$\sum_{m\ge1}(-1)^{m-1}(m-1)!\,\gamma_m(E-1)=X\qquad\text{(i)}$$
が成り立つ。同様に $\Lambda\in\hat\Gamma^+$ について $\sum_{n\ge0}\gamma_n(\Lambda)$ は $\mathbb Q[\![X]\!]$ の中で $e^{\log(1+X)}=1+X$ だから、$\hat\Gamma$ の中で
$$\sum_{n\ge0}\gamma_n(\Lambda)=1+X\qquad\text{(ii)}$$
が成り立つ。ここで使った形式冪級数の恒等式 $\log(e^X)=X$、$e^{\log(1+X)}=1+X$ は $\mathbb Q$ 上の標準的なものである。
段 4($A$ への移行).$x\in J$ を取る。引用する事実 4 により $X\mapsto x$ なる PD 準同型 $\theta\colon\Gamma\to A$ がある。$\theta$ は $\Gamma_w$($w\ge N$)を $J^{[N]}=0$ へ送る($\Gamma_w$ は $X^{[w]}=\gamma_w(X)$ で張られ、$\theta(X^{[w]})=\gamma_w(x)$)。よって $\theta$ は重み $\ge N$ を消して $\hat\theta\colon\hat\Gamma\to A$ に延び、$\hat\theta$ は環準同型で、$\hat\Gamma^+$ 上の $\gamma_n$ と $J$ 上の $\gamma_n$ を両立させる($\gamma_n(\sum_wf_w)$ の展開の各項は $\prod_w\gamma_{n_w}(f_w)$ で、$\theta$ が PD 準同型だから項ごとに移り、公理 (2) で $A$ の側でまとめ直せる)。$\hat\theta(E)=\exp(x)$、$\hat\theta(\Lambda)=\log(1+x)$ であり、(i) に $\hat\theta$ を施すと $\log(\exp(x))=x$、(ii) に施すと $\exp(\log(1+x))=1+x$ を得る。よって $\exp$ と $\log$ は互いに逆な全単射で、段 2 により $\exp$ は準同型だから、両方とも群同型である。
段 5(層への移行).対象 $(U\hookrightarrow T,\Theta)$ の上で、$\Gamma(T,\mathcal I_T)$ は $\Gamma(T,\mathcal O_T)$ の PD イデアルで、$\Theta$ が PD 冪零($\mathcal I_T^{[N]}=0$ なる $N$ がある)だから、$\Gamma(T,\mathcal I_T)^{[N]}\subset\Gamma(T,\mathcal I_T^{[N]})=0$ により同じ $N$ で PD 冪零である。開集合 $V\subset T$ 上の切断についても同じである。段 1〜4 を各対象に当てると、$\exp\colon\mathcal J\to1+\mathcal J$ と $\log\colon1+\mathcal J\to\mathcal J$ は前層の写像として定義され(射は $\gamma_n$ と可換だから制限と両立する)、各対象の上で互いに逆な同型である。よって層の同型である。
原論文 7.4 の式 (*)(印字 p. 355)は $\log(1+x)=\sum_{n\ge1}(n-1)!\,(-1)^nx^{(n)}$ と印字する(読解ノート B の T-16)。この符号では $\log(1+x)=-x+\gamma_2(x)-\cdots$ となり、$\log(\exp(x))\equiv-x$(重み $\ge2$ を法として)で $\exp$ の逆にならない。正しい符号は $(-1)^{n-1}$ で、本書『0-4 形式スキーム・持上げ・divided power』の言明もこの形である。$\exp$ の式 $1+\sum_{n\ge1}x^{(n)}$ は原論文のとおりでよい。
$\exp$ と $\log$ を得るのに使ったのは、公理 (2)(加法性)、$\mathbb Z\langle X\rangle$ の普遍性、PD 冪零性による有限和の三つだけである。これで、単元の還元の核 $1+\mathcal J$ を加法的な $\mathcal J$ に取り替える道具が揃い、第一 Chern 類が構成できる。
$L$ を $X$ 上の可逆層、$[L]\in H^1(X_{\mathrm{zar}},\mathcal O_X^*)$ をその類とする。写像の列
$$H^1(X_{\mathrm{zar}},\mathcal O_X^*)\xrightarrow{u^{-1}}H^1((X/S)_{\mathrm{cris}},u^{-1}\mathcal O_X^*)\xrightarrow{\ \delta\ }H^2((X/S)_{\mathrm{cris}},1+\mathcal J)\xrightarrow{\ \log\ }H^2((X/S)_{\mathrm{cris}},\mathcal J)\to H^2_{\mathrm{cris}}(X/S)$$
($\delta$ は第二の完全列の連結準同型、最後は $\mathcal J\subset\mathcal O_{X/S}$ が誘導する写像)による $[L]$ の像を $c(L)\in H^2_{\mathrm{cris}}(X/S)$ と書き、$L$ の第一 Chern 類という。$c(L\otimes L')=c(L)+c(L')$ が成り立ち、$c$ は群準同型 $\operatorname{Pic}(X)\to H^2_{\mathrm{cris}}(X/S)$ である。
段 1(各写像が準同型であること).$u^{-1}$ によるコホモロジーの写像は引用する事実 2、連結準同型 $\delta$ は引用する事実 3 の長完全列の一部、$\log$ は上の命題(divided power イデアル上の指数と対数)の層の同型が誘導する同型、最後は層の射が誘導する写像で、いずれもアーベル群の準同型である。
段 2(加法性).引用する事実 3 により $\operatorname{Pic}(X)\cong H^1(X_{\mathrm{zar}},\mathcal O_X^*)$ でテンソル積は加法に対応するから、$[L\otimes L']=[L]+[L']$($H^1(\mathcal O_X^*)$ の群構造を加法で書く)。準同型の合成は準同型なので $c(L\otimes L')=c(L)+c(L')$ である。
構成の各段は、Zariski の類を結晶景へ持ち込み($u^{-1}$)、厚みの方向への延長の障害を測り($\delta$)、乗法を加法に直し($\log$)、構造層の係数へ落とす(包含)と読める。原論文は $\delta$ の像について「持上げの障害」と述べる一文を別字体で添える。その正確な形は次の命題である。
$\delta\colon H^1((X/S)_{\mathrm{cris}},u^{-1}\mathcal O_X^*)\to H^2((X/S)_{\mathrm{cris}},1+\mathcal J)$ を第二の完全列の連結準同型とする。$u^{-1}[L]$ が結晶景上の可逆 $\mathcal O_{X/S}$ 加群の類 $[\mathcal L]\in H^1((X/S)_{\mathrm{cris}},\mathcal O_{X/S}^*)$ の像になる($\mathcal L$ が $L$ の持上げである)ための必要十分条件は $\delta(u^{-1}[L])=0$ である。$c(L)$ は $\delta(u^{-1}[L])$ の $\log$ による像を $H^2_{\mathrm{cris}}(X/S)$ へ送ったものだから、$c(L)\ne0$ なら $L$ は持ち上がらない。逆は、$H^2((X/S)_{\mathrm{cris}},\mathcal J)\to H^2_{\mathrm{cris}}(X/S)$ が単射なら成り立つ。$\mathcal L$ が $L$ の持上げなら、自明な厚み $(X\hookrightarrow X,0)$ 上の $\mathcal L$ の値は $L$ に同型である。
段 1(完全性).第二の完全列の長完全列 $H^1(\mathcal O_{X/S}^*)\to H^1(u^{-1}\mathcal O_X^*)\xrightarrow{\delta}H^2(1+\mathcal J)$ の完全性が最初の主張であり、引用する事実 3 により $H^1((X/S)_{\mathrm{cris}},\mathcal O_{X/S}^*)$ は可逆 $\mathcal O_{X/S}$ 加群の同型類の群である。$\log$ は同型だから $\delta(u^{-1}[L])=0$ と $\log\delta(u^{-1}[L])=0$ は同値で、後者が $0$ なら $c(L)=0$。$H^2(\mathcal J)\to H^2(\mathcal O_{X/S})$ が単射なら逆も成り立つ。
段 2(自明な厚み上の値).上の注意(原論文の印字 $u_*$ の読み方)の $\bar u$ について $\bar u^{-1}u^{-1}=\mathrm{id}$ であり、$\bar u^{-1}\mathcal O_{X/S}=\mathcal O_X$、$\bar u^{-1}\mathcal L$ は $(X\hookrightarrow X,0)$ 上の $\mathcal L$ の値である。層の射 $\mathcal O_{X/S}^*\to u^{-1}\mathcal O_X^*$ に $\bar u^{-1}$ を施すと $\mathcal O_X^*$ の恒等写像になる(対象 $(U\hookrightarrow U,0)$ の上では還元 $\mathcal O_U^*\to\mathcal O_U^*$ が恒等だから)ので、$[\mathcal L]\mapsto u^{-1}[L]$ に $\bar u^{-1}$ を施すと $[\bar u^{-1}\mathcal L]=\bar u^{-1}u^{-1}[L]=[L]$ となる。$\bar u^{-1}\mathcal O_{X/S}=\mathcal O_X$ だから $\bar u$ は環付きトポスの射で、$\bar u^{-1}\mathcal L$ は可逆 $\mathcal O_X$ 加群であり、その類が $\bar u^{-1}[\mathcal L]$ である。
原論文の「$c(L)$ は $L$ を結晶景上の可逆層へ持ち上げる障害と見られる」の一文(印字 p. 355)は別字体で印字され、仏語式の綴りを含む(読解ノート B の U-7)。後からの挿入である可能性があり、帰属は判定しない。上の命題のとおり、障害そのものは $H^2((X/S)_{\mathrm{cris}},\mathcal J)$ の類であり、$c(L)$ はその像である。
以上で 7.4 の内容は閉じた。divided power は、単元の層の核 $1+\mathcal J$ を加法群 $\mathcal J$ へ移すためだけに使われている。次は原論文 7.5、すなわち固有でない $X_0$ で結晶コホモロジーが大きくなりすぎるという指摘である。
$k$ を標数 $p>0$ の完全体、$W=W(k)$、$S=\operatorname{Spec}W$ とし、$X_0$ を $k$ 上の固有でない(たとえば affine な)スキームとする(原論文は滑らかさを仮定しない)。原論文 7.5 は、$H^*_{\mathrm{cris}}(X_0/S)$ が $W$ 上有限階数の加群にならず、$p$ 進コホモロジーとして妥当でないと断定し、その根拠として 2.1 の形式的アフィン直線の de Rham コホモロジーの計算を引く。
要点のみ述べる。原論文の推論は二段からなる。段 1(形式的持上げの計算).$X_0=\mathbb A^1_k$ の形式的持上げ $\operatorname{Spf}W\{t\}$ について、$H^1(\Omega^\bullet_{W\{t\}/W})\otimes_WK$ は $K$ 上無限次元である(引用する事実 5)。段 2(結晶コホモロジーへの接続).$H^*_{\mathrm{cris}}(\mathbb A^1_k/S)$ が $H^*_{dR}(\operatorname{Spf}W\{t\}/W)$ に一致すれば、段 1 により $H^1_{\mathrm{cris}}(\mathbb A^1_k/S)\otimes K$ は無限次元で、$W$ 上有限階数でない。段 2 の一致は、crucial test(引用する事実 6)の非固有版に当たる。crucial test の証明は、見込み a)・b) のほかに、$W_n$ 上の結晶コホモロジーの射影極限を取る段で固有性から来る有限性(Mittag-Leffler 条件)を使い、非固有では形式完備化の de Rham コホモロジーへの移行に別の根拠が要る。原論文はこの段を書かず、本書もこの頁の範囲では閉じない。状態は未完結である。
原論文はこの困難を、固有性を仮定して避けるのではなく、景の定義を変えて避けようとする。$p$ 進完備な持上げの代わりに Monsky–Washnitzer の弱完備な持上げを厚みの役に使う、という構想である。
$k$、$W$ を上のとおりとし、$X_0$ を $k$ 上のスキームとする。原論文 7.5(印字 p. 355–356)が「とりあえず」と断って試みる環付き景の対象は三つ組 $(U_0=\operatorname{Spec}A_0,\ U=\operatorname{Spec}A,\ D)$ である。ここで $U_0$ は $X_0$ の affine 開集合、$A$ は全射 $A\to A_0$(augmentation)をもつ $W$ 上の Monsky–Washnitzer 代数(本書『2-2 弱完備代数と Monsky–Washnitzer コホモロジー』)、$D$ は augmentation イデアル $J=\ker(A\to A_0)$ 上の位相的に冪零な divided power 構造で、$\operatorname{Spec}A$ が無限小の厚みの役を演じる。射は明らかなもの、位相は $X_0$ の Zariski 位相から誘導する(本書『4-1 infinitesimal 景と stratifying 景』の無限小景と同じ仕方)。対応するトポスを原論文は $X_0$ の $k$ 上の Monsky–Washnitzer トポスと呼び $(X_0/k)_{WM}$ と書く。本書はこの定義を写すだけで、この景の上の主張は立てない。原論文は「位相的に冪零」の意味を書かず、本書もここでは定めない。
原論文 7.5 は次の三つを述べる(印字 p. 355–356)。(a) 非固有の場合の困難は、Monsky–Washnitzer の持上げを結晶トポスの基本的な考えと組み合わせる方法を「好むと好まざるとにかかわらず」作らねばならないことの明白な証拠に見える(見込み)。(b) 上の景の、局所環の標準層を係数とするコホモロジーは $X_0$ の正しい Betti 数($k$ が代数閉なら $\ell\ne p$ の $\ell$ 進理論と同じもの)を与えると期待してよい(期待)。(c) 惜しい点として、この構想は不等標数のスキームにも働く結晶コホモロジーと比べ、標数 $p>0$ の完全な基礎体という仮定に密着しすぎているように見える(評価)。いずれも判定の対象ではなく、原論文の状態のまま記録する。本書『2-2 弱完備代数と Monsky–Washnitzer コホモロジー』の持上げの景 $X_{0,WM}$ は持上げ $A$ だけを対象とし、divided power 構造 $D$ を添えない点で上の景と異なる。
指数と対数は有限和なので、小さい環で具体的に計算できる。まず PD 冪零な場合に同型が実際に成り立つことを確かめ、次に PD 冪零性を外すと同型が存在しないことを見る。
(a) $A=\mathbb Z/27$、$J=(3)$、$\gamma_n(3x)=3^nx^n/n!$($W(\mathbb F_3)=\mathbb Z_3$ の標準的な構造を降ろしたもの。本書『0-4 形式スキーム・持上げ・divided power』の例 (c)。$p=3$ なので PD 冪零である)。$v_3(\gamma_n(3))=n-v_3(n!)=(n+s_3(n))/2$ は $n=1,2,3,4$ で $1,2,2,3$、$n\ge5$ では $(n+1)/2\ge3$ だから、$\mathbb Z/27$ では $\gamma_n(3)=0$($n\ge4$)、$\gamma_2(3)=\gamma_3(3)=9/2=9\cdot14=18$($2^{-1}=14$)。よって $\exp(3)=1+3+18+18=13$、$\log(1+3)=3-18+2\cdot18=21$。検算:$\gamma_n(21)=7^n\gamma_n(3)$ で $\gamma_2(21)=22\cdot18=18$、$\gamma_3(21)=19\cdot18=18$ だから $\exp(21)=1+21+18+18=4=1+3$、また $\log(13)=\log(1+12)$ は $\gamma_2(12)=16\cdot18=18$、$\gamma_3(12)=10\cdot18=18$ から $12-18+36=3$ である。$1+J=\{1+3k\}$ と $J=3\mathbb Z/27$ はどちらも位数 $9$ の巡回群で、$\exp$ がその同型を与えている。(b) $A=\mathbb F_p[t]/(t^p)$、$J=(t)$、$\gamma_n(t)=t^n/n!$($n< p$)、$\gamma_n(t)=0$($n\ge p$)(同じ頁の例 (d)。$J^{[p]}=0$ なので PD 冪零)。このとき $\exp(t)=\sum_{n< p}t^n/n!$、$\log(1+t)=\sum_{n< p}(-1)^{n-1}t^n/n$ は通常の級数を次数 $p-1$ で切ったものである。$p=3$ では $\exp(t)=1+t+2t^2$、$\log(1+t)=t+t^2$ で、$x=t+2t^2$ について $x+x^2=t+3t^2=t$、$y=t+t^2$ について $1+y+2y^2=1+t+3t^2=1+t$ となり、$t^3=0$ の下で互いに逆である。
外す条件は PD 冪零性である。$A=\mathbb Z/8$、$J=(2)$ に $\mathbb Z_2$ の $(2)$ 上の標準的な構造 $\gamma_n(2x)=2^nx^n/n!$ を降ろす($8\mathbb Z_2$ は部分 PD イデアルである:$v_2(\gamma_n(8x))\ge3n-v_2(n!)\ge2n+1\ge3$)。$\mathbb Z/4$ では $1+J=\{1,3\}$ と $J=\{0,2\}$ がともに位数 $2$ で同型になってしまうので、$\mathbb Z/8$ を取る。$J^3=0$ だから $J$ は冪零だが、$v_2(\gamma_{2^i}(2))=2^i-(2^i-1)=1$ なので $\gamma_{2^i}(2)$ は $\mathbb Z/8$ の中で $2$ または $6$ であり、すべての $i$ で零でない。すなわち PD 冪零でなく、$\exp(2)=\sum\gamma_n(2)$ は零でない項を無限個もち定義できない。しかもこの場合は、どんな写像でも同型 $(1+J,\times)\cong(J,+)$ は存在しない:$1+J=\{1,3,5,7\}$ は $3^2=5^2=7^2=1$ により $(\mathbb Z/2)^2$ であり、$J=\{0,2,4,6\}$ は位数 $4$ の巡回群である。上の命題(divided power イデアル上の指数と対数)の PD 冪零性の仮定は、和を有限にするためだけでなく、結論のためにも必要である。$p\ge3$ では $\mathbb Z/p^n$ の $(p)$ に降ろした標準的な構造は PD 冪零である(本書『0-4 形式スキーム・持上げ・divided power』の例 (c))ので、これは $p=2$ に特有の現象であり、$\operatorname{Spec}\mathbb F_2\hookrightarrow\operatorname{Spec}\mathbb Z/8$ に標準的な divided power を添えたものが原論文の結晶景の対象にならない理由でもある。
第一 Chern 類については、その値を直接計算する手段を本頁はもたないが、自明な厚みへの制限では必ず消えることが確かめられる。
上の注意(原論文の印字 $u_*$ の読み方)のトポスの射 $\bar u\colon X_{\mathrm{zar}}\to(X/S)_{\mathrm{cris}}$ について、$\bar u^{-1}\mathcal J$ は $U\mapsto\mathcal J(U\hookrightarrow U,0)=0$ だから零層であり、$\bar u^{-1}\mathcal O_{X/S}=\mathcal O_X$ である。$c(L)$ は $H^2((X/S)_{\mathrm{cris}},\mathcal J)$ の類の像なので、$\bar u^{-1}$ で $H^2(X_{\mathrm{zar}},\bar u^{-1}\mathcal J)=0$ を経由し、$\bar u^{-1}c(L)=0\in H^2(X_{\mathrm{zar}},\mathcal O_X)$ となる。第一 Chern 類は厚みの方向にだけ現れ、Zariski 位相だけでは見えない。同じ理由で、$\bar u^{-1}$ を第二の完全列に施すと $0\to0\to\mathcal O_X^*\to\mathcal O_X^*\to0$ となり、$\delta$ の $\bar u^{-1}$ による像は零である。
$k$、$W$ を上のとおりとする。$X_0=\mathbb P^1_k$ は固有滑らかな持上げ $\mathbb P^1_W$ をもち、$H^*_{dR}(\mathbb P^1_W/W)$ は次数 $0,1,2$ で $W,0,W$ である(Hodge–de Rham 系列が $E_1$ で退化し、$H^1(\mathbb P^1_W,\Omega^1)=W$)。見込み a)・b) を仮定すれば、crucial test(引用する事実 6)により $H^*_{\mathrm{cris}}(\mathbb P^1_k/W)$ も $W,0,W$ で、有限階数である。可逆層 $\mathcal O(1)$ の $c(\mathcal O(1))\in H^2_{\mathrm{cris}}(\mathbb P^1_k/W)$ がこの $W$ の生成元に当たるかどうかは、本書は確かめていない。一方 $X_0=\mathbb A^1_k$ では、上の命題(非固有の場合の無限階数)の段 2 の接続が閉じていないため、本書が確かめられるのは形式的持上げの側の $H^1(\Omega^\bullet_{W\{t\}/W})\otimes K$ が無限次元であることまでである。過収束級数環 $W\{t\}^\dagger$ に取り替えると $H^1\otimes K=0$ になる(本書『2-1 持上げの de Rham コホモロジーの不変性』)ことが、Monsky–Washnitzer の景の構想の出発点である。
以下は原論文の主張ではなく、後代の結果の紹介である(本頁の執筆時点 2026 年の知識による。「本書は確かめていない」と付したものは文献を開いていない)。概説は Illusie Ill94 を見よ。
本頁が対応する原論文は Crystals and the De Rham cohomology of schemes Gro68c である。
| 本頁 | 原論文 | 印字頁 |
|---|---|---|
| 背景と動機(divided power を入れた理由) | 7.4 冒頭 | 354 |
| 定義(結晶景の構造層とイデアル層)、定義(忘却関手と Zariski 層の引き戻し)、命題(忘却射と二つの完全列)、注意(原論文の印字 $u_*$ の読み方) | 7.4 の忘却関手と二つの完全列 | 354 |
| 定義(一変数の divided power 多項式環と重み)、命題(divided power イデアル上の指数と対数)、注意(原論文の符号) | 7.4 の式 (*) | 355 |
| 定理(第一 Chern 類の構成) | 7.4 の $c(L)$ の構成 | 355 |
| 命題(障害類としての解釈)、注意(障害類の一文の帰属) | 7.4 の別字体の一文 | 355 |
| 命題(非固有の場合の無限階数) | 7.5 冒頭(2.1 の計算を引く) | 355 |
| 定義(Monsky–Washnitzer の景の構想) | 7.5 の環付き景 $(X_0/k)_{WM}$ | 355–356 |
| 注意(原論文の期待と評価) | 7.5 の見込み・期待・評価 | 355–356 |
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