4-2 エタールと fppf の比較定理

$$\newcommand{C}[0]{\mathbb{C}} \newcommand{N}[0]{\mathbb{N}} \newcommand{Q}[0]{\mathbb{Q}} \newcommand{R}[0]{\mathbb{R}} \newcommand{Z}[0]{\mathbb{Z}} $$

要約。エタールと fppf の比較定理(comparison of étale and fppf cohomology)とは、スキーム $X$ 上の滑らかな可換群スキーム $G$ について、エタールコホモロジー $H^i(X,G)$ と fppf コホモロジー $H^i(X_{\mathrm{fppf}},G)$ がすべての次数で一致するという定理である。Grothendieck は講演「Le groupe de Brauer」III の付録 §11 でこれを証明し、§5 の足場にした。本頁は底を広げていく順に証明を組み立てる。まず分離閉体の上で局所な有限代数による被覆の Čech コホモロジーが消えることを示し、次に滑らかさと Hensel 性による閉部分からの持ち上げ(鍵補題)で Hensel 局所な底へ移り、有限局所自由な被覆への帰着(Cartan の補題)で狭義局所な底の消滅を得て、最後に高次順像の茎の計算で一般のスキームに戻る。原論文の二つの補題は印字のままでは成り立たないので、正しい形と反例を示す。原論文 III §11 に当たる。

前提知識: fppf位相, エタールコホモロジー, Čechコホモロジー, 狭義Hensel局所環, 滑らかな射, 群スキーム

この頁で示すこと

記号は本書の記号表に従う。$H^i(X,F)$ はエタールコホモロジー、$H^i(X_{\mathrm{fppf}},F)$ は fppf コホモロジーである。サイトの射を $\varepsilon:X_{\mathrm{fppf}}\to X_{\mathrm{et}}$ と書く(原論文は $p$ と書く)。被覆 $X'\to X$ に関する Čech コホモロジーは $\check H^i(X'/X,G)$ と書き、導来関手のコホモロジーと区別する。
以下、$G$$X$ 上の滑らかな可換群スキーム(局所有限表示)とし、$T\mapsto\operatorname{Hom}_X(T,G)$ で定まる層を同じ文字で書く。本頁の主結果は次である(エタールコホモロジーとfppfコホモロジーの比較定理)。

  1. 比較(III (11.7) 1°)):すべての $i$ について $H^i(X,G)\to H^i(X_{\mathrm{fppf}},G)$ は同型である。とくに $X$ が狭義局所なら $H^i(X_{\mathrm{fppf}},G)=0$$i\ge1$)。
  2. Hensel 局所な底での制限(III (11.7) 2°)):$X$ が Hensel 局所、$X_0\subset X$空でない閉部分スキームなら、制限 $H^i(X,G)\to H^i(X_0,G_0)$$i\ge1$$G_0=G\times_XX_0$)はエタール位相でも fppf 位相でも全単射である。
  3. 有限局所自由な被覆の Čech コホモロジー(III (11.7) 3°)):2 の設定で、$X$ 上有限局所自由な $X'$ について $\check H^i(X'/X,G)\to\check H^i(X'_0/X_0,G)$$i\ge1$ で全単射であり、$X$ が狭義局所なら $\check H^i(X'/X,G)=0$$i\ge1$)。
  4. エタール層の引き戻し(III (11.9)):$X_{\mathrm{et}}$ 上のアーベル層 $F$ について、$\varepsilon_*\varepsilon^*F=F$ であり、$H^i(X,F)\to H^i(X_{\mathrm{fppf}},\varepsilon^*F)$ はすべての $i$ で同型である。
    原論文は 1〜3 を、群スキームで表されるとは限らない層で、二つの条件を満たすものについて述べる。本頁はその一般形を主張しない(「主結果と証明」の最後の注意)。
    証明は引用に依存する。本頁で使う引用は「定義と準備」に一覧にする。

背景と動機

fppf 位相はエタール位相より細かく、平坦な有限射、とくに純非分離な射や $\operatorname{Spec}k[S]/(S^p-a)$ のような射も被覆に数える。そのため、一般の群では fppf コホモロジーの方が大きくなりうる(下の例)。他方、滑らかな群スキームの点は、平坦な被覆の上で見つかればエタールな被覆の上でも見つかる、というのが直観である。本書の 4-1 の頁で見たとおり、原論文の §5 はこの一致を使って、fppf 位相で自然に定義される相対 Picard 関手と、エタール位相で定義される Brauer 群をつないでいた。
証明の難しさは、fppf 被覆がエタール被覆で細分できないことにある。本頁では、底を次の順に広げることでこれを崩す。

  1. 体。 分離閉体 $k$ の上では、局所な有限 $k$ 代数による被覆は普遍同相なので、余鎖の群が滑らかな群スキームで表され、滑らかなスキームの有理点の存在から Čech コホモロジーが消える。
  2. Hensel 局所な底。 有限局所自由な被覆の Čech コホモロジーを、空でない閉部分への制限と比べる。その差は「閉部分で単位元になる余鎖」のなす核の関手で測られ、それが消えることを $G$滑らかさ(無限小持ち上げ)と底の Hensel 性(閉部分からの切断の持ち上げ)から示す(鍵補題)。
  3. 狭義局所な底。 fppf 被覆は有限局所自由な被覆で細分できるので、導来関手のコホモロジーの消滅は Čech コホモロジーの消滅に帰着する(Cartan の補題)。鍵補題で閉点に落とし、1 を使う。
  4. 一般のスキーム。 比較は高次順像 $R^i\varepsilon_*G$ の消滅と同値であり、その茎は狭義局所化の上の fppf コホモロジーなので、3 に帰着する。

定義と準備

基本の語

  • fppf サイト $X_{\mathrm{fppf}}$$X$ 上局所有限表示なスキームを対象とし、平坦かつ局所有限表示な射の全射族を被覆とするサイト(fppf位相)。$\varepsilon_*$ はエタールな対象への制限であり、$\varepsilon_*G=G$ である。
  • 有限局所自由な射$\mathcal O_X$ 加群として有限局所自由な代数を与える有限射。有限・平坦・有限表示な射と同じである。その像は開かつ閉である。
  • Čech コホモロジー $\check H^i(X'/X,G)$$X'^{\,j}$$X'$$X$ 上の $j$ 重ファイバー積として、余鎖複体 $C^j=G(X'^{\,j+1})$(微分は面写像の交代和)のコホモロジー。
  • 狭義局所:Hensel 局所環のスペクトルで、剰余体が分離閉なもの。幾何的点 $\bar x$ における狭義局所化を $X_{\bar x}$ と書く(記号表)。
核の関手

閉部分スキーム $X_0\subset X$ について、$X$ スキーム $T$
$$ \mathcal N(T):=\ker\big(G(T)\to G(T\times_XX_0)\big) $$
を対応させる関手を $\mathcal N$ と書く。「$X_0$ の上で単位元になる $G$ の点」の群である。

余鎖の関手

$X'\to X$ を有限局所自由とする。$X$ スキーム $Y$
$$ \mathbf C^i(G)(Y):=G(Y\times_XX'^{\,i+1}) $$
を対応させる関手を $\mathbf C^i(G)$ と書き、余鎖の微分 $d^i$ の核を $\mathbf Z^i(G)$ と書く。$\mathbf C^\bullet(G)(X)$ は Čech 複体そのものである。$G$ の単位切断を含み $X$ 上アフィンな開部分スキーム $\mathcal U$ について、$\mathbf C^i(\mathcal U)\subset\mathbf C^i(G)$ を同様に定め、
$$ \mathbf C'^i(\mathcal U):=\mathbf C^i(\mathcal U)\cap(d^i)^{-1}\big(\mathbf C^{i+1}(\mathcal U)\big),\qquad\mathbf Z'^i(\mathcal U):=\mathbf Z^i(G)\cap\mathbf C'^i(\mathcal U) $$
と置く。

$\mathbf C^\bullet(\mathcal U)$ は群の演算で閉じないので、$\mathbf C'$$\mathbf Z'$ はそれを避けるための道具である。$X$ が局所なら、単位元の閉点のアフィン開近傍として $\mathcal U$ がとれる。

引用する事実

次の事実は証明せずに引用する。出典の該当箇所は本頁では確認していない。

  1. 茎と極限SGA4 VIII の型):エタール層が $0$ であることは幾何的点での茎がすべて $0$ であることと同値であり、$G$ が局所有限表示な $X$ スキームで表されるか、エタール層の $\varepsilon^*$ であるとき、$(R^i\varepsilon_*G)_{\bar x}\cong H^i((X_{\bar x})_{\mathrm{fppf}},G)$ である。原論文は SGA 4 の極限の理論が fppf 位相にも当てはまると述べるだけである。
  2. fppf 被覆の細分EGA4 IV 17.16、SGA3 IV 6.3 の型):fppf 被覆は、準有限・平坦・有限表示な射からなる被覆で細分できる。
  3. Hensel 局所環の構造EGA4 IV 18.5 の型):Hensel 局所環 $A$ 上の有限代数は Hensel 局所環の有限個の積である。$A$ 上準有限で分離的なスキームは、$A$ 上有限な開かつ閉な部分と、閉ファイバーが空の部分の直和である。$A$ 上エタールな代数 $C$ から剰余体への $A$ 代数の射は $C\to A$ に持ち上がり、連結な底の上で一点で一致するエタールかつ分離的な射の二つの切断は等しい。
  4. 滑らかな射の局所構造EGA4 IV 17.11 の型):滑らかな $V\to S$ は、各点の近傍で $S$ 上エタールな射 $V\to\mathbb A^d_S$ をもつ。
  5. 有理点EGA4 IV 17.16 の型):分離閉体上局所有限型で滑らかな空でないスキームは有理点をもつ。
  6. 普遍同相EGA4 IV 2.4 の型):有限・全射・根基的な射は普遍同相である。
  7. 無限小持ち上げと微分EGA4 0_IV §20、SGA3 II の型):平方零イデアル $I$ で定まる閉部分スキーム $Y_0\subset Y$$Y$ はアフィン)について、群スキームの単位元の近くでの持ち上げの全体は $\operatorname{Hom}(e^*\Omega^1_{G/X}\otimes\mathcal O_Y,I)$ と群として同一視され、$G$ が滑らかなら $\omega=e^*\Omega^1_{G/X}$ は有限局所自由である。
  8. Hensel 局所な底のエタールコホモロジーEGA4 IV 18.5、SGA4 VIII の型):$X$ が剰余体 $k$ の Hensel 局所スキームなら、エタール層 $F$ について $H^i(X,F)\cong\varinjlim_LH^i(\mathrm{Gal}(L/k),F(X_L))$$L$$k$ の有限次 Galois 拡大、$X_L\to X$ は剰余体 $L$ に対応する有限エタールな Galois 被覆)であり、これは $X$ の閉部分への制限と両立する。
  9. エタール層の引き戻しの値SGA4 VII–VIII の型):局所有限表示な $f:T\to X$ について $(\varepsilon^*F)(T)=\Gamma(T,f^*F)$ であり、狭義局所な $S$ について $\Gamma(S,f^*F)$ は閉点の上の幾何的点での茎に等しい。
    次の二つは初等的なので本頁で理由を添える。
  • Amitsur 複体の完全性:忠実平坦な $A\to B$$A$ 加群 $M$ について $0\to M\to M\otimes_AB\to M\otimes_AB\otimes_AB\to\cdots$ は完全である。$B$ を係数拡大すると、積 $B\otimes_AB\to B$ が縮約ホモトピーを与えるからである。
  • Weil 制限$X'\to X$ が有限局所自由で $V$$X$ 上アフィン有限表示なら、関手 $Y\mapsto\operatorname{Hom}_X(Y\times_XX',V)$$X$ 上アフィン有限表示なスキームで表される(Weil制限)。局所的に $X'$ の基底をとって $V$ の方程式を展開すればよい。

主結果と証明

各補題の証明は要点だけを述べ、細部は用語解説 エタールコホモロジーとfppfコホモロジーの比較定理 に譲る。原論文が「本質的に自明」「知られている」「直ちに」で済ませた段には、何が要るかを明示する。原論文の番号との対応は、各補題の本文と末尾の対応表に示す。

体の上:局所な有限代数による被覆

最初に、底に Hensel 性を要求しない道具を用意する。余鎖の関手が滑らかであることで、これは体の上でも Hensel 局所な底の上でも使う。

余鎖の微分の滑らかさ

$X$ を任意のスキーム、$X'\to X$ を有限局所自由、$\mathcal U$ を定義のとおりとする。このとき $\mathbf C^i(\mathcal U)$$\mathbf C'^i(\mathcal U)$$\mathbf Z'^i(\mathcal U)$$X$ 上有限表示なスキームで表され、前二者は $X$ 上滑らかである。さらに $i\ge1$ について、微分 $d^{i-1}:\mathbf C'^{i-1}(\mathcal U)\to\mathbf Z'^i(\mathcal U)$ は滑らかな射である。原論文では III (11.4) の証明の中の事実に当たる。

証明の要点

表現可能性。 $\mathbf C^i(\mathcal U)$ は Weil 制限で表され、有限射が閉写像であることから $\mathbf C^i(G)$ の開部分関手になる。$\mathbf C'^i(\mathcal U)$ はその開部分、$\mathbf Z'^i(\mathcal U)$ は零切断の逆像として閉部分である。$\mathbf C^i(\mathcal U)$ の滑らかさは、$\mathcal U$ の無限小持ち上げを $Y\times_XX'^{\,i+1}$ の上で行えばよい。
$d^{i-1}$ の滑らかさ。 アフィンな $Y$ と平方零の $Y_0\subset Y$$z\in\mathbf Z'^i(\mathcal U)(Y)$$c_0\in\mathbf C'^{i-1}(\mathcal U)(Y_0)$$dc_0=z|_{Y_0}$ となるものをとる。$c_0$ を任意に $c_1$ へ持ち上げると、$u=dc_1-z$$Y_0$ の上で $0$ になる余輪体、すなわち $Y\times_XX'$$Y$ 上の Čech 複体で、$Y_0$ の上で単位元になる値をもつ余輪体である。引用 7 により、その値は $\operatorname{Hom}(\omega\otimes\mathcal O,I\mathcal O)$ と群として同一視され、$\omega$ が有限局所自由で $X'$ が平坦なので、この Čech 複体は加群の Amitsur 複体になる。Amitsur 複体の完全性により $u=dv$ となる $v$ があり、$c=c_1-v$ が求める持ち上げである(像が $\mathcal U$ に入ることは開性から従う)。

原論文は核の値を $\omega$ の切断として書くが、正しくは平方零イデアル $I$$\omega$ の双対が入る。どちらにしても Čech 複体が非輪状であるという結論は変わらない。

分離閉体上の局所な有限代数

$k$ を分離閉体、$A$ を局所な有限 $k$ 代数、$G$$k$ 上局所有限型で滑らかな可換群スキームとする。このとき $\check H^i(\operatorname{Spec}A/\operatorname{Spec}k,G)=0$$i\ge1$)。原論文の注意 III (11.5) のうち、根基的な場合に当たる。

証明の要点

$A$ の剰余体は $k$ の純非分離拡大なので、$S_j=\operatorname{Spec}A^{\otimes(j+1)}\to\operatorname{Spec}k$ は有限・全射・根基的であり、引用 6 により任意の底変換の後も同相である。このため $\mathbf C^j(G)$$G$ 全体について(アフィン開集合に限らず)Weil 制限を貼り合わせて表され、$k$ 上滑らかな群スキームになる。 余鎖の微分の滑らかさ の証明を $\mathcal U=G$ として繰り返すと、$d^{j-1}:\mathbf C^{j-1}(G)\to\mathbf Z^j(G)$ は滑らかである。さらに全射である:$\mathbf Z^j(G)$ の点を代数閉体 $\Omega$ に値をとる点として表すと、$A\otimes_k\Omega\to\Omega$ という切断があるので、$\Omega$ 上では Čech 複体が縮約でき、余輪体は余境界になる。よって $k$ 有理点 $z$ の上のファイバーは空でない滑らかな $k$ スキームであり、引用 5 により $k$ 有理点 $c$ をもつ。これが $dc=z$ を満たす。

閉部分から Hensel 局所な底へ

$X'\to X$ を任意の射、$X_0\to X$ を閉部分スキーム、$X'_0=X'\times_XX_0$ とし、
$$ \alpha_i:\check H^i(X'/X,G)\to\check H^i(X'_0/X_0,G) $$
を制限とする。次の条件を (L) と呼ぶ:すべての $j\ge1$ について $G(X'^{\,j})\to G(X_0'^{\,j})$ が全射である。

Hensel局所な底での切断の持ち上げ

$A$ を Hensel 局所環、$\mathfrak a\subset A$ を極大イデアルに含まれるイデアル、$B$ を有限 $A$ 代数、$V$$\operatorname{Spec}A$ 上滑らかなスキームとする。このとき $V(B)\to V(B/\mathfrak aB)$ は全射である。とくに、$X$ が Hensel 局所で $X_0$ が空でない閉部分スキーム、$X'\to X$ が有限局所自由なら、条件 (L) が成り立つ。

証明の要点

引用 3 により $B$ は Hensel 局所環の積なので、$B$ を Hensel 局所としてよい。$B/\mathfrak aB$ の点 $g_0$ の像を含むアフィン開集合をとり、引用 4 によりそれが $\mathbb A^d$ 上エタールであるとしてよい。$\mathbb A^d$ の座標は任意に持ち上げられるので、問題は $B$ 上エタールな代数 $D$ の、$B/\mathfrak aB$ での切断の持ち上げに帰着する。まず剰余体での切断を引用 3 で $B$ に持ち上げ、その還元ともとの切断が閉点で一致することと、エタールで分離的な射の切断の一意性(引用 3 の後半)から、$\mathfrak a$ を法としても一致することを得る。

$X_0$ が閉点なら Hensel 性の定義だけで足りるが、一般の閉部分スキームでは、切断の一意性で $\mathfrak a$ を法とする一致を回復する段が要る。原論文は III (11.4) で「$G$ が滑らかなら (L) は自動的に成り立つ」と括弧で書くだけである。

核の関手とČechコホモロジー

(L) を仮定する。$i\ge1$ について、$\check H^i(X'/X,\mathcal N)=0$ であることと、「$\alpha_{i-1}$ が全射かつ $\alpha_i$ が単射」であることは同値である。したがって次の二条件は同値である。

  • すべての $i\ge1$$\check H^i(X'/X,\mathcal N)=0$
  • $\alpha_0$ が全射で、すべての $i\ge1$$\alpha_i$ が全単射。
    原論文の補題 III (11.3) の、添字の範囲を正した形である。
証明

(L) により、各次数で $0\to\mathcal N(X'^{\,j+1})\to G(X'^{\,j+1})\to G(X_0'^{\,j+1})\to0$ が完全であり($X_0'^{\,j+1}=X'^{\,j+1}\times_XX_0$)、余鎖複体の短完全列が得られる。その長完全列 $\cdots\to\check H^{i-1}(G)\xrightarrow{\alpha_{i-1}}\check H^{i-1}(G_0)\to\check H^i(\mathcal N)\to\check H^i(G)\xrightarrow{\alpha_i}\check H^i(G_0)\to\cdots$ から直ちに従う。

原論文の言明は、$\check H^i(X'/X,\mathcal N)=0$$1\le i\le n$ で課すだけで、「$\alpha_i$$1\le i\le n$ で全単射、$i=n+1$ で単射」が従うとする形である。上の長完全列を見れば、$\alpha_{n+1}$ の単射性には $\check H^{n+1}(\mathcal N)=0$ が要り、添字が一つずれている。この形は成り立たない(下の反例)。原論文がこの補題を使う場面では、$\check H^i(\mathcal N)=0$すべての $i\ge1$ で示されるので、結論には影響しない。

鍵補題

$X$ を Hensel 局所、$X_0$$X$空でない閉部分スキーム、$X'\to X$ を有限局所自由とする。このとき $\check H^i(X'/X,\mathcal N)=0$(すべての $i\ge1$)であり、したがって $\alpha_0$ は全射、$\alpha_i$$i\ge1$)は全単射である。原論文の補題 III (11.4) に、非空の仮定を補った形である。

証明の要点

$z$$\mathcal N$ に値をもつ $i$ 次の余輪体とする。
(a) $X'^{\,i+1}$$X$ 上有限なので、その閉点はすべて $X$ の閉点の上にある。$X_0$ は空でない閉集合なので $X$ の閉点を含み、したがって閉点はすべて $X_0'^{\,i+1}$ に属し、そこで $z$ は単位元である。$z^{-1}(\mathcal U)$ は閉点をすべて含む開集合なので全体であり、$z\in\mathbf Z'^i(\mathcal U)(X)$ である。
(b) $W_z:=\mathbf C'^{i-1}(\mathcal U)\times_{\mathbf Z'^i(\mathcal U),z}X$ は、 余鎖の微分の滑らかさ により $X$ 上滑らかである。$X_0$ の上では零余鎖が $z|_{X_0}=0$ の原像なので、$W_z$$X_0$ 上の切断をもつ。
(c) 持ち上げの補題 $B=A$$V=W_z$)によりこの切断は $X$ 上の切断 $c$ に延び、$dc=z$$c|_{X_0}=0$ である。よって $z$$\mathcal N$ の中で余境界である。後半は 核の関手の補題 と、持ち上げの補題による (L) から従う。

非空の仮定が効くのは (a) である。原論文の補題の言明には「空でない」が無いが、定理 (11.7) の方では明記されている。空の場合には主張が成り立たない(下の反例)。
鍵補題から、Hensel 局所な底での制限の主張が出る。

Hensel局所な底での制限

$X$ を Hensel 局所、$X_0$ を空でない閉部分スキーム、$G_0=G\times_XX_0$ とする。制限 $H^i(X,G)\to H^i(X_0,G_0)$$H^i(X_{\mathrm{fppf}},G)\to H^i((X_0)_{\mathrm{fppf}},G_0)$$i\ge1$ で全単射である。また $X'$$X$ 上有限局所自由なら $\check H^i(X'/X,G)\to\check H^i(X'_0/X_0,G)$$i\ge1$ で全単射である。原論文の定理 III (11.7) の 2°) 3°) に当たる。

証明の要点

Čech の主張は鍵補題そのものである。エタール位相については引用 8 を使う。剰余体 $k$ の有限次 Galois 拡大 $L$ に対応する有限エタールな Galois 被覆 $X_L\to X$ をとると、$X_L\times_XX_0$$X_0$ に対する同じ構成になる。持ち上げの補題により $0\to\mathcal N(X_L)\to G(X_L)\to G((X_0)_L)\to0$ は完全で、$\mathrm{Gal}(L/k)$ と両立する。Galois 被覆の Čech 複体は群の余鎖複体なので、鍵補題により $\mathcal N(X_L)$ の群コホモロジーは正の次数で消え、$H^i(\mathrm{Gal}(L/k),G(X_L))\cong H^i(\mathrm{Gal}(L/k),G((X_0)_L))$$i\ge1$)である。$L$ について極限をとり、引用 8 を両辺に当てればよい。fppf 位相については、後で示す 比較定理 に帰着する(比較定理の証明はこの定理を使わないので、循環はない)。

この証明は原論文と異なる。原論文は fppf サイトの上で層の完全列 $0\to\mathcal N\to G\to G_0\to0$ を立て、Cartan の補題と核の関手の補題に帰着させるが、そのためには $G\to G_0$ が fppf 層として全射であること、また $X_0$$X$ 上局所有限表示とは限らないのに $G_0$ のコホモロジーを $X$ の fppf サイトで計算してよいことが要り、原論文はこの二点を書かない。本頁はこの筋を採らず、Galois コホモロジーを経由した。原論文自身も、エタール位相で読んだ場合でもこの同型は自明でないと注意している。

狭義局所な底:導来関手のコホモロジーの消滅

Hensel局所な底でのCartanの補題

$X$ を Hensel 局所とし、$n\ge0$ とする。次は同値である。

  1. $X$ 上有限局所自由な任意の $X'$ について $H^i(X'_{\mathrm{fppf}},G)=0$$1\le i\le n$)。
  2. $X$ 上有限局所自由な任意の $X'$ と、$X'$ 上有限局所自由な任意の $X''$ について $\check H^i(X''/X',G)=0$$1\le i\le n$)。
    原論文の補題 III (11.2) に当たる。
証明の要点

(a) 共終性。 $X'$ は Hensel 局所なスキームの有限直和である(引用 3)。その成分の fppf 被覆を引用 2 で準有限な射に細分し、引用 3 で「有限な部分」を取り出すと、閉点の上の点を含む有限・平坦・有限表示な部分が得られる。その像は開かつ閉で閉点を含むので全体である。よって任意の fppf 被覆は有限局所自由で全射な $X''\to X'$ で細分され、正の次数の類はそのような $X''$ に制限すると消える。
(b) 2 ⇒ 1。 $m$ についての帰納法。$X''\to X'$ の Čech から導来関手へのスペクトル系列 $E_2^{p,q}=\check H^p(X''/X',\mathcal H^q)$ で、$X''$$X'$ 上のファイバー積はすべて $X$ 上有限局所自由なので、帰納法の仮定により $1\le q< m$ の行が消え、2 により $1\le p\le n$ の列の底が消える。すると $H^m(X'_{\mathrm{fppf}},G)\to H^m(X''_{\mathrm{fppf}},G)$ は単射になり、(a) で類を消す $X''$ をとれば類は $0$ である。
(c) 1 ⇒ 2。 同じスペクトル系列で $1\le q\le n$ の行が消えるので、$\check H^p(X''/X',G)\to H^p(X'_{\mathrm{fppf}},G)=0$ は単射である。$X''\to X'$ が全射でないときは、像(開かつ閉)に取り替えればよい。

原論文は (a) を「知られている」、(b)(c) を「既知の論法」とだけ書く。以下では、狭義局所な $X$ の上で「$X$ 上有限局所自由で閉点がただ一つのもの」の族に限っても同じ論法が回ることを使う(族に限った Cartan の補題と呼ぶ)。この族はファイバー積で閉じる。実際、閉ファイバーの剰余体は分離閉体の有限次拡大、すなわち純非分離拡大であり、純非分離拡大どうしのテンソル積の素イデアルはただ一つだからである。

狭義局所な底での消滅

$X$ を狭義局所とする。$X$ 上有限局所自由な任意の $X'$ について $\check H^i(X'/X,G)=0$$i\ge1$)であり、$H^i(X_{\mathrm{fppf}},G)=0$$i\ge1$)である。原論文の補題 III (11.6) に当たる。

証明の要点

$Y$$X$ 上有限局所自由で閉点がただ一つのもの、$Y''\to Y$ を同じ族に属する有限局所自由な全射とする。$Y$ は Hensel 局所で、剰余体 $K$ は分離閉である。 鍵補題 $Y$ とその閉点に当てると、$\check H^i(Y''/Y,G)$ は閉ファイバーの Čech コホモロジー $\check H^i(\operatorname{Spec}A'/\operatorname{Spec}K,G)$$A'$ は局所な有限 $K$ 代数)に等しく、 分離閉体上の局所な有限代数の補題 によりそれは $0$ である。族に限った Cartan の補題により $H^i(Y_{\mathrm{fppf}},G)=0$ であり、とくに $Y=X$ で後半を得る。前半は、一般の $X'$ をこの族の対象の直和に分け、Čech から導来関手へのスペクトル系列を見ればよい。

原論文は、前半(任意の有限な $X'$ の Čech の消滅)を先に述べ、そこから後半を出す。その向きでは、閉ファイバーに局所でない有限代数が現れ、分離閉体上の補題の表現可能性がそのままでは使えない。本頁は論理の向きを逆にし、局所な有限局所自由スキームの族だけで議論を閉じた。

一般のスキームへ

高次順像の消滅の言い換え

$n\ge0$ とする。次の三条件は同値である。

  1. $R^i\varepsilon_*G=0$$1\le i\le n$)。
  2. $X$ 上エタールな任意の $V$ について、$H^i(V,G)\to H^i(V_{\mathrm{fppf}},G)$$i\le n$ で同型、$i=n+1$ で単射。
  3. $X$ の任意の幾何的点 $\bar x$ について $H^i((X_{\bar x})_{\mathrm{fppf}},G)=0$$1\le i\le n$)。
    原論文の補題 III (11.1) に当たる。
証明の要点

1 ⇒ 2:$V$ の上の Leray スペクトル系列で $1\le t\le n$ の行が消えるので、$E_2^{s,0}\to H^s$$s\le n$ で同型、$s=n+1$ で単射である(入ってくる微分の源がすべて $0$ の行にあることを確かめればよい)。
2 ⇒ 1:$R^i\varepsilon_*G$ は前層 $V\mapsto H^i(V_{\mathrm{fppf}},G)$ の層化であり、2 によりその切断はエタール類から来るので、エタール被覆の上で消える。ここで使うのは $i\le n$ での全射性だけである。
1 ⇔ 3:引用 1 による。

1 ⇒ 2 と 2 ⇒ 1 はどんなサイトの射でも成り立ち、原論文も「本質的に自明」と書く。3 との同値だけが、fppf 位相についての極限の理論(引用 1)を要する。原論文はここを一般のアーベル層について述べるが、狭義局所化 $X_{\bar x}$$X$ 上局所有限表示でないので、層をその上へ延ばす必要がある。本頁は、延長の問題が起きない二つの型(群スキームで表される層と、エタール層の引き戻し)に限っている。

比較定理

$X$ を任意のスキーム、$G$$X$ 上の滑らかな可換群スキームとする。すべての $i$ について $H^i(X,G)\to H^i(X_{\mathrm{fppf}},G)$ は同型である。原論文の定理 III (11.7) 1°) に当たる。

証明

各幾何的点 $\bar x$ について、$G\times_XX_{\bar x}$ は狭義局所な $X_{\bar x}$ 上の滑らかな可換群スキームなので、 狭義局所な底での消滅 により $H^i((X_{\bar x})_{\mathrm{fppf}},G)=0$$i\ge1$)。これはすべての $n$ について 言い換えの補題 の条件 3 が成り立つことなので、条件 2 を $V=X$ に当てて主張を得る。

エタール層の引き戻しの比較

$F$$X_{\mathrm{et}}$ 上のアーベル層とする。$\varepsilon_*\varepsilon^*F=F$ であり、すべての $i$ について $H^i(X,F)\to H^i(X_{\mathrm{fppf}},\varepsilon^*F)$ は同型である。原論文の系 III (11.9) に当たる。

証明の要点

前半は引用 9 から出る。後半は 言い換えの補題 により、狭義局所な $S$ について $H^i(S_{\mathrm{fppf}},\varepsilon^*F)=0$$i\ge1$)を示せばよい。$S$ 上有限局所自由で閉点がただ一つのスキーム $Y$ は、剰余体が分離閉な Hensel 局所スキームなので、引用 9 により $(\varepsilon^*F)(Y)$ は茎 $F_{\bar s}$ に等しい。どの剰余体も $\kappa(s)$ の純非分離拡大なので、この同一視は面写像と両立し、Čech 複体は定数の余単体的群になる。その複体は正の次数で非輪状なので、族に限った Cartan の補題により主張を得る。

原論文は、この系を一般の層についての定理から導く。本頁は、エタール層では核の関手の計算が要らないことを使い、一般形を経由せずに示した。

一般の層についての形

原論文は定理 (11.7) を、fppf サイト上のアーベル層 $G$ で次の二条件を満たすものについて述べる。原論文はこの二条件を (L)(R) と呼ぶが、本頁の条件 (L) と区別するため、ここでは (L′)(R′) と書く。

  • (L′) 狭義局所化の上の有限局所自由なスキームと、その空でない閉部分への制限について、$G$ の値が全射になる。これは、本頁の (L) を、狭義局所化の上の有限局所自由スキームとその空でない閉部分について課したものに当たる。
  • (R′) 狭義局所化の上で、$G$ の開部分関手で滑らかなスキームで表され、底へ全射なものがある。
    この一般形では、層を狭義局所化へ延ばしたときに開部分関手が開のままであること、極限の理論が延ばした層に当てはまること、分離閉体上で (R′) を満たす層が群スキームで表されることなどが要るが、原論文はこれらを書かない。本書はこの一般形を主張しない。本書のほかの頁で使うのは、滑らかな可換群スキームの場合とエタール層の場合だけである。

例と反例

Hensel局所環のBrauer群

Hensel 局所な底での制限 $G=\mathbb G_m$$i=2$$X_0$ を閉点に当てると、Hensel 局所環 $A$(剰余体 $\kappa$)について $H^2(\operatorname{Spec}A,\mathbb G_m)\cong H^2(\kappa,\mathbb G_m)=\mathrm{Br}(\kappa)$ を得る。本書 1-3 の頁で Azumaya 代数の側から述べた「Hensel 局所なら $\mathrm{Br}(X)\cong\mathrm{Br}(x)$」の、コホモロジーの側の形である。$A$ が離散付値環なら、これは本書 3-2 で仮定 (H) と呼んだ同型($n\ge2$)であり、本書 3-3 の (P2) でもある。$\mathbb G_m$ は滑らかなので、同じ同型は fppf コホモロジーでも成り立つ。

滑らかさを外すと比較は壊れる

$k$ を標数 $p>0$ の完全でない分離閉体とし、$G=\alpha_p$(Frobenius の核。有限平坦だが滑らかでない)とする。$0\to\alpha_p\to\mathbb G_a\xrightarrow{x\mapsto x^p}\mathbb G_a\to0$ は fppf 位相で完全なので、$H^1(k_{\mathrm{fppf}},\alpha_p)=k/k^p\ne0$ である。他方 $H^1(k,\alpha_p)=0$$k$ は分離閉)。$\mu_p$ でも同様に $H^1(k_{\mathrm{fppf}},\mu_p)=k^\times/(k^\times)^p\ne0$ となる(4-1 の頁)。比較定理の仮定のうち、破れているのは $G$ の滑らかさだけである。

反例:核の関手の補題で添字の範囲を狭めた形

原論文の印字の形(「$\check H^i(X'/X,\mathcal N)=0$$1\le i\le n$)なら、$\alpha_i$$1\le i\le n$ で全単射、$i=n+1$ で単射」)が成り立たない反例である。原論文には無い。
$X=\operatorname{Spec}\mathbb R\sqcup\operatorname{Spec}\mathbb R$$X_0$ をその一方の成分、$X'=\operatorname{Spec}\mathbb C\sqcup\operatorname{Spec}\mathbb C$(成分ごとに $\operatorname{Spec}\mathbb C\to\operatorname{Spec}\mathbb R$)、$G$ を定数群 $\mathbb Z$(エタール、したがって滑らかな群スキーム)とする。

  • 満たす性質$X'\to X$ は有限局所自由で全射、$X_0$ は空でない閉部分スキーム、(L) は成分への射影なので成り立つ。
  • 計算:Čech 複体は成分ごとに分かれ、$\mathcal N$ の複体は $X_0$ でない成分の複体である。$\operatorname{Spec}\mathbb C\to\operatorname{Spec}\mathbb R$ は位数 $2$ の群 $\Gamma$ の Galois 被覆なので、その Čech コホモロジーは群コホモロジー $H^i(\Gamma,\mathbb Z)$(自明な作用)であり、$H^1=\operatorname{Hom}(\Gamma,\mathbb Z)=0$$H^2\cong\mathbb Z/2$ である。
  • 破れる含意$n=1$ とすると $\check H^1(X'/X,\mathcal N)=0$ だが、$\alpha_2:\mathbb Z/2\oplus\mathbb Z/2\to\mathbb Z/2$ は射影で単射でない。係数を $\mathbb Z/2$ に替えると、$n=0$(仮定が空)で $\alpha_1:\mathbb Z/2\oplus\mathbb Z/2\to\mathbb Z/2$ が単射でない。
    破られているのは言明の添字の範囲だけであり、正しい形は 核の関手の補題 のとおりである。この $X$ は局所でないが、原論文の補題は底に局所性を課していない。
反例:鍵補題で閉部分が空の場合

原論文の鍵補題の言明(閉部分 $X_0$ に非空を課さない形)が成り立たない反例である。原論文には無い。
$X=\operatorname{Spec}\mathbb R$(Hensel 局所)、$X_0=\emptyset$$X'=\operatorname{Spec}\mathbb C$$G=\mathbb Z$ とする。

  • 満たす性質$X$ は Hensel 局所、$X'\to X$ は有限局所自由、$G$ は滑らかで単位元を含むアフィン開部分をもち、(L) は $G(\emptyset)=0$ なので自明に成り立つ。
  • 満たさない性質$X_0$ が空である。
  • 破れる含意$\mathcal N=G$ なので $\check H^2(X'/X,\mathcal N)=H^2(\Gamma,\mathbb Z)\cong\mathbb Z/2\ne0$。とくに $\alpha_2:\mathbb Z/2\to\check H^2(\emptyset/\emptyset,G)=0$ は単射でない。
    鍵補題の証明で非空が効くのは、余輪体が単位元の近傍 $\mathcal U$ に入ることを閉点で確かめる段である。

その後の発展

以下は原論文(付録を含む講演記録は 1968 年刊)より後の展開であり、本頁では出典を確認していない。

  • 滑らかな可換群スキームについてエタールコホモロジーと fppf コホモロジーが一致するという形は、J. S. Milne の教科書 Mil80(1980 年)や Stacks Project などで標準的な定理として扱われるとされる。
  • 滑らかでない群、とくに非完全体上の $\mu_p$$\alpha_p$ で一致が壊れることは、平坦コホモロジーを使う数論的双対性の研究(Milne『Arithmetic Duality Theorems』、1986 年初版)の出発点の一つとされる。
  • 原論文は注意 (11.8) で、同じ方法で可換とは限らない群と $H^1$ についても類似が示せると述べる。これは、滑らかな群スキームのトーサーは fppf 局所的に自明ならエタール局所的にも自明である、という形で後に広く使われるようになったとされる。

原論文との対応表

本頁は原論文の補題の順((11.1) から (11.7))ではなく、底を体・Hensel 局所・狭義局所・一般と広げる順に並べた。

原論文(III §11、印字 pp. 171–183)本頁
§11 冒頭:§5 で引用した定理を一般の形で証明する宣言背景と動機
補題 (11.1)「一般のスキームへ」の補題「高次順像の消滅の言い換え」
補題 (11.2)(Cartan の補題)「狭義局所な底」の補題「Hensel局所な底でのCartanの補題」
補題 (11.3)「閉部分から Hensel 局所な底へ」の補題「核の関手とČechコホモロジー」(正しい範囲の形)、反例「核の関手の補題で添字の範囲を狭めた形」
補題 (11.4) の言明と条件 (L)補題「Hensel局所な底での切断の持ち上げ」、定理「鍵補題」(非空を課した形)、反例「鍵補題で閉部分が空の場合」
(11.4) の証明中の余鎖の関手と事実 (*)定義「余鎖の関手」、「体の上」の補題「余鎖の微分の滑らかさ」
注意 (11.5)「体の上」の補題「分離閉体上の局所な有限代数」(根基的な場合だけを使う)
補題 (11.6)命題「狭義局所な底での消滅」(論理の向きを逆にした)
定理 (11.7) 1°)定理「比較定理」
定理 (11.7) 2°) 3°)定理「Hensel局所な底での制限」(2°) は原論文と別の証明)
定理 (11.7) の一般の層についての形、条件 (L)(R)注意「一般の層についての形」(本頁では (L′)(R′) と書く。本書は主張しない)
注意 (11.8)主結果の証明への注意、その後の発展
系 (11.9)定理「エタール層の引き戻しの比較」
(原論文に無い)例「Hensel局所環のBrauer群」、例「滑らかさを外すと比較は壊れる」

参考文献

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