前提知識: fppf位相, エタールコホモロジー, Čechコホモロジー, 狭義Hensel局所環, 滑らかな射, 群スキーム
記号は本書の記号表に従う。$H^i(X,F)$ はエタールコホモロジー、$H^i(X_{\mathrm{fppf}},F)$ は fppf コホモロジーである。サイトの射を $\varepsilon:X_{\mathrm{fppf}}\to X_{\mathrm{et}}$ と書く(原論文は $p$ と書く)。被覆 $X'\to X$ に関する Čech コホモロジーは $\check H^i(X'/X,G)$ と書き、導来関手のコホモロジーと区別する。
以下、$G$ は $X$ 上の滑らかな可換群スキーム(局所有限表示)とし、$T\mapsto\operatorname{Hom}_X(T,G)$ で定まる層を同じ文字で書く。本頁の主結果は次である(エタールコホモロジーとfppfコホモロジーの比較定理)。
fppf 位相はエタール位相より細かく、平坦な有限射、とくに純非分離な射や $\operatorname{Spec}k[S]/(S^p-a)$ のような射も被覆に数える。そのため、一般の群では fppf コホモロジーの方が大きくなりうる(下の例)。他方、滑らかな群スキームの点は、平坦な被覆の上で見つかればエタールな被覆の上でも見つかる、というのが直観である。本書の 4-1 の頁で見たとおり、原論文の §5 はこの一致を使って、fppf 位相で自然に定義される相対 Picard 関手と、エタール位相で定義される Brauer 群をつないでいた。
証明の難しさは、fppf 被覆がエタール被覆で細分できないことにある。本頁では、底を次の順に広げることでこれを崩す。
閉部分スキーム $X_0\subset X$ について、$X$ スキーム $T$ に
$$
\mathcal N(T):=\ker\big(G(T)\to G(T\times_XX_0)\big)
$$
を対応させる関手を $\mathcal N$ と書く。「$X_0$ の上で単位元になる $G$ の点」の群である。
$X'\to X$ を有限局所自由とする。$X$ スキーム $Y$ に
$$
\mathbf C^i(G)(Y):=G(Y\times_XX'^{\,i+1})
$$
を対応させる関手を $\mathbf C^i(G)$ と書き、余鎖の微分 $d^i$ の核を $\mathbf Z^i(G)$ と書く。$\mathbf C^\bullet(G)(X)$ は Čech 複体そのものである。$G$ の単位切断を含み $X$ 上アフィンな開部分スキーム $\mathcal U$ について、$\mathbf C^i(\mathcal U)\subset\mathbf C^i(G)$ を同様に定め、
$$
\mathbf C'^i(\mathcal U):=\mathbf C^i(\mathcal U)\cap(d^i)^{-1}\big(\mathbf C^{i+1}(\mathcal U)\big),\qquad\mathbf Z'^i(\mathcal U):=\mathbf Z^i(G)\cap\mathbf C'^i(\mathcal U)
$$
と置く。
$\mathbf C^\bullet(\mathcal U)$ は群の演算で閉じないので、$\mathbf C'$ と $\mathbf Z'$ はそれを避けるための道具である。$X$ が局所なら、単位元の閉点のアフィン開近傍として $\mathcal U$ がとれる。
次の事実は証明せずに引用する。出典の該当箇所は本頁では確認していない。
各補題の証明は要点だけを述べ、細部は用語解説 エタールコホモロジーとfppfコホモロジーの比較定理 に譲る。原論文が「本質的に自明」「知られている」「直ちに」で済ませた段には、何が要るかを明示する。原論文の番号との対応は、各補題の本文と末尾の対応表に示す。
最初に、底に Hensel 性を要求しない道具を用意する。余鎖の関手が滑らかであることで、これは体の上でも Hensel 局所な底の上でも使う。
$X$ を任意のスキーム、$X'\to X$ を有限局所自由、$\mathcal U$ を定義のとおりとする。このとき $\mathbf C^i(\mathcal U)$、$\mathbf C'^i(\mathcal U)$、$\mathbf Z'^i(\mathcal U)$ は $X$ 上有限表示なスキームで表され、前二者は $X$ 上滑らかである。さらに $i\ge1$ について、微分 $d^{i-1}:\mathbf C'^{i-1}(\mathcal U)\to\mathbf Z'^i(\mathcal U)$ は滑らかな射である。原論文では III (11.4) の証明の中の事実に当たる。
表現可能性。 $\mathbf C^i(\mathcal U)$ は Weil 制限で表され、有限射が閉写像であることから $\mathbf C^i(G)$ の開部分関手になる。$\mathbf C'^i(\mathcal U)$ はその開部分、$\mathbf Z'^i(\mathcal U)$ は零切断の逆像として閉部分である。$\mathbf C^i(\mathcal U)$ の滑らかさは、$\mathcal U$ の無限小持ち上げを $Y\times_XX'^{\,i+1}$ の上で行えばよい。
$d^{i-1}$ の滑らかさ。 アフィンな $Y$ と平方零の $Y_0\subset Y$、$z\in\mathbf Z'^i(\mathcal U)(Y)$ と $c_0\in\mathbf C'^{i-1}(\mathcal U)(Y_0)$ で $dc_0=z|_{Y_0}$ となるものをとる。$c_0$ を任意に $c_1$ へ持ち上げると、$u=dc_1-z$ は $Y_0$ の上で $0$ になる余輪体、すなわち $Y\times_XX'$ の $Y$ 上の Čech 複体で、$Y_0$ の上で単位元になる値をもつ余輪体である。引用 7 により、その値は $\operatorname{Hom}(\omega\otimes\mathcal O,I\mathcal O)$ と群として同一視され、$\omega$ が有限局所自由で $X'$ が平坦なので、この Čech 複体は加群の Amitsur 複体になる。Amitsur 複体の完全性により $u=dv$ となる $v$ があり、$c=c_1-v$ が求める持ち上げである(像が $\mathcal U$ に入ることは開性から従う)。
原論文は核の値を $\omega$ の切断として書くが、正しくは平方零イデアル $I$ と $\omega$ の双対が入る。どちらにしても Čech 複体が非輪状であるという結論は変わらない。
$k$ を分離閉体、$A$ を局所な有限 $k$ 代数、$G$ を $k$ 上局所有限型で滑らかな可換群スキームとする。このとき $\check H^i(\operatorname{Spec}A/\operatorname{Spec}k,G)=0$($i\ge1$)。原論文の注意 III (11.5) のうち、根基的な場合に当たる。
$A$ の剰余体は $k$ の純非分離拡大なので、$S_j=\operatorname{Spec}A^{\otimes(j+1)}\to\operatorname{Spec}k$ は有限・全射・根基的であり、引用 6 により任意の底変換の後も同相である。このため $\mathbf C^j(G)$ は $G$ 全体について(アフィン開集合に限らず)Weil 制限を貼り合わせて表され、$k$ 上滑らかな群スキームになる。 余鎖の微分の滑らかさ の証明を $\mathcal U=G$ として繰り返すと、$d^{j-1}:\mathbf C^{j-1}(G)\to\mathbf Z^j(G)$ は滑らかである。さらに全射である:$\mathbf Z^j(G)$ の点を代数閉体 $\Omega$ に値をとる点として表すと、$A\otimes_k\Omega\to\Omega$ という切断があるので、$\Omega$ 上では Čech 複体が縮約でき、余輪体は余境界になる。よって $k$ 有理点 $z$ の上のファイバーは空でない滑らかな $k$ スキームであり、引用 5 により $k$ 有理点 $c$ をもつ。これが $dc=z$ を満たす。
$X'\to X$ を任意の射、$X_0\to X$ を閉部分スキーム、$X'_0=X'\times_XX_0$ とし、
$$
\alpha_i:\check H^i(X'/X,G)\to\check H^i(X'_0/X_0,G)
$$
を制限とする。次の条件を (L) と呼ぶ:すべての $j\ge1$ について $G(X'^{\,j})\to G(X_0'^{\,j})$ が全射である。
$A$ を Hensel 局所環、$\mathfrak a\subset A$ を極大イデアルに含まれるイデアル、$B$ を有限 $A$ 代数、$V$ を $\operatorname{Spec}A$ 上滑らかなスキームとする。このとき $V(B)\to V(B/\mathfrak aB)$ は全射である。とくに、$X$ が Hensel 局所で $X_0$ が空でない閉部分スキーム、$X'\to X$ が有限局所自由なら、条件 (L) が成り立つ。
引用 3 により $B$ は Hensel 局所環の積なので、$B$ を Hensel 局所としてよい。$B/\mathfrak aB$ の点 $g_0$ の像を含むアフィン開集合をとり、引用 4 によりそれが $\mathbb A^d$ 上エタールであるとしてよい。$\mathbb A^d$ の座標は任意に持ち上げられるので、問題は $B$ 上エタールな代数 $D$ の、$B/\mathfrak aB$ での切断の持ち上げに帰着する。まず剰余体での切断を引用 3 で $B$ に持ち上げ、その還元ともとの切断が閉点で一致することと、エタールで分離的な射の切断の一意性(引用 3 の後半)から、$\mathfrak a$ を法としても一致することを得る。
$X_0$ が閉点なら Hensel 性の定義だけで足りるが、一般の閉部分スキームでは、切断の一意性で $\mathfrak a$ を法とする一致を回復する段が要る。原論文は III (11.4) で「$G$ が滑らかなら (L) は自動的に成り立つ」と括弧で書くだけである。
(L) を仮定する。$i\ge1$ について、$\check H^i(X'/X,\mathcal N)=0$ であることと、「$\alpha_{i-1}$ が全射かつ $\alpha_i$ が単射」であることは同値である。したがって次の二条件は同値である。
(L) により、各次数で $0\to\mathcal N(X'^{\,j+1})\to G(X'^{\,j+1})\to G(X_0'^{\,j+1})\to0$ が完全であり($X_0'^{\,j+1}=X'^{\,j+1}\times_XX_0$)、余鎖複体の短完全列が得られる。その長完全列 $\cdots\to\check H^{i-1}(G)\xrightarrow{\alpha_{i-1}}\check H^{i-1}(G_0)\to\check H^i(\mathcal N)\to\check H^i(G)\xrightarrow{\alpha_i}\check H^i(G_0)\to\cdots$ から直ちに従う。
原論文の言明は、$\check H^i(X'/X,\mathcal N)=0$ を $1\le i\le n$ で課すだけで、「$\alpha_i$ が $1\le i\le n$ で全単射、$i=n+1$ で単射」が従うとする形である。上の長完全列を見れば、$\alpha_{n+1}$ の単射性には $\check H^{n+1}(\mathcal N)=0$ が要り、添字が一つずれている。この形は成り立たない(下の反例)。原論文がこの補題を使う場面では、$\check H^i(\mathcal N)=0$ がすべての $i\ge1$ で示されるので、結論には影響しない。
$X$ を Hensel 局所、$X_0$ を $X$ の空でない閉部分スキーム、$X'\to X$ を有限局所自由とする。このとき $\check H^i(X'/X,\mathcal N)=0$(すべての $i\ge1$)であり、したがって $\alpha_0$ は全射、$\alpha_i$($i\ge1$)は全単射である。原論文の補題 III (11.4) に、非空の仮定を補った形である。
$z$ を $\mathcal N$ に値をもつ $i$ 次の余輪体とする。
(a) $X'^{\,i+1}$ は $X$ 上有限なので、その閉点はすべて $X$ の閉点の上にある。$X_0$ は空でない閉集合なので $X$ の閉点を含み、したがって閉点はすべて $X_0'^{\,i+1}$ に属し、そこで $z$ は単位元である。$z^{-1}(\mathcal U)$ は閉点をすべて含む開集合なので全体であり、$z\in\mathbf Z'^i(\mathcal U)(X)$ である。
(b) $W_z:=\mathbf C'^{i-1}(\mathcal U)\times_{\mathbf Z'^i(\mathcal U),z}X$ は、
余鎖の微分の滑らかさ
により $X$ 上滑らかである。$X_0$ の上では零余鎖が $z|_{X_0}=0$ の原像なので、$W_z$ は $X_0$ 上の切断をもつ。
(c)
持ち上げの補題
($B=A$、$V=W_z$)によりこの切断は $X$ 上の切断 $c$ に延び、$dc=z$、$c|_{X_0}=0$ である。よって $z$ は $\mathcal N$ の中で余境界である。後半は
核の関手の補題
と、持ち上げの補題による (L) から従う。
非空の仮定が効くのは (a) である。原論文の補題の言明には「空でない」が無いが、定理 (11.7) の方では明記されている。空の場合には主張が成り立たない(下の反例)。
鍵補題から、Hensel 局所な底での制限の主張が出る。
$X$ を Hensel 局所、$X_0$ を空でない閉部分スキーム、$G_0=G\times_XX_0$ とする。制限 $H^i(X,G)\to H^i(X_0,G_0)$ と $H^i(X_{\mathrm{fppf}},G)\to H^i((X_0)_{\mathrm{fppf}},G_0)$ は $i\ge1$ で全単射である。また $X'$ が $X$ 上有限局所自由なら $\check H^i(X'/X,G)\to\check H^i(X'_0/X_0,G)$ は $i\ge1$ で全単射である。原論文の定理 III (11.7) の 2°) 3°) に当たる。
Čech の主張は鍵補題そのものである。エタール位相については引用 8 を使う。剰余体 $k$ の有限次 Galois 拡大 $L$ に対応する有限エタールな Galois 被覆 $X_L\to X$ をとると、$X_L\times_XX_0$ は $X_0$ に対する同じ構成になる。持ち上げの補題により $0\to\mathcal N(X_L)\to G(X_L)\to G((X_0)_L)\to0$ は完全で、$\mathrm{Gal}(L/k)$ と両立する。Galois 被覆の Čech 複体は群の余鎖複体なので、鍵補題により $\mathcal N(X_L)$ の群コホモロジーは正の次数で消え、$H^i(\mathrm{Gal}(L/k),G(X_L))\cong H^i(\mathrm{Gal}(L/k),G((X_0)_L))$($i\ge1$)である。$L$ について極限をとり、引用 8 を両辺に当てればよい。fppf 位相については、後で示す 比較定理 に帰着する(比較定理の証明はこの定理を使わないので、循環はない)。
この証明は原論文と異なる。原論文は fppf サイトの上で層の完全列 $0\to\mathcal N\to G\to G_0\to0$ を立て、Cartan の補題と核の関手の補題に帰着させるが、そのためには $G\to G_0$ が fppf 層として全射であること、また $X_0$ が $X$ 上局所有限表示とは限らないのに $G_0$ のコホモロジーを $X$ の fppf サイトで計算してよいことが要り、原論文はこの二点を書かない。本頁はこの筋を採らず、Galois コホモロジーを経由した。原論文自身も、エタール位相で読んだ場合でもこの同型は自明でないと注意している。
$X$ を Hensel 局所とし、$n\ge0$ とする。次は同値である。
(a) 共終性。 $X'$ は Hensel 局所なスキームの有限直和である(引用 3)。その成分の fppf 被覆を引用 2 で準有限な射に細分し、引用 3 で「有限な部分」を取り出すと、閉点の上の点を含む有限・平坦・有限表示な部分が得られる。その像は開かつ閉で閉点を含むので全体である。よって任意の fppf 被覆は有限局所自由で全射な $X''\to X'$ で細分され、正の次数の類はそのような $X''$ に制限すると消える。
(b) 2 ⇒ 1。 $m$ についての帰納法。$X''\to X'$ の Čech から導来関手へのスペクトル系列 $E_2^{p,q}=\check H^p(X''/X',\mathcal H^q)$ で、$X''$ の $X'$ 上のファイバー積はすべて $X$ 上有限局所自由なので、帰納法の仮定により $1\le q< m$ の行が消え、2 により $1\le p\le n$ の列の底が消える。すると $H^m(X'_{\mathrm{fppf}},G)\to H^m(X''_{\mathrm{fppf}},G)$ は単射になり、(a) で類を消す $X''$ をとれば類は $0$ である。
(c) 1 ⇒ 2。 同じスペクトル系列で $1\le q\le n$ の行が消えるので、$\check H^p(X''/X',G)\to H^p(X'_{\mathrm{fppf}},G)=0$ は単射である。$X''\to X'$ が全射でないときは、像(開かつ閉)に取り替えればよい。
原論文は (a) を「知られている」、(b)(c) を「既知の論法」とだけ書く。以下では、狭義局所な $X$ の上で「$X$ 上有限局所自由で閉点がただ一つのもの」の族に限っても同じ論法が回ることを使う(族に限った Cartan の補題と呼ぶ)。この族はファイバー積で閉じる。実際、閉ファイバーの剰余体は分離閉体の有限次拡大、すなわち純非分離拡大であり、純非分離拡大どうしのテンソル積の素イデアルはただ一つだからである。
$X$ を狭義局所とする。$X$ 上有限局所自由な任意の $X'$ について $\check H^i(X'/X,G)=0$($i\ge1$)であり、$H^i(X_{\mathrm{fppf}},G)=0$($i\ge1$)である。原論文の補題 III (11.6) に当たる。
$Y$ を $X$ 上有限局所自由で閉点がただ一つのもの、$Y''\to Y$ を同じ族に属する有限局所自由な全射とする。$Y$ は Hensel 局所で、剰余体 $K$ は分離閉である。 鍵補題 を $Y$ とその閉点に当てると、$\check H^i(Y''/Y,G)$ は閉ファイバーの Čech コホモロジー $\check H^i(\operatorname{Spec}A'/\operatorname{Spec}K,G)$($A'$ は局所な有限 $K$ 代数)に等しく、 分離閉体上の局所な有限代数の補題 によりそれは $0$ である。族に限った Cartan の補題により $H^i(Y_{\mathrm{fppf}},G)=0$ であり、とくに $Y=X$ で後半を得る。前半は、一般の $X'$ をこの族の対象の直和に分け、Čech から導来関手へのスペクトル系列を見ればよい。
原論文は、前半(任意の有限な $X'$ の Čech の消滅)を先に述べ、そこから後半を出す。その向きでは、閉ファイバーに局所でない有限代数が現れ、分離閉体上の補題の表現可能性がそのままでは使えない。本頁は論理の向きを逆にし、局所な有限局所自由スキームの族だけで議論を閉じた。
$n\ge0$ とする。次の三条件は同値である。
1 ⇒ 2:$V$ の上の Leray スペクトル系列で $1\le t\le n$ の行が消えるので、$E_2^{s,0}\to H^s$ は $s\le n$ で同型、$s=n+1$ で単射である(入ってくる微分の源がすべて $0$ の行にあることを確かめればよい)。
2 ⇒ 1:$R^i\varepsilon_*G$ は前層 $V\mapsto H^i(V_{\mathrm{fppf}},G)$ の層化であり、2 によりその切断はエタール類から来るので、エタール被覆の上で消える。ここで使うのは $i\le n$ での全射性だけである。
1 ⇔ 3:引用 1 による。
1 ⇒ 2 と 2 ⇒ 1 はどんなサイトの射でも成り立ち、原論文も「本質的に自明」と書く。3 との同値だけが、fppf 位相についての極限の理論(引用 1)を要する。原論文はここを一般のアーベル層について述べるが、狭義局所化 $X_{\bar x}$ は $X$ 上局所有限表示でないので、層をその上へ延ばす必要がある。本頁は、延長の問題が起きない二つの型(群スキームで表される層と、エタール層の引き戻し)に限っている。
$X$ を任意のスキーム、$G$ を $X$ 上の滑らかな可換群スキームとする。すべての $i$ について $H^i(X,G)\to H^i(X_{\mathrm{fppf}},G)$ は同型である。原論文の定理 III (11.7) 1°) に当たる。
各幾何的点 $\bar x$ について、$G\times_XX_{\bar x}$ は狭義局所な $X_{\bar x}$ 上の滑らかな可換群スキームなので、 狭義局所な底での消滅 により $H^i((X_{\bar x})_{\mathrm{fppf}},G)=0$($i\ge1$)。これはすべての $n$ について 言い換えの補題 の条件 3 が成り立つことなので、条件 2 を $V=X$ に当てて主張を得る。
$F$ を $X_{\mathrm{et}}$ 上のアーベル層とする。$\varepsilon_*\varepsilon^*F=F$ であり、すべての $i$ について $H^i(X,F)\to H^i(X_{\mathrm{fppf}},\varepsilon^*F)$ は同型である。原論文の系 III (11.9) に当たる。
前半は引用 9 から出る。後半は 言い換えの補題 により、狭義局所な $S$ について $H^i(S_{\mathrm{fppf}},\varepsilon^*F)=0$($i\ge1$)を示せばよい。$S$ 上有限局所自由で閉点がただ一つのスキーム $Y$ は、剰余体が分離閉な Hensel 局所スキームなので、引用 9 により $(\varepsilon^*F)(Y)$ は茎 $F_{\bar s}$ に等しい。どの剰余体も $\kappa(s)$ の純非分離拡大なので、この同一視は面写像と両立し、Čech 複体は定数の余単体的群になる。その複体は正の次数で非輪状なので、族に限った Cartan の補題により主張を得る。
原論文は、この系を一般の層についての定理から導く。本頁は、エタール層では核の関手の計算が要らないことを使い、一般形を経由せずに示した。
原論文は定理 (11.7) を、fppf サイト上のアーベル層 $G$ で次の二条件を満たすものについて述べる。原論文はこの二条件を (L)(R) と呼ぶが、本頁の条件 (L) と区別するため、ここでは (L′)(R′) と書く。
Hensel 局所な底での制限 を $G=\mathbb G_m$、$i=2$、$X_0$ を閉点に当てると、Hensel 局所環 $A$(剰余体 $\kappa$)について $H^2(\operatorname{Spec}A,\mathbb G_m)\cong H^2(\kappa,\mathbb G_m)=\mathrm{Br}(\kappa)$ を得る。本書 1-3 の頁で Azumaya 代数の側から述べた「Hensel 局所なら $\mathrm{Br}(X)\cong\mathrm{Br}(x)$」の、コホモロジーの側の形である。$A$ が離散付値環なら、これは本書 3-2 で仮定 (H) と呼んだ同型($n\ge2$)であり、本書 3-3 の (P2) でもある。$\mathbb G_m$ は滑らかなので、同じ同型は fppf コホモロジーでも成り立つ。
$k$ を標数 $p>0$ の完全でない分離閉体とし、$G=\alpha_p$(Frobenius の核。有限平坦だが滑らかでない)とする。$0\to\alpha_p\to\mathbb G_a\xrightarrow{x\mapsto x^p}\mathbb G_a\to0$ は fppf 位相で完全なので、$H^1(k_{\mathrm{fppf}},\alpha_p)=k/k^p\ne0$ である。他方 $H^1(k,\alpha_p)=0$($k$ は分離閉)。$\mu_p$ でも同様に $H^1(k_{\mathrm{fppf}},\mu_p)=k^\times/(k^\times)^p\ne0$ となる(4-1 の頁)。比較定理の仮定のうち、破れているのは $G$ の滑らかさだけである。
原論文の印字の形(「$\check H^i(X'/X,\mathcal N)=0$($1\le i\le n$)なら、$\alpha_i$ は $1\le i\le n$ で全単射、$i=n+1$ で単射」)が成り立たない反例である。原論文には無い。
$X=\operatorname{Spec}\mathbb R\sqcup\operatorname{Spec}\mathbb R$、$X_0$ をその一方の成分、$X'=\operatorname{Spec}\mathbb C\sqcup\operatorname{Spec}\mathbb C$(成分ごとに $\operatorname{Spec}\mathbb C\to\operatorname{Spec}\mathbb R$)、$G$ を定数群 $\mathbb Z$(エタール、したがって滑らかな群スキーム)とする。
原論文の鍵補題の言明(閉部分 $X_0$ に非空を課さない形)が成り立たない反例である。原論文には無い。
$X=\operatorname{Spec}\mathbb R$(Hensel 局所)、$X_0=\emptyset$、$X'=\operatorname{Spec}\mathbb C$、$G=\mathbb Z$ とする。
以下は原論文(付録を含む講演記録は 1968 年刊)より後の展開であり、本頁では出典を確認していない。
本頁は原論文の補題の順((11.1) から (11.7))ではなく、底を体・Hensel 局所・狭義局所・一般と広げる順に並べた。
| 原論文(III §11、印字 pp. 171–183) | 本頁 |
|---|---|
| §11 冒頭:§5 で引用した定理を一般の形で証明する宣言 | 背景と動機 |
| 補題 (11.1) | 「一般のスキームへ」の補題「高次順像の消滅の言い換え」 |
| 補題 (11.2)(Cartan の補題) | 「狭義局所な底」の補題「Hensel局所な底でのCartanの補題」 |
| 補題 (11.3) | 「閉部分から Hensel 局所な底へ」の補題「核の関手とČechコホモロジー」(正しい範囲の形)、反例「核の関手の補題で添字の範囲を狭めた形」 |
| 補題 (11.4) の言明と条件 (L) | 補題「Hensel局所な底での切断の持ち上げ」、定理「鍵補題」(非空を課した形)、反例「鍵補題で閉部分が空の場合」 |
| (11.4) の証明中の余鎖の関手と事実 (*) | 定義「余鎖の関手」、「体の上」の補題「余鎖の微分の滑らかさ」 |
| 注意 (11.5) | 「体の上」の補題「分離閉体上の局所な有限代数」(根基的な場合だけを使う) |
| 補題 (11.6) | 命題「狭義局所な底での消滅」(論理の向きを逆にした) |
| 定理 (11.7) 1°) | 定理「比較定理」 |
| 定理 (11.7) 2°) 3°) | 定理「Hensel局所な底での制限」(2°) は原論文と別の証明) |
| 定理 (11.7) の一般の層についての形、条件 (L)(R) | 注意「一般の層についての形」(本頁では (L′)(R′) と書く。本書は主張しない) |
| 注意 (11.8) | 主結果の証明への注意、その後の発展 |
| 系 (11.9) | 定理「エタール層の引き戻しの比較」 |
| (原論文に無い) | 例「Hensel局所環のBrauer群」、例「滑らかさを外すと比較は壊れる」 |
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