4-1 Sylowの定理

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Lagrangeの定理は部分群の位数が群の位数を割ると述べました。その逆は一般に成り立ちませんが、素数冪の最大部分については驚くほど強い逆向きが成り立ちます。Sylowの三定理は、有限群の位数だけから部分群の存在・共役・個数を制御します。

Sylow部分群

有限群の位数を
$$ |G|=p^nm,\qquad p\nmid m $$
と書きます。

Sylow部分群

位数 $p^n$ の部分群を $G$ のSylow部分群|Sylow !FORMULA[3][38104][0] 部分群という。Sylow $p$ 部分群全体を $\operatorname{Syl}_p(G)$、その個数を $n_p$ と書く。

存在証明に必要な組合せ補題を準備します。

二項係数の補題

$N=p^nm$、$p\nmid m$ なら
$$ \binom{N}{p^n}\not\equiv0\pmod p. $$

係数を $\mathbb F_p$ で考える。二項係数 $\binom pk$ は $0< k< p$ で $p$ の倍数なので
$$ (1+x)^p\equiv1+x^p\pmod p. $$
これを $n$ 回繰り返して
$$ (1+x)^{p^n}\equiv1+x^{p^n}\pmod p. $$
従って
$$ (1+x)^N =\{(1+x)^{p^n}\}^m \equiv(1+x^{p^n})^m\pmod p. $$
両辺の $x^{p^n}$ の係数を比較すると
$$ \binom{N}{p^n}\equiv m\not\equiv0\pmod p. $$
□

第一Sylow定理:存在

第一Sylow定理

$|G|=p^nm$、$p\nmid m$ なら、$G$ は位数 $p^n$ の部分群をもつ。

$G$ の $p^n$ 元部分集合全体を $X$ とする。$G$ は左移動
$$g\cdot A=\{ga\mid a\in A\}$$
で $X$ に作用する。$|X|=\binom{|G|}{p^n}$ は補題により $p$ で割り切れない。
$X$ は軌道の非交和なので、すべての軌道の大きさが $p$ の倍数なら $|X|$ も $p$ の倍数になってしまう。従って、ある $A\in X$ で軌道 $G\cdot A$ の大きさが $p$ で割り切れない。安定化群を
$$ H=G_A=\{g\in G\mid gA=A\} $$
とする。軌道安定化群定理から
$$ |G|=|G\cdot A||H|. $$
$|G|$ に含まれる $p$ の最高冪は $p^n$ で、第一因子は $p$ で割れないため $p^n\mid|H|$。
一方 $a\in A$ を一つ固定すると、写像
$$ H\to A,\qquad h\mapsto ha $$
は単射である。実際 $h_1a=h_2a$ なら右から $a^{-1}$ を掛けて $h_1=h_2$。また $hA=A$ なので $ha\in A$。従って
$$|H|\le|A|=p^n.$$
$p^n\mid|H|$ と合わせて $|H|=p^n$。よって $H$ が求める部分群。□

第二Sylow定理:共役

第二Sylow定理

二つのSylow $p$ 部分群は $G$ の中で共役である。また任意の $p$ 部分群はあるSylow $p$ 部分群に含まれる。

まず $P\le G$ を任意の $p$ 部分群、$Q$ を一つのSylow $p$ 部分群とする。$P$ を左剰余類集合 $G/Q$ に左移動で作用させる。集合の大きさは
$$ |G/Q|=[G:Q]=m $$
で $p$ と互いに素。
$P$ の各軌道の大きさは軌道安定化群定理により $|P|$ の約数、従って1または $p$ の倍数。全体の大きさ $m$ は $p$ で割れないので、一元軌道、すなわち $P$ が固定する剰余類 $gQ$ が存在する。全 $x\in P$ で
$$xgQ=gQ,$$
従って $g^{-1}xg\in Q$。ゆえに
$$g^{-1}Pg\subset Q.$$
これで任意の $p$ 部分群があるSylow部分群に共役を除いて含まれることを示した。
$P$ 自身もSylowなら $|P|=|Q|=p^n$ なので、包含 $g^{-1}Pg\subset Q$ は位数が等しく、等号になる。従ってSylow部分群同士は共役。□

第三Sylow定理:個数

第三Sylow定理

Sylow $p$ 部分群の個数 $n_p$ は
$$ n_p\mid m,\qquad n_p\equiv1\pmod p $$
を満たす。

$G$ は $\operatorname{Syl}_p(G)$ に共役で作用する。第二Sylow定理によりこの作用は推移的なので、固定した $P$ の軌道は全体。安定化群は正規化群
$$ N_G(P)=\{g\in G\mid gPg^{-1}=P\}. $$
従って
$$ n_p=[G:N_G(P)]. $$
$P\subset N_G(P)$ だから $|N_G(P)|$ は $p^n$ の倍数で、$n_p$ は $m=|G|/p^n$ を割る。
次に $P$ 自身を $\operatorname{Syl}_p(G)$ へ共役で作用させる。軌道の大きさは1または $p$ の倍数。$P$ 自身は固定点である。固定されるSylow部分群 $Q$ が他にもあると仮定すると、$P\subset N_G(Q)$。
$P$ が $Q$ を正規化するため $PQ$ は部分群であり
$$ |PQ|=\frac{|P||Q|}{|P\cap Q|} $$
は $p$ の冪。ところが $PQ\le G$ なので位数は $p^n$ 以下。一方 $Q\subset PQ$ で $|Q|=p^n$ だから $PQ=Q$、従って $P\subset Q$。位数が等しいので $P=Q$。よって固定点は $P$ 一つだけ。
残りの軌道はすべて大きさが $p$ の倍数だから
$$n_p\equiv1\pmod p.$$
□

位数12の群で何が分かるか

$|G|=12=2^2\cdot3$ とします。
$$ n_3\mid4,\qquad n_3\equiv1\pmod3 $$
より $n_3=1$ または4。
$$ n_2\mid3,\qquad n_2\equiv1\pmod2 $$
より $n_2=1$ または3。一意なSylow部分群は共役で動かしても自分自身なので正規です。位数だけで正規部分群の候補が絞れます。

位数15の群の正規部分群

$|G|=15$ のときSylow 5部分群が一意で正規であることを示せ。

解答

$$ n_5\mid3,\qquad n_5\equiv1\pmod5. $$
3の約数は1,3で、そのうち5を法として1なのは1だけ。従って $n_5=1$。共役はSylow 5部分群をSylow 5部分群へ移すため、一つしかなければすべての共役で不変、よって正規。□

位数21のSylow個数

$|G|=21$ のとき可能な $n_3,n_7$ を求め、必ず非自明な正規部分群をもつことを示せ。

解答

$$ n_7\mid3,\qquad n_7\equiv1\pmod7 $$
より $n_7=1$。また
$$ n_3\mid7,\qquad n_3\equiv1\pmod3 $$
より $n_3=1$ または7。いずれにせよSylow 7部分群は一意で、位数7の非自明な正規部分群である。□

参考文献

[1]
David S. Dummit and Richard M. Foote, Abstract Algebra, 3rd ed., Wiley, 2004

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