8-7 位数8の群

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位数 $p^2$ まではすべて可換でした。位数8では初めて、同じ位数・似た元の位数をもちながら異なる二つの非可換群 $D_4,Q_8$ が現れます。有限生成可換群の構造定理と指数2部分群を使えば、全分類を完結できます。

五つの候補

位数8の群の分類

位数8の群は、同型を除いて次の五つである。
$$ C_8,\qquad C_4\times C_2,\qquad C_2^3, \qquad D_4,\qquad Q_8. $$
ここで
$$ D_4=\langle r,s\mid r^4=s^2=e,\ srs^{-1}=r^{-1}\rangle, $$
$$ Q_8=\{\pm1,\pm i,\pm j,\pm k\}, \quad i^2=j^2=k^2=ijk=-1. $$

$G$ が可換なら有限生成可換群の構造定理と $8=2^3$ の分割
$$3,\qquad2+1,\qquad1+1+1$$
から、最初の三群に限られる。
$G$ を非可換とする。もし全非単位元の位数が2なら、任意の $x,y$ について
$$ (xy)^{-1}=xy. $$
一方 $(xy)^{-1}=y^{-1}x^{-1}=yx$ なので $xy=yx$ となり矛盾。従って位数4以上の元がある。位数8の元があれば群は巡回で可換だから、位数4の元 $r$ が存在する。
$H=\langle r\rangle$ は位数4、指数2なので正規。$s\notin H$ を取る。共役 $srs^{-1}$ は $H$ の生成元なので $r$ または $r^{-1}$。前者なら $r,s$ が可換し、$G=H\cup sH$ の全元が可換するので矛盾。従って
$$srs^{-1}=r^{-1}.$$
$G/H$ は位数2なので $s^2\in H$。$s^2=r^k$ と書く。$s$ は $s^2$ と可換する一方、
$$ sr^ks^{-1}=r^{-k}. $$
従って $r^k=r^{-k}$、すなわち $2k\equiv0\pmod4$。よって $s^2=e$ または $s^2=r^2$。
$s^2=e$ なら表示は $D_4$。$s^2=r^2$ なら
$$ r^4=e,\quad s^2=r^2,\quad srs^{-1}=r^{-1} $$
で、$r\mapsto i,s\mapsto j$ とすれば $Q_8$ の関係式になり、八つの正規形 $r^a s^b$($0\le a<4,0\le b<2$)が対応する。従って $Q_8$。□

五群を見分ける

  • $C_8$ は位数8の元をもつ。
  • $C_4\times C_2$ は可換で位数4の元をもつ。
  • $C_2^3$ は全非単位元の位数が2。
  • $D_4$ は非可換で位数2の元を5個もつ。
  • $Q_8$ は非可換で位数2の元が $-1$ 一つだけ。
    同型は元の位数と可換性を保つため、五群は互いに非同型です。

$D_4$ と $Q_8$ の部分群

$Q_8$ の非自明な全部分群は
$$ \{\pm1\},\quad \langle i\rangle,\quad\langle j\rangle,\quad \langle k\rangle,\quad Q_8. $$
位数4の三部分群はすべて指数2なので正規。実は $Q_8$ の全部分群は正規です。
$D_4$ では反転部分群 $\langle s\rangle$ は
$$r\langle s\rangle r^{-1} =\langle r^2s\rangle\ne\langle s\rangle $$
なので正規でありません。この差は、元の位数だけでなく部分群格子にも現れます。

$Q_8$ の中心と交換子

$Z(Q_8)$ と $[Q_8,Q_8]$ を求めよ。

解答

$\pm1$ は全元と可換する。$i$ は $j$ と可換せず、同様に $\pm i,\pm j,\pm k$ は中心に入らない。従って
$$Z(Q_8)=\{\pm1\}.$$
商 $Q_8/\{\pm1\}$ は $C_2\times C_2$ で可換なので
$$[Q_8,Q_8]\subset\{\pm1\}.$$
一方
$$ [i,j]=iji^{-1}j^{-1}=-1, $$
したがって
$$[Q_8,Q_8]=\{\pm1\}.$$
□

$D_4$ の交換子

$[D_4,D_4]=\langle r^2\rangle$ を示せ。

解答

$$ [s,r]=srs^{-1}r^{-1} =r^{-1}r^{-1}=r^2. $$
よって $\langle r^2\rangle\subset[D_4,D_4]$。一方 $D_4/\langle r^2\rangle\cong C_2\times C_2$ は可換なので、可換化の普遍性から逆包含。□

参考文献

[1]
David S. Dummit and Richard M. Foote, Abstract Algebra, 3rd ed., Wiley, 2004

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