8-11 総合問題

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この章では、定義を知っているだけでなく「何を使えば進むか」を判断する練習をします。各問の直後に完全解答を置きますが、最初は解答を閉じたまま、自分で方針を言葉にしてから計算してください。

問題1:二面体群の可換化

二面体群の可換化

$$ D_n=\langle r,s\mid r^n=s^2=e,\ srs=r^{-1}\rangle $$
の交換子部分群と可換化を、$n$ の奇偶に分けて求めよ。

解答

基本交換子は
$$ [s,r]=srs^{-1}r^{-1}=r^{-2}. $$
従って $\langle r^2\rangle\le[D_n,D_n]$。一方、$D_n/\langle r^2\rangle$ では $r=r^{-1}$ なので、関係 $srs=r^{-1}$ は $sr=rs$ を意味します。商は可換だから
$$ [D_n,D_n]\le\langle r^2\rangle. $$
よって等号です。
$n$ が奇数なら $r^2$ も $\langle r\rangle$ を生成するので交換子部分群は $\langle r\rangle$、可換化は $C_2$。$n$ が偶数なら $\langle r^2\rangle$ の指数は4で、商では $r,s$ がともに位数2で可換するため
$$ D_n^{\mathrm{ab}}\cong C_2\times C_2. $$
□

問題2:位数21の群

位数21の完全分類

位数21の群は、同型を除いて巡回群と一つの非可換群の二種類であることを示せ。

解答

$21=3\cdot7$ です。Sylow数から
$$ n_7\mid3,quad n_7\equiv1\pmod7 $$
なので $n_7=1$。従って $Q\cong C_7$ は正規。Sylow 3部分群 $P\cong C_3$ と合わせて
$$ G\cong C_7\rtimes_\alpha C_3. $$
作用は $\alpha:C_3\to\operatorname{Aut}(C_7)\cong C_6$ です。
$\alpha$ が自明なら直積 $C_7\times C_3\cong C_{21}$。非自明なら像は $C_6$ の位数3部分群です。巡回群 $C_6$ の位数3部分群は一意で、その二つの生成元は $C_3$ の生成元を逆元へ替えることで交換されます。従って非自明半直積は同型を除いて一つ。
具体的には $2\in(\mathbb Z/7\mathbb Z)^\times$ が位数3なので
$$ \langle r,s\mid r^7=s^3=e,\ srs^{-1}=r^2\rangle $$
です。作用が非自明なので非可換で、巡回群とは非同型です。□

問題3:$A_4$ の正規部分群

$A_4$ の正規部分群を尽くす

$A_4$ の正規部分群が
$$ \{e\},\quad V_4,\quad A_4 $$
だけであることを示せ。

解答

$A_4$ の共役類サイズは
$$ 1,\quad3,\quad4,\quad4. $$
単位元、三つの二重互換、二つに分かれた3-cycleの類に対応します。正規部分群は単位元を含む共役類の和集合で、その位数は12を割ります。
可能な和を調べると、1だけなら自明群、$1+3=4$ なら二重互換を合わせた $V_4$、全部なら12です。$1+4=5,1+4+4=9,1+3+4=8$ は12を割らず、$1+3+4+4=12$ は全体。従って三つだけです。$V_4$ が積で閉じることは二重互換どうしの積を計算すれば確認できます。□

問題4:自由群の指数2部分群

Schreier基底を作る

$F(a,b,c)$ から $C_2$ へ $a\mapsto1,b,c\mapsto0$ と送る全射の核 $H$ について、自由基底を一つ求めよ。

解答

右剰余類代表を $1,a$ と取ります。二頂点のSchreierグラフで、基点からもう一頂点への $a$ 辺を全域木に選びます。木の外の辺が作る基本閉路は
$$ a^2,quad b,quad c,quad aba^{-1},quad aca^{-1}. $$
従ってこれらが $H$ の自由基底です。指数公式でも
$$ \operatorname{rank}H=1+2(3-1)=5 $$
となり、個数が一致します。□

問題5:行列群から置換群へ

$GL_2(\mathbb F_2)\cong S_3$

$GL_2(\mathbb F_2)$ の三つの非零ベクトルへの作用を用いて、$GL_2(\mathbb F_2)\cong S_3$ を証明せよ。作用が忠実である理由も示せ。

解答

$\mathbb F_2^2$ の非零ベクトルは
$$ (1,0)^{\mathsf T},\ (0,1)^{\mathsf T},\ (1,1)^{\mathsf T} $$
の三つ。可逆行列は非零ベクトルを非零ベクトルへ送るので準同型
$$ \rho:GL_2(\mathbb F_2)\to S_3 $$
を得ます。
$\rho(A)$ が三ベクトルをすべて固定するなら、特に標準基底二本を固定するので $A=I$。従って核は自明で作用は忠実、$\rho$ は単射です。一方
$$ |GL_2(\mathbb F_2)|=(4-1)(4-2)=6=|S_3|. $$
同じ位数の有限群への単射は全射なので同型です。□

問題6:組成因子と非同型性

組成因子だけでは群は決まらない

$D_4$ と $Q_8$ の組成因子が同じであることを示し、それでも両群が非同型である理由を二つ挙げよ。

解答

両群は位数8の2群です。組成因子は素数位数の巡回群で、その位数の積が8になるため、Jordan--Hölderの定理からどちらも
$$ C_2,C_2,C_2 $$
を組成因子にもちます。
しかし $D_4$ には反射四つと $r^2$、合計5個の位数2元があります。$Q_8$ の位数2元は $-1$ の一つだけです。また $D_4$ には位数2の非中心元がありますが、$Q_8$ のすべての部分群は正規です。どちらの性質も同型で保存されるので両群は非同型です。□

問題7:作用による数え上げ

正六角形の頂点二色彩色

正六角形の頂点を白黒に塗り、回転と反転で移り合う彩色を同一視する。種類数を求めよ。

解答

$n=6,q=2$ のbracelet公式を使います。回転の固定点数の和は
$$ 2^6+2^1+2^2+2^3+2^2+2^1 =84. $$
偶数個の頂点なので、向かい合う頂点を通る反転が3個あり、各々 $2^{6/2+1}=16$ 配置を固定します。向かい合う辺を通る反転も3個あり、各々 $2^{6/2}=8$ 配置を固定します。従って軌道数は
$$ \frac1{12}(84+3\cdot16+3\cdot8) =\frac{156}{12}=13. $$
□

問題8:冪零と可解を区別する

$S_3$ は可解だが冪零でない

$S_3$ の導来列と下中心列をそれぞれ計算し、可解だが冪零でないことを示せ。

解答

$[S_3,S_3]=A_3$ で、$A_3$ は可換です。従って導来列は
$$ S_3\trianglerighteq A_3\trianglerighteq\{e\}, $$
よって $S_3$ は可解です。
下中心列では
$$ \gamma_2(S_3)=[S_3,S_3]=A_3. $$
$a=(123),t=(12)$ とすると $tat^{-1}=a^{-1}$ なので
$$ [t,a]=tat^{-1}a^{-1}=a^{-2}=a\ne e. $$
従って $[S_3,A_3]$ は $A_3$ の非自明な部分群であり、$A_3$ 全体です。ゆえに
$$ \gamma_i(S_3)=A_3\quad(i\ge2) $$
で、自明群へ到達しません。従って冪零ではありません。□

問題9:射影変換と交比

四点目の像

Möbius変換 $T$ が
$$ T(0)=1,quad T(1)=\infty,quad T(\infty)=0 $$
を満たすとき、$T(2)$ を交比または直接計算で求めよ。

解答

三点の条件からMöbius変換は一意で、直接の計算により
$$ T(z)=\frac1{1-z}. $$
従って
$$ T(2)=\frac1{1-2}=-1. $$
交比を使う場合も、$[0,1;\infty,2]$ が $[1,\infty;0,T(2)]$ に等しいという方程式を解けば同じ値を得ます。□

問題10:道具の総合

位数45の群

位数45の群 $G$ が正規な位数5の部分群をもち、可解であることを示せ。

解答

$45=3^2\cdot5$。Sylow 5部分群の個数は
$$ n_5\mid9,qquad n_5\equiv1\pmod5. $$
9の約数 $1,3,9$ のうち5を法として1なのは1だけなので $n_5=1$。従ってSylow 5部分群 $N\cong C_5$ は正規です。
商 $G/N$ の位数は9なので、位数 $p^2$ の群の分類から可換です。$N$ も可換です。短完全列
$$ 1\to N\to G\to G/N\to1 $$
で核と商が可解なので、可解群の拡大閉性から $G$ も可解です。□

ここまでの問題では、同じ対象に複数の道具を使いました。位数はSylow理論へ、正規部分群は商と拡大へ、作用は置換表現と数え上げへ、表示は自由群と具体計算へつながります。群論の力は個々の定理よりも、この道具間の往復にあります。

参考文献

[1]
David S. Dummit and Richard M. Foote, Abstract Algebra, 3rd ed., Wiley, 2004

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