1-1 単冪群を構造群とする主束

$$\newcommand{C}[0]{\mathbb{C}} \newcommand{N}[0]{\mathbb{N}} \newcommand{Q}[0]{\mathbb{Q}} \newcommand{R}[0]{\mathbb{R}} \newcommand{Z}[0]{\mathbb{Z}} $$

連結な単冪群を構造群とする局所自明な主束は、底がアフィンなら自明であることを、群の正規列による帰納法と構造層の 1 次コホモロジーの消滅で示す。原論文の帰納法は二つの束を自明化する順序を書かないので、先に商の束を自明化する形に直す。原論文が証明なしに付言する「群が連結でなくてもよい」は、底が可約だと破れるので、反例を示し、底が既約なら正しいという形に直して述べる。
前提知識: 主ファイバー空間, 単冪群, アフィン代数的集合, 層のコホモロジー, Čechコホモロジー

この頁で示すこと

$k$ は代数的閉体で、標数は任意である。空間は本書の読みの代数的空間($k$ 上有限型の分離的な被約スキームを $k$ 点の集合と同一視したもの。既約とも連結とも限らない)で、位相は Zariski 位相である。$G$ はアフィン代数群、$P\to X$ は構造群 $G$ の主束($G$ が右から自由に作用し $X=P/G$ となるもの)で、局所自明とは各点の近傍 $U$ で $P|_U\cong U\times G$ となることをいう(下の定義)。
本頁の主結果は次の三つである。

  1. 単冪群の主束はアフィンな底の上で自明(原論文 Proposition 1):アフィンな代数的空間 $X$ の上の、連結な単冪アフィン群を構造群とする局所自明な主束はすべて自明である。[条件付き:1 次元の連結単冪群は加法群であること、連結単冪群の中間の次元の連結閉正規部分群の存在、単冪群は冪零で可解であること、アフィン群の閉正規部分群による商がアフィン群であること、単冪群の商は単冪で連結な群の商は連結であること、Rosenlicht の局所切断の定理、アフィンな空間で構造層の 1 次コホモロジーが消えること(Serre)を引用]
  2. 構造層の 1 次コホモロジーが消える底(Proposition 1 の後の注意の前半):底 $X$ をアフィンの代わりに $H^1(X,\mathcal O_X)=0$ をみたす代数的空間にしても、同じ結論が成り立つ。[条件付き:1 と同じ定理に加え、アフィン開被覆の Čech 複体が層のコホモロジーを計算すること(Leray、Serre)と、積の座標環がテンソル積であることを引用]
  3. 既約な底の上の非連結な単冪群(訂正形)(同じ注意の後半):底 $X$ が既約なアフィン代数的空間なら、連結とは限らない単冪アフィン群を構造群とする局所自明な主束もすべて自明である。[条件付き:1 による。代数群の単位成分が指数有限の閉正規部分群であることも引用]原論文の形は反例「反例:可約な底では非連結な単冪群の主束は自明とは限らない」で破れる。
    三つとも、交叉理論(Chow 環の枠組み)を一切使わない。本書の基準では、線形代数群の構造論・Rosenlicht の定理・連接層のコホモロジーという第 0 章の古典的な定理を引くので三つとも[条件付き]になるが、それらを認めれば証明は頁の中で閉じる。推移関数の扱いと商の束の構成は、下の二つの補題として頁の中で証明する。

背景と動機

原論文の第 1 節は、講演全体の道具となる二つの事実を先に用意する。一つは本頁の Proposition 1 で、単冪群を構造群とする主束はアフィンな底の上で自明になる。もう一つは次の頁の Proposition 2 で、連結可解群をその閉連結部分群で割った空間はアフィン空間とトーラスの積になる(本書『1-2 可解群の等質空間』)。後者の証明の中で、前者が商の束を自明にするのに使われる。
Proposition 1 の考え方は、加法群の場合に帰着させることである。1 次元の連結単冪群は加法群 $\mathbf G_a$ に同型で、局所自明な $\mathbf G_a$ 主束は構造層の 1 次コホモロジー $H^1(X,\mathcal O_X)$ の元で分類される。$X$ がアフィンならこの群は消える。一般の連結単冪群は、閉正規部分群による商を繰り返して 1 次元の群に分解できるので、次元についての帰納法で片づく。原論文の証明は印字 5-01 の十数行で、帰納法の段を「上の二つの束はそれぞれ切断をもつ」とまとめている。本頁はこの段の順序を補う(下の注意)。
証明の後の注意で原論文は、使ったのは $H^1(X,\mathcal O_X)=0$ だけであること、また $G$ が連結でなくても結果は成り立つことを付け加える。前者は正しい(主結果 2)。後者は証明が書かれず、本書の読みの空間(可約でもよい)では偽である。二つの既約成分が 2 点で交わる輪の形の底の上で、位数 $p$ の巡回群の自明でない主束が作れる。底が既約なら、非連結な部分は定数の推移関数しか生まず、正しい主張になる(主結果 3)。

定義と準備

主束とその局所自明性を、推移関数で扱える形に定める。本書の空間の読みと主束の一般の約束は本書『0-3 ファイバー空間と有限エタール被覆』でまとめて述べるが、本頁で使う部分はここで繰り返す。

代数的空間(本書の読み)

代数的空間とは、代数的閉体 $k$ 上有限型の分離的な被約スキームを、その $k$ 点の集合と同一視したものをいう。既約とも連結とも限らない。アフィン空間 $k^n$ のある閉部分集合に同型な代数的空間をアフィンという。「開」「近傍」はすべて Zariski 位相の意味である。今日の Artin の意味の代数空間ではない。

原論文の「espace algébrique」をこう読むことが、主結果 3 と反例の成否を分ける。読みの根拠は下の注意にまとめる。

主束・局所自明・自明

$G$ を代数群とする。構造群 $G$ の主束(主ファイバー空間)とは、代数的空間 $P$ と射 $\pi\colon P\to X$ と、$\pi$ のファイバーを保つ $G$ の右からの作用で、$\pi$ が全射で、射 $P\times G\to P\times_XP$、$(p,g)\mapsto(p,pg)$ が同型であり、$\pi$ が $P$ の $G$ による商になっているものをいう(本書『0-3 ファイバー空間と有限エタール被覆』の定義(主束と局所自明性)と同じ)。とくに $G$ は各ファイバーに自由かつ推移的に作用する。

  1. 開集合 $U\subset X$ の上の自明化とは、$\pi^{-1}(U)$ から $U\times G$ への同型で、$X$ への射影と $G$ の右作用($U\times G$ では $(u,g)h=(u,gh)$)を保つものをいう。
  2. $X$ の各点が自明化をもつ近傍をもつとき、$P$ は局所自明であるという。
  3. $X$ 全体の上の自明化があるとき、$P$ は自明であるという。
  4. $P$ の切断とは射 $s\colon X\to P$ で $\pi\circ s=\mathrm{id}_X$ となるものをいう。

局所自明な主束は推移関数で記述でき、自明であることは推移関数についての条件になる。これは本頁のすべての証明の土台なので、補題として証明しておく。

推移関数と切断

$P\to X$ を構造群 $G$ の主束とし、開被覆 $(U_i)$ と自明化 $\varphi_i\colon P|_{U_i}\to U_i\times G$ が与えられているとする。

  1. 射 $g_{ij}\colon U_i\cap U_j\to G$ がただ一つあって、$U_i\cap U_j$ の上で $\varphi_i\circ\varphi_j^{-1}(u,g)=(u,g_{ij}(u)g)$ となる。$U_i\cap U_j\cap U_l$ の上で $g_{ij}g_{jl}=g_{il}$ が成り立つ。
  2. $P$ が切断をもつことと、$P$ が自明であることは同値である(本書『0-3 ファイバー空間と有限エタール被覆』の命題(主束の切断と自明性)の (1) と同じ主張で、ここでは推移関数で示す)。
  3. $P$ が自明であることと、射 $h_i\colon U_i\to G$ があって $U_i\cap U_j$ の上で $g_{ij}=h_ih_j^{-1}$ となることは同値である。
  4. 逆に、開被覆 $(U_i)$ と 1 の等式をみたす射 $g_{ij}$ が与えられれば、$U_i\times G$ を $g_{ij}$ で貼り合わせて、その推移関数をもつ局所自明な主束が得られる。

段 1(推移関数).$\psi=\varphi_i\circ\varphi_j^{-1}$ は $(U_i\cap U_j)\times G$ の自己同型で、第 1 成分と $G$ の右作用を保つ。$\psi(u,e)=(u,g_{ij}(u))$ で射 $g_{ij}$ を定めると、右作用を保つことから $\psi(u,g)=\psi((u,e)g)=(u,g_{ij}(u)g)$ である。$\varphi_i\varphi_l^{-1}=(\varphi_i\varphi_j^{-1})(\varphi_j\varphi_l^{-1})$ を $(u,e)$ で比べると $g_{il}=g_{ij}g_{jl}$ を得る。一意性は $\psi(u,e)$ で決まることから分かる。
段 2(切断と自明性).自明化 $\varphi\colon P\to X\times G$ があれば $s(x)=\varphi^{-1}(x,e)$ が切断である。逆に切断 $s$ があれば、$\Phi\colon X\times G\to P$、$(x,g)\mapsto s(x)g$ は射で右作用と射影を保つ。自明化 $\varphi_i$ で見ると $\varphi_i(s(u))=(u,h_i(u))$ となる射 $h_i\colon U_i\to G$ があり、$\varphi_i(\Phi(u,g))=(u,h_i(u)g)$ なので $\Phi$ は $U_i$ の上で同型 $(u,g)\mapsto(u,h_i(u)g)$ に当たる。ゆえに $\Phi$ は同型で、その逆が自明化である。
段 3(推移関数による判定).切断 $s$ があれば段 2 の $h_i$ について、$\varphi_i(s(u))=\varphi_i\varphi_j^{-1}(\varphi_j(s(u)))=(u,g_{ij}(u)h_j(u))$ なので $h_i=g_{ij}h_j$、すなわち $g_{ij}=h_ih_j^{-1}$ である。逆に $g_{ij}=h_ih_j^{-1}$ となる $h_i$ があれば、$s_i(u)=\varphi_i^{-1}(u,h_i(u))$ は $U_i$ の上の切断で、$U_i\cap U_j$ の上で $\varphi_i(s_j(u))=(u,g_{ij}(u)h_j(u))=(u,h_i(u))=\varphi_i(s_i(u))$ なので $s_i=s_j$ となり、貼り合わさって切断を与える。段 2 により $P$ は自明である。
段 4(貼り合わせ).$(u,g)\in(U_i\cap U_j)\times G$ を $(u,g_{ij}(u)g)\in(U_i\cap U_j)\times G$ と同一視する。1 の等式から $g_{ii}=e$、$g_{ji}=g_{ij}^{-1}$ で、同一視は同値関係になり、スキームの貼り合わせの条件をみたす。左からの掛け算は右作用と可換なので、得られた $P$ に $G$ が右から作用し、各 $U_i\times G$ が自明化を与える。$P\to X$ は各 $U_i$ の上で $U_i\times G\to U_i$ なので、$G$ がアフィンならアフィン射で、とくに $P$ は分離的である。$\pi$ の全射性と $P\times G\cong P\times_XP$ は各 $U_i$ の上で確かめればよく、$U_i\times G$ では明らかである。$X$ が $P$ の $G$ による商であることは、局所切断 $u\mapsto\varphi_i^{-1}(u,e)$ を使う下の補題(部分群による商の束)の段 3 と同じ議論による。

自明化の取り替えは推移関数の掛け算で表されるので、主束の問題は推移関数の問題になる。とくに $G=\mathbf G_a$(加法群)なら、$g_{ij}$ は $U_i\cap U_j$ の上の正則関数で、1 の等式は加法的な 1 次の Čech 余輪体の条件 $g_{ij}+g_{jl}=g_{il}$、3 の条件はそれが Čech 余境界であることになる。
帰納法では、構造群を正規部分群で割った束と、その正規部分群を構造群とする束の二つに分ける。その二つが局所自明であることを確かめておく。

部分群による商の束

$G$ を代数群、$H$ を $G$ の閉正規部分群とし、商 $G/H$ は代数群で、$G\to G/H$ は構造群 $H$ の局所自明な主束であるとする。$P\to X$ を構造群 $G$ の局所自明な主束とする。

  1. 構造群 $G/H$ の局所自明な主束 $P/H\to X$ と、射 $q\colon P\to P/H$ で、$X$ への射影と両立し、各自明化の上で $\mathrm{id}\times(G\to G/H)$ に当たるものがある。
  2. $q\colon P\to P/H$ は、$H$ の右作用について構造群 $H$ の局所自明な主束である。
  3. 一般に、構造群 $H$ の局所自明な主束 $Q\to Y$ について、$Q$ からの射で $H$ の軌道の上で一定なものは、$Y$ からの射をただ一つ経由する。とくに 1 の $P/H$ は $P$ の $H$ による商として同型を除いて一つに定まる。

段 1($P/H$ の構成).$P$ の推移関数を $g_{ij}\colon U_i\cap U_j\to G$ とし、その像 $\bar g_{ij}\colon U_i\cap U_j\to G/H$ をとる。$\bar g_{ij}$ は上の補題(推移関数と切断)の 1 の等式をみたすので、その 4 により構造群 $G/H$ の局所自明な主束 $P/H$ が得られる。$U_i\times G\to U_i\times(G/H)$ は推移関数による貼り合わせと両立するので、射 $q\colon P\to P/H$ が定まる。
段 2($q$ の局所自明性).$G\to G/H$ の切断 $\sigma\colon W\to G$ を $G/H$ の開集合 $W$ の上でとる。$U_i\times W\subset U_i\times(G/H)$ の上で、$(u,w,h)\mapsto(u,\sigma(w)h)$ は $U_i\times W\times H$ から $q^{-1}(U_i\times W)$ への射で、$H$ の右作用を保つ。逆写像は $(u,x)\mapsto(u,xH,\sigma(xH)^{-1}x)$ で、$\sigma(xH)^{-1}x\in H$ である。$W$ を動かすと $G/H$ が覆われ、$i$ を動かすと $X$ が覆われるので、$q$ は局所自明である。
段 3(射の下降).$f\colon Q\to Z$ が $H$ の軌道の上で一定とする。$Y$ の開集合 $V$ の上に切断 $s\colon V\to Q$ があれば(局所自明なのでそのような $V$ で $Y$ が覆われる)、$V$ の上で $\bar f=f\circ s$ とおく。別の切断 $s'$ は $s'=s\,h$($h\colon V\to H$)と書けるので $f\circ s'=f\circ s$ で、$\bar f$ は切断の取り方によらず貼り合わさり、$\bar f\circ(Q\to Y)=f$ をみたす。一意性は $Q\to Y$ が全射であることから分かる。1 の $P/H$ と別の商 $Y'$($P\to Y'$ が同じ性質をもつもの)は、互いにこの性質で射を与え合い、合成は恒等なので同型である。

段 3 は、局所切断があれば商の普遍性が推移関数なしに得られることを言っている。次の頁で等質空間 $N/N'$ の間の射を作るときも、この形で使う。

引用する事実

次の事実は証明せずに引用する。群についての事実 1〜4 の出典は原論文が引く Grothendieck Gro56・Gro58car と Rosenlicht Ros57、現代の標準は Bor91、Hum75 で、要点は本書『0-2 線形代数群と旗多様体』の定理「連結単冪群と連結可解群の構造」の (1)〜(3)(事実 1・2)、定理「等質空間の基本」の (2)(事実 2 の商がアフィン群であること)、定理「Rosenlicht の局所切断」(事実 3)にある。コホモロジーについての事実 5・6 の出典は Serre Ser55 で、要点は本書『0-3 ファイバー空間と有限エタール被覆』の定理「連接層とアフィンな空間の基本」の (1)・(9)(事実 5)と (10)・(5) の前半(事実 6)にある。どの文献についても、該当箇所は本頁では確認していない。

  1. 1 次元の連結単冪群:1 次元の連結単冪アフィン群は加法群 $\mathbf G_a$ に代数群として同型である(原論文が引く Gro58car の théorème 4)。
  2. 連結単冪群の構造:単冪群は冪零、とくに可解である。次元が 2 以上の連結単冪アフィン群 $G$ は、$0<\dim G'<\dim G$ となる連結閉正規部分群 $G'$ をもつ。単冪群の閉部分群は単冪である。アフィン群の閉正規部分群による商はアフィン群で、単冪群の商は単冪、連結な群の商は連結である。
  3. Rosenlicht の局所切断:$H$ が線形群(アフィン群)$G$ の連結可解な閉部分群なら、$G\to G/H$ は局所切断をもつ。すなわち構造群 $H$ の局所自明な主束である。
  4. 単位成分:代数群 $G$ の単位元を含む連結成分 $G^\circ$ は、指数有限の閉正規部分群である。
  5. アフィンな空間のコホモロジー:アフィンな代数的空間 $X$ では $H^1(X,\mathcal O_X)=0$ である。一般に、開被覆の構造層の 1 次の Čech コホモロジーは $H^1(X,\mathcal O_X)$ に単射に写る。したがって $H^1(X,\mathcal O_X)=0$ なら、どの開被覆についても加法的な 1 次の Čech 余輪体は余境界である。
  6. アフィン開被覆の Čech 複体:分離的な代数的空間では、アフィン開集合の有限個の共通部分はアフィンで、アフィン開被覆の構造層の Čech 複体のコホモロジーは $H^*(X,\mathcal O_X)$ に等しい。アフィンな $V$、$Y$ について $\Gamma(V\times Y,\mathcal O)=\Gamma(V,\mathcal O)\otimes_k\Gamma(Y,\mathcal O)$ である。
    事実 2 の「単冪群の商は単冪」は、第 7 巻『アフィン代数群と可換アフィン代数群』の頁『4-2 準同型と閉部分群と Jordan 分解』の主結果「有理準同型は半単純元・単冪元を保つ」の単冪な元についての部分(第 7 巻で完結)に、商がアフィン群になることを合わせたものである。事実 1〜3 は主結果 1・2 に、事実 4 は主結果 3 に、事実 5 は主結果 1 に、事実 5・6 は主結果 2 に使う。

主結果と証明

アフィンな底

帰納法の各段で、束を二つに分ける。構造群 $G$ を正規部分群 $G'$ で割った束 $P/G'\to X$ と、$G'$ を構造群とする束 $P\to P/G'$ である。後者の底 $P/G'$ がアフィンであることは、前者を先に自明化して初めて分かる。

単冪群の主束はアフィンな底の上で自明

$X$ をアフィンな代数的空間、$G$ を連結な単冪アフィン群とする。$X$ の上の構造群 $G$ の局所自明な主束 $P$ はすべて自明である。

$n=\dim G$ についての帰納法で示す。帰納法の主張は「次元 $n$ の連結単冪アフィン群を構造群とする局所自明な主束は、どのアフィンな底の上でも自明」である。
段 1($n\le1$).$n=0$ なら $G$ は連結で 0 次元なので $G=\{e\}$、$P\to X$ は同型で自明である。$n=1$ なら、引用する事実 1 により $G\cong\mathbf G_a$ である。自明化の開被覆 $(U_i)$ をとると、上の補題(推移関数と切断)の 1 により推移関数 $g_{ij}$ は $U_i\cap U_j$ の上の正則関数で、$g_{ij}+g_{jl}=g_{il}$ をみたす。$X$ はアフィンなので、引用する事実 5 により正則関数 $h_i$ が $U_i$ の上にあって $g_{ij}=h_i-h_j$ となる。上の補題の 3 により $P$ は自明である。
段 2(部分群の選び方).$n\ge2$ とし、次元が $n$ 未満のときは主張が成り立つとする。引用する事実 2 により、連結閉正規部分群 $G'$ で $0<\dim G'< n$ のものがある。$G'$ は連結な単冪アフィン群で、$G/G'$ は連結な単冪アフィン群であり、どちらも次元は $n$ 未満である。$G'$ は連結で可解なので、引用する事実 3 により $G\to G/G'$ は構造群 $G'$ の局所自明な主束である。上の補題(部分群による商の束)が使える。
段 3(先に商の束を自明化する).上の補題(部分群による商の束)の 1 により、$P/G'\to X$ は構造群 $G/G'$ の局所自明な主束である。底 $X$ はアフィンなので、帰納法の仮定により $P/G'$ は自明で、切断 $\tau\colon X\to P/G'$ をもつ。自明化 $P/G'\cong X\times(G/G')$ の右辺はアフィンな空間の積なのでアフィンである。
段 4(次に部分群の束を自明化する).上の補題(部分群による商の束)の 2 により、$q\colon P\to P/G'$ は構造群 $G'$ の局所自明な主束である。段 3 によりその底 $P/G'$ はアフィンなので、帰納法の仮定により $q$ は切断 $\sigma\colon P/G'\to P$ をもつ。
段 5(切断の合成).$s=\sigma\circ\tau\colon X\to P$ とおく。$P\to X$ は $q$ と $P/G'\to X$ の合成なので、$q\circ\sigma=\mathrm{id}$ と $\tau$ が切断であることから、$s$ は $P\to X$ の切断である。上の補題(推移関数と切断)の 2 により $P$ は自明である。

証明が使った底の性質は、段 1 の構造層の 1 次コホモロジーの消滅と、段 3 の「アフィンな空間とアフィン群の積はアフィン」の二つだけである。前者は次の小節で底の条件そのものに置き換える。後者は、そのとき同じ条件が積に遺伝することの確認に置き換わる。

原論文の帰納法の順序と部分群の連結性

原論文の証明(印字 5-01)は、$P$ が $P/G'$ の上の構造群 $G'$ の局所自明な主束であること、$P/G'$ が $X$ の上の構造群 $G/G'$ の局所自明な主束であることを述べたあと、帰納法の仮定により「上の二つの束はそれぞれ正則な切断をもつ」とまとめ、切断を合成して終える。帰納法の仮定は底がアフィンな束にしか使えないが、$P/G'$ がアフィンであることは、$P/G'\to X$ を先に自明化して $P/G'\cong X\times(G/G')$ を得るまで分からない。したがって原論文の段はそのままでは通らず、上の証明の段 3・段 4 の順に読む必要がある。主張そのものは正しい。また原論文は $G'$ を「$(e)$ とも $G$ とも異なる閉正規部分群」とだけ書くが、帰納法には $G'$ と $G/G'$ の次元がともに $n$ 未満であること、つまり $G'$ が連結で $0<\dim G'< n$ であることが要る。原論文は $G'$ と $G/G'$ が連結な単冪群であることを文献 [4](Gro56)の定理 3 の系で裏づけているので、連結な $G'$ をとる読みが意図とみられる。上の証明はそう選んだ。

印字の読み(Proposition 1 の証明)

原論文の Proposition 1 の証明(印字 5-01)で、構造層を導入する句は「d'où」で始まるが、関係詞の「où」の打ち損じと読む(「$\mathcal O_X$ は $X$ の局所環の層を表す」の意)。原論文は構造層を $O_X$ と打つ。本書は $\mathcal O_X$ と書く。

構造層の 1 次コホモロジーが消える底

原論文は証明の後の注意で、使ったのは $H^1(X,\mathcal O_X)=0$ だけだと言う。帰納法の中で底は $X$ から $X\times(G/G')$ に替わるので、この条件が積で保たれることを確かめる必要がある。

構造層の 1 次コホモロジーが消える底

$X$ を $H^1(X,\mathcal O_X)=0$ をみたす代数的空間、$G$ を連結な単冪アフィン群とする。$X$ の上の構造群 $G$ の局所自明な主束 $P$ はすべて自明である。

上の定理(単冪群の主束はアフィンな底の上で自明)の証明の帰納法の主張を、「次元 $n$ の連結単冪アフィン群を構造群とする局所自明な主束は、$H^1(Z,\mathcal O_Z)=0$ をみたすどの底 $Z$ の上でも自明」に替えて、同じ段をたどる。
段 1($n\le1$).$n=0$ は同じである。$n=1$ の段が底について使ったのは、推移関数の余輪体が余境界であることだけで、引用する事実 5 の後半によりこれは $H^1(Z,\mathcal O_Z)=0$ から出る。
段 2(積の上のコホモロジー).段 3 で底 $Z$ は $Z\times Y$($Y=G/G'$、アフィン)に替わる。$Z\times Y$ も $H^1=0$ をみたすことを示す。$Z$ は有限型なので有限個のアフィン開集合 $V_1,\dots,V_r$ で覆われ、$V_i\times Y$ は $Z\times Y$ のアフィン開被覆である。引用する事実 6 により、添字 $i_0<\dots< i_p$ について $V_{i_0\cdots i_p}=V_{i_0}\cap\dots\cap V_{i_p}$ はアフィンで
$$\Gamma(V_{i_0\cdots i_p}\times Y,\mathcal O)=\Gamma(V_{i_0\cdots i_p},\mathcal O)\otimes_k\Gamma(Y,\mathcal O)$$
であり、Čech 複体の微分は制限写像から作られるので、$Z\times Y$ の被覆 $(V_i\times Y)$ の Čech 複体は、$Z$ の被覆 $(V_i)$ の Čech 複体に $k$ ベクトル空間 $\Gamma(Y,\mathcal O)$ をテンソルしたものである。$k$ 上のテンソル積は完全系列を保つので、1 次のコホモロジーは $H^1(Z,\mathcal O_Z)\otimes_k\Gamma(Y,\mathcal O)=0$ になる。引用する事実 6 により、これが $H^1(Z\times Y,\mathcal O)$ である。
段 3(残りの段).上の定理の証明の段 2〜5 を、「アフィン」を「$H^1=0$」に替えてそのまま繰り返す。段 3 で $P/G'\cong Z\times(G/G')$ が $H^1=0$ をみたすことは、この証明の段 2 による。

アフィンな空間は $H^1(X,\mathcal O_X)=0$ をみたす(引用する事実 5)ので、上の定理(単冪群の主束はアフィンな底の上で自明)はこの定理の特別な場合である。アフィンでない底の例は下の例で見る。射影直線では条件が成り立ち、アフィン平面から原点を除いた空間では成り立たない。

群が連結でない場合

原論文の注意の後半は、$G$ の連結性を外してよいと言う。単位成分 $G^\circ$ による商は有限群で、有限群を構造群とする局所自明な主束の推移関数は局所定数である。底が既約なら局所定数な関数は交わりの上で定数になり、この部分は自明になる。

既約な底の上の非連結な単冪群(訂正形)

$X$ を既約なアフィン代数的空間、$G$ を単冪アフィン群(連結とは限らない)とする。$X$ の上の構造群 $G$ の局所自明な主束 $P$ はすべて自明である。

段 1(有限群の部分).引用する事実 4 により $G^\circ$ は指数有限の閉正規部分群で、$\Gamma=G/G^\circ$ は有限群である。$G\to\Gamma$ は $G$ を有限個の開かつ閉な剰余類に分けるので、局所切断をもつ(各剰余類から一点を選べばよい)。上の補題(部分群による商の束)により、$P/G^\circ\to X$ は構造群 $\Gamma$ の局所自明な主束である。空でない開集合からなる自明化の被覆 $(U_i)$ をとり、推移関数を $\gamma_{ij}\colon U_i\cap U_j\to\Gamma$ とする。
段 2(推移関数は定数).$\Gamma$ は有限なので $\gamma_{ij}$ の各点の逆像は開かつ閉である。$X$ は既約なので、空でない開集合はどれも既約、とくに連結で、空でない開集合の有限個の共通部分は空でない。ゆえに $U_i\cap U_j\ne\emptyset$ で、$\gamma_{ij}$ は定数である。添字 $1$ を一つ固定し、$\eta_i=\gamma_{i1}$(定数)とおく。$U_i\cap U_j\cap U_1\ne\emptyset$ の上で $\gamma_{ij}=\gamma_{i1}\gamma_{1j}=\eta_i\eta_j^{-1}$ で、両辺は定数なので $U_i\cap U_j$ 全体で成り立つ。上の補題(推移関数と切断)の 3 により $P/G^\circ$ は自明で、切断 $\tau\colon X\to P/G^\circ$ をもつ。
段 3(単位成分の束).$Q=q^{-1}(\tau(X))\subset P$ とおく($q\colon P\to P/G^\circ$)。$Q$ は $P$ の閉部分集合で $G^\circ$ の右作用で安定であり、$Q\to X$ は構造群 $G^\circ$ の主束である。$P|_{U_i}\cong U_i\times G$ の上では $P/G^\circ|_{U_i}\cong U_i\times\Gamma$ で、$U_i$ は連結なので $\tau|_{U_i}$ は一つの剰余類 $x_iG^\circ$ に値をとる。ゆえに $Q|_{U_i}\cong U_i\times x_iG^\circ$ で、$(u,x_ih)\mapsto(u,h)$ により $U_i\times G^\circ$ と $G^\circ$ の右作用を保って同型になる。$Q$ は局所自明である。
段 4(結論).$G^\circ$ は連結な単冪アフィン群なので、上の定理(単冪群の主束はアフィンな底の上で自明)により $Q$ は切断をもつ。それは $P$ の切断でもあるので、上の補題(推移関数と切断)の 2 により $P$ は自明である。

既約性を使ったのは、段 2 と段 3 の「空でない開集合の有限個の共通部分が空でなく、しかも連結であること」だけである。可約な底では交わり $U_i\cap U_j$ が開かつ閉な部分に分かれ得て、推移関数が部分ごとに違う定数をとれる。それが下の反例で起こる。なお標数 0 では単冪群は連結なので、この定理は主結果 1 と同じことを言う。実際、標数 0 で単冪な元 $x\ne1$ を含む最小の閉部分群は加法群に同型で連結である(第 7 巻『アフィン代数群と可換アフィン代数群』の頁『4-1 乗法的 Jordan 分解と単冪性』の主結果「標数 0 の加法群の有理表現」)から、単冪群のどの元も単位成分に入る。

原論文の付言と空間の読み

原論文は Proposition 1 の後の注意(印字 5-01)で、証明が使ったのは $H^1(X,\mathcal O_X)=0$ だけであることに続け、$G$ を連結と仮定しなくても結果は「同じく容易に」示せる、と一文で付け加える。証明は書かれていない。本書の読みでは代数的空間は既約とは限らないので、この一文は印字のままでは偽である(下の反例「反例:可約な底では非連結な単冪群の主束は自明とは限らない」)。本書は底を既約に限った形を主結果にした(上の定理(既約な底の上の非連結な単冪群(訂正形)))。空間が既約とは限らないと読む根拠は原論文の中にある。Proposition 3 の系(印字 5-04)は底について「$X$ は連結」を別に仮定しており、空間が連結とさえ限らない用法である。また第 6 節の冒頭(印字 5-27)は、複素数体の上で「すべての代数的空間」が複素解析空間でもあることを Serre の GAGA(原論文の文献 [10]、Ser56)を引いて述べる。GAGA とそれが引き継ぐ FAC の代数多様体は既約を仮定しないとされるが、本書はこれを確かめていない。代数的空間が既約を含意すると読むなら、上の訂正形がそのまま原論文の主張になる。どちらの読みでも、底が既約なら正しいという結論は変わらない。

例と反例

まず加法群の場合に、主束と構造層の 1 次コホモロジーの対応を二つの底で具体的に見る。続く二つの反例は、主結果の仮定のうち、底のアフィン性と、非連結な群での底の既約性を外したものである。

加法群の主束と構造層の 1 次コホモロジー

$G=\mathbf G_a$ とし、開被覆 $\mathcal U=(U_i)$ を固定する。上の補題(推移関数と切断)の 1・3・4 により、$\mathcal U$ の上で自明化される局所自明な $\mathbf G_a$ 主束の同型類は、加法的な 1 次の Čech 余輪体 $(g_{ij})$ を余境界 $(h_i-h_j)$ で割った群 $\check H^1(\mathcal U,\mathcal O_X)$ の元と一対一に対応する(自明化の取り替えは $g_{ij}$ に $h_i-h_j$ を足すことに当たる)。これが主結果 2 の条件の意味である。二つの底で計算する。
(a) 射影直線.$X=\mathbf P^1$ を $U_0=\{t\ne\infty\}$(座標環 $k[t]$)と $U_1=\{t\ne0\}$(座標環 $k[t^{-1}]$)で覆う。$U_0\cap U_1$ の座標環は $k[t,t^{-1}]$ で、そのどの元も $t$ の多項式と $t^{-1}$ の多項式の差に書ける(単項式 $t^m$ を $m\ge0$ と $m<0$ に分ければよい)。ゆえに $\check H^1(\mathcal U,\mathcal O)=0$ で、引用する事実 6 により $H^1(\mathbf P^1,\mathcal O)=0$ である。上の定理(構造層の 1 次コホモロジーが消える底)により、$\mathbf P^1$ の上の連結単冪群を構造群とする局所自明な主束はすべて自明である。$\mathbf P^1$ はアフィンでない(正則関数は $k[t]\cap k[t^{-1}]=k$ の定数だけである)ので、これは主結果 1 だけからは出ない。
(b) 原点を除いた平面.$X=k^2-\{0\}$ を $U_x=\{x\ne0\}$(座標環 $k[x,y,x^{-1}]$)と $U_y=\{y\ne0\}$(座標環 $k[x,y,y^{-1}]$)で覆う。交わりの座標環は $k[x,y,x^{-1},y^{-1}]$ である。単項式 $x^ay^b$ を見ると、$k[x,y,x^{-1}]$ は $b\ge0$ のもの、$k[x,y,y^{-1}]$ は $a\ge0$ のもので張られるので、$x^{-1}y^{-1}$ は二つの差に書けない。ゆえに余輪体 $g_{xy}=x^{-1}y^{-1}$ で $U_x\times\mathbf G_a$ と $U_y\times\mathbf G_a$ を貼り合わせた $\mathbf G_a$ 主束は、上の補題の 3 により自明でない。同時に $\check H^1(\mathcal U,\mathcal O)\ne0$ で、引用する事実 6 により $H^1(X,\mathcal O_X)\ne0$、引用する事実 5 により $X$ はアフィンでない。

(b) の束は、次の反例で特殊線形群として現れる。

反例:底のアフィン性を外すと主束は自明とは限らない

主結果 1 から底のアフィン性(主結果 2 からは $H^1(X,\mathcal O_X)=0$)を外す。$X=k^2-\{0\}$、$G=\mathbf G_a$ を上三角の単冪行列の群 $\left\{\left(\begin{smallmatrix}1&t\\0&1\end{smallmatrix}\right)\right\}$ と同一視し、$\pi\colon\mathrm{SL}(2)\to X$ を第 1 列 $M=\left(\begin{smallmatrix}a&b\\c&d\end{smallmatrix}\right)\mapsto(a,c)$ とする。$G$ は右からの掛け算 $M\left(\begin{smallmatrix}1&t\\0&1\end{smallmatrix}\right)=\left(\begin{smallmatrix}a&at+b\\c&ct+d\end{smallmatrix}\right)$ で第 1 列を保って作用する。$(a,c)\ne0$ を固定すると、ファイバーは直線 $\{(b,d):ad-bc=1\}$ で、$(b,d)\mapsto(b+ta,d+tc)$ はその上に単純推移的に作用する。$U_a=\{a\ne0\}$ の上では $\varphi_a(M)=(\pi(M),b/a)$、$U_c=\{c\ne0\}$ の上では $\varphi_c(M)=(\pi(M),d/c)$ が自明化で、逆写像はそれぞれ $(u,t)\mapsto\left(\begin{smallmatrix}a&0\\c&a^{-1}\end{smallmatrix}\right)\left(\begin{smallmatrix}1&t\\0&1\end{smallmatrix}\right)$、$(u,t)\mapsto\left(\begin{smallmatrix}a&-c^{-1}\\c&0\end{smallmatrix}\right)\left(\begin{smallmatrix}1&t\\0&1\end{smallmatrix}\right)$ である($u=(a,c)$)。後者の行列は $\left(\begin{smallmatrix}a&at-c^{-1}\\c&ct\end{smallmatrix}\right)$ なので $\varphi_a\circ\varphi_c^{-1}(u,t)=(u,t-(ac)^{-1})$、推移関数は $g_{ac}=-(ac)^{-1}$ である。これは上の例の (b) の余輪体の $-1$ 倍で、同じ単項式の議論により余境界でない。ゆえに $\mathrm{SL}(2)\to k^2-\{0\}$ は連結単冪群 $\mathbf G_a$ を構造群とする局所自明な主束で、自明でない。底 $k^2-\{0\}$ はアフィンでなく、$H^1\ne0$ なので、主結果 1・2 の仮定はどちらも破れている。

最後の反例は、本頁の主結果 3 がなぜ底の既約性を要するかを示す。原論文の付言は印字のままではこれで破れる。

反例:可約な底では非連結な単冪群の主束は自明とは限らない

原論文の注意の後半から、底の既約性の読みを外す(本書の読みの代数的空間は可約でもよい)。$k$ の標数を $p>0$ とし、$G=\left\{\left(\begin{smallmatrix}1&a\\0&1\end{smallmatrix}\right):a\in\mathbf F_p\right\}\cong\mathbf Z/p$ とする。$G$ は単冪アフィン群で、$p$ 個の点からなり連結でない(第 7 巻『アフィン代数群と可換アフィン代数群』の頁『5-1 可換群の直積分解と標数 0 の単冪群』の主結果「正標数の非連結な可換単冪群」)。$\mathbf A^2$ の中に
$$C_1\colon y=0,\qquad C_2\colon y=x^2-x,\qquad X=C_1\cup C_2$$
をとる。$C_1\cap C_2$ は $x^2-x=0$、すなわち $a_0=(0,0)$ と $a_1=(1,0)$ の 2 点で、どの標数でも相異なる。$X=\{y(y-x^2+x)=0\}$ は $\mathbf A^2$ の閉部分集合なのでアフィンで、二つの既約成分 $C_1$、$C_2$(どちらもアフィン直線に同型)が交わるので連結だが、可約である。
$U_1=X-\{a_1\}$、$U_2=X-\{a_0\}$ とおく。$U_1\cap U_2=X-\{a_0,a_1\}$ は、交わらない二つの部分 $A=C_1-\{a_0,a_1\}$ と $B=C_2-\{a_0,a_1\}$ の和である。$A=(U_1\cap U_2)\cap C_1$ は閉で、$A=(U_1\cap U_2)-C_2$ は開なので、$A$ と $B$ はどちらも $U_1\cap U_2$ の開かつ閉な部分である。$g_{12}\colon U_1\cap U_2\to G$ を $A$ の上で $0$、$B$ の上で $1$(加法的に書く)と定めると、これは射で、二つの開集合の被覆なので余輪体の条件は自明にみたされる。上の補題(推移関数と切断)の 4 により、$U_1\times G$ と $U_2\times G$ を $g_{12}$ で貼り合わせた局所自明な主束 $P$ が得られる。
$P$ は自明でない。自明なら、上の補題の 3 により射 $h_j\colon U_j\to G$ で $U_1\cap U_2$ の上 $g_{12}=h_1-h_2$ となるものがある。$U_1=(C_1-\{a_1\})\cup(C_2-\{a_1\})$ は、既約な二つの部分が点 $a_0$ で交わるので連結で、$G$ は有限なので $h_1$ は定数である。同様に $U_2$ は $a_1$ で交わる二つの既約な部分からなり、$h_2$ も定数である。すると $g_{12}=h_1-h_2$ は定数になるが、$g_{12}$ は $A$ の上で $0$、$B$ の上で $1$ をとる。矛盾である。
破れた条件は底の既約性で、上の定理(既約な底の上の非連結な単冪群(訂正形))の証明の段 2 が、交わり $U_1\cap U_2$ の連結性を使えなくなる。群を単位成分 $G^\circ=\{e\}$ に替えれば主束は自明(切断は恒等)なので、壊れるのは有限群 $G/G^\circ$ の部分だけである。標数 0 では単冪群は連結なので、この型の反例は立たない。

その後の発展

以下は後代の結果の紹介である(本書が文献を開いて確かめていないものはそう書く)。

  • 群スキームの torsor(Demazure–Grothendieck SGA3、1962〜64 年のセミナー、1970 年刊):主束は今日では群スキームの torsor と呼ばれ、Zariski 位相だけでなくエタール位相や fppf 位相で局所自明なものも扱われる。加法群の torsor は、どの位相で考えても構造層の 1 次コホモロジーで分類されるとされ、主結果 1 の $n=1$ の段はこの形で一般化される。本書は該当箇所を確かめていない。
  • 分裂する単冪群と完全でない体(Milne Mil17、2017 年):体の上の単冪群で、加法群による正規列をもつもの(分裂する単冪群)は、アフィンな底の上の torsor がすべて自明になるとされる。代数的閉体でない体、とくに完全でない体の上では分裂しない単冪群があり、一点の上でさえ自明でない torsor をもち得る。本書は確かめていない。
  • 可解群の等質空間(本書『1-2 可解群の等質空間』):本頁の主結果 1 は、次の頁で等質空間 $N/N'$ の間の束を自明にするのに使われ、連結可解群の等質空間がアフィン空間とトーラスの積になることの証明の要になる。

原論文との対応表

本頁が対応する原論文は Torsion homologique et sections rationnelles Gro58c の第 1 節の前半である。

本頁原論文印字頁
定理(単冪群の主束はアフィンな底の上で自明)、注意(原論文の帰納法の順序と部分群の連結性)Proposition 1 とその証明5-01
注意(印字の読み(Proposition 1 の証明))Proposition 1 の証明の「d'où」5-01
定理(構造層の 1 次コホモロジーが消える底)、例(加法群の主束と構造層の 1 次コホモロジー)Proposition 1 の後の注意(前半)5-01
定理(既約な底の上の非連結な単冪群(訂正形))、注意(原論文の付言と空間の読み)、反例(可約な底では非連結な単冪群の主束は自明とは限らない)同じ注意(後半)5-01
注意(原論文の付言と空間の読み)の読みの根拠Proposition 3 の系、第 6 節の冒頭5-04、5-27
補題(推移関数と切断)、補題(部分群による商の束)Proposition 1 の証明で使われる主束の扱い(原論文は証明を書かない)5-01

参考文献

[1]
Alexander Grothendieck, Torsion homologique et sections rationnelles(exposé n° 5), Séminaire C. Chevalley, Anneaux de Chow et applications 2e année, tome 3, 1958, 1–29
[3]
Victor G. Kac, Torsion in cohomology of compact Lie groups and Chow rings of reductive algebraic groups, Inventiones Mathematicae, 1985, 69–80
[4]
Michel Demazure, Désingularisation des variétés de Schubert généralisées, Annales Scientifiques de l'École Normale Supérieure 4e série, 1974, 53–88
[5]
Jean-Pierre Serre, Géométrie algébrique et géométrie analytique, Annales de l'Institut Fourier, 1956, 1–42
[6]
Jean-Pierre Serre, Cohomologie galoisienne : progrès et problèmes(exposé n° 783), Séminaire Bourbaki, vol. 1993/94, Astérisque, 1995, 229–257
[7]
Maxwell Rosenlicht, Some basic theorems on algebraic groups, American Journal of Mathematics, 1956, 401–443
[9]
Michel Lazard, Groupes semi-simples : structure de B et de G/B(exposé n° 13), Séminaire C. Chevalley, Classification des groupes de Lie algébriques tome 1 (1956–1958), 1956, 1–13
[10]
Jean-Pierre Jouanolou, Théorèmes de Bertini et applications, 42, Birkhäuser, Progress in Mathematics, 1983
[11]
Alexander Grothendieck, Généralités sur les groupes algébriques affines. Groupes algébriques affines commutatifs(exposé n° 4), Séminaire C. Chevalley, Classification des groupes de Lie algébriques tome 1 (1956–1958), 1956, 1–14
[12]
Alexander Grothendieck, Sur quelques propriétés fondamentales en théorie des intersections(exposé n° 4), Séminaire C. Chevalley, Anneaux de Chow et applications 2e année, tome 3, 1958, 1–36
[13]
Burt Totaro, The Chow ring of a classifying space, American Mathematical Society, Proceedings of Symposia in Pure Mathematics, 1999, 249–281
[14]
Armand Borel, André Haefliger, La classe d'homologie fondamentale d'un espace analytique, Bulletin de la Société Mathématique de France, 1961, 461–513
[15]
Armand Borel, Groupes linéaires algébriques, Annals of Mathematics, 1956, 20–82
[17]
Maxwell Rosenlicht, Some rationality questions on algebraic groups, Annali di Matematica Pura ed Applicata (4) 43, 1957, 25–50
[18]
I. N. Bernstein, I. M. Gelfand, S. I. Gelfand, Schubert cells and cohomology of the spaces G/P, Russian Mathematical Surveys, 1973, 1–26
[19]
Roman Fedorov, Ivan Panin, A proof of the Grothendieck–Serre conjecture on principal bundles over regular local rings containing infinite fields, Publications Mathématiques de l'IHÉS, 2015, 169–193
[21]
David Mumford, Algebraic Geometry I: Complex Projective Varieties, Springer(Grundlehren 221、1976。Classics in Mathematics 版 1995), 1976
[23]
Burt Totaro, The torsion index of E8 and other groups, Duke Mathematical Journal, 2005, 219–248
[25]
Oscar Zariski, The concept of a simple point of an abstract algebraic variety, Transactions of the American Mathematical Society, 1947, 1–52
[26]
Claude Chevalley, Sur les décompositions cellulaires des espaces G/B, Algebraic Groups and their Generalizations: Classical Methods (University Park, PA, 1991), Proceedings of Symposia in Pure Mathematics, American Mathematical Society 56, Part 1, 1994, 1–23
[27]
Dan Edidin, William Graham, Equivariant intersection theory, Inventiones Mathematicae, 1998, 595–634
[29]
Alexander Grothendieck, Sur les faisceaux algébriques et les faisceaux analytiques cohérents(exposé n° 2), Séminaire Henri Cartan 9e année (1956/57), 1956, 1–16
[30]
Steven Kleiman, The transversality of a general translate, Compositio Mathematica, 1974, 287–297
[31]
Claude Chevalley, Les systèmes linéaires sur G/B(exposé n° 15), Séminaire C. Chevalley, Classification des groupes de Lie algébriques tome 2 (1956–1958), 1956, 1–11
[32]
Michel Demazure, Alexander Grothendieck, Schémas en groupes (SGA 3), 151, 152, 153, Springer, Lecture Notes in Mathematics, 1970
[34]
Séminaire C. Chevalley(Claude Chevalley 他), Anneaux de Chow et applications, 2e année(1958), Secrétariat mathématique, Paris, 1958
[35]
Armand Borel, Sur la cohomologie des espaces fibrés principaux et des espaces homogènes de groupes de Lie compacts, Annals of Mathematics, 1953, 115–207
[36]
Séminaire C. Chevalley(Claude Chevalley 他), Classification des groupes de Lie algébriques, tome 1(années 1956–1958), Secrétariat mathématique, Paris, 1958
[37]
Alexander Grothendieck, Les théorèmes de structure fondamentaux pour les groupes algébriques affines, Séminaire C. Chevalley, Classification des groupes de Lie algébriques tome 1(1956–1958), exposé n° 6, 1958, 1–16
[39]
Armand Borel, John C. Moore, Homology theory for locally compact spaces, Michigan Mathematical Journal, 1960, 137–159
[40]
Burt Totaro, The torsion index of the spin groups, Duke Mathematical Journal, 2005, 249–290
[41]
Armand Borel, Sous-groupes commutatifs et torsion des groupes de Lie compacts connexes, Tôhoku Mathematical Journal, 1961, 216–240
[42]
Jean-Pierre Serre, Faisceaux algébriques cohérents, Annals of Mathematics, 1955, 197–278
[44]
Claude Chevalley, Les isogénies(exposé n° 18), Séminaire C. Chevalley, Classification des groupes de Lie algébriques tome 2 (1956–1958), 1956, 1–10
[45]
Jean-Pierre Serre, Espaces fibrés algébriques(exposé n° 1), Séminaire C. Chevalley, Anneaux de Chow et applications 2e année, tome 3, 1958, 1–37
[47]
Alexander Grothendieck, Sous-groupes de Cartan, éléments réguliers. Groupes algébriques affines de dimension 1(exposé n° 7), Séminaire C. Chevalley, Classification des groupes de Lie algébriques tome 1 (1956–1958), 1956, 1–9
[48]
Michel Demazure, Invariants symétriques entiers des groupes de Weyl et torsion, Inventiones Mathematicae, 1973, 287–301
[50]
Claude Chevalley, Existence d'isogénies, I(exposé n° 23), Séminaire C. Chevalley, Classification des groupes de Lie algébriques tome 2 (1956–1958), 1956, 1–12

Mathpediaは寄付と、参考文献の書籍リンク(Amazonアソシエイト)の紹介料で運営されています。 支援について / 寄付する

前ページへ
ホモロジー的捩れと有理切断(Grothendieck「Torsion homologique et sections rationnelles」を読む)の表紙
次ページへ