連結アフィン群の捩れ指数 $d$ が、主束のファイバーへの制限の余核、特性準同型の余核、等質ベクトル束の横断的な切断の零点の数、主束を自明にする不分岐な被覆(本書の読みで有限エタール)の次数の、どれによっても同じように捉えられることを示す(原論文の定理 2)。系として、捩れのない群が捩れ指数 $1$ の群であること、素数ごとの捩れの判定を得る。原論文が定理の後の注意 1° で述べる二つの主張のうち、一つの次数で済むための十分条件は本書では閉じられず、単純単連結群への帰着は条件付きで示す。
前提知識: 特性類, 旗多様体, 主束, 局所等自明なファイバー空間, エタール射, Chow環, 最大公約数
$k$ は代数的閉体で、標数は任意である。$G$ を連結アフィン群、$B$ をその Borel 部分群、$T\subset B$ を極大トーラスとし、$N=\dim G/B$ とおく。特性準同型 $c_G\colon S(\hat B)\to A(G/B)$ と特性部分環 $\operatorname{Im}c_G$ は本書『4-1 特性準同型と特性部分環』のとおりで、捩れ指数 $d$ は $\operatorname{Im}c_G\cap A^N(G/B)=d\,\mathbf Z[\mathrm{pt}]$ で定まる正の整数である(下の定義)。構造群 $G$ の主束 $P$ と $a\in P$ について、$j_a\colon G/B\to P/B$、$gB\mapsto(ag)B$ と書く。「$x$ で不分岐な次数 $m$ の被覆」は本書の読みで、有限な射で $x$ のある近傍の上でエタールであり、$x$ の上にちょうど $m$ 点をもつものである(本書『0-3 ファイバー空間と有限エタール被覆』の定義(点で不分岐な被覆(本書の読み))。連結とは限らない)。
本頁の主結果は次の五つである。
前の頁までに、捩れ指数は特性部分環の最高次の部分の指数として定義された(本書『4-3 捩れのない群と特性部分環の指数』)。この定義は旗多様体 $G/B$ の Chow 環の中の量で、主束とは直接の関係が見えない。原論文の定理 2 は、この整数が主束の問題の側で三通りに現れることを言う。一つ目は、主束の全空間 $P/B$ からファイバー $G/B$ への制限で、類が延びない障害の大きさ((i))。二つ目は、第 3 章の構成で主束の構造群を $B$ に簡約するのに使う等質ベクトル束の、横断的な切断の零点の数((iv))。三つ目は、主束を局所的に自明にする有限エタール被覆の次数((v))である。
証明は、ここまでの三つの章を一周する。第 2 章の Proposition 4 は、被覆の次数がファイバーへの制限の余核を消すことを示した((v)⇒(i))。第 4 章前半は、ファイバーへの制限の像が特性部分環であることを示した((i)⇒(ii))。第 3 章の Proposition 6 とその系は、零点の数を次数とする被覆の上で主束が自明になることを示した((iv)⇒(v))。残る (iii)⇒(iv) は、特性部分環の元を正因子の交わりとして横断的に実現する問題で、原論文もそこに最も紙数を割く。本書はこの段を本書『4-4 捩れ指数と横断的な切断』に分けて扱った。
原論文は定理の後に二つの系と二つの注意を置く。系 1・系 2 は捩れのない群と $\ell$ 捩れの判定で、注意 1° は (iv)(v) の整数の組を一つの整数 $d'$ にできるかという問いである。注意 2° は群自身の Chow 環を扱い、本書『4-6 群の Chow 環と捩れ素数』で読む。
捩れ指数と捩れ素数は本書『4-3 捩れのない群と特性部分環の指数』で定めた。本頁でも中心の量なので、定義を短く繰り返す。
$G$ を連結アフィン群、$B$ をその Borel 部分群、$N=\dim G/B$ とする。$A^N(G/B)$ は一点の類 $[\mathrm{pt}]$ で生成される無限巡回群で、次数 $\chi$ は同型 $A^N(G/B)\to\mathbf Z$ を与える。$\operatorname{Im}c_G\cap A^N(G/B)=d\,\mathbf Z[\mathrm{pt}]$ となる正の整数 $d$ を $G$ の捩れ指数(原論文の indice de torsion、Définition 3)という。素数 $\ell$ が $d$ を割るとき、$G$ は $\ell$ 捩れをもつといい、$\ell$ を $G$ の捩れ素数という。$G$ は、$c_G$ が全射のとき捩れなしであるという(原論文 Définition 2)。
$A^N(G/B)=\mathbf Z[\mathrm{pt}]$ は、Bruhat 分解の胞体に本書『0-4 Chow 環の枠組み』の命題「胞体分割による生成」を当てたもので、次元 $0$ の胞体がただ一つであることから出る(同じ頁の命題の後の段)。$d$ が $0$ でないことは、特性部分環の指数が有限であることから出る(本書『4-3 捩れのない群と特性部分環の指数』の主結果「特性部分環の指数の有限性」「最高次の部分と捩れ指数の存在」)。$d$ は Borel 部分群の取り方によらない(本書『4-1 特性準同型と特性部分環』の注意「Borel 部分群の取り方」)。$c_G$ は次数付き環準同型なので、特性部分環は次数付き部分環で、$\operatorname{Im}c_G\cap A^j(G/B)=c_G(S^j(\hat B))$ である(本書『4-1 特性準同型と特性部分環』の主結果「特性準同型の環準同型への延長」)。この等式は下で何度も使う。
主結果 4・5 では正因子の類を使う。$G/B$ の上の有効因子(素因子の非負係数の和)の類を正因子の類と呼ぶ(原論文の classes de diviseurs positifs)。正因子の類の正の整数倍、同型による引き戻しは、また正因子の類である。
次の事実は証明せずに引用する。出典は、局所等自明性については同じセミナーの第 1 講演 Serre Ser58fib、非特異点とエタールな射については Zariski Zar47、群の構造については Borel Bor56、Chevalley Che58ex、Lazard Laz58 で、Chow 環の性質については前の講演 Gro58b である。要点は本書『0-2 線形代数群と旗多様体』『0-3 ファイバー空間と有限エタール被覆』『0-4 Chow 環の枠組み』にある。どの文献についても、該当箇所は本頁では確認していない。第 1 講演は本書では開いておらず、節番号は書かない。
五つの条件を (i)⇒(ii)⇒(iii)⇒(iv)⇒(v)⇒(i) の順に一周する。前の三つの章の結果がそれぞれ一つの矢印に当たる。
$G$ を連結アフィン群、$B$ をその Borel 部分群、$N=\dim G/B$、$d$ を $G$ の捩れ指数、$d'$ を正の整数とし、$N\ge1$($G$ は可解でない)とする。次の五つは同値である。
(i) 構造群 $G$ の局所等自明な主束 $\pi\colon P\to X$ で $P/B$ が非特異準射影($P/B\in V$)であるもの(本書が足した仮定)と、$a\in P$ のすべてについて、$j_a^*\colon A(P/B)\to A(G/B)$ の余核は $d'$ で消える。すなわち $d'A(G/B)\subset\operatorname{Im}j_a^*$ である。
(ii) $c_G$ の余核は $d'$ で消える。すなわち $d'A(G/B)\subset\operatorname{Im}c_G$ である。
(iii) $d$ は $d'$ を割る。
(iv) 最大公約数が $d'$ の正の整数 $m_1,\dots,m_s$ と、$B$ の有理表現 $u_1,\dots,u_s$(どれも次数 $N$)があって、各 $i$ について等質ベクトル束 $V(u_i)=G\times^BV_i$ は、零切断に横断的で零点がちょうど $m_i$ 個の正則切断をもつ。
(v) 最大公約数が $d'$ の正の整数 $m_1,\dots,m_s$ があって、次が成り立つ。構造群 $G$ の任意の局所等自明な主束 $P\to X$($X$ は任意の代数的空間)と $x\in X$ に対し、$x$ の開近傍 $U$ と、$x$ で不分岐な次数 $m_i$ の被覆 $g_i\colon X_i\to U$($1\le i\le s$)で、引き戻し $g_i^{-1}(P)$ が $X_i$ の上で自明なものがある。
段 1((i) ⇒ (ii)).$G$ はアフィンなので線形群で(本書『0-2 線形代数群と旗多様体』の定義「代数群・アフィン群・有理指標」)、ある $G'=\mathrm{GL}(n)$ の閉連結部分群として実現できる。引用する事実 1 により $P=G'\to X=G'/G$ は構造群 $G$ の局所等自明な主束で、$P/B=G'/B$ は非特異準射影である(本書『0-2 線形代数群と旗多様体』の定理「等質空間の基本」の (1)(3))。$a=e$ にとると $j_e$ は本書『4-2 特性部分環と引き戻しの像』の定義(部分群の図式の記号)の $i$ である(同じ頁の主結果「主束の制限による特性部分環の特徴づけ」の証明の段 4)。(i) により $d'A(G/B)\subset\operatorname{Im}i^*$ で、同じ頁の主結果「捩れのない群への埋め込みでの一致」により $\operatorname{Im}i^*=\operatorname{Im}c_G$ である。
段 2((ii) ⇒ (iii)).$d'[\mathrm{pt}]\in d'A(G/B)\subset\operatorname{Im}c_G$ で、$d'[\mathrm{pt}]\in A^N(G/B)$ なので、$d'[\mathrm{pt}]\in\operatorname{Im}c_G\cap A^N(G/B)=d\,\mathbf Z[\mathrm{pt}]$ である。$A^N(G/B)$ は $[\mathrm{pt}]$ で生成される無限巡回群なので、$d$ は $d'$ を割る。
段 3((iii) ⇒ (iv)).(iii) により $d'$ は $d$ の倍数である。仮定 $N\ge1$ の下で、本書『4-4 捩れ指数と横断的な切断』の主結果「捩れ指数の倍数を零点の数の最大公約数として実現(訂正形)」を $d'$ に当てると、最大公約数がちょうど $d'$ の正の整数 $m_1,\dots,m_s$ と $B$ の $N$ 次元の有理表現 $u_1,\dots,u_s$ で、$V(u_i)$ が零切断に横断的で零点をちょうど $m_i$ 個もつ正則な切断をもつものが得られる。これが (iv) である。この段だけが $N\ge1$ を使う。
段 4((iv) ⇒ (v)).$B$ は連結可解アフィン群なので特別である(本書『3-3 特別群と主束の自明化』の主結果「可解群と一般線形群は特別」)。$G/B$ は完備で、$u_i$ は次数 $N=\dim G/B$、$V(u_i)$ は零点がちょうど $m_i\ge1$ 個の横断的な切断をもつ。したがって同じ頁の主結果「特別な部分群への簡約による自明化」を $F=B$、$u=u_i$ に当てると、非特異な底の上の構造群 $G$ の局所等自明な主束 $P$ と $x\in X$ に対し、$x$ の開近傍 $U_i$ と、$x$ で不分岐な次数 $m_i$ の被覆 $g_i\colon X_i\to U_i$ で $g_i^{-1}(P)$ が自明なものがある。$G$ はアフィンなので、同じ頁の主結果「アフィン群では底の非特異性は要らない」により、底 $X$ の非特異性は要らない。$U=U_1\cap\dots\cap U_s$ とし、$g_i$ を $g_i^{-1}(U)\to U$ に替える。これは底変換なので有限で、$x$ の近傍の上でエタールで、$x$ の上の点はちょうど $m_i$ 個のままで(引用する事実 2)、引き戻しは自明のままである。$m_i$ は $P$ にも $x$ にもよらないので (v) が成り立つ。
段 5((v) ⇒ (i):底の非特異性).$P$、$a$ を (i) のとおりとし、$x=\pi(a)$、$E=P/B$、$f\colon E\to X$ を射影とする。(v) の $U$ と $g_i\colon X_i\to U$ をとる。$g_i^{-1}(P)$ は自明なので、$X_i$ の上に切断があり(本書『0-3 ファイバー空間と有限エタール被覆』の命題「主束の切断と自明性」の (1))、それを $P$ へ写すと $\pi\circ q_i=g_i$ となる射 $q_i\colon X_i\to P$ を得る。引用する事実 1 により $\Phi_i\colon X_i\times(G/B)\to X_i\times_XE$、$(w,gB)\mapsto(w,q_i(w)gB)$ は同型である。$g_1$ は $x$ のある開近傍 $U_1\subset U$ の上でエタールである。$x_1\in g_1^{-1}(x)$ をとる。第 2 射影 $X_1\times_XE\to E$ は $g_1$ の底変換なので、$x_1$ の上の点でエタールで(引用する事実 2)、$E$ は非特異だから、$X_1\times_XE$ はその点で非特異である。$\Phi_1$ で移すと $X_1\times(G/B)$ は $(x_1,eB)$ で非特異で、$G/B$ は非特異(引用する事実 4)なので、引用する事実 3 により $X_1$ は $x_1$ で非特異である。$g_1$ は $x_1$ でエタールなので、引用する事実 2 により $X$ は $x$ で非特異である。引用する事実 3 により $x$ の近傍は非特異な点からなり、そこに含まれる $x$ のアフィンな開近傍 $X_0\subset U_1$ をとれる。$X_0$ は非特異でアフィン(とくに準射影的)なので $X_0\in V$ である。
段 6((v) ⇒ (i):近傍への縮小).$E_0=f^{-1}(X_0)$ は $E$ の開部分なので $E_0\in V$ で、引用する事実 5 により $A(E)\to A(E_0)$ は全射である。$j_a$ の像は $x$ の上のファイバー $F_x$ に含まれ、$F_x\subset E_0$ なので、$j_a^*A(E)=j_a^*A(E_0)$ である。$X_{i,0}=g_i^{-1}(X_0)$ とおくと、$g_i|_{X_{i,0}}\colon X_{i,0}\to X_0$ は $x$ で不分岐な次数 $m_i$ の被覆で、$q_i$ の制限は $E_0$ を $X_{i,0}$ の上で自明にする。
段 7((v) ⇒ (i):余核の消滅).$E_0\to X_0$ は、主束 $P|_{X_0}$ と $\alpha(p,gB)=pgB$ により、本書『2-2 被覆の次数と余核の消滅』の定義(構造群をもつファイバー空間と局所等自明性(本書の読み))の意味で、構造群 $G$(連結線形群)、ファイバー $G/B$ のファイバー空間である。$X_0$ の各点で (v) を当てれば局所等自明で、$E_0$、$G/B$、$X_0\in V$ である。段 6 の被覆と $q_i$ について同じ頁の主結果「被覆の次数による余核の消滅」を当てると $m_iA(F_x)\subset i_x^*A(E_0)$($i_x\colon F_x\to E_0$ は包含)で、同じ頁の主結果「次数の最大公約数による余核の消滅」の証明(Bezout の等式)により $d'A(F_x)\subset i_x^*A(E_0)$ である。最後に $j_a$ をファイバーの包含と比べる。$\Phi_1$ を $x_1$ の上のファイバーに制限すると、同型 $\iota_1\colon G/B\to F_x$、$gB\mapsto q_1(x_1)gB$ を得る。$q_1(x_1)$ と $a$ はどちらも主束の $x$ の上の点なので $a=q_1(x_1)h_0$ となる $h_0\in G$ があり、$j_a(gB)=q_1(x_1)h_0gB=\iota_1(h_0gB)$ である。左移動 $gB\mapsto h_0gB$ は $G/B$ の自己同型なので、$j_a=i_x\circ\iota$、$\iota=\iota_1\circ(h_0\,\cdot)$ は同型で、$\operatorname{Im}j_a^*=\iota^*(\operatorname{Im}i_x^*)\supset\iota^*(d'A(F_x))=d'A(G/B)$ である。これで (i) が成り立つ。
これで捩れ指数 $d$ は、(ii) の意味で特性準同型の余核を消す最小の正の整数であり、(i) の意味ですべての主束のファイバーへの制限の余核を消す最小の正の整数であり、(iv)(v) の整数の組の最大公約数としてとれる最小のものでもあることが分かった($N\ge1$ のとき。$N=0$ の場合は次の注意)。五つの矢印のうち最も重いのは (iii)⇒(iv) で、特性部分環の元を正因子の交わりとして横断的に実現する段が、前の頁の Bertini の定理を必要とする。
$N=0$ のとき、すなわち $G$ が連結可解で $B=G$、$G/B$ が一点のとき、原論文の形の定理は偽である。本書『4-4 捩れ指数と横断的な切断』の反例「反例:旗多様体が一点なら倍数は零点の数で実現できない」のとおり、$B$ の $0$ 次元の表現は零表現だけで、その束のただ一つの切断の零点はちょうど $1$ 個なので、(iv) の $m_i$ はどれも $1$ で、(iv) は $d'=1$ のときにしか成り立たない。他の四つは、$N=0$ ではすべての $d'$ で成り立つ。実際 $A(G/B)=\mathbf Z$ で、$c_G(S^0(\hat B))=\mathbf Z\cdot1$ なので $c_G$ は全射で $d=1$ であり、(ii)(iii) が成り立つ。$j_a^*\colon A(P/B)\to A(\mathrm{pt})=\mathbf Z$ は $1$ を $1$ に写すので全射で、(i) が成り立つ。$G$ は連結可解なので特別で(本書『3-3 特別群と主束の自明化』の主結果「可解群と一般線形群は特別」)、$P$ は $x$ のある近傍 $U$ で自明なので、$U$ の $d'$ 個の非交和 $U\sqcup\dots\sqcup U\to U$($x$ で不分岐な次数 $d'$ の被覆。本書『0-3 ファイバー空間と有限エタール被覆』の命題「被覆の縮小と非交和」の (2))の上で引き戻しは自明で、組 $\{d'\}$ で (v) が成り立つ。したがって $N=0$ で $d'>1$ のとき、(iii)⇔(iv) と (iv)⇔(v) が破れる。
訂正の仕方には、定理に $N\ge1$ を足す形と、$N$ を制限せずに (iv) を $d'=d$ の場合に限る形の二つがある。本書は前者を採った。理由は三つある。(1) 本書『4-4 捩れ指数と横断的な切断』の主結果「捩れ指数の倍数を零点の数の最大公約数として実現(訂正形)」が $N\ge1$ の形で立っており、段 3 がそれをそのまま使える。(2) $N\ge1$ の下では、原論文のとおりすべての $d'$ で五つの条件の同値が保たれる。(iv) を $d'=d$ に限ると、倍数 $d'$ について (iv) と他の条件の関係が失われ、(v) の倍数の場合を別に示す段も要る。(3) $N=0$ の場合は、上のとおり、(i)(ii)(iii) は定義だけで、(v) は連結可解群が特別であること(本書『3-3 特別群と主束の自明化』の主結果「可解群と一般線形群は特別」)と被覆の非交和で成り立つので、定理の外で一文で済む。定理の (iii)⇒(ii) を使う箇所(下の系「捩れのない群と捩れ指数 1」、主結果「単純単連結群への帰着」の段 3、注意「系 2 の写像の列の読み」、本書『4-6 群の Chow 環と捩れ素数』)では、$N=0$ の場合を「$c_G$ は全射」で補う。
原論文の証明(印字 5-18〜5-20)は、(i)⇒(ii) を Théorème 1 の系 2 の後半の議論の繰り返しとし、(ii)⇒(iii) を自明とし、(iv)⇒(v) を Proposition 6 の系と §3 の末の注意から、(v)⇒(i) を Proposition 4 の系から出す。本書の段 1・2・4・7 はこの道筋のとおりである。本書が補ったのは次の二点である。(a) (v)⇒(i) で Proposition 4(本書『2-2 被覆の次数と余核の消滅』の主結果「被覆の次数による余核の消滅」)を当てるには底が非特異準射影でなければならないが、(i) は $P/B$ にしか条件を付けない。段 5・6 は、$P/B$ の非特異性と被覆の上の自明化から底の非特異性を導き、底をアフィンな近傍に縮めてこの仮定を満たした。(b) 原論文は (iii)⇒(iv) を「$d'=d$ のとき (iv) を確かめる」ことに帰着させる。しかし (iv) は最大公約数がちょうど $d'$ であることを求めるので、$d'=d$ の場合から $d$ の倍数の場合は形式的には出ない。$N\ge1$ のときは、この段を本書『4-4 捩れ指数と横断的な切断』の主結果「捩れ指数の倍数を零点の数の最大公約数として実現(訂正形)」で、一つの因子だけを $d'/d$ 倍して埋めた。(a) の補いは主張の札には影響しない。(b) は段の不備にとどまらない。$N=0$、$d'>1$ では原論文の帰着が導く主張そのものが偽で(上の注意「旗多様体が一点の場合と訂正の選び方」)、本書は定理に $N\ge1$ を足した訂正形で立てた。(v) の底が任意でよいことは、原論文が括弧書きで §3 の末の注意に委ねる所で、本書『3-3 特別群と主束の自明化』の主結果「アフィン群では底の非特異性は要らない」に当たる。
原論文の (i)(印字 5-18)は、主束 $P$ が「準射影的かつ非特異」であることを求める。しかし (i) で使う Chow 環は $A(P/B)$ で、これが定義されるのは $P/B$ が非特異準射影のときである。本書は $P/B\in V$ を足した仮定として置いた(本書『0-5 記号と約束』の「本書が足した仮定」、本書『4-2 特性部分環と引き戻しの像』の注意「原論文の系 2 の空間の条件」と同じ仮定)。$P$ の条件から $P/B$ が非特異準射影になるかは、本書は確かめていない(非特異性は $P\to P/B$ が滑らかな全射であることから出ると考えられるが、準射影性は確かめていない)。上の証明で (i) を使う段 1 の $P=\mathrm{GL}(n)$ は $P$ も $P/B$ も非特異準射影で、(i) を示す段 5〜7 は $P/B\in V$ しか使わない。したがって (i) を「$P$ と $P/B$ がともに非特異準射影な主束」の全体で読んでも、定理の同値は変わらない。
定理を $d'=1$ に当てると、捩れのない群の判定が得られる。
連結アフィン群 $G$ が捩れなしであることと、捩れ指数 $d$ が $1$ であることは同値である。
$G$ が捩れなしなら $[\mathrm{pt}]\in\operatorname{Im}c_G\cap A^N(G/B)=d\,\mathbf Z[\mathrm{pt}]$ なので $d=1$ である。逆に $d=1$ とする。$N\ge1$ なら、上の定理(捩れ指数の五つの特徴づけ(訂正形))の (iii) が $d'=1$ で成り立つので (ii) も成り立ち、$A(G/B)=1\cdot A(G/B)\subset\operatorname{Im}c_G$、すなわち $c_G$ は全射である。$N=0$ なら $G/B$ は一点で $A(G/B)=\mathbf Z=c_G(S^0(\hat B))$ なので、$c_G$ は全射である(上の注意(旗多様体が一点の場合と訂正の選び方))。
前半は定義だけで出るが、後半は($N\ge1$ のとき)定理の (iii)⇒(ii) を通るので、(iv)(v)(i) を一周する。捩れ指数が $1$ であるという最高次の部分だけの情報から、Chow 環の全体が指標の直線束の類で生成されることを得るには、主束と被覆の議論が要る。次の系は、素数ごとに同じことを問う。こちらは最高次の部分だけで閉じる。
$\ell$ を素数とし、$\mathrm{pr}_N\colon A(G/B)\to A^N(G/B)$ を次数 $N$ の成分への射影とする。$G$ が $\ell$ 捩れをもたないことと、合成
$$S(\hat B)\xrightarrow{\ c_G\ }A(G/B)\xrightarrow{\ \mathrm{pr}_N\ }A^N(G/B)\xrightarrow{\ \chi\ }\mathbf Z\longrightarrow\mathbf Z/\ell$$
が全射であることは同値である。
段 1(最高次の部分).上の定義(捩れ指数と捩れ素数)の後に述べたとおり、Bruhat 分解の胞体に本書『0-4 Chow 環の枠組み』の命題「胞体分割による生成」を当てると、$A^N(G/B)$ は $[\mathrm{pt}]$ で生成され、$\chi([\mathrm{pt}])=1$ なので、$\chi\colon A^N(G/B)\to\mathbf Z$ は同型である。
段 2(合成の像).$c_G$ は次数付き環準同型なので、$\mathrm{pr}_N(c_G(S(\hat B)))=c_G(S^N(\hat B))=\operatorname{Im}c_G\cap A^N(G/B)=d\,\mathbf Z[\mathrm{pt}]$ である。$\chi$ で写すと $d\,\mathbf Z$ で、$\mathbf Z/\ell$ への像は $(d\,\mathbf Z+\ell\mathbf Z)/\ell\mathbf Z$ である。
段 3(判定).$\ell$ は素数なので、$d\,\mathbf Z+\ell\mathbf Z=\mathbf Z$ であることと $\ell$ が $d$ を割らないことは同値である。後者が、$G$ が $\ell$ 捩れをもたないことの定義である。
証明は $d$ が正であることを使っていない。$\operatorname{Im}c_G\cap A^N(G/B)$ がある $d\ge0$ について $d\,\mathbf Z[\mathrm{pt}]$ と書けることだけを使い、これは段 1 から出る。そのため、この系は同じセミナーの第 1 講演の事実にも Bertini の定理にも依らない。
原論文の系 2(印字 5-21)は、写像の列を $S(\hat B)\to A(G/B)\to A(G/B)\to\mathbf Z/\ell$ と、$A(G/B)$ を二度並べて打つ。本書は二つ目を最高次の成分 $A^N(G/B)$ への射影と読み、上の定理の形にした。二つ目を $A(G/B)$ の $\ell$ による剰余 $A(G/B)/\ell A(G/B)$ と読むこともでき、その読みでも同値は正しい。実際、$\ell$ が $d$ を割らなければ、上の定理(捩れ指数の五つの特徴づけ(訂正形))の (iii)⇒(ii) により $d\,A(G/B)\subset\operatorname{Im}c_G$ で($N=0$ なら $c_G$ は全射なので、この包含は自明に成り立つ。上の注意(旗多様体が一点の場合と訂正の選び方))、$d$ は $\ell$ を法として可逆なので $\operatorname{Im}c_G+\ell A(G/B)=A(G/B)$ である。逆に $\operatorname{Im}c_G+\ell A(G/B)=A(G/B)$ なら、次数 $N$ の成分を比べて $d\,\mathbf Z[\mathrm{pt}]+\ell\mathbf Z[\mathrm{pt}]=\mathbf Z[\mathrm{pt}]$ で、$\ell$ は $d$ を割らない。ただしこの読みでは、前半に定理の (iii)⇒(ii) を使うので条件付きの議論になる。本書は、$\mathbf Z/\ell$ への写像という印字の終わりの形に合う前者で主結果を立てた。
(a) 原論文の系 1(印字 5-21)は、捩れのない群を「(définition 1)」と引く。捩れなしの定義は Définition 2(印字 5-15)なので、Définition 2 と読む。(b) 同じ頁の注意 1° の末尾近くは「dans dans」と語を重ねて打つ。一つの「dans」と読む。どちらも内容に影響しない。
原論文は定理の後の注意 1° で、(iv)(v) の整数の組を一つの整数にできるかを問う。
原論文は、定理の (iv)(v) の整数の組 $m_1,\dots,m_s$ を、$d'$ ただ一つに替えられないかと問う(印字 5-21)。問いであって主張ではないので、本書は札を付けない。$d'=d=1$ の場合、この問いは「捩れのない群の局所等自明な主束は、被覆なしで局所自明になるか」、すなわち捩れのない連結アフィン群は特別かという問いになる。原論文は、この場合を §5 で別の方法で肯定的に解く(本書『6-3 特別群の特徴づけ』の主結果「特別群の特徴づけ」)。そこでは次数の積が $1$ の正因子を平行移動で固有に交わらせると、交点がただ一つで重複度が自動的に $1$ になる。一般の $d$ については、原論文は群ごとの計算で決まるはずの純粋な群論の問題だとし、計算の煩雑さを理由に立ち入らない。
問いに答える道として、原論文は一つの十分条件を「定理の証明によれば」と述べる。本書はこの十分条件を主結果として立てたが、証明の段が埋まらない。
主張(原論文の注意 1°):$B$ の指標 $\chi_1,\dots,\chi_r$ で $\eta_j=c_G(\chi_j)$ がどれも正因子の類であるものと、整数 $\alpha_1,\dots,\alpha_r\ge0$ で $\chi(\eta_1^{\alpha_1}\cdots\eta_r^{\alpha_r})=d$ となるものがあれば、(iv) と (v) を、整数の組を $d$ 一つにして満たせる。
本書はこの主張を[未完結]とする。定理の証明の型に沿えば、$\sum_j\alpha_j=N$($\chi$ は $A^N$ の外で $0$ なので)として $u=\bigoplus_j\chi_j^{\oplus\alpha_j}$ をとり、$V(u)=\bigoplus_jL_{\chi_j}^{\oplus\alpha_j}$ の切断を、類 $\eta_{j(1)},\dots,\eta_{j(N)}$($\eta_j$ を $\alpha_j$ 回ずつ並べたもの)の正因子 $D'_1,\dots,D'_N$ の方程式の組として作る。各 $k$ で $D'_k$ が $D'_1\cdots D'_{k-1}$ のどの成分も含まず、その交わりの重複度がすべて $1$ なら、切断は零切断に横断的で零点はちょうど $\chi(\eta^\alpha)=d$ 個になり(本書『4-4 捩れ指数と横断的な切断』の主結果「捩れ指数の倍数を零点の数の最大公約数として実現(訂正形)」の証明の段)、(iv) が $d$ 一つで成り立ち、(iv)⇒(v) の段で (v) も成り立つ。足りないのは、与えられた類 $\eta_j$ そのものの中にそのような正因子を選べることである。本書『4-4 捩れ指数と横断的な切断』の主結果「重複度 1 で交わる正因子(係数を大きくした形)」は、類の係数が一定の正因子を上回るときにしかこの選び方を保証しない。$\eta_j$ を $\ell\eta_j$ に替えれば使えるが、零点の数は $\ell^N$ 倍になり、定理の証明はこれを互いに素な二つの $\ell$ で打ち消して最大公約数 $d$ を得るので、次数を $d$ 一つにはできない。与えられた類の中の選び方は、原論文自身が未証明と明記する主張(本書『4-4 捩れ指数と横断的な切断』の主結果「至るところ重複度 1 で交わる正因子」)と同じ型で、原論文にも本書にも、外部入力を使った証明も無い。標数 $0$ では、基点のない線形系についての Bertini の定理や一般の平行移動の横断性(Kleiman Kle74)で閉じると考えられるが、本書はそれを使わない(本書『4-4 捩れ指数と横断的な切断』と同じ扱い)。$d=1$ の場合は、上の注意(整数の組を一つにできるかという問い)のとおり次数の理由で重複度が $1$ になるので、この段は要らない。
十分条件そのものは閉じないが、原論文はその仮定を単純単連結群に限って確かめれば足りると続ける。この帰着は本書でも示せる。まず群の積について準備する。
$H=H_1\times\dots\times H_s$ を連結アフィン群の積とし、$B_k\supset T_k$ を $H_k$ の Borel 部分群と極大トーラス、$N_k=\dim H_k/B_k$、$d_k$ を $H_k$ の捩れ指数、$\mathrm{pr}_k\colon H\to H_k$ を射影とする。
(1) $B_H=B_1\times\dots\times B_s$ は $H$ の Borel 部分群、$T_H=T_1\times\dots\times T_s$ はその極大トーラスで、$H/B_H=\prod_kH_k/B_k$、$\hat T_H=\bigoplus_k{}^t\mathrm{pr}_k(\hat T_k)$ である。
(2) $\chi_k\in\hat T_k$ について $c_H(\chi_k\circ\mathrm{pr}_k)=\bar{\mathrm{pr}}_k^*\,c_{H_k}(\chi_k)$ である($\bar{\mathrm{pr}}_k\colon H/B_H\to H_k/B_k$ は射影)。
(3) $H$ の捩れ指数は $d_1d_2\cdots d_s$ である。
段 1(Borel 部分群).$B_H$ は連結可解な閉部分群で、$H/B_H=\prod_kH_k/B_k$ は完備な空間の積なので完備である。引用する事実 4 の旗多様体の性質(本書『0-2 線形代数群と旗多様体』の定理「線形群の構造」の (2))により $B_H$ はある Borel 部分群 $B'$ を含む。$B_H$ は連結可解で $B'$ を含むから、$B'$ の極大性(Borel 部分群は極大な連結可解閉部分群)により $B'=B_H$ である。$T_H$ は $B_H$ の中の $\dim T_H=\sum\dim T_k$ 次元のトーラスで、$B_H=T_H\cdot\prod_k(B_k)_u$ なので極大トーラスである。トーラス $T_H$ の有理指標 $\psi$ は $\psi(t_1,\dots,t_s)=\prod_k\psi(\iota_k(t_k))$($\iota_k$ は第 $k$ 成分の包含)と分かれるので、$\hat T_H=\bigoplus_k{}^t\mathrm{pr}_k(\hat T_k)$ である。
段 2(両立).$\mathrm{pr}_k(B_H)=B_k$ なので、本書『4-1 特性準同型と特性部分環』の主結果「準同型と特性準同型の両立」を $u=\mathrm{pr}_k$ に当てれば (2) を得る。
段 3(最高次の部分).$N=\dim H/B_H=\sum_kN_k$ とする。段 1 により $S^N(\hat T_H)$ は、各 $k$ について $S^{a_k}(\hat T_k)$ の元 $y_k$ を ${}^t\mathrm{pr}_k$ で移したものの積($\sum_ka_k=N$)で張られる。(2) と $c_H$ が環準同型であることから、その像は $\prod_k\bar{\mathrm{pr}}_k^*c_{H_k}(y_k)$、すなわち外積 $c_{H_1}(y_1)\times\dots\times c_{H_s}(y_s)$ である(引用する事実 5)。$c_{H_k}(y_k)\in A^{a_k}(H_k/B_k)$ で、余次元が次元を超えるサイクルは無いので、$a_k>N_k$ となる $k$ があれば $0$ である。したがって $\sum_ka_k=N$ の下で $0$ でありうるのは $a_k=N_k$(すべての $k$)の項だけで、そのとき $c_{H_k}(y_k)\in\operatorname{Im}c_{H_k}\cap A^{N_k}(H_k/B_k)=d_k\mathbf Z[\mathrm{pt}]$ である。引用する事実 5 の $\chi(x\times y)=\chi(x)\chi(y)$ により、$\chi(\operatorname{Im}c_H\cap A^N(H/B_H))\subset d_1\cdots d_s\mathbf Z$ である。逆に $c_{H_k}(y_k)=d_k[\mathrm{pt}]$ となる $y_k\in S^{N_k}(\hat T_k)$ をとれば、その積の像の次数は $d_1\cdots d_s$ である。$\chi\colon A^N(H/B_H)\to\mathbf Z$ は同型なので、$H$ の捩れ指数は $d_1\cdots d_s$ である。
次の仮定をおく。単純で単連結なすべての連結半単純群 $H$ について、その Borel 部分群の指標 $\chi_1,\dots,\chi_r$ で $c_H(\chi_j)$ がどれも正因子の類であるものと、整数 $\alpha_j\ge0$ で $\chi\bigl(\prod_jc_H(\chi_j)^{\alpha_j}\bigr)$ が $H$ の捩れ指数に等しいものがある。このとき、任意の連結アフィン群 $G$ について、$B$ の指標 $\chi_1,\dots,\chi_r$ で $\eta_j=c_G(\chi_j)$ がどれも正因子の類であるものと、整数 $\alpha_j\ge0$ で $\chi(\eta_1^{\alpha_1}\cdots\eta_r^{\alpha_r})$ が $d^{N+1}$ を割るものがある。とくに $\chi(\eta^\alpha)$ を割る素数は $G$ の捩れ素数だけである。
段 1(半単純単連結群).連結根基 $R$ による商 $\bar G=G/R$ の単連結な被覆を $\tilde G$ とし、単純で単連結な群の積 $\tilde G=H_1\times\dots\times H_s$ に分ける(引用する事実 4)。仮定により、各 $H_k$ に指標 $\chi^{(k)}_j$ と指数 $\alpha^{(k)}$ がある。$\chi^{(k)}_j\circ\mathrm{pr}_k$ は $\tilde G$ の Borel 部分群の指標で、上の補題(積の群の捩れ指数)の (2) により、その類は正因子の類 $c_{H_k}(\chi^{(k)}_j)$ の $\bar{\mathrm{pr}}_k$ による引き戻しである。有効因子 $D$ の射影による逆像は有効因子($D$ と他の因子の積)なので、これも正因子の類である。これらの単項式 $\prod_k\prod_j\bigl(\bar{\mathrm{pr}}_k^*c_{H_k}(\chi^{(k)}_j)\bigr)^{\alpha^{(k)}_j}$ は外積 $\times_k\prod_jc_{H_k}(\chi^{(k)}_j)^{\alpha^{(k)}_j}$ に等しく、その次数は各因子の捩れ指数の積で、同じ補題の (3) により $\tilde G$ の捩れ指数 $\tilde d$ である。$\bar G$ が単位群なら $\tilde G$ も単位群で、空な単項式をとればよい。
段 2(旗多様体の同一視).引用する事実 4 により、同型 $\psi\colon G/B\to\bar G/\bar B\to\tilde G/\tilde B$ がある。$\psi$ は同型なので、$\psi^*$ は環の同型で、正因子の類を正因子の類に写し、次数 $\chi$ を保つ。$\tilde G$ は単連結なので、$c_{\tilde G}$ は $\hat{\tilde T}$ を $A^1(\tilde G/\tilde B)$ の上へ写す(引用する事実 4)。したがって $\operatorname{Im}c_{\tilde G}$ は $A^1(\tilde G/\tilde B)$ で生成される部分環で、$\psi^*(\operatorname{Im}c_{\tilde G})$ は $A^1(G/B)$ で生成される部分環である。$\operatorname{Im}c_G$ は $c_G(\hat B)\subset A^1(G/B)$ で生成されるので $\operatorname{Im}c_G\subset\psi^*(\operatorname{Im}c_{\tilde G})$ で、次数 $N$ の部分を比べて $d\,\mathbf Z\subset\tilde d\,\mathbf Z$、すなわち $\tilde d$ は $d$ を割る。
段 3(次数 1 の部分).$N\ge1$ なら、上の定理(捩れ指数の五つの特徴づけ(訂正形))の (iii)⇒(ii) を $d'=d$ で使うと $d\,A(G/B)\subset\operatorname{Im}c_G$ で、次数 $1$ の成分をとれば $d\,A^1(G/B)\subset c_G(S^1(\hat B))=c_G(\hat B)$ である。$N=0$ なら $G/B$ は一点で $A^1(G/B)=0$ なので、この包含は自明に成り立つ。
段 4(指標の選び方).段 1 の $\tilde G$ の指標と指数から得た正因子の類を $\tilde\eta_j$ とし、$\eta'_j=\psi^*\tilde\eta_j\in A^1(G/B)$ とおく。$\eta'_j$ は正因子の類で $\chi(\eta'^\alpha)=\tilde d$ である。段 3 により $d\,\eta'_j=c_G(\chi_j)$ となる $\chi_j\in\hat B$ があり、$\eta_j=d\,\eta'_j$ は正因子の類である。$\tilde d\ne0$ で $\chi$ は $A^N$ の外で $0$ なので $\sum_j\alpha_j=N$ で、$\chi(\eta^\alpha)=d^N\tilde d$ は $d^{N+1}$ を割る。
原論文は、単純単連結群で十分条件の仮定が示せれば、半単純単連結群に、さらに任意の連結アフィン群に「容易に」移せると述べる(印字 5-21)。本書の証明は、半単純単連結群への移行を上の補題(積の群の捩れ指数)で、一般の群への移行を単連結な被覆と定理の (ii) で行った。一般の群で得られる次数は捩れ指数そのものではなくその冪を割る数で、原論文の結論もこの形である。
旗多様体が射影直線になる二つの群で、定理の五つの条件を数値で確かめる。どちらも $N=1$ で、$B$ の $1$ 次の表現は指標である。
$G=\mathrm{PGL}(2)$ とする。本書『4-1 特性準同型と特性部分環』の主結果「特性部分環は群に依存する」により $\operatorname{Im}c_G=\mathbf Z\cdot1\oplus2\mathbf Zh$ で、$A^1(\mathbf P^1)=\mathbf Zh$、$h=[\mathrm{pt}]$ なので、捩れ指数は $d=2$ である。(ii) は $d'$ が偶数のときに限って成り立つ($d'h\in2\mathbf Zh$)。(iv) は $d'=2$ で、本書『3-2 横断的な切断の零点と構造群の簡約』の例「射影直線の接束の切断と次数 2 の被覆」の切断($\mathcal O(2)$ の二次形式 $xy$、零点 2 個)一つで成り立つ。したがって (v) により、構造群 $\mathrm{PGL}(2)$ の局所等自明な主束は、どの底でも各点の近くで次数 $2$ の有限エタール被覆の上で自明になる。逆に定理の (v)⇒(iii) により、(v) を満たす整数の組の最大公約数はいつも偶数である。とくに (v) を次数 $1$ だけの組で満たすことはできない。次数 $1$ の有限エタール被覆は $x$ の連結な近傍の上で同型なので(引用する事実 2)、これは局所等自明だが局所自明でない構造群 $\mathrm{PGL}(2)$ の主束があること、すなわち $\mathrm{PGL}(2)$ は特別でないことを言う。そのような主束の具体例は、本書『2-2 被覆の次数と余核の消滅』の例「$\mathrm{PGL}(2)$ の束としての円錐曲線の族」にある。そこでは円錐曲線の族(ファイバーが $\mathbf P^1=\mathrm{PGL}(2)/B$ の付随束)のファイバーへの制限の余核がちょうど $\mathbf Z/2$ で、(i) が $d'=2$ で成り立ち $d'=1$ で破れることと合う。
$G=\mathrm{SL}(2)$ とする。本書『4-1 特性準同型と特性部分環』の主結果「特性部分環は群に依存する」により $c_G$ は全射で、$d=1$ である。上の定理(捩れのない群と捩れ指数 1)の両側がここで成り立っている。(iv) は $d'=1$ で、本書『3-2 横断的な切断の零点と構造群の簡約』の例「標準直線束の切断と次数 1」の切断($\mathcal O(1)$ の一次形式、零点 1 個)一つで成り立つ。したがって (v) の組を $\{1\}$ にとれ、構造群 $\mathrm{SL}(2)$ の局所等自明な主束は、各点の近くで次数 $1$ の被覆、すなわち近傍そのものの上で自明になる。$\mathrm{SL}(2)$ は特別である。捩れ指数 $1$ の群でも、(iv) の組を $\{1\}$ ただ一つにとれるかどうかは定理からは出ない(上の注意(整数の組を一つにできるかという問い))。$\mathrm{SL}(n)$ と斜交群では、それを本書『6-3 特別群の特徴づけ』で示す。
以下は後代の結果の紹介である(時点を明記する。本書は文献を開いて確かめていない)。
本頁が対応する原論文は Torsion homologique et sections rationnelles Gro58c の §4 の、Théorème 2 からその後の注意 1° までである。
| 本頁 | 原論文 | 印字頁 |
|---|---|---|
| 定義(捩れ指数と捩れ素数) | Définition 2、Définition 3(再掲) | 5-15、5-17 |
| 定理(捩れ指数の五つの特徴づけ(訂正形))、注意(旗多様体が一点の場合と訂正の選び方)、注意(原論文の証明の段と本書の補い) | Théorème 2 とその証明 | 5-18〜5-20 |
| 注意(条件 (i) の空間の条件) | Théorème 2 の (i) | 5-18 |
| 定理(捩れのない群と捩れ指数 1) | Théorème 2 の系 1 | 5-21 |
| 定理(素数ごとの捩れの判定)、注意(系 2 の写像の列の読み) | Théorème 2 の系 2 | 5-21 |
| 注意(印字の読み(系 1 と注意 1°)) | 系 1、注意 1° | 5-21 |
| 注意(整数の組を一つにできるかという問い)、注意(一つの次数で済む十分条件) | 注意 1° | 5-21 |
| 補題(積の群の捩れ指数)、定理(単純単連結群への帰着) | 注意 1° の後半 | 5-21 |
| 例(射影線形群の主束と次数 2 の被覆)、例(特殊線形群は被覆なしで自明化される) | 原論文には無い(本書の検算) | — |
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