$$\newcommand{C}[0]{\mathbb{C}}
\newcommand{N}[0]{\mathbb{N}}
\newcommand{Q}[0]{\mathbb{Q}}
\newcommand{R}[0]{\mathbb{R}}
\newcommand{Z}[0]{\mathbb{Z}}
$$
原論文 §5 の最後の注意は、主束が一点で局所自明になるかどうかを、旗の束の Chow 環の交叉数で判定できるという予想を述べる。条件が必要であることはファイバーへの制限の全射性から直ちに出る。十分性は原論文でも本書でも未解決で、原論文が挙げる部分的な成立にも証明が無い。さらに、原論文の Borel 部分群の言い換えを文字どおり(連結と書かずに)読むと、位数 $2$ の群で予想は偽になる。
前提知識: 主束, Borel部分群, 旗多様体, Chow環, 局所等自明なファイバー空間, 特別群
この頁で示すこと
$k$ は代数的閉体で、標数は任意である。空間は本書の読みの代数的空間($k$ 上有限型の分離的な被約スキームを $k$ 点の集合と同一視したもの。既約とも連結とも限らない)で、$V$ は非特異な準射影的空間の全体、$A(X)$、引き戻し、次数 $\chi$ は本書『0-4 Chow 環の枠組み』のとおりである。$G$ を代数群(連結ともアフィンとも限らない)、$B$ をその Borel 部分群(本書の読みでは連結。下の定義(予想の設定))、$P\to X$ を構造群 $G$ の局所等自明な主束、$E=P/B$ を付随する旗の束、$f\colon E\to X$ をその射影、$a\in X$、$F_a=f^{-1}(a)$、$i_a\colon F_a\to E$ を包含とする。
本頁の主結果は次の二つである。
- 予想の必要性(原論文 §5 の注意 3°、印字 5-27):下の定義(予想の設定)の下で、$P$ が点 $a$ で局所自明なら、$\chi(i_a^*z)=1$ となる $z\in A(E)$ がある。[条件付き:本書『2-1 局所自明な点でのファイバーへの制限』の主結果「局所自明な点でのファイバーへの制限の全射性」(本書『0-4 Chow 環の枠組み』の定理「環の構造と射影公式」「完全性」に依る。第 6 巻『交叉理論の基本性質』の頁『1-1 データと公理と積の構造』の主結果「可換環の構造」「外積と積の関係」、頁『4-1 積空間と層別による生成』の主結果「開部分への制限の全射性」、頁『5-1 Chow 環での公理の成立と最小理論の予想』の主結果「Chow 環は第 1・2 章の公理を満たす」。第 6 巻で Chow 環に当てた主張としては[条件付き])による。Chow 環の枠組みの下では完結]
- 予想の部分的な成立(同じ注意 3°、印字 5-27):原論文は、$G$ が可換なら(Proposition 5 の後の注意で期待した逆が正しいという留保の下で)、また $G$ が一般線形群 $\mathrm{GL}(n)$ の商群(たとえば射影線形群)なら(§3 のようにベクトル束の切断を使って)、予想は正しいと述べる。[未完結:原論文は証明を書かず、本書も立てていない。原論文にも本書にも、外部入力を使った証明も無い]
予想そのものは主張ではないので主結果にせず、予想のボックスに置いて札を付けない。主結果 1 は、原論文が「自明」と言う一行を、前の章の命題を当てる形に書き直したものである。主結果 2 は原論文の述べることを記録するだけで、本書は証明していない。例と反例の節では、原論文の Borel 部分群の言い換えを連結と書かずに読むと予想が偽になることと、特別群では予想が自明に成り立つことを見る。
背景と動機
§2 以来、原論文は主束の局所自明性をファイバーの Chow 環で測ってきた。局所自明な点ではファイバーへの制限は全射で(本書『2-1 局所自明な点でのファイバーへの制限』)、次数 $m$ の被覆で自明になる点では余核が $m$ で消え(本書『2-2 被覆の次数と余核の消滅』)、ファイバーの次数 $d$ の類が全空間から来るなら次数の最大公約数が $d$ の多重切断がある(本書『2-3 多重切断と交叉数』)。旗の束 $E=P/B$ のファイバーは旗多様体 $G/B$ で、その点の類 $[\mathrm{pt}]$ が $i_a^*$ の像に入るかどうか、すなわち $\chi(i_a^*z)=1$ となる $z$ があるかどうかは、この測り方の中で最も細かい問いである。
特別群の特徴づけ(本書『6-3 特別群の特徴づけ』)は、群の側から、どの主束も局所自明になるのはいつかに答えた。§5 の最後の注意 3°(印字 5-26〜5-27)で原論文は、個々の主束について同じ問いを立て、いくつかの結果がもっともらしさを与えるとして、次の予想を述べる。$P$ が点 $a$ で局所自明であることと、$\chi(i_a^*z)=1$ となる $z\in A(E)$ があることは同値か。原論文は、必要性は自明で(Proposition 3 を見よ、と添える)、十分性が正しければ一点で局所自明な主束は至るところ局所自明になると述べ、さらに二つの問いと二つの部分的な成立を挙げる。そのあと §6 に移るので、予想の証明も部分的な成立の証明も書かれていない。
原論文はこの予想の $G$ を「連結とも、アフィンとも限らない」と明記する(印字 5-26)。そして $B$ を Borel 部分群とし、括弧の中で「線形で可解な閉部分群のうち極大なもの」と言い換える。この言い換えには「連結」が無い。$G$ が連結でないことを許した設定で連結を落とすと、有限群では $B=G$ となり、予想は偽になる(下の反例)。
定義と準備
予想を述べるための設定を定める。原論文は旗の束 $E=P/B$ と底 $X$ がどちらも非特異な準射影的空間であることを仮定し、$E$ が付随束として存在することを前提にしている。本書はそれを次のように明示する。
予想の設定
$G$ を代数群(連結ともアフィンとも限らない)とする。
(1) $G$ の Borel 部分群とは、$G$ の連結で可解な線形閉部分群のうち極大なものをいう(本書の読み。下の注意(印字の読み(§5 の注意 3°)))。$G/B$ は完備であるとする。
(2) $P\to X$ を構造群 $G$ の局所等自明な主束とし、$G$ が左からの積で $G/B$ に作用する付随束 $E=P/B=P\times^G(G/B)$ と、その射影 $f\colon E\to X$ と、商の射 $\alpha\colon P\times(G/B)\to E$ が与えられているとする。$(f,\pi,\alpha)$ は本書『2-2 被覆の次数と余核の消滅』の定義(構造群をもつファイバー空間と局所等自明性(本書の読み))の意味の、構造群 $G$、ファイバー $G/B$ のファイバー空間で、射 $h\colon W\to X$ と $\pi\circ q=h$ を満たす射 $q\colon W\to P$ があれば、$E$ は $W$ の上で $q$ により自明になるとする。
(3) $X$ と $E$ は $V$ に属する(非特異な準射影的空間である)とする。
$G$ が連結な線形群なら、$G/B$ が完備であることは本書『0-2 線形代数群と旗多様体』の定理「線形群の構造」の (2) である。原論文は一般の $G$ について、線形群の構造定理から $G/B$ が完備な多様体になると述べる(印字 5-26)が、本書はこの一般の場合を確かめていないので、(1) に仮定として含めた。(2) の付随束の存在と、主束の持ち上げの上で付随束が積になることは、本書が第 1 講演の基本事実として引く内容(本書『0-3 ファイバー空間と有限エタール被覆』の定理「局所等自明性の基本事実」の (2))に当たる。原論文の予想はこの付随束を前提として立てられているので、本書はこれを予想の設定に含め、主結果の札には数えない。(3) は原論文の仮定そのものである。
引用する事実
次の事実は証明せずに引用する。
- 局所自明な点でのファイバーへの制限の全射性(本書『2-1 局所自明な点でのファイバーへの制限』の主結果):$X,E\in V$ の間の射 $f\colon E\to X$ が点 $a$ で局所自明($a$ の開近傍 $U$、空でない空間 $F$、$U$ の上の同型 $f^{-1}(U)\cong U\times F$ がある)なら、$F_a\in V$ で、$i_a^*\colon A(E)\to A(F_a)$ は全射である。本書『0-4 Chow 環の枠組み』の性質に依り、札は[条件付き]である。
- 主束の切断と自明性(本書『0-3 ファイバー空間と有限エタール被覆』の命題「主束の切断と自明性」の (1)):主束が $U$ の上で自明であることと、$U$ の上の切断をもつことは同値である。定義だけで閉じる命題で、完結の側に置く。
- Chow 環の性質(本書『0-4 Chow 環の枠組み』の定義「非特異準射影空間の Chow 環」、定理「環の構造と射影公式」の (1)、定理「アフィン空間の開集合との積」):引き戻しは単位的な環準同型である。完備な空間の一点の類の次数は $1$ である。アフィン直線の空でない開集合 $S$ について $A(S)=\mathbf Z\cdot1_S$ である。事実 3 は下の反例でだけ使う。
主結果と証明
まず予想を本書の読みで述べ、原論文の問いを記録する。次に必要性を示し、最後に原論文が述べる部分的な成立を記録する。
予想
一点での局所自明性の交叉数による判定(原論文の予想)
上の定義(予想の設定)の下で、$P$ が点 $a$ で局所自明であるためには、$\chi(i_a^*z)=1$ となる $z\in A(E)$ があることが必要かつ十分である。
必要性は次の小節の主結果 1 である。十分性は、原論文にも本書にも証明が無い。原論文は、予想が正しいと仮定したときに何が従うかを二つ、予想の一般化を一つ述べる。
予想の帰結と原論文の問い
- 原論文は、十分性が正しければ、一点で局所自明な主束は至るところ局所自明になると述べる(印字 5-27)。原論文は理由を書かないが、本書の読みでは次のように説明できる。$X$ が連結なら、$f$ は固有で(本書『3-1 等質ベクトル束と誘導表現』の主結果「主束への拡張と切断の同一視」)、局所等自明なので接写像はどの点でも全射であり(被覆の上で積になり、被覆はその点の上でエタールだから)、本書『2-1 局所自明な点でのファイバーへの制限』の注意「式 (1) の証明が使うこと」により、どの点 $b$ でも $\chi(i_b^*z)=\varepsilon(f_*z)$ である。$a$ で局所自明なら、主結果 1 により $\chi(i_a^*z)=1$ となる $z$ があり、同じ $z$ がすべての $b$ で $\chi(i_b^*z)=1$ を与えるので、十分性から $P$ はすべての点で局所自明になる。$X$ が連結でなければ、この帰結は連結成分ごとにしか言えない。
- 原論文はさらに、二つの局所等自明な主束が一点の近くで同型なら、どの点の近くでも同型かと問う(印字 5-27)。
- この問いから、原論文は予想を、群 $G$ を $X$ の上の群の束に替えたものへ一般化することを示唆する。(2)(3) は問いで、本書は立ち入らない。
- 本書の観察として、予想が正しければ、$G$ が連結線形群のとき、点 $a$ の近くで互いに素な次数の被覆の上で自明になる主束は $a$ で局所自明になる。実際、そのような被覆 $g_i$ の上では $g_i^{-1}(P)$ が切断をもつので、定義(予想の設定)の (2) により $E$ もその上で自明になり、$G/B\in V$ だから本書『2-2 被覆の次数と余核の消滅』の主結果「次数の最大公約数による余核の消滅」により $i_a^*$ は全射で、点の類が持ち上がる。
- の説明は、予想の条件が点によらない量 $\varepsilon(f_*z)$ で読めることを示している。十分性が正しければ、局所自明性は点ごとの性質でなく、連結な底の上の主束全体の性質になる。
必要性
予想の必要性
上の定義(予想の設定)の下で、$P$ が点 $a$ で局所自明なら、$\chi(i_a^*z)=1$ となる $z\in A(E)$ がある。
段 1(旗の束も局所自明).$P$ が $a$ の開近傍 $U$ の上で自明なので、引用する事実 2 により切断 $q\colon U\to P$ がある。定義(予想の設定)の (2) を包含 $h\colon U\to X$ と $q$ に当てると、$E$ は $U$ の上で $q$ により自明になる。すなわち $U\times(G/B)\to U\times_XE=f^{-1}(U)$、$(x,y)\mapsto(x,\alpha(q(x),y))$ は $U$ の上の同型で、$G/B$ は空でない。ゆえに $f$ は $a$ で局所自明である。
段 2(ファイバーへの制限).$X,E\in V$ なので、引用する事実 1 により $F_a\in V$ で、$i_a^*\colon A(E)\to A(F_a)$ は全射である。段 1 の同型により $F_a\cong G/B$ は完備で、$\chi$ が定まる。
段 3(点の類).点 $p\in F_a$ をとると、引用する事実 3 により $\chi([p])=1$ である。段 2 により $i_a^*z=[p]$ となる $z\in A(E)$ があり、$\chi(i_a^*z)=1$ である。
原論文は必要性を「自明(Proposition 3 を見よ)」とだけ書く(印字 5-27)。Proposition 3 は本書『2-1 局所自明な点でのファイバーへの制限』の主結果「局所自明な点でのファイバーへの制限の全射性」で、上の証明はそれを旗の束に当てただけである。本書の札が[条件付き]なのは、その命題が Chow 環の枠組みの性質に依るからで、証明の中に外部入力は無い。段 1 で使った「主束の切断の上で付随束が積になる」ことは、予想の設定に含めた。
印字の読み(§5 の注意 3°)
- 原論文は Borel 部分群を、括弧の中で「sous-groupe fermé linéaire résoluble maximal」と言い換える(印字 5-26)。連結の語が無い。原論文が §4 以後で使う Borel 部分群は連結アフィン群の極大な連結可解閉部分群である(本書『0-2 線形代数群と旗多様体』の定義(可解群・単冪群・Borel 部分群))ので、本書はこの用法に合わせ、連結な極大可解閉部分群と読む。連結を落として読むと予想は偽になる(下の反例「反例:Borel 部分群を連結と書かない言い換えでは予想は偽」)。ただしこれは主張ではなく予想の設定の書き落としなので、本書は原論文の主張の偽には数えず、誤植の一覧に留保として置いた(本書『0-5 記号と約束』)。
- 原論文は続く文でファイバーを $F_a=f^{-1}(a)$ と書く(印字 5-27)が、$f$ はこの注意の中で定義されていない。旗の束の射影 $E=P/B\to X$ と読む。本書の $f$ はこの読みである。
部分的な成立
原論文は、予想に「もっともらしさを与える結果」として二つの場合を挙げる。本書はこれを事実として述べた主張と読み、主結果として立てて、閉じられないことを記録する。
予想の部分的な成立
原論文(印字 5-27)は次の二つを述べる。(a) $G$ が可換なら、Proposition 5 の後の注意で期待した逆(ファイバーの次数の類が全空間から来るなら、横断的な代表をとれて、次数の最大公約数がちょうどその次数の多重切断がある、という形の期待。本書『2-3 多重切断と交叉数』の予想「横断的な代表の存在(原論文の期待)」)が正しいという留保の下で、予想は正しい。(b) $G$ が一般線形群 $\mathrm{GL}(n)$ の商群(原論文の例は射影群)なら、§3 のようにベクトル束の切断を使って、予想が正しいことを示せる。
本書はどちらも[未完結]とする。(a) は、原論文自身が未解決の期待を留保として付けた主張で、しかもその留保の下での議論も書かれていない。(b) は「示せる」とあるだけで、どのベクトル束のどの切断を使うかも書かれていない。本書は、どちらについても精確な主張の形と証明を立てていない。原論文にも本書にも、外部入力を使った証明も無い。
(b) の射影線形群は、捩れ指数が $1$ でない最も簡単な群である(本書『4-3 捩れのない群と特性部分環の指数』の例「射影線形群の捩れ指数は 2」)。特別でない群について予想の十分性を示す試みとして、(b) はとくに意味をもつが、本書はその筋を確かめていない。
例と反例
予想が自明に成り立つ場合と、Borel 部分群の読みを誤ると予想が偽になる場合を見る。どちらも本書『0-3 ファイバー空間と有限エタール被覆』の例と前の頁の定理を使う。
特別群では予想は自明に成り立つ
$G$ が特別なら、構造群 $G$ の局所等自明な主束はすべて局所自明なので、予想の左辺はどの主束のどの点でも成り立ち、上の定理(予想の必要性)により右辺も成り立つ。したがって予想は自明に正しい。本書『6-3 特別群の特徴づけ』の主結果「特別群の特徴づけ」により、これはアフィンで連結で捩れのない群、たとえば一般線形群、特殊線形群、斜交群と、連結可解なアフィン群の場合である。予想が意味をもつのは、特別でない群、すなわち連結でない群、アフィンでない群、捩れのある連結アフィン群(たとえば射影線形群)の主束である。
最後の反例は、原論文の言い換えを文字どおりに読むと、連結でない群で十分性が破れることを示す。原論文は予想の $G$ が連結でなくてよいと明記しているので、この群は予想の設定の内にある。
反例:Borel 部分群を連結と書かない言い換えでは予想は偽
予想の設定の Borel 部分群から連結の条件を外し、原論文の言い換えのとおり「線形で可解な閉部分群のうち極大なもの」と読む。標数が $2$ でないとし、$G=\mathbf Z/2=\{\pm1\}$ と、本書『0-3 ファイバー空間と有限エタール被覆』の例「局所等自明だが局所自明でない主束」の主束 $\pi\colon P\to X=\mathbf G_m$ をとる($P=\mathbf G_m$、$\pi(u)=u^2$、$-1$ は $u\mapsto-u$ で作用する)。その例のとおり、$P$ は局所等自明だが、$X$ のどの点でも局所自明でない。
(1) 連結を外した読み.$G$ は $\mathrm{GL}(1)$ の閉部分群なので線形で、可換なので可解であり、それ自身が極大なので $B=G$ である。$G/B$ は一点で完備、$E=P\times^G(G/G)$ は $P$ の $G$ による商、すなわち $X$ そのもので、$f$ は恒等写像である。定義(予想の設定)の (2)(3) は、$E=X$、ファイバーが一点なので満たされる。どの点 $a$ でも $F_a=\{a\}$ で、引用する事実 3 により $i_a^*(1_E)=1_{F_a}=[a]$、$\chi(i_a^*1_E)=1$ である。予想の右辺はどの点でも成り立つのに、左辺はどの点でも成り立たない。十分性が破れる。
(2) 本書の読み.連結な可解閉部分群は $\{e\}$ だけなので $B=\{e\}$、$E=P\times^GG$ は $P$ そのもの($(p,g)\mapsto pg$ が商を与える)で、$f=\pi$ である。$E=P=\mathbf G_m$ なので引用する事実 3 により $A(E)=\mathbf Z\cdot1_E$ で、$F_a=\pi^{-1}(a)$ は 2 点 $p_1,p_2$ からなり、$A(F_a)=\mathbf Z[p_1]\oplus\mathbf Z[p_2]$、$i_a^*(n\cdot1_E)=n([p_1]+[p_2])$ である。ゆえに $\chi(i_a^*z)$ はいつも偶数で $1$ にならず、右辺も成り立たない。この例は本書の読みの予想と矛盾しない。
二つの読みの違いは、旗の束のファイバーが一点になるか、群の元の数だけの点になるかにある。連結を外すと、$G/B$ は群の非連結性を見なくなり、交叉数が障害を検出できなくなる。
反例の (1) と (2) を合わせると、連結な Borel 部分群で読んだ予想は、この例では矛盾を生じない。予想の十分性そのものは、この読みでも未解決のままである。
その後の発展
以下は後代の結果の紹介である(時点を明記する。本書は文献を開いて確かめていない)。
- Grothendieck–Serre の予想(Serre と Grothendieck による予想。無限体を含む場合の解決は 2015 年):正則な局所環 $R$ の上の簡約群スキームのトーサーが、$R$ の分数体の上で自明なら $R$ の上で自明である、という予想である。Fedorov と Panin FedPan15 は、$R$ が無限体を含む場合にこれを示した。連結な非特異多様体 $X$ の局所環は体 $k$ を含む正則局所環なので、連結な簡約群 $G$ の主束が一点の近くで自明なら、生成点で自明になり、この結果からすべての局所環の上で自明、したがって各点の近くで自明になる。原論文の予想の帰結「一点で局所自明なら至るところ局所自明」(上の注意(予想の帰結と原論文の問い)の (1))は、この場合には予想と独立に成り立つことになる。
- 互いに素な次数の拡大で自明になるトーサー(Serre Ser94、1995 年):体の上のトーサーについて、互いに素な次数の有限次拡大の上で自明になるなら自明か、という問いが、Serre の報告で問題として挙げられている。上の注意(予想の帰結と原論文の問い)の (4) は、原論文の予想がこの型の主張を点の近くの主束について含むことを示している。
原論文との対応表
本頁が対応する原論文は Grothendieck Gro58c の §5 の注意 3° である。
| 本頁 | 原論文 | 印字頁 |
| 定義(予想の設定)、注意(印字の読み(§5 の注意 3°)) | §5 の注意 3° の設定 | 5-26〜5-27 |
| 予想(一点での局所自明性の交叉数による判定(原論文の予想)) | §5 の注意 3° の予想 | 5-27 |
| 注意(予想の帰結と原論文の問い) | 同じ注意の帰結と二つの問い | 5-27 |
| 定理(予想の必要性) | 同じ注意の「必要性は自明」 | 5-27 |
| 注意(予想の部分的な成立) | 同じ注意の最後の二文 | 5-27 |
| 例(特別群では予想は自明に成り立つ)、反例(Borel 部分群を連結と書かない言い換えでは予想は偽) | (原論文には無い。予想の設定を確かめるための例) | — |
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