0-3 ファイバー空間と有限エタール被覆

$$\newcommand{C}[0]{\mathbb{C}} \newcommand{N}[0]{\mathbb{N}} \newcommand{Q}[0]{\mathbb{Q}} \newcommand{R}[0]{\mathbb{R}} \newcommand{Z}[0]{\mathbb{Z}} $$

本書で引用として使うファイバー空間と被覆の基本(原論文の意味の代数的空間、非特異点の基本(非特異点の集合の開性、積の接空間と次元)、主束と付随束、局所自明と局所等自明、有理切断と構造群の簡約、特別群、同じセミナーの第 1 講演に委ねられた局所等自明性の基本事実、不分岐な射とエタールな射、原論文の「不分岐な被覆」の本書の読み、有限エタール被覆に沿った降下、アフィンな空間の上の連接層、曲線と円錐曲線の族)を集めた頁である。各項目は要点をボックスに書き、続けて本書での使いどころと案内を書く。本書の札の基準では、この頁の定理として引く事実を使う主結果は[条件付き]で、札に使った事実を名指す。頁内で証明する命題だけは完結の証明に使ってよい側に置き、項目ごとにそう明記する。案内に挙げる文献の該当箇所は、本書では確かめていない。代数群と旗多様体は本書『0-2 線形代数群と旗多様体』に、Chow 環の性質と交叉の重複度は本書『0-4 Chow 環の枠組み』に、記号と本書が足した仮定の一覧は本書『0-5 記号と約束』にある。
前提知識: 代数多様体, 主束, ファイバー束, エタール射, 有限射, 連接層, 層のコホモロジー

原論文の代数的空間

原論文は「espace algébrique」を本講演の中で定義せず、スキームの言葉も使わない。前の講演(第 6 巻『交叉理論の基本性質』の原典)と同じく、代数的閉体の点の集合として空間を扱う。本書の読みをまず決める。

代数的空間(本書の読み)

$k$ を代数的閉体とする。本書では、原論文の代数的空間を、$k$ 上有限型の分離的な被約スキームを、その $k$ 点の集合と同一視したものと読む。代数的空間は既約とも連結とも限らない。点とは $k$ 点のことで、位相は Zariski 位相であり、「開」「閉」「近傍」「稠密」はこの位相の意味である(第 5 章の「通常の位相」だけが複素数体の上の複素位相)。既約な代数的空間を多様体(原論文の variété)という。点 $a$ を含む既約成分の次元の最大値を $\dim_aX$ と書く。非特異で準射影的な代数的空間の全体を $V$ と書き、$X\in V$ と書く。今日の Artin の意味の代数空間(エタール同値関係による商)とは別物である。

この読みは、第 6 巻『交叉理論の基本性質』の頁『0-2 代数多様体・横断性・射影束と旗多様体』の定義(代数的空間(本書の読み))と同じで、点の集合として言い換えただけである。そこにあるとおり、非特異な代数的空間の既約成分は互いに交わらず連結成分と一致するので、非特異かつ連結なら既約である(同じ頁の定理(既約性と次元の基本)の (2))。
原論文の空間が既約とは限らないと読む根拠は、原論文自身の用法にある。Proposition 3 の系は、$X$ が非特異な空間であるうえに「$X$ connexe」を別に仮定する(PDF 5、印字 5-04)。§6 は $X$ を「どの点でも次元 $n$」と断る(PDF 28、印字 5-27)。Proposition 5 と Lemme 3 は「variété(s)」、Proposition 1 と Proposition 6 は「espace algébrique」と書き分ける。この読みは二か所で効く。単冪群の主束についての原論文の付言は、底が可約だと破れる(本書『1-1 単冪群を構造群とする主束』の反例「反例:可約な底では非連結な単冪群の主束は自明とは限らない」)。多重切断の命題の系では、底の連結性を本書が仮定として足す(本書『2-3 多重切断と交叉数』の主結果「順像による核の消滅」)。

  • 使いどころ:全頁。とくに本書『1-1 単冪群を構造群とする主束』と本書『2-3 多重切断と交叉数』の注意。
  • 案内:代数多様体、Ser55(代数多様体を位相空間と局所環の層の組として定める)、Wei46。
    代数的空間の点が非特異であるとは、その点の局所環が正則局所環であること、すなわち接空間の次元が $\dim_aX$ に等しいことをいう。非特異な点について、本書は次の二つの古典的な事実を引用する。
非特異点の基本

$M$、$M'$ を代数的空間とする。
(1) $M$ の非特異な点の全体は $M$ の開集合である。
(2) 積 $M\times M'$ の点 $(y,y')$ の接空間は $T_yM\oplus T_{y'}M'$ で、$\dim_{(y,y')}(M\times M')=\dim_yM+\dim_{y'}M'$ である。したがって $M\times M'$ が $(y,y')$ で非特異であることと、$M$ が $y$ で非特異かつ $M'$ が $y'$ で非特異であることは同値である。

  1. は Zariski の非特異点の理論 Zar47 の基本定理で、(2) の接空間の式は積の局所環の極大イデアルの計算から、次元の式は積の既約成分の次元から出る。(2) の後半は、接空間の次元がつねに局所次元以上であることと、二つの式を合わせて出る。(2) は第 6 巻『交叉理論の基本性質』の頁『1-2 横断的な底変換と射影公式』の引用する事実「積の接空間」と同じ内容である。本書は文献の該当箇所を確かめていない。本書の札では、これを使う主結果は[条件付き]で、第 0 章の古典的前提として名指す(「Chow 環の枠組みの下では完結」の句の範囲に入る)。
  • 使いどころ:(2) は本書『2-1 局所自明な点でのファイバーへの制限』の主結果「局所自明な点でのファイバーへの制限の全射性」($U\times F$ が非特異なのでファイバー $F$ も非特異であること)。(1)(2) は本書『4-5 捩れ指数の特徴づけ』の主結果「捩れ指数の五つの特徴づけ(訂正形)」の証明の段 5(被覆の上の自明化から底の非特異性を出し、非特異な近傍に縮める所)。
  • 案内:正則局所環、Zar47、Har77 第 I 章 §5。

主束・付随束・局所自明性

原論文の主題は、代数群を構造群とする主束(原論文の「espace fibré principal」)がいつ局所自明になるかである。原論文は主束・局所等自明・付随束の定義を同じセミナーの第 1 講演 Ser58fib に委ね(PDF 6、PDF 9、PDF 10)、本講演には書かない。本書はその講演の本文を開いていないので、以下の定義は本書の読みである。

主束と局所自明性

$G$ を代数群、$X$ を代数的空間とする。構造群 $G$ の主束(主ファイバー空間)とは、代数的空間 $P$ と射 $\pi\colon P\to X$ と $G$ の右作用 $P\times G\to P$ の組で、$\pi$ が全射で $G$ の作用で不変であり、射 $P\times G\to P\times_XP$、$(p,g)\mapsto(p,pg)$ が同型であり、$X$ が商 $P/G$ であるもの($\pi$ を経由する $G$ 不変な射の分解が一意)をいう。とくに $G$ は各ファイバーに自由かつ推移的に作用する。$X\times G$ に右から積で作用させたものを自明な主束といい、自明な主束に $X$ 上で $G$ 同変に同型な主束を自明という。$X$ の開集合 $U$ への制限を $P|_U=\pi^{-1}(U)$ と書く。$X$ の各点が、$P|_U$ が自明になる開近傍 $U$ をもつとき、$P$ は局所自明であるという。射 $h\colon Y\to X$ による引き戻し $h^{-1}(P)=Y\times_XP$ は $Y$ 上の構造群 $G$ の主束である。

局所等自明性・有理切断・簡約

上の定義の $P\to X$ について次のようにいう。
(1) $X$ の各点 $x$ に、開近傍 $U$ と、$x$ で不分岐な被覆(下の定義(点で不分岐な被覆(本書の読み))の意味)$g\colon U'\to U$ で、引き戻し $g^{-1}(P|_U)$ が $U'$ の上で自明になるものがあるとき、$P$ は局所等自明(原論文の localement isotrivial)であるという。
(2) 空でない開集合の上で定義された $\pi$ の正則な切断を、有理切断という。
(3) $F$ を $G$ の閉部分群とする。$P/F$ を下の定義(付随束と等質ベクトル束)の $P\times^G(G/F)$ とし、射 $P/F\to X$ の切断を与えることを、$P$ の構造群を $F$ に簡約するという。

原論文は簡約を、Proposition 6 の直後で「$P'/F$ が正則切断をもつ」ことの言い換えとして導入する(PDF 12、印字 5-11)。本書はこの言い換えを定義として採る。簡約から構造群 $F$ の主束 $Q\subset P$ が得られること($P\to P/F$ が構造群 $F$ の主束であることを使う)は、下の定理(局所等自明性の基本事実)の (2) に依る。

主束の切断と自明性

$\pi\colon P\to X$ を構造群 $G$ の主束とする。
(1) $P$ が自明であることと、$\pi$ が $X$ 全体で正則な切断をもつことは同値である。
(2) 局所自明な主束は局所等自明で、有理切断をもつ($X$ が空でないとき)。

  1. 自明化 $\varphi\colon X\times G\cong P$ があれば、$x\mapsto\varphi(x,e)$ が切断である。逆に切断 $s$ があれば、$\psi(x,g)=s(x)g$ は $X$ 上の $G$ 同変な射 $X\times G\to P$ である。同型 $P\times G\cong P\times_XP$ の逆写像の第 2 成分を $\delta\colon P\times_XP\to G$($q=p\,\delta(p,q)$ となる $G$ の元)とすると、$p\mapsto(\pi(p),\delta(s(\pi(p)),p))$ は射で、$\psi$ の逆写像である。実際 $s(\pi(p))\,\delta(s(\pi(p)),p)=p$ であり、逆向きは $\delta(s(x),s(x)g)=g$ による。
  2. 局所自明なら、各点の自明化の近傍 $U$ について恒等写像 $U\to U$ は各点で不分岐な次数 $1$ の被覆(有限でエタール、各点の上に 1 点)で、引き戻しは $P|_U$ そのものなので自明である。自明化の近傍 $U\ne\emptyset$ の上では (1) により切断があり、これが有理切断である。

この命題は定義だけで閉じるので、本書はこれを完結の証明に使ってよい側に置く。(1) により、本書『1-1 単冪群を構造群とする主束』・本書『3-3 特別群と主束の自明化』の「自明」の証明は、切断を作ることに帰着する。

  • 使いどころ:全頁。(1) は本書『1-1 単冪群を構造群とする主束』の三つの主結果と本書『3-3 特別群と主束の自明化』の主結果「有限集合の近傍での自明化」「特別な部分群への簡約による自明化」。(2) の有理切断は本書『4-2 特性部分環と引き戻しの像』の主結果「有理切断と局所自明性の同値」。
  • 案内:主束、トーサー、Ser58fib(原論文が定義を委ねる講演。本書は開いていない)、Mil17。
局所等自明だが局所自明でない主束

標数が $2$ でないとし、$X=\mathbf G_m$(座標 $s$)、$P=\{u\in\mathbf G_m\}$、$\pi(u)=u^2$ とし、位数 $2$ の群 $\mathbf Z/2=\{\pm1\}$ を $u\mapsto-u$ で作用させる。$\pi$ は有限で、微分 $2u$ が $0$ にならないのでエタール、各点 $s$ の上にちょうど 2 点 $\pm\sqrt s$ をもち、$P$ は構造群 $\mathbf Z/2$ の主束である。$\pi$ 自身を被覆にとると、引き戻し $P\times_XP=\{(u,v):u^2=v^2\}$ は交わらない二つの閉集合 $\{v=u\}$ と $\{v=-u\}$ の和で($u\ne0$ かつ標数が $2$ でないから)、$(u,\pm1)\mapsto(u,\pm u)$ により $P\times\mathbf Z/2$ に同型、すなわち自明である。ゆえに $P$ は局所等自明である。一方、$P$ は有理切断をもたない。空でない開集合 $U$ の上の切断は $U$ 上の正則関数 $u$ で $u^2=s$ を満たすものだが、そうなら $s$ は有理関数体 $k(s)$ で平方になり、$s=0$ での位数が $1$(奇数)であることに反する。ゆえに $P$ はどの点の近傍 $U$ の上でも自明にならない(自明なら上の命題(主束の切断と自明性)の (1) により $U$ の上に切断があり、それは有理切断である)。この束は、本書『3-3 特別群と主束の自明化』の反例「反例:有限群は特別でない」と本書『6-4 局所自明性の予想』の反例「反例:Borel 部分群を連結と書かない言い換えでは予想は偽」で再び使う。

付随束と等質ベクトル束

$P\to X$ を構造群 $G$ の主束、$F$ を $G$ が左から作用する代数的空間とする。$P\times F$ に $G$ を $(p,y)g=(pg,g^{-1}y)$ で作用させた商を $P\times^GF$ と書き、$P$ に付随するファイバー $F$ の束(付随束)という。$G$ の閉部分群 $F$ について $P/F=P\times^G(G/F)$ である。$G$ の有理表現 $u\colon G\to\mathrm{GL}(V)$ について、$P\times^GV$ は $X$ 上のベクトル束の候補で、これを付随ベクトル束という。$G$ 自身を $G\to G/F$ の構造群 $F$ の主束と見て、$F$ の有理表現 $u$ に付随させたもの $V(u)=G\times^FV$ を、$G/F$ 上の等質ベクトル束という。

付随束の商が代数的空間として存在し、局所等自明であることは、下の定理(局所等自明性の基本事実)の (2) に含まれる。等質ベクトル束の詳しい扱いは本書『3-1 等質ベクトル束と誘導表現』で行う。

特別群と第 1 講演の事実

局所等自明な主束がすべて局所自明になる群が、原論文の主役である。原論文はその定義を Proposition 6 の直後に置き(PDF 12、印字 5-11)、局所等自明性についての基本事実を、証明なしに同じセミナーの第 1 講演に委ねる。

特別群

代数群 $F$ は、構造群 $F$ の局所等自明な主束がすべて局所自明であるとき、特別(原論文の spécial)であるという。

局所等自明性の基本事実 [thm-0-3-exposé-1-facts]

$G$ を代数群とする。
(1) $G$ の閉部分群 $F$ について、$G\to G/F$ は構造群 $F$ の局所等自明な主束である。
(2) $P\to X$ が構造群 $G$ の局所等自明な主束で、$G$ が $F$ に作用するなら、付随束 $P\times^GF$ は代数的空間として存在し、$X$ の上で局所等自明(ある被覆の上で $U'\times F$ に同型)である。商の射 $P\times F\to P\times^GF$ は構造群 $G$ の主束である。付随束の作り方は底変換と両立する。すなわち射 $h\colon Y\to X$ について $h^{-1}(P)\times^GF\cong Y\times_X(P\times^GF)$ で、とくに $\pi\circ q=h$ となる射 $q\colon Y\to P$ があれば、$(y,z)\mapsto(y,[q(y),z])$ は同型 $Y\times F\cong Y\times_X(P\times^GF)$ である。$G$ の閉部分群 $F$ について、$P\to P/F$ は構造群 $F$ の局所等自明な主束である。
(3) 有理表現に付随するベクトル束 $P\times^GV$ は局所自明である。言い換えると、一般線形群 $\mathrm{GL}(n)$ は特別である。
(4) 連結可解なアフィン群は特別である。
(5) 特別群はアフィンかつ連結である。

原論文は、(1) を §3 の冒頭(PDF 9、印字 5-08)で、(2) を §3 の族への拡張(PDF 10、印字 5-09。付随束の局所等自明性は第 1 講演を指し、$P\to P/F$ の主張は「すぐ分かる」とだけ言う)で、(3) を同じく §3 の冒頭で「loc. cit.」として、(3)(4) を特別群の定義の直後(PDF 12、印字 5-11)で、(5) を定理 3 の証明の冒頭(PDF 23、印字 5-22)で、どれも第 1 講演 Ser58fib の結果として述べる。本書はその講演を開いていないので、(1)〜(5) がその講演のどの節にあるかは確かめていない。(2) のうち、商の射 $P\times F\to P\times^GF$ が主束であることと底変換との両立は、原論文が明示せずに使う付随束の構成の性質で、本書は同じ第 1 講演の事実に含めて読む。本書の札では、これらを使う主結果は[条件付き:同じセミナーの第 1 講演の局所等自明性の基本事実を引用]と書く。
(3) は、ベクトル束の枠の主束を考えれば、有限エタールな被覆の上で自明になる $\mathrm{GL}(n)$ の主束が Zariski 位相で局所自明になるという主張で、後代の言葉では Hilbert の定理 90 の帰結である(第 6 巻『交叉理論の基本性質』の頁『0-2 代数多様体・横断性・射影束と旗多様体』の定理(主束とトーサーの基本)の (4))。(4) の Borel 部分群の場合は、Rosenlicht の局所切断(本書『0-2 線形代数群と旗多様体』の定理(Rosenlicht の局所切断))と整合する。

  • 使いどころ:(1)(2)(3) は本書『3-1 等質ベクトル束と誘導表現』の主結果「等質ベクトル束の局所自明性」「主束への拡張と切断の同一視」と、本書『3-2 横断的な切断の零点と構造群の簡約』の主結果「横断的な零点の族は有限エタール被覆」。(3)(4) は本書『3-3 特別群と主束の自明化』の主結果「可解群と一般線形群は特別」「有限集合の近傍での自明化」「アフィン群では底の非特異性は要らない」。(1)(2) は本書『4-2 特性部分環と引き戻しの像』の主結果「有理切断と局所自明性の同値」「主束の制限による特性部分環の特徴づけ」と本書『4-3 捩れのない群と特性部分環の指数』の主結果「特性部分環の指数の有限性」。(5) は本書『4-3 捩れのない群と特性部分環の指数』の主結果「特別群は捩れなし」と本書『6-3 特別群の特徴づけ』の主結果「特別群の特徴づけ」、同じ頁の反例「反例:アフィン性を外すと特別でない」。(2) の底変換との両立と商の射が主束であることは、本書『3-1 等質ベクトル束と誘導表現』の引用する事実 3、本書『3-2 横断的な切断の零点と構造群の簡約』の主結果「横断的な零点の族は有限エタール被覆」の段 5、本書『3-3 特別群と主束の自明化』の引用する事実 1 の (b)、本書『4-5 捩れ指数の特徴づけ』の引用する事実 1 で使う。
  • 案内:特別群、局所等自明なファイバー空間、Ser58fib(本書は開いていない)、Mil17。
    上の例(局所等自明だが局所自明でない主束)は (5) の一つの具体例で、アフィンだが連結でない有限群 $\mathbf Z/2$ が特別でないことを、第 1 講演に依らずに直接示している。

不分岐な被覆(本書の読み)

原論文は Proposition 4(PDF 6、印字 5-05)で「$a$ で不分岐な、次数 $m$ の被覆」を使い、その後も Proposition 5・6、定理 2 の (v)、定理 3 の証明で同じ語を使うが、定義を書かない。第 1 講演に依るとみられるが、本書は確かめていない。本書は次のように読み、これを本書が足した仮定として、被覆を直接構成し使う主結果の札と注意に書く。

不分岐な射とエタールな射

代数的空間の射 $f\colon X'\to X$ と点 $x'\in X'$、$x=f(x')$ について、局所環の極大イデアルが $\mathfrak m_x\mathcal O_{X',x'}=\mathfrak m_{x'}$ を満たすとき $f$ は $x'$ で不分岐であるといい、$\mathcal O_{X',x'}$ が $\mathcal O_{X,x}$ 加群として平坦なとき $f$ は $x'$ で平坦であるという。平坦かつ不分岐な点を $f$ のエタールな点という。すべての点でエタールな射をエタールという。$X$ の各点がアフィンな開近傍 $U$ をもち、$f^{-1}(U)$ がアフィンで、その座標環が $U$ の座標環の上の有限生成加群になるとき、$f$ は有限であるという。

点で不分岐な被覆(本書の読み)

$X$ を代数的空間、$a\in X$、$m$ を正の整数とする。本書では、原論文の「$a$ で不分岐な次数 $m$ の被覆」を、有限な射 $g\colon X'\to X$ で、$a$ のある開近傍の上でエタールであり、$g^{-1}(a)$ がちょうど $m$ 点からなるものと読む。$X'$ は連結とは限らない。有限でエタールな全射を有限エタール被覆という。本書で「不分岐な被覆」と書くときは、いつもこの有限エタールの意味である。

この読みの三つの要素(有限性、$a$ の近くでの平坦性、$X'$ の連結性を求めないこと)は、どれも主張の正しさに効く。平坦性を外して閉埋め込みのような不分岐で平坦でない成分を許すと、また有限性を外してエタールで有限でない射を許すと、原論文の Proposition 4 は偽になる(本書『2-2 被覆の次数と余核の消滅』の反例「反例:被覆の平坦性を外すと余核の消滅は破れる」と反例「反例:被覆の有限性を外すと余核の消滅は破れる」)。被覆を連結なものに限ると、Proposition 5 の後の注意の逆が破れる(本書『2-3 多重切断と交叉数』の反例「反例:被覆を連結なものに限ると逆は破れる」)。

不分岐な射とエタールな射の基本

$f\colon X'\to X$ を代数的空間の射とする。
(1) 閉埋め込みは不分岐である。有限射とエタール射は、合成と底変換で保たれる。有限射は固有で、とくに閉写像である。
(2) エタールな点の全体、準有限な点(ファイバーの中で孤立した点)の全体は、それぞれ $X'$ の開集合である。固有で準有限な射は有限である。
(3) 有限エタールな射の各ファイバーの点の数は、$X$ の連結成分の上で一定である(これを次数という)。次数 $1$ の有限エタールな射は同型である。
(4) $X$、$X'$ が非特異なとき、$f$ が $x'$ でエタールであることと、接写像 $df_{x'}\colon T_{x'}X'\to T_{f(x')}X$ が同型であることは同値である。$f$ が $x'$ でエタールで $X'$ が $x'$ で非特異なら、$X$ は $f(x')$ で非特異である。
(5) $f$ が滑らか(各点で接写像が全射で、ファイバーが非特異)なら、$f$ の切断の像は、各点でファイバーと横断的に交わる。
(6) 正規化 $\tilde X\to X$ は $X$ の正規な点の上で同型である。
(7) 非特異な底の上のエタール射の源は非特異:$f$ が $x'$ でエタールで、$X$ が $f(x')$ で非特異なら、$X'$ は $x'$ で非特異で、$\dim_{x'}X'=\dim_{f(x')}X$ である。とくに $X$ が非特異で $f$ がエタールなら、$X'$ は非特異である。
(8) 非特異準射影な底の上の有限エタール射の源は非特異準射影:$f$ が有限で $X$ が準射影的なら、$X'$ も準射影的である。とくに $X\in V$ で $f$ が有限エタールなら、$X'\in V$ である。
(9) エタール射は開:$f$ がエタールなら、$f$ は開写像である(より一般に、平坦な射は開写像である)。

これらは Zariski の非特異点の理論 Zar47 と Chevalley の講義の範囲で、1958 年には知られていた。(4) の前半は Jacobi の判定法(第 6 巻『交叉理論の基本性質』の頁『0-2 代数多様体・横断性・射影束と旗多様体』の定理(Jacobi の判定法))の言い換えである。(7) は (4) の後半の逆向きで、局所環の準同型 $A=\mathcal O_{X,f(x')}\to B=\mathcal O_{X',x'}$ が平坦なので $\dim B=\dim A+\dim B/\mathfrak m_AB=\dim A$ となり、不分岐なので $\mathfrak m_B=\mathfrak m_AB$ は $\dim A$ 個の元で生成され、$B$ が正則局所環になることによる(Zar47、SGA1 第 I 講)。(8) の準射影性は、有限射は射影的な射で、準射影的な $X$ の豊富な直線束の有限射による引き戻しは豊富であることによる(Har77 第 II 章・第 III 章 §5 の演習)。非特異性は (7) による。(9) は平坦で有限型の射が開写像であることの特別な場合である(SGA1 第 I 講、Har77 第 III 章 §9 の演習)。(7)〜(9) の文献の該当箇所は、本書では確かめていない。本書の札では、これを使う主結果は[条件付き]で、使った項目を名指す。

  • 使いどころ:(1)(2) は、被覆を $a$ の近傍に縮めて有限エタール被覆にする段(本書『2-2 被覆の次数と余核の消滅』の主結果「被覆の次数による余核の消滅」、本書『2-3 多重切断と交叉数』の主結果「多重切断からの交叉数」)。(2)(4) は本書『3-2 横断的な切断の零点と構造群の簡約』の主結果「横断的な零点の族は有限エタール被覆」と本書『2-3 多重切断と交叉数』の主結果「横断的な代表をもつときの逆」。(3) の後半は本書『6-3 特別群の特徴づけ』の主結果「特別群の特徴づけ」(次数 $1$ の被覆は点の近傍の同型)。(5) は本書『2-3 多重切断と交叉数』の主結果「多重切断からの交叉数」。(6) は同じ頁の主結果「横断的な代表をもつときの逆」。(7) は本書『2-2 被覆の次数と余核の消滅』の引用する事実 5(被覆の源が非特異であること)と、本書『3-2 横断的な切断の零点と構造群の簡約』の引用する事実 4 の (d)(主結果「横断的な零点の族は有限エタール被覆」)。(7)(8) は本書『2-3 多重切断と交叉数』の主結果「多重切断からの交叉数」(被覆の源が非特異準射影空間であること)、(9) は同じ頁の主結果「横断的な代表をもつときの逆」(エタールな射の像が開であること)。
  • 案内:エタール射、不分岐射、有限射、Zar47、SGA1(後代の体系的な扱い)。
被覆の縮小と非交和

$g\colon X'\to X$ を有限な射、$a\in X$ とする。
(1) $X'$ の開集合 $W$ が $g^{-1}(a)$ を含むなら、$U=X-g(X'-W)$ は $a$ の開近傍で、$g^{-1}(U)\subset W$ である。とくに、$a$ で不分岐な被覆の引き戻しが $g^{-1}(a)$ のある近傍の上で自明なら、$a$ の開近傍 $U$ を縮めて、$g^{-1}(U)$ 全体の上で自明にできる。
(2) $g_1\colon X_1\to X$、$g_2\colon X_2\to X$ が $a$ で不分岐な次数 $m_1$、$m_2$ の被覆なら、非交和 $X_1\sqcup X_2\to X$ は $a$ で不分岐な次数 $m_1+m_2$ の被覆である。とくに、次数 $m$ の被覆の $c$ 個の非交和は次数 $cm$ の被覆である。

  1. 有限射は閉写像(上の定理(不分岐な射とエタールな射の基本)の (1))なので $g(X'-W)$ は閉で、$g^{-1}(a)\subset W$ より $a$ を含まない。$x'\in g^{-1}(U)$ なら $g(x')\notin g(X'-W)$ なので $x'\in W$ である。後半は、自明化を $g^{-1}(U)\subset W$ に制限すればよい。
  2. 有限性は、$U$ がアフィンで $g_i^{-1}(U)$ がアフィンなら、$g_1^{-1}(U)\sqcup g_2^{-1}(U)$ がアフィンで、座標環が二つの座標環の直積になり、直積は有限生成加群の直和だから成り立つ。平坦性と不分岐性は各点の局所環の条件で、非交和の点の局所環はどちらかの成分の局所環なので、$a$ の近傍の上でエタールである。$a$ の上の点は $m_1+m_2$ 個である。
  1. は有限射が閉写像であることを使うので、(1) に依る主結果は[条件付き]で、上の定理(不分岐な射とエタールな射の基本)の (1) を名指す。(2) は定義だけで閉じるので、完結の証明に使ってよい側に置く。原論文の Proposition 4 の証明の「$a$ の適当な開近傍に替えてよい」(PDF 6、印字 5-05)の中身が (1) である。(2) は、本書『2-3 多重切断と交叉数』の主結果「横断的な代表をもつときの逆」で、連結とは限らない被覆を使って次数の最大公約数を合わせる所に使う。
有限エタール被覆に沿った降下

$g\colon U'\to U$ を有限エタールな全射とする。
(1) $U$ 上の連接層の射 $\varphi\colon\mathcal F\to\mathcal G$ が同型であることは、引き戻し $g^*\varphi$ が同型であることと同値である。
(2) $U$ 上の射 $h\colon Y\to U$ が固有であることは、底変換 $Y\times_UU'\to U'$ が固有であることと同値である。

これは Grothendieck の降下の理論(FGA、SGA 1 SGA1。原論文より後の 1959〜1961 年)の特別な場合で、原論文は族の上の切断の同一視を「読者に委ねる」(PDF 10〜11、印字 5-09〜5-10)。本書はそこをこの定理で補い、これに依る主結果は[条件付き:有限エタール被覆に沿った降下を引用]とする。

  • 使いどころ:本書『3-1 等質ベクトル束と誘導表現』の主結果「主束への拡張と切断の同一視」の (2)($P/F\to X$ の固有性)。同じ主結果の同一視の同型は同変な関数で直接示すので、(1) は使わない。(1) は、原論文が読者に委ねる同一視を被覆の上で確かめて戻す別の道筋(同じ頁の注意「読者に委ねられた検証と降下」)に当たる。
  • 案内:降下、忠実平坦、SGA1(本書は該当箇所を確かめていない)。

アフィンな空間と連接層

原論文は、アフィンな底の上で主束を自明にする段(Proposition 1、Lemme 5)と、完備な空間の上の切断の空間が有限次元であることを使う段(§3)で、Serre の連接層の理論を引く。Proposition 1 は「よく知られている」として $H^1(X,\mathcal O_X)=0$ を(PDF 2、印字 5-01)、§3 は完備な空間の上の有限次元性を Serre の定理として Gro57fac を(PDF 10、印字 5-09)、Lemme 5 は有限個の点で値を指定した切断と Nakayama の補題を Ser55 を(PDF 13、印字 5-12)引く。

連接層とアフィンな空間の基本

$X$、$Y$ を代数的空間とする。
(1) $X$ がアフィンなら、$X$ 上の連接層 $\mathcal F$ について $H^1(X,\mathcal F)=0$ である。とくに $H^1(X,\mathcal O_X)=0$ である。
(2) $X$ がアフィンで、$S\subset X$ が有限集合なら、連接層 $\mathcal F$ の大域切断を各点 $s\in S$ のファイバー $\mathcal F(s)=\mathcal F_s/\mathfrak m_s\mathcal F_s$ へ送る写像 $\Gamma(X,\mathcal F)\to\bigoplus_{s\in S}\mathcal F(s)$ は全射である。
(3) Nakayama の補題:連接層の射 $\mathcal F\to\mathcal G$ が点 $s$ のファイバーで全射なら、$s$ の茎で全射である。連接層の台は閉集合である。したがって、同じ階数のベクトル束の射が有限集合 $S$ の各点のファイバーで全射なら、$S$ のある開近傍の上で同型である。
(4) $X$ が完備なら、連接層 $\mathcal F$ の大域切断の空間 $\Gamma(X,\mathcal F)$ は有限次元である。
(5) 積:$\Gamma(X\times Y,\mathcal O_{X\times Y})=\Gamma(X,\mathcal O_X)\otimes_k\Gamma(Y,\mathcal O_Y)$ で、$X\times Y$ 上の正則関数は $\sum_ig_i(x)h_i(y)$(有限和)の形に書ける。$Y$ がアフィンなら、Künneth の公式により $H^1(X\times Y,\mathcal O)=H^1(X,\mathcal O_X)\otimes_k\Gamma(Y,\mathcal O_Y)$ である。
(6) 局所自明な加法群 $\mathbf G_a$ の主束の同型類は、$H^1(X,\mathcal O_X)$ と一対一に対応し、自明な主束は $0$ に対応する。
(7) 正規化の有限性:多様体 $X$ の関数体の有限次拡大 $L$ における $X$ の正規化 $X_L\to X$(各アフィン開集合の座標環の $L$ での整閉包を貼り合わせたもの)は有限な射である。
(8) 準射影的な $X$ の有限集合は、あるアフィンな開集合に含まれる。
(9) Čech の 1 次コホモロジーの単射性:$X$ のどの開被覆 $\mathcal U$ についても、層 $\mathcal F$ の 1 次の Čech コホモロジーから層のコホモロジーへの自然な写像 $\check H^1(\mathcal U,\mathcal F)\to H^1(X,\mathcal F)$ は単射である。とくに $H^1(X,\mathcal O_X)=0$ なら、どの開被覆についても構造層の 1 次の Čech 余輪体は余境界である。
(10) アフィン開被覆の Čech 複体(Leray):$X$ は分離的なので、アフィンな開集合の有限個の共通部分はアフィンである。$X$ のアフィン開被覆 $\mathcal U$ と連接層 $\mathcal F$ について、Čech 複体のコホモロジー $\check H^*(\mathcal U,\mathcal F)$ は $H^*(X,\mathcal F)$ に等しい。

  1. は (1) を、$S$ の点で消える切断の層 $\mathfrak m_S\mathcal F$ に当てた完全列 $0\to\mathfrak m_S\mathcal F\to\mathcal F\to\bigoplus_s\mathcal F(s)\to0$ のコホモロジー列から出る。(6) は、自明化の開被覆の上の推移関数 $U_i\cap U_j\to\mathbf G_a$ が $\mathcal O_X$ の 1 コサイクルをなすことによる。(5) の後半は、$H^1(Y,\mathcal O_Y)=0$((1))と Künneth の公式を合わせたものである。(9) は、1 次では Čech コホモロジーが開被覆の細分について単射に並び、その帰納極限が $H^1$ になることによる(Ser55)。(10) は Leray の定理を、アフィンな空間の上で連接層の高次コホモロジーが消えること((1) の高次の形、Ser55)に当てたものである。(10) の共通部分のアフィン性は、$U\cap V$ が $U\times V$ の閉部分集合である対角線との交わり $(U\times V)\cap\Delta_X$ に同型であることによる($X$ の分離性)。
  • 使いどころ:(1)(9) は本書『1-1 単冪群を構造群とする主束』の主結果「単冪群の主束はアフィンな底の上で自明」の $\dim G=1$ の段。(9)(10) と (5) の前半は同じ頁の主結果「構造層の 1 次コホモロジーが消える底」の段 2(Čech 複体に $\Gamma(Y,\mathcal O_Y)$ をテンソルして $H^1(Z\times Y,\mathcal O)=0$ を示す所。1-1 は (5) の後半の Künneth の公式を使わず、この Čech の議論で同じことを示す)。(9)(10) は同じ頁の例「加法群の主束と構造層の 1 次コホモロジー」。(6) の内容は、1-1 では補題「推移関数と切断」から頁の中で直接確かめる。(4) は本書『3-1 等質ベクトル束と誘導表現』の主結果「誘導表現の有限次元性と有理性」。同じ頁の主結果「不変な切断空間の表現の有理性」は、原論文の道筋(積の上の関数の分解)なら (5) の前半を使うが、本書の証明は有限個の点での値から係数を取り出すので (5) を使わない。(2)(3)(8) は本書『3-3 特別群と主束の自明化』の主結果「有限集合の近傍での自明化」。本書『2-2 被覆の次数と余核の消滅』の例「$\mathrm{PGL}(2)$ の束としての円錐曲線の族」は、切断を行列で直接書くので、この定理を使わない。(7)(8) は本書『2-3 多重切断と交叉数』の主結果「横断的な代表をもつときの逆」。
  • 案内:連接層、層のコホモロジー、中山の補題、Ser55、Gro57fac(原論文が引く講演。本書は開いていない)、Har77 第 II・III 章。

曲線と円錐曲線の族

本書『2-2 被覆の次数と余核の消滅』は、被覆の読みから平坦性や有限性を外すと原論文の Proposition 4 が偽になることを、円錐曲線の族で示す。そこで使う曲線の事実をここに置く。どれも原論文は使わないが、1958 年より前に知られていた。

曲線と円錐曲線の族の基本
  1. Riemann–Roch:体 $K$(代数的閉とは限らない)の上の、幾何的に連結で非特異な射影曲線 $C$ の種数を $g$、標準因子を $K_C$ とすると、$C$ 上の因子 $D$ について $h^0(D)-h^0(K_C-D)=\deg D+1-g$ である。とくに $g=0$ なら $\deg K_C=-2$ で、$\deg D\ge-1$ のとき $h^0(D)=\deg D+1$ である。
  2. $g=0$ の曲線 $C$ に次数 $1$ の直線束があれば、その切断の零点として $K$ 有理点がとれ、$C$ は射影直線 $\mathbf P^1_K$ に同型である。
  3. 連結な非特異な底 $X$ の上の平坦で固有な曲線の族 $E\to X$ と、$E$ 上の直線束 $L$ について、ファイバーへの制限の次数 $\deg(L|_{E_x})$ は $x$ によらず、生成点の上のファイバーでの次数に等しい。
  4. 非特異な円錐曲線の族(ファイバーが $\mathbf P^2$ の非特異な円錐曲線になる平坦で固有な族)$E\to X$ が切断をもつなら、$E$ は $X$ 上の階数 $2$ のベクトル束の射影束に同型である。
  1. は (1) から出る。次数 $1$ の直線束 $M$ について $h^0(M)=2$ なので $0$ でない切断があり、その零因子は次数 $1$ の有効因子、すなわち $K$ 有理点である。$K$ 有理点 $c$ があれば $h^0(\mathcal O(c))=2$ で、二つの切断の比が $\mathbf P^1_K$ への同型を与える。
  • 使いどころ:本書『2-2 被覆の次数と余核の消滅』の反例「反例:被覆の平坦性を外すと余核の消滅は破れる」「反例:被覆の有限性を外すと余核の消滅は破れる」と例「$\mathrm{PGL}(2)$ の束としての円錐曲線の族」(生成的なファイバーが有理点をもたないので、ファイバーへの制限の次数がすべて偶数になること)。
  • 案内:Riemann-Rochの定理、円錐曲線、Har77 第 IV 章、Wei46。

その後の発展

以下は後代の結果の紹介である(時点を明記する。本書は文献を開いて確かめていない)。

  • エタール位相とトーサー(1960〜1970 年):Grothendieck の SGA 1 SGA1 は有限エタール被覆と降下を体系化し、主束は群スキームのトーサーとして、局所等自明性はエタール位相での局所自明性として述べ直された。代数的閉体の上の滑らかな群では、有限エタールな被覆で自明になることとエタール局所自明であることは同じ意味になる(Mil17)。
  • 特別群の後代の定義(1958 年以後):Serre は第 1 講演 Ser58fib で、エタール局所的に自明なトーサーが Zariski 局所的に自明になる群を特別群と呼んだ。本書の定義(特別群)はこれに当たる。一般の体の上の特別群とトーサーの問題は Serre の報告 Ser94 にまとめられている。
  • 代数空間(1969〜1971 年):Artin Art71 はエタール同値関係による商として「代数空間」を導入した。語は原論文の「espace algébrique」と同じだが、別の対象である。

原論文との対応表

本頁が対応する原論文は Gro58c である。本頁は前提の頁で、原論文の主張の証明は含まない。印字頁は PDF の頁番号から 1 を引いたもの(PDF $n$ が印字 5-$(n-1)$)である。

本頁原論文印字頁
定義(代数的空間(本書の読み))冒頭、Proposition 3 の系、§6 冒頭5-01、5-04、5-27
定理(非特異点の基本)(原論文は明示しない。Théorème 2 の (v)⇒(i) で底の非特異性を出す所と Proposition 3 の前提の補い)—
定義(主束と局所自明性)、定義(局所等自明性・有理切断・簡約)、命題(主束の切断と自明性)、定義(付随束と等質ベクトル束)Proposition 1、Proposition 4、§3 冒頭と族への拡張、Proposition 6 の後5-01、5-05、5-08〜5-09、5-11
例(局所等自明だが局所自明でない主束)(原論文には無い。定義を確かめるための例)—
定義(特別群)、定理(局所等自明性の基本事実)§3 冒頭、族への拡張、特別群の定義とその後、定理 3 の証明の冒頭5-08、5-09、5-11、5-22
定義(不分岐な射とエタールな射)、定義(点で不分岐な被覆(本書の読み))、定理(不分岐な射とエタールな射の基本)、命題(被覆の縮小と非交和)Proposition 4 とその証明、Proposition 5、Proposition 6、定理 2 の (v)5-05、5-07、5-11、5-18
定理(有限エタール被覆に沿った降下)§3 の族の上の切断の同一視(読者に委ねる)5-09〜5-10
定理(連接層とアフィンな空間の基本)Proposition 1 の証明、§3 の誘導表現、Lemme 5 の証明5-01、5-09、5-12
定理(曲線と円錐曲線の族の基本)(原論文には無い。Proposition 4 の被覆の読みを確かめるための補い)—

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