本書で引用として使うファイバー空間と被覆の基本(原論文の意味の代数的空間、非特異点の基本(非特異点の集合の開性、積の接空間と次元)、主束と付随束、局所自明と局所等自明、有理切断と構造群の簡約、特別群、同じセミナーの第 1 講演に委ねられた局所等自明性の基本事実、不分岐な射とエタールな射、原論文の「不分岐な被覆」の本書の読み、有限エタール被覆に沿った降下、アフィンな空間の上の連接層、曲線と円錐曲線の族)を集めた頁である。各項目は要点をボックスに書き、続けて本書での使いどころと案内を書く。本書の札の基準では、この頁の定理として引く事実を使う主結果は[条件付き]で、札に使った事実を名指す。頁内で証明する命題だけは完結の証明に使ってよい側に置き、項目ごとにそう明記する。案内に挙げる文献の該当箇所は、本書では確かめていない。代数群と旗多様体は本書『0-2 線形代数群と旗多様体』に、Chow 環の性質と交叉の重複度は本書『0-4 Chow 環の枠組み』に、記号と本書が足した仮定の一覧は本書『0-5 記号と約束』にある。
前提知識: 代数多様体, 主束, ファイバー束, エタール射, 有限射, 連接層, 層のコホモロジー
原論文は「espace algébrique」を本講演の中で定義せず、スキームの言葉も使わない。前の講演(第 6 巻『交叉理論の基本性質』の原典)と同じく、代数的閉体の点の集合として空間を扱う。本書の読みをまず決める。
$k$ を代数的閉体とする。本書では、原論文の代数的空間を、$k$ 上有限型の分離的な被約スキームを、その $k$ 点の集合と同一視したものと読む。代数的空間は既約とも連結とも限らない。点とは $k$ 点のことで、位相は Zariski 位相であり、「開」「閉」「近傍」「稠密」はこの位相の意味である(第 5 章の「通常の位相」だけが複素数体の上の複素位相)。既約な代数的空間を多様体(原論文の variété)という。点 $a$ を含む既約成分の次元の最大値を $\dim_aX$ と書く。非特異で準射影的な代数的空間の全体を $V$ と書き、$X\in V$ と書く。今日の Artin の意味の代数空間(エタール同値関係による商)とは別物である。
この読みは、第 6 巻『交叉理論の基本性質』の頁『0-2 代数多様体・横断性・射影束と旗多様体』の定義(代数的空間(本書の読み))と同じで、点の集合として言い換えただけである。そこにあるとおり、非特異な代数的空間の既約成分は互いに交わらず連結成分と一致するので、非特異かつ連結なら既約である(同じ頁の定理(既約性と次元の基本)の (2))。
原論文の空間が既約とは限らないと読む根拠は、原論文自身の用法にある。Proposition 3 の系は、$X$ が非特異な空間であるうえに「$X$ connexe」を別に仮定する(PDF 5、印字 5-04)。§6 は $X$ を「どの点でも次元 $n$」と断る(PDF 28、印字 5-27)。Proposition 5 と Lemme 3 は「variété(s)」、Proposition 1 と Proposition 6 は「espace algébrique」と書き分ける。この読みは二か所で効く。単冪群の主束についての原論文の付言は、底が可約だと破れる(本書『1-1 単冪群を構造群とする主束』の反例「反例:可約な底では非連結な単冪群の主束は自明とは限らない」)。多重切断の命題の系では、底の連結性を本書が仮定として足す(本書『2-3 多重切断と交叉数』の主結果「順像による核の消滅」)。
$M$、$M'$ を代数的空間とする。
(1) $M$ の非特異な点の全体は $M$ の開集合である。
(2) 積 $M\times M'$ の点 $(y,y')$ の接空間は $T_yM\oplus T_{y'}M'$ で、$\dim_{(y,y')}(M\times M')=\dim_yM+\dim_{y'}M'$ である。したがって $M\times M'$ が $(y,y')$ で非特異であることと、$M$ が $y$ で非特異かつ $M'$ が $y'$ で非特異であることは同値である。
原論文の主題は、代数群を構造群とする主束(原論文の「espace fibré principal」)がいつ局所自明になるかである。原論文は主束・局所等自明・付随束の定義を同じセミナーの第 1 講演 Ser58fib に委ね(PDF 6、PDF 9、PDF 10)、本講演には書かない。本書はその講演の本文を開いていないので、以下の定義は本書の読みである。
$G$ を代数群、$X$ を代数的空間とする。構造群 $G$ の主束(主ファイバー空間)とは、代数的空間 $P$ と射 $\pi\colon P\to X$ と $G$ の右作用 $P\times G\to P$ の組で、$\pi$ が全射で $G$ の作用で不変であり、射 $P\times G\to P\times_XP$、$(p,g)\mapsto(p,pg)$ が同型であり、$X$ が商 $P/G$ であるもの($\pi$ を経由する $G$ 不変な射の分解が一意)をいう。とくに $G$ は各ファイバーに自由かつ推移的に作用する。$X\times G$ に右から積で作用させたものを自明な主束といい、自明な主束に $X$ 上で $G$ 同変に同型な主束を自明という。$X$ の開集合 $U$ への制限を $P|_U=\pi^{-1}(U)$ と書く。$X$ の各点が、$P|_U$ が自明になる開近傍 $U$ をもつとき、$P$ は局所自明であるという。射 $h\colon Y\to X$ による引き戻し $h^{-1}(P)=Y\times_XP$ は $Y$ 上の構造群 $G$ の主束である。
上の定義の $P\to X$ について次のようにいう。
(1) $X$ の各点 $x$ に、開近傍 $U$ と、$x$ で不分岐な被覆(下の定義(点で不分岐な被覆(本書の読み))の意味)$g\colon U'\to U$ で、引き戻し $g^{-1}(P|_U)$ が $U'$ の上で自明になるものがあるとき、$P$ は局所等自明(原論文の localement isotrivial)であるという。
(2) 空でない開集合の上で定義された $\pi$ の正則な切断を、有理切断という。
(3) $F$ を $G$ の閉部分群とする。$P/F$ を下の定義(付随束と等質ベクトル束)の $P\times^G(G/F)$ とし、射 $P/F\to X$ の切断を与えることを、$P$ の構造群を $F$ に簡約するという。
原論文は簡約を、Proposition 6 の直後で「$P'/F$ が正則切断をもつ」ことの言い換えとして導入する(PDF 12、印字 5-11)。本書はこの言い換えを定義として採る。簡約から構造群 $F$ の主束 $Q\subset P$ が得られること($P\to P/F$ が構造群 $F$ の主束であることを使う)は、下の定理(局所等自明性の基本事実)の (2) に依る。
$\pi\colon P\to X$ を構造群 $G$ の主束とする。
(1) $P$ が自明であることと、$\pi$ が $X$ 全体で正則な切断をもつことは同値である。
(2) 局所自明な主束は局所等自明で、有理切断をもつ($X$ が空でないとき)。
この命題は定義だけで閉じるので、本書はこれを完結の証明に使ってよい側に置く。(1) により、本書『1-1 単冪群を構造群とする主束』・本書『3-3 特別群と主束の自明化』の「自明」の証明は、切断を作ることに帰着する。
標数が $2$ でないとし、$X=\mathbf G_m$(座標 $s$)、$P=\{u\in\mathbf G_m\}$、$\pi(u)=u^2$ とし、位数 $2$ の群 $\mathbf Z/2=\{\pm1\}$ を $u\mapsto-u$ で作用させる。$\pi$ は有限で、微分 $2u$ が $0$ にならないのでエタール、各点 $s$ の上にちょうど 2 点 $\pm\sqrt s$ をもち、$P$ は構造群 $\mathbf Z/2$ の主束である。$\pi$ 自身を被覆にとると、引き戻し $P\times_XP=\{(u,v):u^2=v^2\}$ は交わらない二つの閉集合 $\{v=u\}$ と $\{v=-u\}$ の和で($u\ne0$ かつ標数が $2$ でないから)、$(u,\pm1)\mapsto(u,\pm u)$ により $P\times\mathbf Z/2$ に同型、すなわち自明である。ゆえに $P$ は局所等自明である。一方、$P$ は有理切断をもたない。空でない開集合 $U$ の上の切断は $U$ 上の正則関数 $u$ で $u^2=s$ を満たすものだが、そうなら $s$ は有理関数体 $k(s)$ で平方になり、$s=0$ での位数が $1$(奇数)であることに反する。ゆえに $P$ はどの点の近傍 $U$ の上でも自明にならない(自明なら上の命題(主束の切断と自明性)の (1) により $U$ の上に切断があり、それは有理切断である)。この束は、本書『3-3 特別群と主束の自明化』の反例「反例:有限群は特別でない」と本書『6-4 局所自明性の予想』の反例「反例:Borel 部分群を連結と書かない言い換えでは予想は偽」で再び使う。
$P\to X$ を構造群 $G$ の主束、$F$ を $G$ が左から作用する代数的空間とする。$P\times F$ に $G$ を $(p,y)g=(pg,g^{-1}y)$ で作用させた商を $P\times^GF$ と書き、$P$ に付随するファイバー $F$ の束(付随束)という。$G$ の閉部分群 $F$ について $P/F=P\times^G(G/F)$ である。$G$ の有理表現 $u\colon G\to\mathrm{GL}(V)$ について、$P\times^GV$ は $X$ 上のベクトル束の候補で、これを付随ベクトル束という。$G$ 自身を $G\to G/F$ の構造群 $F$ の主束と見て、$F$ の有理表現 $u$ に付随させたもの $V(u)=G\times^FV$ を、$G/F$ 上の等質ベクトル束という。
付随束の商が代数的空間として存在し、局所等自明であることは、下の定理(局所等自明性の基本事実)の (2) に含まれる。等質ベクトル束の詳しい扱いは本書『3-1 等質ベクトル束と誘導表現』で行う。
局所等自明な主束がすべて局所自明になる群が、原論文の主役である。原論文はその定義を Proposition 6 の直後に置き(PDF 12、印字 5-11)、局所等自明性についての基本事実を、証明なしに同じセミナーの第 1 講演に委ねる。
代数群 $F$ は、構造群 $F$ の局所等自明な主束がすべて局所自明であるとき、特別(原論文の spécial)であるという。
$G$ を代数群とする。
(1) $G$ の閉部分群 $F$ について、$G\to G/F$ は構造群 $F$ の局所等自明な主束である。
(2) $P\to X$ が構造群 $G$ の局所等自明な主束で、$G$ が $F$ に作用するなら、付随束 $P\times^GF$ は代数的空間として存在し、$X$ の上で局所等自明(ある被覆の上で $U'\times F$ に同型)である。商の射 $P\times F\to P\times^GF$ は構造群 $G$ の主束である。付随束の作り方は底変換と両立する。すなわち射 $h\colon Y\to X$ について $h^{-1}(P)\times^GF\cong Y\times_X(P\times^GF)$ で、とくに $\pi\circ q=h$ となる射 $q\colon Y\to P$ があれば、$(y,z)\mapsto(y,[q(y),z])$ は同型 $Y\times F\cong Y\times_X(P\times^GF)$ である。$G$ の閉部分群 $F$ について、$P\to P/F$ は構造群 $F$ の局所等自明な主束である。
(3) 有理表現に付随するベクトル束 $P\times^GV$ は局所自明である。言い換えると、一般線形群 $\mathrm{GL}(n)$ は特別である。
(4) 連結可解なアフィン群は特別である。
(5) 特別群はアフィンかつ連結である。
原論文は、(1) を §3 の冒頭(PDF 9、印字 5-08)で、(2) を §3 の族への拡張(PDF 10、印字 5-09。付随束の局所等自明性は第 1 講演を指し、$P\to P/F$ の主張は「すぐ分かる」とだけ言う)で、(3) を同じく §3 の冒頭で「loc. cit.」として、(3)(4) を特別群の定義の直後(PDF 12、印字 5-11)で、(5) を定理 3 の証明の冒頭(PDF 23、印字 5-22)で、どれも第 1 講演 Ser58fib の結果として述べる。本書はその講演を開いていないので、(1)〜(5) がその講演のどの節にあるかは確かめていない。(2) のうち、商の射 $P\times F\to P\times^GF$ が主束であることと底変換との両立は、原論文が明示せずに使う付随束の構成の性質で、本書は同じ第 1 講演の事実に含めて読む。本書の札では、これらを使う主結果は[条件付き:同じセミナーの第 1 講演の局所等自明性の基本事実を引用]と書く。
(3) は、ベクトル束の枠の主束を考えれば、有限エタールな被覆の上で自明になる $\mathrm{GL}(n)$ の主束が Zariski 位相で局所自明になるという主張で、後代の言葉では Hilbert の定理 90 の帰結である(第 6 巻『交叉理論の基本性質』の頁『0-2 代数多様体・横断性・射影束と旗多様体』の定理(主束とトーサーの基本)の (4))。(4) の Borel 部分群の場合は、Rosenlicht の局所切断(本書『0-2 線形代数群と旗多様体』の定理(Rosenlicht の局所切断))と整合する。
原論文は Proposition 4(PDF 6、印字 5-05)で「$a$ で不分岐な、次数 $m$ の被覆」を使い、その後も Proposition 5・6、定理 2 の (v)、定理 3 の証明で同じ語を使うが、定義を書かない。第 1 講演に依るとみられるが、本書は確かめていない。本書は次のように読み、これを本書が足した仮定として、被覆を直接構成し使う主結果の札と注意に書く。
代数的空間の射 $f\colon X'\to X$ と点 $x'\in X'$、$x=f(x')$ について、局所環の極大イデアルが $\mathfrak m_x\mathcal O_{X',x'}=\mathfrak m_{x'}$ を満たすとき $f$ は $x'$ で不分岐であるといい、$\mathcal O_{X',x'}$ が $\mathcal O_{X,x}$ 加群として平坦なとき $f$ は $x'$ で平坦であるという。平坦かつ不分岐な点を $f$ のエタールな点という。すべての点でエタールな射をエタールという。$X$ の各点がアフィンな開近傍 $U$ をもち、$f^{-1}(U)$ がアフィンで、その座標環が $U$ の座標環の上の有限生成加群になるとき、$f$ は有限であるという。
$X$ を代数的空間、$a\in X$、$m$ を正の整数とする。本書では、原論文の「$a$ で不分岐な次数 $m$ の被覆」を、有限な射 $g\colon X'\to X$ で、$a$ のある開近傍の上でエタールであり、$g^{-1}(a)$ がちょうど $m$ 点からなるものと読む。$X'$ は連結とは限らない。有限でエタールな全射を有限エタール被覆という。本書で「不分岐な被覆」と書くときは、いつもこの有限エタールの意味である。
この読みの三つの要素(有限性、$a$ の近くでの平坦性、$X'$ の連結性を求めないこと)は、どれも主張の正しさに効く。平坦性を外して閉埋め込みのような不分岐で平坦でない成分を許すと、また有限性を外してエタールで有限でない射を許すと、原論文の Proposition 4 は偽になる(本書『2-2 被覆の次数と余核の消滅』の反例「反例:被覆の平坦性を外すと余核の消滅は破れる」と反例「反例:被覆の有限性を外すと余核の消滅は破れる」)。被覆を連結なものに限ると、Proposition 5 の後の注意の逆が破れる(本書『2-3 多重切断と交叉数』の反例「反例:被覆を連結なものに限ると逆は破れる」)。
$f\colon X'\to X$ を代数的空間の射とする。
(1) 閉埋め込みは不分岐である。有限射とエタール射は、合成と底変換で保たれる。有限射は固有で、とくに閉写像である。
(2) エタールな点の全体、準有限な点(ファイバーの中で孤立した点)の全体は、それぞれ $X'$ の開集合である。固有で準有限な射は有限である。
(3) 有限エタールな射の各ファイバーの点の数は、$X$ の連結成分の上で一定である(これを次数という)。次数 $1$ の有限エタールな射は同型である。
(4) $X$、$X'$ が非特異なとき、$f$ が $x'$ でエタールであることと、接写像 $df_{x'}\colon T_{x'}X'\to T_{f(x')}X$ が同型であることは同値である。$f$ が $x'$ でエタールで $X'$ が $x'$ で非特異なら、$X$ は $f(x')$ で非特異である。
(5) $f$ が滑らか(各点で接写像が全射で、ファイバーが非特異)なら、$f$ の切断の像は、各点でファイバーと横断的に交わる。
(6) 正規化 $\tilde X\to X$ は $X$ の正規な点の上で同型である。
(7) 非特異な底の上のエタール射の源は非特異:$f$ が $x'$ でエタールで、$X$ が $f(x')$ で非特異なら、$X'$ は $x'$ で非特異で、$\dim_{x'}X'=\dim_{f(x')}X$ である。とくに $X$ が非特異で $f$ がエタールなら、$X'$ は非特異である。
(8) 非特異準射影な底の上の有限エタール射の源は非特異準射影:$f$ が有限で $X$ が準射影的なら、$X'$ も準射影的である。とくに $X\in V$ で $f$ が有限エタールなら、$X'\in V$ である。
(9) エタール射は開:$f$ がエタールなら、$f$ は開写像である(より一般に、平坦な射は開写像である)。
これらは Zariski の非特異点の理論 Zar47 と Chevalley の講義の範囲で、1958 年には知られていた。(4) の前半は Jacobi の判定法(第 6 巻『交叉理論の基本性質』の頁『0-2 代数多様体・横断性・射影束と旗多様体』の定理(Jacobi の判定法))の言い換えである。(7) は (4) の後半の逆向きで、局所環の準同型 $A=\mathcal O_{X,f(x')}\to B=\mathcal O_{X',x'}$ が平坦なので $\dim B=\dim A+\dim B/\mathfrak m_AB=\dim A$ となり、不分岐なので $\mathfrak m_B=\mathfrak m_AB$ は $\dim A$ 個の元で生成され、$B$ が正則局所環になることによる(Zar47、SGA1 第 I 講)。(8) の準射影性は、有限射は射影的な射で、準射影的な $X$ の豊富な直線束の有限射による引き戻しは豊富であることによる(Har77 第 II 章・第 III 章 §5 の演習)。非特異性は (7) による。(9) は平坦で有限型の射が開写像であることの特別な場合である(SGA1 第 I 講、Har77 第 III 章 §9 の演習)。(7)〜(9) の文献の該当箇所は、本書では確かめていない。本書の札では、これを使う主結果は[条件付き]で、使った項目を名指す。
$g\colon X'\to X$ を有限な射、$a\in X$ とする。
(1) $X'$ の開集合 $W$ が $g^{-1}(a)$ を含むなら、$U=X-g(X'-W)$ は $a$ の開近傍で、$g^{-1}(U)\subset W$ である。とくに、$a$ で不分岐な被覆の引き戻しが $g^{-1}(a)$ のある近傍の上で自明なら、$a$ の開近傍 $U$ を縮めて、$g^{-1}(U)$ 全体の上で自明にできる。
(2) $g_1\colon X_1\to X$、$g_2\colon X_2\to X$ が $a$ で不分岐な次数 $m_1$、$m_2$ の被覆なら、非交和 $X_1\sqcup X_2\to X$ は $a$ で不分岐な次数 $m_1+m_2$ の被覆である。とくに、次数 $m$ の被覆の $c$ 個の非交和は次数 $cm$ の被覆である。
$g\colon U'\to U$ を有限エタールな全射とする。
(1) $U$ 上の連接層の射 $\varphi\colon\mathcal F\to\mathcal G$ が同型であることは、引き戻し $g^*\varphi$ が同型であることと同値である。
(2) $U$ 上の射 $h\colon Y\to U$ が固有であることは、底変換 $Y\times_UU'\to U'$ が固有であることと同値である。
これは Grothendieck の降下の理論(FGA、SGA 1 SGA1。原論文より後の 1959〜1961 年)の特別な場合で、原論文は族の上の切断の同一視を「読者に委ねる」(PDF 10〜11、印字 5-09〜5-10)。本書はそこをこの定理で補い、これに依る主結果は[条件付き:有限エタール被覆に沿った降下を引用]とする。
原論文は、アフィンな底の上で主束を自明にする段(Proposition 1、Lemme 5)と、完備な空間の上の切断の空間が有限次元であることを使う段(§3)で、Serre の連接層の理論を引く。Proposition 1 は「よく知られている」として $H^1(X,\mathcal O_X)=0$ を(PDF 2、印字 5-01)、§3 は完備な空間の上の有限次元性を Serre の定理として Gro57fac を(PDF 10、印字 5-09)、Lemme 5 は有限個の点で値を指定した切断と Nakayama の補題を Ser55 を(PDF 13、印字 5-12)引く。
$X$、$Y$ を代数的空間とする。
(1) $X$ がアフィンなら、$X$ 上の連接層 $\mathcal F$ について $H^1(X,\mathcal F)=0$ である。とくに $H^1(X,\mathcal O_X)=0$ である。
(2) $X$ がアフィンで、$S\subset X$ が有限集合なら、連接層 $\mathcal F$ の大域切断を各点 $s\in S$ のファイバー $\mathcal F(s)=\mathcal F_s/\mathfrak m_s\mathcal F_s$ へ送る写像 $\Gamma(X,\mathcal F)\to\bigoplus_{s\in S}\mathcal F(s)$ は全射である。
(3) Nakayama の補題:連接層の射 $\mathcal F\to\mathcal G$ が点 $s$ のファイバーで全射なら、$s$ の茎で全射である。連接層の台は閉集合である。したがって、同じ階数のベクトル束の射が有限集合 $S$ の各点のファイバーで全射なら、$S$ のある開近傍の上で同型である。
(4) $X$ が完備なら、連接層 $\mathcal F$ の大域切断の空間 $\Gamma(X,\mathcal F)$ は有限次元である。
(5) 積:$\Gamma(X\times Y,\mathcal O_{X\times Y})=\Gamma(X,\mathcal O_X)\otimes_k\Gamma(Y,\mathcal O_Y)$ で、$X\times Y$ 上の正則関数は $\sum_ig_i(x)h_i(y)$(有限和)の形に書ける。$Y$ がアフィンなら、Künneth の公式により $H^1(X\times Y,\mathcal O)=H^1(X,\mathcal O_X)\otimes_k\Gamma(Y,\mathcal O_Y)$ である。
(6) 局所自明な加法群 $\mathbf G_a$ の主束の同型類は、$H^1(X,\mathcal O_X)$ と一対一に対応し、自明な主束は $0$ に対応する。
(7) 正規化の有限性:多様体 $X$ の関数体の有限次拡大 $L$ における $X$ の正規化 $X_L\to X$(各アフィン開集合の座標環の $L$ での整閉包を貼り合わせたもの)は有限な射である。
(8) 準射影的な $X$ の有限集合は、あるアフィンな開集合に含まれる。
(9) Čech の 1 次コホモロジーの単射性:$X$ のどの開被覆 $\mathcal U$ についても、層 $\mathcal F$ の 1 次の Čech コホモロジーから層のコホモロジーへの自然な写像 $\check H^1(\mathcal U,\mathcal F)\to H^1(X,\mathcal F)$ は単射である。とくに $H^1(X,\mathcal O_X)=0$ なら、どの開被覆についても構造層の 1 次の Čech 余輪体は余境界である。
(10) アフィン開被覆の Čech 複体(Leray):$X$ は分離的なので、アフィンな開集合の有限個の共通部分はアフィンである。$X$ のアフィン開被覆 $\mathcal U$ と連接層 $\mathcal F$ について、Čech 複体のコホモロジー $\check H^*(\mathcal U,\mathcal F)$ は $H^*(X,\mathcal F)$ に等しい。
本書『2-2 被覆の次数と余核の消滅』は、被覆の読みから平坦性や有限性を外すと原論文の Proposition 4 が偽になることを、円錐曲線の族で示す。そこで使う曲線の事実をここに置く。どれも原論文は使わないが、1958 年より前に知られていた。
以下は後代の結果の紹介である(時点を明記する。本書は文献を開いて確かめていない)。
本頁が対応する原論文は Gro58c である。本頁は前提の頁で、原論文の主張の証明は含まない。印字頁は PDF の頁番号から 1 を引いたもの(PDF $n$ が印字 5-$(n-1)$)である。
| 本頁 | 原論文 | 印字頁 |
|---|---|---|
| 定義(代数的空間(本書の読み)) | 冒頭、Proposition 3 の系、§6 冒頭 | 5-01、5-04、5-27 |
| 定理(非特異点の基本) | (原論文は明示しない。Théorème 2 の (v)⇒(i) で底の非特異性を出す所と Proposition 3 の前提の補い) | — |
| 定義(主束と局所自明性)、定義(局所等自明性・有理切断・簡約)、命題(主束の切断と自明性)、定義(付随束と等質ベクトル束) | Proposition 1、Proposition 4、§3 冒頭と族への拡張、Proposition 6 の後 | 5-01、5-05、5-08〜5-09、5-11 |
| 例(局所等自明だが局所自明でない主束) | (原論文には無い。定義を確かめるための例) | — |
| 定義(特別群)、定理(局所等自明性の基本事実) | §3 冒頭、族への拡張、特別群の定義とその後、定理 3 の証明の冒頭 | 5-08、5-09、5-11、5-22 |
| 定義(不分岐な射とエタールな射)、定義(点で不分岐な被覆(本書の読み))、定理(不分岐な射とエタールな射の基本)、命題(被覆の縮小と非交和) | Proposition 4 とその証明、Proposition 5、Proposition 6、定理 2 の (v) | 5-05、5-07、5-11、5-18 |
| 定理(有限エタール被覆に沿った降下) | §3 の族の上の切断の同一視(読者に委ねる) | 5-09〜5-10 |
| 定理(連接層とアフィンな空間の基本) | Proposition 1 の証明、§3 の誘導表現、Lemme 5 の証明 | 5-01、5-09、5-12 |
| 定理(曲線と円錐曲線の族の基本) | (原論文には無い。Proposition 4 の被覆の読みを確かめるための補い) | — |
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