原論文は前の講演の交叉理論を仮定として受け取り、非特異な準射影空間の Chow 環で議論する。本頁は、本書が使う Chow 環の性質を内容ごとに述べ、それを示した第 6 巻『交叉理論の基本性質』の頁と主結果との対応表、原論文が前の講演の番号で引く箇所と第 6 巻の頁との対応、交叉の重複度と代数的同値について引用する事実、本書の旗の類の符号と第 6 巻の符号の違い、Chow 環の性質に依る主結果の札の読み方をまとめた頁である。性質の証明は第 6 巻に委ねて繰り返さない。ただ一つ、胞体分割による生成だけは、第 6 巻の形がそのままでは旗多様体に当たらないので、本頁で他の性質から導く。記号は本書『0-5 記号と約束』のとおりで、代数群と旗多様体の前提は本書『0-2 線形代数群と旗多様体』に、ファイバー空間と被覆の前提は本書『0-3 ファイバー空間と有限エタール被覆』にある。
前提知識: Chow環, 有理同値, 交叉積, 射影束公式, Chern類, Picard群, 代数的同値
原論文 §2 の冒頭(印字 5-04)は、続く三つの命題(Proposition 3〜5)が、前の講演で展開された公理的な理論のうち完全性の公理 (E) を満たすものの中で述べられ証明できると断り、そのうえで「Chow 理論でだけ述べる」と宣言する。§1 の冒頭(印字 5-01)も、基礎体の約束は前の講演と同じだと書く。前の講演とは同じ tome の exposé 4 Gro58b で、第 6 巻の原典である。原論文は同じ講演を「exposé 4」とも「exposé précédent」とも呼び、同じ事実(一般線形群の旗多様体の Chow 環、式 (17))に両方の呼び方を使う。
原論文は §2 以後、Chow 環の性質を前の講演の番号で引くか、黙って使う。本書はこの宣言を枠組みとして受け取る。すなわち、次の節に並べる Chow 環の性質を仮定として使い、Chow 環でそれらが成り立つことの判定は第 6 巻に委ねる。本書はこの立場を「Chow 環の枠組み」と呼ぶ。
$V$ を $k$ 上の非特異な準射影代数的空間の全体とする。代数的空間は本書『0-3 ファイバー空間と有限エタール被覆』の定義(代数的空間(本書の読み))のとおりで、既約とも連結とも限らない。$X\in V$ について、$X$ のサイクルを有理同値で割った群を余次元で次数付けたものを $A(X)=\bigoplus_{i\ge0}A^i(X)$ と書き、交叉積による環とみて $X$ の Chow 環という。
(1) 射 $f\colon X\to Y$($X,Y\in V$)には引き戻し $f^*\colon A(Y)\to A(X)$ が、固有な射には順像 $f_*\colon A(X)\to A(Y)$ が対応する。$X\times Y$ の上の外積を $x\times y$ と書く。
(2) 既約な閉部分集合 $Z\subset X$(特異でもよい)の類を $[Z]$、単位元を $1_X=[X]$、一点の類を $[\mathrm{pt}]$ と書く。
(3) $X$ が既約なら $A^0(X)=\mathbf Z\cdot1_X$ で、$A^0$ 成分の係数を増大 $\varepsilon\colon A(X)\to\mathbf Z$ とする。
(4) $X$ が完備なら、構造射 $X\to\mathrm{pt}$ による順像 $A(X)\to A(\mathrm{pt})=\mathbf Z$ を次数と呼んで $\chi$ と書く。$X$ が純次元 $n$ なら、$\chi$ は $A^n(X)$ の外で $0$ である。
(5) ファイバー空間 $f\colon E\to X$ と $a\in X$ について、ファイバー $F_a=f^{-1}(a)$ の包含を $i_a\colon F_a\to E$ と書き、$i_a^*$ をしばしば $i^*$ と書く。
第 6 巻は、公理を満たす理論の一般の値を $A(X)$、Chow 環を $CH(X)$ と書き分ける。本書が $A(X)$ と書くのは第 6 巻の $CH(X)$ で、本書の $V$ は第 6 巻の $\mathcal V_{\mathrm{qp}}$(非特異な準射影多様体の有限個の非交和と同型な空間の圏)と同じものである。非特異な空間の連結成分は既約だからである。
第 6 巻の第 1〜4 章は、公理を仮定とする命題として書かれている。それを Chow 環に当てるのは、第 6 巻『交叉理論の基本性質』の頁『5-1 Chow 環での公理の成立と最小理論の予想』の主結果「Chow 環は第 1・2 章の公理を満たす」「Chow 環の射影束公式」と、同じ頁の注意「第 1〜4 章の結果の Chow 環での読み」による。Chow 環の構成そのもの(移動補題、任意の射の引き戻し、交叉積)は、第 6 巻でも同じセミナーの別の講演に委ねた引用で、第 6 巻の頁『0-3 サイクル・Chow 環・K 群と対称式』の定理「非特異準射影多様体の Chow 環」にまとめられている。このため、第 6 巻の結果を Chow 環の上の主張として読むと、どれも第 6 巻の札で[条件付き]である(下の「札の読み方」)。
本書が Chow 環について使う性質を、内容ごとに八つの見出しに分けて述べる。各ボックスの後に、第 6 巻での所在と、本書で主に使う頁を書く。命題(胞体分割による生成)を除き、どれも本書では証明せず引用する。
$X,Y\in V$ とする。
(1) $A(X)$ は $1_X$ を単位元とする可換な次数付き環で、引き戻し $f^*$ は任意の射について次数を保つ単位的な環準同型であり、$(g\circ f)^*=f^*\circ g^*$ である。
(2) 順像 $f_*$ は固有射について加法的で、$(g\circ f)_*=g_*\circ f_*$ を満たす。純次元 $m$ の空間から純次元 $n$ の空間への射では、$A^i(X)$ を $A^{i+n-m}(Y)$ へ写す。
(3) 外積は $x\times y=\mathrm{pr}_1^*(x)\,\mathrm{pr}_2^*(y)$ で、引き戻しとも順像とも両立する。
(4) 射影公式:固有な $f\colon X\to Y$ と $z\in A(X)$、$x\in A(Y)$ について $f_*(z\cdot f^*x)=f_*(z)\cdot x$ である。
(5) $X$ が既約なら $A^0(X)=\mathbf Z\cdot1_X$ で、増大 $\varepsilon$ は単位的な環準同型である。
$X\in V$ とする。
(1) 空でない開部分 $U\subset X$ への制限 $A(X)\to A(U)$ は全射である。
(2) 閉部分 $Y\subsetneq X$ が $V$ に属し(すなわち非特異で)、$U=X-Y$ とすると、包含 $i\colon Y\to X$、$j\colon U\to X$ について
$$A(Y)\xrightarrow{\ i_*\ }A(X)\xrightarrow{\ j^*\ }A(U)\longrightarrow0$$
は完全である。
$f\colon X\to S$ を固有射、$g\colon Y\to S$ を射とし($X,Y,S\in V$)、$f\times g\colon X\times Y\to S\times S$ が対角 $\Delta_S$ に横断的であるとする。$X\times_SY=(f\times g)^{-1}(\Delta_S)$ を $X\times Y$ の被約な閉部分とみて、射影の制限を $\varphi\colon X\times_SY\to X$、$\psi\colon X\times_SY\to Y$ とすると、$X\times_SY\in V$、$\psi$ は固有で
$$g^*\circ f_*=\psi_*\circ\varphi^*\colon A(X)\to A(Y)$$
である。
横断性は接空間で定める(第 6 巻『交叉理論の基本性質』の頁『1-2 横断的な底変換と射影公式』の定義「横断性(射と閉部分)」)。$f$ の接写像が各点で全射なら、とくに $f$ がエタールなら、$f\times g$ は任意の $g$ について $\Delta_S$ に横断的である。$f(x)=g(y)=s$ の点で、$d(f\times g)$ の像は $T_sS\oplus0$ を含み、それと対角の接空間 $\{(w,w)\}$ で $T_sS\oplus T_sS$ が張られるからである。本書が使うのは主にこの場合で、有限エタールな $h\colon E'\to E$ とファイバーの包含 $i_a\colon F_a\to E$ について $i_a^*h_*=\psi_*\varphi^*$ となる。
$W\in V$ とし、$S$ はアフィン空間 $k^n$ の空でない開集合に同型とする。このとき $A(W)\to A(W\times S)$、$x\mapsto x\times1_S$ は全射である。とくに $W$ を一点にとれば $A(S)=\mathbf Z\cdot1_S$ で、$A(k^n)=\mathbf Z$ である。
$X\in V$ とし、$X_0\subsetneq X_1\subsetneq\dots\subsetneq X_n=X$ を、どれも $V$ に属する(非特異な)閉部分の増大列とする。各 $i$ で $S_i\subset A(X_i)$ が与えられ、$S_i$ の $X_i-X_{i-1}$ への制限が $A(X_i-X_{i-1})$ を生成する($X_{-1}=\emptyset$)なら、包含による $S_i$ の順像の和集合は $A(X)$ を加法群として生成する。
$X\in V$ を純次元 $N$ とし、$X$ が有限個の互いに交わらない局所閉部分集合 $C_1,\dots,C_r$(胞体)の和で、各 $C_\alpha$ はアフィン空間 $k^{n_\alpha}$ に同型、各 $C_\alpha$ の閉包 $\overline{C_\alpha}$ はいくつかの胞体の和であるとする。このとき、閉包の類 $[\overline{C_\alpha}]\in A^{N-n_\alpha}(X)$($1\le\alpha\le r$)は $A(X)$ を加法群として生成する。
段 1(開部分の列).$m\ge0$ について、次元 $m$ 未満の胞体の和を $X_{< m}$ とする。$\overline{C_\alpha}$ は胞体の和で、$\overline{C_\alpha}-C_\alpha$ に含まれる胞体の次元は $n_\alpha$ より小さいので、$X_{< m}$ は閉集合である。$U_m=X-X_{< m}$(次元 $m$ 以上の胞体の和)は開集合で、$U_0=X$、$U_{\max n_\alpha}$ は次元が最大の胞体の和である。
段 2(各段の閉部分は非特異).$Y_m=U_m-U_{m+1}$ は次元ちょうど $m$ の胞体の和で、$U_m$ の閉部分である。次元 $m$ の胞体 $C$ について、$\overline C\cap U_m=C$ である($\overline C-C$ の胞体は次元 $m$ 未満)。したがって各 $C$ は $U_m$ で閉じていて、$Y_m$ は有限個の互いに交わらない閉部分 $C\cong k^m$ の和、すなわち $k^m$ の有限個の非交和に同型で、非特異かつ準射影的である。$U_m$ も $X$ の開部分なので $V$ に属する。
段 3(各段の Chow 環).上の定理(アフィン空間の開集合との積)により $A(C)=\mathbf Z\cdot1_C$ である。互いに交わらない開かつ閉な部分の和の Chow 環は各部分の Chow 環の直和なので(サイクルの定義から)、$A(Y_m)=\bigoplus_C\mathbf Z\cdot1_C$ で、包含 $Y_m\to U_m$ による $1_C$ の順像は $U_m$ の閉部分 $C$ の類 $[C]=[\overline C\cap U_m]$ である。
段 4(帰納法).$m$ について下向きに、「$A(U_m)$ は、次元 $m$ 以上の胞体 $C$ にわたる $[\overline C\cap U_m]$ で生成される」ことを示す。$m$ が最大の次元なら $U_m=Y_m$ で、段 3 そのものである。$m+1$ で成り立つとする。次元 $m$ の胞体が無ければ $U_m=U_{m+1}$ で示すことは無い。あれば、$U_{m+1}\subset U_m$ は空でない開部分なので、上の定理(完全性)の (2) を $Y_m\subsetneq U_m$ に当てて
$$A(Y_m)\to A(U_m)\to A(U_{m+1})\to0$$
は完全である。開部分への引き戻しはサイクルの制限なので、$[\overline C\cap U_m]$ は $A(U_{m+1})$ の生成元 $[\overline C\cap U_{m+1}]$ へ写る。よって $A(U_m)$ は、これらと $A(Y_m)$ の像、すなわち次元 $m$ の胞体の $[C]=[\overline C\cap U_m]$ で生成される。$m=0$ で $U_0=X$ となり、主張を得る。
証明が使うのは、完全性の (2)(閉部分はアフィン空間の非交和で非特異)、アフィン空間の Chow 環、開部分への引き戻しがサイクルの制限であること(第 6 巻『交叉理論の基本性質』の頁『5-1 Chow 環での公理の成立と最小理論の予想』の Chow 理論のデータ)だけである。上の定理(層別による生成)の非特異な閉部分の列は要らない。原論文の胞体分割の仮定の形(閉部分の列 $X_0\subset X_1\subset\dots\subset X_n=X$ で、各差 $X_i-X_{i-1}$ の連結成分がアフィン空間に同型なもの。胞体の閉包が胞体の和であることは仮定しない)でも、開部分 $X-X_{i-1}$ の列をとれば段 1・段 2 の性質が成り立ち、段 3・段 4 がそのまま通る(本書『5-1 サイクル類写像と胞体分割』の補題「胞体分割の開部分の列」)。旗多様体 $G/B$ の Bruhat 分解(本書『0-2 線形代数群と旗多様体』の定理(Bruhat 分解と旗多様体の胞体)の (1))はこの命題の仮定を満たし、次元 $0$ の胞体がただ一つなので、$A^N(G/B)=\mathbf Z[\mathrm{pt}]$ で $\chi$ はその同型を与える。
$X,E\in V$ とし、$f\colon E\to X$ を、ファイバーがアフィン空間の開集合に同型な、Zariski 位相で局所自明なファイバー空間とする。このとき $f^*\colon A(X)\to A(E)$ は全射である。
$X\in V$、$E$ を $X$ 上の階数 $p$ のベクトル束とする。
(1) 射影束:$f\colon P(E)\to X$ を $E$ のファイバーの直線の空間、$\xi_E=c_1(\mathcal O(1))$ とする。$1,\xi_E,\dots,\xi_E^{p-1}$ は $A(P(E))$ の $A(X)$ 加群としての基底で、$f_*(\xi_E^{\,i})=0$($0\le i\le p-2$)、$f_*(\xi_E^{\,p-1})=1_X$ である。Chern 類 $c_i(E)\in A^i(X)$ は $\sum_{i=0}^pc_i(E)\,\xi_E^{\,p-i}=0$、$c_0(E)=1$ でただ一組定まる。
(2) 完全旗束:$\pi\colon D(E)\to X$ を完全旗束、$0=W_0\subset W_1\subset\dots\subset W_p=\pi^*E$ をその上の標準旗とし、本書の約束で $\xi_i=c_1\bigl((W_i/W_{i-1})^\vee\bigr)$ とおく。$A(D(E))$ は $A(X)$ 代数として $\xi_1,\dots,\xi_p$ で生成され、関係のイデアルは $\sigma_k(\xi_1,\dots,\xi_p)=(-1)^kc_k(E)$($1\le k\le p$、$\sigma_k$ は基本対称式)で生成される。単項式 $\xi_1^{\alpha_1}\cdots\xi_{p-1}^{\alpha_{p-1}}$($0\le\alpha_i\le p-i$)は $A(X)$ 加群としての基底である。
$E$ が自明な束 $X\times k^n$ なら $c(E)=1$ で、関係は $\sigma_k(\xi)=0$($k\ge1$)、すなわち $\prod_i(1+\xi_i)=1$ になる。$X$ を一点にとれば、$k^n$ の旗多様体の Chow 環が得られる。(2) の符号は本書の約束によるもので、第 6 巻の書き方との違いは下の注意(旗の類の符号と第 6 巻の分裂の因子)で述べる。
$X,E\in V$ とし、$f\colon E\to X$ を、ファイバーがアフィン空間 $k^n$ で、変換関数が $k^n$ のアフィン変換で与えられる Zariski 位相で局所自明な束とする。このとき $f^*\colon A(X)\to A(E)$ は全単射である。
$Y\in V$、$L$ を $Y$ 上の直線束、$L^\times$ を $L$ の全空間から零切断の像を除いた空間、$q\colon L^\times\to Y$ を射影とする。このとき $q^*\colon A(Y)\to A(L^\times)$ は全射で、その核は $c_1(L)\,A(Y)$ である。すなわち $A(Y)/c_1(L)A(Y)\cong A(L^\times)$ である。
$X\in V$、$E$ を $X$ 上の階数 $p$ のベクトル束、$P\to X$ を $E$ の枠の束(一般線形群 $\mathrm{GL}(p)$ を構造群とする主束)とする。引き戻し $A(X)\to A(P)$ は全射で、その核は $c_1(E),\dots,c_p(E)$ の生成するイデアルである。
$X\in V$ とする。
(1) 直線束 $L$ に、どの成分の上でも恒等的に零でない有理切断 $s$ の因子の類 $[\operatorname{div}(s)]$ を対応させると、類は $s$ によらず、群の同型 $\operatorname{Pic}(X)\cong A^1(X)$ を得る。この類を $c_1(L)$ と書く。$s$ が正則な切断なら $\operatorname{div}(s)$ は零点の因子で、$s$ が零切断に横断的なら零点集合 $Y$ は非特異で $c_1(L)=[Y]$ である。
(2) Chern 類 $c(E)=\sum_ic_i(E)$ は引き戻しと両立し、直線束では $c(L)=1+c_1(L)$、完全列 $0\to E'\to E\to E''\to0$ では $c(E)=c(E')\,c(E'')$ である。
(3) 固有に交わる既約な閉部分集合 $V_1,V_2\subset X$ について、類の積 $[V_1]\cdot[V_2]$ は、交叉積のサイクル $V_1\cdot V_2$(重複度つき)の類である。
上の見出しの性質を、第 6 巻の頁と主結果の実物の名前に写した表である。各頁は Chow 環の性質を引くとき、本頁のボックスの名前か、この表の第 6 巻の名前で引く。「第 6 巻の札」は第 6 巻の各主結果に付いた札で、公理を仮定とする命題としての判定である。
| 本頁の性質 | 第 6 巻の頁 | 第 6 巻の主結果(実物の名前)と札 |
|---|---|---|
| 環の構造と射影公式 | 1-1 データと公理と積の構造/1-2 横断的な底変換と射影公式/5-1 Chow 環での公理の成立と最小理論の予想 | 「単位元と外積の基本式」「外積と積の関係」「可換環の構造」[完結]、「増大の乗法性」[条件付き]/「非特異な空間での射影公式」[条件付き]/「Chow 環は第 1・2 章の公理を満たす」[条件付き] |
| 完全性 | 3-2 線形同値の理論/4-1 積空間と層別による生成/5-1 | 「線形同値の理論の完全性とホモトピー」[条件付き]/「開部分への制限の全射性」[条件付き]/「有理同値と線形同値の一致」「Chow 環の射影束公式」[条件付き] |
| 横断的な底変換 | 1-2 | 「横断的な底変換公式」[条件付き] |
| アフィン空間の開集合との積 | 4-1 | 「アフィン空間の開集合との積」[条件付き] |
| 層別による生成 | 4-1 | 「層別による生成」[完結]、「射影空間との積」[条件付き] |
| 胞体分割による生成 | (本頁の命題) | 対応する主結果は無い。完全性とアフィン空間の開集合との積から本頁で導いた |
| 局所自明なファイバー空間 | 4-2 局所から大域へと射影束公式 | 「局所自明なファイバー空間」[条件付き。足した仮定:局所自明を Zariski 位相で読む] |
| 射影束公式と旗束の環 | 2-1 直線束の類と射影束の一次独立/2-2 Chern 類と分裂の関係式/2-3 旗束の環/4-2/5-1 | 「基本類の冪の一次独立」[条件付き]/「Chern 類の一意存在」[完結]/「完全旗束の環」[条件付き]、「普遍分解代数の基底」[完結]、「旗束の環」[条件付き]/「射影束公式」[条件付き]/「Chow 環の射影束公式」[条件付き] |
| 構造群がアフィン線形の束、零切断を除いた直線束、主束の環 | 4-3 アフィン束と主束 | 「構造群がアフィン線形の束」「零切断を除いた直線束」「主束の環」[いずれも条件付き] |
| 因子と Chern 類 | 0-3 サイクル・Chow 環・K 群と対称式/2-2/5-1 | 定理「因子と直線束の対応」「非特異準射影多様体の Chow 環」(第 0 章の引用で札なし)/「関手性・正規化・加法性」[条件付き]/「Chow 環は第 1・2 章の公理を満たす」[条件付き] |
表の[完結]は公理だけから出るという判定で、Chow 環に当てた主張としては第 6 巻でも[条件付き]である。Chow 環が公理を満たすこと(第 6 巻の頁『5-1 Chow 環での公理の成立と最小理論の予想』の主結果「Chow 環は第 1・2 章の公理を満たす」)が、同じセミナーの別の講演による Chow 環の構成の引用に依るからで、第 6 巻は同じ頁の注意「第 1〜4 章の結果の Chow 環での読み」でこのことを断っている。第 6 巻の第 1〜4 章の結果を Chow 環に当てた主張の札は、当てた結果の札とこの主結果の札の弱い方になる。
原論文が前の講演を番号で引く箇所を、第 6 巻の頁と主結果に写した表である。前の講演の番号(Proposition 2・6・7、Théorème 1・3 とその系、式 (17)、(I.11)、§3 の注意 3°、末尾の注意)は、本書の公開本文では第 6 巻の名前で引く。
| 原論文の表記 | 印字頁 | 原論文での用途 | 本頁の性質 | 第 6 巻の頁と主結果 | 本書の頁 |
|---|---|---|---|---|---|
| exposés précédents(基礎体) | 5-01 | 基礎体の約束 | — | 第 6 巻の枠組み全体(『0-4 記号と約束』) | 0-5 |
| exposés précédents と公理 (E) | 5-04 | §2 の枠組みの宣言 | 完全性 | 『3-1 完全性とホモトピーの公理』の公理 (E)、『3-2』の主結果「線形同値の理論の完全性とホモトピー」 | 2-1 |
| exposé 4, proposition 2 | 5-05、5-06、5-08 | Proposition 3 の系の式 (1)、Proposition 4 と Proposition 5 の証明 | 横断的な底変換 | 『1-2』の主結果「横断的な底変換公式」 | 2-1、2-2、2-3 |
| exposé 4, proposition 6 | 5-07 | Lemme 3 の証明 | アフィン空間の開集合との積 | 『4-1』の主結果「アフィン空間の開集合との積」 | 2-2 |
| corollaire 1 au théorème 3 de l'exposé 4 | 5-15 | Lemme 6 i の証明 | 局所自明なファイバー空間 | 『4-2』の主結果「局所自明なファイバー空間」 | 4-2 |
| exposé précédent, corollaire 1 au théorème 1 | 5-16 | 一般線形群の $A(G/B)$、可解群と一般線形群は捩れなし | 射影束公式と旗束の環 (2) | 『2-3』の主結果「完全旗束の環」 | 4-1 |
| [4] proposition 7(誤植) | 5-17 | Théorème 1 の系 4 の証明(胞体分割) | 層別による生成、胞体分割による生成 | 『4-1』の主結果「層別による生成」 | 4-3 |
| remarque à la fin de l'exposé précédent | 5-21 | 群の Chow 環の表示(Théorème 2 の後の注意 2°) | 構造群がアフィン線形の束、零切断を除いた直線束、主束の環 | 『4-3』の主結果「構造群がアフィン線形の束」「零切断を除いた直線束」「主束の環」 | 4-6 |
| exposé 4, théorème 1, corollaire 1 | 5-23 | 特殊線形群の旗多様体の $A(D)$ の基底 | 射影束公式と旗束の環 (2) | 『2-3』の主結果「完全旗束の環」「普遍分解代数の基底」 | 6-1 |
| formules (17) de l'exposé 4 | 5-23 | 特殊線形群の旗多様体での次数 $\chi$ | 射影束公式と旗束の環 (1) | 『2-1』の主結果「基本類の冪の一次独立」 | 6-1 |
| (I.11) de l'exposé précédent | 5-24 | 斜交群の旗多様体の $A(D)$ | 射影束公式と旗束の環 (1) | 『4-2』の主結果「射影束公式」、『5-1』の主結果「Chow 環の射影束公式」 | 6-1 |
| formules (17) de l'exposé précédent | 5-25 | 斜交群の旗多様体での次数 $\chi$ | 射影束公式と旗束の環 (1) | 『2-1』の主結果「基本類の冪の一次独立」 | 6-1 |
| proposition 7 de l'exposé précédent | 5-25 | Lemme 9 の略証($B$ 軌道の閉包の類が生成する) | 胞体分割による生成 | 『4-1』の主結果「層別による生成」 | 6-2 |
| théorème 1 de l'exposé précédent | 5-26 | §5 の注意 2°(斜交旗束の Chow 環の類似) | 射影束公式と旗束の環 | 『2-3』の主結果「旗束の環」 | 6-1 |
| exposé 4, paragraphe 3 remarque 3 | 5-26 | 同じ注意 2° の比較 | — | 『2-3』の主結果「等質空間の環の一般の計算と整数係数での障害」[未完結] | 6-1 |
| proposition 7 de l'exposé précédent | 5-28 | 胞体分割をもつ空間での Chow 環と整係数コホモロジーの比較 | 胞体分割による生成 | 『4-1』の主結果「層別による生成」 | 5-1 |
「[4] proposition 7」の [4] は、原論文の文献表では同じセミナーの前年の講演(第 7 巻の原典 Gro56)の番号だが、その講演の命題は Proposition 5 までで、用途(胞体の類が Chow 環を生成する)とも合わない。原論文は同じ事実を印字 5-25 と 5-28 で「前の講演の Proposition 7」と引くので、本書はこれを前の講演の Proposition 7 の誤植と読む(本書『0-5 記号と約束』の誤植の一覧)。印字 5-25・5-28 の二か所と印字 5-17 の用途は、旗多様体の胞体の閉包が特異でありうるので、第 6 巻の「層別による生成」そのものではなく、本頁の命題(胞体分割による生成)で受ける。
印字 5-28 は、サイクル類写像が Chern 類と両立することを「Chern 類の公理的な定義から」とだけ書き、講演の番号を挙げない。前の講演の §3 の Chern 類の定義(第 6 巻『交叉理論の基本性質』の頁『2-2 Chern 類と分裂の関係式』の主結果「Chern 類の特徴づけ(訂正形)」)を指すとも、同じ年の Chern 類の論文(第 3 巻『Chern 類の公理的理論』の原典)を指すとも読め、本書はどちらかを確かめていない。この箇所は本書『5-2 代数的な捩れと位相的な捩れ』で扱う。
第 6 巻から旗束の環を引くときに一つだけ読み替えが要る。旗の各段の商の類の符号である。
第 6 巻は完全旗束 $D(E)$ の分裂の因子の類を、標準旗の各段の商そのものの第一類 $c_1(W_i/W_{i-1})$ で定める(第 6 巻『交叉理論の基本性質』の頁『2-3 旗束の環』の定義「型をもつ旗束と分裂の因子の類」と注意「分裂の因子の符号」)。これを $\xi_i^{\mathrm{VI}}$ と書く。本書は、原論文が斜交群の計算で明記する約束(双対の束に付随する類、印字 5-24)を特殊線形群にも当て、
$$\xi_i=c_1\bigl((W_i/W_{i-1})^\vee\bigr)=-\xi_i^{\mathrm{VI}}$$
とする(本書が足した仮定の一つ。本書『0-5 記号と約束』)。したがって次のようになる。
(1) 射影束 $P(E)=D_{(1,p-1)}(E)$ の上で、本書の $\xi_1$ は第 6 巻の基本類 $\xi_E=c_1(\mathcal O(1))$ に等しく、第 6 巻の $\xi_1^{\mathrm{VI}}$ は $-\xi_E$ である。
(2) 旗束の環の関係式は、第 6 巻の $\sigma_k(\xi^{\mathrm{VI}})=c_k(E)$ が本書では $\sigma_k(\xi)=(-1)^kc_k(E)$ になる。$E$ が自明なら、どちらも $\sigma_k=0$($k\ge1$)で同じである。
(3) 次数の符号が変わる。$f\colon P(E)\to X$ について $f_*(\xi_1^{\,p-1})=1_X$ だが、$f_*\bigl((\xi_1^{\mathrm{VI}})^{p-1}\bigr)=(-1)^{p-1}1_X$ である。$k^n$ の旗多様体では、次数 $N=n(n-1)/2$ の単項式の次数 $\chi$ が $(-1)^N$ 倍だけ違う。
(4) 本書の $\eta_i=\xi_1+\dots+\xi_i=c_1(\det W_i^\vee)$ は Plücker 埋め込みの超平面の類で、正因子の類である。第 6 巻の符号のまま和をとると $k^2$ の旗多様体 $\mathbf P^1$ の上で $\xi_1^{\mathrm{VI}}=c_1(\mathcal O(-1))$ となり、次数は $-1$ で正因子の類でない(本書『6-1 特殊線形群と斜交群の旗多様体』の反例)。
第 6 巻は、前の講演の関係式が第 6 巻の符号で矛盾しないことと、主束の環の計算が分裂の因子の類の符号によらないことを断っている(第 6 巻『交叉理論の基本性質』の頁『0-4 記号と約束』)。本書で旗の類の符号が効くのは、正因子の類であるかどうかと次数 $\chi$ の値を問う計算(本書『6-1 特殊線形群と斜交群の旗多様体』と、それを引く頁)である。特性準同型の符号(指標に付随する直線束の向き)は別の約束で、逆にとっても特性部分環は変わらない(本書『4-1 特性準同型と特性部分環』、本書『0-5 記号と約束』)。
次の二つは Chow 環の枠組みの外の事実である。一つ目は Weil、Chevalley、Samuel の交叉理論の古典的な事実で、第 0 章の古典的前提として引く。二つ目は原論文が Proposition 4 の後の注意で使う代数的同値の理論で、外部入力として引く。
$X$ を純次元 $n$ の非特異な代数的空間とする。
(1) 既約な閉部分集合 $V_1,V_2\subset X$ の交わりの各既約成分 $Z$ は $\dim Z\ge\dim V_1+\dim V_2-n$ を満たす。すべての成分で等号が成り立つとき固有に交わるといい、各成分に正の整数の重複度 $i(Z;V_1,V_2)$ が定まる。交叉積 $V_1\cdot V_2=\sum_Zi(Z;V_1,V_2)[Z]$ はサイクルに双線形に延び、可換かつ結合的である。$Z$ の生成点で $V_1$ と $V_2$ が横断的に交われば重複度は $1$ である。
(2) 非特異な空間の間の射 $f\colon X'\to X$ と $X$ のサイクル $z$ について、逆像の各成分が期待される余次元をもつとき、逆像のサイクル $f^*z$ が重複度つきで定まる。関係するすべての交わりが固有なら、逆像は射の合成と両立し($(f\circ g)^*z=g^*f^*z$)、交叉積とも両立する。有効 Cartier 因子 $D$(局所方程式 $h$)の逆像 $f^*D$ が定まる($f^*h$ が $X'$ のどの成分の上でも恒等的に $0$ でない)とき、$f^*D$ は局所方程式 $f^*h$ の因子 $\operatorname{div}(f^*h)$ である。また、$X'$ が $X$ の非特異な有効 Cartier 因子で $f$ がその包含なら、$X'$ に含まれない既約な閉部分 $W\subset X$ について、$f^*[W]$ は交わりのサイクル $W\cdot X'$(重複度は (3) の長さ)を $X'$ のサイクルとみたものである。とくに、非特異な曲線 $T$ との積 $X\times T$ のファイバー $X\times\{t\}$ に沿った逆像 $i_t^*Z$ は、第 6 巻『交叉理論の基本性質』の頁『0-3 サイクル・Chow 環・K 群と対称式』の定義「有理同値と Chow 群」のファイバーの基本サイクルである。
(3) 局所方程式 $h$ で定まる有効 Cartier 因子 $D$ と、$D$ の台に含まれない既約な閉部分集合 $W$ は固有に交わり、$W\cap D$ の成分 $Z$ での重複度は長さ $\ell(\mathcal O_{W,Z}/h\,\mathcal O_{W,Z})$ である。
(4) 有効 Cartier 因子 $D_1,\dots,D_r$ の交わりの各成分の余次元が $r$ なら、成分 $Z$ での交叉積 $D_1\cdots D_r$ の重複度は、スキームとしての交わり $D_1\cap\dots\cap D_r$ の $Z$ での局所環の長さに等しい(局所方程式は正則局所環の正則列をなし、交わりは Cohen–Macaulay である)。とくに交わりが有限個の点からなるとき、重複度がすべて $1$ であることと、スキームとしての交わりが被約であることは同値である。
(5) 正則局所環のパラメータ系:次元 $n$ の正則局所環 $R$ の元 $h_1,\dots,h_n$ について $R/(h_1,\dots,h_n)$ が長さ有限なら、$h_1,\dots,h_n$ は正則列で、各 $j$ について $(h_1,\dots,h_j)$ の極小素イデアルはどれも高さ $j$ である。
Weil Wei46 は重複度を幾何的に、Samuel Sam55 は局所環の重複度で定めた。現代の扱いは Fulton Ful98 第 7〜8 章にある。(5) は正則局所環が Cohen–Macaulay であることの帰結で、パラメータ系の一部が生成するイデアルは混合をもたない(Sam55)。本書はどの該当箇所も確かめていない。(1) と (3) は第 6 巻『交叉理論の基本性質』の頁『0-3 サイクル・Chow 環・K 群と対称式』の定理「固有な交わりと交叉重複度」にもある。
$X\in V$ について、サイクルを代数的同値で割った群を $B(X)$ と書く。有理同値なサイクルは代数的同値なので、$B(X)$ は $A(X)$ の商である。
(1) 代数的同値は引き戻し・固有射の順像・外積と両立し、$B$ は上の定理(環の構造と射影公式)の (1)〜(4)、定理(完全性)の (1)、定理(横断的な底変換)と同じ形の性質をもつ。
(2) 連結な代数群 $G$ と $F\in V$ と射 $\varphi\colon G\times F\to F'$($F'\in V$)について、$g\in G$ ごとの $\varphi_g=\varphi(g,\cdot)$ による $\varphi_g^*\colon B(F')\to B(F)$ は $g$ に依らない。とくに連結な代数群が $F$ に作用すれば、各元の作用は $B(F)$ の上で恒等写像である。
原論文は Proposition 4 の後の注意(印字 5-07)で、群が線形でない場合に Chow 環を代数的同値の類の群に替えればよいと述べ、根拠を書かない。前の講演の §4 の注意は、線形同値の理論が代数的同値でも展開できると述べる(第 6 巻『交叉理論の基本性質』の頁『3-2 線形同値の理論』の主結果「特異な空間と代数的同値への拡張」[条件付き])。(2) は、連結な代数群を助変数とする族の各ファイバーが互いに代数的同値であることから来る。本書は (1)(2) を Fulton Ful98 第 10 章の形で引き、該当箇所は確かめていない。
本書の状態札の基準は本書『0-5 記号と約束』の「状態札の意味」にある。本頁の性質に関わる点を注意にまとめる。
本書の頁は、枠組みの下で示したことを「Chow 環で無条件に証明した」とは書かない。第 6 巻が第 1〜4 章の公理からの帰結を「Chow 環で証明した」と書かないのと同じ扱いである。
以下は後代の結果の紹介で、本書は該当箇所を確かめていない。
本頁が対応する原論文は Grothendieck Gro58c である。前の講演の番号引用の個々の所在は、上の「前の講演の番号引用と第 6 巻の頁」の表にある。
| 本頁 | 原論文 | 印字頁 |
|---|---|---|
| 基礎体の約束 | §1 冒頭 | 5-01 |
| 原論文の枠組みの宣言 | §2 冒頭 | 5-04 |
| 前の講演の番号引用の表 | §2〜§6 | 5-05〜5-28 |
| 命題(胞体分割による生成) | Théorème 1 の系 4 の証明、Lemme 9 の略証、§6 の胞体分割の命題 | 5-17、5-25、5-28 |
| 注意(旗の類の符号と第 6 巻の分裂の因子) | §5 の斜交群の計算(双対の束に付随する類) | 5-24 |
| 定理(固有な交わりの重複度と長さ) | Lemme 4 の証明、Théorème 2 の証明の (iii)⇒(iv) | 5-10、5-18〜5-20 |
| 定理(代数的同値の理論) | Proposition 4 の後の注意 | 5-07 |
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