連結アフィン群を捩れのない群に埋め込んだとき、その等質空間が有理切断をもてば元の群も捩れなしであること、特別群が捩れなしであること、特性部分環が旗多様体の Chow 環の中で指数有限であることを示す(原論文の定理 1 の系 3・系 4)。指数が有限なので最高次の部分に正の整数が一つ残り、これを捩れ指数と呼ぶ。
前提知識: 特性類, 旗多様体, Chow環, 主束, 有理切断, 特別群, 有限エタール被覆
$k$ は代数的閉体で、標数は任意である。$G$ を連結アフィン群、$B$ をその Borel 部分群、$T\subset B$ を極大トーラス、$N=\dim G/B$ とする。特性準同型 $c_G\colon S(\hat T)\to A(G/B)$、特性部分環 $\operatorname{Im}c_G$、捩れのない群は本書『4-1 特性準同型と特性部分環』のとおりである。$G$ を連結アフィン群 $G'$ の閉連結部分群とするときは、$B$ を含む $G'$ の Borel 部分群 $B'$ をとり、同じ頁の定義(部分群の図式)の射 $i\colon G/B\to G'/B$、$q\colon G'/B\to G'/G$、$p\colon G'/B\to G'/B'$、$\varphi=p\circ i$ を使う。「$a$ で不分岐な次数 $m$ の被覆」は本書の読み(有限な射で、$a$ のある近傍の上でエタールであり、$a$ の上にちょうど $m$ 点をもつもの)である。
本頁の主結果は次の五つである。
前の頁の定理 1 の系 1 により、$G$ を捩れのない群 $G'$(たとえば $\mathrm{GL}(n)$)に埋め込めば、特性部分環は、等質空間の上の束 $q\colon G'/B\to G'/G$ の一つのファイバー $G/B$ への制限の像 $\operatorname{Im}i^*$ に一致する。したがって特性部分環を調べることは、ファイバーへの制限がどれだけ全射から外れるかを調べることで、それは第 2 章の主題である。
原論文の系 3 と系 4 は、第 2 章の二つの結果をこの束に当てたものである。$q$ が局所自明なら、本書『2-1 局所自明な点でのファイバーへの制限』の結果により制限は全射で、$G$ は捩れなしになる(系 3)。$q$ はいつも局所等自明なので、本書『2-2 被覆の次数と余核の消滅』の結果により制限の余核は被覆の次数で消え、特性部分環は指数有限になる(系 4)。系 3 の特別な場合として、特別群は捩れなしである。原論文はこれが特別群の範囲を「limite de façon draconienne」(強く制限する)と書き(印字 5-17)、次の節(本書『6-3 特別群の特徴づけ』)でその逆を示す。
指数が有限であることから、最高次の部分 $A^N(G/B)\cong\mathbf Z$ の中の特性部分環の部分が $d\,\mathbf Z$ という正の整数 $d$ で決まる。これが原論文の Définition 3 の捩れ指数で、次の頁以後の中心の量になる。本書『4-5 捩れ指数の特徴づけ』は、$d$ が主束を自明にする被覆の次数の最大公約数でもあることを示す。
本頁の記号を前の二つの頁から短く繰り返し、等質空間 $G'\to G'/G$ が有理切断をもつときに $q$ が局所自明になることを補題として確かめる。
$G'$ を連結アフィン群、$G$ をその閉連結部分群、$B$ を $G$ の Borel 部分群、$B'$ を $B$ を含む $G'$ の Borel 部分群とする。$i(gB)=gB$、$q(g'B)=g'G$、$p(g'B)=g'B'$、$\varphi=p\circ i$ で、$i$ は $q$ の点 $eG$ の上のファイバーの包含である。$\pi\colon G'\to G'/G$ を商写像とする。連結アフィン群 $H$ は、特性準同型 $c_H\colon S(\hat T_H)\to A(H/B_H)$ が全射であるとき捩れなしであるという(原論文 Définition 2、印字 5-15)。
連結アフィン群は線形群なので(本書『0-2 線形代数群と旗多様体』の定義「代数群・アフィン群・有理指標」)、どの $G$ もある $\mathrm{GL}(n)$ の閉連結部分群として実現でき、$B'$ はいつもとれる(本書『4-1 特性準同型と特性部分環』の定義(部分群の図式)の後の段)。$G/B$、$G'/B$、$G'/B'$、$G'/G$ はどれも非特異な準射影的空間、すなわち $V$ に属する(下の引用する事実 1)。
次の補題は、前の頁の主結果「有理切断と局所自明性の同値」の証明の段 4 と同じ平行移動の議論を、$q$ の自明化の形に書いたものである。第 1 講演の事実は使わない。
上の定義の設定で、$\pi\colon G'\to G'/G$ が空でない開集合の上で正則な切断をもつとする。このとき $G'/G$ の各点 $y$ に、開近傍 $U$ と射 $\sigma\colon U\to G'$ で $\pi\circ\sigma=\mathrm{id}_U$ となるものがあり、
$$\phi\colon U\times(G/B)\to q^{-1}(U),\qquad(u,hB)\mapsto\sigma(u)hB$$
は $U$ の上の同型である。$y=eG$ のときは $\sigma(eG)=e$ ととれ、そのとき $\phi(eG,\cdot)$ は $i$ に等しい。とくに $q$ は、本書『2-1 局所自明な点でのファイバーへの制限』の定義(ファイバー空間と点での局所自明性)の意味で、各点で局所自明である。
段 1(切断の平行移動).$s\colon W\to G'$ を空でない開集合 $W$ の上の切断とする。$g\in G'$ について $s_g(u)=g\,s(g^{-1}u)$ は $gW$ の上の射で、$\pi(s_g(u))=g\,s(g^{-1}u)G=g\,g^{-1}u=u$ だから切断である。$G'$ は $G'/G$ に推移的に作用するので、$gW$($g\in G'$)は $G'/G$ を覆う。ゆえに各点 $y$ に、$y$ を含む開集合 $U$ の上の切断 $\sigma\colon U\to G'$ がある。$y=eG$ のときは $\pi(\sigma(eG))=eG$ より $\sigma(eG)\in G$ なので、$\sigma'(u)=\sigma(u)\sigma(eG)^{-1}$ も切断で(右から $G$ の元を掛けても $\pi$ の値は変わらない)、$\sigma'(eG)=e$ である。
段 2(写像 $\phi$).$U\times G\to G'/B$、$(u,h)\mapsto\sigma(u)hB$ は射で、$h$ に右から $B$ の元を掛けても値は変わらない。Rosenlicht の局所切断(引用する事実 2)により $G\to G/B$ は構造群 $B$ の局所自明な主束で、$U\times G\to U\times(G/B)$ もそうである。本書『1-1 単冪群を構造群とする主束』の補題「部分群による商の束」の 3 により、この射は射 $\phi\colon U\times(G/B)\to G'/B$ を経由する。$h\in G$ なので $q(\phi(u,hB))=\sigma(u)hG=\sigma(u)G=u$ で、$\phi$ の像は $q^{-1}(U)$ に入り、$\phi$ は $U$ への射影と両立する。
段 3(逆写像).$\pi'\colon G'\to G'/B$ を商写像とし、開集合 $\pi'^{-1}(q^{-1}(U))$ の上で $\beta_0(g')=\bigl(g'G,\ \sigma(g'G)^{-1}g'B\bigr)$ とおく。$\sigma(g'G)G=g'G$ なので $\sigma(g'G)^{-1}g'$ は閉部分群 $G$ に入り、$g'\mapsto\sigma(g'G)^{-1}g'$ は $G$ への射である。ゆえに $\beta_0$ は射で、$b\in B$ について $\beta_0(g'b)=\beta_0(g')$ である。引用する事実 2 により $\pi'$ は局所自明な主束で、その開集合 $q^{-1}(U)$ への制限もそうなので、同じ補題の 3 により $\beta_0$ は射 $\beta\colon q^{-1}(U)\to U\times(G/B)$ を経由する。点ごとに $\beta(\phi(u,hB))=(u,\sigma(u)^{-1}\sigma(u)hB)=(u,hB)$、$\phi(\beta(g'B))=\sigma(g'G)\sigma(g'G)^{-1}g'B=g'B$ で、被約な空間の間の射は点での値で決まるので、$\phi$ と $\beta$ は互いに逆である。
段 4(ファイバー).$\sigma(eG)=e$ なら $\phi(eG,hB)=hB=i(hB)$ である。$\phi$ は同型なので、$i$ は $G/B$ から $q^{-1}(eG)$ への同型である。
補題により、有理切断が一つあれば $q$ は $G'/G$ の全体で Zariski 位相の意味で局所自明になり、ファイバーは $G/B$ に同型である。
次の事実は証明せずに引用する。出典は Borel Bor56、Rosenlicht Ros57(候補)、同じセミナーの第 1 講演 Serre Ser58fib、旗多様体の胞体については原論文の文献 [8] の Lazard Laz58、Chow 環の性質については前の講演 Gro58b である。要点は本書『0-2 線形代数群と旗多様体』『0-3 ファイバー空間と有限エタール被覆』『0-4 Chow 環の枠組み』にある。どの文献についても、該当箇所は本頁では確認していない。第 1 講演は本書では開いておらず、節番号は書かない。
証明の材料は前の頁の定理 1 の系 1 と第 2 章の二つの結果で、本頁の仕事は、それらを束 $q$ に当てるための条件(空間が $V$ に属すること、局所自明性、被覆)を確かめることである。
上の定義(部分群の図式と捩れなし(本頁の設定))の設定で、$G'$ が捩れなしで、$\pi\colon G'\to G'/G$ が有理切断をもつとする。このとき $i^*\colon A(G'/B)\to A(G/B)$ は全射で、$G$ は捩れなしである。
段 1($q$ の局所自明性).上の補題(有理切断をもつ等質空間の上の局所自明化)により、$q\colon G'/B\to G'/G$ は点 $eG$ で局所自明で、$eG$ の近傍の自明化 $\phi$ の $eG$ の上の制限が $i$ である。すなわち $i$ は $q$ のファイバー $F_{eG}=q^{-1}(eG)$ の包含 $i_{eG}$ と、同型 $G/B\cong F_{eG}$ の合成である。
段 2(ファイバーへの制限).引用する事実 1 により $G'/G$、$G'/B\in V$ である。本書『2-1 局所自明な点でのファイバーへの制限』の主結果「局所自明な点でのファイバーへの制限の全射性」を $f=q$、$a=eG$ に当てると、$i_{eG}^*$ は全射である。同型による引き戻しは全単射なので、$i^*$ も全射である。
段 3(特性部分環).本書『4-2 特性部分環と引き戻しの像』の主結果「捩れのない群への埋め込みでの一致」により $\operatorname{Im}c_G=\operatorname{Im}i^*=A(G/B)$ で、$G$ は捩れなしである。
原論文の証明(印字 5-16〜5-17)は、$i$ が局所自明な束のファイバーの包含であることを一言で述べ、Proposition 3 と系 1 を引く。$q$ が局所自明であることは、前の頁の Lemme 6 の ii の同値(有理切断があれば $G'\to G'/G$ は局所自明)から来る。本書はその同値のうち平行移動の部分だけを上の補題に書き直して使ったので、第 1 講演の事実はこの定理に入らない。
特別群は、局所等自明な主束がすべて局所自明になる群であった。$\mathrm{GL}(n)$ の中の等質空間は局所等自明な主束なので、特別な $G$ ではそれが局所自明になり、上の定理が当てはまる。
特別なアフィン代数群 $G$ は連結で、捩れなしである。
段 1(連結性).引用する事実 3 の (c) により、特別群は連結である。したがって $G$ は連結アフィン群で、捩れなしであるかを問える。
段 2(埋め込み).$G$ は線形群なので、$G'=\mathrm{GL}(n)$ の閉連結部分群として実現し、$B$ を含む $G'$ の Borel 部分群 $B'$ をとる。引用する事実 3 の (a) により $\pi\colon G'\to G'/G$ は構造群 $G$ の局所等自明な主束で、$G$ は特別なので局所自明である。本書『0-3 ファイバー空間と有限エタール被覆』の命題「主束の切断と自明性」の (2) により、$\pi$ は有理切断をもつ。
段 3(判定).本書『4-1 特性準同型と特性部分環』の主結果「可解群と一般線形群は捩れなし」により $G'$ は捩れなしなので、上の定理(有理切断をもつ等質空間による捩れなしの判定)により $G$ は捩れなしである。
原論文は括弧書きで「donc nécessairement connexe」(したがって必ず連結)と添える(印字 5-17)。特別群が連結であることは第 1 講演の結果で、原論文は Théorème 3 の証明の冒頭でも同じ事実を引く(本書『6-3 特別群の特徴づけ』)。有限群 $\mathbf Z/2$ が特別でないことは、第 1 講演に依らず本書『0-3 ファイバー空間と有限エタール被覆』の例「局所等自明だが局所自明でない主束」で直接に見た。
有理切断が無いとき、$q$ は局所等自明でしかない。その場合でも、ファイバーへの制限の余核は被覆の次数で消える。
$G$ を連結アフィン群、$B$ をその Borel 部分群とする。このとき $A(G/B)/\operatorname{Im}c_G$ は有限群である。より詳しく、$G$ を $G'=\mathrm{GL}(n)$ の閉連結部分群として実現し、$q\colon G'/B\to G'/G$ の点 $eG$ での局所等自明性を与える被覆の次数を $m$ とすると、$m\,A(G/B)\subset\operatorname{Im}c_G$ である。
段 1(埋め込み).$G\subset G'=\mathrm{GL}(n)$ と $B'\supset B$ を上の定理(特別群は捩れなし)の段 2 と同じくとる。本書『4-2 特性部分環と引き戻しの像』の主結果「捩れのない群への埋め込みでの一致」と本書『4-1 特性準同型と特性部分環』の主結果「可解群と一般線形群は捩れなし」により、$\operatorname{Im}c_G=\operatorname{Im}i^*$ である。
段 2(局所等自明性と被覆).本書『4-2 特性部分環と引き戻しの像』の主結果「有理切断と局所自明性の同値」の前半(引用する事実 3 の (a)(b))により、$q$ は構造群 $G$、ファイバー $G/B$ の局所等自明なファイバー空間である。したがって $a=eG$ に開近傍 $U$ と、$a$ で不分岐な次数 $m$ の被覆 $g\colon U'\to U$ で、$q^{-1}(U)$ が $U'$ の上で自明になるものがある。本書の読みにより、$g$ は有限で、$a$ のある近傍の上でエタールであり、$g^{-1}(a)$ はちょうど $m$ 点である。被覆の定義(本書『0-3 ファイバー空間と有限エタール被覆』の定義(点で不分岐な被覆(本書の読み)))により、$m$ は正の整数である。
段 3(余核の消滅).$U$ は $G'/G$ の、$E_U=q^{-1}(U)$ は $G'/B$ の開部分なので、引用する事実 1 により $U$、$E_U$、$G/B\in V$ である。$G$ は連結線形群である。本書『2-2 被覆の次数と余核の消滅』の主結果「被覆の次数による余核の消滅」を $E_U\to U$、点 $a$、被覆 $g$ に当てると、ファイバー $F_a=q^{-1}(eG)$ とその包含 $i_a\colon F_a\to E_U$ について $m\,A(F_a)\subset i_a^*A(E_U)$ である。ここで $i\colon G/B\to F_a$ は同型である。実際、段 2 の自明化を与える持ち上げ(本書『2-2 被覆の次数と余核の消滅』の定義(構造群をもつファイバー空間と局所等自明性(本書の読み))の (1) の $q$)を $\tilde q\colon U'\to G'$、その自明化を $\Phi_{\tilde q}$ と書き(束の写像は $\alpha(g',hB)=g'hB$)、$\Phi_{\tilde q}$ を $g^{-1}(a)$ の点 $a'$($m\ge1$ なのである)の上に制限すると、$hB\mapsto\alpha(\tilde q(a'),hB)$ は $G/B$ から $F_a$ への同型である。$\pi(\tilde q(a'))=g(a')=eG$ なので $\gamma=\tilde q(a')\in G$ で、$\alpha(\gamma,hB)=\gamma hB=i(\gamma hB)$ である。すなわち $i$ はこの同型と $\gamma^{-1}$ の左移動の合成で、同型である。ゆえに、ファイバーの包含 $i_U=i_a\circ i\colon G/B\to E_U$ について $m\,A(G/B)\subset\operatorname{Im}i_U^*$ である。$i$ は $i_U$ と開部分の包含 $j\colon E_U\to G'/B$ の合成で、引用する事実 7 により $j^*$ は全射なので、$\operatorname{Im}i^*=\operatorname{Im}i_U^*$ である。ゆえに $m\,A(G/B)\subset\operatorname{Im}c_G$ である。
段 4(有限生成).引用する事実 4 により $G/B\cong\bar G/\bar B$ は純次元 $N$ の非特異な射影的空間で、引用する事実 5 の胞体分割をもつ。引用する事実 6 により、$A(G/B)$ は有限個の胞体の閉包の類で生成される。
段 5(有限性).$A(G/B)/\operatorname{Im}c_G$ は有限生成のアーベル群で、段 3 により $m$ で消えるので有限である。
原論文の証明(印字 5-17)は、余核が捩れ群であることを Proposition 4 から、有限であることを $A(G/B)$ の有限生成性から出す、という二段で、本書の段 3 と段 4 に当たる。
段 2 と段 3 では、原論文の「不分岐な被覆」を本書の読み($a$ の近傍の上の有限エタール被覆)で使った(本書『0-5 記号と約束』の「本書が足した仮定」)。本書『2-2 被覆の次数と余核の消滅』の反例「反例:被覆の平坦性を外すと余核の消滅は破れる」「反例:被覆の有限性を外すと余核の消滅は破れる」のとおり、平坦性や有限性を外した読みでは Proposition 4 が偽になり、段 3 は成り立たない。この定理の札に足した仮定を書くのは、局所等自明性を与える被覆から次数 $m$ を取り出して Proposition 4 に渡すのが本頁の証明だからである。
原論文の系 4 の証明(印字 5-17)は、旗多様体の胞体の類が Chow 環を生成することの根拠を「([8] et [4] proposition 7)」と書く。[8] は胞体分割の講演 Laz58 である。[4] は原論文の文献表では前年の講演(第 7 巻の原典 Gro56)の番号だが、その講演の命題は Proposition 5 までで、用途とも合わない。原論文は同じ事実を印字 5-25 と 5-28 で「前の講演の Proposition 7」と引くので、本書はこれを前の講演(第 6 巻の原典)の Proposition 7 の誤植と読む(本書『0-4 Chow 環の枠組み』の「前の講演の番号引用と第 6 巻の頁」)。前の講演の Proposition 7 は閉部分がどれも非特異な列についての主張(第 6 巻の頁『4-1 積空間と層別による生成』の主結果「層別による生成」)で、胞体の閉包は一般に特異なので、本書は段 4 で本書『0-4 Chow 環の枠組み』の命題「胞体分割による生成」を使った。
指数が有限であることから、最高次の部分に一つの正の整数が残る。
$G$ を連結アフィン群、$B$ をその Borel 部分群、$N=\dim G/B$ とする。
(1) $A^N(G/B)=\mathbf Z[\mathrm{pt}]$ で、次数 $\chi\colon A^N(G/B)\to\mathbf Z$ は同型である。
(2) 整数 $d>0$ がただ一つあって、$\operatorname{Im}c_G\cap A^N(G/B)=c_G\bigl(S^N(\hat T)\bigr)=d\,\mathbf Z[\mathrm{pt}]$ である。
段 1(最高次の生成元).上の定理(特性部分環の指数の有限性)の証明の段 4 のとおり、$A(G/B)$ は胞体の閉包の類で生成され、次元 $n_\alpha$ の胞体の閉包の類は $A^{N-n_\alpha}(G/B)$ に入る。$A(G/B)=\bigoplus_iA^i(G/B)$ で生成元は斉次なので、$A^N(G/B)$ は次元 $0$ の胞体の閉包の類で生成される。引用する事実 5 により次元 $0$ の胞体は一点だけなので、$A^N(G/B)$ は $[\mathrm{pt}]$ で生成される。
段 2(次数).$\iota\colon\mathrm{pt}\to G/B$ を点の包含とすると $[\mathrm{pt}]=\iota_*(1)$ で、引用する事実 7 により $\chi([\mathrm{pt}])=(\text{構造射}\circ\iota)_*(1)=1$ である。ゆえに $\chi$ は生成元 $[\mathrm{pt}]$ を $1$ に送り、$n[\mathrm{pt}]\mapsto n$ は全射かつ単射である。これで (1) が成り立つ。
段 3(特性部分環の最高次).本書『4-1 特性準同型と特性部分環』の主結果「特性準同型の環準同型への延長」により $c_G$ は次数付き環準同型なので、$\operatorname{Im}c_G=\bigoplus_ic_G(S^i(\hat T))$ で、$\operatorname{Im}c_G\cap A^N(G/B)=c_G(S^N(\hat T))$ である。これは $A^N(G/B)\cong\mathbf Z$ の部分群なので、ただ一つの $d\ge0$ について $d\,\mathbf Z[\mathrm{pt}]$ に等しい。
段 4($d>0$).$A(G/B)/\operatorname{Im}c_G$ は次数ごとの商 $A^i(G/B)/c_G(S^i(\hat T))$ の直和で、その $N$ 次の部分は $\mathbf Z/d\mathbf Z$ である。上の定理(特性部分環の指数の有限性)によりこれは有限なので、$d\ne0$ である。
段 1〜3 は、Chow 環の枠組みの性質と第 0 章の古典的前提だけで閉じる。第 1 講演の事実は、段 4 で使う指数の有限性を通してだけ入る。
上の定理(最高次の部分と捩れ指数の存在)の整数 $d>0$ を、連結アフィン群 $G$ の捩れ指数(原論文の indice de torsion)という。素数 $\ell$ が $d$ を割るとき、$G$ は $\ell$ 捩れをもつという(原論文 Définition 3、印字 5-17)。そのような $\ell$ を本書では $G$ の捩れ素数と呼ぶ。
捩れ指数は $B$ の取り方によらない。本書『4-1 特性準同型と特性部分環』の注意「Borel 部分群の取り方」のとおり、共役な Borel 部分群の間の同型 $\bar u\colon G/B\to G/B'$ は特性部分環を特性部分環へ写し、同型なので次数 $\chi$ も保つからである。$G$ が捩れなしなら $[\mathrm{pt}]\in\operatorname{Im}c_G$ なので $d=1$ である。逆に $d=1$ なら捩れなしであることは、本書『4-5 捩れ指数の特徴づけ』の主結果「捩れのない群と捩れ指数 1」で示す。
原論文は系 4 の直後に、位相への応用を一文で予告する。本書はこれを主結果として立て、閉じられないことを記録する。
原論文は系 4 の証明の後(印字 5-17)で、系 4 が Borel の「théorème de transgression」(超越定理)の代わりになり、コンパクト Lie 群の分類空間のコホモロジーの古典的な結果の大部分を得るのに使える、と述べ、この応用には立ち入らないと断る。本書はこの主張を[未完結]とする。第一に、どの古典的な結果を指すのかが原論文に書かれていない。第二に、系 4 から位相の結果へ移るには、Chow 環から整係数コホモロジーへのサイクル類写像と、分類空間のコホモロジーについての事実が要るが、原論文はそれを §6 で初めて仮定として導入する(本書『5-1 サイクル類写像と胞体分割』『5-2 代数的な捩れと位相的な捩れ』)。本書は、系 4 から出る精確な主張の形も、その証明も立てられない。原論文にも本書にも、外部入力を使った証明も無い。
捩れ指数と位相の捩れの関係のうち、原論文が §6 でサイクル類写像を仮定して述べる部分(捩れ素数が分類空間の整係数コホモロジーの捩れ素数と一致すること)は、本書『5-2 代数的な捩れと位相的な捩れ』で扱う。
前の頁までに計算した特性部分環から、捩れ指数を読み取る。一つ目の例は捩れ指数が $2$ の群で、主結果の対偶がそのまま使える。二つ目は捩れ指数が $1$ の群、最後の反例は主結果 1 の仮定を外した場合である。
$G=\mathrm{PGL}(2)$ とする。$G/B\cong\mathbf P^1$ で $N=1$、$A(\mathbf P^1)=\mathbf Z\cdot1\oplus\mathbf Zh$($h$ は点の類)である。本書『4-1 特性準同型と特性部分環』の主結果「特性部分環は群に依存する」と例「特殊線形群と射影線形群の特性部分環」により、$\hat T=\mathbf Z\alpha$($\alpha$ は根)、$c_G(\alpha)=-2h$ で、$\operatorname{Im}c_G=\mathbf Z\cdot1\oplus2\mathbf Zh$ である。したがって $\operatorname{Im}c_G\cap A^1(\mathbf P^1)=2\mathbf Zh$ で、捩れ指数は $d=2$、捩れ素数は $2$ だけである。ここから三つのことが読み取れる。
(a) $G$ は捩れなしでないので、上の定理(特別群は捩れなし)の対偶により、$\mathrm{PGL}(2)$ は特別でない。すなわち、構造群 $\mathrm{PGL}(2)$ の局所等自明な主束で局所自明でないものがある。標数が $2$ でないときの具体的な束は、本書『2-2 被覆の次数と余核の消滅』の例「$\mathrm{PGL}(2)$ の束としての円錐曲線の族」にあり、そこではファイバーへの制限が全射でなく、束はどの点でも局所自明でない。
(b) $\mathrm{PGL}(2)$ を $\mathrm{GL}(n)$ の閉連結部分群として実現すると、上の定理(有理切断をもつ等質空間による捩れなしの判定)の対偶により、$\mathrm{GL}(n)\to\mathrm{GL}(n)/\mathrm{PGL}(2)$ は有理切断をもたない(下の反例)。
(c) 上の定理(特性部分環の指数の有限性)の証明により、点 $eG$ での局所等自明性を与える被覆の次数 $m$ は $m\,h\in2\mathbf Zh$ を満たし、偶数である。
$G$ が捩れなしなら $[\mathrm{pt}]\in\operatorname{Im}c_G$ なので $d=1$ である。本書『4-1 特性準同型と特性部分環』の主結果「可解群と一般線形群は捩れなし」により、連結可解アフィン群と $\mathrm{GL}(n)$ の捩れ指数は $1$ である。可解群では $G/B$ は一点で $N=0$、$A^0(\mathrm{pt})=\mathbf Z$ である。
$\mathrm{SL}(n)$ では、主結果 1 がそのまま使える。$G'=\mathrm{GL}(n)$、$G=\mathrm{SL}(n)$ とし、$\pi\colon G'\to G'/G$ を商写像とする。$\det\colon G'\to\mathbf G_m$ は $G$ の剰余類の上で一定なので、商の普遍性(引用する事実 1)により射 $\delta\colon G'/G\to\mathbf G_m$ を経由する。$\tau(y)=\mathrm{diag}(y,1,\dots,1)$ とおくと $\delta\circ\pi\circ\tau=\mathrm{id}$ であり、$x=gG$ について $g^{-1}\tau(\det g)$ は行列式 $1$ なので $\pi(\tau(\delta(x)))=gG=x$ である。ゆえに $s=\tau\circ\delta$ は $\pi$ の大域切断で、とくに有理切断である。上の定理(有理切断をもつ等質空間による捩れなしの判定)により $\mathrm{SL}(n)$ は捩れなしで、$d=1$ である。$n=2$ では、上の例と同じ $\mathbf P^1$ の上で $c_{\mathrm{SL}(2)}(\omega)=-h$($\omega$ は $\mathrm{diag}(t,t^{-1})\mapsto t$)で、$\operatorname{Im}c_G\cap A^1=\mathbf Zh$ である。これは本書『4-2 特性部分環と引き戻しの像』の例「特殊線形群を一般線形群に埋め込む」と同じ結論を、$q$ の局所自明性から出したものである。
上の定理(有理切断をもつ等質空間による捩れなしの判定)から、$\pi\colon G'\to G'/G$ が有理切断をもつという仮定を外す。$G=\mathrm{PGL}(2)$ を $G'=\mathrm{GL}(n)$ の閉連結部分群として実現する(連結アフィン群は線形群なので、そのような $n$ がある)。$G'$ は捩れなしだが、上の例(射影線形群の捩れ指数は 2)により $G$ は捩れなしでない。したがって結論は破れ、$\pi$ は有理切断をもたない。さらに $q\colon G'/B\to G'/G$ はどの点でも局所自明でない。点 $eG$ で局所自明なら、本書『2-1 局所自明な点でのファイバーへの制限』の主結果「局所自明な点でのファイバーへの制限の全射性」により $i_{eG}^*$ は全射で、上の定理(特性部分環の指数の有限性)の証明の段 3 のとおり $i\colon G/B\to q^{-1}(eG)$ は同型(本書『2-2 被覆の次数と余核の消滅』の定義の自明化 $\Phi_{\tilde q}$ を点に制限した同型と左移動の合成)なので $i^*$ も全射となり、本書『4-2 特性部分環と引き戻しの像』の主結果「捩れのない群への埋め込みでの一致」により $G$ は捩れなしになるからであり、ほかの点へは $G'$ の左移動($q$ と両立する同型)で移せるからである。一方 $q$ は局所等自明で、上の例の (c) により、それを与える被覆の次数は偶数である。
以下は後代の結果の紹介である(時点を明記する。本書は文献を開いて確かめていない)。
本頁が対応する原論文は Torsion homologique et sections rationnelles Gro58c の §4 の、Théorème 1 の系 3 から Définition 3 までである。
| 本頁 | 原論文 | 印字頁 |
|---|---|---|
| 定義(部分群の図式と捩れなし(本頁の設定)) | 式 (4.3)、Définition 2 | 5-14、5-15 |
| 補題(有理切断をもつ等質空間の上の局所自明化) | Lemme 6 の ii の証明の平行移動の段(本書の書き直し) | 5-15 |
| 定理(有理切断をもつ等質空間による捩れなしの判定) | Théorème 1 の系 3 とその証明 | 5-16〜5-17 |
| 定理(特別群は捩れなし) | 系 3 の後の段落 | 5-17 |
| 定理(特性部分環の指数の有限性)、注意(被覆の読みと系 4 の証明)、注意(印字の読み(系 4 の証明)) | Théorème 1 の系 4 とその証明 | 5-17 |
| 注意(超越定理の代用) | 系 4 の証明の後の注意 | 5-17 |
| 定理(最高次の部分と捩れ指数の存在) | 系 4 の後の段落($\chi$ の全単射性と $d\,\mathbf Z$) | 5-17 |
| 定義(捩れ指数と $\ell$ 捩れ) | Définition 3 | 5-17 |
| 例(射影線形群の捩れ指数は 2)、例(特殊線形群と一般線形群の捩れ指数は 1)、反例(有理切断の仮定を外すと捩れなしとは限らない) | 原論文には無い(本書の検算。一般線形群と可解群は Définition 2 の後の例) | —、5-16 |
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