連結アフィン群 $G$ を連結アフィン群 $G'$ の閉連結部分群とするとき、$G$ の特性部分環が $G'$ の旗多様体からの引き戻しの像に一致し、$G'$ が捩れなしなら $G'/B$ の中のファイバーへの制限の像にも一致することを示す(原論文の定理 1 とその系 1)。そこから、特性部分環を主束のファイバーへの制限の像として特徴づける。準備として、二つの Borel 部分群の間の商と、等質空間 $G'/G$ の上の束の性質(原論文の Lemme 6)を調べる。
前提知識: Borel部分群, 旗多様体, 主束, 局所自明なファイバー空間, 有理切断, Chow環, 特性類
$k$ は代数的閉体で、標数は任意である。$G'$ を連結アフィン群、$G$ をその閉連結部分群、$B$ を $G$ の Borel 部分群、$B'$ を $B$ を含む $G'$ の Borel 部分群とし、本書『4-1 特性準同型と特性部分環』の定義(部分群の図式)の射
$$i\colon G/B\to G'/B,\quad q\colon G'/B\to G'/G,\quad p\colon G'/B\to G'/B',\quad\varphi=p\circ i$$
を使う($p$ は射の名で、標数ではない)。特性準同型 $c_G\colon S(\hat B)\to A(G/B)$ とその像(特性部分環)、捩れのない群は同じ頁のとおりである。
本頁の主結果は次の五つである。
前の頁で、特性部分環は旗多様体 $G/B$ の Chow 環の中の、指標の直線束の類で生成される部分環として定まった。そこでは $\mathrm{SL}(2)$ と $\mathrm{PGL}(2)$ を個別に計算した。原論文の定理 1 は、特性部分環を $G$ を含む大きな群から計算する方法を与える。$G$ を $G'$ に埋め込むと、$G$ の指標は $G'$ の指標の制限で尽くされ、$G$ の特性部分環は $G'$ の特性部分環の引き戻しになる。$G'$ として捩れのない $\mathrm{GL}(n)$ をとれば、特性部分環はただの引き戻しの像である。
この言い換えは §2 の問題と直接につながる。$i\colon G/B\to G'/B$ は、ファイバー空間 $q\colon G'/B\to G'/G$ の一つのファイバーの包含である。本書『2-1 局所自明な点でのファイバーへの制限』の主結果「局所自明な点でのファイバーへの制限の全射性」により、$q$ が局所自明なら $i^*$ は全射で、したがって $G$ も捩れなしになる(本書『4-3 捩れのない群と特性部分環の指数』の主結果「有理切断をもつ等質空間による捩れなしの判定」)。$q$ が局所自明かどうかは、Lemme 6 の ii により $G'\to G'/G$ が有理切断をもつかどうかで決まる。こうして特性部分環の指数は、等質空間 $G'/G$ の上の主束が局所自明になることへの障害を測る量になる。系 2 はこの見方を、埋め込みによらない形に言い直す。特性部分環は、どの主束についてもファイバーの外へ延びる類の全体である。
原論文の Lemme 6 は性格の違う三つの主張を並べる。i は Chow 環の引き戻しの全射性、iii は指標の制限の全射性、ii は主束の局所自明性で、ii の最初の主張だけが第 1 講演の事実に依る。本書は i・iii と ii を二つの主結果に分けた。
記号は前の頁の図式のとおりである。前の頁の定義を短く繰り返し、本頁で使う空間がどれも Chow 環の定義される範囲に入ることを確かめる。
$G'$ を連結アフィン群、$G$ をその閉連結部分群、$B$ を $G$ の Borel 部分群、$B'$ を $B$ を含む $G'$ の Borel 部分群とする。$i(gB)=gB$、$q(g'B)=g'G$、$p(g'B)=g'B'$、$\varphi=p\circ i$ で、$i$ は $q$ の点 $eG$ の上のファイバーの包含である。$T$ を $B$ の極大トーラス、$T'$ を $T$ を含む $B'$ の極大トーラスとする。制限 $\hat B'\to\hat B$ を $\mathrm{res}$ と書き、$S(\mathrm{res})\colon S(\hat B')\to S(\hat B)$ をそれが誘導する環準同型とする。
$T'$ はいつもとれる。$T$ は連結線形群 $B'$ のトーラスなので、$B'$ のある極大トーラスに含まれる(下の引用する事実 2)。この $T'$ は本頁だけの記号で、本書『1-2 可解群の等質空間』の部分トーラスの記号とは役割が違う。$B'$ の存在は前の頁の定義(部分群の図式)の後で確かめた。
$G/B$、$G'/B$、$G'/B'$、$G'/G$ は代数的空間で、はじめの三つは非特異な準射影的空間、すなわち $V$ に属する(下の引用する事実 3)。$G/B$ と $G'/B'$ は完備でもある。四つの射はどれも、剰余類の上で一定な射が商を経由することから定まる。
次の事実は証明せずに引用する。出典は Borel Bor56、Rosenlicht Ros57(候補)、同じセミナーの第 1 講演 Serre Ser58fib、Chow 環の性質については前の講演 Gro58b である。要点は本書『0-2 線形代数群と旗多様体』の定理「Rosenlicht の局所切断」「線形群の構造」「等質空間の基本」、本書『0-3 ファイバー空間と有限エタール被覆』の定理「局所等自明性の基本事実」、本書『0-4 Chow 環の枠組み』の定理「局所自明なファイバー空間」にある。どの文献についても、該当箇所は本頁では確認していない。第 1 講演は本書では開いておらず、節番号は書かない。
定理 1 の証明は、式 (4.2) を包含 $G\subset G'$ に当てたものに、二つの全射性($p^*$ と指標の制限)を合わせるだけである。その二つの全射性を先に示す。
上の定義(部分群の図式の記号)の設定で、次が成り立つ。
(1) $G'/B'$ の開集合 $U$ の上の $G'\to G'/B'$ の局所切断 $s\colon U\to G'$ について、$U\times(B'/B)\to p^{-1}(U)$、$(x,b'B)\mapsto s(x)b'B$ は $U$ の上の同型である。したがって $p$ はファイバー $B'/B$ の Zariski 位相で局所自明なファイバー空間である。
(2) $B'/B$ はアフィン空間の開集合に同型で、$p^*\colon A(G'/B')\to A(G'/B)$ は全射である。
(3) 制限 $\mathrm{res}\colon\hat B'\to\hat B$ は全射で、したがって $S(\mathrm{res})\colon S(\hat B')\to S(\hat B)$ も全射である。
段 1(局所自明化の写像).$B'$ は線形群、$B$ はその連結可解閉部分群なので、引用する事実 1 により $B'\to B'/B$ は局所自明で、$U\times B'\to U\times(B'/B)$ も局所自明な主束である。$U\times B'\to G'/B$、$(x,b')\mapsto s(x)b'B$ は射で $B$ の右作用で一定なので、本書『1-1 単冪群を構造群とする主束』の補題「部分群による商の束」の 3 により射 $\alpha\colon U\times(B'/B)\to G'/B$ を経由する。$p(s(x)b'B)=s(x)B'=x$ なので $\alpha$ の像は $p^{-1}(U)$ に入り、$\alpha$ は $U$ への射影と両立する。
段 2(逆写像).$\pi^{-1}(p^{-1}(U))\subset G'$($\pi\colon G'\to G'/B$)の上で $\beta_0(g')=\bigl(x,\,s(x)^{-1}g'B\bigr)$、$x=g'B'$ とおく。$s(x)B'=x=g'B'$ なので $s(x)^{-1}g'\in B'$ で、$\beta_0$ は射の合成で与えられる射である。$b\in B$ について $\beta_0(g'b)=\beta_0(g')$ なので、$G'\to G'/B$ の局所自明性(引用する事実 1)と同じ補題の 3 により、射 $\beta\colon p^{-1}(U)\to U\times(B'/B)$ を経由する。$\beta(\alpha(x,b'B))=(x,s(x)^{-1}s(x)b'B)=(x,b'B)$、$\alpha(\beta(g'B))=s(x)s(x)^{-1}g'B=g'B$ なので、$\alpha$ と $\beta$ は互いに逆である。引用する事実 1 により $G'/B'$ はこのような $U$ で覆われるので、(1) が成り立つ。
段 3(ファイバーと全射性).$B'$ は連結可解アフィン群、$B$ はその閉連結部分群なので、本書『1-2 可解群の等質空間』の主結果「可解群の等質空間はアフィン空間とトーラスの積」を $R=B'$、$R'=B$ に当てると、$B'/B$ はアフィン空間の開集合に同型である。上の定義の後で見たとおり $G'/B$、$G'/B'\in V$ なので、引用する事実 5 により $p^*$ は全射である。
段 4(指標の制限).本書『0-2 線形代数群と旗多様体』の命題「単冪群の有理指標と Borel 部分群の指標」の (2) により、制限 $\hat B\to\hat T$ と $\hat B'\to\hat T'$ は同型である。制限は合成と両立するので、$\hat B'\to\hat B\to\hat T$ は $\hat B'\to\hat T'\to\hat T$ に等しい。したがって $\hat T'\to\hat T$ が全射であることを示せばよい。$T$ はトーラス $T'$ の連結閉部分群なので、本書『1-2 可解群の等質空間』の補題「部分トーラスの補トーラス」を(その補題の $T$ を $T'$、$T'$ を $T$ として)当てると、トーラス $T''\subset T'$ があって積 $T''\times T\to T'$ は代数群の同型である。$\psi\in\hat T$ に対し、この同型の逆と第 2 成分への射影と $\psi$ の合成 $\tilde\psi$ は $T'$ の有理指標で、$T$ への制限は $\psi$ である。ゆえに $\hat T'\to\hat T$ は全射である。
段 5(対称代数).$S(\hat B)$ は次数 $1$ の元で環として生成され、$S(\mathrm{res})$ は環準同型で次数 $1$ の上で全射なので、全射である。
(1)(2) が原論文の Lemme 6 の i、(3) が iii である。ファイバー $B'/B$ がアフィン空間の開集合であることは本書『1-2 可解群の等質空間』の結果で、その頁の予告どおり、ここで Chow 環の引き戻しの全射性に変わる。段 4 は $G'$ の側の極大トーラスを $T$ に合わせてとることが要点で、$T'$ の指標を $T$ に制限しても何も失われない。
原論文は i の証明(印字 5-15)で、ファイバー $B'/B$ がアフィン空間の開集合であることを「corollaire 1 à la proposition 2」から、$p^*$ の全射性を前の講演の「corollaire 1 au théorème 3」から引く。前者の Proposition 2 の系には番号が付かないので、Proposition 2 の系(本書『1-2 可解群の等質空間』の主結果「可解群の等質空間はアフィン空間とトーラスの積」)と読む。同じ引き方は Lemme 2 の証明にもある(本書『2-2 被覆の次数と余核の消滅』)。後者は第 6 巻の頁『4-2 局所から大域へと射影束公式』の主結果「局所自明なファイバー空間」である(本書『0-4 Chow 環の枠組み』の対応表)。iii の証明は、極大トーラスへの帰着の後、$\hat T'\to\hat T$ の全射性を文献 [4](Gro56、第 7 巻の原典)の定理 2 の系 3 に含まれるとする。その系は系 3 c)(第 7 巻『アフィン代数群と可換アフィン代数群』の頁『3-2 指標群との双対性』の主結果「閉部分群と指標群の部分群の対応」の 5、すなわち $\hat D/A^\circ\cong\hat A$)で、第 7 巻の基準では[条件付き]である。本書はそれを経ず、本書『1-2 可解群の等質空間』の補題「部分トーラスの補トーラス」(第 7 巻の頁『3-1 トーラスの関数環と閉部分群』の主結果「トーラスの閉部分群の構造」から導かれる)で示した。部分群がトーラスなので補トーラスがあり、指標は補トーラスの上で自明に延ばせる。結論はどちらの経路でも同じである。
次の主結果は Chow 環を使わない。$q$ が局所自明かどうかを、$G'\to G'/G$ の有理切断で判定する。
上の定義(部分群の図式の記号)の設定で、次が成り立つ。
(1) $q\colon G'/B\to G'/G$ は、構造群 $G$ の主束 $G'\to G'/G$ に付随するファイバー $G/B$ の束 $G'\times^G(G/B)$ に同型で、局所等自明である。
(2) 次の三つは同値である。(a) $q$ は有理切断をもつ。(b) $G'\to G'/G$ は有理切断をもつ。(c) $G'\to G'/G$ は局所自明である。すなわち $G'/G$ の各点に開近傍 $U$ があって、$U\times G\to G'|_U$、$(y,h)\mapsto\sigma(y)h$ が同型になる局所切断 $\sigma\colon U\to G'$ がある。
段 1(付随束).引用する事実 4 の (a) により $G'\to G'/G$ は構造群 $G$ の局所等自明な主束で、(b) により付随束 $G'\times^G(G/B)=G'/B$ は存在して $G'/G$ の上で局所等自明である。ここで (b) の $P/B$ は、$P=G'$ の $B$ による商として、商の普遍性(引用する事実 3)により等質空間 $G'/B$ と同一視され、そのとき射影は $g'B\mapsto g'G$、すなわち $q$ である。これで (1) が成り立つ。以下の段は (1) を使わない。
段 2((b) ⇒ (a)).$s\colon V\to G'$ を $G'/G$ の空でない開集合 $V$ の上の $G'\to G'/G$ の切断とすると、$y\mapsto s(y)B$ は射で、$q(s(y)B)=s(y)G=y$ なので $q$ の $V$ の上の切断である。
段 3((a) ⇒ (b)).$\sigma\colon U\to G'/B$ を空でない開集合 $U$ の上の $q$ の切断とする。引用する事実 1 により $G'\to G'/B$ は局所切断 $\tau\colon W\to G'$ をもつ。$g\in G'$ について $z\mapsto g\,\tau(g^{-1}z)$ は $gW$ の上の局所切断で、$G'$ は $G'/B$ に推移的に作用するので $gW$ は $G'/B$ を覆う。そこで $W\cap\sigma(U)\neq\emptyset$ としてよい。$U_1=\sigma^{-1}(W)$ は $U$ の空でない開集合で、$y\in U_1$ について $\tau(\sigma(y))\in G'$ の $G'/B$ での像は $\sigma(y)$、$G'/G$ での像は $q(\sigma(y))=y$ である。ゆえに $\tau\circ\sigma$ は $U_1$ の上の $G'\to G'/G$ の切断である。
段 4((b) ⇒ (c)).$s\colon V\to G'$ を空でない開集合 $V$ の上の切断とする。$g\in G'$ について $s_g(y)=g\,s(g^{-1}y)$ は $gV$ の上の切断で(左からの掛け算は右からの $G$ の作用と可換)、$gV$ は $G'/G$ を覆う。切断 $\sigma$ をもつ開集合 $U$ の上で、$U\times G\to G'|_U$、$(y,h)\mapsto\sigma(y)h$ は射で、逆写像 $g'\mapsto\bigl(g'G,\,\sigma(g'G)^{-1}g'\bigr)$ も射である($\sigma(g'G)^{-1}g'$ は閉部分群 $G$ に入る)。ゆえに (c) が成り立つ。
段 5((c) ⇒ (b)).空でない開集合の上の局所切断はそのまま有理切断である(本書『0-3 ファイバー空間と有限エタール被覆』の命題「主束の切断と自明性」の (2) と同じ)。
段 2〜5 は Rosenlicht の局所切断と、$G'$ の平行移動(本書『0-2 線形代数群と旗多様体』の定理「等質空間の基本」の推移的な作用による)しか使わない。第 1 講演の事実は (1) の、$q$ が付随束として局所等自明であるという部分にだけ入る。原論文の証明は (a)(b) の同値を構造群の簡約として述べる。
原論文は ii の証明(印字 5-15)で、$q$ が開集合 $U$ の上で切断をもつことは主束 $G'|_U$ の構造群を $G$ から $B$ に簡約できることだと言い、Rosenlicht の定理により、そのとき主束は $U$ の上で局所自明になり、平行移動で $G'/G$ 全体で局所自明になる、と述べる。簡約された構造群 $B$ の主束 $Q\subset G'|_U$ は、$\sigma(U)$ の $G'\to G'/B$ による逆像であり、それが局所切断をもつ理由は $G'\to G'/B$ が局所切断をもつこと(Rosenlicht の定理を $B\subset G'$ に当てたもの)である。上の証明の段 3 は、この局所切断を直接に使って簡約の言葉を省いたものである。
二つの全射性がそろったので、式 (4.2) から定理 1 が出る。
上の定義(部分群の図式の記号)の設定で、
$$\operatorname{Im}c_G=\varphi^*(\operatorname{Im}c_{G'})\subset\operatorname{Im}\varphi^*=\operatorname{Im}i^*$$
である。言い換えると、$A(G/B)$ の特性部分環は $A(G'/B')$ の特性部分環の $\varphi^*$ による像で、$i^*$ と $\varphi^*$ の像は同じである。
段 1(式 (4.2) の当てはめ).包含 $u\colon G\to G'$ は $u(B)=B\subset B'$ を満たし、誘導される射 $\bar u\colon G/B\to G'/B'$ は $gB\mapsto gB'$、すなわち $\varphi$ である。${}^tu$ は制限 $\mathrm{res}$ なので、本書『4-1 特性準同型と特性部分環』の主結果「準同型と特性準同型の両立」により $\varphi^*\circ c_{G'}=c_G\circ S(\mathrm{res})$ である。
段 2(第 1 の等式).上の定理(Borel 部分群の間の引き戻しと指標の制限)の (3) により $S(\mathrm{res})$ は全射なので、$\operatorname{Im}c_G=c_G\bigl(S(\mathrm{res})(S(\hat B'))\bigr)=\varphi^*\bigl(c_{G'}(S(\hat B'))\bigr)=\varphi^*(\operatorname{Im}c_{G'})$ である。
段 3(包含と第 2 の等式).$\operatorname{Im}c_{G'}\subset A(G'/B')$ なので $\varphi^*(\operatorname{Im}c_{G'})\subset\operatorname{Im}\varphi^*$ である。$\varphi=p\circ i$ なので $\varphi^*=i^*\circ p^*$(本書『0-4 Chow 環の枠組み』の定理「環の構造と射影公式」の (1))で、上の定理(Borel 部分群の間の引き戻しと指標の制限)の (2) により $p^*$ は全射だから、$\operatorname{Im}\varphi^*=i^*(A(G'/B))=\operatorname{Im}i^*$ である。
段 2 は $u$ が単射であることを使っていない。指標の転置が全射でありさえすれば、有理準同型 $u$ について $\operatorname{Im}c_G=\bar u^*(\operatorname{Im}c_{G'})$ が同じ証明で成り立つ(下の例「射影線形群を三次の一般線形群で表す」)。段 3 の $\operatorname{Im}\varphi^*=\operatorname{Im}i^*$ は、$i$ が $q$ のファイバーの包含であることを通して、特性部分環をファイバーへの制限と結びつける。
原論文の Théorème 1 の証明(印字 5-15)は、第 1 の等式を「(4.1) の可換性」と Lemme 6 の iii から出るとする。(4.1) は特性準同型そのものの式で、可換な図式は (4.2) なので、(4.2) と読む。
上の定義(部分群の図式の記号)の設定で $G'$ が捩れなしなら、$\operatorname{Im}c_G=\operatorname{Im}i^*=\operatorname{Im}\varphi^*$ である。とくに $G'=\mathrm{GL}(n)$ にとれる。
$G'$ が捩れなしなら $\operatorname{Im}c_{G'}=A(G'/B')$ なので、上の定理(特性部分環と制限の像)の $\varphi^*(\operatorname{Im}c_{G'})$ は $\operatorname{Im}\varphi^*$ に等しく、主張の等式を得る。$\mathrm{GL}(n)$ は本書『4-1 特性準同型と特性部分環』の主結果「可解群と一般線形群は捩れなし」により捩れなしである。
連結アフィン群はいつも線形群なので(本書『0-2 線形代数群と旗多様体』の定義「代数群・アフィン群・有理指標」)、ある $\mathrm{GL}(n)$ の閉連結部分群として実現できる。この系により、どの連結アフィン群の特性部分環も、$\mathrm{GL}(n)$ の旗多様体からの引き戻しの像として、あるいは $\mathrm{GL}(n)/B$ の中のファイバー $G/B$ への制限の像として計算できる。原論文は系 1 を「par exemple $G'=\mathrm{Gl}(n)$」と添えて述べるだけで、証明を書かない。
系 1 は埋め込みを一つ選んで特性部分環を与える。系 2 は、すべての主束を並べて、埋め込みに依らない形で同じものを与える。主束 $P\to X$ と $a\in P$ について、$j_a\colon G/B\to P/B$ を $j_a(gB)=(ag)B$ で定める。$j_a$ は $a$ を通るファイバーの包含である。
$G$ を連結アフィン群、$B$ をその Borel 部分群とする。構造群 $G$ の局所等自明な主束 $P\to X$ で $P/B=P\times^G(G/B)$ が非特異準射影($P/B\in V$)であるもの(本書が足した仮定)と $a\in P$ の組の全体を $\mathcal P$ とする。$\zeta\in A(G/B)$ について、次の二つは同値である。
(1) $\zeta\in\operatorname{Im}c_G$。
(2) $\mathcal P$ のすべての組 $(P,a)$ について $\zeta\in\operatorname{Im}\bigl(j_a^*\colon A(P/B)\to A(G/B)\bigr)$。
さらに、(1) ⇒ (2) の証明は各組ごとに $\operatorname{Im}c_G\subset\operatorname{Im}j_a^*$ を与え、(2) ⇒ (1) には $\mathcal P$ の組を一つ($G\subset\mathrm{GL}(n)$ についての $P=\mathrm{GL}(n)$、$a=e$)使うだけでよい。
段 1($P/B$ と $j_a$).引用する事実 4 の (b) により $P/B$ は存在し、$P\to P/B$ は構造群 $B$ の局所等自明な主束である。$G\to P$、$g\mapsto ag$ と $P\to P/B$ の合成は $B$ の右作用で一定なので、引用する事実 1 と本書『1-1 単冪群を構造群とする主束』の補題「部分群による商の束」の 3 により、射 $j_a\colon G/B\to P/B$ を経由する。
段 2(主束の特性準同型).$\chi\in\hat B$ について、$B$ が $k$ に $\chi$ で作用する表現に付随する $P$ の束 $L^P_\chi=P\times^Bk_\chi\to P/B$($(pb,\chi(b)^{-1}v)$ と $(p,v)$ を同一視したもの)は、引用する事実 4 の (b)(c) により存在して局所自明な直線束である。$\hat B=\hat T$ は自由加群なので(本書『4-1 特性準同型と特性部分環』の主結果「特性準同型の環準同型への延長」)、基底 $e_1,\dots,e_{r_0}$($r_0=\dim T$)をとり、$S(\hat B)$ を多項式環 $\mathbf Z[e_1,\dots,e_{r_0}]$ とみて、環準同型 $c_P\colon S(\hat B)\to A(P/B)$ を $c_P(e_l)=c_1(L^P_{e_l})$ で定める。
段 3(ファイバーへの制限).$G\times k\to P\times k$、$(g,v)\mapsto(ag,v)$ は $B$ の右作用と両立するので、付随直線束の射 $L_\chi\to L^P_\chi$、$[g,v]\mapsto[ag,v]$ を $j_a$ の上に定める。$G\to G/B$ の局所切断 $s\colon U\to G$ の座標では $(x,v)\mapsto[a\,s(x),v]$ と書け、$U\times k\to P\times k\to L^P_\chi$ の合成なので射である。各ファイバーでは、$[g,v]$ を $[ag,v]$ に送る線形な同型である。本書『4-1 特性準同型と特性部分環』の補題「直線束の射の比較」により $L_\chi\cong j_a^*L^P_\chi$ で、$j_a^*c_1(L^P_\chi)=c_1(L_\chi)=c_G(\chi)$ である。$j_a^*\circ c_P$ と $c_G$ はどちらも環準同型で、生成元 $e_l$ の上で一致するので等しい。ゆえに $\operatorname{Im}c_G=j_a^*(\operatorname{Im}c_P)\subset\operatorname{Im}j_a^*$ で、(1) ⇒ (2) が成り立つ。
段 4((2) ⇒ (1)).$G$ を $G'=\mathrm{GL}(n)$ の閉連結部分群として実現し(上の定理(捩れのない群への埋め込みでの一致)の後の段落)、$B'\supset B$ を $G'$ の Borel 部分群とする。引用する事実 4 の (a) により $P=G'\to X=G'/G$ は構造群 $G$ の局所等自明な主束で、上の定理(有理切断と局所自明性の同値)の証明の段 1 により $P/B=G'/B$ である。上の定義の後で見たとおり $G'/B\in V$ なので、$(G',e)\in\mathcal P$ である。$j_e(gB)=gB$ は $i$ に等しい。(2) により $\zeta\in\operatorname{Im}i^*$ で、上の定理(捩れのない群への埋め込みでの一致)により $\operatorname{Im}i^*=\operatorname{Im}c_G$ である。
必要性の段 3 は、特性部分環の元がどの主束の $P/B$ にも延びることを、$P$ の上で指標の直線束を作り直して示している。原論文は $c_P$ を「主束 $P$ の特性準同型」と呼んでよいと添え、$S(\hat B)$ から $A(P/B)$ と $A(G/B)$ への三角形の図式の可換性を「関手性から明らか」とする(印字 5-16)。本書は $c_P$ を基底の上で定めたので、$\chi$ が基底の元でないときに $c_P(\chi)=c_1(L^P_\chi)$ となることは使っていない。十分性は $\mathrm{GL}(n)$ の中の等質空間という一つの主束で足りるので、主束の族を狭めても(たとえば $P$ 自身も非特異準射影なものに限っても)、その族が $\mathrm{GL}(n)\to\mathrm{GL}(n)/G$ を含む限り特徴づけは変わらない。
原論文の系 2(印字 5-16)は、主束 $P$ とその底 $X$ に条件を付けずに $A(P/B)$ を書く。Chow 環 $A(P/B)$ が定義されるのは $P/B$ が非特異準射影のときだけなので、本書は $P/B\in V$ を足した仮定として置いた(本書『0-5 記号と約束』の「本書が足した仮定」)。原論文の Théorème 2 の (i)(印字 5-18)は「$P$ は準射影的かつ非特異」と $P$ の側に条件を書く。$P$ の条件から $P/B$ の準射影性が出るかどうかは、本書は確かめていない。上の証明の十分性で使う $P=\mathrm{GL}(n)$ は、$P$ も $P/B$ も非特異準射影なので、どちらの読みでも系 2 の結論は同じである。同じ仮定は本書『4-5 捩れ指数の特徴づけ』の主結果「捩れ指数の五つの特徴づけ(訂正形)」の (i) でも使う。
原論文の系 2 の証明(印字 5-16)の三角形の図式は、下端を $A(G/B')$ と打つ。$c_G$ の値域でもあり $j^*$ の行き先でもあるのは $A(G/B)$ なので、$A(G/B)$ と読む。
一つ目の例は閉部分群の包含で、主結果がそのまま当てはまる。二つ目の例は単射とは限らない表現で、定理 1 の第 1 の等式の証明が単射性を使わないことを、前の頁の $\mathrm{PGL}(2)$ の計算と突き合わせて確かめる。
$G'=\mathrm{GL}(n)$、$B'$ を上三角行列の群、$G=\mathrm{SL}(n)$、$B=B'\cap\mathrm{SL}(n)$ とする。$B$ は $\mathrm{SL}(n)$ の Borel 部分群で、$\varphi\colon G/B\to G'/B'$ は完全旗の多様体 $D(k^n)$ の同型である(本書『0-2 線形代数群と旗多様体』の例「一般線形群と特殊線形群の旗多様体」)。したがって $\operatorname{Im}\varphi^*=A(G/B)$ で、上の定理(捩れのない群への埋め込みでの一致)により $\operatorname{Im}c_{\mathrm{SL}(n)}=A(G/B)$、すなわち $\mathrm{SL}(n)$ は捩れなしである。指標の制限も直接に見える。$\mathrm{SL}(n)$ の対角行列の群 $T$ は $(t_1,\dots,t_{n-1})$ を座標に $k^{*(n-1)}$ に同型で、その指標は $t_1,\dots,t_{n-1}$ の単項式、すなわち $\varepsilon_1,\dots,\varepsilon_{n-1}$ の制限の積である。$n=2$ では、$\omega=\varepsilon_1|_T$ について $c_{\mathrm{SL}(2)}(\omega)=\varphi^*c_{\mathrm{GL}(2)}(\varepsilon_1)=\varphi^*c_1(W_1)=c_1(\mathcal O(-1))=-h$ で、本書『4-1 特性準同型と特性部分環』の主結果「特性部分環は群に依存する」の (2) と一致する。この場合 $G'/G\cong k^*$(行列式)で、$y\mapsto\mathrm{diag}(y,1,\dots,1)$ が $G'\to G'/G$ の大域切断を与えるので、上の定理(有理切断と局所自明性の同値)により $q$ は局所自明である。
$V=k^2$ の二次の対称積 $\mathrm{Sym}^2V$ に基底 $e_1^2,\ e_1e_2,\ e_2^2$ をとり、$g\in\mathrm{GL}(2)$ に $\rho(g)=\mathrm{Sym}^2(g)\cdot\det(g)^{-1}\in\mathrm{GL}(3)$ を対応させる。スカラー $\lambda$ では $\mathrm{Sym}^2(\lambda)=\lambda^2=\det(\lambda)$ なので、$\rho$ は有理準同型 $u\colon\mathrm{PGL}(2)\to\mathrm{GL}(3)$ を定める(標数は任意)。$b=\begin{pmatrix}a&c\\0&d\end{pmatrix}$ は $e_1^2\mapsto a^2e_1^2$、$e_1e_2\mapsto ac\,e_1^2+ad\,e_1e_2$ と写すので、$\rho(b)$ はこの基底で上三角で、対角成分は $a/d$、$1$、$d/a$ である。したがって $u(B)\subset B'$(上三角行列の群)で、${}^tu(\varepsilon_1)=\alpha$、${}^tu(\varepsilon_2)=0$、${}^tu(\varepsilon_3)=-\alpha$ となり、${}^tu$ は $\hat T=\mathbf Z\alpha$ の上へ全射である。上の定理(特性部分環と制限の像)の段 1・段 2 は単射性を使わないので、$\operatorname{Im}c_{\mathrm{PGL}(2)}=\bar u^*(\operatorname{Im}c_{\mathrm{GL}(3)})=\operatorname{Im}\bar u^*$ である(二つ目の等号は $\mathrm{GL}(3)$ が捩れなし、すなわち $\operatorname{Im}c_{\mathrm{GL}(3)}=A(D(k^3))$ であること(本書『4-1 特性準同型と特性部分環』の主結果「可解群と一般線形群は捩れなし」)による)。
この像を直接に計算する。$\bar u\colon\mathbf P^1\to D(k^3)$ は $[w]$($w=ge_1$)を旗 $kw^2\subset w\cdot V$ に送る。標準旗を引き戻すと、$\bar u^*W_1$ は $w^2$ の張る直線で、$w\otimes w\mapsto w^2$ により $\mathcal O(-2)$ に同型、$\bar u^*W_2=w\cdot V$ は $w\otimes x\mapsto wx$ により $\mathcal O(-1)\otimes V$ に同型である($w\ne0$ なら $x\mapsto wx$ は単射)。$c_1(\bar u^*W_1)=-2h$、$c_1(\bar u^*W_2)=-2h$ なので、Chern 類の乗法性により $\bar u^*\xi_1=2h$、$\bar u^*\xi_2=-c_1(\bar u^*W_2/\bar u^*W_1)=0$、$\bar u^*\xi_3=-c_1(V/\bar u^*W_2)=-2h$ である。$A(D(k^3))$ は $\xi_1,\xi_2,\xi_3$ で生成されるので、$\operatorname{Im}\bar u^*=\mathbf Z\cdot1\oplus2\mathbf Zh$ となり、本書『4-1 特性準同型と特性部分環』の主結果「特性部分環は群に依存する」の (3) の特性部分環と一致する。指標の側からも、$\bar u^*c_{\mathrm{GL}(3)}(\varepsilon_1)=c_{\mathrm{PGL}(2)}(\alpha)=-2h=-\bar u^*\xi_1$ と、同じ頁の主結果「可解群と一般線形群は捩れなし」の $c_{\mathrm{GL}(3)}(\varepsilon_1)=-\xi_1$ が合う。本書はこの $u$ が閉部分群としての埋め込みであるかを確かめていないので、$G'/G$ とファイバーの包含 $i$ についてはここでは述べない。
以下は後代の結果の紹介である(時点を明記する。本書は文献を開いて確かめていない)。
本頁が対応する原論文は Torsion homologique et sections rationnelles Gro58c の §4 の、Lemme 6 から Théorème 1 の系 2 までである。
| 本頁 | 原論文 | 印字頁 |
|---|---|---|
| 定義(部分群の図式の記号) | 式 (4.3) | 5-14 |
| 定理(Borel 部分群の間の引き戻しと指標の制限) | Lemme 6 の i・iii とその証明 | 5-14〜5-15 |
| 注意(原論文の Lemme 6 の証明の引用と本書の経路) | Lemme 6 の i・iii の証明 | 5-15 |
| 定理(有理切断と局所自明性の同値) | Lemme 6 の ii とその証明 | 5-14〜5-15 |
| 注意(原論文の Lemme 6 の ii の証明の道) | Lemme 6 の ii の証明 | 5-15 |
| 定理(特性部分環と制限の像)、注意(印字の読み(Théorème 1 の証明)) | Théorème 1 とその証明 | 5-15 |
| 定理(捩れのない群への埋め込みでの一致) | Théorème 1 の系 1 | 5-16 |
| 定理(主束の制限による特性部分環の特徴づけ)、注意(原論文の系 2 の空間の条件)、注意(印字の読み(系 2)) | Théorème 1 の系 2 とその証明 | 5-16 |
| 例(特殊線形群を一般線形群に埋め込む) | 系 1 の「par exemple」の $\mathrm{Gl}(n)$ | 5-16 |
| 例(射影線形群を三次の一般線形群で表す) | 原論文には無い(本書の検算) | — |
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