作用群つきスキームの上の作用つき局所自由加群に、射影束公式を使って混合エタールコホモロジーに値をとる Chern 類を定め、逆像との両立・正規化・加法性の三つの性質を示す。加法性は、部分束の射影束に台をもつコホモロジーを使って、旗束やホモトピー不変性を経由せずに直接証明する。三つの性質が Chern 類を特徴づけること、双対・外冪・テンソル積の公式、作用群を忘れる写像との両立もこの頁で導く。
$(X,G)$ は作用群つきスキーム、$n$ は許容される整数、$\mathbb E$ は $(X,G)$ 上の階数 $r$ の作用つき局所自由加群とする(本書『2-1 作用群つきスキームの混合エタールコホモロジー』)。本書の規約により $P=P(\mathbb E)=\operatorname{Proj}\operatorname{Sym}(\mathbb E^\vee)$($\mathbb E$ のファイバーの直線の空間)、$f\colon P\to X$ は射影、$\xi=\xi_{\mathbb E}=\partial\,cl(\mathcal O_P(1))\in H^2(P,G;\mu_n)$ は基本類である(本書『2-2 射影束公式』)。Chern 類 $c_i(\mathbb E)\in H^{2i}(X,G;\mu_n^{\otimes i})$ は関係式 $\sum_{i=0}^rf^*c_i(\mathbb E)\,\xi^{r-i}=0$、$c_0=1$ で定める。
本頁の主結果は次の六つである。
射影束の基本類の冪の関係式から Chern類 を読み取る方法は Grothendieck 1958 Gro58 のもので、そこでは射影束公式が公理 A 1 として置かれた(参考書『Chern 類の公理的理論』の頁『2-1 公理 A 1〜A 4 と補題 2』『3-1 Chern 類の定義と一意性』)。原論文 Gro68d は、エタールコホモロジーについてこの公理を定理として証明し(本書『2-2 射影束公式』)、その直後の (1.13) で同じ関係式により $c_i(\mathbb E)\in H^{2i}(X_{\text{ét}},\mu_n^{\otimes i})$ を定める(印字 p. 236)。係数が $\mathbf Z$ でなく 1 の冪根の捩れ $\mu_n^{\otimes i}$ であり、次数 $2i$ ごとに係数の層が変わることが、1958 年の理論との見かけの違いである。
原論文の小節 1.5 は、Chern 類が逆像との両立・正規化・加法性の三つの特徴的な性質をもつと述べ、自明でないのは加法性の検証だけだと括弧書きで断る(印字 p. 237)。その証明は Grothendieck 1958 の文献 [17] と、作用群が単位群の場合を扱う文献 [25](後の SGA5)と「同じように進める」とだけ書かれている。小節 2.3(印字 pp. 247–248)は同じ三つの性質を作用群つきで述べ、それらが Chern 類を特徴づけること、外冪やテンソル積の公式が「よく知られた仕方で」形式的に従うことを述べて §2 を閉じる。
ここに一つ注意が要る。第 3 巻が扱った 1958 年の理論では、加法性の証明(参考書『Chern 類の公理的理論』の頁『3-2 存在の証明』)は射影束公式 A 1 のほかに、横断的な切断の零点の基本類についての公理 A 2〜A 4 を使う。エタールコホモロジーの側でこれらに当たる性質(サイクル類とその押し出し)は、原論文の範囲では用意されていない。本頁は加法性を、部分束の射影束に台をもつコホモロジーで直接証明し、A 2〜A 4 に当たるものを使わない。そのうえで、第 3 巻の一意性の議論と公式集の議論が A 2〜A 4 を使っていないことを確かめて、それらを引く。
Chern 類の値は、次数ごとに係数の違う混合コホモロジーの直和にある。これが可換環をなすことを先に確かめておく。
$(X,G)$ と許容される整数 $n$ に対し、
$$A_n(X,G):=\prod_{i\ge0}H^{2i}\bigl(X,G;\mu_n^{\otimes i}\bigr)$$
とおく。積は、cup 積 $H^{2i}(X,G;\mu_n^{\otimes i})\times H^{2j}(X,G;\mu_n^{\otimes j})\to H^{2i+2j}(X,G;\mu_n^{\otimes(i+j)})$ と標準同型 $\mu_n^{\otimes i}\otimes\mu_n^{\otimes j}=\mu_n^{\otimes(i+j)}$ により、$(ab)_m:=\sum_{i+j=m}a_i\cup b_j$ と定める(各次数で有限和である)。作用群つきスキームの射 $h$ は環準同型 $h^*\colon A_n(X,G)\to A_n(X',G')$ を定める。次数 $2i$ の成分を $A_n^i(X,G)$ と書く。
直積をとるのは、階数が一定でない束の全 Chern 類を一つの元として扱うためである。階数が一定なら全 Chern 類は有限個の成分しかもたない。
$A_n(X,G)$ は単位元 $1\in H^0(X,G;\mathbf Z/n)$ をもつ可換環であり、$h^*$ は環準同型である。
段 1(結合性と引き戻し).cup 積は結合的で、引き戻しと可換である(本書『2-2 射影束公式』の引用する事実 3、下の引用する事実 3)。
段 2(係数の入れ替え).cup 積は次数つき可換で、$a\in H^p(A)$、$b\in H^q(B)$ について $a\cup b=(-1)^{pq}\,\tau(b\cup a)$ である。ここで $\tau\colon B\otimes A\to A\otimes B$ は因子の入れ替えである(引用する事実 3)。$p=2i$、$q=2j$ なら符号は $+1$ である。$A=\mu_n^{\otimes i}$、$B=\mu_n^{\otimes j}$ のとき、$\tau$ と標準同型を合わせた写像は $\mu_n^{\otimes(i+j)}$ の因子の置換 $\sigma$ である。$\mu_n$ はエタール局所的に生成元 $e$ をもつ $\mathbf Z/n$ と同型なので(本書『2-1 作用群つきスキームの混合エタールコホモロジー』の定理「Kummer 列の完全性と 1 の冪根の層」)、局所的な切断 $x_k=a_ke$ について $x_1\otimes\cdots\otimes x_N=(a_1\cdots a_N)\,e^{\otimes N}$ となり、これは因子の置換で変わらない。よって $\sigma$ は恒等写像で、$a\cup b=b\cup a$ である。
これで、係数の捩れを気にせずに Chern 類どうしを掛けたり並べ替えたりできる。次に Chern 類そのものを定める。定義は本書『2-2 射影束公式』の末尾で予告したものである。
$\mathbb E$ を $(X,G)$ 上の階数 $r\ge1$ の作用つき局所自由加群とする。本書『2-2 射影束公式』の定理「射影束公式」を $F=\mu_n^{\otimes r}$、次数 $2r$ に当てると、$\xi^r\in H^{2r}(P,G;\mu_n^{\otimes r})$ は
$$\xi^r=\sum_{j=0}^{r-1}f^*(a_j)\cup\xi^j,\qquad a_j\in H^{2r-2j}\bigl(X,G;\mu_n^{\otimes(r-j)}\bigr)$$
とただ一通りに書ける。$c_0(\mathbb E):=1$、$c_i(\mathbb E):=-a_{r-i}$($1\le i\le r$)、$c_i(\mathbb E):=0$($i>r$)とおき、$c_i(\mathbb E)\in H^{2i}(X,G;\mu_n^{\otimes i})$ を $\mathbb E$ の第 $i$ Chern 類という。すなわち $c_i(\mathbb E)$ は
$$\sum_{i=0}^{r}f^*c_i(\mathbb E)\cup\xi^{r-i}=0,\qquad c_0(\mathbb E)=1$$
を満たすただ一組の係数である。$c(\mathbb E):=\sum_{i\ge0}c_i(\mathbb E)\in A_n(X,G)$ を全 Chern 類という。階数 $0$ の加群には $c(0):=1$ とおく。係数 $\mu_n$ を明示するときは $c_i^{(n)}(\mathbb E)$ と書く。
係数の一意性は、関係式を満たす係数がほかにあれば差が射影束公式の零元の表示を与えることから従う。以下の証明はすべて、この一意性を「両辺が同じ関係式を満たす」形で使う。
階数 1 では $P(\mathbb L)=X$、$\mathcal O(-1)=\mathbb L$、$\xi_{\mathbb L}=-c_1(\mathbb L)$ であった(本書『2-2 射影束公式』の例「階数 1 の束」)。関係式 $\xi_{\mathbb L}+c_1=0$ はこの頁の正規化をそのまま与える。高次の性質を扱うには、束を線束の部分商に分ける装置が要る。
$\mathbb E$ を $(X,G)$ 上の階数 $r\ge1$ の作用つき局所自由加群とする。$X_1:=P(\mathbb E)$、$q_1=f\colon X_1\to X$、$\mathbb M_1:=\mathcal O_{X_1}(-1)\subset q_1^*\mathbb E$、$\mathbb E_1:=q_1^*\mathbb E/\mathbb M_1$(階数 $r-1$)とおき、以下 $X_{k+1}:=P(\mathbb E_k)$、$\mathbb M_{k+1}:=\mathcal O_{X_{k+1}}(-1)$、$\mathbb E_{k+1}:=\mathbb E_k/\mathbb M_{k+1}$($X_{k+1}$ に引き戻して考える)と繰り返す。$D(\mathbb E):=X_{r-1}$($r=1$ なら $D(\mathbb E):=X$)、$q\colon D(\mathbb E)\to X$ を合成とする。各段の構成は関手的なので、$G$ は各 $X_k$ に作用し、$\mathbb M_k$、$\mathbb E_k$ は作用つきであり、$q\colon(D(\mathbb E),G)\to(X,G)$ は群を動かさない作用群つきスキームの射である。$q^*\mathbb E$ の作用つき部分加群の増大列 $0=\mathbb W_0\subset\mathbb W_1\subset\cdots\subset\mathbb W_r=q^*\mathbb E$ で、各 $\mathbb W_k/\mathbb W_{k-1}$ が作用つき可逆層 $\mathbb M_k$(の引き戻し。$\mathbb M_r:=\mathbb E_{r-1}$)になるものが標準的に定まる。これを $\mathbb E$ の旗束と、その上の完全な旗という。
作用のない場合の構成は参考書『Chern 類の公理的理論』の頁『1-2 旗多様体と完全分裂』と同じで、完全な旗が得られることもそこで確かめられている。作用群は構成のどの段にも関手的に乗るだけである。
次の事実は証明せずに引用する。出典は主に EGA2、SGA4、GodTAF58 で、該当箇所の番号は本頁では確認していない。第 0 章の頁『0-3 エタールコホモロジーと Galois コホモロジー』に要点がある。本書『2-1 作用群つきスキームの混合エタールコホモロジー』と本書『2-2 射影束公式』の引用する事実もそのまま使う。
射影束は底変換と両立し、基本類は引き戻しで基本類に移る。したがって関係式も移り、係数の一意性が逆像との両立を与える。
段 1(射影束の底変換).$X'$ が空なら主張は自明なので、$h^*\mathbb E$ の階数も $r$ とする。本書『2-2 射影束公式』の定義「作用つき局所自由加群の射影束」により $P':=P(h^*\mathbb E)=P\times_XX'$ で、$\mathcal O_{P'}(1)$ は $\mathcal O_P(1)$ の引き戻しである。$h^*\mathbb E$ の作用は $g'^*h^*\mathbb E=h^*\gamma(g')^*\mathbb E\to h^*\mathbb E$ で与えられるので、構成の関手性により第一射影 $h_P\colon P'\to P$ は $h_P\circ g'=\gamma(g')\circ h_P$ を満たし、$h_P=(h_P,\gamma)\colon(P',G')\to(P,G)$ は作用群つきスキームの射で、$\mathcal O_{P'}(1)=h_P^*\mathcal O_P(1)$ は作用つきの同型である。
段 2(基本類の引き戻し).本書『2-1 作用群つきスキームの混合エタールコホモロジー』の定理「可逆層の類のエタール表示」の 3 により $c_1$ は作用群つきスキームの射による逆像と両立するので、$h_P^*\xi_{\mathbb E}=\xi_{h^*\mathbb E}$ である。
段 3(関係式を移す).$f'\colon P'\to X'$ を射影とすると $f\circ h_P=h\circ f'$ なので $h_P^*f^*=f'^*h^*$ である。$h_P^*$ は cup 積と可換な環準同型なので、関係式 $\sum_if^*c_i(\mathbb E)\,\xi_{\mathbb E}^{r-i}=0$ に $h_P^*$ を当てると $\sum_if'^*\bigl(h^*c_i(\mathbb E)\bigr)\,\xi_{h^*\mathbb E}^{r-i}=0$ を得る。$h^*c_i(\mathbb E)\in H^{2i}(X',G';\mu_n^{\otimes i})$ で $h^*c_0=1$ なので、定義(Chern 類)の係数の一意性を $(X',G')$ 上の $h^*\mathbb E$ に当てて $c_i(h^*\mathbb E)=h^*c_i(\mathbb E)$ を得る。これが 1 である。
段 4(同型不変性).作用つきの同型 $u\colon\mathbb E\to\mathbb F$ は $X$ 上の同型 $P(\mathbb E)\cong P(\mathbb F)$ を誘導し、標準的な直線部分束どうし、したがって作用つきの $\mathcal O(1)$ どうしを対応させる(引用する事実 1)。$\xi_{\mathbb E}$ と $\xi_{\mathbb F}$ はこの同型で対応し、二つの関係式も対応するので、係数の一意性により $c(\mathbb E)=c(\mathbb F)$ である。これが 2 である。
段 5(正規化).$r=1$ のとき $P(\mathbb L)=X$、$f=\mathrm{id}$ で、$\mathcal O(-1)=\mathbb L$、$\mathcal O(1)=\mathbb L^\vee$ である。$\xi_{\mathbb L}=\partial\,cl(\mathbb L^\vee)=-\partial\,cl(\mathbb L)$(本書『2-1 作用群つきスキームの混合エタールコホモロジー』の定理「可逆層の類のエタール表示」の 3)。関係式は $\xi_{\mathbb L}+c_1(\mathbb L)=0$ なので、Chern 類としての $c_1(\mathbb L)$ は $\partial\,cl(\mathbb L)$ に等しい。$i\ge2$ では定義により $c_i(\mathbb L)=0$ である。これが 3 である。
段 5 で符号が出ないのは、本書が射影束を直線の空間とし $\xi=c_1(\mathcal O(1))$ ととる規約の効果である。原論文の §1 を Grothendieck 1958 の [17] の読みで読むと、ここで $c_1=-\partial\,cl(\mathbb L)$ となる(本書『2-2 射影束公式』の注意「原論文の §1 の射影束の読み方と符号」の (b))。
加法性の証明には、部分束 $\mathbb E'$ の射影束が $P(\mathbb E)$ の閉部分スキームとして入り、その補集合が $P(\mathbb E'')$ の上に射影されるという幾何を使う。
$0\to\mathbb E'\xrightarrow{\iota}\mathbb E\xrightarrow{\rho}\mathbb E''\to0$ を $(X,G)$ 上の作用つき局所自由加群の完全列とし、階数を $r',r,r''$($r'$、$r''\ge1$、$r=r'+r''$)とする。$P=P(\mathbb E)$、$P'=P(\mathbb E')$、$P''=P(\mathbb E'')$、$f,f',f''$ をそれぞれの射影とする。
段 1(零点スキーム).引用する事実 1 により、$X$ 上の $T$ について $T\to P$ が $Z$ を経由することは、$T$ に対応する直線 $\mathbb M\subset\mathbb E_T$ の $\mathbb E''_T$ への像が $0$、すなわち $\mathbb M\subset\mathbb E'_T$ であることと同値である。このとき $\mathbb E'_T/\mathbb M$ は局所自由加群の全射 $\mathbb E_T/\mathbb M\to\mathbb E''_T$ の核なので局所自由で、$\mathbb M$ は $\mathbb E'_T$ の局所的な直和因子である。逆も同じなので、$Z$ と $P'$ は $X$ 上の同じ関手を表し、同型である。この同型で $\mathcal O_P(-1)|_Z$ は $\mathcal O_{P'}(-1)$ に対応する。$s$ は作用と両立する標準的な切断なので $Z$ は $G$ で安定で、同型は作用と両立する。$\xi$ の制限は本書『2-1 作用群つきスキームの混合エタールコホモロジー』の定理「可逆層の類のエタール表示」の 3 による。
段 2(線形射影).$U$ の上では $s$ はすべての点で $0$ でない。すなわち $\mathcal O_P(-1)|_U\to f^*\mathbb E''|_U$ はファイバーごとに単射で、引用する事実 1 によりその像は局所的な直和因子である直線部分束である。それが定める射を $\pi\colon U\to P''$ とすると、$\pi^*\mathcal O_{P''}(-1)$ はこの像で、$\mathcal O_P(-1)|_U$ と同型である。$U$ が $G$ で安定なこと、$\pi$ が $G$ 同変で同型が作用と両立することは、構成が標準的であることによる。$\xi$ の等式は段 1 と同じ理由である。
$Z$ の上では $\mathbb E$ の直線は $\mathbb E'$ の中にあり、$U$ の上では $\mathbb E''$ に像を結ぶ。$\mathbb E'$ の関係式は $Z$ の上で、$\mathbb E''$ の関係式は $U$ の上で消える。二つの消え方を一つの積に集めるのが台つきコホモロジーである。
$0\to\mathbb E'\to\mathbb E\to\mathbb E''\to0$ を $(X,G)$ 上の作用つき局所自由加群の完全列とする($\mathbb E$ の階数は一定とする)。このとき
$$c(\mathbb E)=c(\mathbb E')\,c(\mathbb E''),\qquad\text{すなわち}\qquad c_m(\mathbb E)=\sum_{i+j=m}c_i(\mathbb E')\cup c_j(\mathbb E'')$$
である。
段 1(端の場合).$\mathbb E'$、$\mathbb E''$ の階数は局所定数なので、$X$ をそれらが一定の開かつ閉な部分に分けて考えればよい(下の定理「階数が一定でない場合」の証明と同じく、各部分は $G$ で安定である)。$r'=0$ なら $\mathbb E\to\mathbb E''$ は作用つきの同型で、上の定理(逆像との両立と正規化)の 2 と $c(0)=1$ から主張が従う。$r''=0$ も同じである。以下 $r',r''\ge1$ とし、上の補題(部分束の射影束と線形射影)の記号を使う。$\xi=\xi_{\mathbb E}$ とする。
段 2(二つの類).
$$a:=\sum_{i=0}^{r'}f^*c_i(\mathbb E')\cup\xi^{r'-i}\in H^{2r'}\bigl(P,G;\mu_n^{\otimes r'}\bigr),\qquad b:=\sum_{j=0}^{r''}f^*c_j(\mathbb E'')\cup\xi^{r''-j}\in H^{2r''}\bigl(P,G;\mu_n^{\otimes r''}\bigr)$$
とおく。補題の 1 により $a|_Z=\sum_if'^*c_i(\mathbb E')\,\xi_{\mathbb E'}^{r'-i}$ で、これは $\mathbb E'$ の関係式なので $0$ である。補題の 2 により $b|_U=\pi^*\bigl(\sum_jf''^*c_j(\mathbb E'')\,\xi_{\mathbb E''}^{r''-j}\bigr)$ で、これは $\mathbb E''$ の関係式の引き戻しなので $0$ である。
段 3(台つきの類を経由する).引用する事実 2 の長完全列で $b|_U=0$ なので、$b$ はある $b'\in H^{2r''}_Z(P,G;\mu_n^{\otimes r''})$ の像である。台を忘れる写像は $H^*(P,G)$ 線形なので、$a\cup b$ は $a\cup b'\in H^{2r}_Z(P,G;\mu_n^{\otimes r})$ の像である。引用する事実 2 により $a\cup b'$ は $a|_Z=0$ だけで決まり $0$ なので、$a\cup b=0$ である。
段 4(係数の比較).上の補題(偶数次の混合コホモロジーの環は可換である)により $f^*$ の像の類と $\xi$ の冪は可換に並べ替えられ、
$$0=a\cup b=\sum_{m=0}^{r}f^*(d_m)\cup\xi^{r-m},\qquad d_m:=\sum_{i+j=m}c_i(\mathbb E')\cup c_j(\mathbb E'')\in H^{2m}\bigl(X,G;\mu_n^{\otimes m}\bigr)$$
となる。$d_0=1$ である。定義(Chern 類)の係数の一意性により $d_m=c_m(\mathbb E)$($0\le m\le r$)である。$m>r$ では両辺とも $0$ である。
証明は、$\mathbb E'$ と $\mathbb E''$ の関係式が $P$ の相補的な二つの部分で別々に消えることだけを使っている。旗束への引き戻しも、完全列を分裂させる操作も使わない。したがって作用群 $G$ は、$Z$、$U$、$\pi$ が $G$ で安定・同変であることを通してしか現れない。
原論文は加法性の証明を、1.5 では [17]・[25] と同じように進めるとだけ書き(印字 p. 237)、2.3 では [25] の $G=e$ の場合の証明がそのまま移ると書く(印字 p. 247)。本書は [25](SGA5 として後に公刊)の該当箇所を確かめていない。
加法性には別の道もある。直線束の直和の場合を切断の零点で閉じ(下の例「直線束の直和」)、一般の場合は旗束で $\mathbb E'$、$\mathbb E''$ を線束の部分商に分けたうえで、各段の完全列の分裂の全体がなすトルソーに引き戻して直和にする方法である。この道はトルソーへの引き戻しが同型であること、すなわちエタールコホモロジーのホモトピー不変性(SGA 4 XV の型。第 0 章の頁『0-3 エタールコホモロジーと Galois コホモロジー』の定理「ホモトピー不変性」)を要する。本書は上の証明を選び、ホモトピー不変性を使わない。第 3 巻の 1958 年の理論では加法性は公理 A 2〜A 4 から出るが(参考書『Chern 類の公理的理論』の頁『3-2 存在の証明』)、上の証明はそれらに当たるもの(サイクル類と押し出し)も使わない。
加法性が得られたので、階数の揃わない束、行列式、特徴づけと公式集へ順に進む。どれも加法性と、旗束への引き戻しの単射性を組み合わせる。
$\mathbb E$ を $(X,G)$ 上の作用つき局所自由加群とし、$X_r\subset X$ を $\mathbb E$ の階数が $r$ である点の集合とする。各 $X_r$ は $G$ で安定な開かつ閉な部分で、$X=\coprod_rX_r$、$H^q(X,G;F)\cong\prod_rH^q(X_r,G;F|_{X_r})$ である。$c_i(\mathbb E)$ を成分 $c_i(\mathbb E|_{X_r})$ の族として定めると、上の二つの定理(逆像との両立と正規化、加法性)は階数の仮定なしに成り立つ。
階数は局所定数なので $X_r$ は開かつ閉である。$\theta_g\colon g^*\mathbb E\cong\mathbb E$ から点 $x$ での階数は $g(x)$ での階数に等しく、$X_r$ は $G$ で安定である。$(X_{\text{ét}},G)$ の層は各 $X_r$ の上の作用つきの層の族と同じもので、$\Gamma^G$ はその積になる。単射的対象の族の積は単射的で、アーベル群の積は完全なので、コホモロジーは成分ごとの積である。逆像については $h^{-1}(X_r)$ の上で $h^*\mathbb E$ の階数が $r$ であること、完全列については $\mathbb E'$、$\mathbb E''$ の階数も一定になるように細かく分けることで、成分ごとに前の二つの定理に帰着する。
次の命題は、旗束へ引き戻しても底の類が失われないことを言う。本書『2-2 射影束公式』の系「大域的な同型がある場合と引き戻しの単射性」の 1 を、旗束の各段に当てるだけである。
$q\colon(D(\mathbb E),G)\to(X,G)$ を定義(作用群つきの旗束)の旗束とする。$(X,G)$ 上の任意の $\mathbf Z/n$ 加群の層 $F$ と次数 $i$ について、$q^*\colon H^i(X,G;F)\to H^i(D(\mathbb E),G;q^*F)$ は単射である。$q^*\mathbb E$ の完全な旗の部分商 $\mathbb M_1,\dots,\mathbb M_r$ について
$$q^*c(\mathbb E)=\prod_{k=1}^{r}\bigl(1+c_1(\mathbb M_k)\bigr)$$
である。
単射性は、旗束の各段 $X_{k+1}=P(\mathbb E_k)\to X_k$ に本書『2-2 射影束公式』の系「大域的な同型がある場合と引き戻しの単射性」の 1 を当て、単射の合成をとればよい。積の公式は、完全な旗の各段の完全列 $0\to\mathbb W_{k-1}\to\mathbb W_k\to\mathbb M_k\to0$ に上の定理(加法性)と正規化を当てて $k$ について帰納し、$q^*c(\mathbb E)=c(q^*\mathbb E)$(逆像との両立)と合わせて得る。
$\det\mathbb E=\bigwedge^r\mathbb E$ に誘導される作用を入れると、$c_1(\mathbb E)=c_1(\det\mathbb E)$ である。
上の定理(階数が一定でない場合)により階数は一定の $r\ge1$ としてよい。旗束 $q$ に引き戻すと、上の命題により $q^*c_1(\mathbb E)=\sum_kc_1(\mathbb M_k)$ である。引用する事実 1 の行列式の標準同型を完全な旗の各段に当てると $\det q^*\mathbb E\cong\bigotimes_k\mathbb M_k$(作用つき)であり、本書『2-1 作用群つきスキームの混合エタールコホモロジー』の定理「可逆層の類のエタール表示」の 3 により $c_1(\bigotimes_k\mathbb M_k)=\sum_kc_1(\mathbb M_k)$ である。$q^*\det\mathbb E\cong\det q^*\mathbb E$ と逆像との両立から $q^*c_1(\mathbb E)=q^*c_1(\det\mathbb E)$ で、上の命題の単射性により主張を得る。
第 3 巻の特徴づけを引く前に、その証明が何を使うかを確かめておく。参考書『Chern 類の公理的理論』の頁『3-1 Chern 類の定義と一意性』の一意性の証明は、候補の規則を旗束に引き戻し、完全な旗の各段に短完全列の乗法性と線束での正規化を当てて候補の値を $\prod_k(1+c_1(\mathbb M_k))$ に固定し、旗束への引き戻しの単射性で底に戻す。使うのは、旗束の幾何(同書『1-2 旗多様体と完全分裂』)、関手性、正規化、短完全列の乗法性、そして公理 A 1 から導いた旗束での単射性だけで、公理 A 2〜A 4 は使わない。A 2〜A 4 が第 3 巻で使われるのは、同書『2-1 公理 A 1〜A 4 と補題 2』の補題 2 を経る存在の証明(同書『3-2 存在の証明』)だけである。本書ではこれらの入力を、定義(作用群つきの旗束)、上の定理(逆像との両立と正規化)、定理(加法性)、命題(旗束への引き戻しの単射性)がそれぞれ与える。
段 1(一意性).階数は一定の $r\ge1$ としてよい($c'(0)=1$ は $0\to0\to\mathcal O\to\mathcal O\to0$ の加法性と $c'(\mathcal O)=1$ から従う)。旗束 $q$ に引き戻すと、完全な旗の各段に加法性と正規化を当てて $k$ について帰納し、$q^*c'(\mathbb E)=c'(q^*\mathbb E)=\prod_k(1+c_1(\mathbb M_k))$ を得る。上の命題(旗束への引き戻しの単射性)により $q^*c(\mathbb E)$ も同じ積で、同じ命題の単射性から $c'(\mathbb E)=c(\mathbb E)$ である。これは参考書『Chern 類の公理的理論』の頁『3-1 Chern 類の定義と一意性』の定理「Chern類の一意性」の証明そのものである。
段 2(双対).$q^*\mathbb E^\vee$ は旗の双対をとった完全な旗をもち、部分商は $\mathbb M_k^\vee$ である。$c_1(\mathbb M_k^\vee)=-c_1(\mathbb M_k)$(本書『2-1 作用群つきスキームの混合エタールコホモロジー』の定理「可逆層の類のエタール表示」の 3)なので、段 1 と同じ計算で $q^*c(\mathbb E^\vee)=\prod_k(1-x_k)$、$x_k=c_1(\mathbb M_k)$ である。次数 $i$ の部分は $(-1)^ie_i(x)=(-1)^iq^*c_i(\mathbb E)$ で、単射性により 2 を得る。
段 3(外冪とテンソル積).参考書『Chern 類の公理的理論』の頁『3-3 双対・外冪・テンソル積』の証明が使う入力は、二つの束を同時に完全に分裂させる旗束($D(\mathbb E)$ の上で $q^*\mathbb F$ の旗束をとる)、完全な旗をもつ束の全 Chern 類が部分商の全第一類の積であること(本書では上の命題)、外冪とテンソル積に誘導される完全な旗、可逆層のテンソル積の $c_1$ が和であること、旗束での単射性、そして係数環が可換であること(本書では上の補題)の対称式の基本定理だけである。どれも作用群つきで上に揃っているので、その証明がそのまま通る。
特徴づけの 1 では、群を動かさない射についての逆像との両立しか使わない。旗束の射 $q$ がそれに当たるからである。群を動かす射についての両立は、上の定理(逆像との両立と正規化)が別に与える。
$G$ を忘れる写像 $\omega\colon H^{2i}(X,G;\mu_n^{\otimes i})\to H^{2i}(X,\mu_n^{\otimes i})$ について、$\omega(c_i(\mathbb E))=c_i(\omega\mathbb E)$ である。ここで $\omega\mathbb E$ は $\mathbb E$ から作用を忘れた局所自由加群で、右辺は作用群が単位群の場合の Chern 類である。
$\omega$ は作用群つきスキームの射 $(\mathrm{id}_X,\{e\}\to G)\colon(X,\{e\})\to(X,G)$ による引き戻しで、この射による $\mathbb E$ の逆像は $\omega\mathbb E$ である(本書『2-1 作用群つきスキームの混合エタールコホモロジー』の定義「作用群つきスキームの射と順像・逆像」の直後)。上の定理(逆像との両立と正規化)の 1 をこの射に当てればよい。
$\omega$ はスペクトル系列の端写像 $H^{2i}(X,G;-)\to H^{2i}(X,-)^G$ でもある(本書『2-1 作用群つきスキームの混合エタールコホモロジー』の注意「スペクトル系列の端と忘却写像」)。混合 Chern 類の情報のうち、群コホモロジーの側($p>0$ の項)に入る部分は $\omega$ で失われる。その具体例は例と反例の節で見る。
本書の後の章で加法性を使う主結果を、ここで一覧にしておく。各頁ではその依存を「加法性(本書 2-3)」と書く。本書『4-1 Galois 不変性と円分指標』の、表現環での類が不変なら Chern 類も不変であるという主張と、それを経る本書『4-2 位数の上界と第一 Chern 類での最良性』の捩れ性と位数の上界、本書『4-3 総括定理と複素表現の有理 Chern 類』の総括定理とその系(原論文 定理 4.8、系 4.9〜4.11)。本書『5-2 固有性と代数性を外した場合』の、乗法群の積の上で固有性が外せないことの反例(線束の直和の Chern 類を第一 Chern 類の積として計算するのに使う)。本書『6-1 作用が自明なときの Künneth 公式と普遍係数』の、通常の類が $0$ なら混合類が正次数の成分に入るという主張($c(\mathcal O^r)=c(\mathcal O)^r$ に使う)。本書『6-3 Kummer 類の積と捩れでない高次の類』の、自由アーベル群の上の捩れでない高次の類。本書『6-4 コホモロジー次元による消滅』の、有限生成アーベル群の表現の類の消滅。本書『6-5 表現の組成列と基礎環上の類』の、群の次元と組成列の因子の階数による捩れ性と体の次元による捩れ性(いずれも $c(\mathbb E)$ を組成列の因子の Chern 類の積に分けるのに使う)。本書『2-4 係数の変更と ℓ 進 Chern 類』の ℓ 進類の加法性もこの頁の加法性から従う。
最初の例は、射影束の規約の符号を加法性とは独立に確かめる計算である。
$\mathbb E=\mathbb L_1\oplus\cdots\oplus\mathbb L_r$ を作用つき可逆層の直和とし、$a_k=c_1(\mathbb L_k)$ とおく。加法性と正規化から $c(\mathbb E)=\prod_k(1+a_k)$ で、$c_i(\mathbb E)$ は $a_k$ の基本対称式である。これを加法性を使わずに確かめる。第 $k$ 成分への射影との合成 $\mathcal O_P(-1)\to f^*\mathbb E\to f^*\mathbb L_k$ は $f^*\mathbb L_k\otimes\mathcal O_P(1)$ の作用と両立する切断 $s_k$ で、$s_k$ が $0$ でない開集合 $U_k$ の上ではこの可逆層は作用つきで自明になる。よって $y_k:=c_1(f^*\mathbb L_k\otimes\mathcal O_P(1))=f^*a_k+\xi$ は $U_k$ への制限が $0$ で、引用する事実 2 の長完全列により $Z_k=P\setminus U_k$ に台をもつ類から来る。$\mathcal O_P(-1)\to f^*\mathbb E$ はファイバーごとに単射なので $\bigcap_kZ_k=\emptyset$ で、台つきの積から $\prod_ky_k$ は $H_\emptyset=0$ から来る。したがって $\prod_k(\xi+f^*a_k)=0$、すなわち $\sum_if^*e_i(a)\,\xi^{r-i}=0$ で、係数の一意性により $c_i(\mathbb E)=e_i(a_1,\dots,a_r)$ である。符号 $(-1)^i$ が現れないことが、本書の規約(直線の空間と $\xi=c_1(\mathcal O(1))$)と関係式 $\sum c_i\xi^{r-i}=0$ の整合を示す。
次の例は、作用群を忘れる写像で何が失われるかを示す。同時に、等式を底へ戻すのに単射でない引き戻しは使えないことも示す。
外す条件は、等式を確かめる先への引き戻しが単射であることである。$k$ を代数閉体、$m\ge2$ を $k$ で可逆な整数、$n=m$、$X=\operatorname{Spec}k$、$G=\mathbf Z/m$ が $X$ に自明に作用するとし、$\chi\colon G\xrightarrow{\sim}\mu_m(k)\subset k^*$ を同型、$L_\chi$ をそれが定める 1 次元表現とする。本書『2-1 作用群つきスキームの混合エタールコホモロジー』の例「分離閉体の上の点」「体の上の作用つき可逆層の類」により $c_1(L_\chi)=\pm\partial(\chi)\in H^2(G,\mu_m(k))$ で、$\partial$ は自明な $G$ 加群の Kummer 列 $0\to\mu_m(k)\to k^*\xrightarrow{m}k^*\to0$ の余境界である。長完全列 $\operatorname{Hom}(G,k^*)\xrightarrow{m}\operatorname{Hom}(G,k^*)\xrightarrow{\partial}H^2(G,\mu_m(k))$ で、$\psi^m=1$ がすべての $\psi\in\operatorname{Hom}(G,k^*)$ で成り立つので左の写像は $0$ で、$\partial$ は単射である。$\chi\neq1$ なので $c_1(L_\chi)\neq0=c_1(L_1)$ である。一方、$G$ を忘れると $H^2(\operatorname{Spec}k,\mu_m)=0$ なので、$\omega c_1(L_\chi)=\omega c_1(L_1)=0$ である。$\omega$ は異なる混合類を同じ類に移す。混合 Chern 類の等式を作用を忘れて確かめることはできず、特徴づけの証明で旗束の単射性(上の命題)が欠かせない理由がここにある。
残りの二つは、特徴づけの三つの性質のうち加法性と正規化が、それぞれ外せないことを示す。
外す条件は、加法性である。$c'$ を $c'_i=c_i$($i\neq2$)、$c'_2=2c_2$ で定める。$c'$ は逆像と両立し、可逆層では $c_2=0$ なので正規化も満たす。$k$ を代数閉体、$n\ge2$ を許容される整数、$Y=\mathbf P^1_k$、$X=Y\times\mathbf P^1_k=P(\mathcal O_Y^2)$、$G$ を単位群とし、$\mathbb L=\mathrm{pr}_1^*\mathcal O(1)$、$\mathbb M=\mathcal O_X(1)=\mathrm{pr}_2^*\mathcal O(1)$ とする。$\eta=c_1(\mathcal O_Y(1))$ とすると、本書『2-2 射影束公式』の定理「射影束公式」を $\operatorname{Spec}k$ 上で使って $H^2(Y,\mu_n)=(\mathbf Z/n)\,\eta$、$Y$ 上で使って $H^4(X,\mu_n^{\otimes2})$ は直和因子 $H^2(Y,\mu_n)\,\xi$ をもつ。よって $c_1(\mathbb L)\cup c_1(\mathbb M)=f^*\eta\cup\xi$ は位数 $n$ の元で、$0$ でない。加法性から $c_2(\mathbb L\oplus\mathbb M)=c_1(\mathbb L)c_1(\mathbb M)$ なので、$c'_2(\mathbb L\oplus\mathbb M)=2c_1(\mathbb L)c_1(\mathbb M)\neq c_1(\mathbb L)c_1(\mathbb M)$ で、$c'\neq c$ である。$c'$ は加法性を満たさず、逆像との両立と正規化だけでは Chern 類は決まらない。
外す条件は、正規化である。$c'(\mathbb E):=c(\mathbb E^\vee)$ とおく。双対は逆像と可換で、完全列を完全列 $0\to\mathbb E''^\vee\to\mathbb E^\vee\to\mathbb E'^\vee\to0$ に移し、係数環は可換なので、$c'$ は逆像との両立と加法性を満たす。しかし $c'(\mathbb L)=1-c_1(\mathbb L)$ である。$n\ge3$、$Y=\mathbf P^1_k$、$\mathbb L=\mathcal O(1)$ では $c_1(\mathbb L)=\eta$ は位数 $n$ なので $-\eta\neq\eta$ で、$c'\neq c$ である。この $c'_i=(-1)^ic_i$ は、原論文の §1 を [17] の読みで読んだときの係数である(本書『2-2 射影束公式』の注意「原論文の §1 の射影束の読み方と符号」の (b))。$n=2$ では $-1=1$ なので二つの規則は区別できない。
以下は原論文の主張ではなく、後代の結果の紹介である(時点を明記する。本書が文献を開いて確かめていないものはそう書く)。
本頁が対応する原論文は Classes de Chern et représentations linéaires des groupes discrets Gro68d の小節 1.4〜1.5 と 2.2 末〜2.3 である。
| 本頁 | 原論文 | 印字頁 |
|---|---|---|
| 定義(Chern 類) | (1.13)(1.14)、小節 2.2 末((2.4) から (1.13) で (2.3) を定める) | 236–237、247 |
| 定理(逆像との両立と正規化) | 1.5 前半(逆像・正規化)、2.3 (i)(ii) と「(i)(ii) の証明は自明」 | 237、247 |
| 補題(部分束の射影束と線形射影)、定理(加法性)、注意(原論文の加法性の証明と本書の選択) | (1.15) と「自明でないのはこの検証だけ」、2.3 (iii)(証明は [17][25] に送られる) | 237、247 |
| 定理(階数が一定でない場合) | 1.5(トポス $X$ を階数一定の部分に分ける) | 237 |
| 定理(第一 Chern 類は行列式の第一 Chern 類) | (1.16) | 237 |
| 命題(旗束への引き戻しの単射性)、定理(三つの性質による特徴づけと公式集) | 2.3(Hirzebruch Hir56(原論文の文献 [23])の三性質による特徴づけ、旗スキームへの移行と単射性、外冪・テンソル積の公式) | 247–248 |
| 定理(作用群を忘れる写像との両立) | 2.3 末(「G を忘れる」準同型) | 248 |
| 例(直線束の直和) | 2.3(可逆層の和への帰着) | 247–248 |
原論文の (1.15) は $\mathbb E'$、$\mathbb E''$ を白抜きでない字体で印字するが(印字 p. 237)、直後の完全列と同じ加群を指す。
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