6-5 Galoisの基本定理

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前提知識:Galois拡大とGalois群、自己同型群と固定体、体準同型の独立性、Artin固定体定理

一つの拡大の中に、いくつ体が隠れているか

$$ L=\mathbb Q(\sqrt2,\sqrt3) $$
を考えます。$L/\mathbb Q$ のGalois群は、$\sqrt2$ と $\sqrt3$ の符号を独立に変える四つの自己同型からなります。ところが $L$ と $\mathbb Q$ の間には
$$ \mathbb Q(\sqrt2),\qquad \mathbb Q(\sqrt3),\qquad \mathbb Q(\sqrt6) $$
という三つの二次体があります。
例えば $\sqrt3$ の符号だけを変える自己同型は $\mathbb Q(\sqrt2)$ の全要素を固定します。逆に、その自己同型で固定される $L$ の要素はちょうど $\mathbb Q(\sqrt2)$ に属します。このように、中間体は「どの対称性を残すか」によって記述できます。
Galoisの基本定理は、これが偶然ではなく、有限Galois拡大のすべての中間体とすべての部分群の間で成り立つことを述べます。

二つの操作

$L/K$ を有限Galois拡大とし
$$ G=\operatorname{Gal}(L/K) $$
と置きます。
中間体 $E$、すなわち
$$ K\subseteq E\subseteq L $$
に対して、その全要素を固定する自己同型を集め
$$ \operatorname{Gal}(L/E) =\{\sigma\in G\mid \sigma(a)=a\text{ for every }a\in E\} $$
と定めます。これは $G$ の部分群です。
逆に部分群 $H\le G$ に対して、その全要素に固定される元を集め
$$ L^H =\{a\in L\mid \sigma(a)=a\text{ for every }\sigma\in H\} $$
と定めます。これは $K$ を含む $L$ の部分体です。
二つの操作を図式で書けば
$$ E\longmapsto \operatorname{Gal}(L/E), \qquad H\longmapsto L^H $$
です。重要なのは、体を大きくすると固定すべき元が増えるので群は小さくなり、群を大きくすると固定条件が増えるので体は小さくなることです。

包含関係は逆転する

中間体 $E_1,E_2$ と部分群 $H_1,H_2$ に対して、次が成り立つ。

  1. $E_1\subseteq E_2$ なら
    $$ \operatorname{Gal}(L/E_2)\le \operatorname{Gal}(L/E_1). $$
  2. $H_1\le H_2$ なら
    $$ L^{H_2}\subseteq L^{H_1}. $$

$E_2$ の全要素を固定する自己同型は、その部分体 $E_1$ の全要素も固定します。従って1が成り立ちます。
$H_2$ の全要素に固定される元は、その部分群 $H_1$ の全要素にも固定されます。従って2が成り立ちます。いずれも、条件を増やすと解の集合が小さくなるという同じ原理です。□

中間体まで基礎体を大きくしてもGalois性は残る

次の補題が、中間体から出発した操作を元へ戻す鍵です。

中間体上でもGalois拡大

$L/K$ を有限Galois拡大とし、$K\subseteq E\subseteq L$ とする。このとき $L/E$ も有限Galois拡大である。

$[L:E]\le [L:K]<\infty$ なので $L/E$ は有限拡大です。
$L/K$ は分離拡大です。$a\in L$ の $E$ 上の最小多項式は、$a$ の $K$ 上の最小多項式を $E[x]$ で割り切ります。分離多項式の因子には重根がないので、$a$ は $E$ 上でも分離的です。従って $L/E$ は分離拡大です。
次に、$E$ を固定する任意の体埋め込み
$$ \varphi:L\longrightarrow\overline K $$
を取ります。$K\subseteq E$ なので、$\varphi$ は特に $K$ を固定します。$L/K$ の正規性から
$$ \varphi(L)=L. $$
従って $L/E$ は埋め込みによる正規性の判定を満たします。有限・分離・正規なので、$L/E$ はGalois拡大です。□

この補題から
$$ |\operatorname{Gal}(L/E)|=[L:E] $$
が得られます。

Galoisの基本定理

Galoisの基本定理

$L/K$ を有限Galois拡大とし、$G=\operatorname{Gal}(L/K)$ とする。このとき
$$ E\longmapsto\operatorname{Gal}(L/E), \qquad H\longmapsto L^H $$
は、$L/K$ の中間体全体と $G$ の部分群全体の間の互いに逆な全単射である。この対応は包含関係を逆転させる。
さらに、対応する $E$ と $H=\operatorname{Gal}(L/E)$ に対して
$$ [L:E]=|H|, \qquad [E:K]=[G:H] $$
が成り立つ。

まず部分群 $H\le G$ から始めます。26「Artin固定体定理」により
$$ \operatorname{Gal}(L/L^H)=H. $$
従って、部分群から固定体を取り、さらにその固定群を取ると元の部分群へ戻ります。
次に中間体 $E$ から始め、
$$ H=\operatorname{Gal}(L/E) $$
と置きます。$H$ の全要素は $E$ を固定するので
$$ E\subseteq L^H $$
です。
前の補題により $L/E$ は有限Galois拡大です。従って
$$ |H|=[L:E]. $$
一方、Artin固定体定理から
$$ [L:L^H]=|H|. $$
よって
$$ [L:E]=[L:L^H]. $$
$E\subseteq L^H$ に塔の法則を適用すると
$$ [L:E]=[L:L^H][L^H:E] $$
なので $[L^H:E]=1$、従って
$$ L^H=E $$
です。二つの操作は互いに逆であり、全単射を与えます。包含関係の逆転は先の補題で示しました。
最後に、$H=\operatorname{Gal}(L/E)$ に対して第一の次数公式は既に示しました。塔の法則と $[L:K]=|G|$ から
$$ [E:K] =\frac{[L:K]}{[L:E]} =\frac{|G|}{|H|} =[G:H] $$
を得ます。□

双二次拡大の対応表

再び
$$ L=\mathbb Q(\sqrt2,\sqrt3) $$
とします。自己同型を
$$ \begin{aligned} 1&:(\sqrt2,\sqrt3)\longmapsto(\sqrt2,\sqrt3),\\ \alpha&:(\sqrt2,\sqrt3)\longmapsto(-\sqrt2,\sqrt3),\\ \beta&:(\sqrt2,\sqrt3)\longmapsto(\sqrt2,-\sqrt3),\\ \alpha\beta&:(\sqrt2,\sqrt3)\longmapsto(-\sqrt2,-\sqrt3) \end{aligned} $$
と書きます。$G\cong C_2\times C_2$ です。

部分群 $H$位数固定体 $L^H$$[L:L^H]$
$\{1\}$1$L$1
$\langle\alpha\rangle$2$\mathbb Q(\sqrt3)$2
$\langle\beta\rangle$2$\mathbb Q(\sqrt2)$2
$\langle\alpha\beta\rangle$2$\mathbb Q(\sqrt6)$2
$G$4$\mathbb Q$4

最後から二番目の行を直接確かめます。任意の元を
$$ x=a+b\sqrt2+c\sqrt3+d\sqrt6 \qquad(a,b,c,d\in\mathbb Q) $$
と書くと
$$ \alpha\beta(x)=a-b\sqrt2-c\sqrt3+d\sqrt6. $$
従って $\alpha\beta(x)=x$ であることは $b=c=0$ と同値です。固定元は
$$ a+d\sqrt6 $$
の形、すなわち $\mathbb Q(\sqrt6)$ の元に限ります。
対応表では、部分群の包含図を上下反転すると中間体の包含図になります。位数2の三部分群のどの二つも包含関係をもたず、対応する三つの二次体も互いに包含しません。

対応が教えてくれること

Galoisの基本定理によって、中間体を一つずつ元の式から探す代わりに、有限群の部分群を分類すればよくなります。また中間体の次数は、対応する部分群の位数と指数だけで読めます。
ただし、ここではまだ一つ重要な問いを残しています。部分群 $H$ が正規部分群であることは、固定体 $E=L^H$ のどの性質に対応するのでしょうか。また $E/K$ のGalois群は $G/H$ といつ一致するのでしょうか。これは次の頁で証明します。

演習

対応する次数

$L/K$ を次数12の有限Galois拡大とし、$G=\operatorname{Gal}(L/K)$ とする。位数3の部分群 $H\le G$ に対応する固定体を $E=L^H$ とする。$[L:E]$ と $[E:K]$ を求めよ。

解答

基本定理から
$$ [L:E]=|H|=3. $$
また
$$ [E:K]=[G:H]=\frac{12}{3}=4. $$
□

固定体の直接計算

$L=\mathbb Q(\sqrt2,\sqrt5)$ とし、$\gamma$ を $\sqrt2$ と $\sqrt5$ の符号を同時に変える自己同型とする。$L^{\langle\gamma\rangle}$ を直接計算せよ。

解答

任意の元は一意的に
$$ x=a+b\sqrt2+c\sqrt5+d\sqrt{10} \qquad(a,b,c,d\in\mathbb Q) $$
と書けます。$\gamma(\sqrt{10})=\sqrt{10}$ なので
$$ \gamma(x)=a-b\sqrt2-c\sqrt5+d\sqrt{10}. $$
$\gamma(x)=x$ であることは $b=c=0$ と同値です。従って
$$ L^{\langle\gamma\rangle} =\{a+d\sqrt{10}\mid a,d\in\mathbb Q\} =\mathbb Q(\sqrt{10}). $$
□

包含関係の翻訳

$L/K$ を有限Galois拡大とし、中間体 $E_1,E_2$ に対応する部分群を $H_1,H_2$ とする。$E_1\subsetneq E_2$ なら $H_2\subsetneq H_1$ であることを示せ。

解答

包含関係を逆転する補題から $H_2\le H_1$ です。もし $H_2=H_1$ なら、固定体を取って
$$ E_2=L^{H_2}=L^{H_1}=E_1 $$
となり、$E_1\subsetneq E_2$ に反します。従って包含は真です。□

素数次数のGalois拡大

$L/K$ を素数 $p$ 次の有限Galois拡大とする。$K$ と $L$ 以外に中間体が存在しないことを示せ。

解答

$G=\operatorname{Gal}(L/K)$ の位数は $p$ です。Lagrangeの定理により、部分群の位数は1または $p$ です。従って $G$ の部分群は $\{1\}$ と $G$ だけです。Galois対応により、対応する中間体は
$$ L^{\{1\}}=L, \qquad L^G=K $$
だけです。□

参考文献

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