実数の範囲では $x^2+1=0$ を満たす数はない。そこで $i^2=-1$ という記号を置くだけでは、計算規則に矛盾がないかがまだ分からない。このページでは複素数を実数の組として構成する。
複素数全体 $\mathbb{C}$ を $\mathbb{R}^2$ と同じ集合とし、
$$
(a,b)+(c,d):=(a+c,b+d),
$$
$$
(a,b)(c,d):=(ac-bd,ad+bc)
$$
で加法と乗法を定める。$(a,b)$ を通常 $a+bi$ と書き、$i:=(0,1)$ と置く。
$1=(1,0)$、$0=(0,0)$ であり、
$$
i^2=(0,1)(0,1)=(-1,0)=-1
$$
となる。形式的に導入した関係 $i^2=-1$ が、組の演算として実現された。
上の加法と乗法について $\mathbb{C}$ は体である。$a+bi\ne0$ の逆元は
$$
(a+bi)^{-1}=\frac{a-bi}{a^2+b^2}
$$
である。
加法の結合則・交換則は実数の対応する法則を各成分へ適用すれば従う。加法単位元は $(0,0)$、$(a,b)$ の加法逆元は $(-a,-b)$ である。乗法の交換則も式の対称性から従う。
結合則を確認する。$z=(a,b),w=(c,d),u=(e,f)$ とすると、$(zw)u$ は
$$
((ac-bd)e-(ad+bc)f,\ (ac-bd)f+(ad+bc)e)
$$
であり、展開すると
$$
(ace-bde-adf-bcf,\ acf-bdf+ade+bce).
$$
一方 $z(wu)$ も展開すると同じ二成分になる。分配法則も両辺の二成分を展開して、実数の分配法則で整理すれば一致する。乗法単位元は $(1,0)$ である。
$z=a+bi\ne0$ なら $a,b$ の少なくとも一方が非零なので $a^2+b^2>0$ である。したがって上式の候補は定義でき、
$$
(a+bi)\frac{a-bi}{a^2+b^2}
=\frac{a^2+b^2}{a^2+b^2}=1.
$$
よってすべての非零元が逆元をもち、$\mathbb{C}$ は体である。
$z,w\in\mathbb{C}$ に対して
$$
\overline{z+w}=\overline z+\overline w,\quad
\overline{zw}=\overline z\,\overline w,\quad
z\overline z=|z|^2,\quad
|zw|=|z||w|
$$
が成り立つ。
$z=a+bi,w=c+di$ と置く。最初の三式は定義を代入して展開すれば得られる。したがって
$$
|zw|^2=(zw)\overline{zw}=(z\overline z)(w\overline w)=|z|^2|w|^2.
$$
両辺は非負であるから、非負の平方根を取って $|zw|=|z||w|$ を得る。
$z=2-3i$ なら
$$
z^{-1}=\frac{2+3i}{2^2+(-3)^2}=\frac{2+3i}{13}.
$$
検算すると
$$
(2-3i)\frac{2+3i}{13}=\frac{4+9}{13}=1.
$$
「$\mathbb{C}$ の係数をもつ非定数多項式は $\mathbb{C}$ に根をもつ」という代数学の基本定理は、複素数が体であることよりはるかに深い。本ページではこれを証明せず、後の 00_05_多項式の根と代数閉体.md で仮定の位置を明示する。線形代数学の多くの定理は任意の体上で証明でき、固有値の存在が必要な箇所だけで根の存在を追加する。
$\dfrac{3+4i}{1-2i}$ を $a+bi$ の形に直せ。
分母と分子へ $1+2i$ を掛けると
$$
\frac{3+4i}{1-2i}
=\frac{(3+4i)(1+2i)}{(1-2i)(1+2i)}
=\frac{-5+10i}{5}=-1+2i.
$$
$(a+bi)^2=3+4i$ を満たす実数 $a,b$ を求めよ。
実部と虚部を比較して
$$
a^2-b^2=3,\qquad 2ab=4
$$
を得る。また $|3+4i|=5$ なので $a^2+b^2=5$ である。二式を足して $2a^2=8$、よって $a=\pm2$。$ab=2$ より対応して $b=\pm1$ である。したがって解は $2+i$ と $-2-i$ である。
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