9-1 根号可解性と一般五次

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根号と可解群

標数0の体 $K$ 上、$K=K_0\subset\cdots\subset K_r=R$ で各 $K_i=K_{i-1}(\alpha_i)$、$\alpha_i^{n_i}\in K_{i-1}$ となる塔を根号拡大と呼ぶ。多項式 $f\in K[T]$ の分解体がある根号拡大 $R$ に含まれるとき、$f$ は根号で可解という。全根を同じ塔に入れる定義である。
有限群 $G$ が可解であるとは、$G=G_0\trianglerighteq\cdots\trianglerighteq G_s=1$ で各商 $G_i/G_{i+1}$ がAbel群となる正規列を持つことをいう。有限Abel群の列を細分すれば、商を素数位数の巡回群にできる。可解群の部分群・商群は可解であり、可解な正規部分群と可解な商群を持つ群も可解である。これらは正規列を制限・射影・連結して確かめる。

1の冪根を含むときの一段

$F$ が原始 $n$ 乗根 $\zeta_n$ を含み、$a\in F^\times$、$\alpha^n=a$ とする。$F(\alpha)$ には $X^n-a$ の全根 $\zeta_n^j\alpha$ が入り、標数0かつ $a\ne0$ なので重根はない。従って $F(\alpha)/F$ はGalois拡大で、自己同型を $\sigma(\alpha)/\alpha\in\mu_n$ へ写すと巡回群 $\mu_n$ に単射する。$a=0$ なら $\alpha=0$ で拡大は自明だから別に扱う。
逆に $E/F$ が次数 $n$ の巡回Galois拡大で $\zeta_n\in F$ とする。生成元 $\sigma$ に対し
$$T(b)=\sum_{j=0}^{n-1}\zeta_n^{-j}\sigma^j(b)$$
と置く。相異なる体準同型 $1,\sigma,\ldots,\sigma^{n-1}$ の線形独立性から $T$ は零写像ではない。$\alpha=T(b)\ne0$ を選ぶと添字を一つ移して $\sigma(\alpha)=\zeta_n\alpha$。よって $\alpha^n\in F$。$\alpha$ の $n$ 個の共役 $\zeta_n^j\alpha$ は相異なるので $[F(\alpha):F]=n$、従って $E=F(\alpha)$。これが本章で使うKummer型補題である。

根号と可解群の両方向

根号から群へ。 根号塔の指数 $n_i$ の公倍数 $N$ を取り、$K'=K(\zeta_N)$ を最初に加える。$K'/K$ はAbelなGalois拡大である。塔を $K'$ と合成し、帰納的に $K$ 上Galoisな正規閉包 $M_{i-1}$ が前段を含むように取る。$a_i=\alpha_i^{n_i}$ の全ての $K$ 共役 $\tau(a_i)\in M_{i-1}$ について $X^{n_i}-\tau(a_i)$ の根を一段で加え、$M_i$ とする。$M_i/K$ は共役を全て含めたためGaloisで、$M_i/M_{i-1}$ の自己同型は各添加根を $n_i$ 乗根倍するので、その群は $\mu_{n_i}$ の有限直積へ単射しAbelである。従って $\operatorname{Gal}(M_r/K)$ はAbel群を順に拡張した可解群。$f$ の分解体 $L/K$ は $M_r$ に入るGalois拡大だから、$\operatorname{Gal}(L/K)$ は制限写像による可解群の商として可解である。
群から根号へ。 $G=\operatorname{Gal}(L/K)$ が可解なら、$|G|$ を割る素数をすべて割り切る $N$ を選び $K'=K(\zeta_N)$、$E=LK'$ とする。$H=\operatorname{Gal}(E/K')$ は $G$ の部分群と同型で可解。$H=H_0\trianglerighteq\cdots\trianglerighteq H_s=1$ の各商を素数位数 $p_i$ の巡回群へ細分し、固定体を $F_i=E^{H_i}$ と置く。$F_{i+1}/F_i$ は次数 $p_i$ の巡回拡大で、$F_i$ は $\zeta_{p_i}$ を含む。直前のKummer型補題から $F_{i+1}=F_i(\beta_i)$、$\beta_i^{p_i}\in F_i$ となる。$K'=K(\zeta_N)$ 自体も $\zeta_N^N=1$ による根号一段だから、$L\subseteq E$ は根号塔に入る。
以上から、標数0の $K$ 上で
$$\boxed{f\text{ が根号で可解}\quad\Longleftrightarrow\quad\operatorname{Gal}(L/K)\text{ が可解群}}\tag{1}$$
零でない根号一段の正規閉包、必要な1の冪根、群の商と部分群の扱いがこの同値の要点である。

一般五次のGalois群

$x_1,\ldots,x_5$ を $\mathbf Q$ 上代数的に独立な文字、$e_1,\ldots,e_5$ をその基本対称式とし、$K=\mathbf Q(e_1,\ldots,e_5)$、$L=\mathbf Q(x_1,\ldots,x_5)$ と置く。$f(T)=\prod_{i=1}^5(T-x_i)\in K[T]$ は一般五次多項式で、$L$ が分解体である。$S_5$ は $x_i$ を置換して $K$ を固定する。逆に $K$ を固定する自己同型は $f$ の根を置換するから $\operatorname{Gal}(L/K)\hookrightarrow S_5$。既に全ての置換が自己同型を与えるので群は $S_5$ に一致する。
$A_5$ は非Abel単純群で、$S_5$ の導来列は1へ到達しない。従って $S_5$ は可解でなく、一般五次は根号で解けない。これは個々の五次方程式が全て解けないという意味ではない。例えば $T^5-1$ は根号で解ける。
$A_5$ の単純性もここで確認する。$A_5$ の共役類の大きさは恒等元の1のほか、3-cycleの20、二互換の積の15、5-cycleの12と12である。中心化群の位数が順に3、4、5なので最初の三つの類サイズが得られ、24個の5-cycleは二つの類へ分かれる。正規部分群の位数は1にこれらのいくつかを足し、同時に60の約数でなければならない。部分和は $1,13,16,21,25,28,33,36,40,45,48,60$ で、このうち60を割るのは1と60だけ。従って $A_5$ は非Abel単純群となる。
具体的な不能例は $g(T)=T^5-4T+2$ である。2によるEisenstein判定で既約だからGalois群は五根へ推移的に作用し、Cauchyの定理により5-cycleを含む。$g'(T)=5T^4-4$ の臨界点を $\pm a$、$a=(4/5)^{1/4}$ とすると $g(-a)=2+16a/5>0$、$g(a)=2-16a/5<0$。後者は $(5/8)^4<4/5=a^4$、つまり $a>5/8$ から従う。増減から実根は三つ、非実根は共役な二つである。複素共役はその二根を交換するtranspositionをGalois群に与える。5-cycleの冪でこのtranspositionを共役して得る辺は五頂点の連結グラフを作る。実際、辺の両端の差は法5で非零なので、その差を繰り返せば五頂点を全てたどれる。連結グラフの辺のtranspositionは $S_5$ を生成するので、このGalois群は $S_5$ であり、$g$ は根号で解けない。
一方 $T^5-2$ の根は $\zeta_5^j\sqrt[5]{2}$ と書ける。次数5の式でも根号で解けるものがある。
演習。 $T^5-1$ のGalois群が可解である理由を述べよ。
解答。 分解体は $\mathbf Q(\zeta_5)$、Galois群は $(\mathbf Z/5)^\times\cong C_4$ で可換、従って可解である。
演習。 $S_3$ と $A_4$ の可解列を一つずつ書け。
解答。 $S_3\trianglerighteq A_3\trianglerighteq1$ の商は $C_2,C_3$。$A_4\trianglerighteq V_4\trianglerighteq C_2\trianglerighteq1$ の商は $C_3,C_2,C_2$。各商が可換なので両群は可解。
演習。 有限2群が可解であることを示せ。
解答。 非自明な有限2群には指数2の正規部分群がある。これを位数が1になるまで繰り返すと、各商が $C_2$ の正規列を得る。
演習。 $T^5-2$ の分解体の次数と、そのGalois群の可解性を求めよ。
解答。 $\alpha=\sqrt[5]{2}$ とすると $T^5-2$ は2でEisenstein既約なので $[\mathbf Q(\alpha):\mathbf Q]=5$。$\mathbf Q(\zeta_5)$ の次数は4。$L=\mathbf Q(\alpha,\zeta_5)$ と置き $d=[L:\mathbf Q(\zeta_5)]\le5$ とすると、塔の法則から $4d=[L:\mathbf Q]$ は5の倍数。従って $5\mid d$、ゆえに $d=5$ で $[L:\mathbf Q]=20$。そのGalois群は正規部分群 $C_5$ と商 $C_4$ を持つので可解である。
演習。 「一般五次に根号公式がない」ことと「全ての五次式が根号で解けない」ことが異なる理由を述べよ。
解答。 $T^5-4T+2$ はGalois群 $S_5$ により不能だが、$T^5-2$ は上の根 $\zeta_5^j\sqrt[5]{2}$ を持ち根号で可解。一般式の障害は全五次式への個別不能を意味しない。

参考文献

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