5-2 有限体

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要素数は素数の冪

有限体 $F$ の標数は素数 $p$ で、素体 $\mathbf F_p$ 上有限次元 $n$ のベクトル空間になる。従って $|F|=p^n$。逆に任意の $q=p^n$ に要素数 $q$ の体が存在する。
存在の証明。 $\mathbf F_p$ 上の $x^q-x$ の分解体 $L$ を取り、その根の集合を $F$ とする。$u^q=u,v^q=v$ なら標数 $p$ で $(u+v)^q=u^q+v^q=u+v$、$(uv)^q=u^qv^q=uv$。非零根の逆元も $(u^{-1})^q=u^{-1}$、加法逆元も根である。従って根集合は体。微分は $qx^{q-1}-1=-1$ なので $x^q-x$ は重根を持たず、根はちょうど $q$ 個である。□
同じ $q$ の有限体では全要素が $x^q-x$ の根だから、どちらもその分解体であり同型。Frobenius $u\mapsto u^p$ は自己同型で、その固定体は $\mathbf F_p$。
同型を具体的に指定するには、次節で存在を証明する $E$ の乗法的原始元 $a$ の最小多項式 $m\in\mathbf F_p[X]$ を取る。$m$ は $X^{p^n}-X$ を割り、同じ元数の体 $E'$ はその分解体なので、$E'$ の中で $m$ の根 $b$ を選べる。$a\mapsto b$ は $\mathbf F_p(a)\cong\mathbf F_p(b)$ を与える。前者は $E$ 全体で、$\deg m=[E:\mathbf F_p]=n$ だから後者も $p^n$ 元、すなわち $E'$ 全体である。

乗法群の巡回性

定理。 体 $K$ の乗法群の有限部分群 $G$ は巡回群である。特に $\mathbf F_q^\times$ は位数 $q-1$ の巡回群である。
証明。 $G$ の元の位数の最小公倍数を $m$ とする。全元が $X^m-1$ の根なので、体上の多項式の根数の上界から $|G|\le m$。各元の位数は Lagrange の定理で $|G|$ を割るため $m\mid |G|$ であり、結局 $m=|G|$。$m=\prod_\ell\ell^{e_\ell}$ とする。最小公倍数の定義により、各 $\ell$ について位数が $\ell^{e_\ell}$ で割り切れる元がある。その適当な冪から位数ちょうど $\ell^{e_\ell}$ の元 $a_\ell$ を得る。$G$ は可換で、これらの位数は互いに素だから、積 $\prod_\ell a_\ell$ の位数は $\prod_\ell\ell^{e_\ell}=|G|$。よって $G$ は巡回群。□
この証明により、$\mathbf F_q$ には非零元を全て冪で列挙する乗法的原始元がある。原始元の個数は巡回群の生成元数 $\varphi(q-1)$ である。
原始元の判定。 $q-1$ の相異なる素因数を $\ell$ とすると、$a\in\mathbf F_q^\times$ が原始元であることと、全ての $\ell$ について $a^{(q-1)/\ell}\ne1$ であることは同値。実際、$a$ の位数が $q-1$ の真の約数なら、$q-1$ と位数の商を割る素数 $\ell$ があり、位数は $(q-1)/\ell$ を割る。逆に検査に失敗すれば位数は $q-1$ より小さい。

部分体の分類

定理。 $d\mid n$ なら $\mathbf F_{p^n}$ の中にただ一つの $p^d$ 元部分体があり、それは $\{a:a^{p^d}=a\}$ である。逆に、$\mathbf F_{p^n}$ の任意の部分体はこの形である。
証明。 $n=de$ と書く。$X^{p^d}-X$ の根 $a$ は $a^{p^d}=a$ を $e$ 回反復して $a^{p^n}=a$ を満たすので、先に構成した $\mathbf F_{p^n}$ に入る。根集合は Frobenius の加法・乗法保存により体をなし、導関数が $-1$ だから相異なる根をちょうど $p^d$ 個持つ。$p^d$ 元の別の部分体があれば、その全元は $X^{p^d}-X$ の根であり、元数が同じなのでこの根集合に等しい。任意の部分体 $E$ の元数を $p^d$ と書くと、塔の法則 $n=[\mathbf F_{p^n}:E]d$ から $d\mid n$ である。□
従って、固定した代数閉包の中では $\mathbf F_{p^d}\subseteq\mathbf F_{p^n}$ と $d\mid n$ が同値である。例えば $\mathbf F_{16}$ の部分体は $\mathbf F_2,\mathbf F_4,\mathbf F_{16}$ の三つである。
$n=12$ では部分体の元数は $p^d$($d=1,2,3,4,6,12$)に限られる。例えば $\mathbf F_{p^2}\subset\mathbf F_{p^4}\subset\mathbf F_{p^{12}}$、$\mathbf F_{p^3}\subset\mathbf F_{p^6}\subset\mathbf F_{p^{12}}$ である一方、$\mathbf F_{p^2}$ と $\mathbf F_{p^3}$ は互いに含まれない。

Frobeniusと有限体のGalois群

$\sigma(a)=a^p$ は $\mathbf F_{p^n}$ の自己同型で、$\sigma^n(a)=a$ が全元で成り立つ。もし $0< d< n$ で $\sigma^d$ が恒等なら、次数 $p^d$ の $X^{p^d}-X$ が $p^n$ 個の根を持つことになり矛盾する。従って $\sigma$ の位数はちょうど $n$。
一方、乗法群の原始元 $a$ は非零元を全て冪で生成するので $\mathbf F_{p^n}=\mathbf F_p(a)$。$\mathbf F_p$ 上の自己同型は $a$ の像で決まり、その像は $a$ の最小多項式の根でなければならない。最小多項式の次数は $n$ だから自己同型は高々 $n$ 個。既に $1,\sigma,\ldots,\sigma^{n-1}$ の $n$ 個があるので、$\operatorname{Gal}(\mathbf F_{p^n}/\mathbf F_p)=\langle\sigma\rangle$ である。
$d\mid n$ なら $\sigma^d$ の固定元は $X^{p^d}-X$ の根、すなわち先に分類した $\mathbf F_{p^d}$ である。例えば $\mathbf F_{16}$ の自己同型群は位数4で、その $\sigma^2$ の固定体は $\mathbf F_4$。
相対拡大についても $[\mathbf F_{p^n}:\mathbf F_{p^d}]=n/d$ であり、$\operatorname{Gal}(\mathbf F_{p^n}/\mathbf F_{p^d})=\langle\sigma^d\rangle$ となる。実際、$\sigma^d$ は $\mathbf F_{p^d}$ を固定し、位数が $n/d$ である。一方、$\mathbf F_{p^n}$ は $\mathbf F_{p^d}$ 上の分離多項式 $X^{p^n}-X$ の分解体なので、相対Galois群の位数は拡大次数 $n/d$ に等しい。
部分体格子は $n$ の約数格子と一致する。例えば $\mathbf F_{p^6}$ の中には $\mathbf F_p$、$\mathbf F_{p^2}$、$\mathbf F_{p^3}$、$\mathbf F_{p^6}$ があり、中央の二体は互いに含まれない。その共通部分は $\mathbf F_p$ で、両者が生成する体は $\mathbf F_{p^6}$ である。前者の次数は2と3の両方を割るので1、後者の次数は2と3の両方の倍数かつ6の約数なので6となる。
同じ議論を固定した代数閉包で行えば、$\mathbf F_{p^m}\cap\mathbf F_{p^n}=\mathbf F_{p^{\gcd(m,n)}}$、両者の合成体は $\mathbf F_{p^{\operatorname{lcm}(m,n)}}$ となる。また $\sigma$ の位数が $n$ なので、$\langle\sigma^k\rangle=\langle\sigma^{\gcd(n,k)}\rangle$。従って $\sigma^k$ の固定体は $\mathbf F_{p^{\gcd(n,k)}}$ である。

既約多項式の次数と個数

$\mathbf F_q$ 上のモニック既約多項式 $f$ の次数を $d$ とする。その根 $a$ が生成する体 $\mathbf F_q[a]$ は $q^d$ 元なので、上の部分体分類から $f\mid X^{q^n}-X$ と $d\mid n$ が同値である。$X^{q^n}-X$ の導関数は $-1$ で重根はない。従ってこの多項式は、次数が $n$ を割るモニック既約多項式をそれぞれ一度だけ因子に持つ。
次数 $n$ のモニック既約多項式の個数を $N_q(n)$ と書き、両辺の次数を比較すると
$$q^n=\sum_{d\mid n}dN_q(d).\tag{1}$$
Möbius関数 $\mu$ は $\mu(1)=1$、相異なる $k$ 個の素数の積では $(-1)^k$、平方因子を持つ整数では $0$ と定める。$m>1$ の相異なる素因数を $k$ 個とすると、二項定理から $\sum_{d\mid m}\mu(d)=(1-1)^k=0$。式 (1) で $B(d)=dN_q(d)$ とおき、$\sum_{d\mid n}\mu(d)q^{n/d}$ を計算すると、$B(e)$ の係数は $\sum_{d\mid n/e}\mu(d)$ であり $e=n$ のときだけ1となる。従って
$$N_q(n)=\frac1n\sum_{d\mid n}\mu(d)q^{n/d}.\tag{2}$$
各次数での存在の証明。 $n=1$ なら $X-a$ がある。$n\ge2$ では (1) より $nN_q(n)=q^n-\sum_{d\mid n,\,d< n}dN_q(d)$。次数 $d$ の既約式は相異なる $d$ 個の根を $\mathbf F_{q^d}$ に持つため $dN_q(d)\le q^d$。真の約数は $n/2$ 以下なので、差し引く和は $\sum_{d=1}^{\lfloor n/2\rfloor}q^d< q^n$ 以下である。よって $N_q(n)>0$。□
例えば $N_2(4)=(2^4-2^2)/4=3$。四次の三つは $X^4+X+1$、$X^4+X^3+1$、$X^4+X^3+X^2+X+1$ である。次数 $n$ のモニック多項式 $f$ の既約性判定では、$f\mid X^{q^n}-X$ を調べ、$n$ の各素因数 $\ell$ について $\gcd(f,X^{q^{n/\ell}}-X)=1$ を確かめればよい。前者は既約因子の次数が $n$ を割り重複因子がないことを、後者は真の約数次数の因子がないことを意味する。従って $f$ 自身が次数 $n$ の既約式である。

計算例と境界

$\mathbf F_4=\mathbf F_2[\alpha]$、$\alpha^2+\alpha+1=0$ とすると $\alpha^2=\alpha+1$、$\alpha^3=1$。非零元は $1,\alpha,\alpha^2$ で巡回群をなす。一般の乗法群の巡回性と部分体の分類を上で証明した。要素数が $p^n$ なら任意の多項式商が体になるわけではなく、割る多項式の既約性が必要である。
演習。 $\mathbf F_4$ で $(\alpha+1)^{-1}$ を求めよ。
解答。 $\alpha+1=\alpha^2$、$\alpha^2\alpha=\alpha^3=1$。従って逆元は $\alpha$。
演習。 $X^{16}-X$ の分解体が16元体になることを示し、6元体が存在しない理由を述べよ。
解答。 前者の導関数は標数2で $-1=1$ だから根は相異なる16個。根集合は二乗Frobeniusを4回反復した写像の固定元集合で、加減乗除に閉じるため体となる。後者は有限体の元数が素数冪 $p^n$ に限られ、6はその形でないことによる。
演習。 $\mathbf F_{64}/\mathbf F_2$ のGalois群を、各自己同型の作用を含めて求めよ。
解答。 拡大次数は6で、群は $a\mapsto a^{2^j}$($j=0,1,2,3,4,5$)の6個からなる。合成は指数 $j$ の6を法とする加法に対応するので巡回群 $C_6$ である。
演習。 $2\in\mathbf F_{11}$ が原始元か判定し、生成する乗法部分群を求めよ。
解答。 $10=2\cdot5$ なので $2^{10/2}=2^5\equiv-1$、$2^{10/5}=2^2\equiv4$ を調べればよい。いずれも $1$ でないから $2$ は原始元で、生成するのは $\mathbf F_{11}^\times$ 全体である。
演習。 $\mathbf F_{16}$ の乗法的原始元は何個か。また $6\mid(q-1)$ のとき $\mathbf F_q^\times$ に位数6の元は何個あるか。
解答。 前者は $\varphi(15)=8$ 個。後者は巡回群の位数6の部分群の生成元であり、$\varphi(6)=2$ 個である。
演習。 $g\in\mathbf F_{p^n}^\times$ の位数が $p^n-1$ なら $\mathbf F_p(g)=\mathbf F_{p^n}$ を示せ。
解答。 $\mathbf F_p(g)$ は $g$ の全冪 $p^n-1$ 個と零を含むので少なくとも $p^n$ 元を持つ。もとの体の部分体なのでそれ以上はなく、両者は等しい。
演習。 $\mathbf F_{64}$ の部分体を列挙し、$\mathbf F_8\subseteq\mathbf F_{64}$、$\mathbf F_{16}\subseteq\mathbf F_{64}$、$\mathbf F_9\subseteq\mathbf F_{3^{12}}$ の可否を判定せよ。
解答。 $64=2^6$ より部分体は $\mathbf F_2,\mathbf F_4,\mathbf F_8,\mathbf F_{64}$。包含の指数は順に $3\mid6$、$4\nmid6$、$2\mid12$ なので、可・不可・可である。
演習。 固定した $\overline{\mathbf F}_2$ の中で $\mathbf F_{2^6}$ と $\mathbf F_{2^{15}}$ の共通部分と合成体を求めよ。また $\mathbf F_{2^{12}}$ 上の $a\mapsto a^{2^8}$ の固定体を求めよ。
解答。 $\gcd(6,15)=3$、$\operatorname{lcm}(6,15)=30$ なので共通部分は $\mathbf F_{2^3}$、合成体は $\mathbf F_{2^{30}}$。$\gcd(12,8)=4$ なので固定体は $\mathbf F_{2^4}$ である。

参考文献

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