$\mathbb Q(\sqrt2)$ から $\mathbb C$ への写像で有理数を固定するものは、$\sqrt2$ を $\sqrt2$ または $-\sqrt2$ へ送れます。この二つは偶然ではありません。体準同型は最小多項式の関係を保つため、生成元の像はその最小多項式の根でなければならず、逆に根を一つ選べば埋め込みが一意に作れます。
$L/K$ と $\Omega/K$ を体拡大とする。体準同型
$$
\sigma:L\to\Omega
$$
がすべての $a\in K$ に対して $\sigma(a)=a$ を満たすとき、$\sigma$ をK-埋め込み|!FORMULA[11][36957][0] 埋め込みという。集合を
$$
\operatorname{Emb}_K(L,\Omega)
$$
と書く。
体準同型は必ず単射なので「埋め込み」という名前が付いています。像が $\Omega$ 全体である必要はありません。
$L=K(S)$ とし、$\sigma,\tau:L\to\Omega$ を $K$ 埋め込みとする。すべての $s\in S$ について $\sigma(s)=\tau(s)$ なら $\sigma=\tau$ である。
$\sigma$ と $\tau$ が一致する元全体を $E$ とします。$K\subseteq E$ で、$x,y\in E$ なら加減乗除について
$$
\sigma(x\pm y)=\tau(x\pm y),
\quad
\sigma(xy)=\tau(xy),
$$
$y\ne0$ なら
$$
\sigma(x/y)=\sigma(x)\sigma(y)^{-1}
=\tau(x)\tau(y)^{-1}=\tau(x/y).
$$
従って $E$ は $K$ と $S$ を含む部分体です。$K(S)$ の最小性から $L=K(S)\subseteq E$、よって全体で一致します。□
$\alpha$ を $K$ 上代数的、最小多項式を $m_{\alpha,K}$ とする。$K$ 埋め込み $\sigma:K(\alpha)\to\Omega$ に対して
$$
m_{\alpha,K}(\sigma(\alpha))=0.
$$
$m(x)=\sum_ia_ix^i$ と書きます。係数 $a_i\in K$ は $\sigma$ で固定されるので
$$
m(\sigma(\alpha))
=\sum_ia_i\sigma(\alpha)^i
=\sigma\left(\sum_ia_i\alpha^i\right)
=\sigma(m(\alpha))=\sigma(0)=0.
$$
□
$\alpha$ を $K$ 上代数的、最小多項式を $m(x)$ とする。$\Omega/K$ の元 $\beta$ が $m(\beta)=0$ を満たすとき、一意な $K$ 埋め込み
$$
\sigma_\beta:K(\alpha)\to\Omega
$$
で $\sigma_\beta(\alpha)=\beta$ となるものが存在する。従って
$$
\operatorname{Emb}_K(K(\alpha),\Omega)
\longleftrightarrow
\{\beta\in\Omega:m(\beta)=0\}
$$
は全単射である。
同型
$$
K(\alpha)\cong K[x]/(m),
\qquad f(\alpha)\leftrightarrow f(x)+(m)
$$
を使います。評価写像 $K[x]\to\Omega$、$f\mapsto f(\beta)$ は $m(\beta)=0$ により $(m)$ を核に含むので、商を通って
$$
K[x]/(m)\to\Omega
$$
を誘導します。$m$ は既約なので商は体であり、この準同型は単位元を保つ体準同型、従って単射です。合成により $\alpha$ を $\beta$ へ送る $K$ 埋め込みを得ます。
一意性は $K(\alpha)$ が $K$ と $\alpha$ で生成されることから従います。前命題により任意の埋め込みは $\alpha$ を $m$ の根へ送るため、対応は全射かつ単射です。□
$\alpha$ の $K$ 上の最小多項式の根を、$\alpha$ の $K$ 上の共役元という。
共役元は、適切な大きな体の中で $K$ 埋め込みにより互いに移される元です。
$\alpha$ を $K$ 上代数的とし、$\Omega$ を最小多項式の全根を含む体とする。このとき
$$
|\operatorname{Emb}_K(K(\alpha),\Omega)|
\le[K(\alpha):K].
$$
等号が成り立つことと、最小多項式が $\Omega$ で重根をもたず完全分解することは同値である。
埋め込みは最小多項式 $m$ の相異なる根と全単射です。相異なる根の個数は $\deg m$ 以下で、
$$
\deg m=[K(\alpha):K].
$$
$\Omega$ が全根を含むので、相異なる根の数が次数に等しいことは重根がないことと同値です。□
Galois理論では、基礎体からの埋め込み $\iota:K\to\Omega$ を固定したうえで、それを $K(\alpha)$ へ延長する必要があります。多項式
$$
f(x)=\sum_ia_ix^i\in K[x]
$$
に対して
$$
f^\iota(x)=\sum_i\iota(a_i)x^i\in\Omega[x]
$$
と書きます。
$\alpha$ を $K$ 上代数的、最小多項式を $m$ とする。体埋め込み $\iota:K\to\Omega$ と、$m^\iota$ の根 $\beta$ を含む拡大体 $E/\Omega$ があるとする。このとき一意な体埋め込み
$$
\widetilde\iota:K(\alpha)\to E
$$
で $\widetilde\iota|_K=\iota$、$\widetilde\iota(\alpha)=\beta$ となるものが存在する。
$K(\alpha)$ の元は一意に
$$
a_0+a_1\alpha+\cdots+a_{d-1}\alpha^{d-1}
$$
と書けます。そこで
$$
\widetilde\iota\left(\sum_ia_i\alpha^i\right)
=\sum_i\iota(a_i)\beta^i
$$
と定めます。一意表示により良定義で、加法と乗法を保つことは多項式の計算から従います。積の後に $m(\alpha)=0$ で還元した関係は、$m^\iota(\beta)=0$ により像でも保たれます。単位元を保つ体準同型なので単射です。
制限と $\alpha$ の像は定義通りです。一意性は $K(\alpha)$ が $K$ と $\alpha$ で生成されることから従います。□
$$
\operatorname{Emb}_{\mathbb Q}(\mathbb Q(\sqrt2),\mathbb C)
$$
には
$$
a+b\sqrt2\mapsto a+b\sqrt2,
$$
$$
a+b\sqrt2\mapsto a-b\sqrt2
$$
の二つがあります。どちらも像は $\mathbb Q(\sqrt2)$ 自身なので自己同型です。
$\alpha=\sqrt[3]2$ の最小多項式は $x^3-2$。複素数内の根は
$$
\alpha,\quad\zeta\alpha,\quad\zeta^2\alpha.
$$
従って
$$
|\operatorname{Emb}_{\mathbb Q}(\mathbb Q(\alpha),\mathbb C)|=3.
$$
しかし実数への埋め込みでは像 $\sigma(\alpha)$ が実根でなければならず、実根は $\alpha$ 一つだけです。従って
$$
|\operatorname{Emb}_{\mathbb Q}(\mathbb Q(\alpha),\mathbb R)|=1.
$$
埋め込みの個数は到着体がどの根を含むかに依存します。
$\mathbb Q(\sqrt[3]2)$ 自身は非実根を含みません。従って $\mathbb Q$ 自己同型は $\alpha$ を実根 $\alpha$ に送る恒等写像だけです。拡大次数3に対して自己同型群の位数は1。この不一致は拡大が正規でないことを反映します。
$d\in\mathbb Q$ は平方でないとする。$\mathbb Q(\sqrt d)$ から $\mathbb C$ への $\mathbb Q$ 埋め込みをすべて求めよ。
$\sqrt d$ の最小多項式は $x^2-d$ で、複素数内の根は $\sqrt d,-\sqrt d$。従って埋め込みは
$$
a+b\sqrt d\mapsto a+b\sqrt d,
$$
$$
a+b\sqrt d\mapsto a-b\sqrt d
$$
の二つです。$d<0$ の場合も複素平方根を一つ選べば同じ記述です。□
$\alpha=\sqrt2+\sqrt3$ の $\mathbb Q$ 上の共役元をすべて求め、それぞれに対応する $\mathbb Q$ 埋め込み $\mathbb Q(\alpha)\to\mathbb C$ を記述せよ。
最小多項式は $x^4-10x^2+1$ で、その根は
$$
\sqrt2+\sqrt3,
\quad-\sqrt2+\sqrt3,
\quad\sqrt2-\sqrt3,
\quad-\sqrt2-\sqrt3.
$$
また $\mathbb Q(\alpha)=\mathbb Q(\sqrt2,\sqrt3)$。各根は $\sqrt2$ と $\sqrt3$ の符号を独立に選ぶ写像
$$
\sqrt2\mapsto\pm\sqrt2,
\qquad
\sqrt3\mapsto\pm\sqrt3
$$
から得られます。四つの符号選択が四つの埋め込みです。□
有限次拡大 $L/K$ が単純拡大 $L=K(\alpha)$ であるとする。このとき
$$
|\operatorname{Aut}_K(L)|\le[L:K]
$$
を示せ。
$K$ 自己同型は特に $K$ 埋め込み $L\to\Omega$ です。各自己同型は $\alpha$ を最小多項式の根へ送り、生成元の像で一意に決まります。根の個数は最小多項式の次数以下なので
$$
|\operatorname{Aut}_K(L)|
\le\deg m_{\alpha,K}
=[L:K].
$$
□
$f(x)=x^3-3x+1$ は相異なる三つの実根をもつとする。一つの根を $\alpha$ とし、$f$ が $\mathbb Q$ 上既約であることを示したうえで、$\operatorname{Emb}_{\mathbb Q}(\mathbb Q(\alpha),\mathbb R)$ の元数を求めよ。
有理根定理による根候補は $\pm1$ ですが
$$
f(1)=-1,
\qquad f(-1)=3
$$
でどちらも根でありません。三次多項式なので有理根をもたなければ既約です。従って $m_{\alpha,\mathbb Q}=f$。
仮定により $f$ は相異なる三実根をもち、その各根を $\alpha$ の像として一意な $\mathbb Q$ 埋め込みが得られます。従って埋め込みは3個です。□
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