2-6 埋め込みと共役元

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$\mathbb Q(\sqrt2)$ から $\mathbb C$ への写像で有理数を固定するものは、$\sqrt2$ を $\sqrt2$ または $-\sqrt2$ へ送れます。この二つは偶然ではありません。体準同型は最小多項式の関係を保つため、生成元の像はその最小多項式の根でなければならず、逆に根を一つ選べば埋め込みが一意に作れます。

基礎体を固定する埋め込み

(K) 埋め込み

$L/K$ と $\Omega/K$ を体拡大とする。体準同型
$$ \sigma:L\to\Omega $$
がすべての $a\in K$ に対して $\sigma(a)=a$ を満たすとき、$\sigma$ をK-埋め込み|!FORMULA[11][36957][0] 埋め込みという。集合を
$$ \operatorname{Emb}_K(L,\Omega) $$
と書く。

体準同型は必ず単射なので「埋め込み」という名前が付いています。像が $\Omega$ 全体である必要はありません。

生成元の像で決まる

$L=K(S)$ とし、$\sigma,\tau:L\to\Omega$ を $K$ 埋め込みとする。すべての $s\in S$ について $\sigma(s)=\tau(s)$ なら $\sigma=\tau$ である。

$\sigma$ と $\tau$ が一致する元全体を $E$ とします。$K\subseteq E$ で、$x,y\in E$ なら加減乗除について
$$ \sigma(x\pm y)=\tau(x\pm y), \quad \sigma(xy)=\tau(xy), $$
$y\ne0$ なら
$$ \sigma(x/y)=\sigma(x)\sigma(y)^{-1} =\tau(x)\tau(y)^{-1}=\tau(x/y). $$
従って $E$ は $K$ と $S$ を含む部分体です。$K(S)$ の最小性から $L=K(S)\subseteq E$、よって全体で一致します。□

最小多項式の根へ送られる

埋め込みは共役な根へ送る

$\alpha$ を $K$ 上代数的、最小多項式を $m_{\alpha,K}$ とする。$K$ 埋め込み $\sigma:K(\alpha)\to\Omega$ に対して
$$ m_{\alpha,K}(\sigma(\alpha))=0. $$

$m(x)=\sum_ia_ix^i$ と書きます。係数 $a_i\in K$ は $\sigma$ で固定されるので
$$ m(\sigma(\alpha)) =\sum_ia_i\sigma(\alpha)^i =\sigma\left(\sum_ia_i\alpha^i\right) =\sigma(m(\alpha))=\sigma(0)=0. $$
□

根から埋め込みを作る

単純拡大の埋め込みと根

$\alpha$ を $K$ 上代数的、最小多項式を $m(x)$ とする。$\Omega/K$ の元 $\beta$ が $m(\beta)=0$ を満たすとき、一意な $K$ 埋め込み
$$ \sigma_\beta:K(\alpha)\to\Omega $$
で $\sigma_\beta(\alpha)=\beta$ となるものが存在する。従って
$$ \operatorname{Emb}_K(K(\alpha),\Omega) \longleftrightarrow \{\beta\in\Omega:m(\beta)=0\} $$
は全単射である。

同型
$$ K(\alpha)\cong K[x]/(m), \qquad f(\alpha)\leftrightarrow f(x)+(m) $$
を使います。評価写像 $K[x]\to\Omega$、$f\mapsto f(\beta)$ は $m(\beta)=0$ により $(m)$ を核に含むので、商を通って
$$ K[x]/(m)\to\Omega $$
を誘導します。$m$ は既約なので商は体であり、この準同型は単位元を保つ体準同型、従って単射です。合成により $\alpha$ を $\beta$ へ送る $K$ 埋め込みを得ます。
一意性は $K(\alpha)$ が $K$ と $\alpha$ で生成されることから従います。前命題により任意の埋め込みは $\alpha$ を $m$ の根へ送るため、対応は全射かつ単射です。□

共役元

$\alpha$ の $K$ 上の最小多項式の根を、$\alpha$ の $K$ 上の共役元という。

共役元は、適切な大きな体の中で $K$ 埋め込みにより互いに移される元です。

埋め込みの個数

埋め込み数の上界

$\alpha$ を $K$ 上代数的とし、$\Omega$ を最小多項式の全根を含む体とする。このとき
$$ |\operatorname{Emb}_K(K(\alpha),\Omega)| \le[K(\alpha):K]. $$
等号が成り立つことと、最小多項式が $\Omega$ で重根をもたず完全分解することは同値である。

埋め込みは最小多項式 $m$ の相異なる根と全単射です。相異なる根の個数は $\deg m$ 以下で、
$$ \deg m=[K(\alpha):K]. $$
$\Omega$ が全根を含むので、相異なる根の数が次数に等しいことは重根がないことと同値です。□

基礎体の埋め込みも動かす

Galois理論では、基礎体からの埋め込み $\iota:K\to\Omega$ を固定したうえで、それを $K(\alpha)$ へ延長する必要があります。多項式
$$ f(x)=\sum_ia_ix^i\in K[x] $$
に対して
$$ f^\iota(x)=\sum_i\iota(a_i)x^i\in\Omega[x] $$
と書きます。

単純代数拡大への埋め込み延長

$\alpha$ を $K$ 上代数的、最小多項式を $m$ とする。体埋め込み $\iota:K\to\Omega$ と、$m^\iota$ の根 $\beta$ を含む拡大体 $E/\Omega$ があるとする。このとき一意な体埋め込み
$$ \widetilde\iota:K(\alpha)\to E $$
で $\widetilde\iota|_K=\iota$、$\widetilde\iota(\alpha)=\beta$ となるものが存在する。

$K(\alpha)$ の元は一意に
$$ a_0+a_1\alpha+\cdots+a_{d-1}\alpha^{d-1} $$
と書けます。そこで
$$ \widetilde\iota\left(\sum_ia_i\alpha^i\right) =\sum_i\iota(a_i)\beta^i $$
と定めます。一意表示により良定義で、加法と乗法を保つことは多項式の計算から従います。積の後に $m(\alpha)=0$ で還元した関係は、$m^\iota(\beta)=0$ により像でも保たれます。単位元を保つ体準同型なので単射です。
制限と $\alpha$ の像は定義通りです。一意性は $K(\alpha)$ が $K$ と $\alpha$ で生成されることから従います。□

具体例

二次拡大

$$ \operatorname{Emb}_{\mathbb Q}(\mathbb Q(\sqrt2),\mathbb C) $$
には
$$ a+b\sqrt2\mapsto a+b\sqrt2, $$
$$ a+b\sqrt2\mapsto a-b\sqrt2 $$
の二つがあります。どちらも像は $\mathbb Q(\sqrt2)$ 自身なので自己同型です。

三次拡大と到着体

$\alpha=\sqrt[3]2$ の最小多項式は $x^3-2$。複素数内の根は
$$ \alpha,\quad\zeta\alpha,\quad\zeta^2\alpha. $$
従って
$$ |\operatorname{Emb}_{\mathbb Q}(\mathbb Q(\alpha),\mathbb C)|=3. $$
しかし実数への埋め込みでは像 $\sigma(\alpha)$ が実根でなければならず、実根は $\alpha$ 一つだけです。従って
$$ |\operatorname{Emb}_{\mathbb Q}(\mathbb Q(\alpha),\mathbb R)|=1. $$
埋め込みの個数は到着体がどの根を含むかに依存します。

自己同型は像が内部に戻る根だけ

$\mathbb Q(\sqrt[3]2)$ 自身は非実根を含みません。従って $\mathbb Q$ 自己同型は $\alpha$ を実根 $\alpha$ に送る恒等写像だけです。拡大次数3に対して自己同型群の位数は1。この不一致は拡大が正規でないことを反映します。

演習

二次拡大の埋め込み

$d\in\mathbb Q$ は平方でないとする。$\mathbb Q(\sqrt d)$ から $\mathbb C$ への $\mathbb Q$ 埋め込みをすべて求めよ。

解答

$\sqrt d$ の最小多項式は $x^2-d$ で、複素数内の根は $\sqrt d,-\sqrt d$。従って埋め込みは
$$ a+b\sqrt d\mapsto a+b\sqrt d, $$
$$ a+b\sqrt d\mapsto a-b\sqrt d $$
の二つです。$d<0$ の場合も複素平方根を一つ選べば同じ記述です。□

四次拡大の共役

$\alpha=\sqrt2+\sqrt3$ の $\mathbb Q$ 上の共役元をすべて求め、それぞれに対応する $\mathbb Q$ 埋め込み $\mathbb Q(\alpha)\to\mathbb C$ を記述せよ。

解答

最小多項式は $x^4-10x^2+1$ で、その根は
$$ \sqrt2+\sqrt3, \quad-\sqrt2+\sqrt3, \quad\sqrt2-\sqrt3, \quad-\sqrt2-\sqrt3. $$
また $\mathbb Q(\alpha)=\mathbb Q(\sqrt2,\sqrt3)$。各根は $\sqrt2$ と $\sqrt3$ の符号を独立に選ぶ写像
$$ \sqrt2\mapsto\pm\sqrt2, \qquad \sqrt3\mapsto\pm\sqrt3 $$
から得られます。四つの符号選択が四つの埋め込みです。□

自己同型群の上界

有限次拡大 $L/K$ が単純拡大 $L=K(\alpha)$ であるとする。このとき
$$ |\operatorname{Aut}_K(L)|\le[L:K] $$
を示せ。

解答

$K$ 自己同型は特に $K$ 埋め込み $L\to\Omega$ です。各自己同型は $\alpha$ を最小多項式の根へ送り、生成元の像で一意に決まります。根の個数は最小多項式の次数以下なので
$$ |\operatorname{Aut}_K(L)| \le\deg m_{\alpha,K} =[L:K]. $$
□

実数への埋め込み

$f(x)=x^3-3x+1$ は相異なる三つの実根をもつとする。一つの根を $\alpha$ とし、$f$ が $\mathbb Q$ 上既約であることを示したうえで、$\operatorname{Emb}_{\mathbb Q}(\mathbb Q(\alpha),\mathbb R)$ の元数を求めよ。

解答

有理根定理による根候補は $\pm1$ ですが
$$ f(1)=-1, \qquad f(-1)=3 $$
でどちらも根でありません。三次多項式なので有理根をもたなければ既約です。従って $m_{\alpha,\mathbb Q}=f$。
仮定により $f$ は相異なる三実根をもち、その各根を $\alpha$ の像として一意な $\mathbb Q$ 埋め込みが得られます。従って埋め込みは3個です。□

参考文献

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