有限Galois拡大 $L/K$ の中間体 $E$ を選ぶと、$E$ を固定する自己同型群が得られます。逆に自己同型の部分群 $H$ を選ぶと、$H$ の全元に固定される体が得られます。大きい中間体ほど固定すべき元が多いので自己同型群は小さくなり、大きい部分群ほど固定体は小さくなります。この「包含関係の反転」がGalois対応の骨格です。
以下、$L/K$ を有限Galois拡大、$G=\operatorname{Gal}(L/K)$ とします。
中間体を固定する部分群を、中間体 $K\subseteq E\subseteq L$ に対し
$$
G_E=\operatorname{Gal}(L/E)
=\{\sigma\in G\mid \sigma(a)=a\text{ for all }a\in E\}
$$
と定める。
部分群の固定体を、部分群 $H\le G$ に対し
$$
L^H=\{a\in L\mid \sigma(a)=a\text{ for all }\sigma\in H\}
$$
と定める。
$G_E$ が部分群であることは、恒等写像が $E$ を固定し、$E$ を固定する写像の合成と逆写像も $E$ を固定することから従います。$L^H$ が部分体であることは、固定元が差・積・商について閉じることから従います。
中間体 $E,E'$ と部分群 $H,H'$ について次が成立する。
1:$E'$ を固定する自己同型は、その部分体 $E$ も固定します。
2:$H'$ の全元に固定される元は、その部分集合 $H$ の全元にも固定されます。
3:$G_E$ の定義から、その全元は $E$ の各元を固定します。従って $E$ の元はすべて $L^{G_E}$ に属します。
4:$L^H$ の定義から、$H$ の各元は $L^H$ を各点で固定します。従って $H$ の各元は $G_{L^H}$ に属します。□
Galoisの基本定理は、有限Galois拡大では3と4がどちらも等号になることを主張します。その証明には、固定体上の拡大次数と群の位数を結ぶ必要があります。
部分群 $H\le G$ は $L$ の元に
$$
H\times L\to L,
\qquad(\sigma,a)\mapsto\sigma(a)
$$
と作用します。
$H$ が有限群なら
$$
|H\cdot a|=[H:H_a].
$$
写像
$$
H/H_a\to H\cdot a,
\qquad \sigma H_a\mapsto\sigma(a)
$$
を考えます。$\sigma H_a=\tau H_a$ なら $\tau^{-1}\sigma\in H_a$ なので $\sigma(a)=\tau(a)$、従ってwell-definedです。逆に $\sigma(a)=\tau(a)$ なら $\tau^{-1}\sigma\in H_a$ なので剰余類は等しいです。定義から全射でもあり、全単射です。□
$H\le G$ を有限部分群、$a\in L$ とする。相異なる軌道元を根にもつ多項式
$$
P_{H,a}(x)=\prod_{b\in H\cdot a}(x-b)
$$
の係数は $L^H$ に属する。
$\tau\in H$ を係数へ施すと
$$
\tau(P_{H,a})(x)
=\prod_{b\in H\cdot a}(x-\tau(b)).
$$
$\tau$ は軌道 $H\cdot a$ をそれ自身へ全単射に移すので、右辺は因子の順序を入れ替えただけで $P_{H,a}(x)$ に等しいです。従って各係数はすべての $\tau\in H$ に固定され、$L^H$ に属します。□
$a\in L$ の $L^H$ 上の最小多項式の次数は
$$
[L^H(a):L^H]\le|H\cdot a|\le|H|
$$
を満たす。
軌道多項式は $L^H[x]$ に属し、$a$ を根にもつので、$a$ の最小多項式はこれを割ります。従って次数は軌道多項式の次数 $|H\cdot a|$ 以下です。軌道は $H$ の像なので、その大きさは $|H|$ 以下です。□
$L=\mathbb Q(\sqrt2,\sqrt3)$ とし
$$
\sigma(\sqrt2)=-\sqrt2,
\quad \sigma(\sqrt3)=\sqrt3,
$$
$$
\tau(\sqrt2)=\sqrt2,
\quad \tau(\sqrt3)=-\sqrt3
$$
とします。$G=\{1,\sigma,\tau,\sigma\tau\}$ です。
一般の元を
$$
a+b\sqrt2+c\sqrt3+d\sqrt6
$$
と書きます。$\sigma$ に固定される条件は $b=d=0$ なので
$$
L^{\langle\sigma\rangle}=\mathbb Q(\sqrt3).
$$
同様に
$$
L^{\langle\tau\rangle}=\mathbb Q(\sqrt2),
$$
$$
L^{\langle\sigma\tau\rangle}=\mathbb Q(\sqrt6).
$$
群が大きくなるほど固定体が小さくなる様子が具体的に見えます。
中間体 $E$ から $G_E$ を作り、さらに固定体 $L^{G_E}$ を取ると、基本包含から
$$
E\subseteq L^{G_E}.
$$
部分群 $H$ から $L^H$ を作り、さらに自己同型群を取ると
$$
H\subseteq G_{L^H}.
$$
現段階では包含しか証明していません。等号を得るためには
$$
[L:L^H]=|H|
$$
というArtin固定体定理が必要です。その中心となる線形独立性を次の頁で証明します。
上の双二次拡大で $H=\{1,\sigma\tau\}$ とする。$L^H=\mathbb Q(\sqrt6)$ を係数比較により示せ。
$$
\sigma\tau(a+b\sqrt2+c\sqrt3+d\sqrt6)
=a-b\sqrt2-c\sqrt3+d\sqrt6.
$$
これが元の表示と等しいための条件は $b=c=0$ です。従って固定元は $a+d\sqrt6$ の形の元全体であり、固定体は $\mathbb Q(\sqrt6)$ です。□
$G=\operatorname{Gal}(\mathbb Q(\sqrt2,\sqrt3)/\mathbb Q)$ とし、$a=\sqrt2+\sqrt3$ とする。$G\cdot a$ と軌道多項式を求めよ。
二つの平方根の符号を独立に変えるので
$$
G\cdot a=\{\sqrt2+\sqrt3,-\sqrt2+\sqrt3,
\sqrt2-\sqrt3,-\sqrt2-\sqrt3\}.
$$
従って軌道多項式は $a$ の最小多項式と一致し
$$
P_{G,a}(x)=x^4-10x^2+1.
$$
係数は固定体 $\mathbb Q$ に属します。□
$K\subseteq E\subseteq E'\subseteq L$ のとき
$$
\operatorname{Gal}(L/E')\subseteq\operatorname{Gal}(L/E)
$$
となる理由を、固定条件の個数という観点から説明せよ。
$E'$ の全元を固定する自己同型は、特にその部分体 $E$ の全元も固定します。$E'$ の方が固定を要求される元が多く、条件が強いため、許される自己同型の集合は小さくなります。これが包含の向きが逆転する理由です。□
$L=\mathbb F_{p^{12}}$、$G=\langle\operatorname{Fr}\rangle$ とする。$H=\langle\operatorname{Fr}^3\rangle$ の位数と固定体を求めよ。
$\operatorname{Fr}$ の位数は12なので、$\operatorname{Fr}^3$ の位数は
$$
\frac{12}{\gcd(12,3)}=4.
$$
固定体は $a^{p^3}=a$ を満たす元全体だから
$$
L^H=\mathbb F_{p^3}.
$$
実際 $[L:\mathbb F_{p^3}]=4=|H|$ です。□
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