部分空間に含まれない誤差を、そこに平行な成分と垂直な成分へ分けられるだろうか。
このページでできるようになること
直交補空間を計算し、行列の核・像との関係を説明できるようになる。
内積空間 $V$ の部分空間 $W$ に対し
$$W^\perp=\{v\in V\mid \langle v,w\rangle=0\text{ for every }w\in W\}$$
を $W$ の 直交補空間 という。すべての $w$ との直交を要求するように見えるが、$W$ の基底との内積だけを調べればよい。線形性により基底との内積が零なら、その任意の線形結合との内積も零になるからである。
$W^\perp$ は部分空間である。実際 $x,y\in W^\perp$ とスカラー $a,b$ に対し、任意の $w\in W$ について $\langle ax+by,w\rangle=a\langle x,w\rangle+b\langle y,w\rangle=0$ である。
内積を零にする連立方程式を解き、次元を数えて直和分解を確定する。
$V$ が有限次元内積空間なら
$$V=W\oplus W^\perp,$$
したがって
$$\dim W+\dim W^\perp=\dim V,\qquad (W^\perp)^\perp=W$$
である。
$W$ の正規直交基底 $e_1,\dots,e_r$ を取る。その存在は次ページの Gram–Schmidt 法から従う。任意の $v\in V$ に対して
$$w=\sum_{i=1}^r\langle v,e_i\rangle e_i,\qquad u=v-w$$
と置く。各 $j$ について
$$\langle u,e_j\rangle=\langle v,e_j\rangle-\sum_i\langle v,e_i\rangle\langle e_i,e_j\rangle=0$$
だから $u\in W^\perp$。よって $v=w+u$ と分解できる。
$x\in W\cap W^\perp$ なら、自分自身との内積も $0$ なので $x=0$。したがって和は直和である。次元公式が従う。
$w\in W$ と $u\in W^\perp$ に対して $\langle w,u\rangle=\overline{\langle u,w\rangle}=0$ だから、すべての $w\in W$ は $(W^\perp)^\perp$ に属する。よって $W\subset(W^\perp)^\perp$ である。一方、次元公式を二度使うと
$$\dim(W^\perp)^\perp=\dim V-\dim W^\perp=\dim W.$$
包含と次元の一致より等号である。
証明が次ページを参照しているように見えるが、論理的循環はない。Gram–Schmidt 法はこの定理を使わずに構成・証明できるためである。
標準内積のもとで $A\in M_{m,n}(\mathbb{R})$ に対し
$$\ker A=(\operatorname{Im}A^\mathsf T)^\perp$$
である。なぜなら $x\in\ker A$ と、任意の $y$ に対して
$$\langle x,A^\mathsf Ty\rangle=x^\mathsf TA^\mathsf Ty=(Ax)^\mathsf Ty=0$$
が同値だからである。直交補を取れば
$$\operatorname{Im}A^\mathsf T=(\ker A)^\perp$$
も得る。また $y\in\ker A^\mathsf T$ であることは、すべての $x$ に対し $\langle Ax,y\rangle=\langle x,A^\mathsf Ty\rangle=0$ であることと同値なので、$\ker A^\mathsf T=(\operatorname{Im}A)^\perp$ である。
$W=\operatorname{span}((1,1,0)^\mathsf T,(0,1,1)^\mathsf T)$ とする。$x=(a,b,c)^\mathsf T\in W^\perp$ の条件は
$$a+b=0,\qquad b+c=0.$$
よって $a=-b,c=-b$ で
$$W^\perp=\operatorname{span}((-1,1,-1)^\mathsf T).$$
$W$ は二次元、$W^\perp$ は一次元で、次元の和は $3$ である。
部分空間 $U,W$ に対し
$$(U+W)^\perp=U^\perp\cap W^\perp$$
を示せ。
$x\in(U+W)^\perp$ なら、$u\in U$ を $u+0$、$w\in W$ を $0+w$ と見て $x$ は両方に直交する。よって $x\in U^\perp\cap W^\perp$。
逆に $x$ が $U,W$ の双方に直交するなら、任意の $u+w\in U+W$ に対し $\langle x,u+w\rangle=0+0=0$ だから $x\in(U+W)^\perp$ である。
直交分解を実際に計算するには、部分空間に正規直交基底を作る必要がある。次ページでその手続きを与える。
方程式の四基本部分空間が直交関係で結ばれ、最小二乗の幾何が見える。
次へ持ち越す問い
この見方を、次のページではより広い対象またはより計算しやすい形へ移す。
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